東京都議会予算特別委員会速記録第六号

   午後六時十六分開議

○小磯副委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 東村邦浩委員の発言を許します。

○東村委員 都議会公明党を代表いたしまして、締めくくり総括質疑を行いたいと思います。
 都議会公明党は、今回の新銀行問題につきましては、スタンスといたしまして、都民の負担を最小限に抑え、そして、決して一時しのぎや延命策であってはならない、この観点から徹底した調査と研究を行ってまいりました。
 最初に、この四百億円の追加出資について何点かお伺いしたいと思います。
 特に今、多くの都民がこの問題を関心を持って見守っております。そういう意味で、わかりやすく丁寧に--いわれているのが、どうも都議会の議論が、我々都民が聞いていてもなかなかわからないといわれました。もう少し丁寧に、私たちが聞いていてもわかるように質問してもらいたい、こういう声もありましたので、整理ですから、重複する部分もあるかもしれませんけれども、そこはご容赦願いたいと思います。
 最初に、きょう朝、いきなり電話がかかってきてまくし立てられたのは、東村さん、四百億はどこから出すのよ、そんなお金どこにあるのよといわれました。私が、実は東京都には財政調整基金というのが約五千八百億あります、これを取り崩して今回充当しますといったら、何だお金あるのといって電話を切られました。そういう素朴なところからなかなか理解がされていないということも、私はきょうの電話でわかったわけでございます。
 そういう中で、都民の声の多くは、破綻はさせられないけれども、やはり新銀行東京は直ちに事業清算をすべきだ、こういう声が実は都議会公明党に圧倒的に多く寄せられております。先ほども田中幹事長の方から質問がありましたけれども、事業清算の不可欠の要件は、何といっても協力銀行の確保という問題でございます。一連の質疑の中で、新銀行東京は譲渡を視野に入れて、銀行やファンドなどに当たってきた、こういう話がありました。
 そこでもう一度、くどいようですけれども、事業清算を前提に、銀行に協力依頼は行ってきたのかどうか。まずこの点についてお伺いをしたいと思います。

○佐藤産業労働局長 お話のとおり、事業清算を円滑に行うためには、当然、預金者の保護と融資先中小企業の債務の保全を行うことが大前提ということになります。
 そのためには、清算の受け皿ともなる協力銀行の存在が不可欠であるわけであります。このことから、この間、銀行ファンド等にさまざまな交渉をした中で、相手先を受け皿となれるかどうかという目で見た部分もありますが、具体的な協力交渉を行ったところもございます。受け皿となった場合の責任、またリスク等々の観点から、現実には協力が得られないという状況になっております。

○東村委員 大前提の条件であります協力銀行の確保が得られない。その上でなんですけれども、きょうの読売新聞の世論調査に、事業清算、一千億に必要性があるかどうかという世論調査をやっておりました。納得できないが七六・四%。つまり、この事業清算の場合、一千億が必要だということをいわれている、ところが、この一千億についてはどうも納得できないという回答が七六・四%もある。これは、先ほどの電話じゃないですけれども、多くの声として、なぜ一千億が必要なのかということを、まだまだよくわからないというのが本音だとおっしゃっておりました。
 その中で、事業清算が公表された場合、取りつけ騒ぎが起こり、現在の預金残高四千億円が一時に払い戻されるため、約一千億円の流動性、つまりすぐに払えるお金が、流動性のお金が、資金が約一千億円必要になる。
 これは、本当に冷静に、いただいた財務諸表、そして二十年三月末の予測の財務諸表を出していただきましたけれども、これを見ると、預金が四千七億円、有価証券が二千二百三億円、そして、貸出金の中に財務省に貸している確実に返ってくるお金が七百六十億円ある。こういうことでございまして、差し引き一千四十四億円、やはり足りない。特に有価証券は、民主党さんも質問されていましたけど、二千二百三億円のうち、これは取得原価ですから、評価をすると、やはり評価損が出る。九月末で約二十億出ていました。三月末はまだわからないわけですけども、九月末で二十億出ていた。そういうことを考えれば、一千億足りないというのは、これは資金として自明の理であります。
 他方、貸出金についてはどうなのか。ここはモラルハザードが起きる、新銀行東京の場合は五割以上回収されない。今、三月末の貸出金の保証の残高が大体二千三百億ある。したがって五割、この五割が回収できないから一千億円の損失がある、こういう話でございます。ただ、この五割という数字、本当に根拠があるんですかと尋ねられるわけですね。いろいろな説明で、過去の経験からという話があるんですけれども、やはり都民の人が納得できる形で、なぜ五割なのかということを具体的かつ詳細に明らかにすべきだと思いますが、いかがでしょうか。

○佐藤産業労働局長 まず、前提といたしまして、事業清算が公表されるとした場合には、事実上は資本の追加がなされないということになりますので、新銀行東京は経営破綻と同様の状況になることは明らかであります。その場合に、貸出金の回収がどれほどの額を見込んだらいいのかということになるわけですけれども、これには、事実上破綻ということになりますので、過去の破綻金融機関における回収状況がどのような状況であったかということをつぶさに検討するということが必要になることになります。
 その回収状況を見て参考にするのが最も適切だと思っておりますけれども、既にお示ししております推定、一千億はなぜかという推定は、過去に破綻いたしました新銀行東京と同規模の貸出資産を有する金融機関、七行ほどありますが、この例を見ましたときに、貸出金の五六・六%が最終的に毀損したという事実がございます。これを新銀行東京に当てはめた場合の推定額として、約一千億円が毀損すると見るということが間違いのないところであろうと。事実的には債権の中身を見ますと、新銀行東京の場合には無担保等の債権が多いわけですから、逆にこれを下回るということはないのではないかというふうに考えるのが妥当ではないかというふうに思っております。
 また、別の試算をしてみましても同様のことがいえるわけですが、それは過去に破綻した百八十の金融機関、これは平成三年から平成十四年にかけまして日本で破綻した金融機関が百八十に及びます。その金融機関の例を見た場合におきましても、全体を見まして、百八十のうちの約五割の金融機関が貸出金の五〇%以上を毀損していると。これが実態でございます。
 そういう意味では、こういう二つの例を見ても、新銀行東京の債権、くどくなりますが、無担保であるということを考えますと、当然、五〇%以上を超える毀損が見込まれると。そういうことを前提として、都民の負担がどういうものかということを考えなければ、最終的に我々としても責任を持った選択ができないということを考えております。

○東村委員 今、答弁の中で、新銀行は無担保・無保証だと。したがって、確かに冷静に考えれば、とられるものが何もなければ、じゃ、清算するんだったら、返さなきゃいいやという気持ちに、それはなるかもしれないと思います。恐らく、私はそうなると、五割で済まないんだろうなと思っております。ただ、少な目に見積もって五割ということですから、一千億の損失と、そして一千億の、直ちに必要な流動性の資金、二千億がやはり必要なんだろうと、こういう話になってくる。
 そういう中で、事業清算が正直、一番いいんじゃないかと私も当初思っていました。ただ、ベストやベターな選択ではないかもしれないけれども、やはり苦渋の選択として、四百億の追加出資というのを東京都は選択したのかなと、このように考えるわけなんですけれども、ただ、我が党の会派の中にも、なかなかこの問題について、単純にうんといってくれない議員が何人かおりまして、そういう中で、先に再建計画を走らせればいいじゃないかと。再建計画を走らせて、再建計画が信頼性あるものであれば、その上で、四百億という追加出資をすればいいじゃないですかと、こういう声があるんですね。これについてどう思いますか、局長。

○佐藤産業労働局長 平成二十年三月期の決算の見込みをお示ししておりますけれども、この決算見込みから判断いたしまして、仮に現状のまま業務を継続した場合、この場合に平成二十一年三月期の自己資本比率は四%を下回る、こういう状況になります。
 この見込みが明らかになる状況下では、平成二十年三月期決算、この認定がなされない。また、当然のこと、格付の低下も起こります。また、金融庁から業務改善命令がなされる、こういうことになるわけでありまして、事実上、新銀行東京の業務継続が困難ということになりまして、現実には取りつけ騒ぎなどが惹起されて、破綻と同様の状況になると。こういうのが明らかであるというふうに考えております。
 その結果、かねがねご説明してまいりましたけれども、多くの中小企業の貸出債権がRCCへ移転され、中小企業の事業継続に極めて大きな影響が出るということになると考えております。

○東村委員 今非常に大事な話がありました。二十一年三月期の自己資本比率が四%を下回るという状況下では、決算が認定されない。専門用語をいわれたんですけれども、実は、はっきりいうと、会計監査人が、監査意見を出さないということなんです。もしくは、不適正意見を出すということなんです。つまり、今いったように、会計監査人が意見を出さなくて、不適正意見を出せば、新銀行東京は恐らく破綻と同じ状況に私はなるだろうと思います。
 そういう意味で、今四百億を出さなければならないという一つの根拠を示されたんですけれども、じゃ、この追加出資の四百億の根拠、藤井政調会長の代表質疑の中でも説明がありました。でも、あれを聞いて、どれだけの都民が、もっといえば、議員が納得したでしょうか。特に自己資本維持に八十億。それから、皆さんが一番理解できなかったといったのが貸倒引当金以上に貸出金が回収されないリスク。じゃ、何のための貸倒引当金なんだという声がありました。さらには、金利変動などの市場リスクに対応するリスク。そして、新規業務や風評リスク。この貸倒引当金以上に貸出金が回収されないリスクに二百八十億、新規業務、風評リスクに四十億。むしろ、新銀行はこれだけ風評が飛んでいるんだから、風評リスクはもっと多くてもいいんじゃないかと私は思うんですけれども、貸倒引当金以上に回収されないリスクが二百八十億ある。どうも、ここがなかなか理解できない。
 最初の自己資本に関しては、決算書で自己資本充実の状況というのが示されています。ここに数字を当てはめていけば、中間で大体八十四億と出ておりましたから、期末も推計されるんですけれども。
 ただ、問題は、貸倒引当金以上に回収されないリスクというところでよくよく考えたら、新銀行東京は、破綻先と実質破綻先、今九十八億円あります。九十八億円は一〇〇%貸倒引当金を設定しているんです。次に問題となるのが、真ん中の破綻懸念先というやつです。この破綻懸念先が百八十六億あります。この貸倒引当金が結果として四五%計上されている。仮に、全部つぶれて残りの五五%を損失として計上しなければならないとしても、百二億で済むんですね。二百八十億は要らないだろうと、こう思うわけですけれども、中には正常先、要注意先から劣化するのがあるんじゃないかという憶測はあるんですけれども、どうもなかなかしっくり、この前の答弁では、二百八十億の根拠はわからない。
 そこで、もう一度丁寧にわかりやすく説明をしていただければと思います。

○佐藤産業労働局長 まず、前提といたしまして、銀行、これは公共的な役割を担っていると。そのため、その事業継続が困難となった、そういう場合には、社会経済に極めて大きな影響をもたらすということがございます。そのことから、銀行業務を行うに当たりましては、万一の備えということで、貸倒引当金として既に手当てしている以外の部分に通常起こり得ないリスク、いわゆる非期待損失といういい方をしておりますけれども、こういう起こり得ないリスクについても一定の確率で生じる最大の損失を見込んでいくと。それを見込んで資本でカバーすることが求められている。これがまず大前提としてあります。
 つまり、貸倒引当金をおっしゃるとおり引き当てているんですけれども、それ以外のものでも通常起こり得ないと思われる分を、一定の率、起きた場合のことを考えて資本を積んでおく。こういうことは必要になっているわけです。
 具体的に申し上げますと、平成二十一年三月末の見込みをもとにいたしまして、貸出金が回収できなくなる。そういうことなどに備える、これを信用リスクというふうにいいますけれども、信用リスクとして融資、保証、公共工事債権信託等の残高が二千二百三十億円ございます。これは二十一年三月末見込みですが。これに対しまして、先ほど申し上げました起こり得ないリスク、いわゆる非期待損失の率を乗じまして、百二十五億円というふうになります。
 それから、今の百二十五億円ですが、信用リスクというのは、新銀行のように、過去に高い確率でデフォルトが発生していると、こういう場合には当該リスク量は相当程度大きな値として算定せざるを得ない、こういうのが実態でございます。
 それから、保有資産に--持っている資産ですね。保有資産に損失が生じる、こういうことに備える市場リスクにつきましては、過去の金利とか、株価の変動幅、これらをベースにいたしまして試算いたしますと四十五億円。
 それから、ファンド投資の事業がございますが、これにより生じるリスクに備える投資、投資元本毀損リスクといういい方をしておりますが、これはファンドの残高そのまま一〇〇%を積むということになりまして、全額手当てをしております。
 また、事務手続上の事故等により損失をこうむることに備えるオペレーショナルリスクといいますが、これはシステムがダウンしたりとか、事務上の手続に問題があっていろいろな事故が発生するというようなことに備えるリスクとして十億円。
 これらを合計いたしまして二百八十億円ということになっております。

○東村委員 私も、おかげさまで随分勉強させていただいたんですけど、信用リスクが百二十五億と。市場リスクについて四十五億というのは、確かに金利や株価の変動幅というのはあるんでしょう。また、ファンドは丸々残高百億すべてリスクとして、ファンドについては私も理解できます。問題は、信用リスクの百二十五億。これは非期待損失率というんですけれども、いろいろな論文が書かれていまして、追加出資と非期待損失率という論文等が結構あるんですけど、読めば読むほど、なかなかわからないんですね。非常に専門的な分野で、かなり一生懸命計算してここまで出されたんだと思いますけれども、二百八十億というのは一番の根幹を成す部分だということで、百と四十五、十ぐらいは何とか理解できますけれども、百二十五はなかなか理解できないので、もう一回、私も研究したいと思いますけれども、ただ、専門的な見地からきちっと出されている心証は、やりとりしている中でいただきました。
 その上で、風評リスクというのがあるんですけれども、私は、新銀行はこれだけたたかれているから、もっと風評リスクが高いのかと思ったら、逆に風評リスクが四十億というんですけれども、これはどうやって算出しているんですか。

○佐藤産業労働局長 これは中身は二つに分かれますが、業務を安定的に運営するために備える資本ということになります。具体的に申し上げますと、大震災や、お話がありました風評被害、その他予期しないリスクへの備えということで、二十億というのが一つあります。それから、中小企業のニーズにきめ細かく対応するための新事業や新規投資を行うための備えとして二十億円。合わせて株主資本のおおむね一〇%となる四十億円を見込んでいるところでございますが、これは他の金融機関と比べても、まさに適正な水準であるというふうに考えております。

○東村委員 なかなかはっきりわかりましたとはいえないような答弁なんですけれども、ただ、最後の一言、適正な水準として最低必要な一〇%はとらえていると、こういう話がありました。そういう中で、この四百億、さらにどんどん、じゃ、ここはどうなのかと突っ込んでいけばいいんでしょうけれども、どんどん専門的な領域になっていくわけで、ますます都民の人が聞いててわからないだろう。そういう意味で、四百億についてはかなりいろいろな見地から検討を加えられて、この前よりは詳しく、詳細に説明をいただきました。その上でこの四百億の裏づけとなる一番大事なのが、私は再建計画だと思っているわけなんですね。
 この再建計画を検証するに当たって、大前提は何かと思うと、減資の問題だと思います。この減資の問題、先般、我が党の吉倉議員の質問でも質問させていただいたところですけれども、これは今後の検討課題だという話がありました。ただ、一連の報道を見ていると、新銀行の方でも記者会見して、減資が既存の事実みたいな形になってきております。大体企業が累積損失がある場合、一回増資して、減資するというのは常套手段なんですね。したがって、これはやりませんといっても、恐らくやるだろう。やらなければ意味がないと私は思っているわけでございます。その上で、再建計画をずっと見ていくと、税の額が出ているんですけれども、税負担を逆算して、計算していくと、どうもこれは減資した後の数字が出ていると。したがって、再建計画の中では既に減資が前提で再建計画がつくられているということは、私は自明の理だと思いました。
 確かに経費縮減を考えると、減資した方が税負担が少しでも低くなるわけですから、やるべきなんですけれども、この減資をするということに関して、都はどう認識しているのか、伺いたいと思います。

○佐藤産業労働局長 お話の再建計画上では、経費につきましては極力最少化を図るという立場で積算をしております。そこで、減資を見込んだ形というふうになっております。ただ、実際に減資を行うかどうかにつきましては、当然、既存の株主への影響等がございますので、その辺を十分考慮しなければならず、いまだ決定はしておりません。
 都といたしましても、減資については、その影響などさまざまな問題を含めまして、十分に検討することが必要であると、そういうふうに考えております。

○東村委員 都としてもさまざまな問題があるので、新銀行、まだ決定していないというんですけれども、再建計画では既に減資になっているんですね。その事実を伏せて議論はできないと思いますので、私は減資をするという前提でこれから議論したいと思っております。
 一千億のうち七百億が都債で--当初の出資ですね。当初の一千億の出資のうち七百億が都債で、減資をすると、この七百億の出資のうち、減債基金の部分、これは積み増しをしていかなきゃいけない。一気に積み増ししなきゃいけない。こういう話があるんです。今六十三億積み増ししているんですけれども、残り六百三十七億、これを当初は五年間かけて積んでいくはずだったんですが、いっときに計上しなきゃいけない。これをもって、追加負担だという人がいるんですけれども、マスコミの新聞記事も、六百三十七億の追加負担、そして、四百億、一千億じゃないか。一千億の追加負担だったら、最初から事業清算で一千億出した方がいいじゃないかという、非常に粗っぽい論調を書かれている新聞もあったんですけれども、これは事実と違って、当初から六百三十七億、もっといえば、七百億は都債ですから、返還しなきゃいけない。それを前倒しして減債基金に積まなきゃいけない。ただ、問題は、単年度でこれを積む財源をどうするのかという、これから財務局の苦労があるわけなんですけれども、事実がそういうことだということを都民の皆さんにも知ってもらわなきゃいけないのかなと思っています。
 そこで、私はまず第一に、事業計画で減資の話をしましたけれども、減資後の金額を書いております、五百七十三億。第一に検証しなきゃいけないのが、業務収益と業務費用が本当にこれが妥当な数字なのかということなんです。いろいろな委員会の質疑で、利回りは幾らですかと質問しても、営業上の問題で出せないということで、結構新聞なんかにもたたかれていました。ただ、正確な数字は出せないんですけれども、オーバーオールという手法で、例えば業務収益については、期首の総資産プラス期末の総資産を二で割って、それに資金運用利回りを掛ければ業務収益が出ます。逆に、業務費用というのは、期首の総負債プラス期末の総負債を二で割って、これに調達利回りを掛ければ業務費用というのが、オーバーオールですけど、概算で出てまいります。
 この原理を応用すると、新銀行東京は既に二十年度、二十一年度、二十二年度、二十三年度のそれぞれの業務収益の額は計画で出ています。そして、業務費用の額も計画で出ています。資産もきちっと計画で出ていますから、これを使って割っていけば、二十年度の業務収益の運用利回りは一・二八%、二十一年度は一・四%、二十二年度は一・九三%、二十三年度は二・四五%。逆に調達コストの方の利回りは二十年度は一・〇五、二十一年度は〇・九三、そして、二十二年度は〇・八五、二十三年度は〇・五七なんです。
 これは何を意味するかというと、運用利回りはこの四年間で二倍になるんです。調達コストはこの四年間で二分の一になるんです。利回りが二倍になって、調達コストが二分の一になったら、だれが見ても利益が出るというのはわかるわけなんですね。
 ところが、新銀行東京と同じ規模の、有価証券報告書から引っ張ってきたんですけれども、都民銀行、東日本銀行、八千代銀行、ほぼ同規模の資本金で、大体利回りを見ますと、都民銀行が、いわゆる運用利回りが一・九五、調達が〇・二八、東日本銀行が運用が二・三二、調達が〇・三二、八千代が運用が二・〇九、調達が〇・二七。これは十九年九月です。ほかの月を調べてないのかといわれるんですが、調べてあります。そんなに著しい変動がないから、この数字を使わせていただきました。
 この数字をもとに、新銀行の資産にこの数字を掛けていけば、二〇年度は新銀行だと業務粗利益が十五億しか出ない。ところが、都民銀行は八十八億出る。これに対して、二十三年度はというと、新銀行は三十三億。逆に、都民銀行は二十八億しか出ない。これは何を意味するかというと、本当に業務利益が二十三年度で三十三億出るのと--こういったしっかりした銀行です。ここは、預金は二兆とか、貸出金は一兆という規模の銀行ばかりです。こういうところが、結果的には、新銀行と二十三年度業務粗利益はほとんど変わらない。逆に二十年度はこんなに差があるんです。片や十五、片や八十八、百六、九十六。
 こういった現状を突きつけられたときに、この辺を説明できなければ、再建計画というのは本当に大丈夫なのという声があると思います。これについてどうお考えでしょうか。

○佐藤産業労働局長 現在の大企業向け融資の平均利回りは一%程度でありますが、これは平成二十三年度には大部分が返済され、ほとんどが利回り五%程度の中小企業向け融資となるため、運用利回りは上昇いたします。具体的には、中小企業向け融資におきましては、再建計画の平年度ベースで、成長企業支援型融資は、残高百億円で利回り三から八%、一般融資は残高百五十億円で利回り二から五%、小口融資は五十億円の残高で、利回り五から八%、また、新型保証は二百億円の残高で、利回り一から六%を見込んでおります。
 一方で、資金調達におきましては、三年物の一・五%というもの、五年物一・七%など、高利回りのキャンペーン定期預金、これらを中心とした現行の調達から、貸し出しとバランスを十分考慮した最適な規模とすること、また、金利水準も一%以下にするということを見込んでおりまして、調達コストが低下する、こういうふうになるところでございます。

○東村委員 今、一般融資で運用利回りの方は大体残高百五十億で二から五%、そして、新型保証で残高二百億で一から六%、これに対して調達コストが三年が一・五、五年が一・七%だったのが、一%まで下がる。さらに、運用利回りも大企業の一%がなくなるから、中小企業の五%で埋まるから、ほかの銀行と違う、さっきみたいな逆転現象が起きて、利益が出る、こういう説明がありました。
 ただ、問題は、新銀行東京の正常債権の一千億が、最終的には四百億に絞られるわけです。正常に返済しているところが、さらに正常なところに凝縮されるわけなんですね。本当にそういった健全なところが、絞られたところが、現実問題として四%から六%の間で高い金利で借りかえるかどうかというのは、現実的にはあり得ないんじゃないかと思うんですけど、いかがでしょうか。

○佐藤産業労働局長 新銀行東京では、既存取引先のうち、健全で正常にご返済をいただいている企業等については、引き続き融資の対象として支援することとしております。
 既存の取引先のうち、ポートフォリオ型融資について見ますと、新銀行東京が継続支援の対象と考えている正常先の利回りは約六%というふうになっております。今回の再建計画における貸出利回りにつきましても、十分達成可能な水準であるというふうに考えております。

○東村委員 理屈上は、今、ポートフォリオが正常先も六%いっているから、借りかえのときも四%、五%ぐらいだったら大丈夫だろうと、こういう達成可能な水準だというお話があるんですけど、現実は、よくそこを見きわめないと、なかなかそんな高い水準で、絞られて--間口が広ければいいですけれども、絞られた中での借りかえというのは、非常にこの辺のところは、私は一つの課題じゃないかと思っております。
 その上でファンドについても一言申し上げたいんですけれども、ファンドというのは、一定のリターンがある反面、リスクも高いわけなんですね。このことについて質問もあったと思いますけれども、再建計画で私はファンドはやるなといっていません。ファンドをハイリターンするためにはリスクヘッジをしなきゃいけないんじゃないか。再建計画でリスクヘッジした上で、この再建計画をしっかりとつくっているのか、この辺について伺いたいと思います。

○佐藤産業労働局長 東京の経済の活性化を図る上で、新たなビジネスを生み出すベンチャー企業に対する支援というのは極めて重要であります。この分野は、他行がまだ十分に支援を行えておりません。今後、新銀行東京が取り組むべき分野の一つであるというふうに考えております。
 今回の再建計画では、これまでも新銀行、実績がございますけれども、これまでのファンド投資において実績のあるSBIキャピタル、また東京中小企業投資育成、こういったところと連携することで従来実績を積み上げてきたわけでございますが、今後も堅実な投資先と提携することによってリスクヘッジを行うということにしております。

○東村委員 今、具体名まで挙げられて、堅実なところとやることによってリスクヘッジをしているんだという話がありましたけれども、先ほど、四百億の内訳に戻って申しわけないんですけれども、投資ファンドは残高百億丸々リスクとして、この四百億の内訳で計上されているんですね。ある意味で、リスクを算定するときは丸々全額これがリスクだと。ところが、堅実なところでやられるという。手法のリスクの考え方と実際の具体的な手続論とはまた別問題だと思うんですけれども、そういう意味で、ファンドはある意味でハイリターンだけれども、ハイリスクもある。必ずしも今まで堅実なところが将来的にも堅実だとは限らないという部分があるということを理解した上で進めていかなければ、本当に大やけどをするんじゃないか、このように思っているわけであります。
 次に、経費について、今、収益と費用、業務粗利益が出ました。その下にあるのが経費なんですね。この経費について、本部、六店舗、事務センターをすべて新宿一店舗に集約された。そして、人員も四百五十人から百二十人に絞った。当然、人件費、物件費は下がります。ただ、忘れちゃならないのは、新銀行東京は、再建計画の中でATMをすべて廃止するということなんですね。
 ATMというのは、システムの業務委託の範囲に入っていたと思うんですけれども、このシステム業務委託経費を廃止した場合には、リースなんかもそうですけど、必ず残りの残存期間は全部払いなさいという違約金規定があるわけなんですけれども、こういった違約金の問題まで、経費の中にしっかりと織り込んで計上しているのか。計上しているのであれば、その額は幾らなのかということを明確に答えていただきたいと思います。

○佐藤産業労働局長 ATM全台廃止に伴う違約金の見積額につきましては、店舗外ATM百二十六台に対応する部分につきましては、平成十九年三月期に既に引き当てております。
 また、今回の再建計画においても、追加的に廃止するものがございます。これは二十台について、再建計画上も引き当てを計上してございます。ただし、具体的な金額につきましては、現在相手方と交渉中のため、明らかにできません。

○東村委員 確かに交渉の額ですから、ここでいってしまったら、それが既定の額になってしまうのでいえないと思うんですけれども、引き当てをしているということですから、交渉次第によって、引き当てよりも低くなる場合もあれば高くなる場合もあるという、この課題があることだけは、どうか認識しておいていただきたいと思います。
 その上で、次に大事なのが、三番目に大事なのが不良債権処理費用の問題なんですね。これは平成二十年度に百九十八億、二十一年度に七十二億、二十二年度に三十一億、そして二十三年度に十五億円と、だんだん減少してきております。まず、この減少してきている理由について説明を求めたいと思います。

○佐藤産業労働局長 平成二十年度以降も過去の融資分が一部残りますが、平成二十三年度にはそれもほぼ解消いたしまして、健全な中小企業向け融資に重点化されるということから、不良債権処理関連費用は減少するという見込みをしております。

○東村委員 二十年度は過去の融資分が残るんだけど、二十三年度にはそれはほとんど解消すると、こういう話がありました。つまり、いわゆる不良債権の処理という問題なんですね。この不良債権の処理という問題については、二年前に亡くなった我が党の桜井良之助議員が、財政委員会でデフォルト債権の処理はどうするんだという質問をされています。当時の出納長室の新銀行設立準備担当理事でありました津島さんが、こう答えているんですね。
 デフォルトした債権の償却は、企業再生ファンドなどへの売却を中心に行ってまいります、比較的早い段階から債権を再生ファンドなどに移転し、それらのすぐれたノウハウのもとで中小企業の企業再生や転業等を行うことによりまして、当該企業にとって有益な解決方法を提供していくこともできるというように考えておりますと、こう答えております。つまり、バルクをやるということなんですね。
 したがいまして、不良債権については早い段階でバルクにかける、その相手先は再生ファンドだから、いろいろなノウハウで企業を再生してくれますよ、こういう話なんですけれども、そこで、今まで新銀行東京はバルクセールにどれだけの件数をかけたのか。そして、債権額と売却額を明らかにしてもらいたい。
 その上で、さらに、バルクの相手先は、先ほどの津島さんの答弁では再生ファンドという話でしたけれども、実際は相手先はどういうところだったのか、これについて明らかにしてもらいたいと思います。

○佐藤産業労働局長 新銀行東京の貸出債権のうち、法的手続に入っているもの、また三カ月以上延滞をしているものの中で、銀行として回収努力を行った上で、それでもなお回収が困難、また、極めて長期化するものと推定される債権は、バルクセールによりまして、債権回収会社、いわゆるサービサーに売却しております。平成二十年一月末までに約千百件、約百四十五億円の債権をサービサーに売却しております。

○東村委員 つまり、あの当時の答弁では再生ファンドだという話だったんですが、実際にかけられているのはサービサーだと。恐らく中小企業は再生はできてないだろうと私は思います。厳しいところは、どんどんこの中でもそぎ落とされてきた中での今の二百八十億というデフォルトだということだと思うんですね。
 幾らで売ったか、いってくれなかったんですけれども、通常、専門家に聞いたら、大体、債権額の二%から五%の間だと。それも、担保があれば五%いくけれども、担保がなければ二%ぐらいだろうと。新銀行はそれくらいなのかなと。三億円ぐらいかなと思っていますけれども、それでも、銀行にとっては回収できないお金が三億回収できたということはすごいメリットなんですけれども、売られた方はたまったものじゃないでしょうね。そういうことを考えるわけなんですね。
 そういう意味で、当初、再生するといった高い理想が、現実問題、そこまでいかなかったという、こういう実態もあるということを認識しなきゃいけないと思っているわけでございます。
 その上で、破綻先、実質破綻先については、先ほど一〇〇%個別に貸倒引当金を設定していると。設定した上でサービサーに売却をかけているわけですから、バルクをかけているわけですから、損はしないわけなんですね。一〇〇%かけているのを全部入ってくる、むしろ三億円がプラスになるだろう。これからもそういう形で、その分はプラスになるかもしれない。
 ただ、破綻懸念先について、この破綻先、実質破綻先じゃなくて破綻懸念先、つまり今後経営破綻に陥る可能性が大きいところ、これは先ほどいいましたように、今、四五%しか引き当てをしておりません。都銀の場合、大体七〇から八〇%計上しているんですけれども、再建計画においても、このままの状態でリスクに果たして対応できるのかどうか、非常に疑問があるわけですけれども、この点についてはいかがでしょうか。

○佐藤産業労働局長 ただいまの破綻懸念先債権の引き当ての関係でございますけれども、再建計画では約三百億円の貸倒引当金を計上しております。
 これまで実行した融資、保証に対しては、平成二十年三月末時点で、中小企業向け貸出・保証残高に対して、破綻懸念先を含めた全体として約三〇%の引き当てを計上しております。これは、平成十九年九月末時点で四五%のデフォルト率である破綻懸念先債権が、平成二十年度以降、仮に九七%のデフォルトが発生しても十分カバーできる引き当ての水準でございます。

○東村委員 確かに、二十年度以降、九七%デフォルトしてもカバーできる金額には間違いないと思うんですけれども、この破綻懸念先について個別引き当てをしていかなきゃいけないというのが原則だと思いますので、こういうことを考えれば、もう少し精査もしていかなきゃいけないのかなとは思っております。
 その上で、代表総括質疑で信金の問題をお話ししました。二百八十五億のデフォルトのうち、信用金庫との協調保証によるデフォルトが五百六十件あって、六十五億もある。デフォルト全体の二三%を占めているという、ここは非常に問題ですよという話をしました。
 中にはきっちり提携してくれている信金さんもいらっしゃると思うんですけれども、新型保証において、こういったデフォルトが発生した信金との協調保証は今後行っていくのかどうか。これを行っていけば、リスクをしょったまま、またやっていかなきゃいけないと思うんですけど、この点についてはいかがですか。

○佐藤産業労働局長 信金との提携は、信頼関係の上で行われてきたというふうに考えております。しかし、保証のデフォルト率の実績については、現実、提携金融機関によりばらつきがありました。このため、新型保証では、これまでの状況を踏まえまして、相互に信頼できる金融機関に限って提携していくということにしております。
 また、新型保証では、保証履行の総額に上限を設けることによりまして、新銀行東京が発生したデフォルトに対して無制限に保証することがないような、そういう仕組みとしております。これによりまして、提携金融機関には、しっかりとした審査を行わなければならないというインセンティブが働くことになります。

○東村委員 今、今後はしっかりとしたところとしか提携はしないと。今までデフォルトが発生したところとはやらないということを示唆するような答弁がありましたので、安心はしたんですけれども、一つ一つ過去の反省に立ってというお話があるわけですから、こういうところをよく精査して、この再建計画というのを詰めていかなきゃいけない。
 さっきいった業務収益の問題、現実的に五%で借りられるような体制もとらなきゃ意味がないでしょうし、こういったスキームが、この利益も出ないでしょうし、不良債権の処理にしても、もう少し精査していかなきゃいけないんじゃないかと。都銀が七〇、八〇、個別に引き当てされている中で、破綻懸念先がまだ四五というのはいかがなのかとか、いろいろ懸念する課題も幾つかあります。これは、やってみなきゃわからないよといわれれば、そこまでかもしれませんけれども、やはり懸念する課題については、事前に払拭して対応していかなきゃいけないと思っています。
 そういった中で、さっきの収益もそうですけれども、不良債権処理の費用もそうです。総資産の残高、負債の残高もそうです。これを全部総合的に見て、今までの議論を踏まえますと、私は、予特の代表総括で藤井政調会長が話をした縮小再生計画というのは間違いじゃなかったと思うんです。これは、決して発展的な再建計画ではない。むしろ、四年後の縮小再生計画ではないのかといわざるを得ないと思います。
 つまり、四百億増資する。この四百億の増資をして、累積損失、二十年三月末の累積損失が千十六億円見込まれる。これを相殺すると、さっきいった資本金が残る。そして、四年後は何とか、今、四千億ある預金を二百億にするわけですね。さらに貸出金も、二千億近くある貸出金も四百億になる。保証も二百億になる。さっきいったように、バルクセールをかけますから、不良債権はない。余計なものは全部そぎ落としてやる。残っているのは、絞って、絞って、絞って、本当に優良なところの中小企業の債権だけだ。そして預金だけだ。黒字だ。
 こうなったときに、私は考えられるのは、ここからまた新たにいろいろな次の段階にステップアップしようというより、むしろそこまで来たら、これだけ縮小して身ぎれいになりました、だれか手を挙げてくれませんかといったら、私はおそらく手を挙げてくると思います、銀行も。譲渡という問題が出てくる。そうすれば、四百億は保全または回収できると思っているわけでございます。
 我が党が、都民の負担を最小限に抑えて、単なる延命策ではなくて、しかも一時しのぎでなくて、そういう最もベストでもベターでもないけれども、選択をしなければならないというところで議論してきた中で、四年後のきれいな体での譲渡というところに行き着いたわけでございます。
 この点について、ある意味で、いろいろなさまざまな、さっきから議論を聞いている中で、どうも東京都は発展的に頑張ろうという声があるんですけれども、むしろ、私はやはり、この四年後、こういう形で譲渡して、都民が納得できる形で四百億を保全するか、四百億を回収するか、ここをしっかりした方がいいんじゃないかと思うんですけど、この点についていかがでしょうか。

○佐藤産業労働局長 将来展望として、さまざまな可能性を視野に入れておりますが、まずは追加出資について認めていただきまして、新銀行東京がこの計画に基づいて新たなビジネスモデルを一刻も早く軌道に乗せ、再生することが必要であるというふうに考えます。
 将来的には、最新の金融ノウハウを有する銀行等との連携を視野に入れながら、銀行業務を拡大していくというふうに考えております。

○東村委員 強気な姿勢なんですけれども、私は、本当に都民の負担を最小限に抑えて、一時的な延命策やその場しのぎであってはならないというところをどうかご理解いただきたいと思うんです。
 やはり四百億をきっちり保全できて回収できるという、そういうスキームをつくることが大事であって、投資銀行を選択すると、投資銀行は、一千億どうするんだという話もありますが、一千億回収するのに、多分三十年ぐらいかかるでしょう。(「もっとかかるよ」と呼ぶ者あり)かかると思います。ある意味で減資をするというのはそこなんですね。そういう意味で、せめてこの四百億については、保全できる、回収できるスキームをつくっていただきたい。そういうことを切に願うわけであります。
 その上で、責任という問題について、最後一言述べたいと思います。
 新銀行の調査報告書では、経営責任のみ追及されているわけです。先ほどからいろいろな議論がありました。しかしながら、東京都は、単なる株主でもなく、やはり支配株主だということは忘れちゃいけないと思うんです。もっといえば、会社でいえば子会社ですよ。企業が子会社のことを知りませんよと、あとは放っておきますと、確かに銀行法という足かせはあるかもしれない。あるかもしれないけれども、そこはやはり目を配っていかなきゃいけない。
 そういう意味で、我が党も昨年、この予算特別委員会で、監視をもっと強化しろということで都の職員を、また、ある程度の立場の人を派遣しなさいという話をして、それは結果的に六月になったんですけれども、行った時点では、もう遅きに失したわけなんですね。
 そういう意味で、単なる株主でなくて、支配株主として積極的に監視してこなかったという都の責任は、私は明確にあるんじゃないかと思うんですが、この点、知事、いかがでしょうか。

○石原知事 経営監視につきましては、銀行法上の制約はありましたが、都出身者を社外取締役として経営に参加させながら、また、都としても、決算時の報告を受け、大枠の監視を行ったものの、このような経営状態に陥ったことからすれば、都としての監視が十分だったとはいえないと思います。
 先ほどの田中委員との質疑応答の中でも、私、驚きましたが、話題になりました日銀による考査というのは、実は私は、都から報告を受けていましたが、横から聞いて、概略聞いておりました。それが私の耳に横から入ってきましたけれども、当然都の幹部の人たちに伝わっていると思ったら、それは伝わっていなかったというのは、改めて驚きでありますが、いずれにしろ、先ごろのイージス艦の事故に例えれば、艦長、当直士官、甲板員と、つかさつかさの役割の責任はございますけれども、最終的な責任はトップにありまして、都の監視責任についていえば、最終的には知事である私に帰すると思っております。(発言する者あり)
 でありますから、中小企業を救うために設立したこの銀行が結果的にこのような事態になり、都民の皆様に心配をおかけしていることは、大変申しわけなく、改めて深くおわびを申し上げます。

○東村委員 最後、飛ばされそうになったんですけれども。都民に、監視をしてこなかったという、この責任をやはりわびなきゃいけないと思いますし、我々議会も一千億の出資をしたときに賛成したんですから、やはり積極的に監視をしてこなかった我々議会の責任もあると思っております。
 その上で、この監視責任という部分で、先ほども質問がありましたけれども、知事が三月二十一日の記者会見で、公式の監査機関をつくり、びっくりしたんですけど、議会も協力してもらうと述べられたんですけど、この意味するところは何なのか、具体的に明らかにしていただきたいと思います。

○石原知事 今後の監視体制につきましては、銀行の内部監視機能として、専門性を有する外部委員による監視機関を整備するとともに、都においても、新銀行の経営について、監視と支援両面についての専管組織を設ける必要があると考えております。
 今後においては、金融庁とも十分連携を図りながら、必要な情報の入手に努め、適切な監視を行ってまいります。
 また、先ほど、議会にもと申しましたのは、やはり議会は議会でございますから、いろいろこの監視機関にもさらに監視なり注文をいただきまして、監視が徹底するように努めたいと思います。

○東村委員 一連の責任問題から、そして再建計画、そして四百億の問題等々、我が党としてクリアをしなきゃいけない課題を何点か聞かせていただきました。その上で、この質疑を通じて、これから我が党は持ち帰って、明日の討論で、この追加出資の問題についてしっかりとした態度の表明をしたいと思います。
 次に、周産期医療について何点か質問いたします。
 東京都の予算は十三兆円であります。新銀行への追加出資の四百億だけが東京都の課題ではありません。そういう意味で、何点か、周産期医療を含め、質問をしたいと思います。
 先般、奈良県の妊産婦救急搬送事例がありました。これは、私はすぐに奈良県の方に飛んでいきまして、行政の方と話し合いをしてまいりました。そういうところで具体的な資料を相当いただきました。
 例えば、二時五十七分に県立医大附属病院の産婦人科に電話をしております。これが最初なんです。そして最後が五時四十六分、高槻病院。収容されたのが十四番目だったんですね。悪いことに、三時間かかっているんですけれども、その収容される五時九分に、高槻市でこの救急車が交通事故を起こしている。それで、また乗りかえしなきゃいけなかった。で、流産してしまったという残念な結果になってしまったんです。
 そもそも根本的に奈良県においては、この方はたまたまスーパーマーケットで下腹部に出血をされて、そして慌てて救急車を呼ばれたんですけれども、かかりつけ医にもかかっていなかった。しかも奈良県では、総合周産期母子医療センターというハイリスク分娩に対応するセンターがないんですね。自分の出身の県として本当に恥ずかしいんですけれども、これがないという非常に残念な状況があるわけであります。
 そこで、これは人ごとじゃないということで、東京都の総合周産期母子医療センター、つまりハイリスク分娩に対応できる、この総合周産期母子医療センターの整備はどうなっているのか、二十三区と多摩に分けて答えていただきたいと思います。

○安藤福祉保健局長 平成二十年三月現在、都内の周産期母子医療センターは二十二施設でございますが、このうち、特にリスクの高い妊娠や新生児に対応できます総合周産期母子医療センターは九施設でありまして、二十三区内が八施設、多摩地域が一施設となってございます。

○東村委員 二十三区に集中をしておりまして、多摩も実は、三鷹の杏林大学医学部付属病院なんです。この杏林大学があるところは、ほとんど世田谷に近いところなんですね。そういうことを考えれば、多摩の西南部、また南西部、こういったところは、北部も含めてやはりカバーがなかなかできていない。そういう中で、この総合周産期母子医療、治療というのは非常に重要で、これからハイリスクの妊産婦というのはふえてくるだろうといわれております。
 M-FICUといわれている、母体・胎児を集中治療、管理するM-FICU、さらにはNICUといわれている新生児集中治療管理室、これはそれぞれ産科と新生児病棟になければならないんです。これはどっちかだけでもだめだということがわかったんですね。両方が一体となってあって初めて総合周産期の医療ができる、こういうことが今いわれているわけであります。特に緊急手術の場合は、産科医はもちろん、NICUの専門医が立ち会って、麻酔医も立ち会って手術が行われる。
 そこで、この多摩に今一カ所しかない、いよいよこの二十二年三月期に整備される多摩総合医療センター及び小児総合医療センター、これができるわけなんです。ここにおける総合周産期母子医療体制について、どういう体制でやるのか、これについて伺いたいと思います。

○秋山病院経営本部長 仮称でございますけれども、多摩総合医療センターでは、産科を、現在の府中病院の二十九床に十三床加えた四十二床とするほか、新たにM-FICU九床を整備する予定でございます。
 また、多摩総合医療センターと一体として整備いたします、これも仮称でございますが、小児総合医療センターでは、NICUを、現在の八王子小児病院の九床と清瀬小児病院の六床を合わせた十五床、これに九床加えた二十四床としていく予定でございます。
 この両センターが一体となって新たに総合周産期母子医療センターを運営することによりまして、低出生体重児の出産等が予測される際には、産科医と新生児科医が連携するなど、母体と新生児を一貫して診療可能な体制が実現することとなります。
 また、これに加えまして、新生児搬送のためのドクターカーを、小児総合医療センターにおいても引き続き運行していく予定でございます。
 こうした取り組みによりまして、多摩地域における周産期医療の拠点としての役割を果たしてまいります。

○東村委員 全国周産期医療連絡協議会というのがありまして、平成十八年度に全国M-FICUの実態調査というのをやりました。この調査の報告書というのがありまして、M-FICUの勤務者から、最大の悩みは、NICUの不足によって、どんなにM-FICUが対応をとれたとしても、NICUの不足によって迅速かつ適切な対応ができないことなんだ、これをクリアしなければならないんだ、こういう提言がなされているわけでありますけれども、今お聞きしたように、小児総合医療センターと多摩総合医療センターでそれぞれM-FICUは九床、NICUは二十四床という体制で、十分な体制をとっていただける、これは大変にありがたいことだと思います。
 ただ、この小児総合医療センターの完成によって八王子小児病院が移転統廃合になるという、この予定があるわけでありまして、これが非常に八王子にとって大きな問題でございます。
 ただ、八王子小児病院は産科がないんです。先ほどいいましたように、私も当初、勉強不足で、NICUだけ設置されていればいいんだと思っていたんだけど、そうじゃない、やはりM-FICUとNICUが一体とならなければハイリスクの妊産婦に対する周産期医療というのはできないんだということが、最近いろんな意味でわかってきたんですけれども、ただ、八王子からなくなるということは、今まで担ってきた機能が全部なくなるということですから、この機能を確保する体制がとられなければならないということが非常に大事なことなんですね。
 そこでまず、今まで八王子小児病院が担ってきた一次、つまり外来ですね、一次医療、それから入院の二次医療、そして高度医療といわれている三次医療及び救急医療について、どういう状況にあったのか、これについて伺いたいと思います。

○秋山病院経営本部長 八王子小児病院におきます平成十八年度の実績で見ますと、一日当たりで、外来は九十四人、入院は六十九人となっております。このうち、入院医療をいわゆる二次医療と三次医療とに分けてみますと、二次医療は一日当たり八・二人で一一・九%、三次医療は、新生児医療で三十二人、心臓血管外科医療で二・二人、その他で二十六・六人となっており、入院全体の八八・一%となっております。
 また、救急医療では、一日当たりの患者数二十一人のうち、入院に至った患者が二人で七・七%、外来で終了する、いわゆる一次医療の患者が十九人で九二・三%となっております。

○東村委員 確かに救急医療では九二・三%が一次医療、つまり、ちょっとした、熱を出したとか、そういうお子さんが多いという状況でございますが、入院に関しては圧倒的に三次医療が八八・一%。心臓血管外科だとか、いわゆる新生児の千グラムとか千五百グラム未満、また妊娠中毒でさまざまな障害を持ってきたとか、こういった人たちが多いんだろうと思うんですけれども、こういった機能が今までこの八王子小児病院で担われてきたわけなんですね。これがいきなりなくなるというのは、地元八王子だけじゃなくて、西多摩地域全体にとってこれは大きなマイナスだろうと私は思っているわけでありまして、このことは本会議や予算特別委員会、厚生委員会でずっと質疑をしてきました。またかといわれながら、ずっと質疑をしてまいりました。
 都はその中で、財政的支援、人的支援を行っていくというところまで答弁をしていただきました。非常にありがたいということで、非常に私は喜んでいるわけなんですね。
 その上で、八王子市との協議会も立ち上げて、具体的に財政的、そして人的な支援をやっていく、こういうことで協議をなされているんですけれども、現在この協議会でどこまで検討されて、そして具体的対応策が出されているのか、さらに都の支援策は行うのか、この点について伺いたいと思います。

○秋山病院経営本部長 八王子市との協議会でございますけれども、八王子小児病院が担っております医療機能を一次から三次までに区分して分析の上、対応策を検討してきておりまして、現在、最後の詰めを行っている段階にございます。
 その具体的対応策といたしましては、一次医療につきましては、地域の医師会のご協力を得ながら市内の医療機関で対応を図り、また、二次医療につきましては、現在、市内に二つある大学病院を中心に、八王子小児病院が担っている役割を引き継ぐことを基本としております。
 新生児医療を初めとした三次医療につきましては、都が担うべき役割というふうに整理をし、八王子市内の医療機関との連携体制構築のもと、多摩メディカル・キャンパス内の両センターが担っていくというものとしております。
 また、都の支援策といたしましては、市が中核病院として位置づける二つの大学病院を中心とした二次医療体制を整備していくために、市から強い要請がございます、これら二つの大学病院に対する医師の派遣について、都としても積極的に対応してまいります。
 このほか協議会におきましては、二つの大学病院の小児病床の整備や、緊急時の搬送手段としての小児用ドクターカーの配備に対する支援についても市から要望が出されておりまして、現在協議を行っているところでございます。

○東村委員 この小児病院の二次医療の部分、これを東海大と医療センターで担っていくということで、この大学病院の体制の、ベッドの整備と、それから医師を派遣するということで、今、積極的に対応するという答弁をいただきました。ぜひともこれはやっていただきたいと思います。
 特に二次救急に関しては、今、東海大と医療センターで偶数日と奇数日に分けて受け入れをやっているんです。ここまでやっておりますから、ぜひともその上で、この小児病院で、二次でかかっていた部分をここでしっかりと確保する、こういうことをお願いしたいと思いますし、実は八王子小児病院の周りには、重度の重複障害を持っているお子さんが、何かあったらすぐに小児病院に駆けつけられるということで周辺にお住まいになっているんですね。これが三次医療といわれている在宅医療の部分なんです。この在宅医療の部分について、先ほど八王子市も、小児ドクターカーという、そういう専用のドクターカーを走らせる、こういうことで前向きに今検討しているんです。都もぜひとも、今協議中ということですけれども、積極的な財政支援をしていただいて、本当に、万が一、移転統廃合になっても万全の体制で守っていけますよ、こういう仕組みをつくっていただければと思います。
 その上で、先ほど、奈良県の妊産婦の救急搬送事例は、かかりつけ医にかかっていなかったという話がありました。確かにかかりつけ医にかかっていれば、仮に重度の妊娠中毒症や切迫早産、さらには胎児異常などがあったとしても、事前に府中のこのM-FICUに入院すれば、そこで生まれた子はすぐに、NICUの専門医が立ち会っているわけですから、NICUに移管できるんです。こんなにすばらしいことはないんです。ただ、不測の事態で、どうしても千グラム未満といわれている超低出生体重児、それから千五百グラム未満といわれている極低出生体重児が生まれた場合には、これは新生児ドクターカーで搬送しなきゃいけない。しかもこれは今、府中に置くという話でしたから、府中から行ったり来たりしなきゃいけないんですね。こういうことを考えたときに、多摩というのは二十三区と違って広大なんです。奥が深いんですよ、本当に。そういう意味で、この広大な多摩地域の一刻を争う場合には、新生児ドクターカーでは間に合わないケースが出てくる。
 例えば、私もこれは調べたんですけれども、新生児ドクターカー、府中キャンパスから八王子の医療センターまで行って、そしてまた府中キャンパスに帰れば九十四分かかる。これを消防庁がヘリコプターで行けば、立川から飛んで、府中で先生を乗せて、そして医療センターに行けば四十五分で済む。半分で済むんです。
 そこで、実は、こういうことをやっているところがないかと思って調べたら、石川県がやっている。石川県で消防防災ヘリに、インキュベーターといわれているドクターカーに載っている保育器、あれを消防のヘリに載せるんです。載せて、小松空港からこれが飛んでくる。いしかわ総合母子医療センターで、その器械を載せて先生も乗る。能登半島に行くんです、能登半島も、あそこも奥が深いですから。実は石川県というのは、新生児の死亡率が全国でも高いところだったんです。これをやることによって死亡率が随分下がってきている。これをやった事例が十四例あるんです。
 昨年十一月から、東京型ドクターヘリというのを飛ばしています、二十四時間。ぜひともこれに、立川から飛んできて、小児病院でインキュベーターの設備を載せて、今度、屋上にヘリポートもつくってくれるわけですから、そこにおりて、載せて、医師も乗せて、そこから飛んでいけば、どれだけ時間が短縮されて、新生児の命を救うことができるかと思うわけなんですけど、この点はいかがでしょうか。

○安藤福祉保健局長 東京型ドクターヘリについてでございますが、多摩地域では現在、山間部で発生した救護活動を中心に、東京型ドクターヘリによります患者搬送を実施しております。
 ご提案の東京型ドクターヘリを活用いたしました多摩地域における新生児の緊急搬送につきましては、医学的見地からの必要性などを踏まえ、関係局とともに今後検討を行ってまいります。

○東村委員 今後検討していくということですから、速やかに検討していただいて、ただ、二十二年三月ですから、それには必ず間に合うように体制整備をしていただければと思うわけです。
 先ほど述べましたように、八王子小児病院の周辺には、緊急時にはすぐに駆けつけることができるということで、重度の重複障害を持つお子さんがたくさんお住まいです。そこで、この小児病院が仮に統廃合になった後の跡地、ここにぜひとも、先ほども何か北多摩の方でご提案がありましたけれども、ぜひとも私は、こういうお子さんがすぐに駆けつけられる医療的ケアができる重度重複障害児の通所施設。これがなかなか今、希望しても行けないという話があるものですから、そこに通所施設があれば、そこにドクターもいるわけなんです。すぐに子どもたちがそこに、何かあったときに駆けつけられる、こういうことを考えると、ぜひともこの重度重複障害児の通所施設を小児病院の跡地につくっていただきたい、このことを強く要望して、次の質問に移りたいと思います。
 次に、多摩のシリコンバレーについて何点か伺いたいと思います。
 私は、平成十七年度の予算特別委員会で知事に、八王子を含む圏央道のこのエリアというのはまさにシリコンバレーになる可能性があるという話をして、知事も前向きに、非常にこの地域は有望な地域だという話をされて、その後、「十年後の東京」で、多摩のシリコンバレー構想を打ち出してくれました。
 シリコンバレーのいろんな研究をしている人に話を聞いたら、条件が幾つかあって、一つは、すぐれた理工系の大学があるということ、それから試験研究機関があって、高精度で、そして短期に納品ができるような基盤技術型の中堅・中小企業があるということ、また、何よりも先端技術力にすぐれた製品開発型中堅・中小企業があるということ、そして大事なのが、発達した交通網。
 圏央道は、今まさに中央道とつながりました。これから先、これが東名につながります。そうすると、このシリコンバレーが想定されている神奈川県の中西部、相模原から埼玉県の南部あたりまで、全部これが圏央道でつながる。しかも、その中心に今度は横田飛行場があるわけなんですね。これが軍民共用になって、横田飛行場からも飛ぶようになれば、まさにこれはシリコンバレーとして発展していく要素だと思っているわけでございます。
 実は、調べたら、このエリアの国内総生産、GDPは、アメリカのシリコンバレーの二倍あるということがわかりました。それだけの先端技術のGDPを有しているすばらしい地域だということでございます。
 そこで、今回知事が所信表明で、このエリアが多摩のシリコンバレーとして発展していくために、八王子市に産業交流拠点を整備していく、こういう所信表明をしました。そこで、その理由について伺いたいと思います。

○佐藤産業労働局長 八王子市を含みます広域多摩エリア、ここにはエレクトロニクス、計測機器等の分野で独自の製品を持つ企業や、また大学、研究機関が数多く立地をいたしまして、新産業の創出にとって大きなポテンシャルがございます。
 このエリアが、潜在力を発揮しまして、多摩シリコンバレーとして発展をしていくためには、中小企業の技術力、経営力のさらなる向上を図るとともに、広域的な産学公連携等を活発化させまして、新たな研究開発を促進することが重要であると考えております。
 このため、平成二十一年度に多摩産業支援拠点を昭島市に整備をいたしまして、中小企業に対する技術、経営支援機能を抜本的に拡充することに加えまして、交通至便な産業技術研究センター八王子支所の移転跡地に交流拠点を整備いたしまして、広域的な産業交流機能を強化することといたしました。

○東村委員 まさに今ご答弁いただいたように、シリコンバレーのちょうどへその部分が八王子になるんですね。しかもここに産業技術研究センター八王子支所がありまして、これがちょうど移転になります。移転になった跡地に今度これを、交流拠点をつくるというお話がありました。
 そこで、この八王子には実は、国の機関、経済産業省の機関も幾つかありまして、首都圏産業活性化協会、通称TAMA協というのがあります。これもシリコンバレーと同じエリアをカバーしている。ここでは、産学公連携だけじゃなくて、金融支援や販路の開拓までやっているんですね。また、八王子市が独自に先端技術センターというのを持っていまして、特に中小企業が一番困る計測や検査、試験、こういうのができるようになっている。また、共同研究もできるようになっている。さらには、商工会議所と行政が後押しをして、ヒューレット・パッカードの社長が勇退されて、サイバーシルクロードというところのトップにつかれているんですけれども、非常に発想豊かな方で、この方が中心に「首都圏情報産業特区・八王子」構想推進協議会というのを持っていまして、中小企業振興公社が今やっているビジネスお助け隊のはしりを実は最初にやったのはここなんです。ここで財政支援や販路の支援、営業、こういったことをやっておりまして、こういうところが幾つもこの八王子にあるわけなんです。非常にこれは、この三つは今連携しているんです。これと、今度はこの産業交流拠点が一緒になって連携できるようになれば、まさに相乗効果、シナジー効果が生まれてくると私は思うんですけれども、いかがでしょうか。

○佐藤産業労働局長 八王子市周辺には、多くの理工系大学、研究機関とともに、首都圏産業活性化協会などの産業支援機関がありまして、多摩地域の産業振興に大きな役割を果たしております。
 多摩地域における産業交流を一層活発化させていくためには、都と市町村及び地域の支援機関が相互に密接な連携を図ることによりまして、中小企業と大企業、また異業種、異分野間など、規模や業種の垣根を越えた多様な交流の創出が重要であります。
 このため、多摩地域の交流拠点整備に当たりましては、地域の支援機関とのネットワーク強化を念頭に置きながら、今後、具体的な方策や機能について検討してまいります。

○東村委員 ぜひとも、非常にこれはポテンシャルのある話ですから、いい発展ができる形で検討していただきたいと思います。
 その上で、実はこの八王子の産業交流拠点というのは、JR八王子駅と京王八王子駅のど真ん中にあるんです。なぜか京王八王子駅とJR八王子駅が五百メートル離れておりまして、その中心にあるわけなんですけど、非常に市民からは、あそこを上か下でつないでほしいという声がずっと前からあるわけなんですね。せっかくここを産業交流拠点として整備していく、別に私は都がやれとはいっていません。民間活力を使ってもいいんじゃないかと思っているんです。こういう民間活力を使って、まちづくりと一体となって、ものづくりの拠点としてあそこを位置づけていく。そういう意味で、このまちづくりと一体となった拠点整備について、ぜひとも見解を伺いたいと思います。

○只腰都市整備局長 産業交流拠点の予定地周辺地区でございますが、今お話ございましたように、駅前に見合った土地の有効高度利用とともに、老朽ビルの機能更新などが課題となってございます。
 また、業務・商業機能の拡充や集客力の強化、お話ございましたJR線と京王線の八王子駅を結ぶ歩行者空間の整備などが求められております。都といたしましては、これらの課題や産業交流拠点の整備と一体となったまちづくりのあり方などにつきまして、来年度調査検討を実施いたします。
 今後、こうした調査の進捗を見ながら、八王子中心市街地にふさわしいにぎわいと活力の創造に向けて関係局や地元市と連携し、取り組んでまいります。

○東村委員 来年度、二十年度ですね、調査、そして検討を実施していくということですので、ぜひともよろしくお願いいたします。
 次に、京浜港の、先ほども質問に出ておりましたけれども、連携強化について伺いたいと思います。
 我が国は、日本じゅうに六十を超えるコンテナポートを設置しております。非常に戦略性がないというか、ただ、この戦略性がないこの六十を超えるコンテナポート(発言する者あり)実は東京、横浜、神戸などの五港にこの国際貨物の八〇%を集約しているんです、集中しているんです。暴言という話がありましたけれども、実際は、八割がこの五港に集約されているということは、残りの二〇%を六十で分け合っているわけですね。だから、戦略性がないといっているわけなんです。
 他方、アジアはどんどんどんどん今、港を集約して、大規模化して、大型船が入るような形で、国際物流の確たる地位をアジアの諸外国は今必死になってやっているんです。日本はなかなかだめだ。
 そういう中で、大型船舶の寄港地、どういうところを寄港地として選択するかというと、十分な貨物量が確保されて、港湾が効率化され、低コストだということなんです。そういう中で、知事が今回基本合意されたことは、すごいことだと思います。
 特に、今まで競い合っていた横浜と東京が一緒になってやるなんて、私はある意味で、今回新銀行の問題でほとんど紙面を飾っていますけれども、歴史的な大きな転換じゃないかと思っています。それぐらい評価されてもいいんじゃないかと思っています。
 そこで、今回知事の決断によって実現をした京浜三港の合意による国際競争力強化に向けたねらいについて、まず伺いたいと思います。

○石原知事 これまでの国の港湾政策は、一言で申しますと、ご指摘のように、全国に港をあちこちつくって整備することを眼目にしてまいりました。
 例えば、ほとんど経済需要のない宮古島に四万トンのタンカーが着くようなコンテナヤードができまして、非常にこっけいな話でありますけれども、一方、ご指摘のように、アジアは投資を集中させまして、大規模港湾を次々と整備しておりまして、国際物流における枢要な地位を確立しつつあります。
 今日、アジア諸港との競争が激化する中で、日本経済の根幹を支える国際基幹航路の維持が、年々厳しさを増しておりまして、このままでは将来に禍根を残すことになります。
 今回の合意は、京浜三港を実質的に一港としまして、あたかも一つの港として経営していくものでありまして、これにより港の規模の拡大を図り、港湾整備のおくれを取り戻すとともに、大型船の寄港に見合う貨物量を確保するなど、国際競争力を強化してまいります。
 この京浜三港の連携によりまして、日本港湾の凋落に何とか歯どめをかけて、熾烈な国際競争を勝ち抜いていきたいと思っております。

○東村委員 実質的な一港化という話がありました。まさに日本初であります。ただ、具体的な成果も問われてくるわけでありまして、この中で六項目の課題、取り上げられております。
 そこで、実施する事業、そしてその効果、これについて例を挙げて具体的な説明を求めたいと思います。

○斉藤港湾局長 京浜三港は、今回合意いたしました六項目の課題に取り組むことによりまして、船会社や港湾事業者などの利用者が京浜港を一つの港として使える実質的な一港化を進めていくものでございます。
 具体的には、それぞれの港ごとに徴収しておりました入港料を最初に寄港した港で一度払えば、他の二港にも入港できる入港料の一元化によりまして、試算では、船会社全体の港湾コストが、年間約一億円程度の軽減が見込まれます。
 また、国内ハブ機能の強化につきましては、港ごとの航路を一本に束ねまして、太い海上物流導線をつくり出すことによりまして、海上物流の効率化が進み、港湾コストの低減と環境負荷の軽減が図れます。
 平成二十年度には、入港料の一元化や手続の簡素化など利用者ニーズの高い喫緊の課題に取り組みますとともに、仮称でございますが、京浜港広域連携推進会議を立ち上げまして、連携施策を着実に推進してまいります。

○小磯副委員長 東村邦浩委員の発言は終わりました。(拍手)

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