予算特別委員会速記録第四号

○服部委員長 串田克巳委員の発言を許します。

○串田委員 私からはまず、高尾山に関連して幾つか伺います。
 東京には、秩父多摩甲斐国立公園、富士箱根伊豆国立公園、小笠原国立公園、明治の森高尾国定公園など、自然公園があります。その面積は東京都の面積の三分の一以上を占めています。
 中でも高尾山は、都心から一時間足らずのところに位置するという条件のよさに加え、最近ではフランスの旅行ガイドブック、ミシュランで高い評価を受けたことにより、東京のみならず、世界に冠たる観光スポットともなっています。
 この高尾山を、後世に引き継げるよう適切に管理し、訪れる人がいつでも高尾山の自然を満喫できるようにしていくことが大切だと考えます。
 そこでまず、みずからの発案でレンジャーを発足させるなど、自然公園の保全に力を入れてきた知事に、高尾山の自然について認識をお伺いいたします。
   〔委員長退席、三宅副委員長着席〕

○石原知事 私、時々、特にEUの大使たちをヘリコプターを使っての東京視察のピクニックというんでしょうか、招待するんですが、彼らがひとしく感心していることは、東京というものの大きさだけではなくて、自然の変化の激しさ、美しさというものにみんな感心しております。
 中でも、とにかくこの高尾山は、ミシュランが観光ガイドの中で一番人気の場所として挙げているように、本当に都心からわずかの距離にあれだけの高い山があるというのは世界にも例がないと思いますけれども、そういう点で、数多くの植物もありますし、だれもが身近に自然観察ができる山でありまして、東京にとっては非常に貴重な財産であると認識しております。
 このような特筆すべき魅力を有するがゆえに、都民ならず外国人にも人気があると思っていますが、いずれにしろ、この高尾山は、東京の魅力の一つとして位置づけて、将来にわたり適正な保護と利用、活用を図っていきたいと思います。

○串田委員 知事の答弁のとおり、高尾山は、東京にとって貴重な魅力の一つです。多くの人が高尾山を通じて豊かな自然に身近に触れ合うことができることは、環境先進都市東京をアピールする上でも意義深いことですので、ぜひよろしくお願いします。
 さて、大勢の人が高尾山を訪れることは、地元にとっては地域振興にもつながり、喜ばしいことですが、一方で、登山ルートの一部では、周りの樹木の根っこが露出しているような箇所を見かけます。
 また、山頂付近では人があふれ、ごった返している状況となっていますが、都としてどのように取り組もうと考えているのか、所見を伺います。

○有留環境局長 高尾山において自然の保護を図りながら、快適に利用していただくためには、荒れた登山ルートの回復や利用の分散などの措置を講じていくことが重要でございます。
 そこで、利用頻度の高い登山ルートで、土がえぐられ、土砂が流出することにより、植生の荒廃が見られる箇所の修復を行うとともに、それ以外の登山ルートについて、案内図などを活用して、わかりやすく周知を行い、利用促進を図ってまいります。
 また、山頂付近の混雑緩和を図るため、山頂から歩いて三十分ぐらいのところに位置します眺望のよい一丁平におきまして、訪れた方々が憩えるような園地の整備を行ってまいります。

○串田委員 山頂付近は眺望もすばらしく、昼食をとる場所としても、多くの人が利用されています。高尾山の魅力はここに限ったものではありません。登山ルートによってはそこに生えている木々の種類が異なり、山頂からちょっと足を延ばしただけで違った景色が楽しめます。
 このような魅力を引き出すためにも、今答弁いただいたように、自然の保護と利活用のバランスを図って、ぜひ取り組みを進めていただきたいと思います。
 ところで、私も時々、山頂まで足を運んでいますが、トイレの前に行列ができているといった光景を見かけます。そもそも高尾山全体でトイレの配置はどのような状況になっているのか、伺います。

○有留環境局長 自然公園のトイレは、景観に配慮しながら、おおむね歩いて一時間から二時間ぐらいの距離ごとに設置しております。
 高尾山全体では七カ所に配置しており、このうち山頂付近には、大見晴園地及び高尾ビジターセンター内にトイレがございます。
 なお、紅葉の時期には多くの方が訪れ、山頂付近での利用が集中することから、平成十九年から、地元観光協会が中心となりまして、都も協力して、仮設で対応しております。

○串田委員 高尾山を訪れる人の数は年間を通して多く、それに伴い、紅葉シーズンに限らず、山頂付近でのトイレの不足が顕著になってきています。
 自然公園内ということでいろいろ制約もあるとは思いますが、山頂付近でのこうした状況を踏まえ、仮設ではなく常設のトイレをふやすべきと考えますが、見解を伺います。

○有留環境局長 ご指摘の点も重要な課題の一つであると認識しております。
 まずは、地元観光協会や商店会、電鉄会社などと連携しながら、既存のトイレが分散して利用されるよう、必要な情報の提供に努めてまいります。
 また、山頂付近のトイレについては、地形的に浄化槽の設置スペースを確保できないことから、現行方式での増設は困難でございますが、将来下水道が山頂付近まで延長されれば、増設することは可能となります。
 このため、今後、地元の下水道事業者である八王子市と協議を行い、ご提案の常設トイレの増設について検討してまいります。

○串田委員 当然、地元の八王子市の取り組みが前提となりますが、八王子市とも連携をしながら、課題を一つ一つ解きほぐし、解決に向けて着実に進めていっていただきたいと思います。
 さて、自然を満喫してもらうという点では、ビジターセンターが果たす役割も大きいと考えます。山頂にあるビジターセンターでは、高尾山周辺における自然環境情報の発信基地として、登山ルートの見どころや、その生息、生育する動植物に関する情報を入手できるほか、高尾山の自然教室やガイドウオークに参加できるなど、自然環境を楽しみながら学べるようになっています。そういうこともあって、最近では年間二十万人を超える利用があるとも聞いています。
 私も、これまで何度も利用したことがありますが、このビジターセンターは、建築後四半世紀以上も経過し、老朽化も進み、また手狭であることから、団体利用など多様なニーズに的確にこたえることが難しくなっているのではないでしょうか。将来的には改築ということも検討すべきであり、このことは本日は要望をしておきます。
 続いて、安心して楽しんでもらうための方策について伺います。
 高尾山に限らず、自然公園を利用する際には、事故が起きないように自分で気をつけることは当然のことですが、昨今、観光、ハイキング、登山などさまざまな目的で、老若男女、若い人からお年寄りまで季節を問わず、多摩地域の山々を訪れています。
 こうした状況を踏まえ、都としても必要な安全対策を講じていくべきと考えますが、所見を伺います。

○有留環境局長 自然公園を訪れる方々の安全を確保するため、日常的に歩道等の安全点検を行うとともに、必要に応じ、応急補修や整備工事を行っております。
 また、登山に適さない軽装備であったことが原因でけがをする方もいらっしゃることから、各種イベントによる周知や、都レンジャーによる現場での指導などを通じ、登山マナーに関する意識啓発を図っております。
 加えて、山中の案内板等に管理番号票の設置を進めまして、緊急時には、この番号を通報することにより場所を特定できる位置情報システムを活用し、迅速な対応を可能といたしました。
 今後ともこうした取り組みを徹底し、安全対策を着実に実施してまいります。

○串田委員 安全確保に向けてもさまざまな取り組みがなされていることについてはよくわかりました。特に管理番号票の取り組みは、他の自治体への模範にもなる有効な方策であると思います。現に、昨年の七月には、この管理番号票を活用して、高尾山の山中で敏速な救助が行われたとも聞いています。今後とも高尾山の自然を生かす取り組みを進めていただきたいと思います。
 これまで高尾山における自然保護や利便性の向上について伺ってきましたが、観光振興の観点から一点お聞きいたします。
 高尾山は動植物の宝庫として知られ、変化に富んだ多数の登山ルートもあります。また、ケーブルカーやリフトの整備もされているので、だれもが楽しむことができる山です。春の桜に始まり、初夏の新緑、秋の紅葉と、華やかに彩りが移ろう景色は、年間を通じて訪れる人を楽しませてくれています。ことしも一昨年に引き続き、再びミシュランの緑のガイドにおいて、京都や奈良と並んで、標高五百九十九メートルの山が最高峰の観光地として三つ星を獲得いたしました。
 このように魅力あふれる高尾山についてどのように観光振興に取り組んでいくのか、所見を伺います。

○佐藤産業労働局長 高尾山は、都心から至近な距離にあるにもかかわらず、豊かな自然や充実したハイキングコース、古い歴史を持つ薬王院など、そういうものを擁します、東京を代表する観光地の一つであるというふうに認識をしております。
 都は、高尾山を訪れる旅行者の利便性を図るために、周辺の飲食店の情報も付加をいたしましたハイキングマップの作成など、地元自治体の取り組みを支援してまいりました。
 また、東京の観光の魅力をPRいたしますガイドブック、それからDVDの中で高尾山を紹介いたしまして、また、シティーセールスなどを通じて国内外に広くPRをいたしますとともに、海外の旅行会社を招いて高尾山に案内するというような、旅行商品の開発を促しております。
 さらに、増加が予想される外国人旅行者を温かく迎え入れるために、地元商店街などが取り組みます英会話や接客のための研修を支援しているところでございます。
 今後も引き続き、高尾山の魅力を国内外に積極的に発信をしていきますとともに、旅行者の受け入れ体制の一層の充実を図ってまいります。

○串田委員 ぜひ、引き続きよろしくお願いいたします。
 次に、水道の耐震化について伺います。
 我が国は世界有数の地震国であり、昨年六月にも岩手・宮城内陸地震が発生し、大きなつめ跡が今もなお強く記憶に残っております。この震災により水道も大きな被害を受け、約五千五百世帯で断水が発生し、復旧に十八日間を要しました。この断水により、住民生活への影響はもとより、社会活動も停滞するなど、被災地全体が多大な影響を受けました。
 一方、都の防災会議の被害想定によれば、東京湾北部地震が発生した場合、都全体で約三五%の断水が発生し、水道局では三十日以内の復旧を目指すこととしています。被害想定のような大規模な断水が実際に発生した場合、水道局が精いっぱい努力したとしても、目標日数までの復旧は容易ではないと思います。地震による断水被害をできるだけ抑制し、都民生活や首都東京の安全・安心を確保するためには、予防対策として、水道施設の耐震化への取り組みを着実に実施することが重要と考えます。
 そこで、来年度予算における水道施設の耐震化のための主な取り組みと予算について伺います。

○東岡水道局長 水道施設の耐震化を着実に実施するため、平成二十一年度予算案では、これまでに引き続き、基幹施設や管路の耐震化及び重要施設への供給ルートの耐震化などに取り組むこととしております。
 具体的には、浄水場など基幹施設の耐震強化につきまして、三十六カ所、五十五億円、経年管などの耐震継ぎ手管への取りかえにつきまして、百四十キロメートル、百九十八億円を予定しているほか、重点的な取り組みとして、三次救急医療機関、首都中枢機関など、震災時に重要な役割を担う施設へ供給するルートの耐震強化について、十三キロメートル、十七億円を実施する予定であります。

○串田委員 水道局では、従来から進めている浄水施設や配水管網の耐震化に加えて、重点的な取り組みとして、救急医療機関等への供給ルートの耐震化を進めていることはわかりました。
 医療機関は手術用の機材の洗浄、消毒、人工透析、室温管理などに多くの水を必要とすることから、震災時に医療救護活動の中核を担う医療機関の水の確保は極めて重要であります。
 そこで、三次救急医療機関等の病院への供給ルートの耐震化について、具体的にはどのように取り組んでいるのか伺います。

○東岡水道局長 平成十七年九月に中央防災会議が定めた首都直下地震対策大綱では、水道などのライフラインについて、三次救急医療機関等への供給ルートの重点的な耐震化を図ることとされました。
 当局では、従来より経年管などの耐震継ぎ手管への取りかえを進めてまいりましたが、震災時に医療機関等の果たす役割の重要性を踏まえ、三次救急医療機関等への供給ルートを優先して早期に耐震化を図ることとし、震災時にも管の継ぎ手部が抜け出すことのない、耐震継ぎ手管への取りかえを重点的に進めることとしております。
 三次救急医療機関及び災害拠点病院六十九施設への供給ルートにつきましては平成二十三年度までに、また、二次救急医療機関百七十八施設への供給ルートについては平成二十八年度までに完了する予定であります。

○串田委員 施設の重要度に応じて優先順位をつけるなど、効果的に事業を進めていることはよくわかりました。
 私の地元である八王子市は病院が多摩地区で一番多く、東京医科大学八王子医療センターが三次救急医療機関に、また、東海大学医学部附属八王子病院が災害拠点病院に指定されているほか、十カ所もの二次救急医療機関が立地しています。
 そこで、八王子市における救急医療機関への供給ルートの耐震化事業の進捗状況をお伺いいたします。

○東岡水道局長 八王子市の三次救急医療機関、災害拠点病院である二カ所の大学病院への供給ルートについては、平成二十一年度に耐震化を完了する予定であります。また、そのほかの二次救急医療機関への供給ルートにつきましても積極的に取り組み、平成二十八年度までにはすべて耐震化を完了する予定であります。

○串田委員 医療機関への給水について水道局が一生懸命取り組んでいることがわかり、安心をしました。
 ところで、平常時からの予防対策に加えて、いざ地震が発生した場合には、一刻も早い給水の復旧など応急復旧対策が重要となります。多摩地区では、これまで市町が実施していた水道施設の管理が都に移行しつつありますが、都に業務が移行されても、実際に水道工事を行うのは民間の水道工事業者であります。大地震の際に一日も早い復旧を図るために、現場に近く、水道施設の状況をよく知っている地元の水道工事業者の力が不可欠であります。
 そこで、震災時において多摩地区で民間水道工事業者とのどのような協力体制を構築するのか伺います。

○東岡水道局長 大地震が発生し、一日も早い水道施設の復旧が必要になった場合には、現場に近く、また日ごろから地域の水道施設に精通している地元の水道工事業者が大きな力を発揮してくれるものと期待しております。このため、三多摩管工事協同組合との間で、震災時における給水装置の応急措置の協力に関する協定を締結しているほか、水道施設の維持補修等を行う工事請負単価契約業者との間でも、この契約条項の一つとして震災時の対応への協力について取り決めるなど、地元の水道工事業者との連携協力体制の構築を図っております。

○串田委員 局としても、地元の水道工事業者を重要と考え、連携を図ろうとしていることがよくわかりました。
 多摩地区の水道工事業者は、都へ業務移行に伴い契約の方法が変わり、市外の業者が入ってくることを危惧しています。すべての業務が都に移行される平成二十三年度までは、原則として市町の契約のやり方を継続することとしたことに安堵をしています。水道工事業者が震災時に力を発揮するためにも、引き続き活用をしていただきたいものです。
 ところで、過去の震災事例を踏まえると、東京のような大都市では、一日も早い復旧を図る上で他都市との応援協力が極めて重要と考えます。そこで、東京で大地震が発生した際における他都市との応援体制はどうなっているのか、平常時における取り組みも含めて伺います。

○東岡水道局長 他都市との応援体制につきましては、震災時の相互応援を目的として、東京都を初め大阪市や名古屋市などの大都市間で、十七大都市水道局災害相互応援に関する覚書を締結しております。
 覚書では、各都市間の相互応援が円滑に実施できるよう、都市ごとに応援幹事都市を定めておりまして、この幹事都市が被災状況の把握を初めとした情報収集や、応援要請に関する連絡調整等を担当することとしております。
 東京が被災した場合には、横浜市及び仙台市が応援幹事都市を務めてくれることになっております。また、横浜や仙台が被災したときには東京が応援幹事都市になることとしております。
 こうした震災時の相互応援体制の実効性を高めるため、昨年、三都市の実務担当者が集まり、各都市の水道施設の状況や図面の整備状況、被害想定、発災時の応急復旧の手順などについて情報交換を行うとともに、応援受け入れ体制などについても確認を行いました。
 本年六月には、こうした相互応援体制の実効性をさらに高めるため、仙台市との間で応急復旧や応急給水などの共同訓練を行う予定であります。

○串田委員 他都市との応援体制を確立し、定期的に合同訓練や情報交換会を実施するなど、平常時から取り組みを進めていることは評価できます。震災への対応は施設の耐震化や他都市との応援体制の構築など、ハード、ソフトの両面で備えることは非常に有意義な取り組みです。引き続き積極的な取り組みを求めておきます。
 次に、住民基本台帳ネットワークシステムについて伺います。
 このシステムは、全国の区市町村の住民基本台帳をネットワークでつなぐシステムとして年金やパスポートの本人確認に活用されるなど、効率的な行政運営と住民サービスの向上にはなくてはならないシステムとなっています。しかし、いまだに住基ネットに参加していない団体が、全国約千八百の区市町村のうち、二団体だけ存在しています。福島県の矢祭町と東京都の国立市であります。
 私は、この国立市の住基ネットの不参加問題は、国立市だけにとどまる問題でなく、他の区市町村における事務にも影響を及ぼす重大な問題であると思っていますので、こうした観点から質問をいたします。
 住基ネットは、平成十四年八月の稼働開始から早六年が経過し、この間、情報漏えい等事故もなく、安定的に稼働しております。導入後、当初は、住基ネットが人格やプライバシーを侵害しているなどとして、国等に対し差しとめ訴訟が提起されていましたが、昨年三月、最高裁において、住基ネットは正当な行政目的の範囲内で行われており、それを逸脱して第三者に公表される具体的な危険は生じていないとの行政側勝訴の判決が示されています。
 また、杉並区が都と国を相手方として起こした訴訟についても、昨年七月、最高裁で上告が棄却され、市町村長は漏れなく本人確認情報を送信する義務があり、これを怠った市町村長の行為は違法であるとした高裁の判決が確定いたしています。これを受けて、杉並区は本年一月から住基ネットに参加しました。
 このように住基ネットの安全性が確立され、最高裁の判断が確定し、都もこれまで、再三にわたり住基ネットに参加するよう指導や勧告を行っているにもかかわらず、国立市は全く耳をかそうとしません。こうした中、先日、都は総務大臣の指示を受け、国立市に対して地方自治法に基づく是正の要求を行いました。
 そこでまず、今回都が行った地方自治法に基づく是正の要求はどのようなものなのか伺います。

○中田総務局長 都は、本年二月十六日に、国立市に対しまして是正の要求を行ったわけでございますが、地方自治法によりますと、市町村の事務処理が法令の規定に違反していると認める場合、国は都道府県に対し、是正のために必要な措置を講ずべきことを当該市町村に求めるよう指示することができると規定されております。この指示を受けました都道府県は、市町村に対し是正の要求を行う義務がございまして、これを受けた市町村は違反の是正のための必要な措置を講じなければならない法的義務を負うこととなっております。
 一方、都道府県から是正の要求を受けました市町村は、これに不服がある場合は、総務大臣に対し、自治紛争処理委員の審査に付することを求める旨の申し出を、是正の要求があった日から三十日以内に行うことができると規定されております。

○串田委員 ただいまの答弁は、要するに地方自治法に基づく是正の要求を受けた市町村は、それに従うか、それとも自治紛争処理委員への審査の申し出、すなわち不服申し立てを行うか、どちらかを選択しなければならないということです。
 都の是正要求を受けて、国立市は住基ネットに参加するか、それとも審査の申し出を行うのか、現状はどうなっているのでしょうか。

○中田総務局長 これまでのところ、都が行った是正の要求に対しまして、国立市から明確な回答はございません。
 新聞報道によりますと、国立市長は記者会見において、まだ検討中ですぐに結論を出せる問題ではないとしながら、一方で、市長選でのマニフェストで住基ネットの切断をうたっていたことや、個人情報の漏えいの危険性があることを述べていました。また、自治紛争処理委員の審査につきましても、委員を人選するのは総務大臣であり、結果は明白だとしており、今のところ、申し出る様子もございません。こうした市長の発言などから、国立市としては、当面住基ネットに参加する意向はないものと思われます。
 なお、国立市が本年三月十八日、これは審査申し立て期間でございますが、この申し立て期間に申し立てを行わなかった場合は、実質的に是正の要求で示した市の事務処理の違法性をみずから是認したといわざるを得ないと考えております。

○串田委員 市長の発言は、違法状態を是認したまま結論を引き延ばそうとしているとしか思えません。市長としてあるまじき行為であると思います。これまで住基ネットから個人情報が漏えいした事故は一件も発生しておらず、情報漏えいの危険性の問題はクリアされています。
 また、住基ネットによってパスポートの申請等の手続で住民票の写しを役所に取りに行く必要がなくなったり、年金受給者が現況届に記入して郵送する手間が不要となるなど、参加することによる住民のメリットは十分にあります。国立市長が違法に不参加を継続することによって、国立市民は、他の市町村の住民が当然のように受けられるこうしたサービスを受けられず、余計な負担を強いられているのであります。
 また、国立市では、住基ネットの導入によって提出が不要となった住民票の写しを無料で交付するなど、そもそも住基ネットに参加していれば必要のない手間をかけており、このことは市民が間接的にも負担を負っているということになります。
 さらに、現在、政府において、年金、健康保険、介護保険といった社会保障全体を通じたITの共通基盤として社会保障カードの検討が進められていますが、そこでも住基ネットを活用する方針といわれています。
 このように住基ネットは今後ますます国民生活の向上に重要な役割を果たしていくものと思われますが、その反面、国立市民はますます取り残されてしまうことが危惧されます。都は、住基ネットのメリットをもっとアピールして、国立市民が日本国民として当然のサービスを受けられるよう、国立市に対して住基ネットへの参加をより強く働きかけるべきと思いますが、所見を伺います。

○中田総務局長 理事ご指摘のとおり、国立市の違法行為によりまして、国立市民は住基ネットによるサービスが受けられず、不利益をこうむっております。
 また、他の区市町村との間での住民の転入転出手続におきまして、オンライン処理を行うことができず、別途書類による対応が必要になるなど、国立市だけでなく、他団体における行政事務の効率化を阻害する事態も生じております。
 都としては、こうした他の区市町村に与える影響も含め、住基ネットの有効性や重要性、将来性を広くアピールし、今後の国立市議会--ちなみに国立市議会は昨年九月に住基ネット接続を求める決議を採択しておりますが、こういった市議会や市民の動向などを注視しながら、引き続き国立市に対しましてできるだけ早く参加するよう強く働きかけてまいります。

○串田委員 地方分権の時代にあって、真に市町村の行政能力が問われる中で、法令を守るべき立場の市長みずからが違法行為を行うということは、これだから地方には任せられないという風潮につながりかねないものであり、地方分権を進めていく立場の都議会自由民主党として、市の違法行為は断じて許すことができません。
 国立市民は一日も早く住基ネットに参加することを望んでいます。国立市長はこのような事実を認識し、反省すべきです。市議会もチェック機能を働かせて、ぜひ市の違法行為を正していただきたいものです。都にはこれまで以上に国立市に対して強く指導することを求めて、次の質問に移ります。
 都立図書館は昨年創立百周年を迎え、ことしで百一年目を歩み出しました。広域的な総合的情報拠点として期待されている都立図書館について伺います。
 昨年十月、都立日比谷図書館の地元千代田区移管が都と区で合意されました。七月には正式に千代田区へ移管されます。また、ことしの一月には、都立中央図書館がリニューアルオープンをし、相談業務などの窓口を一階に集中させる、いわゆるワンストップサービスが実現されております。
 今まで中央、日比谷、多摩の三館体制であった都立図書館は、日比谷図書館が閉館することし四月以降、中央と多摩の二館体制となります。今後は、二館で広域的な自治体の図書館として役割を果たしていく必要があります。区市町村立図書館の支援や高度専門的なレファレンスなどを通じて、広域的、総合的な住民ニーズにこたえる情報サービスを今後どのように提供していくのか、以前にも増して問われています。
 そこでまず、都立図書館はいわゆる図書館の図書館として、今後の区市町村立図書館をどう支援していくのか伺います。

○大原教育長 区市町村立図書館に対する支援や連携協力は、都立図書館の重要な役割でございます。都立図書館はこれまで、利用者から区市町村立図書館へ寄せられました各種問い合わせへの対応について、都立図書館が支援をいたします協力レファレンスや、区市町村立図書館の求めに応じて資料を貸し出す協力貸し出し、区市町村立図書館職員を対象といたしました専門研修などの協力支援事業を行ってまいりました。
 今後は、区市町村立図書館と役割を分担しつつ、東京都全体の図書館サービスの向上を図りますために、ホームページを活用した東京都内の図書館情報の発信、研修生の受け入れや講師の派遣といった人的支援など、区市町村立図書館のサービスと運営への支援をさらに強化充実してまいります。

○串田委員 都立図書館における区市町村立図書館への支援事業の中では、協力貸し出しが大きな役割を占めていますが、この協力貸し出しについては、平成十八年に策定された都立図書館改革の具体的方策で見直しの方針を出しています。その内容としては、協力貸し出しされた資料を区市町村立図書館内で館内閲覧にとどめ、貸出期間を見直すことなどですが、この方針が出された以降、都は区市町村ときちんと協議をしているのか、その状況について伺います。

○大原教育長 協力貸し出しは年間約十一万冊、そのうち多摩地域だけで七万冊以上の実績を有する重要な事業でございます。しかし、都立図書館資料の有効活用という点からは課題を有しているのも事実でございまして、ご指摘の都立図書館改革の具体的方策において、貸出方法や貸出期間についての見直しを打ち出したところでございます。
 その後、貸出サービスの継続と貴重な資料の館内利用の両立の観点から、東京都図書館長連絡会を通じまして、区市町村と意見交換を行い、一定の理解を得られたところでございますが、費用負担については、残された課題として引き続き検討していくことになっております。

○串田委員 協力貸し出しに関連した費用負担については、特に多摩の市町村の関心が高い課題であります。今後とも区市町村とよく協議していただくことを強く要望しておきます。
 最後に、都立図書館は三館から二館になって、見た目には手薄になっているようにも感じられますが、都民の多様な期待にこたえるため、今後の図書館サービスの展開についてどのように考えているのか伺います。

○大原教育長 まず、中央図書館でございますが、中央図書館ではリニューアルオープンを機会に、今後、特に四つの分野、すなわち都市・東京、ビジネス、健康・医療、法律に関する蔵書の充実を図ってまいります。
 また、館内からアクセス可能な外部データベース数の拡大や、都内の公立図書館すべての蔵書等を対象とした資料検索システムの機能充実など、インターネットを活用した情報サービスを拡大いたします。
 多摩図書館につきましては、雑誌や児童、青少年資料の充実を図ってまいります。
 さらに、子どもの読書活動推進に向けまして、学校図書館の運営に対する助言や推薦図書に関する情報提供を通じて学校教育活動を支援いたしますとともに、保護者向け相談事業や啓発を行ってまいります。
 また、時代の潮流や都民の関心を的確にとらえた企画展や講演会等をそれぞれの館で実施するなど、積極的な情報発信を行ってまいります。
 これらの事業を展開することによりまして、都民の多様な知的ニーズにこたえていく所存でございます。

○串田委員 二十一世紀は知識基盤社会といわれている中にあって、都民にとってより魅力的で、役に立つサービスを実現していく都立図書館として積極的に進めていただくことを申し添えて、時間も余りましたが、私の質問を終わらせていただきます。
 どうもありがとうございました。(拍手)

○三宅副委員長 串田克巳理事の発言は終わりました。
 この際、議事の都合により、おおむね三十分間休憩いたします。
   午後五時二十九分休憩

   午後六時七分開議

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