予算特別委員会速記録第三号

○服部委員長 山下太郎委員の発言を許します。

○山下委員 まず初めに、私からは多摩における医療について伺ってまいりたいというふうに思います。
 都立の墨東病院の事案で命を落とされた方のご主人は、事案後、私が願うのは、もう二度と同じようなことが原因で命を落とす人が出ないこと、だから私はだれも責めない、ただ、医療の質を上げてもらいたいという趣旨の発言をされています。私も二歳になる子どもがいる一人の父親として、我が子を見ることなくこの世から去らなければならなかったお母さんの気持ち、そして、その後一人残され、生まれたての赤ちゃんと一緒に必死に生きていこうとしているお父さんの気持ちを想像し、自分に置きかえたとき、果たして本当に自分もそのご主人と同じように、だれの責任も問わず、ただ黙々と自分の人生を歩めるのかと考えると、本当に胸が張り裂けるような気持ちになります。
 そのご主人の気持ちに立ってみて改めて考えてみたときに、今、東京都が進めている多摩の都立病院の統廃合計画が果たして本当に多摩で医療の質を高めていくことになるのかどうか、改めて質問させていただきたい、そんなふうに思っています。
 まず初めに、多摩の小児医療の現状認識についてお伺いをいたします。
 小児医療単体での不採算性が高く、小児科の患者は容体急変のリスクも高いため、民間の病院が小児科から撤退しているといわれています。この多摩地域において医療施設が減少していることについて、どのような現状認識をお持ちになっていらっしゃるか、ご所見を伺います。
   〔委員長退席、増子副委員長着席〕

○安藤福祉保健局長 東京都の医療施設調査によりますと、多摩地域において小児科を標榜する病院は、平成六年の七十九施設から平成十八年には五十七施設に、また、診療所においても、平成六年の八百七十七施設から平成十八年には七百七十七施設に減少しております。少子化の進展や小児科医不足を背景として、全国的に小児医療施設は減少しており、こうした状況が多摩地域においてもあらわれているものと認識をしております。

○山下委員 この十年強の間に、今ご答弁いただきましたように、多摩では小児科を標榜する病院が二十三も減少し、診療所に至っては百施設も減っている。それだけ小児医療が物すごいスピードで減少しているということだと思います。
 このように、多摩地域で民間小児医療機関が減少しているとすれば、東京都の役割は不足している小児医療を補っていくことだと考えますが、ご所見を伺います。

○安藤福祉保健局長 都は、区市町村が実施する小児初期救急事業に対する支援を行うとともに、二十四時間三百六十五日、入院治療を行う小児救急医療体制を確保しております。平成二十二年三月には、多摩総合医療センターと小児総合医療センターを一体的に整備し、高度専門的な医療を提供していくこととしております。
 小児総合医療センターを中核として、初期、二次、三次の医療機関がそれぞれに機能を発揮し、重層的に連携することにより、多摩地域全体の小児医療水準の向上を図ってまいります。

○山下委員 ご答弁いただいた中に、重層的に連携をする、都は地域医療と連携をするというふうなご答弁だったというふうに思いますが、では、その受け皿となる多摩の医療現場はどのようになっているんでしょうか。年少人口は多摩五十三万一千四百七十七人に対し、区部九十三万六千七百三十七人と約二倍であるにもかかわらず、病院数は区部百四十九、多摩五十七と約三倍、一つの病院が診る年少人口も、区部は六千二百八十七人で済みますけれども、多摩においては九千三百二十四人で、三千人以上も多く担当しなければならないことになります。小児科医一人当たりで見ても、区部三百二十九人、多摩五百五十人と、一人の医師が区部に比べ二百二十六人も多く診なければならない。また、かかりつけ医として期待される診療所においても、区部三百九十九人、多摩六百八十四人と、二百八十五人も多く抱えている状態にあります。
 つまり、現状においても区部に比べ圧倒的に不足し、疲弊している多摩の小児医療現場に、今回の計画はさらなる負荷をかけることとなると考えますけれども、ご所見を伺います。

○中井病院経営本部長 今日の厳しい医療環境の中におきましては、地域の医療機能、医療機関というのは、初期、二次、三次の役割分担と連携が非常に重要であるというふうに考えております。とりわけ、お話にもございました小児あるいは周産期医療のように、医療人材が深刻な不足状況にある分野においては、この認識に立った再編整備でなければ、地域の医療水準の確保、向上は困難であるというふうに考えております。
 こうした認識のもと、今回の小児総合病院への移転統合の対象となる地域につきましては、初期医療については地域の自治体や医師会が連携協力して担い、入院が必要な二次医療については地域病院や大学病院が担うとともに、両者が連携し補完し合いながら、それぞれの役割を効果的に果たしていくための整備を進めているところでございます。
 その一方で、都立小児病院を統合して多摩総合医療センターと一体的に整備いたします小児総合医療センター、こちらではこれまで小児病院ではなかった総合周産期医療センターを稼働させますし、また、我が国初めての小児専門のERなどを設置いたしまして、高度で専門的な医療を飛躍的に充実させてまいります。
 こうしたことによって、多摩地域の小児、周産期の医療水準が確実に向上することになるわけでございますし、また、お話のありました医療現場の負荷ということにつきましても、それぞれの移転後の地域につきましては、新たな病床の整備、それから初期救急医療体制の強化、また、不足する小児科医の確保に都としても全力を挙げて努めているところでございますので、医療現場の負荷がさらに大きくなるという心配はないと考えております。

○山下委員 全くの認識の違いとはいえ、本当にその医療現場で働いているお医者さんたちにそのようにいえるのか、私は甚だ疑問に感じます。この問題については後にも触れさせていただきますので、続いて、格差の問題について質問を続けたいというふうに思います。
 それでは、さらに格差が歴然としている産科や周産期医療に目を向けてみたいと思います。このパネルをごらんいただきたいと思います。このパネルは、東京都の地域別産婦人科医師数をあらわしたものであります。この図が一番、多摩の医療資源の少なさをわかりやすく説明できるものと考え、あえてこのように掲げさせていただきました。
 ごらんいただくとおわかりのとおり、六つの区で医師が五十人以上おり、さらに四つの区で四十人以上おり、かなり都心部に集中いたしております。一方、多摩においては、国分寺を初め六市町村において医師が全くいない状態であります。さらには、多摩の産婦人科医師の高齢化が著しく、多摩においては、五年、十年後の医師数はさらに減少すると考えられています。
 また、都全体で総合周産期母子医療センターは九カ所。うち、区部に八カ所あり、多摩は府中に一カ所しかなく、NICUは、都内百九十五床のうち、区部は百五十九床で八一・五%を占め、多摩は三十六床で一八・五%しかありません。多摩地域の出生数が三万三千七百二十四人に対し、区部が六万七千七百三十二人、ほぼ五〇%であることを考えると、少なくとも多摩地域には八十床のNICUが必要ということになります。
 府中に新しい病院をつくっても、四十五床にしかなりません。ベッド数の増床の必要性は、移転推進派医療関係者でも認めておりますし、我々民主党も、NICUは、重度の病気を持つ子どもが以前に比べ約一・五倍になっていることから、少なくとも現行の二百床ではなく三百床は必要ではないかと主張し続けてまいりました。
 それでは、都は一体どのようにしてこの区部と多摩の格差を解消しようとしているのか、お伺いいたします。

○安藤福祉保健局長 多摩地域における周産期医療体制の整備は重要であると思っております。このため、医師不足という大変厳しい状況にはございますけれども、多摩地域におけるNICUの確保に引き続き努めるとともに、周産期母子医療センターや周産期連携病院を中心として、ネットワークグループの構築を進めてまいります。
 また、先ほど病院経営本部長からお答え申し上げたとおり、多摩総合医療センターと小児総合医療センターを一体的に整備し、二十四床のNICUと九床のM - FICUを有する都内最大の総合周産期母子医療センターを運営することにより、多摩地域における周産期医療は格段に充実することになると考えております。
 今後とも、多摩地域の周産期医療体制の充実向上に向けて取り組んでまいります。

○山下委員 多摩に住み、子育てをしている一員としても、ぜひ格差の解消に努めていただきたいと思いますが、このご答弁はありがたいんですけれども、何ら具体策が見えてこないというのは、正直、思うところであります。
 ここまで明らかになったことは、小児医療に関していえば、多摩地域の医療現場の皆さんは、区部に比べ二倍に近い子どもたちを担当しなければならないこと。そして、総合周産期母子医療センター数では八倍の格差と、本来必要とされているNICUベッド数の半分しか多摩地域は持ち合わせていない、私から申し上げれば危機的な状況にあると考えています。
 その上で、北多摩北部医療圏について伺ってまいります。
 都は、北多摩北部医療圏で小児医療機関は減少傾向にあり、年少人口一千人に対する小児科医師数は、都内、区部平均を下回っているとしながらも、清瀬小児病院が移転をしても、現状の常勤医師二名と、本年四月から採用予定の常勤医師三名及びチーム医師派遣などで医師体制を確保する多摩北部医療センターで地域の二次医療に対応可能としておりますが、清瀬小児病院と多摩北部医療センターでどれだけの患者を診てきたのか、確認の意味でお伺いしたいと思います。

○中井病院経営本部長 平成十九年度実績で申し上げます。まず入院延べ患者数は、清瀬小児病院が一万二千二百三十九人、多摩北部医療センターが一千四百四人で、合計一万三千六百四十三人、一日当たりに直しますと三十七・三人でございます。
 それから、外来につきましては、清瀬が一万一千七百名、多摩北部医療センターが三千二百三十九名、合計が一万四千九百三十九名で、一日当たりに直しますと五十・八人。それから、夜間・休日等時間外の救急でございますが、延べ患者数が、清瀬が一万二千二十九名、多摩北部医療センターが四千百四十一人、合計で一万六千百七十人、一日当たり四十四・二人となっております。

○山下委員 清瀬小児病院は、内科系十科、外科系五科、その他診療放射線科、検査科、看護・医療・心理相談等あり、常勤医師四十五名、その他数十人の非常勤医師たちが支えている病院であります。平成十八年の患者実績数を見ても、ただいまご答弁がありましたけれども、入院患者数はトータルにすると六万八千五百九人、外来患者数八万四千百五十七人、救急患者数一万五千五百三十人と、長年にわたり多摩地域の小児医療の中核として期待にこたえてきました。
 一方、都は、北部医療センターにおいて、常勤医師と、先ほど申し上げたように派遣医師を現時点で確保できる見込みとなり、地域に対して、移転しても安心だと説明をいたしております。しかし、診療科目も十五あり、検査体制もしっかり整い、スペシャリストの常勤医師が四十五人もいる清瀬小児病院が与えていた安心に比べ、常勤医師五名しかおらず、専門外来も最近始めたばかり--少なく、また、医師のうちだれか一人でも欠ければ、先ほどお答えいただいた、都が、地域で担当するとしている患者さんたちも診ることが困難になり、ましてや、公社化された病院に対してどれほど都として責任を持つのかと、さまざまな不安な声も上がっている北部医療センターとでは、地域住民に与えている安心感が全く違って当然だと思います。
 私は、今、都が示している北多摩北部医療圏に対するケアは、都が主張している、地域で担当すべき患者さんすら診れるかどうか、ぎりぎりの状態だと考えていますが、都は、今後何かあったとき、本当にしっかりと責任を持って地域医療の人的確保を含めた医療資源を確保していただけるのか、お伺いいたします。

○中井病院経営本部長 まず地域で、清瀬小児病院が移転後、その医療需要に対応できるのかというご懸念がございましたが、まず初期救急については、地元医師会の協力のもと、多摩北部医療センターと佐々総合病院において、現在、平日準夜帯の小児医療をそれぞれ週三日やっておりますが、これを五日に拡大していく予定となっております。
 また、二次医療につきましては、多摩北部医療センターに最大四十床のベッドを入れられる小児病棟を整備していく予定になっておりまして、これによりまして、近々これは完成いたしますが、清瀬小児病院と多摩医療センターの一般小児の入院実績、先ほど申し上げました三十七人は、十分受け入れ可能ということになるわけでございます。
 また、清瀬小児の外来分につきましても、多摩北部医療センターにおきまして、この四月から外来を毎日、二ブース設置することにしております。これは、先ほど先生指摘のとおり、この四月から多摩北部医療センターの常勤医が二名から五名にふえるということによるものでございまして、外来についても、これで十分対応は可能というふうに考えております。
 それから、救急につきましては、清瀬の救急医療は数が多いわけでございますが、その九割以上はいわゆる初期救急患者さんでございまして、そういう意味では、先ほど申し上げました地域の初期救急体制の中でかなり対応が可能かと思われますが、それに加えて、多摩北部医療センターにおきましても、今回の医師の増員によりまして二次救急体制が強化されます。具体的には二人の当直体制になりますので、これも加えて、十分な対応が可能というふうに考えているところでございます。
 私どもといたしましては、今回の四月からの増員、この三名の増員につきましては、このうち二名は清瀬小児病院にこれまでいたドクターを再採用という形で行ってもらうわけでございます。また、これに加えて、さらに清瀬小児病院、後に小児総合医療センターになりますが、要はチームでの複数の医師の派遣もさらに予定をしているところでございます。
 こういうことで、多摩北部医療センターの医師体制は、今後とも東京都としても支援をしていきますので、十分対応は可能かというふうに考えております。

○山下委員 ちょっと何か感覚が違うんだ。質問はしませんけれども、私が聞いたのは、責任を持ってやるんですかと。責任を持つということでよろしいんですね。聞きませんけれども、そういうことですね。だって、全然答弁が違うと思いますよ。答弁しますか。

○中井病院経営本部長 多摩北部医療センターは公社病院でございまして、地域に必要な医療に対して対応していくというのは、地域病院、公社病院として当然でございますし、また、私ども東京都といたしましても、当然この公社病院の今後の人的資源の維持について、責任を持って対応していくということでございます。

○山下委員 北部医療センターが昨年までたった一人しか常勤のお医者さんがいなかったことを考えても、しっかり今後とも今のご発言をチェックしていかなければいけない、そんなふうに思っています。
 しかし、幾ら北部医療センターに責任を持つとおっしゃっても、一次医療を担うとされている地域の診療所医師の声を伺うと、これまで清瀬小児病院があるからやってこられた、最後のとりでとして、過去に受け入れを断られたことがない、なくなれば診療所は畳まざるを得ないという声も複数伺っております。
 これでは、ただでさえ、先ほど来格差の問題も質問させていただきましたけれども、多摩の医療資源が減少し続けているにもかかわらず、さらなる減少を今回の計画によって招きかねないんじゃないか、そのように思いますが、ご所見を伺います。

○中井病院経営本部長 先ほども申し上げましたが、先生ご懸念の点は、特に今回の移転統合で病院が移転してしまう地域、そこの医療水準がどうなんだということだと思いますが、それについては、先ほども申しましたが、清瀬、そして八王子、梅ケ丘も含めて、それぞれ必要な対応を着々と進めさせていただいているところでございます。
 繰り返しになりますので、その具体的な中身については避けさせていただきますが、いずれにいたしましても、それぞれの地域の小児病院が欠けることによる医療機能については、地域と連携をしながら東京都として対応させていただきますし、それにあわせて小児総合病院、多摩総合医療センターができることによって、三次医療が格段に充実してまいりますので、全体としては多摩地域は非常に医療水準が上がるというふうに考えております。

○山下委員 今は、たまたま例として、抜けた地域の医療資源の減少はどうなんだといって、今のお答えではしっかり対応できるというお答えでした。私が本当に伺いたいのは、今度こそ本当に質問しませんけれども、ちゃんと申し上げているのは(発言する者あり)ありがとうございます。ちょっと時間がないので急ぎますけれども、聞きたいのは、東京都は一次と二次は地域でやるんだといっていますよね。三次に関して、高度医療に関しては、東京都が責任を持って府中に新しい病院をつくって高度なものをやるんだ。高度なものをやるのは別に否定はしません。
 だけれども、その計画によってだけでもなくて、先ほど来検証させていただいているように、ただでさえ多摩の医療資源はどんどんどんどん縮小しているんです。今、前段でお答えいただきましたけれども、東京都が一次、二次に対してしている直接的なケアというのは財政支援です。財政支援を、このパイがあるときにしても、小さくなったときにしても、財政支援自体はそのパイを広げる動きにはならないということです。
 私が申し上げたいのは、多摩を面で見たときに、その多摩の医療資源をどうやって向上させていくんだということも、東京都の、高度医療ということだけではなくて、そういう面でも見ていかなきゃいけないんじゃないかというふうに、その責任があるというふうに考えているわけであります。
 それでは、続いての質問に入ります。私は、そういった医療資源の減少する可能性について、もっともっと真剣にとらえていくべきだと今申し上げました。さて、最後にもう一度、このパネルを見ていただきながら、伺っていきたいと思います。
 もしこのまま移転統合がされた場合、多摩地域の二次保健医療圏では五区分のうち四区分、面積でいうと九三・八%の地域、人口換算にすると七六・二%の人々が、NICUが全くない状況にさらされることになります。また、重篤な小児患者さんを診れる施設が府中と三鷹にしか--同じ医療圏です、なくなってしまいます。
 例えば、青梅から府中までの移動距離と現場到着から病院到着までにかかる時間を見てみると、距離にして二十七・七キロ、時間にすると何と一時間十六分強もかかることになります。多摩地域平均で十九・二分ですから、平均の四倍もかかるということになります。
 さらに、先ほどこのパネルでもお示しした産婦人科医師が一人もいない奥多摩、檜原からだと一時間二十分以上かかることになります。また、これまで都立病院があった清瀬、八王子からでも搬送に五十分以上かかることになります。
 つまり、都が計画している小児病院統廃合計画がもたらす現実は、この広い多摩地域において府中から離れた場所に住めば住むほど、本来救えるかもしれない命を危うくする可能性があるといわざるを得ません。それでも本当に現計画が多摩の医療の質を--三次のお答えをいただきましたけれども、全体として上げることになるのか、ご所見を伺います。

○中井病院経営本部長 まず、産科医療、周産期医療についてでございますが、小児総合医療センターができることによって、総合周産期母子医療センターができると。これは、これまでの小児病院二つにはNICUがございましたが、母体搬送が、産科医がいないということでできなかったわけでございますが、これからは母体搬送を受けられるという大きなメリットがあるわけでございます。
 また、周産期以外、小児も含めての搬送の件について申し上げますと、小児総合医療センターには二台のドクターカーを配置することにしておりまして、一般の救急車で搬送が難しいケースについては、医師が同乗するドクターカーによって迅速に対応することとしております。
 ドクターカーの出動範囲については、これまで実績のある八王子小児病院の例によりますと、地元の八王子市以外への搬送が四分の三を占めておりまして、北は青梅、南は町田、東は武蔵野など、広く多摩地域全体をカバーしております。移転後も、府中から、広範な地域に適切に対応ができるものというふうに考えております。
 また、医療の質の面で申し上げますと、小児総合医療センターでは、最新の小児集中医療、救命救急といったものができるわけでございまして、例えば多発性傷害、交通事故で大けがをしたと。今までですと、清瀬小児でも、八王子小児でも、そういった多発傷害は受けられなかった。交通事故で入れようとしても入れられなかったという状況があるわけでございますが、これからは多摩総合医療センターとチームで、小児総合では当たりますので、こういったお子さんの重大な事故、そういったものにも対応できるということで、質の面でも格段に向上するということでございます。

○山下委員 ドクターカー自身は、私は否定しません。それをふやしていくという方向性も別に否定はしません。ただ、ドクターカーというのは、私が申し上げるまでもなく、救急車にお医者さんが乗って診ていくということですよね。
 私が今申し上げたのは、これだけ一時間二十分もかかっちゃうんじゃないか、お医者さんがその救急車に乗ったからといって、その時間が半分になるわけじゃないですよね。応急処置はできると思います。ただ、申し上げているのは、結局最後は、重篤な場合はしっかりした施設があるところに連れていってあげなければならないという現実がある。そういう点を質問させていただいている。つまりドクターカーは、搬送までに時間がかかるという私が質問した趣旨の根本的な解決方法にはならないと私は考えているところであります。
 清瀬、八王子小児病院の多摩地域で担ってきた役割を考えれば、このまま安易に府中にだけ都立でNICUを含めた高度医療を集約するという現行計画には、墨東病院での出来事を思い返してみたときに、大いに危惧を感じます。
 都は、都立病院をどうするかという極めて内向きな議論だけでなく、きょうの答弁でも何回も地域医療と連携をするというご答弁をいただいていますが、もっと多摩地域の医療不足をどうするかという、面で見た発想に思いをはせていただきたいと思います。私は、少なくとも命にかかわる大切な行政サービスは、区部と多摩とで格差があってはならないと考えています。多摩の医療資源の充実をまず図るべきと申し上げて、次の質問に入りたいと思います。
 続いて、個人情報に関する事故についてご質問をさせていただきます。
 東京都と監理団体における個人情報に関する事故の件数は、平成十七年度八件、十八年度十件、十九年度三十三件、二十年度十九件で、トータル六十九件にも及び、事の重大性すら感じず、個人情報の流出、紛失を繰り返す、その緊張感、危機意識の重大な欠如に、私は怒りを通り越し、もうあきれてしまっています。
 そんな中、平成十九年第四回定例会において、私は、その年度が始まってからたったの半年間で、都と監理団体において、医師が、約百七十人分の氏名、生年月日、診察日時、病名、病状などを含む個人情報を紛失した事故を初め、計十四件もの個人情報を紛失する事故が起きたことについて触れ、病院経営本部に対して、組織としての責任のとり方と再発防止策について見解を伺いました。そこで、時間がないので、一番の質問を飛ばします。
 私の指摘後も、都立病院、公社病院において、さらに三件も個人情報事故が発生しています。さらに、前回指摘した北部医療センターでのケースは紛失事故だったものが、今回は、都立病院において患者氏名、職員氏名、年齢、病名など個人情報がインターネット上で流出してしまいました。このような最悪の事態を招いてしまったわけであります。
 今回は、どのように問題を認識し、再発防止にお取り組みになられるのか、お伺いいたします。

○中井病院経営本部長 病院経営本部では、これまで個人情報管理及び情報セキュリティー対策を徹底するため、全職員を対象とした研修を初め、緊急自己点検あるいは個人情報管理チームによる定期的な巡回点検などを実施するとともに、私物のUSBメモリーの使用を禁止し、すべて公費で調達した認証機能つきUSBメモリーに切りかえたところでございます。
 しかしながら、そういった努力の中でも、一部の職員のルールを遵守しない行いにより、事故が発生したことは大変遺憾なことであり、事故直後から直ちに全職員に対して個人情報管理の徹底をさらに行うとともに、再発防止の一層の強化を図ってきたところでございます。
 今回、こうした事故が発生した要因といたしましては、一部職員の意識改革が十分でなかったという点はあると考えております。病院という大規模な組織、そして二十四時間ローテーションの勤務、また看護師などは毎年一〇%が入れかわるという、そういった職場であって、なかなか意識の徹底、ルールの徹底というのが行き届かなかったという面があろうかというふうに考えております。
 また、公費で認証機能つきのUSBメモリーを配布しているわけでございますが、小型軽量で紛失のおそれがやはりあるという点は変わらないわけでございます。そういった意味での課題もございます。
 そういったことから、今回、全職員を対象とした研修を継続することはもちろん、定期的な巡回点検、相互点検などをさらに強化して、今後も繰り返し行っていくこととしております。
 また、システム、仕組みとして紛失、流出を防止するという対策も必要でございまして、来年度予算では情報セキュリティー対策を重要な柱立てとして、データの移動や保管用のUSBメモリーの使用を最小限に抑えるため、個人情報等のデータを安全かつ集中的に保管することができる全都立病院共有のファイルサーバーを整備していく予定としております。

○山下委員 もう時間がないので、知事に伺います。
 これまで別に知事にどうのこうのは申し上げませんけれども、私は、このご答弁、前回代表質問で触れさせていただきましたが、同じことをいっているんです。方法論は若干違います。こういう改善点がありますといっています。だけれども、前回質問して、これまで一年ちょっとの間に二十九件も起きているんですよ、この問題が。これを何とかして私は減らしたいんです。
 大きな組織ですから、もちろんすぐにゼロになるとは思いませんが、ここは全庁のトップである知事が、こういうときにこそリーダーシップをびしっと示していただいて、私は、しっかり対応していただく以外--今病院経営本部長にお答えいただいて、別に病院経営本部長一人が悪いという話じゃなくて、ちゃんと全庁的にいえるのは、僕はただ一人、知事だと思うんです。そういった意味ではご答弁いただけないでしょうか。よろしくお願いいたします。

○石原知事 情報の漏えいが、意識的なのか、あるいは過失によるのか、ケースによって違うと思いますけれども、このIT文明の時代に、ある種の情報、特殊な情報が経済的な価値を持ちかねないということを私たちはやはり強く認識する必要があると思います。そういう意識の徹底にこれからも一層努めます。

○山下委員 終わります。ありがとうございました。(拍手)

○増子副委員長 山下太郎委員の発言は終わりました。
 この際、議事の都合により、おおむね三十分間休憩いたします。
   午後五時三十三分休憩

   午後六時七分開議

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