予算特別委員会速記録第三号

○増子副委員長 鈴木あきまさ委員の発言を許します。

○鈴木(あ)委員 初めに、現下の厳しい経済状況の中で、歯を食いしばって懸命に東京の製造業ひいては日本の製造業を牽引している都内のものづくり中小企業の人材確保、育成についてお尋ねをいたします。
 私の地元大田区には、大企業を凌駕する高い技術を持ち、その企業の技術がなければにっちもさっちもいかなくなるというような、オンリー・オオタ・クオリティーといわれるオンリーワン企業や、精密で細かい加工でハイテクを支えている企業が数多く集積をしております。
 しかし、このような企業でも、現在、大手企業の急激な減産や生産調整により、従来の三、四割程度の受注しかないなど、大変厳しい経営環境にあります。今月の初めに、我が都議会自民党ものづくり推進議連と東京都工業団体連合会との意見交換会の席上でも、ことしになってから仕事の受注が激減している現状を伺ったところであります。
 民間の就職支援サイトなどを活用して若い人を獲得したいのだが、経費もかなりかかることから、なかなか活用できない。就職してもらいたいのだが、効果的な情報発信ができず、うちの会社の魅力が若者や保護者に十分に伝え切れない。最近では、就職したい本人よりも、その母親にPRしなければならないというような声も聞こえておりますが、そんな声や、経営の基盤は人材であり、社長の給料を削ってでも社員を確保、育成しようと努力している企業もあるという話を聞いております。
 また、実際にものづくり中小企業の現場で働いている若い従業員の人からも、入社して当分の間は基本的な技術を学ぶための地味な作業が多いこともあり、自分には不向きなのではないかと思っていたが、実際にやってみて、先輩たちからもよくできたよというようなことをいわれて、やりがいを感じているという声も聞いております。
 ものづくり中小企業は、若手の大企業志向、ものづくり離れ、中小企業に対する認識不足のために思うように人材が確保できない企業が多いのが現状であり、海外との厳しい競争に打ち勝つためにも、若い人たちが技術をしっかりと伝承していかなければならないと思います。
 ものづくり中小企業は、とかく三Kといわれるようなイメージが先行することがいまだにありますが、今お話ししたように、実際にはものづくり中小企業の職場は魅力的で、働きがいがあるということを多方面に伝えていくことが非常に大切だと考えております。
 ものづくり中小企業の魅力を若者や保護者などにアピールし、ものづくり中小企業が若い人材を確保できるよう、都が積極的に支援していくことが重要と考えますが、都はどのような取り組みを行っているのか、まず伺います。
   〔増子副委員長退席、三宅副委員長着席〕

○佐藤産業労働局長 東京の産業を支えるものづくり中小企業が確実に人材を確保するためには、お話にもありましたが、何よりもまず、その魅力を若者や保護者に理解してもらうことが重要であるというふうに認識をしております。
 そのため都では、今年度から、都内ものづくり中小企業の知名度向上、それと若者等の理解を深めるために、中小企業の魅力を発信するプロジェクトを実施し始めたところでございます。
 具体的にはまず、世界に誇る技術を持った企業や若手技術者が最先端の加工を行う企業等を紹介した冊子でありますが、「輝く技術、光る企業」、こういう冊子でありますけれども、これを二万部作成いたしまして、若者の就職相談等に活用していただくよう、工業高校や大学、高専等に配布をしたところでございます。
 あわせまして、ことしの一月二十六日になりますけれども、魅力ある企業五十社、これを順次紹介するホームページを開設いたしまして、二月末まで、約一カ月間になりますけれども、このアクセス件数は約九万件に及んでおります。さらに平成二十一年度は、これに百社を加えて合計百五十社を紹介していく予定でございます。
 また、学生等に中小企業で働くことの大企業とは異なる魅力を伝えていくには、直接現場でそのすぐれた技術や技術者たちの熱き思いに触れることが効果的であり、また重要であるというふうに考えておりまして、来年度就職活動に臨む学生等を対象にいたしまして、すぐれた技術者を擁する企業等を訪れ、現場を体験する事業を実施してまいります。
 これらのさまざまな取り組みによりまして、中小企業の人材確保を着実に支援してまいります。

○鈴木(あ)委員 さて、今日と同じように厳しい時代であったといわれるITバブル崩壊時に若い人材の採用を積極的に行い、今ではその若手たちが会社の重要な戦力になっている、そんな話を最近聞きました。ぜひものづくり中小企業の魅力を積極的に発信して、若者がものづくり中小企業に就職していくことができるよう、都内のものづくり企業を数多く紹介をしていただけるように、今局長からも答弁があったように、ぜひ要望しておきたいと思います。
 今、局長がお話しになっていた「輝く技術、光る企業」、私もつぶさに読ませていただきましたけれども、大変よくできていると思いますけれども、最近の若者は漫画とかイラストというものから入っていくんですね。そういう意味で、そういったものを使って、学生や若い人たちが興味を持って、ぱっと手にとるような、そんなような冊子をぜひつくっていただきたいと思います。
 さて、企業経営者からは、新卒はすぐやめてしまうとか、ちょっと育つとすぐ転職してしまうなど、人材育成の難しさをよく聞いております。
 また、採用したものの、人材育成のための部署がないために、体系的に人材育成ができずに、技術、技能の継承などに支障を来しているというケースも多いと聞いております。
 人材育成は、企業がそれぞれの実情に合わせ、みずからの責任において行っていくことが本来なのかもしれませんが、なかなかそこまでは手が回らないのが中小企業の現実です。
 しかしながら、人材育成について、企業の将来を見据えて、経営戦略を考慮した上で計画的に行っていくことが、今後ものづくり中小企業の飛躍には欠かせないと考えております。
 ものづくり中小企業の人材育成について、都は積極的に支援をしていくべきと考えておりますが、所見を伺います。

○佐藤産業労働局長 ものづくり中小企業にとりまして、計画的な人材育成は、企業の礎となる技術の継承に加えまして、新製品、新技術の開発に欠かせない、こういうことから極めて重要でありますが、その一方で、計画的な人材育成に手が回らない企業も少なからずあるというふうに考えております。
 このため都では、これまでも中小企業振興公社や産業技術研究センターにおきまして、技術力の向上等を目的とした各種研修を実施してきておりまして、平成十九年度は延べ約四千人が参加をしていただいております。
 また、今年度から、企業経営や人材育成に詳しい中小企業診断士等の専門家を企業に派遣いたしまして、総合的かつ体系的な人材育成計画を企業とともに作成するなど、中小企業の人材育成を支援しているところでございます。
 平成二十一年度は、この支援対象企業を着実にふやしていきますとともに、人材育成計画に沿って実施をいたしました研修の効果を検証して、必要に応じて計画見直し等のフォローアップを行うなど、きめ細かく中小企業の人材育成を支援してまいります。

○鈴木(あ)委員 ぜひ局長、頑張ってください。応援をしていきたいと思います。
 次に、ものづくり教育の推進について伺います。
 去る一月二十三日、鹿児島県の宇宙機構種子島宇宙センターからHⅡAロケットが打ち上げられました。知事もご存じだと思いますが、このロケットには都立高等専門学校の学生たちが製作した小型衛星が搭載されております。大変厳しい経済環境の中で、この明るいニュースは話題となりました。
 また、平成十九年十一月に静岡で開催された技術五輪国際大会において、都立荒川工業高校の卒業生が金メダルを獲得して、ほかにも、造園部門でも都立農芸高校の卒業生が金メダルを獲得するなど、工業高校や高等専門学校などは、これまでもものづくり企業に優秀な人材を多数輩出して、我が国の経済成長を支えてきたわけであります。
 しかしながら、工業高校においては、高学歴志向や普通科志向の高まりに伴って、消極的な理由で、本当は入りたくなかったんだけどもなんというような理由で入学する生徒もいる現状に加えて、製造業の、特にことしですが、派遣切りというような問題が繰り返しテレビで放映をする、こういった状況などがあって、現下の厳しい雇用環境が進学先としての工業高校の魅力に悪影響を与えているのではないかと非常に心配をしております。
 一方で、中小企業では、団塊の世代の退職が既に始まっており、ものづくり人材の育成は喫緊の国家的課題であります。大手企業が採用抑制に走る状況を逆手に、人材獲得の好機ととらえ、積極採用を行う企業も多いと聞いております。
 私の地元の大田区にはすぐれた技術を持つ中小企業が多数ありますが、その担い手であるものづくり人材を安定的に供給できないことも、その企業の減少をとめることができない大きな要因だと考えております。
 私の後援者の中小企業の社長さんからも、よく若い人がいたら紹介してよというような依頼を受けます。即戦力となる人材への需要は強く、工業高校としてこたえていく必要があると考えます。
 そこで、即戦力となるものづくり人材の育成について、都立の工業高校の取り組みを伺います。

○大原教育長 ご指摘のとおり、工業高校におきまして、即戦力となるものづくり人材を育成することは大変重要でございます。
 そこで、例えば都立六郷工科高校では、学校と企業が連携をいたしまして生徒を育成するデュアルシステム科を設置しております。卒業生の半数以上が協力企業に就職するなど、地域企業の後継者育成として高い評価をいただいております。
 今後は、実践的な人材育成が可能な東京版デュアルシステムを他の工業高校へ導入するために、教育課程の検討や実習受け入れの企業開拓を行います。また、工業高校に企業現場と同水準の実習設備を整備し、実践的な技術、技能を身につけさせるとともに、技能検定などの資格取得を促進し、中小企業を初めとするものづくり企業が求める即戦力となる人材を育成してまいります。

○鈴木(あ)委員 私も先週の三月七日に、今、教育長から答弁がございました六郷工科高等学校の卒業式に出席をしてまいりました。笑顔で校歌を歌う百五十六名の卒業生の顔は輝いておりました。デュアルシステム科十五名の卒業生のうち九名がデュアルシステムの協力企業に就職をしているということを学校から伺いました。また、第二種電気工事士、危険物取扱者など、卒業生のほとんどが何らかの資格を複数取得しており、まさに即戦力となるものづくりの人材育成を行っているということを評価させていただきたいと思います。
 こうした取り組みを他の工業高校にもぜひ広げて、ものづくり現場である中小企業にとって即戦力となる人材をしっかりと育てていただきたいと思います。
 先ほど触れた都立の高等専門学校の学生たちは、二〇一〇年に打ち上げ予定の金星探査機の相乗り衛星に電子基板を搭載することを計画しており、次代を担う若い力に大きな期待を寄せるところであります。
 石油などの天然資源に恵まれない我が国にとって、経済を牽引するのはものづくりであり、工業技術はものづくりの重要な源泉です。また、地球環境問題を背景とした省エネルギー、省資源などの新たな技術の開発が求められており、厳しい経済環境の中でこそ磨かれるものづくりの感性もあり、ものづくり人材育成の好機であります。この辺は知事が一番感性にぴんとくるところがあると思っております。
 次代を担う若者や子どもたちが将来の仕事としてものづくりに関心を持てるような社会の実現を目指して積極的に取り組んでもらうことを期待して、次の質問に移ります。
 教育は国づくりの基本であり、国家百年の大計であります。我が国の今日の発展は、勤勉さという国民性のもと、世界トップクラスの知識と技術力があったためです。こうした我が国の繁栄には、教育が大きな役割を担ってまいりました。
 現在、アメリカ発の世界的経済危機を乗り越えるためにも、教育の果たす役割は大きいと考えます。しかしながら、今日の我が国の子どもたちの状況を見ると、学力低下が国民の大きな関心事になり、道徳心の欠如や社会のルールを無視するなどの規範意識の欠如が問題となっています。
 これらの問題を踏まえて、東京の次代を担う人材を健全に育成するためには、学校はもちろん、家庭、地域社会のそれぞれが責任を果たし、連携して取り組まなければなりません。
 そこで、まず学力向上について質問をいたします。
 学力の向上を図るため、都内各自治体ではさまざまな取り組みを行っております。中には、来年度から、基礎、基本の定着を図るための補習を行うために予算化した自治体もあると聞いております。
 我が大田区では、平成二十一年度から、希望する小中学生を対象として、算数、数学、英語の補習を始めると聞いております。
 都教育委員会においても、昨年十月に、児童・生徒の学習のつまずきを防ぐ指導基準(東京ミニマム)を公表して、子どもたちの基礎、基本の定着に力を入れております。
 この東京ミニマムを活用する新たな取り組みについては、さきの第四回定例会において、我が党の代表質問に対して、平成二十一年度から、確かな学力向上実践研究推進校を指定して、授業改善の実践的な研究を行うとの答弁がありました。
 そこで、確かな学力向上実践研究推進校の事業のねらいと内容、また成果をどのように広めていくかを伺います。

○大原教育長 確かな学力向上実践研究推進校事業のねらいでございますが、これは昨年十月公表の児童・生徒の学習のつまずきを防ぐ指導基準(東京ミニマム)を活用いたしまして、児童生徒一人一人の学習の実態を踏まえた授業改善を推進して、基礎、基本の定着と応用力の伸長を図ることでございまして、平成二十一年度に小学校六校、中学校三校の研究推進校を指定する予定でございます。
 研究推進校には、習熟の程度に応じた多様な学習形態が可能となるよう、少人数指導学習指導員を配置いたしますとともに、各校の校内研修や授業改善の充実を図るために、学識経験者やすぐれた実践経験を有する退職校長等、学力向上アドバイザーを派遣することで、東京ミニマムの効果について実践を通して検証してまいります。
 こうした研究推進校の成果につきましては、授業公開とそれに基づく研究協議会の開催や、授業改善実践事例集の作成、配布を通しまして、都内のすべての公立小中学校の教員を初め保護者等に発信するなど、児童生徒の学力の向上に積極的に取り組んでまいります。

○鈴木(あ)委員 さて、児童生徒の学力を向上させるために、東京都教育委員会は、平成十五年度から独自の児童生徒の学力向上を図るための調査を実施し、東京都の児童生徒の学習状況を把握してまいりました。
 都教育委員会が独自の児童生徒の学力向上を図るための調査で取り組んできた内容と今後について伺います。

○大原教育長 都教育委員会は、基礎、基本の定着状況を見るための教科に関する調査、それから身につけた力が日常生活等の場面で発揮できるかを見るための問題解決能力等に関する調査などによりまして、その内容を工夫しながら、多面的に東京都の児童生徒の学習状況を把握してまいりました。さらに、調査結果を分析し、東京都の児童生徒のつまずきの実態や授業改善のポイントを明らかにすることで、学力の向上を図ってきたところでございます。
 今後、新しい学習指導要領の実施により、子どもたちの学ぶ内容が変わってきますことから、引き続き児童生徒の学力の把握に努めていく必要があると考えております。

○鈴木(あ)委員 都独自の児童生徒の学力向上を図るための調査は、いろいろ反対するという声もあるようなんですけども、ぜひ続けていただきたいと思います。また、学力の向上は都民の切実なニーズであり、今後も学力向上の施策を推進していただきたいと思います。このことを要望して、次の質問に移ります。
 近年における社会全体の規範意識の低下は目を覆うばかりです。スポーツ界のドーピング、相撲界の大麻事件などは、子どもにも影響を与えていると心配をしております。規範意識の低下は社会性の欠如した子どもたちをふやしています。
 規範意識を高めるためにどのように取り組んでいるのか伺います。

○大原教育長 価値観が多様化している現在におきまして、子どもたちに社会の責任ある一員として生きていくために必要な規範意識を身につけさせることは、教育上の課題として極めて重要であると認識をしております。
 学校におきましては、時間を守る、忘れ物をしないなど規律ある生活態度の育成を通しまして、規範意識の素地を養っております。さらに、都教育委員会は、東京都教育ビジョン(第二次)に規範意識の育成を重点施策として位置づけまして、人として誠実に行動し、その結果に責任を持つ生き方を学ぶ道徳教育の質的向上に努めますとともに、社会の秩序を維持するために必ず守らなければならない法に関する教育の推進に着手したところでございます。
 今後、こうした取り組みを通しまして、社会の形成者として必要な規範意識を身につけた子どもたちを育成してまいります。

○鈴木(あ)委員 子どもたちに法や決まりの意義を理解させ、人間として当然持つべき規範意識を身につけさせる教育は、都民のニーズでもあり、今後も施策を推進していただきたいと思います。
 ともすれば、法に従えばそれでよしとしたり、法や決まりは自分たちを拘束するものとして反発したりするなどという様子も見受けられます。昔からそういうところがあるわけなんですけれども、特に最近はそういう傾向が強いと思います。法や決まりは守るべきものということを教えていくだけでは、本当の意味での規範意識の育成とはいえないのではないでしょうか。なぜ法や決まりがあり、なぜ守らなければならないのかという意義を考えていく教育も必要であると考えております。
 そこで、法に関する教育をどのように進めていこうとしているのか、お伺いをいたします。

○大原教育長 都教育委員会は、学校関係者はもとより、全国に先駆けて法務省、裁判所、弁護士会の代表も構成員とする法教育研究推進協議会を平成二十年七月に設置したところでございます。
 これまで学校では、法や決まりを守ることを知識として教えるにとどまる例が多く見られましたけれども、今後は、この協議会における議論を踏まえまして、法の目的や自由と責任、権利と義務の関係、つまりは、なぜ法があり、なぜそれを守らなければならないかということについて、児童生徒が系統的に学べるよう、カリキュラムを開発いたしますとともに、指導資料を作成して学校への普及啓発を図ってまいります。
 平成二十一年度からは、指導資料を活用した公開授業やシンポジウムを開催するなど、法に関する教育の取り組みを推進いたしまして、法の意義を理解し遵守する児童生徒を育成してまいります。

○鈴木(あ)委員 私は平成三年から保護司を務めておりますが、自分が担当した対象者、特に未成年者の法や決まりを守るという規範意識の欠如は甚だしいものがあります。法や決まりを逸脱してしまった子どもたちには社会性の欠如が見られます。こうした子どもたちに規範意識を身につけさせるためには、学校外の方々の協力を得ていくことも大切であると考えます。
 法に関する教育の取り組みを推進すると同時に、実際に法を守らない子どもたちに対しても規範意識を身につけさせなければなりません。そのため、保護司や民生・児童委員等との連携があると考えますが、所見を伺います。

○大原教育長 喫煙や暴力行為など、法を守らない子どもたちが規範意識を身につけ、社会生活に適応できるようにするためには、地域関係者や関係諸機関はもとより、社会総がかりでこれに取り組むことが不可欠でございます。
 そのため、公立小中学校では、学校サポートチームの設置に取り組みまして、保護司や民生・児童委員など地域関係者と連携して、反社会的行動をとる子どもたちの問題行動の早期解決を図っております。
 現在、都教育委員会は、その設置や運営に当たりまして具体的な手順を示し、成功している先行事例の提供を行うなど、区市町村教育委員会と連携して各学校の支援を進めております。
 今後も、こうした取り組みを通しまして、反社会的行動をとった子どもたちに、法や決まりを守らせ、立ち直りのための手助けを行うなど、家庭、地域、学校が一体となった健全育成を推進してまいります。

○鈴木(あ)委員 地域との連携ということで、先ほど、保護司や民生・児童委員等といいましたのは、場合によっては警察との連携というのも、既にあると思いますけれども、そういったところも視野に入れて、しっかりとやっていただきたいと思います。
 次に、福祉のまちづくり条例の改正について伺います。
 都は、二〇一六年の東京オリンピック・パラリンピック競技大会開催に向け、二月十二日、IOCに立候補ファイルを提出いたしました。私たち東京オリンピック・パラリンピック招致議連も、十月二日のコペンハーゲンでのIOC総会で招致が実現するように、東京都とともに全力で取り組んでまいります。
 都は、立候補ファイルの中で、ユニバーサルデザインの考えに基づき、人をまちづくりの中心に据え、より安全に、より安心して、より快適に暮らすことのできるような福祉のまちづくりを進めていると述べています。
 オリンピック・パラリンピック招致を確実なものにする上で、今、この時期に福祉のまちづくり条例をユニバーサルデザインの理念のもとに改正をして、世界じゅうから集うすべての人々にとって、快適かつ有意義に過ごせるよう東京を発展させていくことは、非常に重要であり、その成果は将来にわたり東京の財産になると考えるものであります。
 日本国民の二〇一六年オリンピック・パラリンピック招致への賛意、支持は七〇%を超えていますが、高齢者、障害者を初め、子育て世代にとっても、世界一生活しやすい東京をつくることをPRすることが、ますます東京都民の賛同を高めることができると私は考えます。
 そこで、オリンピック開催を契機として、今こそユニバーサルデザインのまちづくりをより一層推進すべきと考えますが、知事の決意を伺います。

○石原知事 東京は、非常に正確な公共交通網、とにかく二十三区に限っていいましても、あれだけ電車の駅の数の多い都市はありませんし、また、それが実にほとんど狂いなく運行しているという、そういう比類ない特徴を持っています。また、世界で一番安全で清潔な都市空間、あるいはまた、ミシュランの--この評価が絶対とはいいませんが、しかしあの権威は信憑性もあると思いますけども、その星づけを受けているレストランの数が世界で一番多いと、そういった世界の他の都市にない魅力を有しております。
 「モノクル」というイギリスの非常に権威のある雑誌の評価ですと、世界の都市の中で最も住みやすい順位の中で東京は三番目でありましたが、これはほかの都市は、一番、二番は非常に人口の少ない北欧の都市でありまして、一千万を超す人口を持った都市の中でこれだけ高い評価を受けている都市はないと思います。
 この魅力をさらに高めるとともに、障害者、高齢者、子ども、外国人など、すべての人が快適に暮らして、訪れることのできるようなまちとするために、福祉のまちづくり条例を改正することといたしました。
 オリンピック・パラリンピック招致を契機に、ハード面でもソフト面でも、ホスピタリティーに満ちたユニバーサルデザインの先進都市東京の実現を目指していきたいと思っています。

○鈴木(あ)委員 今、知事から力強い決意をお伺いいたしましたが、東京がオリンピック・パラリンピックの開催を契機として、高齢者や障害者や子どもたちに優しい大都市にますますなるんだと、発展し続けるんだということを、これからもPRをしていくべきだし、そのことを今改めて確信をしたところでございます。
 そこで、次に条例改正に関連して所管局からお伺いをさせていただきたいと思います。
 都は、条例改正により、バリアフリー化に関する施設整備基準への適合を、これまでの努力義務から遵守義務にするとともに、これまで届け出の対象外であった小規模な小売店や飲食店なども新たに届け出の対象としております。また、事務所、工場についても届け出の対象を拡大するとのことですが、そのことは、障害を持つ方々の一般就労を促進することにもつながるものであり、また、そこで働くすべての人にとって、働く環境の改善になるものです。
 こうした規定の整備により、福祉のまちづくりが一層進むことは大変結構なことですが、同時に、福祉のまちづくりは、都民、事業者等を含めた地域社会全体の理解と協力のもとに推進していくことが不可欠です。
 福祉のまちづくりを着実に進めていくためには、厳しい経営環境の中で必死に頑張っている中小零細事業者への適切な配慮も必要であると考えますが、ご所見を伺います。

○安藤福祉保健局長 ご指摘のように、ユニバーサルデザインに基づくまちづくりを進めるためには、事業者の理解と協力が不可欠でございます。このため、今回の条例改正について、十分な周知期間を確保するとともに、事業者団体連絡会等を通じて普及啓発を図ってまいります。
 また、生活に身近な小売店や飲食店などについては、新築、改修時の届け出義務を小規模施設にまで拡大いたしますが、小規模建築物の実情に十分配慮した施設整備基準を新たに定めることといたしております。
 さらに、建物構造上、この基準の達成が難しい場合には、店舗の従業員による介助での対応を認めるなど、弾力的な運用を図ることとしております。

○鈴木(あ)委員 代替措置による対応や新基準の弾力的な運営をすることで、遵守義務という、やらなければいけないんだという心のバリアを事業者から取り払って、福祉のまちづくりをぜひ進展させていただきたいと考えております。
 さて、新たな条例で理念として掲げたユニバーサルデザインの考え方に基づき、高齢者や障害者等だけではなくて、外国人や子どもなども含めたすべての人たちにとって、住みやすい、訪れやすいまちへと東京をさらに発展させていくために、具体的な施策としてどのように推進していくのか、都の見解を伺います。

○安藤福祉保健局長 都は、ユニバーサルデザインの考え方に基づき、すべての人が安全・安心、快適に暮らし、訪れることができるまちづくりを目指しまして、平成二十一年度からの五年間を計画期間としました新たな推進計画を策定いたします。
 この計画には、災害発生時における要援護者支援や公共交通機関などのバリアフリー化の促進、国内外から訪れるすべての人が東京の魅力を楽しめるわかりやすい情報提供など、福祉、都市基盤整備、観光等のさまざまな分野の施策を盛り込んでまいります。

○鈴木(あ)委員 私の地元の大田区では、大田区の将来像「地域力が区民の暮らしを支え、未来へ躍動する国際都市 おおた」の実現に向けて、おおた未来プラン十年を年度内に策定して、蒲田駅など駅周辺のまちづくりを計画しております。
 地域における福祉のまちづくりを進めていくには、住民に身近な区市町村との共同が必要であると考えますが、都として区市町村に対する支援をどのように考えているのか、所見を伺います。

○安藤福祉保健局長 都は、駅や商店街などの一定の区域を、ハード、ソフト両面から整備する区市町村に対しまして、ユニバーサルデザイン福祉のまちづくり事業により支援しておりますが、来年度も積極的に取り組んでまいります。
 これに加えまして、来年度新たにつくります地域福祉推進区市町村包括補助事業では、例えば、商店街に通じる歩道の段差解消など、区市町村が地域の実情に応じて実施する個別の整備について支援をしてまいります。
 また、新たに区市町村福祉のまちづくり取り組み発表会によりまして、先駆的な事例を広く紹介し、区市町村の積極的な取り組みを支援してまいります。

○鈴木(あ)委員 大田区は、来年の十月の羽田空港の再国際化に備えて、魅力ある都市をつくっていこうということで、松原区長を中心に頑張っているところでございますが、羽田空港のまさにキー駅となる蒲田駅等々で、こういった本当にユニバーサルデザインのまさにまちづくりが大田区の核としてつくられていく、そういったことにもぜひ東京都のいろいろな施策を通じて協力をしていただきたいというふうに思います。
 福祉のまちづくりをより弾力的に支援する新たな包括補助事業の創設を高く評価いたします。区市町村がこの事業を使って積極果敢に先駆的な福祉のまちづくりに取り組んでいく、東京じゅうが取り組んでいく、そういったことにぜひ期待をしたいと思っておりますので、ぜひ頑張っていただきたいと思います。
 さて、今回の福祉のまちづくり条例の改正では、整備基準への遵守義務対象となる規模を一部引き下げて、建築物バリアフリー条例と合わせるなど、二つの条例の間での整合性を図ったと聞いております。
 一方、建築物バリアフリー条例の方は今回改正を行っておりません。福祉のまちづくりをさらに推進するためには、バリアフリー条例の見直しもする必要があるのではないかとの意見も一部関係者の間で出されていたと聞いております。
 そこで、今回、福祉のまちづくり条例の改正とあわせて、建築物バリアフリー条例を同時に改正せず、対象規模を引き下げなかった理由について伺います。

○只腰都市整備局長 建築物バリアフリー条例における対象規模につきましては、既に平成十五年の条例の制定時に、法の委任規定に基づきまして、建築用途に応じて政令に定める対象規模より引き下げをしております。
 今回、バリアフリー条例に定める対象規模と合わせるよう福祉のまちづくり条例を改正することで、二つの条例の整合性を図っております。
 バリアフリー新法の規定を活用しまして、区市町村が地域の実情を踏まえ、独自の条例により対象規模を設定することが望ましいことから、今回、バリアフリー条例の方の改正は行わなかったものでございます。

○鈴木(あ)委員 確かに都内では、建築物の用途、規模等が地域によって多様でありますから、都全体にわたって一律的に対象規模を下げることは適切ではなく、地域の状況に応じて、区市においてきめ細かく対応するのが妥当であると考えます。
 その対象規模についてですが、バリアフリー条例では、基準適合義務の対象となる規模は、特別特定建築物の用途にかかわらず、一律、床面積二千平米以上となっています。都のバリアフリー条例では、ただいまの答弁にあったように対象規模をこれより引き下げており、バリアフリーの推進という意味では確かに歓迎すべき規定であると思いますが、二千平米以上の規模の施設に求められる基準を、そのまま小規模な施設についても一律に適用するというのはいささか、疑問なしといえないところです。
 そこでお伺いをさせていただきます。建築物バリアフリー条例には、敷地の形態上などやむを得ない理由で基準をそのまま適用するのが困難な場合は適用しないことができる、制限の緩和規定もあるというふうに聞いておりますが、特に小規模な建築物の確認事務を行っている区などに対し、都はどのような指導を行っているのか、お伺いをいたします。

○只腰都市整備局長 建築物バリアフリー条例の運用は、建築確認事務を担当する行政庁の所管とされておりまして、条例では、既存建築物など、その状況によりやむを得ない場合は、所管行政庁の判断で関係基準を適用しないことができるとされております。
 都は、この制限の緩和規定を、建築物の規模、用途等に応じまして適切に運用するよう、所管行政庁である区などに対し引き続き指導してまいります。

○鈴木(あ)委員 大田区の私がかかわった事例で、小規模な保育園のバリアフリー化に当たって、建築確認を所管している大田区の対応でうまくいったことがありました。こうした事例も参考にしながら、また、今回の福祉のまちづくり条例の改正では、新たに小規模建築物用の整備基準を設けているようですから、建築物バリアフリー条例の運用に当たっても、車いす利用者などにとっての実質的な動線などの機能が確保されている場合には、基準の機械的な適用ではなく、管理運営面などの実情も考慮しながら、弾力的な運用を行うよう、引き続き区などに対して指導をしていただきたい、そのように要望をさせていただきまして、私の質問を終わらせていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)

○三宅副委員長 鈴木あきまさ委員の発言は終わりました。
 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後三時八分休憩

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