予算特別委員会速記録第五号

○服部委員長 ただいまから予算特別委員会を開会いたします。
 これより付託議案の審査を行います。
 第一号議案から第二十九号議案までを一括して議題といたします。
 この際、部局別質疑について申し上げます。
 去る三月十三日に議長を通じ各常任委員長に依頼してありました部局別質疑につきましては、お手元配布のとおり報告がありました。ご了承願います。
 これより締めくくり総括質疑を行います。
 順次発言を許します。
 山田忠昭委員の発言を許します。

○山田委員 それでは、都議会自由民主党を代表いたしまして、総括締めくくり質疑を行います。
 初めに、財政運営についてお伺いをいたします。
 現在、日本経済は危機に瀕しておりますが、これに萎縮し、守りの姿勢で目先の対応に追われるだけでは、百年に一度の大不況のこの大波にのみ込まれてしまうだけであり、将来への展望を開くことはできません。今必要なのは、将来にしっかりと目を向け、前途を切り開く攻めの都政であり、都財政には、そうした積極的な都政の展開を将来にわたり支える役割が求められております。
 財政環境が厳しさを増す中にあっても、都財政がそうした役割を果たしていくためには、足元の状況のみにとらわれるのではなく、常に将来を見通す視点に立って、今、この施策を実施すべきかどうか、その判断が東京の将来にどういう効果あるいは負担をもたらすことになるのかをしっかりと見きわめることが重要であります。その上で、今行うべき施策を大胆に行っていく必要があります。
 そこで、将来世代を含めた都民に対し、都政がなすべき役割を着実に果たしていくため、どのような考え方で財政運営に臨んでいくのか、都の見解をお伺いします。

○村山財務局長 今後、都政が将来にわたり積極的に施策を展開し、それを財政面で支えていく上では、二つの課題が重要になると考えております。一つは、都民にとって真に有効な施策をいかに選択して、それを実効性を持ってなしていくのかという、施策上の課題でございます。二つ目は、基金や都債などの手段をいかに有効に活用していくのかという、財源確保上の課題でございます。
 今後、さらに厳しい財政環境に直面することも覚悟しなければならないと考えておりますが、そうした中で、これら二つの課題に正面から向き合う上で重要なことは、施策の実施や財源確保に際して、現時点における便益あるいは負担と同時に、それが将来にわたりどのような効果や影響を及ぼすことになるのかということをしっかり見きわめること、すなわち、時間的な経過を考慮した上で判断や選択を行うことでございます。
 そのためには、事務事業評価を通じまして、きめ細かい効果検証を行うとともに、新たな公会計制度のもとで、将来の資産、負債のバランスや収支にどのような効果や影響を及ぼすかなどをしっかりと検討するなど、時間軸をとらえた取り組みを行っていくことが重要でございます。
 こうした努力や工夫を積み重ねることによりまして、都政の積極的な展開を将来にわたり支えていくという財政の役割を確実に果たすべく、全力を尽くしてまいります。

○山田委員 次に、オリンピック・パラリンピック招致についてお伺いいたします。
 去る十七日に衆議院、そして十八日に参議院において、二〇一六年オリンピック・パラリンピック東京大会の招致決議が行われました。決議には、衆参両院が東京招致のために一致協力して活動する姿勢が示されており、政府の財政保証とあわせ、招致実現の大きな弾みになるものと考えます。
 こうした中、IOC評価委員会の東京訪問など、十月の開催都市決定まで行事がメジロ押しで、招致レースはいよいよ佳境に入ります。
 そこで伺いますが、知事はこのたびの国会決議をどう受けとめ、今後どのように取り組んでいくのか、見解をお伺いします。

○石原知事 国会決議につきましては、私も衆参両議長や各党にお願いしてまいりましたが、都議会や国会における超党派の招致推進議員連盟など、多くの協力を得ることができた結果でもありまして、改めて感謝をしております。
 決議自体は、IOCの必須条件ではございませんが、国を挙げたオリンピック招致に対する国会の強い意思表示でもありまして、厳しい招致レースを戦う上で強力な応援になると思っております。
 今後は、評価委員会の来日や、海外でのプレゼンテーションなど、IOC委員との直接接触する機会がふえてまいります。けさも総理に会いまして、四月十八日の総理の主催の晩さん会などについて打ち合わせをしてまいりましたが、国、経済界、スポーツ界と一体となった取り組みをアピールしまして、日本だからこそできる平和と環境優先の、しかも先端技術をいろいろな点で駆使しました新しいオリンピックを訴え、アピールしていくつもりでございます。

○山田委員 IOC評価委員会の公式訪問は、来月十六日から十九日に予定されております。評価委員会は、訪問結果を報告書としてまとめ、この報告書が、本年十月のIOC委員の投票において重要な参考資料になると聞いております。その意味で、評価委員会の訪問は、開催都市選定に向けた極めて重要な要素の一つであります。
 評価委員会の来日を間近に控えた現在の準備状況についてお伺いいたします。

○荒川東京オリンピック・パラリンピック招致本部長 評価委員会の来日は、立候補ファイルの実現可能性や東京の開催能力を検証するために行われるものでありまして、滞在中は、競技会場や輸送など十七のテーマにつきまして、東京側から説明を受けまして、質疑応答と現場視察が行われます。
 その際、東京のすぐれた計画内容と開催能力の高さを十分に理解してもらうことが大切でありまして、そのため、現在、次のような準備をしております。
 まず、室内でのプレゼンテーションや現場視察につきましては、大会コンセプトや施設の配置、運営方法などをわかりやすく説明するために、模型や映像、パネルも活用いたしますし、また、各テーマに詳しい専門家に説明者として参加してもらう予定でございます。
 また、評価委員会の来日に合わせまして、国の内外から集まります報道機関に対しまして、評価委員会の調査状況の説明や東京のPRを適時適切に行うために、メディアセンターの設置、それから記者会見等を予定しております。
 さらに、都内におきまして、地元自治体や商店街などと協力しまして、招致フラッグやバナーの掲出を行い、評価委員会や報道機関に対しまして、東京・日本における招致の高まりを感じてもらいたいというふうに考えております。
 来日まで残りわずかでございますが、万全の体制で準備を進めてまいります。

○山田委員 国内において招致機運が盛り上がっていること、そして東京は六四年大会のレガシーが残る、スポーツの盛んな都市であることを印象づけるよう、ぜひ積極的なアピールを行っていただきたいと思います。
 一昨日、三万五千人ものランナーが都心を走り抜ける東京マラソン二〇〇九が盛大に開催をされました。こうしたスポーツイベントの開催やオリンピック・パラリンピック招致活動の展開により、都民のスポーツへの注目度はますます高まっております。
 スポーツは、青少年に夢に向かって努力する喜びを教えるとともに、心身ともに健全な人間へと導くものであります。本年十月、オリンピック・パラリンピックの招致を見事かち取るためにも、東京はさらなるスポーツ都市へと転換を図っていく必要があります。
 次に、快適な都市環境の実現について何点かお伺いをいたします。
 大規模建築物に対する温暖化対策についてでありますが、都は、温室効果ガスの総量削減義務制度を導入して、既存の大規模事業所のCO2削減を進めていくとしております。さらに、大幅削減を実現するためには、大規模建築物に対し、省エネルギーとともに、再生可能エネルギーの利用を進めていくことも重要であります。
 都は、太陽エネルギーの利用拡大のため、来年度より、二カ年で四万世帯の住宅に太陽エネルギー利用機器の補助を行うとしております。マンションもこの補助制度の対象になっておりますが、建築物環境計画書制度においても、マンション建築主の積極的な取り組みを促し、太陽エネルギーの利用拡大を図るべきと考えますが、所見を伺います。

○有留環境局長 太陽エネルギーなどの利用促進のため、環境確保条例の改正によりまして、建築物環境計画書制度の対象となる大規模な新築建築物に対し、再生可能エネルギーの導入検討の義務づけを行いました。
 これに加えまして、今回、大規模マンションに義務づけている広告等への環境性能ラベルの表示について、表示項目の中に新たに太陽エネルギーの利用に関する項目を追加する予定でございます。
 この新たな措置を活用しまして、太陽光発電等の設置補助とあわせまして、マンションにおける太陽エネルギーの利用拡大を図ってまいります。

○山田委員 さらに、大規模なオフィスビル等については、再生可能エネルギーだけでなく、都市特有の未利用エネルギーの活用も重要であります。
 既に清掃工場の排熱利用の実績がありますが、こうした未利用エネルギーを積極的に活用して温暖化対策を推進していくべきと考えますが、所見を伺います。

○有留環境局長 未利用エネルギーの活用例としては、清掃工場の排熱利用のほか、大江戸線新宿駅で駅構内の冷房排熱を温水供給に用いるなど、地下鉄排熱の利用も行われております。また、エネルギー使用量の増加の著しいデータセンター等におきまして、サーバー等のIT機器の排熱を周辺建物の温水供給に利用する取り組みも始まっております。
 既にこうした事例はございますが、東京の有する都市排熱のポテンシャルに比べれば、その活用は十分とはいえない状況でございます。
 環境確保条例の改正で創設しましたエネルギー有効利用計画制度では、開発事業者に未利用エネルギーの導入検討を求めるとともに、未利用エネルギーを保有する事業者にも協力を義務づけておりまして、今後、制度の詳細を具体化し、未利用エネルギーを東京の温暖化対策に一層効果的に活用してまいります。

○山田委員 さらに、CO2排出の徹底した削減を図るためには、家庭や七十万ある中小企業がいかに省エネに取り組んでもらうかが大きなテーマになると思います。そのためには、都民生活に最も身近な区市町村の取り組みを支援していくことが極めて重要であると思います。
 我が党は一貫して主張してまいりましたが、それを受けまして、都は来年度、地球温暖化対策推進のために、区市町村の取り組み促進制度を実施することとしております。今後、この補助制度を活用して、家庭や中小企業の着実な取り組みを促していくためにも、都と区市町村がそれぞれの役割と責任に応じて、ともにパートナーとして都民に向き合う必要があります。また、この制度が区市町村側にとって真に使いやすいものでなければ、結局のところは実効性のあるものとはなりません。こうした考えを具体的にどのようにこの制度の設計に反映したのかを、改めてお伺いをいたします。

○有留環境局長 お話のとおり、都と区市町村が、それぞれの役割と責任に応じてCO2削減を進めることが重要でございます。
 こうした認識に立ちまして、本制度におきましては、二つの補助対象を設けまして、区市町村がその主体性を発揮できるよう、いずれかを選択または両方に取り組めることができるものといたしました。
 そのうちの一つである選択メニュー事業補助は、CO2削減効果が大きいものの、いまだ初期費用が高く、普及拡大が課題となっている高効率給湯器や燃料電池といった設備を家庭や中小企業が導入する際に、都と区市町村が協調して補助を行い、これにより普及に弾みをつけるものでございます。
 もう一つの提案プロジェクト補助は、区市町村が独自の創意工夫により取り組む先駆的な事業で、地域内外に波及効果をもたらすものについて、都として積極的に支援するものでございます。
 こうした制度設計によりまして、区市町村の意欲的な取り組みを促し、家庭や中小企業におけるCO2削減を推進してまいります。

○山田委員 今、ご答弁にありました提案プロジェクト補助は、地域の自由な発想をくみ上げるという点で、大いに期待しております。
 私も地元で話を聞くことがございますけれども、これはいいなと思う発想が結構あります。ところが、発想自体はいいのでありますけれども、なかなか、それを事業化するということにはもう一ひねり工夫が必要だというものが数多くあるものであります。ですから、区市町村からの提案には、中にはアイデアベースのものもあると思いますけれども、都は、専門的な知見やさまざまなネットワークを持っているわけでありますので、区市町村からの提案をもって、マルとかバツとか、すぐ答えを出すのではなく、事業検討の段階から都が積極的に相談に応じて、きらりと光る事業に磨きをかけてもらいたいと思いますが、見解をお伺いいたします。

○有留環境局長 家庭や中小企業のCO2削減を効果的に進めるためには、地域の特性を踏まえた発想を的確にくみ上げ、これを着実に事業化していく必要がございます。
 そうしたことから、都は、今後、区市町村が本格的に取り組んでいくべき、例えば町会や商店街における省エネの推進などについてのモデルケースとなる事業や、多摩産材チップをバイオマスとして活用するといった地域のポテンシャルを生かす独自の取り組みなどを、提案プロジェクト補助を通じて促進していきたいと考えております。
 事業の検討に当たりましては、都の持つ技術的ノウハウ等をフルに活用しまして、区市町村と緊密に意見交換を図るなど、より実効性ある施策を構築できるように努めてまいります。

○山田委員 小、中、高、大学、幼稚園を問わず、私立学校は東京の教育に不可欠な存在であり、あらゆる支援が必要だと認識をいたしております。とりわけ、公立、私立を問わず、地球温暖化対策に向けての省エネ化に対する支援が必要であると思います。
 都は、我が党の予算要望を受け、来年度新たに、私立学校が実施いたします省エネ設備等の導入に対して支援を行うとのことでありますが、私立学校が省エネ設備等を導入することの意義と、都が実施する事業の内容についてお伺いをいたします。

○秋山生活文化スポーツ局長 私立学校におきます省エネ設備等の導入につきましては、地球温暖化対策としてCO2削減に寄与する、そういうことはもとより、児童生徒等の環境意識の向上につながる、意義の大きい取り組みであるというふうに考えております。
 そこで、都は、ただいまご指摘をいただきましたとおり、来年度新たに、率先して省エネに取り組む私立学校を支援するため、省エネ設備等の導入経費について補助するモデル事業を実施いたします。具体的には、私立の小中高等学校が、東京都地球温暖化防止活動推進センターの省エネ診断を受けて、省エネ型の照明器具や空調設備などを導入する場合に、その経費の二分の一を補助するものでございます。
 来年度のモデル事業の実施状況を検証しながら、さらに本格実施に向けた検討を進め、私立学校における省エネ設備等の導入促進を図ってまいります。

○山田委員 また、私立学校におきます地上デジタル放送への対応についてお伺いいたしたいと思います。
 平成二十三年七月の地上デジタル放送への移行を前にして、その対応が私立学校にとって大きな負担となっております。我が党は、地上デジタルテレビの整備費に対する支援を新たな事業として予算化するよう強く求め、都はこれを受けて、私立学校への補助を行うとしたことは、大いに評価するところであります。
 そこで改めて、この事業の意義と具体的な内容についてお伺いをいたします。

○秋山生活文化スポーツ局長 学校におきますテレビの地上デジタル化は、高い品質の映像や音響を再現できることはもとより、パソコンやデジタルカメラ等との連携など、学校における新たな活用の可能性を広げる、意義あるものという認識をしております。
 お話の経緯を受けまして、都は、平成二十三年からのテレビ放送の地上デジタル化を受け、平成二十一年度から二十二年度の二カ年において、私立学校が行う地上デジタル対応テレビの整備経費に対して補助を行うこととし、平成二十一年度予算で三億七千万円を計上いたしました。
 具体的には、地上デジタル放送対応テレビへの買いかえ、既存のテレビへのデジタルチューナーの接続、アンテナ設置などに要する経費の二分の一を補助していく計画となっております。
 今後、この補助制度を積極的に周知いたしまして、私立学校の地上デジタル放送への対応を促進してまいります。

○山田委員 こうした取り組みにより、東京から先駆的な取り組みがどんどんと全国に発信されることを期待して、次の質問に移ります。
 学校における環境教育について伺います。
 我が党の神林議員が、昨年の決算特別委員会において、環境教育の展開について質問をいたしましたところ、地球温暖化防止のため、六月をCO2削減アクション月間と位置づけ、CO2削減に向けた取り組みを展開する旨の答弁がありました。
 この期間に集中的に子どもたちが行動を実践するとのことでありますが、東京都全体でこうした取り組みを一斉に行うことは、今までにない画期的なものであると思います。
 そこで、CO2削減アクション月間にはどのようなねらいがあるのか、またこの期間に集中して実践行動を行うことの意義は何か、所見をお伺いいたします。

○大原教育長 CO2削減アクション月間は、子どもたちの地球温暖化防止への意識と環境に配慮した行動を実践する意欲を高めることをねらいといたしまして、子どもたちの生活の基盤である家庭の協力を得て、CO2削減に向けた具体的な行動の実践を推進する取り組みでありまして、東京都全体で、期間を定めて、一斉に多くの子どもたちが取り組む初めての試みでございます。
 CO2削減アクション月間に参加した子どもたちは、全都で同様の行動を行っている仲間が大勢いること、そして一人一人の行動実践の結果は小さなものであっても、全都の結果を集めると、CO2の削減に大きな効果を生み出すことを実感できるところに、この取り組みの意義があり、こうした環境への配慮行動を継続しようという意欲を一層育成できるものと考えております。

○山田委員 この取り組みは、二十一年度だけのイベントのような扱いではなくて、継続することによりまして、大勢の子どもたちに関心を持ってもらうことが重要であります。また、家族とともに進んでCO2削減に取り組むといった大きなうねりとなることも期待したいと思います。
 そこで、CO2削減アクション月間では具体的にどのような取り組みをするのか、またその成果をどのように取りまとめ、広めていくのか、所見を伺います。

○大原教育長 環境基本法によりまして、六月五日が環境の日と定められておりますことから、六月をCO2削減アクション月間といたしまして、公立の小学校はもとより、国立、私立も含めた都内のすべての小学校約千四百校に参加を呼びかけまして、五年生を中心に、参加する学年の子どもたち全員が、月間中の七日間、必要のない電気は消す、冷房の設定温度を上げるなど、環境に配慮した行動を各家庭で実践いたします。
 さらに、都内公立学校全校で、環境の日を中心といたしまして、環境講話を実施いたしますとともに、学校における節水、節電に取り組んでまいります。
 この取り組みが円滑に実施できるよう、都教育委員会では、児童と保護者向けの啓発資料ですとか、環境に配慮した行動の目安となるチェックシートを提供してまいります。
 アクション月間の終了後には、参加した子どもたち全員のCO2の削減量を取りまとめまして、取り組みの成果を広く周知いたしますよう、環境教育フォーラムを実施いたしますとともに、顕著な成績を上げた学校を表彰いたします。
 こうしたアクション月間における児童生徒の取り組みは、次年度以降も継続をいたしまして、CO2削減に向けた行動の実践を推進してまいります。

○山田委員 子どもたちの実践行動が家庭におけるCO2排出量の削減につながるように、ぜひ、しっかりとした計画を立てて、実施の準備をしていただきたいと思います。
 今回の取り組みを契機に、環境教育を教育施策の大きな柱として位置づけ、学習する内容や時期、方法等が体系的にわかるような指導のモデルがあれば、学校の取り組みが一層充実するのではないかと思います。
 そこで、指導のモデルを示すなど、各学校における環境教育をさらに推進することが必要ではないかと思いますが、所見を伺います。

○大原教育長 現在も、すべての学校で、学習指導要領に基づき、環境に関する学習を実施してはおりますが、教科や総合的な学習の時間等の連係が十分に図られていないなどの課題がございます。
 そのため、平成二十一年度に、新しい学習指導要領に基づき、小中高等学校の校種間、それから学年間、あるいは教科間のつながりなどの全体像を明示し、指導内容等や効果的な体験活動を関連づけた環境教育カリキュラムを開発いたします。
 各学校では、この環境教育カリキュラムを活用した教育を行うことによりまして、次代を担う子どもたちが環境への認識を深め、生涯にわたって地球環境問題に積極的にかかわるよう、環境教育の一層の推進を図ってまいります。

○山田委員 次に、自然保護条例等の改正についてお伺いをいたします。
 これまで我が党は、東京を緑豊かな都市として再生することが、東京をさらに魅力的で快適な環境都市へと発展させていくことにつながると訴えてまいりました。
 今般提案されております自然保護条例の改正案は、さきの第四回定例会での質疑を踏まえた我が党のこれまでの主張に沿うものであります。
 この改正案の中で制度強化が提案されております開発許可制度については、地域事情に即したより実効性の高い制度とするために、区市町村との連携を図っていくことが重要だと考えますが、今後、具体的にどのように進めていくのか、お伺いをいたします。

○有留環境局長 緑あふれる東京を実現するためには、お話しのように、地域特性に応じた緑の保全、創出の取り組みを行っている区市町村との連携が重要でございます。
 現在、区市町村におきましては、条例等で一定の基準を満たす樹木を保全する制度を設けていますが、所有者等からの申請がなく、保存樹木として指定されていない良好な樹木をいかに保全していくかが課題となっております。
 これを踏まえまして、今般の開発許可制度の改正案では、良好な既存樹木の保全検討を義務づけていくこととしまして、区市町村が定める保存樹木の基準を活用して、その指定の有無にかかわらず、基準を満たす樹木を保全検討の対象とすることを予定しております。
 また、開発事業者が既存樹木の保全検討を行う際には、当該樹木の重要性等について、地元区市町村に意見を聞くことを求めることも検討しております。
 こうしたことによりまして、地域事情を踏まえた実効性のある仕組みとなるよう、制度の具体化を図ってまいります。

○山田委員 具体的な制度構築に当たっては、身近な緑を守る区市町村の取り組みを後押ししていくという視点で検討を進めてほしいと思います。
 今後は、区市町村の取り組みを後押ししていくとともに、また、事業者の自主的な緑の保全、創出を誘導し、実効性を高めていくような仕組みをしっかり構築していくことを要望しておきたいと思います。
 次に、まち中の緑の保全についてお伺いをいたします。
 私の地元、西東京市の保谷駅の近くには、江戸時代から引き継がれている、都内でも恐らく最大級と思われます屋敷林が残っております。
 屋敷林は、地域の風致、景観を向上させるだけでなく、都市のクールアイランドとして重要な機能を発揮しており、緑の価値として改めて注目すべきと考えます。
 知事は、今定例会の施政方針演説におきまして、新たな緑の創出とあわせて、屋敷林や農地など既存の緑を守ること、区市町村と合同で、緑確保の総合的な方針を取りまとめることを表明しております。
 私も、昨年の第三回定例都議会におきまして、本方針の策定について質問を行いましたが、改めて幾つかの点についてお伺いをいたしたいと思います。
 まず、緑確保の総合的な方針の策定に当たって、現在どのように取り組んでいるのかをお伺いいたします。

○只腰都市整備局長 東京の緑の充実を図るためには、都市公園の整備や民間緑化の推進など新たな緑の創出に加え、屋敷林や農地など既存の緑への取り組みをより一層強化し、積極的に保全を進めていくことが必要でございます。
 このため、昨年十月から区市町村と共同で、緑確保の総合的な方針の策定作業を進めておりまして、本年一月からは、学識経験者などから成る委員会を発足させ、検討に着手してございます。また、こうした取り組みの一環として、都全域の緑の現状を把握する調査も実施しております。

○山田委員 策定作業の一環として、緑の現状の調査を実施しているということでございますが、具体的にどのような内容なのか、特に、屋敷林についてはどのような状況なのかをあわせてお伺いいたします。

○只腰都市整備局長 今回の調査では、緑の現状について、保全の対象をわかりやすくするために、丘陵地の緑、がけでございますが崖線の緑、屋敷林等のように種類を分けて進めております。
 現時点で、緑のネットワークの骨格を形成する崖線は、四十カ所、総延長二百三十キロメートルに及んでいることや、お話しの屋敷林につきましては、一千平方メートル以上の規模のものがおおむね八百カ所あることを改めて確認いたしました。
 また、屋敷林などの樹林地の主な所有者にアンケートを実施した結果、八割を超える方が、条件つきではありますが、保全に賛同する一方で、落ち葉対策などの維持管理や税の負担など現状のまま維持していくことに課題があることも明らかになっております。

○山田委員 アンケートによりますと、屋敷林などの樹林地を所有する方々が保全に賛同していることは心強い限りでありますが、民有地の緑を保全することには課題があるようであります。
 そこで、今後、こうした課題に対して、方針、施策の点でどう取り組んでいくのか、所見を伺います。

○只腰都市整備局長 民有地の緑を保全していくためには、維持管理にかかる費用の負担の軽減策や、世代を超えて緑を引き継げるような方策を検討していくことが重要でございます。
 このため、アンケート結果で明らかになりました落ち葉対策など、維持管理に対しまして官民協働で支援する仕組みや、優遇税制のある特別緑地保全地区の指定拡大策など、都と区市町村の役割を踏まえた効果的な保全策を検討してまいります。
 今後とも、区市町村と十分に連携した上で、既存の緑の望ましいあり方や取り組みの方向性を明らかにし、緑確保のための新たなガイドラインとなるよう、総合的な方針の策定に積極的に取り組んでまいります。

○山田委員 今や緑の保全は、大都市にとっても不可避なテーマとなっております。ぜひ、方針をしっかりと策定し、着実な成果を上げていただきたいと思います。
 ここまでの質疑を通じまして、環境に配慮する、あるいは、よりよい環境を創出するという認識や取り組みが都政の大きな潮流になってきたと改めて感じた次第であります。これは、我が党と手を携えながら、知事が強いリーダーシップのもとに、環境問題に積極的に取り組んできたあかしであると思います。
 そこで改めて、世界で最も環境負荷の少ない都市東京の実現を目指す知事の決意をお伺いいたします。

○石原知事 地球温暖化がこのまま進行しますと、遠からず人類が突きつけられるでありましょう破局的な事態を、我々の子孫のために何としても回避しなければならないと思っております。
 その手だての一つとして、失われつつある緑を取り戻し、豊かな都市空間をつくり出すことは、今を生きる我々こそが担うべき大きな課題であると思います。
 この直面する環境問題に着実に対応していくためには、最先端の省エネ設備や緑化技術など、我が国が持つすぐれた環境技術を最大限に活用するとともに、環境学習などによりまして危機感を共有し、我々の地球を守るための地道な努力を続けていくことが肝要であると思います。
 都は、こうした認識に立ちまして、CO2排出総量削減義務を初めとする実効性のある施策に、国に先駆けて取り組んできました。都民や事業者とともに、東京オリンピック・パラリンピックの開催理念に合致した、世界のトップランナーたる持続可能な都市東京の実現を目指していきたいと思っております。

○山田委員 次に、地域の金融機関と連携した新たな支援策、いわゆる中小企業金融支援条例についてお伺いをいたします。
 我が党の提案を受けて発案されましたこの支援策は、百年に一度といわれる厳しい経済状況に直面する中小零細企業の資金調達を支援するもので、その意義や必要性は極めて大きいものであります。
 これまでの予算特別委員会での議論を振り返っても、緊急保証制度によって確実に資金が借りられない中小企業がたくさんおります。また、信金、信組など地域の金融機関からも、時宜にかなった施策だという声が上がっております。
 ぜひとも、本支援策の早期実現に向けて全力で取り組んでもらいたいと思いますし、我が党といたしましても、全面的な協力を惜しむものではございません。
 しかるに、一部の政党は、あくまでも仮定にすぎない融資制度の悪用の危険性を殊さらに誇張し、あるいは、条例にも予算案にも書かれていない金融機関への資本注入などにつながると曲解をして、本支援策に反対をしております。
 まず、この中小企業金融支援条例による融資の対象はどういうものかを確認いたしたいと思います。

○佐藤産業労働局長 現在の厳しい経済情勢のもとで、制度融資の信用保証枠、これを使い切っていたり、また、大幅な条件変更を行うことなどによりまして、緊急保証制度等の制度融資をもってしても、十分な資金調達ができない中小零細企業があります。
 そうした中でも、高い技術力やすぐれたビジネスプランなどによりまして、この難局さえ乗り切れれば、将来に展望が開けるという企業はたくさんあります。
 本支援策では、こうした中小零細企業を対象として支援をしていく、そういうものでございます。

○山田委員 さらに、先日の予算特別委員会では、一部の政党が、本支援策が、融資が焦げついた経営破綻企業への融資を都の税金で穴埋めするものだなどと主張いたしましたが、これも的外れな批判であると思います。このような企業に新たな融資や保証ができるはずがありません。
 そこで、改めて都に確認いたしますが、このような融資ができるはずがないと思いますけれども、見解を改めてお尋ねいたします。

○佐藤産業労働局長 経営破綻した企業に金融機関が新たな融資を行うことはあり得ません。
 本支援策は、先ほどご答弁申し上げましたように、将来的に展望が開ける中小零細企業などを見出して、その資金繰りを支援するものでありまして、その趣旨からして、経営破綻した企業は対象としておりません。

○山田委員 ただいまの答弁でより明確になりましたが、このような意図的な主張は、まさに悪意に満ちた誹謗中傷だと思います。このようなことが障害となって、本支援策の実現が妨害されるようなことがあってはならないと思います。
 今必要なのは、疑いを前提にした後ろ向きの議論ではなくて、本支援策を迅速に実行する政策実行力であります。今般の景気後退の影響をまともに受けて危機的な状況に苦しんでいるたくさんの中小零細企業が、今回の新たな支援策を待ち望んでいます。
 ここで改めて、支援策の実行に向けた知事の決意をお伺いいたします。

○石原知事 昨年以降の厳しい経済状況の中で、都内の小零細企業は、受注の減少や、加えて、これはやっぱり一種の保身でしょうけれども、既存の金融機関が極めて貸し渋りをしているというその兆候の中で、企業の血液ともいえる資金繰りの悪化など、極めて深刻な痛手を負っております。現に、お聞き及びでしょうけれども、黒字倒産の会社がどんどんふえております。
 需要の創出を初めとする景気対策は、一義的には国の責任でありますが、このまま手をこまぬいていては、多くの企業は疲弊し、東京の産業も底辺が衰弱し、崩壊しかねません。
 こうした小零細企業の資金繰りについては、これまでも、制度融資における緊急保証制度の充実を初め、さまざまな取り組みを行ってきましたが、さらに、都独自の新たな融資制度を創設し、支援を強化することといたしました。
 小零細企業を取り巻く状況はまさに待ったなしでありまして、今年夏ごろの制度開始に向けて全力を挙げて取り組んでまいります。

○山田委員 次に、中小企業の経営力向上についてお伺いをいたします。
 今回の景気後退は、過去の経済危機とは比較にならないほど急激なものであります。これまで盤石といわれてきた大手企業すら、屋台骨を揺るがされております。一方、多くの中小企業は、押し寄せる荒波を何とか乗り越えようと必死に努力をいたしております。
 こうした厳しい状況の中で、平成二十一年度の新規事業として、都のリードのもと、商工会議所あるいは商工会などの支援機関が総力を結集し、中小企業の経営体質の強化を図る経営力向上TOKYOプロジェクトを実施することは、まさに時宜を得たものであります。
 我が党の代表質問に対するご答弁でこの事業の意義は理解しておりますが、改めて、本事業の具体的な仕組みについてお尋ねをいたします。

○佐藤産業労働局長 中小企業が現下の経営環境を乗り越えて、将来にわたって存続、発展していくためには、それぞれの企業が抱えます経営上の課題を解決して、経営体質そのものを強化していくこと、このことが重要であるというふうに認識をしております。
 平成二十一年度より新たに実施をいたします経営力向上TOKYOプロジェクト、これでは、まず、商工会議所また商工会の経営指導員が二千社の企業訪問を実施いたしまして、マーケティングや財務管理など、七分野、約百項目に及ぶチェックシートを活用した経営診断を行うことで、中小企業の経営課題の明確化をまず図ります。
 さらに、把握をいたしました課題を解決に導くために、経営指導員等が基本的な対応策を示しますとともに、国や都などの支援策をタイムリーに紹介いたしまして、その活用を働きかけてまいります。
 こうした取り組みによりまして、経営体質強化に向けた中小企業の積極的な経営改善活動を促しまして、都内中小企業の底上げを図ってまいります。

○山田委員 経営力向上TOKYOプロジェクトにより、多くの中小企業が経済環境の変化に翻弄されにくい、強い経営体質となることを期待いたしております。
 しかしながら、規模の小さい企業等では、自社の経営課題を把握したといたしましても、人的な余裕がないなどの理由から、企業単独ではその課題を解決することは困難な場合もあると考えられます。
 企業単独では改善運動に踏み出せない場合、こうした中小企業がグループになって人材や知恵を出し合い、経営改善に道筋をつけていく取り組みが極めて重要であると思います。
 都といたしましても、中小企業グループの取り組みを積極的に支援することが必要であると考えますが、所見をお伺いいたします。

○佐藤産業労働局長 共通の経営課題を持ちます中小企業がグループを形成しまして、その経営課題の解決に共同で取り組んでいくこと、これは、中小企業の経営体質強化のために極めて有効であるというふうに認識をしております。
 都は、平成二十一年度から、グループ形成のノウハウを有しております東京都中小企業団体中央会を通じて、中小企業のグループ化を促してまいります。
 さらに、こうしたグループに中小企業診断士や経営コンサルタントなどの専門家を派遣いたしまして、経営資源の有効活用による生産性の向上や新たな分野への進出など、経営課題の解決に向けた計画の策定を支援してまいります。
 また、当該グループが計画を着実に達成できるよう、例えば、地域資源を活用した新事業創出の取り組みに対して、その経費の一部を助成します地域中小企業応援ファンドの活用なども促してまいります。

○山田委員 次に、販路開拓支援の強化についてお伺いいたします。
 中小企業が経済危機を克服し、さらに発展していくためには、みずから新事業創出に取り組むことで、新たなマーケットを切り開いていくことも重要であります。積極果敢に新商品の開発に挑み、新事業を創造して活路を見出そうとする中小企業の勇気ある取り組みを、今こそ行政としてしっかりと支援していくべきであります。
 中小企業の場合、知名度や販売実績がないことなどから、すぐれた新製品であっても購入してもらえないケースが少なからずあり、中小企業の自助努力だけでは売り込みに限界があります。中小企業の革新的な新製品を都が率先して調達することによって市場への普及を後押しすべきと考えますが、所見をお伺いいたします。

○佐藤産業労働局長 経済危機を突破して、将来にわたり東京の経済を発展させていくためには、革新的な技術による新事業の創出が重要であります。しかしながら、中小企業の場合、たとえ革新的ですぐれた新製品でありましても、知名度の低さなどから販路開拓が順調に進まず、事業化に至らないケースもございます。
 このため、都はこれまでも、産業交流展の開催、また、営業経験の豊富な大企業OB等を活用いたしました商社やメーカーへの製品の紹介など、中小企業の新製品の販路開拓を支援する取り組みを行ってまいりました。
 これらに加えまして、来年度からは新たにトライアル発注制度を創設いたしまして、都みずからが積極的に中小企業のすぐれた新製品の販路開拓を支援してまいります。具体的には、高い新規性を有して都において使用可能な新製品を知事が認定をして、その一部を試験的に購入して使用いたしますとともに、その有用性を確認、公表することによってすぐれた製品であることを広くPRしてまいります。
 こうした取り組みによりまして、これまで以上に中小企業のすぐれた新製品の普及を促進してまいります。

○山田委員 次に、京浜港の国際競争力の強化についてお伺いをいたします。
 海に囲まれた我が国にとりまして、港湾は生活と経済活動を支える重要なインフラであります。しかし、アジア諸港の躍進などにより、日本港湾はまさに危機に瀕している状況にあります。特に、日本経済の心臓部たる首都圏の玄関口であります東京港の国際競争力の強化は、百年に一度の大不況といわれる厳しい経済状況を打開するためにも、一刻の猶予も許されない喫緊の課題であります。
 昨年三月、石原知事の強いリーダーシップによりまして、京浜三港の広域連携強化がスタートいたしました。我々都議会におきましても、この英断に敬意を表するとともに、横浜市会、川崎市議会とスクラムを組んで京浜港広域連携推進議員連盟を設立し、積極的に応援しているところであります。
 この三港の広域連携の成否が、日本港湾及び我が国産業の将来を決するといっても過言ではありません。首都圏、ひいては我が国の産業の振興を図るため、三港の広域連携強化により京浜港の国際競争力の向上に取り組む知事の決意をお伺いいたします。

○石原知事 我が国の港湾政策は極めてスピードと戦略性を欠いておりまして、それを横目に見ながら、アジア諸国は投資を集中させ、大規模港湾を次々と整備しておりまして、国際港湾の枢要な地位を確立してきております。
 現に、シンガポールは世界有数の積みかえ港になっております。あそこで陸揚げするコンテナの数はほとんどありません。全部積みかえでありますが、その作業はソフトもハードも全部日本製でありまして、広大な波止場を眺めましても人は一人もおりません。センターに行きますと、十数人のオペレーターがこれをコンピューターで操作しているだけでありまして、そういった機能を日本は残念ながらいまだに、日本製のものでありながら日本自身は保有してない現況であります。また現に、日本から発着する約百万個のコンテナ貨物が隣の韓国の釜山をハブ港として積みかえられておりまして、日本港湾の基幹航路としての維持そのものが危うくなりつつある現況であります。
 これは同じ先進国のアメリカも同じようなことがございまして、組合のしがらみが非常に深い、強いようで、昔、白黒の映画でしたけれども、マーロン・ブランドのデビュー作の「波止場」という映画がありましたが、ああいう非合理なシステムがまかり通っているため、アメリカはついに業を煮やして、数年前にUAEに主な港の管理業務を売りました。しかし、これは国家のセキュリティーに関係があるということに気がつきまして、またそれを禁止して買い戻しましたが、それぐらい、残念ながら先進国の方が港湾業務に関してはおくれているというのが現況であります。
 この現状を打破するために、京浜三港は、東京湾の各港を包み込むポートオーソリティーの設立を視野に入れまして、至近の距離にある三港のスケールを生かす一港化を進めるとともに、アジア諸港との日本港湾の復権をかけた戦いを始めました。
 その第一歩として、四月から全コンテナ船の入港料を一元化するほか、来年度には、京浜港を一体として経営する道筋を描く共同ビジョンの策定など、世界有数の港湾が兼ね備えている低コストで質の高い港湾サービスを実現する取り組みを展開しまして、京浜港が世界の主要港として生き残る活路を切り開いていきたいと思っております。
 海上物流は、その長い歴史を通じて、四方を海に囲まれた我が国の経済を支えてまいりました。世界最大規模の経済圏を背負う京浜港が、港湾間の競争に勝ち抜いて、我が国の国際物流の玄関口としての役割を果たしていくことで、経済危機の中で混沌とした日本経済に必ずや再び大きな活力を呼び戻すことになると思っております。

○山田委員 それでは次に、水道の震災対策についてお伺いをいたします。
 安定給水の確保に向け、施設の耐震化等のさまざまな事業が着実に進められておりますが、一方で、震災時の早期復旧のための体制づくり、つまり、実際に復旧に従事する施工業者の力をどう確保するのかということが重要だと考えます。
 そこで、震災時における水道工事業者等の確保について、所見をお伺いいたします。

○東岡水道局長 東京湾北部を震源とするマグニチュード七・三の地震が発生した場合、水道管の被害箇所数は約八千二百カ所に達するものと推計しております。
 水道局では、これらの被害箇所を早期に復旧し、一日も早い平常給水への回復を図ることを目的として、水道局震災応急対策計画を策定しております。この計画におきましては、三次救急医療機関や首都中枢機関などへの水道水の供給ルートを三日以内に、また、そのほかについても早期の復旧を進め、三十日以内には全体を復旧することを目標としております。
 これらの復旧工事には、民間の施工業者から約四百二十班、二千百人の人員が必要になるものと想定しております。この体制を確保するため、配水管の維持補修などを行う工事請負単価契約業者との間で、この契約条項の一つとして、震災時の対応への協力について取り決めております。また、水道工事を施工中の工事業者にも緊急の協力を要請することとしております。
 復旧に当たりましては、倒壊家屋の止水作業や宅地内への応急給水栓の設置も重要となるため、東京都管工事工業協同組合と震災時における給水装置の応急措置の協力に関する協定を締結するなど、水道工事業者と連携協力体制の構築を図っているところでございます。

○山田委員 早期復旧には工事業者の方々に活躍していただくことが不可欠であります。今後とも耐震化工事に積極的に取り組むことが強い水道づくりにつながり、さらには、水道工事業者が機動力、体力を保持できる事業量の確保にもつながると考えます。
 次に、私道内の給水管整備事業についてお伺いをいたします。
 本会議の質疑におきまして、来年度から事業対象を約三百キロメートル増加することが示されました。一方、実施に当たっては、私道地権者すべての承諾の取りまとめに多くの時間を要する場合もあると聞いております。私道内給水管整備事業を進めるためには工夫が必要と考えますが、見解をお伺いいたします。

○東岡水道局長 私道内給水管整備事業は、漏水防止や出水不良の解消を目的に、私道へ新たに配水管を布設し、私道に残存する複数の長距離給水管を解消するものであります。
 この実施に当たりましては、私道地権者等の承諾を得ることが必要であります。このため、工事に伴う一時的な断水や交通どめなどの不便をおかけするものの、水圧の確保や耐震性の向上が図られるといったメリットを地権者等に対し丁寧に説明し、理解を得てまいります。
 また、事業執行の面からは、年間を通じて事業を安定的に実施していくため、前年度から私道地権者等に対し配水管布設に向けた説明などを開始し、年度当初から速やかに施工できる体制を整えてまいります。
 さらに、この事業の対象要件を緩和したことなどを当局ホームページにわかりやすく掲示するとともに、お客様から相談を受けた給水装置工事事業者がこの事業を的確に説明できるよう、講習会等の場を通して広く工事事業者に周知を図ってまいります。
 これらの取り組みにより、この事業のさらなる推進に努めてまいります。

○山田委員 都では、安全でおいしい水プロジェクトの中で、直結給水化の普及促進に取り組んでおりますけれども、その取り組み状況についてお伺いをいたします。

○東岡水道局長 直結給水が可能な建物は、従来、二階建て建物までとしておりましたが、住宅系建物については、平成元年から三階建てまで対象を拡大いたしました。その後、平成七年には増圧ポンプを用いた給水方式を採用し、十六階程度までの中高層建物を対象とするなど、直結給水の対象建物の範囲を順次拡大しております。さらに、本年二月からは、増圧ポンプを直列または並列に組み合わせることにより、十七階以上の高層建物や二百世帯を超える大規模集合住宅等への直結給水も可能としております。現在では、新築されるほとんどの建物で直結給水が採用され、また、既存の建物でも直結給水に切りかえられる建物がふえております。
 今後とも、直結化の工事を行う給水装置工事事業者と連携し、直結給水の普及促進を図ってまいります。

○山田委員 安全でおいしい水の安定供給に向け、今後とも、都民の視点はもとより、水道工事業者の果たす役割を踏まえ、事業を着実に執行することを強く要望いたします。
 次に、下水道管の老朽化によります道路陥没の抑制対策についてお伺いをいたします。
 二十三区では、各家庭の排水設備と下水道本管をつなぐ小さな下水道管、これを取りつけ管というそうでありますが、この取りつけ管の損傷が陥没の大きな原因となっております。このことから、昨年の第三回定例会で我が党の宇田川議員から、排水設備工事事業者の方々から成る団体に協力を求め、取りつけ管の現況調査を加速すべきであると提案をいたしました。下水道局長からは、積極的に検討し、調査のスピードアップを図る旨の答弁をいただきましたが、現在の検討状況についてお伺いをいたします。

○今里下水道局長 道路陥没を抑制するためには、取りつけ管の損傷箇所を早期に発見し補修などを行う予防保全型管理がとりわけ重要でございます。このため、膨大な量がある二十三区内の取りつけ管のうち、各家庭の排水設備と公共汚水ますとの間をつなぐ部分、約六十万カ所の現況調査につきまして、昨年第三回定例会のご提案を受けまして、下水道と排水設備に詳しい東京都指定排水設備工事事業者の方々から成る東京都管工事工業協同組合に協力をいただくことでスピードアップを図ることといたしました。調査は平成二十一年度から三カ年で集中的に実施する予定であり、その結果をもとに、損傷のある取りつけ管の早期補修につなげてまいります。

○山田委員 次に、多摩地域におきます広域行政についてお伺いをいたします。
 現在、市町村では広域連携によります取り組みの重要性が高まっております。多摩地域では、モータリゼーションの進展などによりまして、通勤や通学など、住民の生活圏や行動範囲が広がっております。これに伴い、交通網の整備や環境対策など、多くの課題が行政区域を超え広域化しております。
 例えば、きれいな川やわき水、緑の保全には広域的視点が欠かせません。また同様に、鉄道の立体化、都市計画道路や下水道、さらには防災対策など、取り組まねばならない課題は数多くあります。これらの課題に対し、多摩の各市町村は創意工夫を凝らして日夜努力をしておりますが、市町村単独での取り組みには限界もあります。こうした状況において、多摩地域の各市町村が広域連携をすることこそが広域的課題を解決していく最良のかぎとなるものと考えております。
 そこで、多摩地域におきます市町村の広域行政の現状はどうなっているのか、また、市町村が連携して広域行政に取り組むことについて都はどのように考えているのか、所見をお伺いいたします。

○中田総務局長 多摩地域におきましては、住民の生活圏が拡大しているため、委員ご指摘のとおり、行政が対応すべき課題が広域化しております。こうした中で、市町村におきましては、多摩北部都市広域行政圏及び西多摩地域広域行政圏が設定されており、ごみ処理や病院事業などの分野では三十の一部事務組合を設けるなど、広域行政の仕組みや制度が活用されております。
 広域行政の展開によりまして、図書館の相互利用など広い地域で住民サービスの提供を図ることができるほか、病院経営などスケールメリットを生かした行政運営が可能となるため、市町村が連携して広域的な課題に取り組むことは重要と考えております。都としては、今後とも、広域行政に取り組む市町村に対しまして効果的な支援を行ってまいります。

○山田委員 広域連携は、市町村が力を合わせて取り組むため、その事業効果も高く、ひいては多摩地域全体の魅力を高めることにつながります。
 その一例としまして、私の地元北多摩地域では、西東京市など五市が多摩北部都市広域行政圏協議会を設け、各市が共通する行政課題に連携協力しながら、より質の高い住民サービスの提供あるいは魅力あるまちづくりを推進しております。こうした取り組みを積極的に支援していただきたいと思います。
 次に、東京の都市活動を支える道路や鉄道などの交通基盤整備の推進についてお伺いいたします。
 我が党は、これまでも幾度となく、首都東京の道路整備の重要性、そのための財源確保の必要性を主張してまいりました。道路整備は、渋滞解消のみならず、雇用創出や内需拡大など、公共投資としての効果の面からも重要であります。
 都はこれまでも、首都圏三環状道路など幹線道路ネットワークの整備推進に取り組んでまいりました。多摩地域におきましても、南北道路やJR中央線などの連続立体交差事業が着実に進んでおります。
 知事は所信表明で、多摩地域の産業力を一層強化して、人と物の円滑な流れを支えるためには、動脈となる道路の整備が必要不可欠と述べられました。
 そこでまず、今後の多摩地域の発展に重要な役割を果たします圏央道についてお伺いいたします。
 圏央道は、首都圏三環状道路の一番外側に位置し、多摩地域を南北に縦断する重要な高速道路であります。平成十九年六月には、あきる野インターチェンジから八王子ジャンクションの区間が開通し、関越道と中央道が結ばれました。
 また、多摩地域は、先端技術を有する企業や大学が集積するなど、産業発展の大きな可能性を有しております。高度で多様なものづくり産業の集積地として多摩シリコンバレーを発展させるためには、圏央道によって都県を超えた広域的な産業交流を活発化させる必要があります。また、インターチェンジ周辺に計画されている物流拠点が、圏央道により横浜港、成田空港などと接続されることで、多摩地域を中核とした広域物流ネットワークが形成されます。
 そこで、多摩地域の発展に不可欠な、圏央道の東名高速から東関東道までの開通の見通しについてお伺いをいたします。

○道家建設局長 圏央道は、三環状道路の一つとして、首都圏の広域的な高速道路ネットワークを形成する重要な路線であり、国、東日本高速道路株式会社及び中日本高速道路株式会社により整備が進められております。
 現在、中央道から北側の区間につきましては、埼玉県の川島インターチェンジまでを既に供用しており、さらに、茨城県を経て千葉県の東関東道に至る区間は平成二十四年度までに開通する予定であります。また、中央道から南の区間につきましては、八王子南インターチェンジまでが平成二十三年度内に、その先の神奈川県の東名高速までは平成二十四年度までに開通する予定であります。これにより、多摩地域と、お話にありました成田空港、横浜港などとのアクセスが格段に向上し、物流の効率化や産業交流が図られます。
 今後とも関係各県と協力し、平成二十四年度までに東名高速から東関東道までを確実に開通させるよう、国などに強く働きかけてまいります。

○山田委員 首都圏の結びつきをより強化するためには、圏央道のような高速道路に加え、一般道路についても都県境を超えた道路ネットワークを形成していく必要があります。このためには、都県が一体となり、広域的な視点で取り組んでいくことが重要であります。北多摩北部地域でも、埼玉県との間で人や車の往来が日々活発に行われております。
 そこで、北多摩北部地域における埼玉県境の都市計画道路ネットワークの形成に向けて埼玉県とどのように取り組んでいるのか、お伺いをいたします。

○只腰都市整備局長 北多摩北部地域では、埼玉県境をまたぎまして市街地が連担しておりまして、人や物の動きが活発であることから、都県間の道路網の強化が重要でございます。都県間を結ぶ都市計画道路の中には、幅員などの計画が不整合となっている箇所があることから、これまで両都県で調整会議を開催し、協議を重ねてまいりました。
 このうち、事業中の調布保谷線や新東京所沢線については、埼玉県側の接続道路との計画の整合が図られまして、県が都市計画変更に向けた準備などを進めております。また、埼玉県が整備を進めております飯能所沢線につきましては、都内の受け皿となる道路の都市計画決定に向けて、引き続きルート等の検討を進めてまいります。
 今後も埼玉県との連携を強化し、都県境を超えた道路ネットワークの形成に向け、積極的に取り組んでまいります。

○山田委員 都県境の道路整備に当たっては、積極的に調整いただきたいと思います。
 次に、多摩南北道路の整備についてお伺いをいたします。
 多摩南北道路は、多摩地域における機能的な都市活動と安全で快適な都市生活を支える上で必要不可欠な骨格幹線道路であります。昨年五月には、南北五路線といたしまして初めて八王子村山線が全線交通開放するなど、着実に整備が進んでおります。私の地元の西東京市におきましても、調布保谷線の工事が本格的に始まりましたが、地元住民からも、多摩地域の交通の円滑化や利便性の向上に寄与することから、早期完成が強く望まれております。
 そこで、調布保谷線の整備状況についてお伺いをいたします。

○道家建設局長 調布保谷線は、川崎街道から埼玉県境に至る延長十四・二キロメートルのうち、中央道から東八道路付近までの二キロメートルについて、この三月二十九日に四車線で交通開放する予定であり、これを加えて七キロメートルが完成または概成いたします。残る七・二キロメートルについて、用地取得及び工事を進めております。
 三鷹-武蔵野区間につきましては、今年度末までに六七%の用地を取得する見込みであり、現在、地元の方々に環境施設帯の形態を示すため、モデル整備を進めております。西東京区間につきましては、今年度末までに九二%の用地を取得する見込みであります。現在、石神井川にかかる橋梁工事や西武新宿線との立体交差部におけるトンネル工事を進めており、取りつけ部五百メートルについても工事に着手いたしました。
 今後とも、地元の理解と協力を得ながら、多摩地域の発展に寄与する調布保谷線の早期完成を目指し、着実に整備を進めてまいります。

○山田委員 道路がネットワークとして機能するためには、南北道路の整備とあわせて、これに接続する地域幹線道路の整備も重要であります。
 例えば西東京市内では、調布保谷線と交差する西東京三・四・九号線があり、早期整備が求められております。
 折しも、西東京市と東京大学が連携をして、いわゆる東大農場の再整備に伴うまちづくりの検討も進められております。
 そこで、西東京三・四・九号線の事業化に向けた取り組み状況についてお伺いいたします。

○道家建設局長 西東京三・四・九号線は、西東京市中町から東久留米市境の西原町に至る延長三・四キロメートルの地域幹線道路であり、調布保谷線から東久留米市境までの延長二・六キロメートルを、多摩地域の第三次事業化計画における優先整備路線に位置づけております。
 このうち、既に完成しています西東京三・四・二〇号線との交差部から東久留米市境までの延長一・四キロメートルについて、主要渋滞ポイントである新青梅街道の北原交差点の早期の渋滞緩和に効果が高いことから、本年二月に地元説明会を開催し、測量作業に着手いたしました。
 沿道では、東大農場の再編整備に伴うまちづくりの検討が進められており、本路線の早期整備を西東京市及び東京大学から要望されております。
 引き続き、地元の理解と協力を得ながら、測量作業等を進め、早期事業化に取り組んでまいります。
 残る一・二キロメートルにつきましても、調布保谷線の整備の進捗状況を踏まえ、事業化に向け検討してまいります。

○山田委員 引き続き、これらの路線の早期完成、早期事業化に向けて積極的に取り組んでいただきたいと思います。
 次に、鉄道の連続立体交差事業の推進についてお伺いいたします。
 都内にはいまだ千百六十カ所の踏切があり、このうち四分の一があかずの踏切であります。このような道路交通のボトルネックとなっている踏切の解消は、都民の切実な願いであります。
 都は、昨年の第二回定例会におきます我が党の代表質問に対して、鉄道立体化の検討対象区間二十区間のうち、本年度、新規着工準備採択された西武新宿線の中井駅から野方駅間、京王線の代田橋駅から八幡山駅間の二区間を含む七区間を事業候補区間に選定し、事業化に向け積極的に取り組むと答弁をされました。
 そこで、この事業候補区間の事業化に向けた取り組みについてお伺いいたします。

○道家建設局長 鉄道立体化の検討対象区間のうち、関連する道路整備計画やまちづくりへの取り組みの熟度などを踏まえ、昨年、七区間を事業候補区間に位置づけました。
 このうち、新規着工準備採択されました、お話の京王線と西武新宿線の二区間は、構造形式や施工方法を検討し、国との比較設計協議を進めております。残るJR埼京線十条駅付近、京成本線京成高砂駅から江戸川駅間、西武新宿線野方駅から井荻駅間、井荻駅から東伏見駅間、東村山駅付近の五区間は、新規着工準備採択に向け、事業範囲や構造形式の検討を行っております。
 今後とも、必要な財源の確保に努めながら、事業候補区間の事業化に向けて積極的に取り組んでまいります。

○山田委員 ぜひ早期の事業化に取り組んでいただきたいと思います。
 次に、自転車走行空間の整備についてお伺いいたします。
 自転車は、子どもから高齢者まで、日々の通勤、通学や買い物などで手軽に利用される交通手段であります。近年では環境負荷の少ない交通手段としても評価され、健康志向の高まりとともに、その利用が高まって拡大しております。
 一方、自転車利用者の増加とともに、自転車同士や、自転車と歩行者との事故件数が増加傾向にあります。歩行者と自転車がともに安全で快適に通行できる空間の整備を進めていくことが求められております。
 そこで、新たな取り組みとしまして、昨年、渋谷区内の旧玉川水道道路で、都内では初めて車道に自転車レーンを整備し、効果を検証していると聞いております。
 そこで、その検証結果と、それを踏まえた今後の自転車走行空間整備の取り組みについてお伺いいたします。

○道家建設局長 昨年、旧玉川水道道路の山手通り付近から西側一・二キロメートルにおきまして、交通管理者と連携して、都内で初めて現道内の車道の一部に自転車レーンを整備し、その効果を検証するため、沿道住民の方々などへのアンケート調査を行い、利用実態を把握してまいりました。
 その結果、駐停車している車両が自転車の走行を阻害しているなどの課題もありますが、歩行者の七割、自転車レーン利用者の九割、自動車を利用する事業者の六割が今後の整備について肯定的に考えているなど、自転車レーンの有効性が一定程度確認できたところでございます。
 来年度はさらに西側〇・九キロメートルでこの自転車レーンの整備を進め、整備効果の検証も行ってまいります。
 都はこれまで、歩道を活用した自転車走行空間の整備を進めており、国際通りでは既設の広い歩道内でのカラー舗装による視覚的分離により、浅草通りや東八道路では幅員構成を見直すことによる歩道拡幅で、また、環状六号線や調布保谷線などでは道路の新設や拡幅にあわせて整備を進めております。
 今後とも、自転車レーンも含め、多様な手法を用いて、引き続き安全で快適な自転車走行空間の整備を積極的に推進してまいります。

○山田委員 以上、多岐にわたる質疑をしてまいりましたけれども、我が党は、東京の最大の弱点であります渋滞を解消し、東京がさらに機能的で魅力的な都市として成熟を遂げるためには、財源を確保しながら、道路整備を推進することが重要であると考えております。
 そこで、今後の道路整備推進に向けた都の決意をお伺いいたします。

○道家建設局長 東京の道路整備は、渋滞解消、環境改善、利便性や防災性の向上にとって不可欠であり、幹線道路ネットワークの早期完成が喫緊の課題であります。このため、首都圏三環状道路や都市の骨格を形成する区部環状、多摩南北、区部、多摩を結ぶ東西の幹線道路の整備、連続立体交差事業などを重点的に実施しております。
 あわせて、だれもが安全で安心して利用できる快適な歩道や自転車走行空間の確保、無電柱化、街路樹の充実などにも積極的に取り組んでおります。
 現下の経済危機を一刻も早く克服し、我が国のさらなる発展の基盤を構築するためにも、新たに創設される地域活力基盤創造交付金等の財源を確保し、日本の牽引役である首都東京の道路整備を全力で推進してまいります。

○山田委員 そこで、次に、JR中央線の複々線化についてお伺いいたします。
 沿線の二十四の市町村は、三鷹・立川間立体化複々線促進協議会を発足させまして、約四十年の長きにわたり熱心に取り組んでおります。
 この路線の重要性や地元の取り組みについては、昨年の第三回定例会におきまして、我が党の代表質問で述べてきたところであります。
 このように、地元の熱意も高く、多摩地域の振興にとって最も不可欠なJR中央線の三鷹駅から立川駅間の複々線化の今後の取り組みについて、所見をお伺いいたします。

○只腰都市整備局長 JR中央線の三鷹駅から立川駅間につきましては、連続立体交差事業に引き続き複々線化を実現することが、多摩地域の一層の発展を図る上で重要であると認識しております。
 「十年後の東京」への実行プログラム二〇〇九におきましても、現状の課題や今後の方向性について検討していくこととしております。
 現在、立体化複々線促進協議会が設置した専門委員会では、都及び鉄道事業者に加え、新たに国や学識経験者の参画も得て、将来需要の予測や事業効果などの調査を行っております。
 都といたしましては、この結果を勘案しながら、引き続き、関係者と連携し、整備の仕組みづくりなどにつきまして検討を進めてまいります。

○山田委員 次に、景観施策についてお伺いいたします。
 都は、平成十九年三月の景観計画策定以降、景観施策を充実してきております。
 今回の皇居周辺の取り組みについては、昨年の第四回定例会で知事みずから方針を示されました。本年四月には施行予定と聞いておりますが、報道を見ますと、各方面の高い関心を集めているようであります。
 そこで、この皇居周辺の景観誘導施策の特徴はどのようなものかをお伺いいたします。

○只腰都市整備局長 都はこれまで、改正景観条例に基づきまして、文化財庭園周辺などでの景観誘導や、首都東京を象徴する建物の眺望保全など、良好な景観形成に向けて積極的に取り組んでまいりました。
 今回の施策は、東京都景観計画において、新たに皇居周辺を景観誘導地域に指定するとともに、独自の景観形成基準を策定し、風格ある景観誘導を図るものでございます。
 特に、東京の顔づくりに貢献する都市開発を促進するため、今回新たに、良質なデザインによる建築計画を積極的に評価するための基準を策定し、皇居周辺にふさわしい景観誘導を進めることとしております。

○山田委員 皇居周辺は我が国の景観上最も重要な場所の一つでありますが、すぐれたデザインを評価するという名目のもと、過度な規制や、あるいは行政との協議に時間が余計にかかるようなことになると、むしろ事業者の協力が得られなくなるおそれがございます。
 そこで、皇居周辺におきます良好な景観形成と事業性とのバランスについてどう考えているのか、お伺いいたします。

○只腰都市整備局長 皇居周辺の地域は、いうまでもなく我が国政治経済等の中枢機能が集積していることから、良好な景観形成を図りつつ、都市再生の推進に取り組んでいくことが重要と考えております。
 都市開発としての事業性も考慮しながら、質の高い景観形成を推進するため、事業者等からすぐれたデザインの提案を積極的に引き出すことができるよう、仕組みを整えていく必要がございます。
 このため、今回の景観計画の変更とあわせ、良質なデザインを備えた建築物の計画に関する評価をより適切かつ迅速に行うため、協議の方法、手順、協議上の論点などを事前に明らかにした運用指針を作成し、本年四月より運用してまいります。

○山田委員 次に、景観上重要な要素であります屋外広告物の取り組みについてお伺いいたします。
 浜離宮恩賜庭園など文化財庭園等の周辺は、江戸の歴史と文化を伝える重要な地域であります。これらの地域では、屋上広告物などをおおむね三年の間に撤去、改修する施策を打ち出しておりますが、撤去等が進んでいないとも聞いております。
 これまでの撤去等の実績、また、広告主等からどのような声が寄せられているのかについてお伺いいたします。

○只腰都市整備局長 これらの地域におきます規制対象広告物は、おおむね百三十件ございますが、現在、広告主等の協力を得て撤去、改修されたものは七件にとどまっております。
 広告主等からは、施策の趣旨は理解できるが、これまで適法であったものを三年間の期限つきで撤去などしなければならないことや、その際に多額の経費が必要になることなどの意見が寄せられております。

○山田委員 これまで適法であったものが規制対象となり、費用負担もあることから、広告主等は対処に苦慮しているとのことでございます。
 これに対して、都は、我が党の要望も踏まえ、新たな支援策を講ずるとしておりますけれども、今回の支援策は具体的にどのようなものでしょうか、お伺いいたします。

○只腰都市整備局長 今回の取り組みにおきまして、施策の実効性を高めるためには、広告主等の協力が不可欠であることから、都と区が連携して支援策を講じることといたしまして、関係区からは協力するとの意向を得ております。
 都は、区が実施する補助制度に対しまして、負担額の二分の一を補助いたしまして、広告主等の負担割合は、撤去の場合は三分の一、改修の場合は二分の一となるよう、関係区と調整しております。
 事業は平成二十一年度早々から開始し、期間は平成二十三年度までの三カ年を予定してございます。

○山田委員 次に、総合設計制度についてお尋ねいたします。
 大規模な建築物につきましては、公開空地の整備を条件に、行政の許可により容積率等の緩和を認める総合設計制度が活用されてまいりました。この制度は事業者に広く利用され、これまでも都市づくりに一定の貢献をしてきたものと評価しておりますが、近年、社会ニーズが多様化し、単に空地を設ければいいという時代ではなくなりつつあります。
 新たな発想のもと、地域の魅力を増進する建築計画を誘導できる制度の構築により、民間の投資意欲を引き出すようにすべきと考えますが、所見を伺います。

○只腰都市整備局長 今後の都市づくりに向けましては、低炭素型都市の実現や美しい景観の創出、建物の耐震化などの課題があり、ご指摘の総合設計制度につきましても、これらに対応できるものにしていくことが望ましいと考えております。
 そのためには、公開空地の面積などに応じて容積率の割り増しを行う従来の仕組みに加えまして、まちづくりへの貢献度などを多角的に評価して容積率等を定める仕組みの導入が考えられます。
 そうした観点から、地域ニーズを踏まえ、民間の創意工夫を引き出す新たな制度を検討し、来年度の早い時期には適用できるよう取り組んでまいります。

○山田委員 次に、都民の安心・安全を守る観点で、消費者行政について何点かお伺いいたします。
 輸入食品対策については、水際での検疫を初め、国の対策が基本であることは当然であります。しかし、一たん国内に流通した食品の監視、検査等は自治体の役割であります。
 輸入食品の流通拠点であり、最大消費地であります東京においては、こうした取り組みを一層充実していくべきと考えますが、都の所見をお伺いいたします。

○安藤福祉保健局長 都は、輸入食品の安全対策を、毎年度定める食品衛生監視指導計画の中で重点事業と位置づけ実施をしております。
 具体的には、輸入業者、卸売市場、小売販売店など流通の各段階で、保健所を初め関係機関が連携しながら監視指導や立入検査を行い、輸入食品の安全確保を図っております。
 来年度は、こうした取り組みを一層推進するために、輸入者や輸入倉庫などを監視指導する輸入食品監視班を増強するとともに、残留農薬や添加物等の検査数をふやしてまいります。
 さらに、健康安全研究センターや市場衛生検査所に最新の高度検査機器を整備し、輸入食品の安全確保に努めてまいります。

○山田委員 都においても、食品に混入される危険度が高い物質についての検査法を確立するなど、健康安全研究センターの検査体制をさらに強化すべきと考えますが、所見をお伺いいたします。

○安藤福祉保健局長 食品中の残留農薬や食品添加物等の検査は、同じ物質でありましても、食品の種類ごとに測定方法が異なっており、また、試験法そのものが確立していない物質も多くございます。
 このため、都は、試験法の開発に豊富な実績を有する健康安全研究センターの検査機能を大幅に強化してまいります。
 具体的には、海外の食品の安全にかかわる情報を迅速に収集できる仕組みをつくり、検査項目の選定や試験法の開発を行うとともに、民間機関も活用して、その開発期間を短縮いたします。
 また、食品へのメラミン混入事案に見るように、予測できない有害物質を迅速に検出するため、短時間で多数の物質を照合、解析できる高度分析機器を導入し、検査の効率化、精度の向上を図ってまいります。

○山田委員 輸入食品の安全にかかわる事件、事故が頻発する中、消費者の間では国産への回帰が大きなうねりとなっております。都民にとっても、身近な地元でとれた新鮮な野菜や魚は安心できる食材であり、東京の農林水産業に大きな期待を寄せております。
 東京には、生産者と一人一人の消費者との間に立って、食の安全・安心の確立に向け積極的に取り組んでいる消費者団体があります。
 都といたしましても、生産者とこうした消費者団体との交流が促進されるよう、積極的に後押しすべきと考えますが、所見をお伺いいたします。

○佐藤産業労働局長 生産者と消費者とが交流を深めまして、それぞれが理解し合うことは、東京の農林水産業の発展と安全・安心な都民生活の実現を図る観点から、極めて重要であると考えます。
 このため、都は、農業改良普及フォーラムや地産地消シンポジウムなどを開催いたしまして、生産者と消費者との相互理解、交流を推進しております。
 さらに、東京都食育推進計画におきましては、食の生産現場との交流と体験の場をつくる、このことを取り組みの柱の一つに位置づけまして、民間団体等が行う交流、体験活動を支援しております。
 また、都内には、民間団体の活動といたしまして、JAと協同して、休耕地を利用した市民の農作業体験活動などに取り組んだり、また、東京産の農産物を消費者に直接届けるルートを担っている消費者団体もございます。
 こうした民間団体との連携を一層強化いたしまして、今後とも、東京の農林水産業の振興と都民の安全・安心な消費生活の実現を図ってまいります。

○山田委員 次に、悪質な事業者の排除についてお伺いいたします。
 我が党は、昨年の第三回定例会におきまして、消費生活行政は現場の施策を重視すべきと指摘いたしましたが、悪質な事業者の排除に向けて、都は今後どのように取り組んでいくのか、見解をお伺いいたします。

○秋山生活文化スポーツ局長 都はこれまでも、悪質な事業者を排除するため、国の処分件数に匹敵する処分を積極的に行ってまいりましたが、高齢者の生活資金を根こそぎ奪う貴金属証拠金取引や、ネットショップを開設させて高額の初期費用を取るなど、新手の商法も発生してきておりまして、消費者被害は依然として深刻な状況にあるというふうに認識をしております。
 特に、法の網をかいくぐる事例もふえておりますことから、案件の内容に応じて、関係する各局と連携した特別対策班を随時、庁内に設置し、各局が所管するさまざまな法令等を総合的に駆使して解決を図っていく仕組みを導入したところでございまして、先月には、強引な取り立てを行う家賃保証会社の問題につきまして、事業者への指導及び関係団体への改善要請を行うなど、成果を上げてきております。
 これに加えまして、来年度は、警視庁OB職員二名を増員して、悪質事業者を直接取り締まる特別機動調査班を、これまでの五班から六班にふやし、体制を強化するとともに、広域的に活動する悪質事業者に対する他県との合同処分にも一層積極的に取り組んでまいります。

○山田委員 次に、豊洲新市場の整備についてお伺いいたします。
 去る三月十一日のこの委員会におきまして、豊洲新市場予定地の土壌汚染対策については、知事から、万全な対策を実施することにより安全を揺るぎないものとしていくので、安心していただきたいとの心強い答弁をいただきました。
 我が党といたしましては、専門家会議、技術会議から安全宣言を出していただいたことに加え、この知事の答弁によって、都民のより一層の安心が得られたものと確信をいたしております。
 いまだ実現性のない築地での再整備を主張する声が一部にありますけれども、かつて再整備工事に着手し、とんざした苦い経験があり、後ろ向きの議論に終始するばかりでは、何一つ問題を打開することはできません。
 築地市場は、昭和十年の開場から長い年月が経過し、老朽、狭隘化が著しく、近年、大きく変化する流通環境に対応できず、取扱量は大きく減少しております。
 こうした変化への対応が一刻も早く求められる中、水産物で世界最大級のこの取扱量を誇る築地の機能、役割をさらに発展をさせ、豊洲新市場を世界有数の魅力ある市場として整備していくことが、将来にわたり都民、市場関係者の期待にこたえていくことになると考えております。
 そこで、豊洲新市場を将来に向かって発展できる市場としてどのように整備していくのか、移転に向けた市場長の力強い決意とあわせて見解をお伺いいたします。

○比留間中央卸売市場長 近年、市場を取り巻く環境は、食の安全・安心への意識の高まり、国民全体の食生活の変化、流通コスト削減の要請等を背景に、急激に変化しております。
 平成元年に開場した大田市場は、当時、敷地が広大といわれましたが、開場後二十年が経過した現在では、既に過密となっており、流通環境の変化に対応するための施設増設の必要性に迫られ、屋根つき積み込み場や立体荷さばき場などの大規模な整備工事を行っているところでございます。
 これに対し、築地市場は、開場後七十年が経過し、施設の老朽化、狭隘化が著しく、鉄道輸送時代の施設構造であるため、産地からの大型トラックによる搬入スペースが不足し、深夜から早朝にかけて入場待ちのトラックが市場周辺の路上に列をなし、買い出し人の駐車場も不足するなど、物流の変化に構造が対応できていない状態にあります。
 豊洲新市場は、約四十ヘクタールの敷地を有し、駐車や荷さばきのスペースが十分に確保され、交通アクセスが良好で、桟橋に大型船が接岸できるなど、築地市場の物流面の課題を大幅に改善し、この先五十年以上にわたり使い続けていく首都圏の基幹市場として、今後の時代の変化にも対応できる規模と機能を備えております。
 昨年、業界団体の大多数から出された要望書においても移転推進が強く望まれており、猶予は許されない状況にございます。
 都としては、技術会議の提言に基づき、都民や市場関係者が安心できる万全な土壌汚染対策を講じた上で、一日でも早く開場できるよう、豊洲新市場の整備に全力を挙げて取り組んでまいります。

○山田委員 次に、震災時における外出者対策についてお伺いをいたします。
 都は、コンビニエンスストアやガソリンスタンド等を帰宅支援ステーションに指定をし、帰宅者を支援する体制を整備してまいりました。
 しかしながら、これらの施設の中には被災するものもあります。また、非常に多くの方が徒歩で帰宅することを考えますと、帰宅支援ステーションの不足が危惧されます。
 このような事態を回避するため、徒歩帰宅者への支援体制の一層の強化を図るべきと考えますが、所見をお伺いいたします。

○中田総務局長 震災時において、徒歩による帰宅者がその途上で水や情報などを得て、安全に帰宅できるよう支援体制を強化することは重要でございます。
 このため、都は、帰宅支援ステーションとして都立学校を位置づけたほか、ご指摘のコンビニエンスストア等と協定を締結し、現在合わせて約七千八百カ所を指定しております。
 今後とも、徒歩帰宅者が安心して帰宅できるよう、民間事業者等に広く働きかけ、帰宅支援ステーションを拡大するなど、支援体制を強化してまいります。

○山田委員 外出者の中には、自宅が遠いため、長距離を徒歩で帰宅できない方もおります。都の被害想定では、帰宅困難者は約三百九十万人に上るとされております。
 帰宅困難者への対策として、都は総合防災訓練において自衛隊と連携をし、艦船等による帰宅訓練を実施してきました。
 こうした駅前滞留者対策、徒歩帰宅者支援策、帰宅困難者対策を個別に推進していくことも重要でありますが、混乱を防止するための適切な情報提供やトイレ不足への対応など、各対策に共通の課題が多くあることも事実であります。
 そこで、駅前滞留者対策を初めとする三つの対策全体を視野に入れ、共通する課題について総合的に検討する仕組みを構築し、外出者対策を推進すべきと考えますが、所見をお伺いいたします。

○中田総務局長 首都直下地震が日中に発生した場合、都内には多数の外出者がおり、その対策は大都市東京が抱えます重要課題でございます。
 この課題を解決するためには、外出者に係る駅前滞留者対策を初めとする三つの対策をそれぞれきめ細かく実施し、さらに情報提供やトイレ不足など、共通する事項につきまして、外出者対策全体を見据えて総合的に検討することが極めて有効でございます。
 今後、都は、鉄道や百貨店、ホテル、旅館、コンビニエンスストア等の業界の代表者、区市町村、防災機関等から成る検討組織を立ち上げ、震災時における外出者対策を一層推進してまいります。

○山田委員 次に、福祉施策に対する基本姿勢についてお伺いをいたします。
 石原知事は、就任以来の十年間、我が党と手を携えまして、これまでの行政を中心としたシステムを改め、新しい風を吹き込み、新世紀にふさわしい利用者本位の福祉を築く取り組みを一貫して進めてまいりました。都のたゆまぬ取り組みが実を結びまして、聞きなれない言葉でありました駅前保育が、今では都民生活に根をおろしたものとなったように、この十年間での東京都の福祉は大きく前進しております。
 都は昭和四十年代、美濃部都政時代に創設されたいわゆる経済給付的事業など、見直すべき事業を見直す一方で、都民福祉を一歩も後退させることなく、積極果敢な施策展開を行ってまいりました。
 引き続きこうした取り組みを着実に進め、東京の福祉システムを全国に向けて発信していくべきだと考えますが、今後のさらなる取り組みを進める知事の決意をお伺いいたします。

○石原知事 都は、だれもが地域の中でさまざまなサービスを利用しながら自立して生活できる、ごく当たり前の世界をこの東京で実現するため、見直すべき事業は見直し、真に必要な施策には財源を集中投入してまいりました。
 大都市東京の特性を生かしたグループホームに対する独自の補助制度や認証保育所の創設など、国に先駆けた施策を展開し、こうした都の取り組みは国を動かし始めていると思います。
 改めてこれからの東京を展望するときに、世界のだれもが経験したことのない猛烈なスピードで超高齢社会に突入しつつあることはもう避けようのない事実でありまして、老いてもなお人生をより充実させたいという都民の思いにこたえるためには、福祉と医療を充実させ、確固たる安心を築いていく必要がございます。
 また、次代を担う子どもや子育てに取り組む親がこれからの人生を思い描き、将来に明るい希望を抱くことができる社会を築いていかなくてはならないと思います。
 今後とも、大都市東京の持つポテンシャルを存分に発揮しまして、この国の羅針盤となるような取り組みを積み重ね、お年寄りも子どもも、だれもが生き生き暮らせる東京を実現していきたいと思っております。

○山田委員 この十年を振り返りますと、都議会におきましてもさまざまな議論を重ね、財源の集中的な投入を果断に実行してきたからこそ、サービス提供基盤の整備を進めることができたのであります。
 今また経済環境は非常に厳しいものになっておりますが、これにひるむことなく、来るべき超高齢社会への備えを着実に進めていただきたいと思います。
 次に、都立病院改革についてお伺いをいたします。
 今定例会に提案されております都立病院条例の一部改正について、厚生委員会におきまして、共産党、そして民主党から修正案が出されました。この内容は、小児総合医療センターの開設は認めるが、現行の小児三病院も存続せよという内容となっておりますが、このようなことが本当に可能なのか、また、三病院を存続させた場合、今後、開設準備作業に支障を来すことがないのか、お伺いをいたします。

○中井病院経営本部長 全国的な医師不足の中にあって、とりわけ産科医、小児科医の不足は深刻な状況にあります。小児総合医療センターにおいては、周産期医療や小児救急医療など、現行の小児三病院では行うことができなかった、より高度で専門的な医療を提供していくため、小児三病院の現有職員を小児総合医療センターに配転した上で、さらに相当数の医療人材を確保する必要があります。
 現在さまざまな方策を駆使し、病院経営本部と各都立病院の総力を挙げて人材確保に努めておりますが、この必要採用数を満たすことは容易なことではありません。
 こうした状況にある中で、仮に現在の小児三病院を存続させた上で小児総合医療センターを開設するとなると、現在予定している採用に加えて、さらに小児三病院の現有職員数に当たる七百人程度の人材の確保を別途行う必要がございます。これは現下の深刻な医療人材不足の中では、とても実現し得るものではございません。
 また、今後、医療安全面から移転前後の患者受け入れ規模の適正化などを図る必要がありますが、こうしたことについて、患者さんや医療機関を初め、地域の関係者に説明し、理解、協力を得ていく取り組みを新年度早々から始めなければならない状況にございます。
 仮に今定例会で小児三病院の移転統合に関する議決をいただけなければ、こうした取り組みが先延ばしされ、平成二十二年三月の小児総合医療センターの開設に大きな支障を来すことになります。

○山田委員 今のご説明をお聞きいたしまして、修正案が全くの空理空論であるということがはっきりしたと思います。
 修正案及び意見表明からうかがえることは、共産党さんは小児総合医療センターには賛意を表しているわけでありますから、一歩前進ということで、条例案には賛成したらいいのではないかと思うわけでございます。
 また一方、民主党さんは、空理空論を振りかざしただけで、修正案の別表からうかがえることではありますけれども、今まで賛成してきた都立病院改革そのものを否定したものと受けとめざるを得ません。手のひらを返したような態度は、全く理解できるものではございません。
 我が党は、責任政党の立場として、今回の移転統合の取り組みを支持するものであります。その上で、移転後の地元自治体との間で取りまとめた条件整備や地域の理解促進など、さらなる取り組みを進めるべきと考えますが、所見をお伺いいたします。

○中井病院経営本部長 清瀬市及び八王子市と東京都の間でそれぞれ取りまとめた小児病院移転に当たっての条件整備につきましては、この間、地元市、医師会、医療機関等と調整、連携をとりながら、着実に実施に移してまいりました。
 移転統合まであと一年でありますが、さらなる合意事項の実現に向け、福祉保健局等と一体となって、一層精力的に取り組みを進め、都としての責任を果たしてまいります。
 また、今回の移転統合につきましては、小児病院の地元地域への周知がとりわけ重要でありますので、なぜ移転統合が必要なのか、移転後の地域の医療がどのようになるのかといったことをわかりやすく説明したリーフレットの作成や広報紙への掲載などを行い、住民や医療関係者に対して正確に事実を伝え、不安の解消に努めてまいります。

○山田委員 ところで、先週の十九日、群馬県渋川市の有料老人ホームの火災で、十名の高齢者が亡くなられたという大変痛ましい事故がありました。亡くなられた方々の中には、墨田区から福祉事務所を経由して、また三鷹市から個人で入所されたという七名の方が含まれていたということでございます。心からご冥福をお祈りいたしたいと思います。
 この施設では、亡くなられた方のほかにも、十一名の方が都内からの利用者であったそうであります。そして、その多くの方が福祉事務所による紹介を受けていたとのことでありますが、今回の事故を通しまして、福祉事務所が果たしてどこまでこの施設の実態を把握していたのか、問わざるを得ません。
 そこでお伺いいたしますが、都はこうした福祉事務所の状況を承知していたのでしょうか。また、福祉事務所に対してどのように指導していたのか、その点についてお伺いいたしたいと思います。

○安藤福祉保健局長 今回、まことに痛ましい事故が起きたことについて、亡くなられました方々のご冥福を心よりお祈り申し上げます。
 被保護者の方々を適切に援助していくためには、入居する有料老人ホーム等の施設の実態を福祉事務所が十分に把握をしておく必要がございます。
 昨年、都では、有料老人ホームやその類似施設への被保護者の入居者数等に関する調査を実施いたしました。また、本年一月、区市に対し、身寄りのない高齢者の方々に未届けの有料老人ホームの利用を勧めるのは好ましくないことや、やむを得ず利用を勧める場合は、必ず事前に現地確認すること、入所中の生活実態を把握することなど、適切な援助がなされるよう通知をいたしました。
 さらに、本年二月から、届け出、未届けを問わず、被保護者の方々が利用している施設の実態などについて、福祉事務所を通じて調査を進めております。
 再びこうした事故に都民の方が巻き込まれることのないよう、本年一月の通知について、再度その旨の周知を図るとともに、現在進めております施設の実態調査の結果も踏まえ、区市町村等に対する指導を一層徹底してまいります。

○山田委員 都といたしましても、区市の実態を十分把握した上で、福祉事務所に対し指導助言を行うことにより、都外施設において適切な援助がなされるように期待をしたいと思います。
 また、都自身が果たさなくてはならない責任は、こうした事故が起こらないよう、都内にある有料老人ホームに対し、適正な運営に向けた指導監督をしっかりと行うことであります。
 都は平成十九年四月に、都内に未届けの有料老人ホームが八十施設あると公表いたしましたが、その後の指導監督の状況と今後の具体的な対応策について、お伺いをいたします。

○安藤福祉保健局長 都は、都内の未届け有料老人ホームにつきまして、一昨年一斉調査を実施するとともに、引き続き区市町村と連携しながら、その実態の把握に努め、老人福祉法に基づいた届け出を行うよう指導を行っております。
 今回の群馬県の未届け有料老人ホームにおける火災事故を踏まえ、改めて都内の未届け施設に対して、防火等の安全管理体制の調査を緊急に実施いたします。その結果を踏まえ、施設の安全管理体制の確保策について、早急に検討してまいります。

○山田委員 緊急調査の結果次第では、さらに実効性のある取り組みを行い、利用者の安全確保に万全を期すよう、強く要望をいたします。
 次に、ウイルス肝炎対策についてお伺いをいたします。
 我が党の提案を受け、都は平成十九年十月から、国に先駆けてウイルス肝炎の医療費助成制度を開始し、昨年四月には国も事業を開始することになりました。これは、都が率先して実施してきたからこそ実現できたものであります。
 さて、肝炎に対する治療方法は日々進歩を続けており、一年の治療期間では十分な効果が上がらなかった方でも、治療期間を延長することにより、完全に肝炎ウイルスを除去できるケースがあることが明らかになってまいりました。
 国におきましても、医療費助成期間の延長を行う方針を示したと聞いておりますが、どのような方が助成期間延長の対象となるのか、また都はどのように対応するのか、お伺いをいたします。

○安藤福祉保健局長 ウイルス肝炎のインターフェロンによる治療期間は通常一年以内でありますが、効果があらわれるのに時間がかかる一部の患者に対しては、治療を半年間延長することにより、治癒率が高くなることが明らかとなりました。
 こうしたことを踏まえ、国は本年四月から、肝炎ウイルスのタイプなど一定の条件を満たし、医師が必要と認める場合には、医療費の助成期間を現行の一年から一年半まで延長できるよう、制度を変更することといたしました。
 都としても、助成期間の延長を予定しております。

○山田委員 ウイルス肝炎はインターフェロン治療でウイルスを除去することが重要で、治療期間を半年延ばすことで完全に治る方がふえるのは喜ばしいことであります。必要な方が治療を受けやすくなるよう、助成期間の延長を速やかに実施していただきたいと思います。
 その際注意すべきことは、先ほど申し上げたとおり、都は国に先駆けて事業を開始したため、十九年度中に助成を開始した方が既に一年間の助成期間が終わってしまっておりますけれども、中には自費で治療を継続した方もおられると思います。
 都ではこの四月から、助成期間を延長する予定とのことでございますが、都制度を利用していち早く治療を受けた方が、このたびの制度改正の恩恵を受けられないのでは何とも理不尽であります。既に助成期間が終了している方もさかのぼって助成期間の延長を認めるべきと考えますが、所見をお伺いいたします。

○安藤福祉保健局長 お話のとおり、都は国に先駆けまして、平成十九年十月から、ウイルス肝炎インターフェロン治療の医療費助成制度を開始しており、十九年度中に治療を始めた方は既に一年間の助成期間が終了しております。こうした方々についても、ご指摘の趣旨を踏まえ、適切に対処していく予定であります。

○山田委員 ぜひ延長を認める方向で進めていただきたいと思います。今後とも、医療費助成を初めとしたウイルス肝炎対策を積極的に進めていただくことを要望いたしたいと思います。
 次に、冒頭、オリンピック・パラリンピックについてただしましたが、招致の基礎ともなりますスポーツ振興施策についてお伺いをいたします。
 これまでに国体と全国障害者スポーツ大会を開催している各県では、県民の心を一つにするためのシンボルとして、例えば昨年の大分県では「チャレンジおおいた国体」というように大会の愛称を定め、マスコットキャラクターなども使って、大会開催機運の盛り上げを図ったとのことであります。
 都においても、このように目に見える形での取り組みを進めるべきではないかと思いますが、所見をお伺いいたします。

○中田総務局長 国体を開催している各県では、親しみやすい大会の愛称やスローガン、広報活動に重要な役割を果たしますマスコットキャラクターなどを定め、大会の周知や盛り上げを図っております。
 東京国体は第十三回全国障害者スポーツ大会と同時に開催し、東京ならではの国体となるよう、鋭意準備を進めております。ご指摘の趣旨を踏まえ、今後、両大会の周知を図るため、愛称やマスコットキャラクターの制定につきましては、開催機運を醸成することにも十分配慮しながら、検討を進めてまいります。

○山田委員 東京国体が開催される多摩地域には四百万人を超える都民が暮らしておりますが、ほとんどの体育館は地域住民の日常的なスポーツ活動の場でありまして、大規模な大会が開催される体育館は一つもありません。地域振興の起爆剤となるような新たな施設展開を図ることが重要と考えます。
 折しもかつての武蔵野の森総合スポーツ施設建設計画を見直し、味の素スタジアムに隣接した西側都有地に新たな総合スポーツ施設を整備する検討が始まったと聞いておりますが、現在検討している新たなスポーツ施設の内容と地元市との調整状況、そして、今後の施設整備のスケジュールについてお伺いをいたします。

○秋山生活文化スポーツ局長 都は、昨年五月の地元三市との合意を踏まえ、武蔵野の森総合スポーツ施設の基本構想について、都民ニーズ等の調査や庁内関係局との検討を行うとともに、地元市との協議の場を設置し、意見交換を重ねてまいりました。
 現時点で検討している施設は、東京国体の開催に当たって必要不可欠な補助競技場のほか、メーンアリーナ、サブアリーナ、屋内プールの四施設であり、これは本年二月に地元市にもお示しをしているところでございます。
 現在、地元市では、都が示した施設等について検討しておりまして、都はその検討結果も踏まえ、四月には施設整備の考え方や施設の概要、スケジュール等を盛り込んだ基本構想を取りまとめる予定でございます。
 来年度はこの基本構想を踏まえ、東京国体に必要な補助競技場の設計に着手するとともに、他の施設につきましては、施設の具体的な内容や規模、整備手法などを盛り込んだ基本計画を策定してまいります。
 東京全体のスポーツムーブメントの高揚を図り、多摩振興の起爆剤とするため、今後も武蔵野の森総合スポーツ施設の整備を着実に推進してまいります。

○山田委員 長らく待たされました多摩四百万都民の期待は高まっております。この施設が多摩のスポーツや文化のシンボルとなることを願っております。
 この新たな施設のほかにも、東京国体や二〇一六年東京オリンピック・パラリンピックでは、多くの都立スポーツ施設が予定会場となっており、こうした施設の適切な維持管理が極めて重要であると考えます。
 しかし、昨年の第四回定例会で我が党の三宅議員が質問いたしましたが、前回の東京オリンピックレガシーを持つ駒沢オリンピック公園総合運動場は、老朽化が著しく進んでおります。また、東京体育館などのスポーツ施設も、建てかえから既に十五年以上を経過し、老朽化が目立っております。
 そこで、今後、東京国体やオリンピック・パラリンピック招致を見据え、スポーツ都市東京にふさわしい施設として計画的な改修を進めていくべきと考えますが、見解をお伺いいたします。

○秋山生活文化スポーツ局長 都立スポーツ施設につきましては、これまでも機能維持のための補修や改築を行ってきたところでございます。
 しかしながら、ご指摘のとおり、各施設は老朽化が進み、利用者の皆様の声にも十分対応し切れていないなど、抜本的な改善が必要となっております。
 そこで、今年度中に当局が所管する四つのスポーツ施設の劣化度や利用団体等からの施設改善の意向等について調査をし、各施設の改修等が必要な箇所を明らかにする予定でございます。
 この内容を踏まえ、ユニバーサルデザイン等、時代のニーズに即した機能を備えた施設を目指し、昨年十二月の第四回定例会でお話のございました駒沢オリンピック公園総合運動場につきましては、来年度大規模改修のための基本計画を策定し、東京体育館等の三施設につきましては、順次改修に向けた設計を行ってまいります。
 今後、より一層、スポーツ都市東京にふさわしい施設となるよう計画的な改修、改築を進めてまいります。

○山田委員 都財政を取り巻く環境も厳しさを増すことが予想される状況ですが、維持更新の必要な都有施設については、必要な時期に着実に維持更新を進めていかなければなりません。
 先般、都では、主要施設十カ年維持更新計画を作成いたしました。その中の第一期対象施設に駒沢オリンピック公園も入っており、東京都が施行し、まさにオリンピックレガシーに対する都の姿勢を都民に示す絶好の機会となります。
 この計画を推進するためには、中長期的な観点から財源の確保が必要であります。主要施設十カ年維持更新計画を着実に進めていくための財源の考え方について、見解をお伺いいたします。

○村山財務局長 都財政をめぐる環境が今後一層厳しさを増すことが想定されることから、主要施設十カ年維持更新計画を着実に進めていくためには、財源面においてもさまざまな工夫が必要であると考えております。
 都有施設は都民生活にかかわるさまざまな行政サービスを提供するための拠点でございまして、その維持更新に当たりましては、施設が都民にとって果たすべき機能を十分に踏まえ、安定的な財源を確保し、全体として事業を進めていく必要がございます。
 そのため、社会資本等整備基金や都債などの財源を有効に活用しながら、世代間負担のバランスあるいは財政負担の平準化を図りながら、適切かつ着実に維持更新に取り組んでまいります。

○山田委員 以上、私は、平成二十一年度予算案を検証し、来年度の各局主要事業を精査してまいりました。
 厳しい経済状況の中でも、「十年後の東京」計画の実現に向け、着実に歩みを進め、二〇一六年東京オリンピック・パラリンピックを確実に引き寄せる積極的な取り組みを評価いたしたいと思います。
 ところで、私は、先日、NHKテレビ「沸騰都市 TOKYOモンスター」という番組を見ました。現在、世界で最も効率的な都市と評価されている東京の今と未来をドキュメンタリーとアニメで描いた番組でありました。
 日本の中枢であります東京が、環境に配慮しつつも、熾烈な国際競争を勝ち抜くために、より一層の効率性を求め、日々進化している現状をとらえているものでありました。
 番組は、最後に、国際線のパイロットは、世界で最も美しい夜景は、ニューヨークでも香港でもない、東京を挙げるといいますというナレーションで終わりました。この番組を見て、東京が発する輝きや躍動感というものをひしひしと感じた次第でございます。
 同時に、我が党が知事とともに培ってきた十年間の成果を目に見える形で実感することができたのであります。
 この十年間、我々はさまざまな政策の苗を植え、数多くの果実を都政にもたらしてまいりました。ディーゼル車規制から始めた前例を見ない環境施策は、不正軽油撲滅、エコツーリズム導入、緑の東京十年プロジェクト、カーボンマイナス東京十年プロジェクトへと次々と進化をし、今や、日本国内はもとより、世界的にも東京は紛れもない環境先進都市となりつつあります。
 また、石原都政の初期から力を入れた中小企業の振興、新規創業支援のための諸施策や観光振興対策は、バブル崩壊後の苦境にあえいでいます東京の産業に活力と希望を与え続けてまいりました。
 東京しごとセンターの創設や生活安定化総合対策事業への着手は、まるで今日の経済雇用危機を読み切っていたかのような先手の打ち方であります。
 さらに、破綻寸前の財政を内部努力と徹底した施策の見直しで立て直すだけでなく、外形標準課税の導入や財源移譲論を幅広く展開することによって、現実的な地方分権の進め方とは何かを示してまいりました。
 東京は、十年前と比べて格段によくなってきております。もちろん、個々の政策にはさらに磨きをかけ、よりよいものにすべきものもありましょうが、我々は、この十年間の都政をもっと誇ってよいと思うものであります。
 知事は、常々、ワンディケードという言葉をお使いになりますが、この十年間の都政の評価と、この十年間を次なる十年へとつなげていくに当たっての意気込みを知事にお伺いいたしたいと思います。
 なお、その後、関連質疑が高木議員からありますので、よろしくお願いいたします。

○石原知事 「二十四の瞳」という映画でしたかな、あの中に、十年一昔という言葉がたびたび出てきましたけれども、十年というのは本当にすぐたってしまうものでありまして、私も就任してから十年たったわけですけれども、十年前、東京と日本はバブルの崩壊後の苦境にあえいでおりまして、さらには、これまで日本の発展を支えてきていた既存の社会経済システムの劣化に直面しておりました。
 知事就任以来、そうした時代を覆う閉塞感を破るために、日本のダイナモである東京が再起の基点となるべく都なりの挑戦を続けてまいりました。
 これも議会の賛同を得てのことでありますけれども、明治の太政官制度以来続いている、コスト意識の欠如、現実感覚の欠如という、官僚の支配というものを、この構造を根底から変える起爆剤たらんと思って、ご指摘の外形標準を初めて行いましたし、また単年度主義の非常に古臭い硬直した会計制度も、発生主義の複合的なものに変えました。
 それから、都市の構造からいっても、国の規格ではとてもつくり得ない、認可保育所のかわりに、JRなどの協力を見まして、駅前の、いわゆる駅前保育所、認証保育所もつくってまいりましたが、いずれにしろ、これは都議会の皆さんの協力あってのことでありまして、そういう点では、一部の限られた政党は別でありますけれども、ほとんどの政党が協力して、新しい行政の展開というのをしてきたと思います。
 しかし、この過程で痛感しましたのは、とにかく国の官僚が構えているもろもろの規範というのは全部古いですな。全部現実に通じないということを痛感しました。これは国会にいるときは余りわからなかったんですけれども、東京を預かるようになって痛感いたしました。
 しかし、現実は、地球の温暖化や、世界全体の経済リセッションあるいは新型インフルエンザなどの極めて深刻な問題が山積しておりまして、こういうときこそ、今までにも増して、自分たちの未来は自分で開くんだ、そういう気概で、現実性のある具体的な施策というものを積み重ねていかなければならないと思います。
 さらに、これから先十年のために私たちは思い切った変革をしていく必要があるんじゃないかと思います。
 アメリカの新大統領も、変化、変化、変革といっていますけれども、アメリカがどういうふうに変わっていくかわかりませんが、いずれにしろ、私たちは、自分のこの日本の国、そのダイナモである東京こそ、私たちの責任で変えていかなくちゃならないと思っております。
 いずれにしろ、「十年後の東京」計画なるものを羅針盤として、東京のはかり知れない集中、集積の中での可能性というものを引き出して、豊かな水と緑にあふれた、非常に豊穣な、潤沢な都市というものをつくっていきたいと思っております。
 また、若者たちのひとみの輝きを取り戻し、日本の将来を担う彼らの礎となる心の財産を贈るためにも、二〇一六年の東京オリンピック・パラリンピックを何としても招致したいと思っております。
 いずれにしろ、みんなで力を出し合って、知恵を出し合って、現実性のある施策をとにかく一つ一つ積み上げていくことで、子どもや孫たちに対する責任も果たせるんじゃないかと思っております。

服部委員長 計測をとめてください。
 ただいま、高木けい委員より関連質疑の申し出がありました。
 本件は、予算特別委員会実施要領第七の規定に基づき、質疑委員の持ち時間の範囲内で認めることになっております。
 高木けい委員の関連質疑を認めます。
 なお、高木けい委員に申し上げます。発言は、山田委員の質疑の持ち時間の範囲内となっておりますので、あらかじめご了承願います。
 計測を始めてください。

○高木委員 予算特別委員会総括質疑の関連質疑を行わせていただきます。
 今、速報が入りまして、野球のWBC、延長十回の末、五対三で日本が勝ったということでございました。最後は、この大会が始まって絶不調だったイチローの、さよならヒットなのかな、二点タイムリーヒットで五対三でWBC二連覇をした。日本として、また私も日本国民の一人として本当にうれしいなと思います。時間があれば知事の所見を伺いたいところでございますが、時間がありませんので、私の質問は、そういったこととは全く正反対の、ちょっと次元の違うというか、残念なことについて質疑をさせていただきたいと思います。
 石神井川への汚水の流出事故についてお伺いをしたいと思います。
 私は、北区選出の都議会議員でありますから、この石神井川の汚水流出事故の王子がまさに私の地元であり、私も王子一丁目の二十九番地というところに住んでおりますので、まさに石神井川のふもとに実は私も住まっております。
 不名誉な形で有名になってしまった王子でございますが、知事もご存じだと思いますけれども、王子の駅前には飛鳥山という非常に有名な、徳川吉宗が千本桜といって桜を植えた桜の名所がございますし、また、安藤広重が滝野川七滝という絵をかきまして、もみじの滝野川といわれまして、もみじの滝野川、桜の飛鳥山といわれるところが、実は北区王子でございます。
 まさに、この石神井川の汚水流出事故は、その北区王子には全くふさわしくない、そういう大変不名誉な事故で有名になってしまったというふうに私は思うわけであります。
 ご案内のように、先週、このJR王子駅のトイレの排水が石神井川に直接垂れ流されていると報道をされたわけであります。
 まず、JRでは、都の指導に基づいて、既にトイレを使用禁止にし、今後排水を流さないよう切りかえ工事を行うということであります。
 一方、下水道局は、この事態について二年近くも前から掌握していたことが先日明らかになりました。それにもかかわらず対応を怠り、放置してきたのは、地元住民の都政に対する期待を大きく裏切ったことになり、まことに許しがたい行為であります。
 この事故を発生させた責任はどこにあるのか、まず責任の所在をはっきりさせていただきたいと思います。

○今里下水道局長 まず、このような事態を招きましたことにつきまして、深くおわび申し上げます。
 JR王子駅のトイレ排水が約四十年にわたり石神井川に流れ込んでいたことは、JRによります下水道管への誤った接続が原因ではございますが、平成十九年六月に事実を把握しておきながら、二年近くにわたりましてこの事態を継続させてきた責任はひとえに下水道局にございます。
 JRに排水の切りかえを要請いたしましたが、下水道局といたしましても、区内の雨水はけ口につきまして、こうした不適切な接続がないか、調査を行います。
 さらに、今回のような、一度問題を把握しておきながら対応していない事例がほかにないか、遅まきながら総点検を実施いたします。
 あわせまして、研修実施などによりまして職員の意識改革を行いまして、徹底した再発防止に取り組んでまいります。

○高木委員 この下水が直接流れたところは石神井川であります。この石神井川の河川を管理をする建設局は、今回この事態を受けてどう対応し、また今後どうしようとしているのか、お伺いします。

○道家建設局長 今回の事態を受けまして、河川管理者として直ちに下水道局に、石神井川への不適切な汚水流入について、遺憾の意を表明し、再発防止を求め、あわせて他の河川につきましても不適切な放流がないかを調査し、報告するよう指示したところでございます。
 区部の中小河川につきましては、大規模改修などは都が行い、日常の維持管理は区が行っております。
 お話の石神井川のJR王子駅から溝田橋下流の飛鳥緑地までの区間につきましては、地元から悪臭対策の強い要望を受けておりまして、その対策として、昨年十二月から都区連携のもとで、堆積した土砂のしゅんせつを実施しております。この三月まで実施をしております。
 引き続き、平成二十一年度は事後調査を行い、必要な場合には地元区と連携し、対策を実施してまいります。

○高木委員 私は、組織も人が運営をしているわけですから、ミスだとか間違いというのは当然あると思うんですね。さかのぼって原因を追及することや、その責任を追及することは大事だと思いますが、しかし、一番大事なことは、この事件を受けてどう対応するかということだと思うんです。
 人も組織もそうですが、そのことがきちっとできるかできないかによって、信頼感や、あるいはこれからの関係というものが決まってくるんだと思いますから、担当の両局におかれましては、これからのことを都民が見ているということをよく肝に銘じていただいて、これからの質問を聞いていただきたいと思います。
 今回のような事故は論外としても、そもそも近隣の住民から悪臭の苦情が頻繁に寄せられていたんです。私も近くに住んでいますから、夏は窓をあけられないぐらい臭いという報告だってあるんですよ。私もそう思っていました。
 ですから、この地域の石神井川の水質悪化というのは、実は汚水と雨水を一緒にして流す合流式下水道からの雨天時の放流も原因になっているのではないかというふうに私は考えておりました。
 つまり、特に、今回事故のあった石神井川下流域全体の水質改善に向けた抜本的な対策を行っていかなければいけない。そのためには、合流式下水道の改善対策が重要だと思います。
 下水道局の対応について、この合流式下水道をどうしていくのかということについてお答えをいただきたいと思います。

○今里下水道局長 今回の流出事故がございましたはけ口につきましては、早急な対応を行うために、降雨初期の下水を一時的に貯留いたしまして、水再生センターへ送って処理する目的の貯留池を整備いたします。そのため、用地の確保につきまして、地元区などに協力を仰ぎながら、来年度から調査設計を開始いたします。
 王子駅から下流側の石神井川の合流式下水道改善に向けましては、放流先を隅田川へ変更するため、王子西一号幹線、堀船一号幹線や王子第二ポンプ所を整備いたします。
 あわせまして、降雨初期の下水を一時的にためる貯留池を王子第二ポンプ所に整備し、貯留した下水につきましては、水再生センターへ送水して処理いたします。
 今回の事故を受けまして、王子西一号幹線は平成二十五年度に、堀船一号幹線は平成二十六年度の完成を目指します。
 ポンプ所の整備は、通常完成まで長い期間を要しますが、王子第二ポンプ所につきましては、工期短縮に向け、工法の再検討を実施し、可能な限り早期の完成を目指します。
 さらに、時間がかかりますことから、その間の対策といたしまして、貯留池や貯留管など他の対策を講じることができるかどうかにつきましても検討し、水質改善に向け全力で取り組んでまいります。

○高木委員 私は、今の答弁には納得をいたしません。つまり、結局はポンプ所を整備するということが究極的には大事なんですけれども、今のご答弁では、下水道局は、今まで考えていたこと、つまり既定路線を一歩も踏み出してないんですよ。もっと早くこのポンプ所を整備するとか、きちんとした対策を出すということが大事なんじゃないですか。
 早期にとか、できるだけ早くというのは、下水道局がこういう事故を起こす前だったら住民は信用したかもしれない。しかし、今の時点では、下水道局と住民との関係はもう信頼関係が失われているんですよ。だからこそきちっとした対策を出すべきだと私はずっといい続けてきた。しかし、今回の答弁でもそれがなかった。私は非常に不満です。
 ですから、先ほど来石原都政に対する評価というのは、山田委員が指摘をしたことは間違っていないし、まさに都議会自民党と石原知事が車の両輪として、あるいは二元代表制のそれぞれの立場で一生懸命努力をしてきた。そのことに対しては、高く私たちは評価をしている。しかし、今回の件については、私は全く評価ができないと思っています。
 少なくとも東京オリンピックが二〇一六年に行われるとすれば、私は、このことに対してその二〇一六年までには結論を出す、そのぐらいの決意がなかったらだめだと思いますが、知事の答弁をお願いします。

○石原知事 これはまさに言語道断の問題でありまして、よく下水が詰まるといいますが、これは情報が詰まっているんです。しかも、四十年前にJRがやっちゃいけないことをやった。そして、その被害が出ているのに、それを掌握すべきはだれかといったら、これは、私は河川を担当している建設局だと思いますよ。建設局は、この問題について全然関心もなかったのかあったのか、恐らくいろいろ苦情があったんでしょうけど、それをどこがどういうふうに取り次いだか知らぬけど、この問題についてノンシャランでいた。
 しかも、二年前にこの原因がやっとわかった。下水道局長は気の毒だと思うんだ、ある意味でね。二年前にこれがわかったときに、それを掌握している最高の責任者の責任は、私は重いと思いますよ。その情報が二年もたった今ごろになって伝わってきて、都民のごうごうたる非難が起こってきたんでしょうけれども、私は、この縦割り行政というものの悪さが本当に典型に出てきている事例だと思います。この対処は、かなり時間も金もかかるのかもしれませんけど、とにかく果断にやりませんとね。
 一方では、子どもたちまで動員して、緑化だ、環境を要するに直そう云々やっているのに、大気の汚染も、業者を泣かせて、とにかくここまで来ました。そういう努力をしているのに、肝心の川がとにかくヘドロだらけで、垂れ流しになっていると。四十年も知らずに来た。これは下水道局の問題じゃなしに、私は建設局の責任だと思いますな。こういったものが全然表に出てこず、二年前にやっと原因が究明されて、しかもその情報が後任者に伝わってこないで、このまま放置されたというのは本当にシェームで、これは本当に縦割り行政の--これ、民間だったら首が飛びますよ、二年前の責任者というのは。
 ですから、そんなことを今、声を大きくしていっても仕方ない。自分につば吐くみたいなことになりますからいいませんけれども、こういうものをやっぱり範として、私たちは局対局をまたいで、行政ってもうちょっと緻密なものにして、複合的にしていかないと、こういう事例ってこれからも事欠かないと思います。大事な大事な反省の材料になりました。できるだけ早く対処いたします。

○服部委員長 山田忠昭委員及び高木けい委員の発言は終わりました。(拍手)
 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後三時十八分休憩

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