予算特別委員会速記録第二号

   午後六時二十三分開議

○石川副委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 藤井一理事の発言を許します。

○藤井委員 私は、都議会公明党を代表いたしまして、予算特別委員会の総括質問を行います。
 米国発の金融危機が引き金となった世界的な景気下落は日本の実体経済にまで及び、都民、中小企業は底の見えない景気、雇用情勢に不安を抱え、その都民の不安にどのようにこたえていくかが今、都政に問われております。
 一方で、この急速な景気下落は法人税の減収となって都財政を直撃し、さらに不合理な法人事業税の暫定措置の影響が加わり、厳しい財政環境の中での予算編成を余儀なくされました。
 今こそ、都が必要な政策を積極的に展開し、直面する危機に的確にこたえていくことはもちろん、将来を見据えた施策も着実に実施することにより、この暴風雨のような経済不況の中から都民生活を守っていかなければなりません。
 都議会公明党は、二十一年度予算編成に向けて、中小企業の支援や雇用対策、産科医療の充実などの要望書を提出し、さらに知事原案に対して復活要求を行い、二十一年度予算に政策をすべて反映させることができました。
 都の一般会計予算は、都税の大幅な減収もあり、平成二十年度と比べると三・八%減の六兆五千九百億円で、五年ぶりのマイナスとなりましたが、一般会計のうち政策経費である一般歳出は、反対に二・九%増の四兆五千四百億円となり、四年連続でプラス予算となっています。これは、都がなすべき役割を確実に果たすという知事の積極姿勢のあらわれであり、時宜にかなったものと評価いたします。
 一般歳出がプラスの予算を確保することができたのは、公明党と知事が手を携え、職員定数の削減など行財政改革に取り組むとともに、基金を積極的に積み立てるなど、これまで培ってきた都財政の底力によるものであると考えます。
 こうした観点に立って、以下、当面する都政の重要課題について質疑を進めていきたいと思います。
 初めに、財政問題について質問いたします。
 二十一年度予算を大規模偏重型といっている政党もありますが、私は、ソフト、ハードの両面からバランスよく財源が振り向けられた予算になっていると考えます。特に危機克服への新たな活力を生み出す先駆的な取り組みについては、環境施策の推進を通じた先進技術による産業の活性化や、耐震化を初め都市づくりの取り組みを通じた新たな需要創出に果断に取り組むものとなっております。こうした取り組みは、景気が急速に悪化する中で、懸命に努力している中小企業への支援にもつながるものであります。
 その中で都は、今回、主要施設十カ年維持更新計画を発表いたしました。警察署や消防署、学校といった都民の安全・安心を守るための拠点となる施設など、必要な施設の維持更新を計画的に進めるとしたところであり、この取り組みに中小企業が参画することで、東京の活力が高まっていくと思います。
 また、今後の都財政を取り巻く環境が予断を許さない中、都は、我が党が提案した公会計制度や基金の活用など、さまざまな手だてを講じて施設の維持更新の財源を確保することも重要であります。
 そこで、まず、都有施設の維持更新を着実に進めていくべきと考えますが、見解を伺います。

○村山財務局長 都有施設の維持更新は、耐震化の実現、CO2の削減など、都政の重要課題に資するものでございまして、また、中小企業の参画が可能な分野も多く、東京の経済的な活力の向上にも大きく寄与するものでございます。
 今後、都財政をめぐる環境が一層厳しさを増すことも覚悟しなければならない状況でございますが、そうした中にあっても、都有施設の維持更新を着実に推進するという観点から、十カ年の計画期間を三つに分けまして、期ごとに見直しを図ることにより、経済社会状況の変化などに弾力的に対応していくことといたします。
 計画実施のための必要な財源につきましては、新たな公会計制度の視点も生かしながら、社会資本等整備基金や都債の活用などにより、財政負担の平準化、あるいは世代間負担のバランスなどに留意いたしまして、厳しい環境のもとでも着実に維持更新に取り組んでまいります。

○藤井委員 ところで、共産党は、平成二十年第一回定例会におきまして、十九年度一般会計補正予算について、このようにいっております。行政水準を維持するのに必要な財政は余りあるほどあり、過剰な積み立ては必要ないと主張いたしまして、今回の二十一年度予算の財源確保で重要な役割を果たしております法人事業税国税化対策特別基金に反対をいたしました。また、共産党は、二十年度一般会計予算についても、史上最高のため込みと、基金積み立てを批判しております。しかし、共産党が主張するように基金を積み立てていなければ、二十一年度の積極果敢な予算は組めなかったのは明らかであります。
 経済の先行きが極めて不透明な中で、我が党は、将来への備えとして基金の積み立てを図る必要性を訴えてまいりました。中長期にわたり、都民へ安心をもたらし、希望を指し示していくためには、基金を初め財政の対応力を活用した財政運営を図っていくことが重要と考えますが、都の見解を伺います。

○村山財務局長 過去最大の税収減の中にあっても、二十一年度予算を積極的な予算として編成し、同時に、将来への備えとして財政対応能力を確保しておくことができましたのは、これまで都税の増収の局面において、基金をしっかりと積み立て、都債の発行抑制に努めてきたからでございます。
 今回の予算で活用いたしました基金は、法人事業税国税化対策特別基金、それから環境、福祉分野などの集中的な取り組みに備えた三基金、合わせて四つの基金でございまして、活用額の合計は二千七百億円でございます。これらの基金は、いずれも十九年度に新たに設置し、積み立てたものでございます。
 こうした措置により、必要な施策の財源を確保した上で、今後想定される経済変動に備えて、財源として活用できる基金の残高を一兆三千億円余り確保しているわけでございますが、これは十八年度末の約二倍の水準でございます。この一兆三千億の中には、二十年度に追加的に積み立てた社会資本等整備基金二千五百億円が含まれております。
 今後とも、財政の対応能力を適切に活用し、さらに強化を図ると同時に、それに依拠するのみならず、中長期的な視点に立った堅実な財政運営を引き続き行いまして、厳しい財政環境のもとにあっても、都政の積極的展開を継続的に支え得る財政を実現できるように努力を積み重ねてまいります。

○藤井委員 次に、景気対策について伺います。
 去る二月二十四日の代表質問において、我が党は、東京緊急対策Ⅱの公共工事の前倒しについて、その全体像と、中小企業支援の効果について質問いたしました。都は、工事発注量自体を増加させると同時に、切れ目なく行うと答弁をいたしました。公共工事の発注が少ない年度末、年度初めに発注することは、支援の効果があります。特に建設局長からは、十二月の補正予算及び二十一年度予算案において、追加して、中小企業の施工に適した道路維持修繕、橋梁維持補修、街路樹の管理や沿道除草、公園内の樹木管理などの維持工事費百五億円を計上、実施し、三月までに契約を完了させるとの答弁がありました。
 そこで、前年の同時期と比べて工事発注規模、発注件数はどれだけふえるのか、お伺いをいたします。

○道家建設局長 まず、昨年一月から三月にかけての維持工事の発注実績は、約二百件、約五十億円でございます。今年度も昨年と同程度の発注を見込み、それに今回追加して実施する維持工事、約四百件、百五億円を加えますと、工事発注予定規模は、合わせて約六百件、百五十億円程度になり、昨年同期のおおむね三倍の規模になると考えております。
 なお、この追加発注した維持工事費百五億円については、二月末までに約四十五億円が契約済みでございまして、残る工事についても、三月末までに契約を完了させてまいります。
 これにより、地域や都民のニーズに的確に対応することができ、中小企業の活用が図られるものと考えております。

○藤井委員 昨年の三倍ということで、ぜひ中小企業の活用を図るよう要望したいと思います。
 都が中小企業向けの工事発注量をふやすことは評価いたしますが、最近は事業者間の価格競争が激しさを増し、工事品質の低下が懸念されております。良好な工事品質を確保していくためには、過度の価格競争によるいわゆるダンピング受注を排除していくことが必要であります。また、入札契約制度研究会が昨年九月にまとめた第一次提言では、工事品質の確保と低入札の抑制の観点から、最低制限価格の見直しと総合評価の拡大を提言しております。最低制限価格は、工事品質を確保し、一定金額以下の入札を無効とする制度でありますが、ダンピング防止に効果があると思います。
 都は、提言を受けまして実施方針を示し、昨年十一月から最低制限価格制度の見直しを行いましたが、その見直しの考え方と落札率などにあらわれた効果はどうだったのか、伺います。

○村山財務局長 最低制限価格につきましては、工事品質を確保するため、事業者が確実に工事の施工ができるよう、適正な水準に設定する必要があると考えております。
 改正前の最低制限価格は、二十数年前に制定された古い国基準に基づいておりまして、現在では、必ずしも建設工事のコスト構造を十分に反映したものとはいえない場合もございました。そこで、こうした問題意識に立って、昨年十一月に行った改正では、算定方法を改善すると同時に、その適用上限を従来の八〇%から八五%に引き上げたものでございます。
 制度改正後に発注した工事につきましては、これから完了時期を迎えることになりますので、その工事の結果、内容を十分検証いたしまして、それを踏まえて、今後さらに工事品質の確保に努めてまいります。
 なお、お尋ねの落札率でございますが、平成十九年度の平均は八六・九%でございましたが、制度改正を行った後の十一月以降では九〇・一%となっております。

○藤井委員 制度見直しの効果は上がったようでありますが、今後さらに経済状況が悪化することが考えられますので、景気や市場の動向を常に把握し、最低制限価格についても、状況に応じて適切に対応していただきたいと思います。
 次に、工事品質確保のもう一つの対策であります総合評価方式の拡大についてでございます。
 総合評価方式は、価格に加え、価格以外の技術などの要素が加味される仕組みで、公共工事の良好な品質確保の観点から有効であります。また、ダンピング対策としても効果があります。都は現在、各局に総合評価方式の適用について任せていますが、それでは各局でばらばらでないかという問題があります。
 そこで、総合評価方式の適用拡大に向けて体制整備を図るとともに、事業者が参入しやすい仕組みをつくるべきと考えますが、この点いかがでしょうか。

○村山財務局長 総合評価方式については、この間、工事規模や技術的難易度に応じて三つの類型を整備するなど、順次適用対象を拡大してまいりました。今後もこの総合評価方式の適用を一層拡大していくつもりでございますけれども、その際、幾つか課題がございまして、一つは、土木分野での適用が大きく先行しているなど、分野間での、ご指摘のようにばらつきがあることでございます。また、審査事務の面で、技術面での評価に要する事務負担の増加が避けられないという面がございます。さらに、事業者側におきましても一定の負担感があるということなどもございます。
 現在、入札契約制度改革研究会におきまして、これらの点を含めて議論を行っているところでございまして、総合評価方式のあり方について検討し、審査事務の体制整備なども含めて検討事項に入れてございます。
 夏に予定されております研究会の最終提言を踏まえまして、関係各局と連携協力いたしまして、あわせて、事業者の方へもさらなるPRあるいは意見聴取を行いながら、この総合評価方式の一層の適用拡大に向け取り組んでまいります。

○藤井委員 最後に、予定価格の事前公表について伺います。
 国は、昨年三月、予定価格の事前公表を取りやめるよう、各自治体に要請したところであります。予定価格の事前公表は、入札の透明性の向上、不正防止のために導入されたものでありますが、過度の価格競争の発生や、建設業者の見積もり努力を損なわせ、不良不適格業者が入札に参加するといわれております。この国の要請を受けまして、各県では事前公表から事後公表に切りかえるなどして、四割以上が事前公表を取りやめております。
 そこで、都は、過度の低価格競争に歯どめをかけるためにも、予定価格の事前公表の見直しの検討も必要ではないかと考えますが、見解を伺います。

○村山財務局長 過度の低価格競争は、良好な工事品質を確保できないおそれを生じさせるということから、都は、その抑制を図るために、最低制限価格制度の見直しあるいは総合評価方式の適用拡大とともに、落札時に積算内訳書の確認を行うなど、工事品質の確保あるいは不良不適格業者の参入防止に努めてきております。
 過度の低価格競争の問題は、予定価格の公表の仕方の問題のみならず、価格を中心とした入札の仕組みなどの制度的要因、あるいは建設需要の動向などの外部的要因、それらが複雑に絡み合っておりまして、総合的に対策を検討していく必要がある、かように考えてございます。
 現在、研究会におきまして、契約の透明性の確保、不正防止、低価格競争と事前公表との関連、工事品質への影響など、事前公表のあり方について、さまざまな角度から議論をいたしているところでございます。今後、こうした議論を踏まえまして、過度の低価格競争の抑制に向けまして一層の取り組みを進めてまいります。

○藤井委員 ありがとうございました。
 次に、中小企業支援策について伺います。
 今回提案されております東京都と地域の金融機関とが連携して実施する金融支援に関する条例についてでございますが、新しい金融制度ということで、中小企業の方を初め、皆さん大変期待をされておりますが、この条例について、共産党は、意図的にねじ曲げた発言を繰り返しております。この共産党の一つ一つの主張に対しまして、その主張がいかに根拠のないものかを明らかにしたいと思います。
 例えば、この条例の第三条について、共産党は、次のようにいっております。金融機関と一定期間取引を継続しているだけで、危険で不良なものであっても支援することが可能になると主張しておりますが、果たしてそうなんでしょうか。破綻しそうな企業まで融資するんでしょうか。これについて都の見解を伺います。

○佐藤産業労働局長 今回ご提案申し上げております支援策におきまして、金融機関と一定期間取引を継続している中小企業を融資の対象といたしましたのは、日ごろの取引を通じまして、その経営の実情を把握しているなど、地域の金融機関が持つ目ききの力を活用することによりまして、この難局さえ乗り切れれば将来的に展望が開ける企業などを見出して支援をしていくためのものでございます。あわせまして、こうした企業を対象にすることによりまして、将来発生する損失を抑制し、本制度の安定的な運営を確保することを期待しているところでございます。したがいまして、破綻が懸念されるような企業まで対象とする考えはございません。

○藤井委員 共産党、わかりましたか。破綻が懸念されるような企業まで対象とする考えはないと明確にいっているじゃないですか。今の答弁のように、第三条は、金融機関との一定期間の取引継続を重視するのは、むしろ地域の金融機関の企業に対する目ききをきかせるための規定であるということであります。
 また、共産党は、条例の第四条に、融資が円滑に行われるようにするとの文言や、損失の補助との文言が盛り込まれることによって、共産党は乱脈融資への追い貸しだけでなく、乱脈経営で破綻した金融機関の経営そのものを支援する仕組みである、すなわち新銀行東京への税金投入が可能になると主張しております。このことについても明快な見解をお示しいただきたいと思います。

○佐藤産業労働局長 本支援策は、中小零細企業の資金繰りを支援するものでありまして、条例第四条に規定する損失の補助は、中小零細企業への融資に債務不履行が起きた際に都が支出するものであります。現行の制度融資におきましても、個別企業の債務不履行に対しては、金融機関の損失を補てんする仕組みというふうになっておりまして、中小零細企業の資金繰り支援に大きく寄与しているところでございます。したがいまして、いかなる金融機関に対しても経営そのものの支援を意図するものではなく、ましてや新銀行東京への追加出資などを意図したものではありません。

○藤井委員 共産党、わかりましたか。新銀行東京への追加出資を意図したものではないという明快な答弁がありました。共産党が、新銀行にかこつけて反対しようとしているのは明らかであり、これはまさに党利党略に基づいた主張であるといわざるを得ません。
 また、民主党も、新条例に対して曲解としか思えない主張を行っていますので、その真実について確認したいと思います。
 民主党は、第一回定例会の代表質問の中で、条例の第三条に規定する中小企業向けの融資を実行する際に要件とされる、知事が別に定める要件や、第四条における貸付原資の預託、損失の補助と並んで規定する、知事が特に必要と認めた措置、これをとらえまして、民主党は、知事にゆだねる部分が多いことは極めて危険である、このように主張しているわけでございます。
 まず、これらの規定は、知事に大きな裁量の余地を与えることを目的として規定したものかどうか、この点についてお伺いいたします。

○佐藤産業労働局長 第三条に規定いたします知事が別に定める要件とは、企業の所在地や金融機関との取引年数といった融資対象の要件の詳細や、金利、融資期間等の融資条件などを想定しております。
 また、第四条第三号に規定いたします知事が特に必要と認めた措置、これは経済情勢が激しく変動する中で、融資を受ける企業にとって真に必要となる支援の対応に備えるものでございます。
 同様な規定は他の条例にも数多く見られるところであり、これらの規定は、本支援策を円滑かつ効果的に推進するため必要な条項であることから、条例の目的を逸脱するような裁量の余地を与えるものではありません。

○藤井委員 民主党さん、わかりましたか。通常、自治体の長が別に定める要件という場合、条例の本文になじまない詳細かつ具体的な要件を別に定めるために用いる文言であって、自治体の長に自由裁量などを認めるためのものではないことは明らかであります。
 民主党はまた、今回の条例を新銀行支援条例であるとして、殊さらに新銀行東京のことを引き合いに出して、金融庁の検査で業務改善命令が出ている新銀行については、社会的な信用、評価は得られていないとして、この支援策について反対をしております。新銀行東京は、制度融資においても、取扱機関として参加し、一定の実績も残しているというふうに聞いております。
 そもそも制度融資では、金融機関が貸し出した融資が焦げついた場合、信用保証協会が金融機関に代位弁済をし、信用保証協会には保険金の補てんと都からの損失補助が出ることになっていますが、制度融資におけるこの損失補てんの考え方について、改めて確認をしたいと思います。

○佐藤産業労働局長 制度融資は、都、それから金融機関、そして信用保証協会の三者が協調して実施する仕組みでありまして、個別企業の債務不履行が起こった場合には、信用保証協会が金融機関に対して代位弁済をするとともに、都は保証協会に対して損失補助を実施しております。こうした仕組みによりまして、中小零細企業の資金調達の円滑化を図るものでありまして、金融機関に対する経営そのものの支援ではありません。

○藤井委員 ただいま答弁にありましたように、中小零細企業の資金調達の円滑化を図るものである、金融機関に対する経営そのものではないということでございます。改めて民主党に確認をしたいと思います。
 新銀行東京にも、当然ルールにのっとった代位弁済が行われ、その該当案件に対する損失補助金が信用保証協会に支出されることになると思います。
 中小企業金融支援策において、都の財政支出が企業の資金繰りに対する支援なのか、あるいは金融機関の経営そのものへの支援なのか、しっかりと見きわめる視点が重要であります。共産党や民主党は、そうした点が混同されており、認識が間違っているといわざるを得ません。もし民主党や共産党が、新銀行東京を排除しないことを理由に、都の新しい融資制度に反対するのであれば、民主党や共産党は、現在の制度融資自体も否定しなければならないことになるわけでございます。
 例えば、民主党は今回の第一回定例会の代表質問の中で、制度融資に関し、中小企業への資金供給の大きな柱であり、預託金を積み増しするとともに、保証料補助を引き上げるべきと大きく評価をしております。今回の新たな支援策が目指すものも、厳しい経営環境に立たされている都内の中小零細企業の資金繰りに対する緊急的な支援であります。共産党や民主党の主張は、都内中小零細企業が直面している、今まさに危機的な状況を何ら顧みない無責任な主張であるといわざるを得ません。
 都内中小企業を救うためのせっかくの新しい融資制度が、心ない、そして悪宣伝によって、根も葉もない誤解を受け、その誤解を解くために余計な手間暇を費やすことは全くのむだであります。この新しい融資制度の運用開始がおくれたりすることがあれば、それはその分だけ中小企業が苦しむことになるのであり、その原因は、まさに共産党や民主党の悪宣伝によるものであると断じておきたいと思います。
 都議会公明党は、都内中小企業の救済に向けて意欲的に取り組む都の姿勢を全力で応援するとともに、一日も早く、順調に新しい融資を開始していただきたいと考えますが、都の決意を伺います。

○佐藤産業労働局長 現在、金融機関等との調整を進めているところでありますが、先日の本会議の質疑等を通じまして、特定の金融機関の救済を目的にしているのかといった内容の問い合わせをいただいております。
 所管局といたしましては、改めて本支援策の趣旨を説明し、理解を得たところでありますが、こうした誤った認識が今後の制度構築に支障となることも懸念をされます。
 都内中小零細企業を取り巻く現下の厳しい状況を踏まえ、今後とも関係機関に本支援策の目的や基本的な内容を正確に伝えながら、引き続き調整を進め、本年夏ごろの制度開始に向けて取り組んでまいります。

○藤井委員 次に、雇用対策について伺います。
 昨年九月、アメリカのリーマン・ブラザーズの経営破綻に端を発した、百年に一度といわれる金融危機は、震源地のアメリカから津波のような速度で全世界に広がりました。このような状況下で、我が国の産業は大打撃を受け、特に自動車や電機などに代表される製造業は軒並み赤字に転落し、大規模な雇用調整がなされています。これらは、主に非正規労働者である派遣労働者の大量解雇、雇いどめにより行われております。
 こうした中、昨年末に日比谷公園に突然出現した年越し派遣村は、これら製造業などで解雇され、同時に、寮などの住居を失った派遣労働者の支援を目的として、労働組合や市民団体が中心となって実行委員会を組織して開設したといわれております。
 報道によりますと、この派遣村には五百人近くの元派遣労働者などが集まり、一月二日には、これらの人の寝場所を確保するため、実行委員会の要請により、厚生労働省が講堂を一月五日朝まで緊急開放しました。そして、一月五日から十二日までの間、東京都と中央区とが二カ所ずつ施設を提供し、国、都、特別区、東京都社会福祉協議会がそれぞれの立場から支援をしたとのことであります。
 そこで伺います。東京都と中央区とが提供した四カ所の施設で受け入れた人は何人だったのか、また、受け入れた人はどこから来た人で、失業前にどのような仕事をしていた人だったのか、明らかにしていただきたいと思います。

○安藤福祉保健局長 都と中央区の四カ所の施設で受け入れました最大の人数は、平成二十一年一月六日の三百八人であります。
 都が回収しました調査票二百九十二人分についての集計結果では、これらの施設に来る前の住所地が都内と答えた人は八十七人で三〇%、都外と答えた人は七十七人で二六%、残りは無回答でありました。また、失業する前の雇用形態が派遣または契約社員と答えた人は、百六人で三六%でありました。

○藤井委員 今ありましたように、年越し派遣村に集まった人は五百人。今の答弁では、都や中央区の施設に移ったのは、最大人数で三百八人ということですけれども、では、二百人近くの人はどこに行かれたのでしょうか、仕事に戻っていったのでしょうか、疑問が残ります。
 また、四つの施設で受け入れた人は、必ずしも契約期間内に雇用契約を解約されたいわゆる派遣切りに遭った人だけではなく、また、派遣切りに遭った人の中には、都内に住所地がなかった人も少なからず含まれていることがわかりました。
 それでは次に、これら四カ所の施設で行ったさまざまな緊急支援の内容と実績について伺います。

○安藤福祉保健局長 都は、人道的見地から、平成二十一年一月五日から一月十二日まで緊急支援を実施いたしました。
 その内容と実績についてでありますが、これら四カ所の施設内で、都は、毎日の食事や日用品等の提供のほか、各種相談を実施いたしまして、住宅相談を延べ二百七十三人、健康相談を五十五人、健康診断を八十九人に対して行いました。また、東京都社会福祉協議会が、緊急小口資金の貸し付けを二百五十九人に実施いたしました。このほか、国がハローワークによる就労相談を行っております。
 なお、福祉事務所は、年越し派遣村を訪れた人たちに対して、生活保護の相談、申請を受け、二百九十七人の保護を開始いたしました。

○藤井委員 年越し派遣村への対応については、都を初めとする関係機関が一丸となって、準備期間もほとんどない中で、このようなさまざまな支援を短期間で集中的に行ったことについて評価をしたいと思います。
 今後とも、行政として行うべきは、事態を冷静にとらえ、真に支援すべき方々に対し適切な施策を、時期を逸することなく講じていくことであります。この点で都は、現場感覚を生かして、これまでも、今回の雇用問題に対する先手を打ってきております。例えば、我が党の強い主張を受けて実現いたしましたTOKYOチャレンジネットがそうであります。
 そこで、二十年四月から開始いたしましたこのTOKYOチャレンジネット、これまでの実績について伺います。

○安藤福祉保健局長 平成二十年四月の事業開始から平成二十一年二月末までに、電話やメール等による問い合わせは二千七百五十一件あり、来所し、継続的な相談のための登録を行った方は九百七十三人でありました。このうち、住宅資金等の貸し付けを受けた方は百五十五人、求人を紹介し、就職に至った方は二百二十九人でございます。

○藤井委員 今後も、こういった低所得者対策を初め、生活、雇用対策にしっかりと取り組んでいただきたいと思います。
 次に、雇用対策について伺います。
 先月末、厚生労働省が発表いたしました非正規労働者の雇いどめ等の状況によると、昨年十月からことし三月末まで、職を失うか、失う見込みの非正規労働者の人数は、全国で十五万八千人、東京でも約三千三百人となり、一月発表に比べると、全国で三万三千人、東京で六百人増加するなど、雇用情勢はますます厳しさを増しております。また、こうした状況の一方、分野によっては人手不足が続いているという状況と聞いております。
 そこで、まず東京の雇用の実態、これはどうなっているんでしょうか、伺います。

○佐藤産業労働局長 都内の有効求人倍率は低下傾向が続いておりまして、平成二十年三月に一・四三倍であったものが、十カ月連続で低下をして、この一月には一・〇〇倍となっております。
 これを職業別に見ますと、一般事務や会計事務などの事務的職業は〇・三五倍となっており、これらの職業への就職が困難であるのに対しまして、警備等の保安の職業では五・〇七倍、介護などの社会福祉専門の職業は三・五〇倍、IT系の情報処理技術者は二・七七倍であり、雇用情勢が悪化する中でも人材が不足をしております。

○藤井委員 職種と職種のばらつきが大きいことがわかりましたが、今、例に挙げられた介護やITといった分野は、今後、国を挙げて人材養成していかなければならない分野であるとともに、来年度、介護報酬改定もされるという動きもあり、都としても人材を供給していくべきと考えます。
 介護、ITなどは、専門のスキルが必要な分野であり、そのことから求職が少ない場合もあるのではないかと考えます。
 そこで、このような人材を供給すべき分野は、職業訓練の科目に取り入れていくとともに、求職者に対するスキルを身につけさせることが重要になってくると思いますが、都の取り組みについて伺います。

○佐藤産業労働局長 都はこれまでも、雇用の安定と産業を支える人材の育成を目的といたしまして、職業能力開発センターにおいて民間教育訓練機関等も活用してさまざまな職業訓練を実施してまいりました。
 来年度は、国の委託訓練の大幅な拡大にあわせまして、今後も人材不足が見込まれるITや介護分野における訓練メニューの充実を図りますとともに、訓練規模も拡大してまいります。
 また、昼間、職業訓練を受けることが難しい非正規労働者等がスキルアップできるよう夜間訓練を実施いたします。
 今後とも、企業ニーズにこたえますとともに、求職者のスキルの向上に資する訓練を実施してまいります。

○藤井委員 一方、職種のミスマッチというのもございます。それと同時に、正社員を希望しながらも正社員になれない方の対策、いわゆる働き方のミスマッチの解消も重要であります。
 特に、三十代の年長フリーターなど、就職氷河期時代の世代の方々は、正社員としての採用がますます困難になると考えられます。
 そこで、こういった方たちの就職支援についても都として積極的な対策を講じていくべきと考えますが、見解を伺います。

○佐藤産業労働局長 都は、今年度、就職氷河期世代の非正規労働者の正社員化を支援するためにネクストジョブ事業を開始いたしまして、就業相談から職業紹介、職場定着までを一貫して支援しているところでございます。
 来年度は、一人一人の希望や状況に合わせた就職支援セミナーも新設いたします。
 また、低所得者の方の正社員化に向け、職業訓練機会の提供や就職支援を行います就職チャレンジ支援事業につきましては、来年度、事業規模を拡大してまいります。
 さらに、しごとセンター登録後、六カ月以上就職できない就職困難者を正社員として採用した企業に対しましては、新たに奨励金を支給してまいります。
 こうした事業によりまして、正社員への就職支援に積極的に取り組んでまいります。

○藤井委員 さらに大事なことは、これからの社会を支える前途有為な学生の就職内定取り消しや、内定を得られない学生の増加への対応であります。
 都議会公明党は、第四回定例会において、こうした内定取り消しの学生を都として強力にバックアップすべきであると主張いたしました。
 今回、都が若者ジョブマッチング事業を実施し、年末と年度末に合同面接会を約千五百人の規模で実施することは評価するものでありますが、何といっても、東京で働く人たちの三分の一が首都圏の千葉、埼玉、神奈川から通勤しております。
 そこで、この合同面接会を千葉、埼玉、神奈川にも働きかけて合同で実施できるようにすべきと考えますが、また、この合同就職面接会を確実に学生に周知できるよう取り組みを工夫すべきであります。都の見解を伺います。

○佐藤産業労働局長 企業による採用内定の取り消しや新規採用停止などによりまして、就職活動を継続しても内定が得られない新規学校卒業者の増加が想定されるところであります。
 このため都は、来年度から未内定の学生等を対象に若者ジョブマッチング事業を開始いたしまして、人材を求める企業を広く集めた合同就職面接会を実施いたします。
 実施に当たりましては、ご指摘の状況も踏まえまして、マッチング機会を拡大するため、埼玉、千葉、神奈川に合同実施を呼びかけてまいります。
 さらに、学生等に事業を確実に周知するために、大学の就職部との連携やフリーペーパーへの掲載などに加えまして、新たな手法として、若者が多く利用している携帯電話の情報サイトを活用するなど、多面的な広報を展開してまいります。

○藤井委員 ぜひ前向きに取り組みをお願いしたいと思います。
 次に、救急患者の搬送体制の整備について質問いたします。
 東京の救急医療は、搬送患者数がこの十年間で約三〇%増加しているのに対しまして、救急医療機関は約一八%も減少しております。また、医療機関の選定開始から決定まで三十分以上かかっているケース、あるいは五つ以上の医療機関に搬送の打診をしているケースを合わせると、全体の六%から七%、件数にして年間約四万件も発生しているなど、大変厳しい状況にあることは否めません。
 こうした事態を解消するため、都は、専門家による救急医療対策協議会の最終報告を受けて、救急搬送体制の強化に向けた新たな東京ルールを実施するとしております。これによって、システム的には迅速的確な救急搬送体制が構築できるものと期待をしておりますが、明確にしておかなければならない課題がありますので、幾つか質問いたします。
 まず、この東京ルールは、地域救急センターを中心に同一地域内の救急医療機関相互の連携、補完体制を構築できるかがポイントとなるわけでありますが、慢性的な医師不足の中で地域救急センターの役割とされる自主的、積極的な受け入れが、現実問題として果たして可能なのかどうか、具体的な対応について伺います。

○安藤福祉保健局長 東京都地域救急センター(仮称)は、病院選定が困難となっている救急患者について、地域で救急の診療を速やかに行える医療機関を探すという役割を担います。
 こうした機能を発揮していくためには、これまで以上に地域の救急医療機関が相互に協力し、連携し合う体制が必要でございます。
 このため、それぞれの地域に日常的な連絡調整の場として救急医療機関の連絡会議を設置するとともに、相互に救急患者の受け入れが可能か否かの情報を共有するためのシステムを整備する予定であります。
 なお、こうした調整を行っても地域での受け入れができない場合には、地域救急センターみずからが受け入れて診療するという役割も担っていくこととなっております。

○藤井委員 大変すばらしいことだと思います。地域で受け入れができない場合、この救急センターみずから動けるというすばらしい施策、これをぜひ早急に実施していただきたいと思います。
 次に、救急患者受け入れの調整の切り札ともいえますコーディネーターについてでありますが、迅速な調整を行うためには、どの時点で救急現場からコーディネーターに調整依頼をするのかといった手順のようなものをあらかじめ作成しておく必要があると考えますが、これについてはいかがでしょうか。

○安藤福祉保健局長 東京都地域救急センターの調整により、地域内での受け入れを原則としつつも、それが困難な場合には、遅滞なくコーディネーターにつなぎ、全都的な調整を行う必要がございます。
 このため、各地域のセンターからコーディネーターの調整に切りかえるタイミングでありますとかコーディネーターの病院選定方法など、業務の内容を盛り込んだマニュアルを作成し、関係者に周知を図っていく予定でございます。

○藤井委員 受け入れ体制を効果的に機能させるためのトリアージの実施について、東京ルールでは緊急患者を積極的に受け入れる地域救急センターで実施するとしております。
 私も、これは必要な措置であると考えますが、緊急度に応じた医療を適切に提供するためには、さらに発展させまして、トリアージの対象を救急車で搬送される救急患者にも適用することを検討すべきと考えますが、都の所見を伺います。

○安藤福祉保健局長 東京ルールに基づく院内トリアージを行うために、都は地域救急センターにトリアージナースの配置を行うこととしております。
 この院内トリアージは、救急外来患者に限らず、お話の救急搬送された患者も含めて実施し、緊急性の高い患者から優先的に診療が受けられるように取り組んでいきたいと思っております。

○藤井委員 次に、都民の理解が重要だということです。幾ら緻密に救急医療あるいは救急搬送のシステムをつくっても、そうした取り組みに対する都民の理解、協力がなければ、機能不全に陥る可能性があります。
 高齢者の方についてはテレビやラジオで、あるいは児童生徒には社会教育の場で、大人には各種団体や会合の場での周知など、世代やライフパターンに合わせてきめ細かに啓発活動を展開すべきと考えますが、この点、都の見解を伺います。

○安藤福祉保健局長 都民みずからが、救急医療は限りある貴重な資源であることを認識していただきまして、適切に診療を受ける、受療行動を心がけることは極めて重要であると思っております。
 このため、都民向けに具体的な事例を示しながら、東京ルールの意義や内容をわかりやすく解説したガイドラインを作成するとともに、お話しがありましたようなマスメディア等の活用による積極的な広報活動を行いまして、救急医療の確保に関する都民の皆様の理解と参画を推進してまいりたいと思います。

○藤井委員 この救急医療に関連しまして、ドクターカーの導入について質問いたします。
 近年、各地の自治体では、医療器材を搭載した救急車に医師を同乗させ、救急現場で対応するドクターカー導入への動きが活発化しております。
 救急医療の現場に一刻も早くということで、東京消防庁では、日夜、救急隊が懸命の対応を行っておりますが、呼吸や脈がない重度の病人への対応、病人の救出に時間を要するケースへの対応、同時多数の傷病者発生の場合などに、ドクターカーは大いに効果を発揮すると考えます。
 東京においても、こうした観点から、例えば都立八王子小児病院の新生児搬送の仕組みを発展させるなど、緊急度の極めて高い搬送に備えるためにドクターカーの導入を図るべきと考えますが、この見解を伺います。

○安藤福祉保健局長 救急医療におきましては、診療設備や医師等のスタッフを整えております救急医療機関に一刻も早く搬送することが、何よりも重要であります。また、搬送時には、救急隊の救急救命士による必要な措置を行います病院前救護体制が確保されております。
 ドクターカーにつきましては、このような救急医療の基本的なあり方や医師の配置状況、具体的な事例等を踏まえて、その活用分野や活用方法の課題を検討してまいります。
 なお、お話の都立八王子小児病院のドクターカーにつきましては、医療資源が限られた多摩の地域において、緊急性を要する転院搬送時の対応を行い、新生児救命に大いに貢献していると認識しております。こうした多摩地域の新生児搬送の仕組みについては、小児総合医療センターへ統合移転後も、充実させていく必要があると考えております。

○藤井委員 この救急医療体制、安心・安全の根幹をなすものであり、最優先課題として取り組んでいかなければならないと思います。
 知事は、今定例会の施政方針表明の中で、救急医療体制は都民の命綱であるとの認識を示されました。命綱は、実質的に機能するものでなくてはなりません。
 そこで、東京における救急医療体制の構築に向けた知事の決意を伺います。

○石原知事 救急医療の現場は、患者の増加や医師の不足によりまして大変厳しい状況が続いております。
 都はこのたび、救急医療対策協議会において、医療関係者の声をもとにしまして救急医療の東京ルールを定めました。
 年間六十万件を超える搬送、二百万人を超える患者など、東京の救急医療の需要は膨大であります。こうした状況の中でも、東京ルールが真に機能するよう、現在、専門家により具体化に向けた検討を進めております。
 都民の命綱であります救急医療を守るために、その検討成果に基づきまして、迅速適切な救急医療体制を全力で構築してまいります。

○藤井委員 ありがとうございました。
 次に、がん対策について伺います。
 がん対策に取り組む上で、がんに関する基礎的なデータを把握し、対策の企画立案や、その評価に役立てていくために、がん登録は重要な位置を占めています。
 東京都がん対策推進計画では、がん登録の取り組みを推進するための手順として、院内がん登録の実施から開始し、三つのステップを段階的に上がっていくこととしていますが、推進計画の初年度であるこれまでの取り組み状況について、まず伺います。

○安藤福祉保健局長 都のがん対策推進計画の初年度であります本年度、院内がん登録をすべてのがん診療連携拠点病院と東京都認定がん診療病院において、国が定めます標準登録様式を用いて統一的に取り組みを開始いたしました。
 また、東京都がん診療連携協議会に設置いたしましたがん登録部会で、院内がん登録の精度の向上を図るため、登録データの集計、分析の方法や患者の生存状況確認のための調査方法等について協議を開始しております。

○藤井委員 この院内がん登録は、各病院のがん診療機能を評価し、診療の質の向上に寄与する仕組みであるとともに、地域がん登録を実施する際のデータ把握や精度向上にも貢献するものであり、その普及が望まれるところであります。
 新たに院内がん登録を開始する病院の取り組みを支援するためには、院内がん登録の実施に必要なノウハウ等の提供が必要と考えますが、この点について都の見解を伺います。

○安藤福祉保健局長 院内がん登録は、診療の記録でございます診療録や検査所見など、多岐にわたる診療情報の中から、登録すべき症例を見つけ出すことや、症例を国際疾病分類に基づき区分するなど、高い専門性が求められる業務でございます。
 このため、来年度から拠点病院、認定病院における登録業務体制を強化するとともに、実務者による連絡会を設置いたしまして、意見交換、実例集の作成、資質向上のための合同研修を実施する予定であります。
 今後、新たに院内がん登録を実施しようとする医療機関に対しても、こうしたノウハウを提供してまいります。

○藤井委員 東京都においては、昨年の二月、癌研究会有明病院とともに、都立の駒込病院が都道府県がん診療連携拠点病院として指定されております。
 都のがん医療をリードする駒込病院では、院内がん登録についても昭和六十年から独自に取り組み、多年にわたる実績を積み重ねていると聞いております。院内がん登録については、駒込病院が六十年から取り組んできた実績も踏まえ、まず都立病院がしっかりと取り組んでいく必要があると考えますが、都立病院での現状と今後の取り組みについて伺います。

○中井病院経営本部長 これまで都立病院では、都道府県がん診療連携拠点病院に指定された駒込病院のほか、府中病院においても院内がん登録に取り組んできたところであります。
 これに加えて、今年度は、広尾、大塚、墨東の各病院で院内がん登録のためのシステムを昨年十二月までに整備し、順次試行登録を開始したところであり、来年度から本格的に実施していくこととしております。
 今後とも都のがん対策を一層推進していく観点から、都立病院においても積極的に院内がん登録に取り組んでまいります。

○藤井委員 次に、緩和ケア研修について質問いたします。
 都のがん対策推進計画では、今年度から五カ年で、がん医療にかかわるすべての医師に対して緩和ケア研修を実施することになっておりますが、がん治療にはさまざまな分野の医師が多数かかわっております。
 このため都では、まず初めに拠点病院等における医師に対して重点的に研修を実施するとしておりますが、平成二十年度の医師に対する緩和ケアの研修の実施について、その実施回数と参加人数、どうなっておりますか。

○安藤福祉保健局長 平成二十年度の都内における医師向け緩和ケア研修については、今後の予定を含めまして、がん診療連携拠点病院で五回、東京都認定がん診療病院で一回、その他関係学会主催のものが一回の計七回が開催され、医師の研修受講者は合わせて約二百名でございます。

○藤井委員 お聞きしますと、病院に勤務するお医者さんは、仕事が忙しいために、緩和ケア研修に参加したくてもできない人や、あるいは中には参加を希望しない人がいると聞いております。
 緩和ケア研修に多くの医師に参加してもらうためには、年度の早い時期に、年間の研修実施計画を策定することが必要であると考えます。
 また、より多くの研修機会が提供できるよう、実施回数をふやす必要があると考えますが、この点いかがでしょうか。

○安藤福祉保健局長 来年度予算では、研修会の実施回数の増に必要な講師や会場の確保に関する経費を措置いたしております。
 現在、東京都がん診療連携協議会の研修部会において、年度当初から研修会を実施できるよう年間計画の策定を進めております。
 来年度は、研修実施回数及び研修受講者について、大幅にふやす予定であります。

○藤井委員 ぜひ研修の充実をするよう取り組んでいただきたいと思います。
 次に、盲ろう者への支援について伺います。
 都議会公明党は、視覚と聴覚の重複した障害を持つ盲ろう者の支援について、平成六年にいち早く都議会で取り上げ、その結果、都では平成八年から通訳介助者の派遣事業を全国に先駆けて実施いたしました。
 また、昨年四月、我が党が、中断していた通訳介助者養成事業に対する補助の再開を求めた際に、速やかにこれを実施し、支援の充実を図ってきたところであります。
 目も見えず、耳も聞こえない深い絶望の底にある人々に対して、支援の手を差し伸べずにはいられないという知事の強い思いによって、我が党が要望しておりました盲ろう者支援のための拠点としての盲ろう者支援センター事業が、平成二十一年度予算に新たに盛り込まれたことを高く評価いたします。
 そこで、東京都が全国に先駆けて盲ろう者支援センター事業を予算化した意義を改めて知事に伺います。

○石原知事 実は、昨年の暮れ近く、公明党の中嶋幹事長のご紹介で福島智さんという盲ろうの方にお目にかかりました。この方は、刻苦勉励されて、ちょうどお目にかかった日に辞令が出まして、東大のある研究所の教授になられた人ですけれども、七歳、八歳のときに両目を結局失明しまして、さらに長じて青春、思春期の十七、八歳のときに片方ずつ耳が聞こえなくなって完全な盲ろうになられた。
 私、いろいろな人に会いましたが、最近、未知の方にお目にかかって、あれだけ強い衝撃を受けた、人生に対する大きな啓示を受けた例はございません。
 そのときに中嶋さんからもお聞きしましたし、その後、本もいただいたり、あの人の学位論文を読みました。もう一度個人的にもお目にかかりましたが、盲ろう者にとって必要なことは、とにかく何らかの方法で他人とコミュニケートする、それも彼が本当に再生のきっかけをつかんだのは、指の点字で通訳をしてくれるパートナーだけじゃなくて、その人を介在して、さらにその横にいる第三者と複数の話ができるということが、本当に自分の再生の転機になったといわれていますけれども、まさに本当にそういう方々にとって人とのつながりというのがいかに大事かということを痛感いたしました。
 アメリカには、盲ろう者支援のためのヘレン・ケラー・ナショナルセンターがありまして、運営費の大半は連邦政府の助成金で賄われているようでありますけれども、我が国には法的に盲ろう者という定義もありませんで、盲ろう者の特性に合った支援体制が整っておりません。
 聞くところ、この東京に二千人、全国で二万人の、福島さんの言葉をかりましたら、とにかく大きなつぼの中にひとり閉じ込められたような、そういう方々がおられるわけで、そういう方々が同病相哀れむというのでしょうか、とにかく互いに悩みを示し合い、心が通い合うことで、どれだけ人生に張りができてくるかということも痛感いたしました。
 そういうことで、非常にありがたい方を紹介されまして、都としては、とにかくその方々が交流する場所ぐらいは講じようということで今度、予算措置いたしました。あとはもう、ひとつ議会の幅の広いご理解をいただきまして、これを東京の盲ろう者のためだけでなしに、日本全体のセンターにするように育てていきたいと思っております。

○藤井委員 知事の力強い言葉、ありがとうございました。また、関係者も大変喜んでいると思います。
 全国に先駆けまして、東京都でこうした盲ろう者支援の拠点をつくっていくことは、大変意義があることだと思います。まずは、コミュニケーションが極めて限られていることから、孤独のままに置かれている盲ろう者のよりどころとなる盲ろう者支援センターを、できるだけ早く立ち上げることが大事であると思います。
 そこで、二十一年度に予算化される盲ろう者支援センターの機能はどういうものか、また運営体制について伺います。

○安藤福祉保健局長 盲ろう者支援センター事業では、指点字等のコミュニケーションや日常生活などの訓練の実施、指導員の育成及び訓練プログラムの開発を行います。あわせて、本人や家族などに対する総合的な相談や交流の場の提供、盲ろう関係の情報の収集や普及啓発などを実施いたします。
 こうした事業を都内の盲ろう者団体であるNPO法人が運営し、都は運営を支援してまいります。
 また、現在実施している通訳介助者の養成や派遣事業と一体的に運営し、盲ろう者への支援が総合的に行われる拠点としてまいりたいと思っています。

○藤井委員 盲ろう者への支援が、相談、訓練、通訳介助者の派遣、そして訓練指導員や通訳介助者の養成など、一体的、総合的に行われるということで、今まで外へ出たくてもどうしていいかわからなかった盲ろう者の方にとって大変心強いものと思います。
 本来、こうした支援は身近なところで受けられる必要がありますが、私が聞いたところでは、日本にはまだ盲ろう者支援のための手法が確立されておらず、また、専門の指導員も育成されていないために、一貫した訓練ができていないということであります。
 今後、盲ろう者に対するそれぞれのニーズに応じ、一貫性のある訓練を実施していくために、このセンターにおける訓練プログラムの開発と専門的な人材の育成に取り組むべきと考えますが、所見を伺います。

○安藤福祉保健局長 盲ろう者支援センターにおける訓練プログラムの開発に当たりましては、盲ろう者ご自身も参加し、一人一人の能力、希望、ニーズに応じて、生活訓練、歩行訓練、コミュニケーション訓練などを組み合わせた一貫性のあるものとしてまいります。
 また、専門的な人材の育成についても、新たに指導員への研修プログラムを開発し、センターにおける実践の訓練を通じて取り組んでまいります。
 あわせて、身近な地域の相談支援機関等への指導助言を行い、盲ろう者への支援を拡大してまいります。

○藤井委員 次に、中途失聴・難聴者の要約筆記者派遣事業について質問します。
 ある程度の年齢になってから聴力を失ったり、聞こえにくくなった、いわゆる中途失聴・難聴者の方々の中には、手話が覚えられない方が多く、社会生活上のコミュニケーションに大変苦労されております。こうした方々のために、相手の話を要約して書きとどめて伝えるのが要約筆記者です。
 この要約筆記者派遣事業は、障害者自立支援法の施行に伴い、平成十八年十月から区市町村事業になりましたが、利用者が幾つかの区市町村にまたがるグループでの利用については、平成二十年度末までの二年半にわたって都が実施してまいりました。
 間もなく経過期間が終了いたしますが、参加者が広域にまたがる場合、参加者の住む区市町村に派遣の補助を案分申請する形になるなど、手続が煩雑になり、社会参加の範囲が制限されるのではないかと心配されております。実施主体が都から区市町村にかわっても、これまでのように利用できるようにすべきと考えますが、都の所見を伺います。

○安藤福祉保健局長 これまで要約筆記者のグループ利用への派遣は、要約筆記者の派遣センターに利用者の代表の方が申し込む方式としておりまして、実施主体が東京都から区市町村にかわっても、同様に利用できますよう、区市町村及び派遣センターとの調整がほぼ整っております。また、利用者の団体にも説明し、おおむねご理解をいただいております。
 したがいまして、本年四月から区市町村が実施をいたしますが、利用に支障はないものと考えております。

○藤井委員 次に、築地市場の豊洲移転問題について質問いたします。
 我が党はこの問題について、党内にプロジェクトチームをつくりまして、さまざまな観点から検討を行ってまいりました。例えば早朝の築地市場の現場を見たり、あるいは、すべての市場関係者の団体とのヒアリングを実施したり、さらにまた、新市場の予定地、そして他の移転候補地を初め、大阪の中央卸売市場の立体構造等も見てまいりました。さらには、二カ所の汚染土壌洗浄プラント事業所などを訪れまして、関係者からの意見聴取を行うなど、詳細な実態を調査してまいりました。
 その結果、さきの代表質問でも述べたとおり、築地市場での再整備は、過去に着手いたしましたが断念した経緯があることに加えまして、営業を継続しながらのアスベストの処理や、種地が確保できないことによる工事の長期化のため、市場業者の営業活動に深刻な影響を及ぼすことなどが明らかになったわけであります。
 また、当時から大きな問題とされていたのは、事業費の増大であります。当時の再整備基本計画によれば当初二千三百八十億円の事業費が、再試算により三千四百億円となりました。さらに、現在においては、環状二号線による土地利用の制約などから、施設のさらなる重層化が避けられず、かつて再整備を実施した以上の事業費が必要になると見込まれるところであります。
 そこで、現時点において、新市場で必要な施設機能を確保し、かつ環状二号線の計画を考慮した場合の現在地再整備の費用を試算すると、事業費はどのぐらいになるのか。また、移転整備の場合と比較した上で、財源についてあわせて答弁を求めます。

○比留間中央卸売市場長 築地市場におきまして、新市場に必要な機能を盛り込み、さらには平成二十七年度末に完成予定の環状二号線の整備による敷地約二ヘクタールの減少や東西への分割という条件のもとに、現在地再整備の施設配置を考えた場合、水産が一階から三階、青果が四階とならざるを得ないなど、実現可能な配置案を策定することは不可能でございます。
 こうしたことを前提とした上で、あえて施設の面積のみに基づき事業費を試算いたしますと、施設建設費は四千百億円と見込まれ、既に整備に充てた四百億円を除きますと、三千七百億円が今後必要となります。
 これに対して財源は、使用可能な留保資金、国からの交付金など二千八百億円でございまして、差し引き九百億円が不足いたしますが、補てん財源がないことから、市場会計は成り立たない状況になります。
 一方、豊洲への移転整備の場合、総事業費四千三百十六億円から、既に整備に充てた一千十億円を除いた三千三百六億円が今後必要となります。
 これに対して財源は、使用可能な留保資金など千四百五十億円でございまして、差し引き千八百五十六億円が不足いたしますが、これにつきましては、築地市場跡地の売却収入で十分補てんすることが可能であると考えております。

○藤井委員 事業費を賄えず、九百億円もの不足額が生じることになり、この不足額については、結局、都民の貴重な税金に頼らざるを得なくなることもあり得ることが明らかになりました。
 そこで、現在地再整備と移転整備を比較した場合の市場業者の使用料負担についてはどうなるのか、明快な答弁を求めます。

○比留間中央卸売市場長 市場の使用料は、地価水準の高い東京では極めて多額となります用地費、用地取得と一体で考えるべき基盤整備費などを除きまして、施設建設費及び維持管理費を基本に算定することとしてございます。
 この考え方を踏まえ、豊洲新市場の使用料につきまして、市場別使用料制度を採用し、施設建設費九百九十億円を前提として試算をいたしますと、単位面積当たりの使用料の平均上昇率は、現行と比較いたしまして、おおむね一・五倍を下回る水準におさまるものと想定をしてございます。
 一方、現在地再整備の場合、平成七年まで実施した当時の計画三千四百億円に基づき試算をいたしますと、使用料の上昇率は三倍を超え、さらには、ただいまご答弁申し上げました環状二号線の計画を考慮した整備費の場合、上昇率は四倍を超えるものと想定をされます。

○藤井委員 これだけ大きな差があるということがわかりました。
 次に、豊洲新市場予定地の土壌汚染対策について、何点か質問いたします。
 我が党は、汚染土壌処理プラントを幾つか実際に視察してまいりましたが、汚染土壌処理の方法や施工技術については、高度に科学的で専門的な内容であり、その分野の科学的知見を有する専門家の判断にゆだねるべきものと考えます。しかし、別の立場から異を唱える一部の専門家からは、取りまとめられた対策について、信頼性が欠けるという意見が出されております。
 そこで、専門家会議、技術会議を通じて、最終的な土壌汚染対策が取りまとめられましたが、この対策の信頼性はどういった点で確保されているのか、見解を求めます。

○比留間中央卸売市場長 専門家会議及び技術会議は、我が国を代表する学識経験者により構成され、調査データ等を踏まえた科学的見地から検討を行いますとともに、会議内容について、専門家会議は審議を公開で行い、技術会議についても、保護しなければならない情報を除き、会議録、会議資料をすべて公表したところでございます。
 土壌汚染対策の内容については、専門家会議から、環境基準を超える汚染物質をすべて除去し、施設開場後も地下水管理を行うなど、極めて安全性の高い対策が提言されております。
 技術会議は、この専門家会議の提言を確実に実現するとともに、地下水を敷地全面にわたり早期に環境基準以下にすることや、阪神・淡路大震災などにおいて有効性が確認されている液状化対策を採用するなど、極めて安全性、信頼性が高い対策を取りまとめております。

○藤井委員 先般、技術会議の提言を踏まえた都の整備方針が決定されました。これによりますと、新市場予定地の土壌汚染対策については、全国百二十事業者からの公募提案を踏まえ、すぐれた対策が取りまとめられた結果、大幅な経費縮減と工期短縮が実現できたというふうに聞いております。最先端の技術や工法の採用により、実効性と経済性の両立が可能になったとされておりますが、一方で、新技術は実績が少なく、対策として十分な効果が得られるのかどうか、疑問視する声もあります。
 そこで、技術会議から提言された技術、工法を活用した土壌汚染対策は、確実性が十分確保されるのかどうか、明快な答弁をお願いいたします。

○比留間中央卸売市場長 技術会議では、公募で寄せられた提案について、汚染物質の処理能力や遮水性能などの実証データ、豊洲新市場予定地の汚染状況、土質特性への適合性、施工実績の有無などを確認するとともに、必要に応じて提案事業者へのヒアリングを行った上で、実効性に対する評価を行っております。
 技術会議から提言された土壌汚染対策は、こうした公募提案の評価結果を踏まえ、確実に施工可能で高い効果が得られる技術、工法を最適に組み合わせた内容となってございます。

○藤井委員 次に、技術会議の報告書については、さきの代表質問で共産党から次のようにいわれております。環境学会を初め科学者からさまざまな疑問と批判が挙げられており、額面どおりに受け取ることはできませんとの発言がありました。この発言が何を想定しているかは定かでありません。
 この報告書をめぐっては、二月十四日に日本環境学会から批判的な声明が出されております。こうしたことから、都民や市場関係者の間には、今回取りまとめられた土壌汚染対策に対する不安や疑問が生じております。
 そこで、技術会議の報告書について、共産党がいうようなさまざまな疑問や批判といったものが実際に都に届いているのかどうか、また、こうした声明に対する都の見解はどうか、この点について答弁をお願いいたします。

○比留間中央卸売市場長 技術会議の報告書に関して、現時点で受け取っております質問等は、日本環境学会及び日本科学者会議公害環境問題研究委員会の連名で出されました声明一件のみでございます。
 この声明の主な内容は、非公開で行われた技術会議の信憑性、提言された技術、工法の実効性、専門家会議の提言内容の値切りなどの点から、技術会議の報告書の撤回を求めているものでございます。
 技術会議は、我が国を代表する学識経験者により構成され、科学的見地から検討を行い、会議内容については、保護しなければならない情報を除き、現在までに会議録、会議資料等はすべて公表してございます。
 また、新技術等の評価に際しましては、あらかじめ提案事業者に、技術、工法の効果や施工性について、実証データや科学的根拠を明示するように求めますとともに、必要に応じてヒアリングを行うことなどにより、実効性が十分確認されていることから、実証実験の必要はございません。
 さらに、専門家会議の提言は、地下水浄化について、建物下とそれ以外を遮水壁で区分し、段階的に浄化することとしておりましたけれども、技術会議では、地下水を敷地全面にわたり早期に環境基準以下に浄化し、より高いレベルで安全性を確保することといたしました。その結果、建物周囲の遮水壁は不要となったものでございます。
 技術会議の提言は、実効性にすぐれ、信頼性の高い内容であることから、先ほど申し上げました声明に述べられている批判は当たらないと考えており、今後、この提言の内容を確実に実施し、安全・安心を確保してまいります。

○藤井委員 共産党、わかりましたか。
 埋立地であります新市場予定地では、震災により液状化現象が起こり、汚染された土壌や地下水が噴出し、危険であると心配する声もあります。これに対して、都の土壌汚染対策では、施設建設前に汚染土壌及び汚染地下水を環境基準以下にするため、仮に液状化により噴出したとしても問題ないとしておりますが、都民の食生活に欠かせない市場用地については、安全の上にさらに安心が得られるよう万全な対策が講じられることが必要であります。
 そこで、近年、大きな地震が頻発して起こっておりますが、液状化対策はどのようなレベルの対策となっているのか、見解を求めます。

○比留間中央卸売市場長 豊洲新市場予定地の液状化対策につきましては、震災時に地盤が緩み、その結果、地下水や液状化した砂が地上に噴出することがないよう、地質、地層などの土質特性に応じた工法としてございます。
 六街区及び七街区は砂質土層が厚いため、地盤中に砂ぐいを打設することにより地盤を締め固める工法を採用し、五街区は砂質土層が薄く表層にあるため、固化材を用い地盤を格子状に固める工法としてございます。
 これらの工法につきましては、マグニチュード七以上の大規模な地震である平成七年の阪神・淡路大震災や平成十七年の宮城県沖の地震において、周辺で液状化が起きたにもかかわらず、施工した箇所では被害が発生しなかったことが確認されているものでございます。

○藤井委員 次に、昨今の景気悪化の影響の拡大は、市場業者の経営も圧迫しております。業者は日々の営業に精いっぱいであり、新市場への移転や移転先での事業継続について、具体的なイメージさえ持てないでいる市場業者が少なくないと聞いております。
 今後、新市場への移転を円滑に進めるためには、このような状況にある市場業者をいかに支援するかが重要な課題であります。
 そこで、都は、移転の支援策を検討するに当たりまして、このような市場業者の厳しい経営状況に配慮した対策を考慮すべきと考えますが、見解を求めます。

○比留間中央卸売市場長 市場業者の多くは、市場を取り巻く流通環境の変化や景気の後退により経営が悪化しており、特に仲卸業者につきましては、経営者の高齢化や後継者問題など、さまざまな事情を抱えてございます。
 このような状況にあって、豊洲新市場への移転を円滑に進めていくためには、個々の市場業者が持つ移転への不安や課題を十分に理解した上で、きめ細やかな支援をしていくことが不可欠であると認識をしております。
 都といたしましては、今後、市場業者に対する説明会や個別の面談などを通じて、それぞれの事情や要望を把握し、厳しい経営状況に配慮した適切な支援策を検討してまいります。
 具体的には、移転を希望する市場業者に対する移転資金の融資や利子補給のほか、水産仲卸組合からの、新市場へ行けない方へのセーフティーネットの構築について、構想の中身を十分に聞いた上で、内容を具体的に検討するなど、できる限りの支援を実施してまいります。

○藤井委員 次に、東京港の重要性について伺います。
 東京港は激しい国際競争にさらされ、大変厳しい状況にありますが、首都圏の生活と産業を支える物流拠点として重要な役割を担っていかなくてはなりません。
 こうした状況に対応するために、引き続き東京港の港湾機能の強化に取り組んでいくべきと考えますが、この点について所見を伺います。

○斉藤港湾局長 東京港におきましては、これまで大井コンテナふ頭の再整備を進め、輸入貨物の急増や船舶の大型化などの国際物流の変化に的確に対応し、コンテナ貨物取扱量で日本最大の港湾となってまいりました。
 しかし、躍進著しいアジアの諸港は、国際港湾間競争が激化する中、投資を集中いたしまして、八千個積みを超えますコンテナ船が接岸可能な大規模なふ頭を急ピッチで整備しております。東京港の基幹航路の維持が厳しい局面を迎えつつございます。
 このため都は、世界の基幹航路の主流となりつつあります、超大型船にも対応できる大水深岸壁への再編や、臨海部交通ネットワークの強化に向けまして、本年夏を目途に港湾計画を見直し、東京港の機能強化を着実に進めていくことで、国際港湾間競争に勝ち抜く活路を開いてまいります。

○藤井委員 現在、東京港に隣接する羽田空港では、四本目の滑走路、いわゆるD滑走路の建設が着々と進められております。陸、海、空の玄関口である東京港は、再拡張後の国際化に伴い、その立地優位性は高まることから、海上貨物のみならず、新たに航空貨物も視野に入れ、企業ニーズにこたえていく必要があります。
 そこで、今後、予想される国際航空貨物の増加に対して、東京港として的確に対応すべきと考えますが、これについてはいかがでしょうか。

○斉藤港湾局長 羽田空港の国際化に伴いまして、国際航空貨物需要の増加とともに、荷主企業や物流事業者等においては、年間九千万トンの貨物を取り扱います東京港の海上輸送網と航空輸送とを組み合わせた国際物流戦略の展開が見込まれます。
 このため都は、このような新たな航空貨物へのニーズも視野に入れた高機能物流拠点を中央防波堤外側に形成していくなど、東京港の陸、海、空の結節点であります優位性をさらに高め、首都圏の生活と産業を支える総合的な物流機能を担ってまいります。

○藤井委員 再拡張を踏まえた物流拠点の形成に向け取り組んでいるわけですが、D滑走路の建設計画が発表された際、東京港を利用する多数の関係団体等から、船舶の航行の安全性等に重大な支障を来すのではないかという危惧が示されたと聞いております。
 そこで、D滑走路の整備に際しては、港湾機能を確保していくため、港湾の管理運営と、申し上げた視点からの調整があったはずでありますが、その経緯について伺います。

○斉藤港湾局長 羽田空港再拡張事業につきましては、平成十三年度から七年間にわたりまして、国、都などの関係行政機関や港湾物流事業者等で構成いたします船舶航行安全対策調査検討会におきまして、東京港の港湾機能を確保する観点から、船舶航行の安全対策を検討してまいりました。
 その結果、具体的には、空港の高度制限に対応した第一航路の東側海域への移設や、大型船の対面通行を可能とする航路拡幅などを、空港整備の一環として実施してきてございます。
 さらに、大規模な海上工事が実施されることから、この間の東京港内の船舶航行につきましては、工事航行安全対策検討会におきまして、関係者間の調整を行い、万全な安全対策を講じてございます。

○藤井委員 羽田空港に関しては、先日、国が羽田空港の沖合に五番目の滑走路を検討しているという報道がありました。これに対して、港湾物流関係者から、東京港の今後の発展のみならず、現在の運営についてさえも支障が出るのではないかと危惧を抱く声が多数私のところにも寄せられております。
 先ほどの答弁のように、D滑走路整備の際にもさまざまな調整がありました。今回の羽田再々拡張構想については、くれぐれも慎重に対処すべきであると強く主張して、この質問は終わります。
 次に、地球温暖化対策について伺います。
 まず、臨海地域における環境問題についてであります。
 知事は、東京の立候補ファイルの提出に当たり、史上最も環境に優しいオリンピック大会とすることを表明しておりますが、その開催予定地の中心となる臨海地域において、環境負荷削減に向けた先進的な取り組みを展開していくことが重要であります。
 臨海副都心では、開発当初からさまざまな環境施策を通じて、自然と共生する都市づくりを推進してきております。とりわけ緑の増加は、美しい都市景観を創出するとともに、憩いの場の拡大をもたらす大変重要な施策と考えます。
 そこで、今後、さらなる緑化の推進に向けて取り組むべきと考えますが、都の所見を伺います。

○斉藤港湾局長 臨海副都心では、二〇一六年オリンピック・パラリンピック招致を見据えまして、緑あふれる環境都市づくりを進めておりました。
 今後の取り組みといたしましては、都は、引き続きシンボルプロムナード公園などの整備により、厚みのある緑を創出するとともに、まちづくりガイドラインを改定いたしまして、進出事業者に、屋上や壁面の緑化も含めまして、敷地の四〇%以上の高い緑化率を義務づけることで、緑の面積を約二百ヘクタール、開発総面積の約四五%にまで広げてまいります。

○藤井委員 次に、温暖化防止に向けた家庭部門のCO2削減対策について伺います。
 都は、来年度から省エネアドバイザーを育成、登録し、家庭に対する省エネアドバイス活動を推進すると聞いておりますが、その際、大事なことは、アドバイザーの知識レベルを確実に確保していくことであると考えます。
 また、実際の活動においては、より実効性を高めるため、省エネナビなどを用いて、見える化を図っていくことが有効と考えますが、これについて所見を伺います。

○有留環境局長 都では来年度、省エネに関するノウハウを持ち、また、業務の中で家庭との接点を有する企業、団体と連携し、省エネアドバイザーの育成及び登録等を行い、各家庭の状況に応じた具体的なアドバイスができる仕組みづくりを行う予定でございます。
 アドバイザーに対しては、各企業、団体内におきまして、それぞれの知見を生かした具体的な省エネ実践方法に関する教育を行うとともに、都におきましても、温暖化対策に関する幅広い見地からの研修を実施してまいります。
 また、実際のアドバイス活動におきましては、お話の省エネナビなど実用化されているツールをも活用して、見える化を図るなど、家庭の省エネ意識を高め、具体的な実践行動につながる取り組みとなるよう工夫してまいります。

○藤井委員 最後に、都として地球温暖化対策を推進するためには、CO2の排出量の削減に効果があるいろいろな施策を、緑の増加と同様、官民一体となって進めていくことが重要であります。特に臨海副都心には、国際的なモデルとなる環境先進都市東京のまちづくりに大きく寄与することが求められております。
 こうした役割を踏まえ、今後、臨海副都心においては、太陽光等のクリーンなエネルギーの一層の活用を図っていくべきと考えますが、この点、いかがでしょうか。

○斉藤港湾局長 都市排熱を活用いたしました地域冷暖房の整備、都心とのアクセスや域内交通を担います公共交通機関の充実など、臨海副都心では環境に優しいまちづくりを進めてまいりました。
 今後、都は、年間三千八百万人もの人々が利用し、この地域のシンボルであります「ゆりかもめ」の駅舎等に所要の調査を行い、太陽光発電設備を順次設置することで、まち全体での自然エネルギーの活用を誘導してまいります。
 さらに、新たなまちづくりガイドラインでは、進出事業者に、積極的な太陽光等の利用や、環境負荷低減効果の高い深夜電力を使う蓄熱槽の設置を促してまいります。
 また、ベンチャー企業を含めまして九百八十社を超える企業等が活動するこの地域では、まちづくり協議会が環境分科会を設置するなど、環境対策への機運が高まっていることから、官民一体となってクリーンエネルギーの利用拡大の取り組みを推進してまいります。

○藤井委員 以上、どうもありがとうございました。(拍手)

○石川副委員長 藤井一理事の発言は終わりました。

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