予算特別委員会速記録第四号

○服部委員長 ただいまから予算特別委員会を開会いたします。
 これより付託議案の審査を行います。
 第一号議案から第二十九号議案までを一括して議題といたします。
 昨日に引き続き総括質疑を行います。
 鈴木章浩委員の発言を許します。

○鈴木(章)委員 オリンピック・パラリンピック招致における教育機関のかかわりについて、まずお伺いします。
 東京都は、現在、全庁挙げてオリンピック・パラリンピック招致に取り組んでおります。オリンピックの基本理念は、スポーツを通じて心身ともに健全な青少年を育成し、平和でよりよい社会の建設に貢献することであります。そうした理念を踏まえ、都は、未来を担う子どもたちが平和の尊さを学び合い、多くの感動と夢と希望が持てるようにと、去る二月十二日、立候補ファイルを提出し、十月二日の決定日まで招致活動をさらに展開しているところであります。
 こうした活動の展開と同時に、私は、学校教育においても、子どもたちにオリンピックが目指す理想や歴史などについて正しく理解させ、平和社会に貢献できる態度を醸成していくことは、極めて大切なことであろうと考えております。
 過去を振り返れば、昭和三十九年に行われた東京オリンピックでは、招致の五年前、ミュンヘンのIOC総会で日本の外交評論家の平沢和重氏が、小学校六年生の日本の国語教科書を片手に、この教科書を見ればわかるように、日本ではオリンピック運動を義務教育の段階からだれもが学んでいると力説し、開催都市の栄誉をかち取ったといわれております。今こそ、戦後復興期にあった当時の日本人の熱い思いを呼び起こすべきであろうと思います。
 そこで、学校においてオリンピック学習を展開していくことについて、都教育委員会としての基本的な認識をお伺いします。

○大原教育長 都教育委員会は、我が国の将来を担う児童生徒が、スポーツに親しみ、オリンピックの精神や理念について学習することは、極めて高い教育的意義があると認識をしております。
 現在、小学校では、社会科や道徳などの授業におきまして、昭和三十九年の東京オリンピックの歴史的な意義やフェアプレー精神などを学習しております。
 このたびの学習指導要領の改訂に伴い、今後、中学校、高等学校においては、オリンピックが国際親善や世界平和に貢献していること、オリンピックムーブメントがそのために大きな役割を果たしていることなどについて必ず学習することとなりましたが、都教育委員会は、学習指導要領の本格実施に先行いたしまして、オリンピック学習の充実に努めてまいります。

○鈴木(章)委員 このことについては、我が党の平成十九年の第一回定例議会において、予算委員長である服部委員よりも質問いたしております。当時、フランスの教育者であり、オリンピックの創始者であるピエール・ド・クーベルタンが提唱したオリンピック精神とオリンピック運動の意義を子どもたちに教育していくべきであると主張したことに対しまして、教育長からは、オリンピック精神やオリンピックムーブメントの意義を正しく理解し、スポーツを通して心身の健全な発達を遂げ、平和な社会の実現に貢献する態度を身につける教育を、オリンピック招致に向けてさらに推進していくとの答弁をいただいているところであります。子どもたちがスポーツに親しみ、心身の調和的な発達を遂げつつ、オリンピックに関する学習を充実させることは重要であります。
 そこで、これまで都教育委員会は、スポーツやオリンピックについてどのように指導を充実させてきたのか、お伺いします。

○大原教育長 スポーツ都市東京を実現していくためには、スポーツに親しむ児童生徒の育成が極めて重要であります。このため都教育委員会は、すべての児童生徒に、運動することの楽しさや、スポーツにより心身を鍛えることのすばらしさを認識させるため、体育授業の充実や部活動の振興に取り組む一方、東京国体を見据えまして、競技力の向上にも努めてきております。
 特に、平成二十年度には、都内公立学校百二十三校をスポーツ教育推進校、協力校に指定をいたしましてスポーツの振興を図りますとともに、児童生徒にオリンピック学習読本を配布いたしまして、オリンピックの歴史や意義、フェアプレーやスポーツと環境などに関する学習に役立てております。
 また、学校の授業や部活動に、ソフトボールの上野投手やサッカーの山本元監督を初めとするトップアスリートやすぐれたスポーツ指導者等を延べ三十回派遣をいたしまして、児童生徒がアスリート等と直接交流することを通じて、より一層スポーツに親しむこと、夢を持ち、努力することの大切さを直接学習することができる機会を設定してまいりました。

○鈴木(章)委員 我が党は、子どもたちの健全育成のためにも部活動の振興を訴えてきており、オリンピックを目指してスポーツ都市東京を実現していくためには、その基盤となる子どもたちのスポーツ活動の充実は欠かすことのできないものと考えております。
 今、答弁がありましたオリンピック学習読本ですが、昨年九月にようやく完成し、教育機関に配られております。聞くところによると、招致活動を展開している段階で、こうした学習読本を制作している例は世界的にも珍しいと聞いております。私も、学習読本をじっくりと読んでみました。(実物を示す)こちらであります。とてもすばらしい内容であります。僣越ながら、改めて、オリンピック精神の普及こそ今の時代に必要であると思い、ぜひ一読をお勧めいたします。
 我が国とオリンピックのかかわりの歴史、オリンピックが目指すもの、友情やフェアプレーなどの精神性、古代オリンピックやパラリンピック、教育とスポーツなど、実に的を射た内容によって構成された教育的価値の高いものと考えます。本年度の途中で完成し、一部の学校だけに配られており、教材としての研究や活用方法についての準備不足は否めないだろうと思いますが、せっかくの教材ですので、多くの学校で活用するようにご尽力いただきたいと思います。
 新学習指導要領にもオリンピック教育が加えられておりますが、このオリンピックの学習読本の活用も含め、今後さらに取り組みを推進すべきであると考えますが、教育長の決意を改めてお伺いいたします。

○大原教育長 平成二十一年四月にはオリンピック学習読本を都内すべての公立学校に配布をいたしまして、スポーツ教育推進校での活用事例を取りまとめました実践事例集により、各学校において有効に活用するよう指導を徹底いたします。
 また、平成二十一年度は、スポーツ教育推進校を二百校に拡大すること、アスリートの学校派遣事業を拡充することを通して、スポーツ教育のより一層の推進を図ってまいります。
 今後とも都教育委員会は、児童生徒がスポーツの実践とオリンピック学習を行うことを通じまして、心身ともに調和がとれ、平和な社会の実現に貢献できる態度を身につけていく教育を推進してまいります。

○鈴木(章)委員 学校教育においてもさまざまな取り組みを通してオリンピック学習を展開しており、今後充実していく方向にあることが理解できました。
 学校で指導する内容には、教育的価値が備わっていることが大切であろうと思います。今、東京都は招致活動に取り組んでおりますが、子どもたちにはスポーツに親しむことやオリンピックというものを学習することによって、立派な人間に育ってほしいと願っております。そして、十月二日、開催都市の決定に際しては、感動の舞台がこの東京になる喜びを、子どもたちとも分かち合えますよう念じて、次の質問に移ります。
 私も零細企業の経営に十年以上かかわってきた者として、中小零細企業振興施策には区議会のときより関心を持って取り組んでまいりました。いうまでもなく、日本の法人の九九・七%は中小零細企業であり、GDPの六割を担っております。また、雇用の七一%が中小零細企業で働いております。そうした中小零細企業の活性化こそ、日本経済の確固たる回復につながるものとの思いで質問をいたします。
 先月、私の地元大田区で大田工業フェアが開催され、さまざまな企業の経営者の方々と交流を持たせていただきました。今回の工業フェアは、こうした景気が影響しているのか、都外からのバイヤーも新技術や新製品の商談に訪れるなど、今まで以上に盛況でありました。
 しかし、企業経営者や業界の青年会の役員の皆様からは、親企業や主要取引先である企業の急激な業績悪化により仕事が半減するなど極めて厳しい状況にあり、四苦八苦している、緊急保証融資によって何とか息をついているが、いつまで息をつけるかはわからない、景気が悪くなってくると、親企業や取引先からふぐあいの納品があるとして返品があったり、値引き要求がふえているといったお話を伺いました。
 まず、そこでお伺いしますが、都で東京都中小企業振興公社が下請取引にかかわる苦情相談等を行っておりますが、現状はどうなっているのか、お伺いいたします。

○佐藤産業労働局長 東京都中小企業振興公社で行っております苦情紛争相談等の実績でございますが、平成二十年四月から二十一年二月末までで、相談件数で三百八十七件と昨年度の約五倍、調停申し立てが十三件で昨年度の約四倍と、大幅な増加となっております。
 主な相談内容といたしましては、売り掛け代金の回収や値引き等の代金回収に関する相談が約六割、発注品の受領拒否や予告なしの取引中止等の取引契約に関します相談が約三割となっております。

○鈴木(章)委員 今ご答弁いただいて、代金回収や取引契約に関する苦情相談が多いという実態がよくわかりました。私も実際に下請取引にかかわる苦情を多くの中小企業の皆様から伺っております。
 さきのフェアに出展した企業の経営者からも、単品スライドにより請求代金の変更を請求しようとしても、下請代金支払遅延等防止法の下請取引適正化推進講習会テキストが分厚いため、内容が理解できない、このため親企業のいいなりにならざるを得ない、結局何もわからないのが現状であるとか、発注企業との取引について中小企業振興公社へ相談したことの情報を親企業が知ると、次の発注がなくなるおそれがあるので、下請企業は相談ないし調停までは持ち込めないという話も伺いました。まさに下請企業は泣き寝入りせざるを得ない状況であります。
 このような中小企業の状況をかんがみ、下請法の遵守を親企業や下請企業に積極的に働きかけ、これまで以上にきめ細かく対応することが重要であると考えておりますが、見解をお伺いいたします。

○佐藤産業労働局長 東京都中小企業振興公社は、下請取引適正化のより一層の推進を図るために、自治体関係機関として全国初となります裁判外紛争解決事業者、いわゆるADRの認証を昨年七月に受けたところでございます。
 あわせて、今年度、新たに取引適正化相談員を配置いたしまして、直接中小企業を巡回して、下請取引相談や下請法の周知に努めております。
 下請企業からの個別の相談につきましては、下請紛争処理相談窓口におきまして、親事業者との取引を可能な限り継続しつつ、その適正化が図られるよう、秘密遵守に最大限の意を配し、対応をしているところでございます。
 また、親事業者を対象に下請法の遵守のための講習会等を開催をし、適正な取引を働きかけております。
 さらに、平成二十一年度から、公社本社の紛争解決相談員の増員を図りますほか、多摩支社に紛争解決相談員、また取引適正化相談員を一名ずつ配置をいたしまして、相談体制の充実を図ってまいります。
 今後とも下請企業の相談にきめ細かに対応するとともに、必要に応じてあっせんや調停などを行いまして、親事業者と下請事業者の適正な取引を確保してまいります。

○鈴木(章)委員 日本の産業の強みは、多くの中小零細企業が存在するという産業のすそ野の広さであったわけでありますが、そのつながりが単なる契約ベースになってきているということこそ、危機的状況にあるといわざるを得ません。中小零細企業が崩れれば、日本経済の地盤そのものが崩れ、その先の川上の大企業も崩れていくしかありません。今まで最後の部分でこの流れを押し返し、地盤を守ってきたのが中小零細企業の経営者たちであります。こうした認識のもと、今後ともデリケートな相談体制の充実をお願いいたします。
 では次に、知的財産に関する中小企業への支援についてお伺いします。
 大田区の工業フェアの出展企業を見ても、独自の技術で新製品等を開発して頑張っている企業も多いですが、こうした企業から話を聞くと、少し売れるとすぐに類似品が出回るため、なかなか収益に結びつかないという声もあります。世界的な景気の後退で競争がますます厳しくなる中、自社が有する知的財産を確実に保護し、それをしっかりと収益に結びつけていくことの重要性が高まっていると考えます。
 しかしながら、中小企業の場合、技術はすばらしくても、契約書などの書類の作成にはふなれだという企業も多く存在します。また、具体的な被害やトラブルが生じるまで、知的財産に関する対策をおろそかにしていたという事例も少なくありません。
 都は、知的財産総合センターを設け、中小企業に対する知的財産関連の支援を行っておりますが、取り組みの現状と今後の方針についてお伺いいたします。

○佐藤産業労働局長 都は、知的財産総合センターを設置いたしまして、中小企業の相談への対応、セミナーの開催、外国特許の出願助成などの支援を行っております。
 ご指摘のとおり、中小企業の中には、技術はすばらしいものの、秘密保持などに関する書類が必ずしも的確に作成できていない企業もございます。こうしたことから、相談対応やセミナーにおきまして、特許出願への支援に加えまして、秘密保持のための契約書の書き方や社内規程のつくり方など、きめ細かいアドバイスを行っております。
 しかし、対応のおくれによる損失を招かないためには、より早い段階からアドバイスを行うことが重要であることを踏まえまして、今後は、相談を待つだけではなく、例えば、中小企業振興公社に新製品の販路開拓支援を依頼してきた中小企業に知財センターの相談員が出向くなどいたしまして、より積極的な姿勢で中小企業への支援を行ってまいります。

○鈴木(章)委員 ただいまの答弁のように、こちらから積極的に情報を収集し、出向いていくという姿勢こそ、真の中小零細企業対策であると思っております。何度もいいますが、すばらしい技術はあっても、その他のことはふなれであり、できないというよりは、やり切れない事業所が多いのが現実であります。こうしたことを踏まえ、今後とも前向きな取り組みを強く要望いたします。
 次に、中小企業に対する金融支援策について質問いたします。
 景気が急速な悪化を続ける中、都内中小企業は極めて厳しい環境に置かれており、優良企業ですら大幅に売り上げが減少するなど、前例にない危機に直面しております。今、多くの中小企業は制度融資などで息をつないでおり、都が中小企業の資金繰り支援で果たすべき役割は、これまで以上に重要となっております。
 このことを改めて指摘いたしますが、中小零細企業の経営者に問題があるという以上に、内部留保金課税による過小資本の状態にさせることに問題があるわけであります。現在、企業が注文を受けてから納品し、支払いを受けるまでには、かなりの日数を要することがあります。通常なら、ほかの仕事の入金で何とかやりくりするところでありますが、受注が大幅に減少した現在、企業が資金ショートを引き起こすおそれが高まっております。
 都においては、このような事態を未然に防ぐために、企業の個々の経営状況に対応したきめ細やかな金融支援を今後も充実させていくことを望みます。
 目下、中小企業による資金繰りの頼みの綱となっているのが、昨年十月から開始された緊急保証制度であり、既に多くの企業に活用されておりますが、緊急保証制度のこれまでの実績と、中小企業にとってどのように役立っているのかをお伺いいたします。

○佐藤産業労働局長 都は、昨年十月末から、国の緊急保証制度に対応いたしまして、制度融資に最優遇金利を適用した融資メニューでございます経営緊急を設置いたしますとともに、特に小規模企業者には保証料の二分の一を補助するなど、都独自の対応を行っております。
 本年二月末における経営緊急の実績は、三万一千六百四十八件、七千六百億円に上っておりまして、多くの企業に利用され、運転資金の調達や既存債務の返済負担の軽減などに役立っていると認識をしております。

○鈴木(章)委員 ただいまの答弁で、緊急保証制度が資金繰りに苦しむ中小企業にとって大きな役割を果たしていることがわかりました。
 しかしながら、緊急保証制度については、よく通常の枠とは別枠で保証が受けられると宣伝されておりますが、中小企業の方々のお話を伺ったところ、実際に緊急保証制度を申し込むと、保証枠をいっぱいに使い切っているため利用できないという声を多く聞いております。
 この場合の保証枠は、通常、無担保の保証枠を指すと理解しておりますが、その金額は企業によりまちまちで、返済に充てられる資金力などに応じて決まってくるものであります。この別枠の表現は、もともと国のPRの仕方によるものでありますが、中小企業の経営者の間には、必ず追加の保証が受けられるのではという誤解を招きやすいものであり、都においても、PRに際しては留意していただきたいものであります。
 さて、多くの中小企業が、それぞれの保証枠の中で資金繰りに苦労しております。枠を使い切った場合、物的担保でもない限り、追加の保証を受けることは困難であります。
 そこで、制度融資において無担保保証の割合はどのぐらいなのでしょうか。教えていただきたいと思います。

○佐藤産業労働局長 平成十九年度における企業向け保証実績を見ますと、無担保保証は、件数ベースで九四%、金額ベースで八八%を占めてございます。

○鈴木(章)委員 およそ九割の企業が無担保保証を受けているということは、信用保証協会が物的担保を持たない中小企業の信用力を評価し、積極的に保証を行っていることのあらわれと考えます。
 しかし、裏を返せば、不動産資産に乏しい中小企業は無担保の枠を超えて保証を受けるのが難しいことも示しており、現下の厳しい経営環境のもと、不動産資産に乏しい中小企業の資金調達の円滑化をさらに推進することが重要です。
 ここまで、制度融資を中心に、都内中小企業に対する融資の現状について尋ねてきました。来年度には、地域の金融機関と連携して、新たな融資制度を創設すると聞いております。
 最後に、現状の未曾有の厳しい経済状況の中で、都は中小企業金融の一層の充実に向けてどのように取り組んでいくのか、知事の所見をお伺いいたします。

○石原知事 昨年秋以降の厳しい経済状況の中で、小零細企業が受注の減少や資金繰りの悪化など、極めて深刻な痛手を負っております。
 また一方、企業にとっては血液ともいえる資金というものが通わずに、中には黒字で倒産している会社もたくさんあるわけでありまして、需要の創出を初めとする景気対策は一義的には国の責任でありますが、このまま手をこまねいていては、多くの企業は疲弊し、東京の産業は衰微しかねません。
 都は、切迫する小零細企業の資金繰りを緊急に支えるために、平成二十一年度予算において、緊急保証制度など制度融資を拡充するとともに、独自の取り組みとして、地域の金融機関と連携して、新たな融資制度を創設いたします。
 さらに、中小企業の資金調達手段の多様化を図るため、不動産担保等に過度に依存しない機械、設備担保融資制度も開始する考えであります。
 このように、時期を失することなく、さまざまな金融支援策を講じることによって、都内小零細企業が現下の厳しい経営環境を乗り越えることのできるよう、全力を尽くしてまいります。
 加えて申し上げたいのは、日本のように産業の底辺で致命的に重要な製品というのをつくっている、こういう小零細企業の存在というのは、ほとんど世界にありません。こういう特殊な機構というものに対する認識は、国の行政に決定的に欠けていると思います。こういったものを補うことこそ地方自治体の責任でありますけれども、特に東京は、そういった日本の産業を左右しかねない致命的な、しかし、非常に弱い小零細企業が密集している地域でありまして、そういう意味でも東京のこれからの試みは、国の命運を左右しかねない重大な意味を持っていると思います。

○鈴木(章)委員 ただいま知事から力強い決意を表明していただきまして、本当に今大変な状況であるという中で、ぜひとも皆様方のきめ細かい取り組みを要望するところであります。
 先日、日経平均株価の終値がバブル後最安値を更新したことで、株式を多く保有する銀行の経営に与える影響も心配される状況になってきております。銀行の財務状況が悪化すると、健全性を示す自己資本比率の水準を維持するために融資の審査を一段と厳しくせざるを得ない状況となり、企業の資金繰りに大きな影響が出てまいります。自己資本比率の低い中小零細企業は、安定的融資が疑似的な資本となるため、べた貸しが常態となっており、折り返しこそ中小企業金融の生命線であります。
 そうしたことを考慮して、今後とも中小零細企業への制度融資の充実を要望するとともに、先日、政府より打ち出された金融円滑化対策により、金融庁により、貸し渋りや貸しはがしが行われることがないよう、監督をしっかりしていただきたいと願っております。
 次に、周産期医療体制の充実についてお伺いします。
 今定例会や予特の中でもさまざま触れられておりますが、昨今の周産期医療をめぐる医療事情は、連日マスコミに報道されているように、大変厳しいものがあります。これは全国的な問題でありますが、過酷な勤務や訴訟リスクなどにより、産科医のなり手が減少し、勤務医が確保できず、産科診療が休止に追い込まれるなど、都内においても深刻な事態となっております。
 私の地元であり、知事の地元でもある大田区も例外でなく、昨日の山下委員の資料は少し古いように思われますが、大田区の場合は、確保されていたものが、ここ二、三年のうちに、医師不足によって大学病院による医師の引き揚げが行われ、やめられていくという深刻な状況になっております。
 現実に東京都保健医療公社が運営する荏原病院においても、平成十九年十月以降、産婦人科が医師不足となり、やむなく医師による分娩を休止せざるを得ない状況となっております。
 現在、大田区では、年間五千三百人から五千六百人の出生数がある中で、分娩が行える機関は七カ所と大幅に減少し、そのうち二つの診療所は、一月に五回程度しか扱えず、区内の分娩施設だけではその半分も受け入れることができない深刻な状況であると聞いております。
 そうしたことから、荏原病院の休止と、昨年七月末からの元国保連の経営による蒲田総合病院の産婦人科の停止は、一気に年間一千二百回分の分娩ができなくなったということで、周産期医療機関の不足は大変深刻な状況になっております。
 この間、荏原病院は、助産師外来や院内助産所による分娩に取り組み、医療サービスの低下を最小限にとどめる努力もしております。
 現在勤務している産科医の離職を防ぐとともに、新たに産科医を確保するなど、都立病院や公社病院において医師の処遇改善を行うなど、さまざまな取り組みを行い、我が党としても全面的にバックアップしてまいりました。
 こうした中、荏原病院では、大田区長の尽力もあり、平成二十一年度には、大学の医局からの医師の派遣を受けて、その後、分娩を本格的に再開していくと伺っておりますが、今後の見通しについてお伺いいたします。

○中井病院経営本部長 委員ご指摘のとおり、産科医の不足は全国的に非常に厳しい状況がございまして、産科医を確保するということにつきましては、困難な状況が依然として続いております。
 こうした中にあって、荏原病院においては、分娩の再開に向け、医師の派遣を予定しております大学医局とこの間、精力的に打ち合わせを重ねてまいりました。この結果、四月には分娩の予約を開始し、この十月からは医師による分娩を再開できる見通しが立ち、現在、その準備を鋭意進めているところでございます。

○鈴木(章)委員 この件は、先日行われました大田区議会の予算委員会の我が党の総括質疑でも触れられておりました。大田区民にとって大変関心の高い問題であり、とりあえず医師による分娩再開について見通しが立ってきたことは、大変歓迎すべきことであります。また、妊娠から出産まで数カ月間かかるということを考えると、実際に分娩が行われるまでには、期間を要するということは理解できます。
 地元では、少しでも早く医師による分娩再開をしてもらいたいとの声が大きく、その期待にこたえるためにも十分な準備を行い、また、混乱を招かないように、住民に広報活動をしっかりとやっていただきたいと要望いたします。
 ところで、病院経営本部では、昨年四月に東京医師アカデミーを開講し、都立病院と公社病院とが一体となって若手医師の育成、確保に取り組んでおり、大変期待されているところであります。
 全国的に産科医の絶対数が不足しており、その確保に努めるにもおのずと限界があります。医師確保対策については、本来、国がもっと力を入れていくべきでありますが、ただ手をこまねいているばかりでは産科医の不足は一向に歯どめがかからず、負の連鎖反応が続くだけで、都における医師アカデミーのような将来を見通した人材の育成、確保に向けた取り組みが非常に重要となってくるわけであります。
 そこで、東京医師アカデミーにおける医師の育成、確保に対する取り組み、特に産婦人科の状況についてお伺いいたします。

○中井病院経営本部長 東京医師アカデミーは、昨年四月から開講した後期専門臨床研修制度でございまして、都立、公社病院が一体となって総合診療能力と高い専門性を兼ね備えた医師を育成するために、内科、外科系レジデントに対する短期ER研修の必須化、さらには上級医師によるきめ細かい指導、評価制度を取り入れた研修システムでありまして、産科を含む十二診療分野の専門コースを有しております。
 現在、第一期生として都立病院、公社病院合わせて百九名のレジデントが研修しておりますが、産科医については二名という状況にあります。これが来年度は、この四月採用ということになりますが、五名採用される予定になっておりまして、東京医師アカデミーが産科を目指す若手医師にとって一定の評価を得たものと考えております。
 今後とも、カリキュラムなどの一層の充実に努め、質の高い臨床能力を有する医師を育成し、都立、公社病院の人材確保に資するよう引き続き取り組んでまいります。

○鈴木(章)委員 産科医療を扱う医療施設が不足する中で、都立病院や公社病院に対する都民の期待はとりわけ高いものがあります。医師アカデミー第一期生の産婦人科研修が終了するのは平成二十三年三月になると聞いておりますが、それらアカデミー生の方々が、研修終了後もぜひ都立病院や公社病院に残っていただくよう、魅力ある研修としていただきたいものであります。
 また、今後とも、都立病院、公社病院ともに産婦人科医師の育成、確保に努めていただきますよう強く要望いたします。
 次に、女性医師の離職防止、復職支援についてお伺いいたします。
 周産期医療は、産科医、小児科医、麻酔科医の連携が欠かせない中、その四割が女性医師であるという現実があり、不足するそうした医師を確保するには、看護師の場合と同じように、結婚、子育てなどの理由で離職中の女性医師を職場復帰させる取り組み、また離職させない取り組みが必要であります。例えば院内保育室の充実、復帰に向けてのトレーニングプログラムの導入、また勤務体系の見直しなどが喫緊の課題であります。
 そこで、都は今年度から医師勤務環境改善事業を開始し、病院勤務医の勤務環境の改善や女性医師の復職支援についての取り組みを進めてきておりますが、来年度に向けてこの事業をどのように充実させていくのか、お伺いいたします。

○安藤福祉保健局長 都は今年度から、周産期母子医療センターや救命救急センターなどの医師の勤務環境を改善するため、交代制勤務や短時間勤務の正職員制度の導入、また女性医師の一人一人のキャリアや状況に応じた復職研修など、職場への定着や再就業を促進する病院の取り組みを支援しております。来年度は、ミドルリスクの妊産婦に対応する周産期連携病院についても、新たに対象に加える予定であります。
 さらに、より多くの医療機関で勤務環境改善が図られますよう、先駆的な取り組みの事例を紹介するなど普及に努めてまいります。

○鈴木(章)委員 医師の確保はすぐに改善できる問題ではありませんので、何度も触れておりますが、今、できることを一つ一つ改善していくことが大切であります。女性医師が四割を占める状況において、こうした取り組みは大変重要であります。今後とも力を入れていただきたいと要望いたします。
 さて、昨年起きた母体搬送事案からは、病院の受け入れ体制や搬送先選定の調整、医師の確保などにおいて、今後、改善すべき課題が浮き彫りとなりました。このため、都は、これらの課題に速やかに対応するため、東京緊急対策Ⅱを示すとともに、周産期医療関連の来年度予算を大幅にふやし、さまざまな対策を充実させてまいりました。
 さきの代表質問では、我が党が強く主張してきた母体救命が必要な妊産婦を必ず受け入れる、いわゆるスーパー総合周産期センターを今月スタートさせるとともに、今後、新たに設置するコーディネーターが、都全域においてその機能を担っていくとの答弁をいただきました。
 そこで、周産期医療を担う医療機関全体に対する取り組みについて確認いたします。
 そもそも地域内の分娩施設が減少していることが、子どもを産む施設を見つけるのが大変という要因となり、出産に不安を抱く都民も多くなってきております。分娩取扱施設の減少にブレーキをかけ、都民が地域全体で安心して産める環境づくりを進めるべきであります。
 都はこのため、診療所等と比較的リスクの高い分娩を扱う病院とが機能に応じた役割分担と連携を進めていると聞いておりますが、一方、周産期母子医療センターの医師や医師会の先生方に聞くと、連携体制の構築には時間がかかるといわれております。これはまだ、連携の意義が十分浸透されておらず、効果が見えにくいからなのではないでしょうか。
 本来、連携は、日ごろより健診を通じて妊婦のリスクを把握し、適切な時期にリスクに応じた医療機関への紹介をされることで、妊産婦が緊急搬送を要する事態に至らないようにすることが大きな目的であります。身近な地域での連携という仕組みを都全体で進める必要があり、この仕組みの立ち上げには、都の積極的なかかわりが重要であると思います。
 分娩取扱医療機関が減少している中、地域で安心して子どもが産めるよう、どのように一次、二次、三次の周産期医療を担う医療機関の連携体制を推進していくのか、お伺いいたします。

○安藤福祉保健局長 地域の診療所やリスクの高い分娩を扱う医療機関などが機能に応じた役割分担と連携を進めることは、安全・安心な出産の確保や医療機関の負担を軽減する上からも有効であります。
 このため都は、役割分担のあり方や、紹介、搬送のルールづくりなどを示した連携ガイドラインを作成するとともに、地域の二次医療機関の中心となってこうした医療連携を進めます周産期連携病院を創設いたしました。
 このガイドラインを基本として、地域の実情を踏まえながら、診療所、周産期連携病院、周産期母子医療センター等によるネットワークグループの構築が進みますように、都として積極的に働きかけてまいります。

○鈴木(章)委員 この仕組みが各地域に浸透し、地域の周産期医療を担う医療機関同士の顔の見える連携が進めば、診療所等も安心して分娩を取り扱っていけることが期待できます。
 最後に、都内の分娩にかかわるすべての医療機関が有機的に連携し、都民が安心して出産できる仕組みづくりを今後も強力に進めてほしいということを要望して、次の質問に移ります。
 次に、介護現場の問題と介護人材の確保と定着促進についてお伺いします。
 介護現場の人的不足の問題は深刻です。最近の景況悪化により、以前より求人状況が少しよくなっているのではという声も聞かれますが、私は、介護の現場が、そもそも不況にならないと人が集められないような現場であってはならないと強く感じております。
 重労働で低賃金というイメージの強い介護分野は、非常に厳しい状況に置かれております。東京の介護関連職種の有効求人倍率は、平成十九年度で三・五二倍と、全職業計の一・三〇倍を大きく上回っております。大都市である東京は就業機会が多く、他業種との人材獲得競争も厳しいことから介護人材の確保は一層の困難を極めており、都は、一昨年五月と昨年六月の二回にわたり、大都市にふさわしい介護報酬のあり方を国に提言してきました。このような努力が結実し、昨年十二月に、国は介護従事者の処遇改善に主眼を置き、介護報酬について制度創設以来初の増額改定、三%アップに踏み切ったところであります。これにより、今後の現場職員の給料も若干上がるといわれております。
 全国調査によれば、例えば平成十九年の女性のホームヘルパー、勤続五・一年の平均的な現金給与額、基本給、諸手当、超過労働給与額も含めて月額二十万七千四百円であります。しかし、ホームヘルパーにはパートタイマーも多いことですから、これより低い給料の人も大勢いるわけであります。こうした方々の給料が三%の介護報酬改定により若干上がったところで、それで介護人材が定着するというのは楽観的過ぎます。
 例えば、私が知っている常勤換算で十名くらいのヘルパーを抱える訪問介護事業所では、新たに創設された加算分も含め、今回の改定で月額およそ七%程度の増収が見込めるとの試算をしております。特別区の場合、訪問介護事業所の給与費の割合はおよそ八四%ですので、増収分の八%以上は職員の処遇改善に充てられるべきであります。
 しかしながら、介護の職場自体に魅力がなければ、この仕事を本気で長くやろうという若い人々は集まりません。やる気のある人材を職場に定着させ、中核となる人材として長く活躍してもらうには、もちろん給料、すなわち介護報酬も大切でありますが、決してそれだけの問題ではないと考えます。
 私は、給料の問題と同じぐらい重要なのが働きやすい職場づくりであり、それを促す取り組みや環境づくりだと考えております。平成十九年度の全国調査では、介護関係職種の離職率は二一・六%と、全産業平均一六・二%に比べ、高い状況にあります。また、介護従事者のうち約七五%が勤続三年未満で離職しています。実に七五%が三年未満で離職しているという実態に、私は驚かされます。多くの介護従事者が勤続三年未満では、中核となる人材も育ちにくく、組織として非常に脆弱という状況ではないでしょうか。
 こうした厳しい状況を打開するために、我が党でも、介護人材の確保、定着に向けて、ボランティア活動への環境づくりなど、四億六千万の予算を計上しました。
 そこで伺いますが、都は、このように離職者が多く、組織として脆弱といわざるを得ない看護現場の実態をどのように認識しているのか、また、復活予算も含め、介護人材の早期の離職防止や定着促進に向け、今後、どのように取り組んでいくのかをお伺いいたします。

○安藤福祉保健局長 介護現場におけます高い離職率の背景には、給与を初めとする労働環境への不満や身体的負担、採用時の研修、教育体制の不備などがあるものと考えられます。
 こうしたことから、都では今年度、経営者やリーダー層を対象にマネジメント能力の向上を図る取り組みを実施しておりますが、さらに来年度、復活予算の事業の一つでございますけれども、経営コンサルタントを活用した雇用管理の改善策の検討や、職員の負担軽減を目的とした福祉機器の導入などにより、介護人材の定着促進に取り組む事業者を強力に支援してまいります。
 なお、介護報酬につきましては、大都市の特性を踏まえたものとなるよう、引き続き国に要望してまいる所存であります。

○鈴木(章)委員 今後とも、マンパワーが介護保険制度の生命線でありますので、介護人材の定着促進のために、職場改善に向けての強力な支援をよろしくお願いいたします。
 介護人材の定着促進には処遇改善も重要ですが、魅力ある職場づくり、職場環境の改善への取り組みも不可欠であります。中でも研修や国家資格取得支援など、職員の資質向上に向けた取り組みは、私は大変重要なものと考えております。
 そこで、お伺いいたしますが、例えば訪問介護事業所では、収入増となる加算を取得するために、ホームヘルパー総数のうち、介護福祉士、介護職員基礎研修課程修了者、ホームヘルパー一級の合計が五〇%以上であるという要件があります。多少ハードルが高く感じますが、サービスの質の向上には欠かせないことと考えております。
 ついては、都においても、介護職員基礎研修も含め、職員の資質を高める研修の受講を奨励する支援策を講じるべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。

○安藤福祉保健局長 都は、福祉、介護人材のスキルアップ等を目的とした研修を行う区市町村を支援しております。
 来年度からは、リスクマネジメントや困難事例対応など、職場における課題解決能力を高める研修や、職員の資格取得に取り組む介護保険施設等の事業者に対する支援を行い、職員の資質向上を図ってまいります。

○鈴木(章)委員 高齢化の進展に伴い、介護人材の需要は増大しますが、人材の確保と定着は一朝一夕で解決する問題ではありません。これから数年で人口の約四分の一が高齢者になる東京で、要介護高齢者の自立と尊厳を支える介護を担う人材が集まれなくては、施設や事業所を幾らふやしても、介護保険事業計画で予定されるサービス量がふえません。まさに人材がサービスのかぎなのです。
 これら若年人口が減少していく中、介護人材の確保、定着は、介護基盤のソフト面の施策として、ハード面の施策である施設整備と同じくらい重要性を帯びてくると思います。今後、都が介護人材の確保定着に向け、一層多角的な施策展開を継続することを強く要望し、質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)

○服部委員長 鈴木章浩委員の発言は終わりました。

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