東京都議会予算特別委員会速記録第六号

○川井副委員長 原田恭子委員の発言を許します。
   〔川井副委員長退席、委員長着席〕

○原田委員 生活者ネットワークを代表し、締めくくり質疑を行います。
 最初に、新銀行についてです。
 石原知事は、予算委員会で四百億円の追加出資に対する説明責任をどう果たしてきたのでしょう。追加出資を求める発表の直後に提出された再建計画、予算特別委員会前日に提出された調査報告書の概要版などを基本とした質疑に対し、知事は、新銀行の立場で弁明を繰り返すだけでした。詳細な調査報告書の提出を求める議会に対し、提訴を予定しているから出せないと拒否し、経営悪化の原因はすべて旧経営陣の責任に転嫁しています。さらに、四百億円の追加出資の選択肢の説明においても、預金破綻法に基づく破綻処理は、我が国初めてのペイオフの実施に伴う影響がはかり知れず、国民経済上多大な損失が発生することは疑いないと不安をあおっています。
 しかし、多くの都民は四百億円の追加出資には納得していません。知事自身も、記者会見の席でそのことを認め、追加出資が決定したら都民にわかりやすく説明会を持つ旨、話しています。都民に負担を強いる決定の前に行うのが筋だと思いますが、知事の見解を伺います。

○石原知事 新銀行東京への追加出資につきましては、これは私としても苦渋の選択でありまして、都民に新たな負担を求める以上、十分な説明責任を果たしていきたいと思っております。
 本定例会の中で十分時間をかけて丁寧に説明をしてきましたが、さらに都民の理解を深めていただくために、必要があれば、また別途の対応を考えていきたいと思っております。

○原田委員 必要があれば対応するというご答弁ですが、今一番必要なのではないでしょうか。
 都民の合意を得られない、都民が納得しないという新聞の世論調査が出ていますが、ですから、この追加出資に対しての、必要があればというようなお言葉は、ちょっと理解しがたい。どんな状況なのか、お話しいただければと思います。

○石原知事 事態の精密な報告については、これは、銀行には銀行の立場もあるわけです、これからの展開を含めて。ですから、それをしんしゃくして私は申し上げたことで、ある程度事が決着して進み出しましたら、機会を設けて、私は精密な報告もし、理解をいただく説明をしたいと思っております。

○原田委員 追加出資への反対意見が多いという中での、やはり市民に対しての説明責任ということを私は大事に考えているのです。そういう意味では、本当に、記者会見でもおっしゃいましたけれども、A案、B案とか、わかりやすい説明をしていきたいということは、知事の意思としておっしゃっています。ですから、本当は決定の前ですけれども、もうここまで来たらどうなんでしょう、もう間に合わないかもしれませんけれども、市民に対しての説明責任をしっかり果たしていただきたいと思います。
 そもそも開業時点でも、新銀行マスタープランをうたい文句に新銀行の事業計画を説明し、さまざまな不安を否定してきましたが、三年もたたずして、その不安が現実になりました。この現実を正視しないままの再建計画は説得力に欠けます。
 金融庁の資産査定は、個別の融資先の現状を五段階に分け、厳しく査定するといわれています。この査定こそ、都民にとって信頼できるデータだと考えます。この結果を分析し、今後の再建計画を描くべきと考えます。四百億円の巨額の税金投入に対し、都民が納得できる唯一の方法と考えますが、知事の所見を伺います。

○佐藤産業労働局長 新銀行東京におきましては、昨年六月に現経営陣の体制になりまして、それ以降、その経営陣のもとで、従来行われておりませんでした顧客の債務者区分の全面的な見直しを実施するなど、顧客の実態把握に注力をしてきたところでございます。
 お話のありました銀行の検査、指導等につきましては、行政上の責任ある監督者である金融庁の判断により実施するものでございます。

○原田委員 さて、新銀行設立時の議会での審議でも、経営への不安は払拭できず、「新銀行の目的を達成するため、経営全般にわたり適切な監視に努める」との付帯決議をつけて可決しました。
 都は、この付帯決議の重みをどう受けとめたのでしょうか。設立時の説明では十二分な監視体制を誇示していましたが、東京都の十分な監視責任はなぜできなかったのでしょうか。議会決議に対しても監督責任が果たせなかったことへの知事及び行政の責任について、お答えください。

○佐藤産業労働局長 都はこれまで、新銀行東京の経営につきまして、必要な情報の入手に努めるとともに、意見表明を行うなどの経営の大枠の監視をしてきました。しかし、銀行法により会計帳簿等の閲覧が制限されるなどの制約がありまして、都として、結果として、監視が十分であったとはいえないというふうに考えます。
 今後、都としても、金融庁と十分に連携を図りつつ、新銀行東京に対する積極的な経営監視に努めていきたいと考えております。

○原田委員 付帯決議を履行できなかった責任についてお伺いしているわけです。
 特に、議会と行政の関係というのは、どういう関係であるべきかというようなことも踏まえての質問ですが、再度お答えいただければと思います。

○佐藤産業労働局長 設立時に一千億の出資の議決をいただいたときの付帯決議、これは十分に、我々執行側としても重みを持って受けとめていることは事実でございます。
 先ほど申し上げましたとおり、結果としてこのような経営状態になったということに関しては、監視が十分であったとはいえないというふうに考えております。

○原田委員 付帯決議というものが余り効果がないということをおっしゃっているのでしょうか。本当に議会の決定をどういうふうに受けとめて、どういうふうに行政の仕事をしていくかというのは大変大事な仕事だと思っておりますので、ぜひ議会の決定は重く受けとめていただきたいと思います。
 さて、経営実態がわからなかった理由の一つとして、銀行法で株主の帳簿の閲覧は制限されていると今回もおっしゃいました。しかし、銀行法の存在は既にわかっていた話で、知らなかったとは思えません。一九九〇年代、大手金融機関が相次いで倒産したときに、国民は多くの血税を払って、今後の金融機関のあり方を確認しました。そのときから十数年経過し、金融商品は多様化し、複雑さを増している中、預金者、投資家の自己責任による選択が求められ、それにこたえるように、銀行を初めとする金融機関には情報公開が義務づけられています。今では、どこの銀行も貸借対照表や連結貸借対照表、事業報告書などをホームページでアップしています。
 このような時代の中で、大株主の東京都が偏った情報をうのみにして全貌を知らなかった話は通用しません。この無責任な体質こそ問われています。知事の見解をお伺いします。

○石原知事 大株主としての経営監視については、銀行法上の制約もございましたが、都出身者を社外取締役として経営に参加させながら、また、都としても決算時の報告を受け、大枠の監視を行ったものの、このような経営状態に陥ったことからすれば、都としての監視が十分であったとはいえないと自戒しております。
 今後においては、金融庁とも十分に連携を図りながら、新銀行の経営について、必要な情報の入手に努め、適切な監視を行っていくつもりでございます。
 なお、今後の監視体制については、銀行の内部監視機能として、専門性を有する外部委員による監視機関を整備するとともに、都においても、監視と支援両面についての専管組織を設ける必要があると考えております。

○原田委員 生活者ネットワークの一般質問で、新銀行の旧経営陣を非難している石原知事に対し、提訴も含め検討すべきとただしたところ、知事は、専門家と相談して必要な措置を講じていくと答弁しています。東京都は新銀行に対しての責任追及を行うのか、再度知事の決意を伺います。

○佐藤産業労働局長 前回の予算特別委員会で申し上げましたとおり、旧経営陣に対する責任追及は、新銀行東京みずからが行うべきものであるというふうに考えております。
 新銀行東京では、先般発表された調査報告書を受け、今後、信頼できる専門家に任せるなどして、法的責任追及を含め、さらに調査を進めていくこととしております。都としても、新銀行東京の対応を注視してまいります。

○原田委員 注視していくということは、どういうことでしょうか。最初の一般質問のご答弁とは、ちょっとトーンダウンしているように感じます。
 これから四百億円の追加出資を強いられて、多大な負担を余儀なくされているわけで、その主な理由が新銀行東京の不祥事の結果でありますので、株主として責任追及はできる立場です。東京都として、提訴も含め検討すべきと考えます。再度お答えください。

○佐藤産業労働局長 先ほどもお答え申し上げましたが、旧経営陣に対する責任追及は、まず新銀行東京自身が行うべきであると考えておりますし、その追及を含めた今後の調査につきまして、我々としても注視をしていくということでございます。

○原田委員 ちょっと注視という言葉があいまいで、理解できません。ぜひ、提訴も含めた検討をお願いします。
 設立当初、一千億円の出資のほかに、民間から五百億円の出資を募るという計画が百八十七億円にとどまり、そして今、四百億円の追加出資の話です。まさに東京都で丸抱えの銀行。その上、中小企業支援として機能する銀行か、存在意義も問われています。
 出資というのは、その会社の設立、運営のお金で、当然のことながら、破綻すると戻ってこないお金です。示された再建計画を見ると、基本的には店舗の縮小や社員のリストラなどの事業縮小で、業務収益計画を見る限り、新銀行として出資後の事業展開が見えていません。
 来年度末で自己資本比率四%の維持のためならば、まず、みずからの自助努力を議会、都民に示すべきです。債権回収をし、資金も集めてみたらいいと思います。来年度末での対応は、一年後の新経営陣の努力を見てからで遅くはありません。血税の投入を決定する前に新銀行としてやることがあると考えますが、知事の見解を伺います。

○佐藤産業労働局長 平成二十年三月期の決算見込みから判断をいたしまして、仮に業務を大幅に縮小いたします再建計画、これを実施した場合におきましても、平成二十一年三月期には自己資本比率が四%を下回る状況となります。この見込みが明らかとなる状況のもとでは、平成二十年三月期決算の認定がなされず、また、格付の低下や金融庁からの業務改善命令がなされることとなりまして、事実上、新銀行東京の業務継続は困難となります。その結果は、これまでご説明してまいりましたとおり、多くの中小事業者の貸出債権が整理回収機構へ移転されるなど、中小企業の事業継続に極めて大きな影響が出るというふうに考えております。
 このような都民への影響の大きさにかんがみまして、今回、追加出資による再建を選択したものでございまして、ぜひともご理解をいただきたいと思います。

○三宅委員長 原田恭子委員の発言は終わりました。(拍手)
 以上をもちまして、付託議案に対する締めくくり総括質疑は終了いたしました。
 お諮りいたします。
 第一号議案から第二十九号議案まで、及び第百三十一号議案に対する質疑は、これをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○三宅委員長 異議なしと認めます。よって、本案に対する質疑は終了いたしました。
 なお、明日三月二十六日の午前十一時から理事会を控室一で、また、午後一時から委員会を本委員会室で開催いたしますので、よろしくお願いいたします。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後八時四十三分散会

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