東京都議会予算特別委員会速記録第六号

   午後三時三十五分開議

○大沢副委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 泉谷つよし委員の発言を許します。

○泉谷委員 我々都議会民主党は、今までの質疑の中で、さまざまな角度から四百億円の追加出資について調査、検証をしてきました。しかしながら、多くの問題点や疑問点に対する理解が深まらないばかりか、その疑念はますます大きくなったように思います。
 そこで、私は、銀行の再建計画についてお伺いします。
 一般的に、企業が再生する第一条件、経営者が素直に過ちを認め、周りの意見を聞くことです。我々議員は、選挙のとき、当選すれば皆様のおかげ、落選すれば自分の力不足を認める。しかし、石原知事は、手柄はすべて自分のもの、そして失敗は他人に押しつける。これでは、仮面のはがれた裸の王様であり、有能な人間は危なっかしくて石原さんについていくことはできない。その点について改める余地はあるのか、知事にお伺いします。

○石原知事 何に答えていいかわかりませんが、東京の行政を預かる者が、明確な方針を示し、その実現に向けて職員に指示することは当たり前のことです、これは行政の機能からいって。
 新銀行に限らず、都政の課題の解決に当たっては、民間の専門家の知恵をかりたり、庁内でも議論して成案を練り上げることにしましたし、今後も同じようにやっていきます。
 私が一体、いつ、何について、成功を自分のものにし、失敗を他人に押しつけたか、逆にお伺いしたいですな。

○泉谷委員 いろいろなものに、人に責任を押しつける。今回の件に関しましては、旧経営陣、そういった人たちに責任をすべて負わせる、そういうことをしていると、きちんとした有能な人間が知事の後についていく、そうすると、また罪をなすりつける、経営責任をなすりつける、そういうふうになってしまうということをいっているのであります。
 世論調査を見ても、都民の多くは石原知事に責任があると見ています。そういう状況になっています。
 第二の条件として、過去の問題について徹底した調査を行い、問題の検証ができるか否かにかかっています。過去の失敗をしっかりと総括しない限り、また同じ過ちを犯すのではないかと大いに懸念いたします。
 しかし、東京都は、新銀行の内部調査報告書だけを根拠に、あたかも旧経営陣のみに失敗の原因があったと繰り返し、最大の過ちであったマスタープランについての細かい検証を行っていないばかりか、ビジネスモデルについての検証も行われていないのが現状です。ここを事細かく行わない限り、再生の道はないと考えますが、石原知事の所見をお伺いします。

○佐藤産業労働局長 新銀行マスタープランでありますが、これは、専門家が知恵を出し合いまして中小企業への円滑な資金供給を実施する、そういう新銀行創設の理念を実現するために検討を重ねた結果としてのプランであります。
 お話しの同プラン、それからビジネスモデルの検証というお話でありますけれども、今回、銀行が示しました再建計画、これは、今までの経営の反省に立って、従来のビジネスモデルにこだわることなく、確実な収益の見込める事業に重点化をすることとしております。
 また、債権の期中管理の徹底や、回収、審査、融資条件などなど、経営全般の見直しを行ってこの再建計画を出したわけでありますので、そういう見直しを行った結果というふうに私どもは受けとめております。

○泉谷委員 マスタープランの失敗を認めずに再建計画をどうやってやっていくのか、疑問に思います。
 第三点目として、任命者を指名するに当たっての洞察力です。
 山下議員の質問で、旧経営陣の任命責任について、東京都は、選任については当時の銀行設立準備担当部署が役員候補を決定して、最終的に知事の了承を得たと答えています。つまり、旧経営陣の任命責任については、知事に責任があるとはっきり認めたんです。
 しかし、石原知事は、三月十四日の定例会見で、取締役会が取捨選択して仁司さんに決まったと発言するなど、みずからが最終的に了承した責任さえ転嫁するような姿勢に逆戻りしています。
 そもそも石原知事は、経団連の重鎮から推挽について、こっちはその人の能力を審査する知識も能力もないので、経済界の推挽を信用せざるを得ないと発言していましたが、それでは、津島氏の後任はどのような手順で決まるのでしょうか。
 これまでの質疑で、津島現代表執行役の後任が新たに選任される見通しであることは知事も答弁していますが、あくまでも旧経営陣に責任をなすりつけようとしている石原知事が、追加出資をし、新銀行の再建を果たそうとするのであれば、後任の人事構想を一体として示すのが筋ではないでしょうか。選定作業は行われているのか、だれが候補者になるのか、お伺いいたします。

○石原知事 再建計画をつくればそれで終わりということでは決してございません。現経営陣は、その達成に向けて、今限りはまずしっかりとやってもらいたいと思っていますが、とはいえ、今の代表執行役は、もとは都の官僚でありまして、その経験からいっても発想にも限界があると思います。
 今後は、再建計画の進捗を見ながら、経営陣に広く内外の金融の専門家を求めていく必要があると思っております。

○泉谷委員 先ほどもいいましたように、何か問題があれば責任を押しつけるというような石原知事のもとで、結局は引き受け手がないということを指摘しておきます。
 四点目は、再建計画が実現可能なものなのか、これに大きなウエートがかかっていると思われます。しかし、そもそも再建計画が、本当に新銀行東京が目指している計画なのかは大きな疑問です。
 石原知事は、盛んにセカンドステージということをいわれていますが、東京都はこの言葉の意味について、再建計画の実行により新銀行の足元をしっかり固めることができた暁には、その後の展開についてさまざまな可能性が考えられることをわかりやすく述べたものだと解釈しています。
 一方で、石原知事は、三月二十一日の定例会見で、セカンドステージについて問われ、いろいろ考えています、議会で承認されれば即日次へ動く、と述べています。つまり、再建計画は全くのダミーで、追加出資が認められれば別の事業を模索し、再建計画とは全く違う事業を展開することになるのではないでしょうか。
 これでは、再建計画を審議することすら無意味なものになると考えますが、石原知事の見解をお伺いいたします。

○石原知事 何としても新銀行東京を再建するためには、新たなビジネスモデルを一刻も早く軌道に乗せて、財務体質を強化する必要が不可欠であります。
 しかし、再建計画で述べたとおり、より安定した経営基盤を確立することが今後の新銀行東京の重要な課題であります。
 再建計画を事足れりとするのではなくて、早急に財務体質の強化に取り組むことは銀行の責任であって、再建計画がダミーであるという指摘は決して当たりません。

○泉谷委員 石原知事自身が、銀行単独の再建は無理だ、議会で追加出資が承認されれば、即日、次へ動くといっているのです。仮に百歩譲っても、再建計画がダミーでないとしても、この再建計画が絵にかいたもちに終わるのではないかと心配するものであります。
 例えば再建計画では、平年度三年間の融資、保証実行計画として、一般融資、小口融資、成長企業支援型融資、新型保証によって、三年間で一万八千社、二千百億円に融資、保証を行っていくとしています。
 新銀行マスタープランでは、ポートフォリオ型融資や技術力・将来性重視型融資、あるいは信金協調型保証などのメニューごとの年間の実行件数や実行金額、あるいは月次残高なども示されており、それをもとに、私たちも新銀行の融資実績が計画どおりなのかを把握できました。
 そこで、再建計画における融資、保証のメニューごとの年間の実行件数、実績別、月次残高見込みをお示しください。

○佐藤産業労働局長 再建計画におきます計画残高は、平年度ベースで申し上げますと、一般融資百五十億円、小口融資五十億円、新型保証二百億円、公共工事代金債権信託百億円、成長企業支援型融資、ファンドについてはそれぞれ百億円で、合計七百億円を見込んでおります。
 なお、お尋ねの年間実行件数、実績別、月次残高見込みにつきましては、これは他行との競争上の地位を脅かすおそれがあるため、新銀行東京は明らかにできないとしております。

○泉谷委員 平年度ベースの数字は再建計画にも書いています。マスタープランで示していたような年度ごと、メニューごとの融資の見通しがどうして示せないんですか。これでは、再建計画の検証もできません。
 次に、公共工事代金債権信託についてお伺いします。
 先日の経済・港湾委員会において、山口拓議員が、公共工事代金債権信託を新銀行東京が実施している理由を質問したところ、東京都は、一般に、工事代金債権の第三者への譲渡は原則として禁止されているが、新銀行東京が商品化した信託は、その仕組みが中小企業振興という都の施策と合致する提案であったことからこれを認めたと答弁しています。
 しかし、そもそもこの仕組みは、以前から他の金融機関でも商品化の検討をしていましたが、さまざまな制約があって商品化に至らなかったと聞いています。
 都の中小企業振興施策に合致することで、例外的に新銀行東京に工事請負契約書第四条第一項のただし書きの規定を適用していますが、中小企業振興を唱えるのであれば、他の金融機関にも道を開くことが中小企業振興の実現の近道と考えます。
 そこで、今後、中小企業振興を目的に、他の金融機関から工事請負契約書第四条第一項ただし書きの規定に基づく工事代金債権の譲渡の承諾を求められれば、それを認めるのか、伺います。

○村山財務局長 この制度は、工事期間中の中小企業者に対して、新たな資金調達の道を開くことで円滑な資金繰りを実現していくという中小企業支援策の一環として試行実施されている仕組みでございます。
 具体的には、金融機関から提案されたスキームがこうした趣旨に合致し、工事履行の確保が図られると認められる場合に、債権譲渡の原則禁止の例外として取り扱うものでございます。
 現在、中小企業支援を経営目標としております新銀行東京から提案されたスキームのみが実施されております。仮に、同銀行以外に東京都公金収納取扱金融機関として指定されている金融機関から提案があった場合には、中小企業支援という本制度の趣旨に即して内容を十分検討し、債権譲渡承諾の対象としての認定について判断を行うこととなります。

○泉谷委員 つまり、新銀行東京以外でも、妥当であれば債権譲渡承諾の対象と認めるということです。
 ということは、新銀行東京の再建計画、財務目標で掲げている公共工事代金債権信託の平年度ベースで百億円という融資目標は、営業力、利便性にはるかにまさる他の金融機関にマーケットを奪われ、実現性に疑問が生じます。このことは、再建の道につながらないことを意味するのではないでしょうか。東京都の見解をお伺いします。

○佐藤産業労働局長 公共工事代金債権信託は、都の公共工事の施工を請け負う中小企業に新たな資金調達の道を開く、それとともに、下請中小企業への支払いを円滑化する、こういうことを目的として、新銀行東京が、信託兼営銀行という特徴を生かしまして、信託の仕組みを用いて商品化をいたしました独自の商品であります。
 新銀行東京は、今後は、知事部局から、現在、知事部局でやっておりますが、これから公営企業局、監理団体等へと営業ターゲットを拡大いたしまして、また、受益権売却代金の支払い時期を前倒しをする、つまりは、今は工事完成八割の段階での融資ということになっておりますけれども、それを前倒しをして融資期間を延ばして利便性を高める、そういうことになりますけれども、そういう意味での商品力を向上させまして、営業力の強化などによって再建計画を着実に推進していくこととしており、他の機関との競争力は十分にあるというふうに考えております。

○泉谷委員 先ほど財務局が、新銀行東京以外にも認めているといっているのに、どこに他の機関との競争力が十分にあるのか。知事部局や公営企業局、監理団体への営業ターゲットを広げるというのであれば、東京都の優先的な地位を乱用した、民業の圧迫です。
 新銀行東京の今の融資状況が民業圧迫というまでのインパクトはないものの、少なくともこれからの新銀行東京の事業展開の中で、どうしても新銀行がやらなければならない、あるいは新銀行にしかできないような事業を見出すことができません。
 民間金融機関が中小企業の資金需要を満たしていないというのであれば、それこそ金融機関の中小企業への貢献度などを評価する金融アセスメントの取り組みや制度融資の充実などを進めていくべきです。
 猪瀬副知事の著書、「持続可能なニッポンへ」の中で、政策目的で設立されている数ある政府系政策金融機関を、民業を圧迫している、民間とダブってやらなくてもいいじゃないか、民間にやらせておけばいいじゃないか、こういう機関の改革には所管の官庁が抵抗しますといっています。
 東京都庁という視点からではなく、国の金融行政という観点から見た場合、新銀行東京への、いわゆる公的資金の注入は、民でできることは民でするという原則からは決して好ましいことではないと考えますが、猪瀬副知事の見解をお伺いします。

○猪瀬副知事 信用不安をなくすためには追加融資は必要です。
 僕は、公的資金というか、そういうものは、必要なときは必要だというのは知られているわけですから、まず政策金融機関というものが一定の必要性があると。しかし、これは民業を圧迫すべきではない、民業の補完に徹するべきであると、こういうふうに思うわけですね。
 ちょっと個人的なお話をしますと、僕は国民金融公庫からお金を借りたことがあるんですよ。担保がなくて、これから本を出すというときに、民間の銀行ではお金を貸してくれないんで、まだ駆け出しのころですから、本を一冊出すという説明をしてもなかなかわかってくれない、窓口で。その説明を一生懸命一時間ぐらいしましたら、担保なしでお金を貸してくれるということになりました。本当に本を出すのかねといわれても、契約書がないんです、日本は。ですから、この本を出すという約束はあったんですが、お金がなかったので、お金を借りたと。これは、中小零細の人の立場で考えると非常によくわかるんですね。
 今度は、たくさん本が売れるようになりまして、今度は、税金をたくさん払わざるを得なくて払いましたら、一気に集中して仕事をしましたので、翌年は余り仕事をしていなかったら、予定納税を払えと、こういわれまして、そういうお金がないものですから銀行にお金を借りにいったんですね。さんざっぱら税金を取られて、今度、税金を払うお金がないんですね。そうしたら今度は、銀行は、僕がある程度作家としてのブランド力があるので、ある種の将来性はあるわけですから、そういう将来性についての審査能力があれば十分にお金を貸してくれるんだけれども、僕の家の土地の大きさをはかって融資してくれたんですね。
 こういうことをやっているから、日本の銀行の審査能力というのは非常に弱いわけで、そういう中で、公的な機関がリスクをとるという場合に、例えば政府の政策金融公庫とかいろいろありますね。例えば政策投資銀行は超長期のリスクをとれない民間銀行にかわって融資をすると。あるいは、中小企業公庫とか生活公庫とかというのは、担保がない場合の貸し出しなんかに応じてくれるとか、そういうことをやるわけですね。あるいは、農林漁業公庫とかいろいろあります。
 ただ、そうした政府の公庫が、郵便貯金と簡易保険が合わせて三百兆円ぐらいありましたから、それで、善男善女の方々がそこに預金をすると。預金をして、その運用のために無理やりに政策金融の方にお金を押し出してくるわけですね。そうすると、例えば道路公団を含めてむだな建築がどんどん始まったりとか、むだなお金が使われるようになったりするわけですね。
 そういう意味で、政策目的の金融というのは、気をつけないと民業を圧迫するようになっていくと。例えば住宅金融公庫は、住宅ローンにやるときに、ほとんど住宅金融公庫で住宅ローンをやってきたわけですが、銀行はコバンザメみたいにくっついてきただけだった。ところが、住宅金融公庫が保証業務に徹するようになると、そこに住宅ローン市場ができていったわけですね。
 ただ、この場合ですね、新銀行東京を考える場合には、無担保でお金がない、そういうときに、そういうリスクをとる機関が公的な機関しかないケースが今まで多かった。しかし、そうじゃなくて、貸しはがしとか貸し渋りの時期に、どうやって民間の金融機関がリスクをとる、そういうやり方を持っているか持っていないかというときに、持っていなかった。だから、新銀行がやろうとしたということですね。
 ただし、民業圧迫ということにならないためには、公的金融のあり方というのはあくまでも民業補完である、こういうことで考えていくべきだったと思いますね。
 ただ、時期の問題で、たまたま新銀行のときは貸しはがしがすごかったけれども……

○大沢副委員長 答弁を簡潔にしてください。

○猪瀬副知事 大事なことだからいっているんですよ。僕の本を読んで質問しているから説明しているんで。
 そういう中で、今も大企業というか、大手の金融機関も、民間に担保なしの融資を始めるようになりましたよ。なりましたけれども、それはまだ全然十分であるといえません。ただ、そういう市場ができてきたことは確かで、徐々にそういう市場が出てきた。
 だから、新銀行ができたときと多少時期は違ってきているけれども、新銀行がやっぱりある一定の役割を負ったことは事実で、そのときに、民主党もみんな賛成したんだよ。それで、新聞もみんな、いいことだといったわけ。問題はその後なんだよ。その後どういうふうにチェックしていくかということが弱かったんだと思う。
 以上です。

○泉谷委員 我々民主党は、出資に賛成したということは真に受けとめて反省しておりますけれども、その当時、認めた、その後、こんなでたらめなトップダウン、市場を見ないで、石原知事がトップダウンをしたり、市場がなっているのに、それを続けるようなことは我々は望んでいないし、そのときに付帯決議として追加出資はしないということはそのときに述べているということをつけ加えておきます。討論でいっています。
 都民が期待した猪瀬副知事のイメージとはほど遠い答弁で残念です。
 国民金融公庫、今は国民生活金融公庫、そういうものがあるということで、別に新銀行東京がやらなくてもそういうところでできる、中小企業金融公庫、たくさんそういったものがある、そういう中で、新銀行東京がやる役割というのはもう既に終わっていると考えております。
 結局は、新銀行東京も、監理団体や第三セクターなどに甘える、甘えの構造の中にどっぷりとつかっているということです。
 石原知事は、新銀行の経営が行き詰った場合、既存融資先一万三千社を初め、その取引先、従業員、家族などの関係者に重大な影響を及ぼしかねないと盛んにいっています。しかし、これが新銀行東京でなかった場合、追加出資をするのでしょうか。
 既存融資先の中小企業やその取引先、従業員、家族などに重大な影響が出る、場合によっては路頭に迷ってしまうといって、助けを求めてきた金融機関が新銀行東京でなかった場合、石原知事は、求めに応じてその金融機関に追加出資をするのか、しないのか。石原知事らしく、はっきりイエス、はっきりノーでお答えください。

○石原知事 ノー。

○泉谷委員 今、石原都知事から、ノーというはっきりした答弁をいただきました。
 ということは、既存融資先一万三千社を初め、その取引先、従業員、家族などの関係に、そして中小企業の人たちに重大な影響を及ぼすと石原氏自身はいっておりますが、それは、何だかんだと理屈をこねて、結局は自分がつくった銀行だけがかわいいということです。
 まさに石原知事のメンツだけのための追加出資だということを申し上げて、田中理事より関連質疑をさせていただきます。

大沢副委員長 計測をとめてください。
 ただいま、田中良理事より関連質疑の申し出がありました。
 本件は、予算特別委員会実施要領第七の規定に基づき、質疑委員の持ち時間の範囲内で認めることになっております。
 田中良理事の関連質疑を認めます。
 なお、田中良理事に申し上げます。発言は、泉谷委員の質疑の持ち時間の範囲内となっておりますので、あらかじめご了承願います。
 計測を始めてください。

○田中(良)委員 引き続き、この新銀行に対する四百億円出資の問題に関連してご質問させていただきます。
 きょうまで大変理事者の皆さんに資料提供等々で大変夜遅くまで、時には朝早くまでいろいろとご苦労をかけたなということをつくづく思います。しかし、そういう皆さんに大変負荷をかけたということも、議案の提案が定例会の初日、そして、その内容についての説明が、私どもにはなかなか、資料も含めてよく提供されてこなかったということが大きな要素としてあるように思います。
 きょう、新聞報道を見ていましたら、これは読売新聞ですか、新銀行追加出資についての世論調査というものが掲載されております。これで大変参考になりますが、支持政党別でこの世論調査の結果が示されています。追加出資を容認する方針の与党自民党の支持層でも、納得していない人は六四%、与党公明党の支持者では七割強、知事の支持者も六七%の人が不満を表明、無党派層では七九%にも達したと。
 これはあくまで世論調査のデータであります。これから将来、どのように変動するか、これはわかりませんけれども、しかし、今この数字が示しているように、私たち含めて世間は、この四百億円出資についてよくわからないというのが正直なところなんだろう、この数字がよくあらわしているんじゃないかというふうに私は思います。
 ここに至った経緯というものを私たちは十分に解明をして、そして、それについて検証をすることなしに、これから先、この銀行に四百億円を追加出資をして、そして東京都が、まあ、いってみればオーナー的な立場で、この銀行を存続させていくということに一体どのような意味があるのだろうか。この点について何点かご質問をさせていただきたいと思います。
 そもそもこの銀行というのは、何のために知事がこの創設をしたかということを振り返って、まず設立の経過からお尋ねをしたいと思います。
 発端は、知事が選挙公約で、平成十五年、そのときの知事選の公約で掲げて、そして、その後五月に、当選後、構想を発表したということから始まったんだというふうに私たち認識をしておりますが、単刀直入にお尋ねをいたしますけれども、知事はご自身で、みずからの発案だということはお認めになっていらっしゃいますけれども、一説には、銀行税のときに活躍をされた大塚前副知事が提案をして、そして知事がその提案を採用したというような説も、まあ、いう方もいるわけでありますけれども、この点について事実はどうなのか、お尋ねをしたいと思います。

○石原知事 いろいろな金融機関が中小企業の救済には応じておりますが、それでもなお、その手からこぼれる人たちがいるわけですから、その人たちのために、それを救済する銀行をつくろうといい出したのは、私であります。

○田中(良)委員 それでは、その選挙公約で知事が掲げ、そして当選後、五月に構想を発表するということになったわけですけれども、じゃ、都政として、この銀行をつくる、つくらないという構想に至る以前に、都政として組織的に、このつくる、つくらないの協議というのは、どこかでされたんでしょうか。

○佐藤産業労働局長 平成十五年の構想発表を、東京都としてしたわけですから、当然そこには組織的な意思決定がされているわけであります。

○田中(良)委員 私は、その組織的な決定がなされたということじゃなくて、つくる、つくらないについての政策的協議がどこでなされたのかということをお尋ねしているんです。

○佐藤産業労働局長 出納長室に設立準備担当が設置されて、そこで組織的な検討がされております。

○田中(良)委員 それは、構想を発表した後のことですよね。私がお尋ねしているのは、選挙があって、公約で銀行をつくるとおっしゃった。それから、選挙が終わって五月に銀行をつくる構想を発表された。その構想を発表される以前に、つくる、つくらないの都庁内での政策的協議というのは、どこでなされたのかということをお尋ねしているんですよ。

○佐藤産業労働局長 当然、都庁幹部の中での議論が、その全体で行われたというふうに理解しています。

○田中(良)委員 局長、そのとき局長じゃないんで、覚えていられるわけないんですよ。だから、これは知事がお答えいただくしかないんですよ。これ、局長に答えていただくのはちょっと酷な話だと思うんですよ。

○石原知事 副知事を含めた都の幹部で内輪で話をしまして、それで、正式の組織にのせた検討に移ったと思います。

○田中(良)委員 私ども、通常、組織の運営というのは、都庁の場合ですね、重要な事項というのは例えば政策会議にかけるというようなこと、私たちは皆さんからそういうふうに聞いていますけれど、じゃ、政策会議でこの銀行をつくる、つくらないということを協議したという経過はあるんですか。

○大原知事本局長 政策会議でございますけれども、これは東京都の行財政の最高方針なり重要な施策等を審議、策定する場ということでございまして、必ずしもここですべての案件を審議、策定しなければならないというふうにはなっていないと思います。
 銀行を設立するということに関しての意思決定、あるいはその政策の策定は、先ほど知事が答弁をしたとおりでございます。

○田中(良)委員 それでは、この政策会議では協議がされなかったということを確認させていただきます。
 さて、そもそもこの銀行設立というのは、中小企業対策だということで……
   〔石原知事「委員長」と呼ぶ〕

○田中(良)委員 ちょっと待ってください。
 中小企業対策だということで設立をされたということですが、そもそもこの中小企業対策というものを所管する局はどこですか。

○佐藤産業労働局長 直接的に所管をしますのは、産業労働局でございます。

○田中(良)委員 産業労働局が中小企業対策をつかさどる局だということでございますけれども、それでは知事にお尋ねをいたしますけれども、銀行をつくる、つくらない、このことについて、つくってからじゃないですよ、つくる、つくらないということについての意見を産業労働局に求めたことはありますか。

○石原知事 都庁の最高幹部が今も定例的にやっている会議もございますけれども、しかし物によっては、限られたメンバーですから、私が話をして、それじゃ、とにかく持ち回りで話をして、決定事項として担当の局におろしましょうということは間々あります。ですから、これは都なりの最高幹部の中できちっと、議事といいましょうか、記録には残っておりませんけど、話し合いの中で決まったことであります。

○田中(良)委員 知事は今、明言をされませんでした。
 私がお尋ねしたのは、要するに銀行をつくる、つくらない、中小企業対策にとって東京都が銀行をつくるということが果たしていいことか、それともちょっと待った方がいいんだ、やめた方がいいんだ、さまざま恐らく、これだけ多くの人がいるわけですから、意見があっただろうと思うんです。特に中小企業の対策を所管する産業労働局に、そのことについて意見を聞いたかどうかということについて聞いているんです。いろんな人に聞いたとかって、そのいろんなを聞いているんじゃない。所管局に対して、このことを聞いたかどうかということを聞いているんです。

○石原知事 あなたね、やっぱり会議っていうのは一々形式で持つものでもなくて、限られた人間ですから、その担当の副知事、あるいはすべての副知事に、こういうことを考えたらどうだろうかといったら、結構ですな、それじゃ、やりましょう、検討しましょうということで、その顔合わせが--要するに局におりていったわけですよ。ちゃんと手順は踏んでおりますよ。

○田中(良)委員 さて、本当にその手順を踏んでいるのかどうか。それが手順ですか。
 知事ね、例えば産業労働局が所管である中小企業対策、中小企業対策をつかさどっている産労局に、この銀行という案を検討させた経緯があるかないかということをお尋ねしているんですよ。

○石原知事 結果として、そういう経過を経ておりますよ。例えば、同じ中小企業関係でも、CLO、CBO、あるいは排ガス処理の問題なんかも、これ別に一々一々稟議にかけたわけじゃないんで、幹部の中の話し合いで、やってみようじゃないか、やろうじゃないか、できるだろうか、できそうですということで物が進んだわけでしてね、一々書類に書いて、そんなもの回して、会議なんかしませんよ、ばかばかしいこと。

○田中(良)委員 別に排ガスのこととか、ほかのことを私、聞いているんじゃなくて、私がお尋ねしているのは、事実を確認したいので、事実を聞いているんで、聞きたい私の質問に、事実をお答えいただければいいんですよ。
   〔発言する者多し〕

○大沢副委員長 静粛に願います。

○田中(良)委員 それでは、当時、産労局の担当の副知事というのはどなたでしたか。

○佐藤産業労働局長 産業労働局担当副知事は、濱渦副知事だったというふうに記憶しております。

○田中(良)委員 その濱渦さんは、この銀行をつくるということに最初から賛成をしましたか。

○石原知事 賛成だから、産労局に取り次いだんじゃないですか。

○田中(良)委員 ちょっとよく聞こえなかった。

○大沢副委員長 知事、もう一度答弁願います。

○石原知事 賛成だから、担当の副知事としては、産労局に取り次いだわけですよ。

○田中(良)委員 今のご答弁、ちょっと事実と違うんですね。賛成だったら、それを取り次ぐということであれば、産労局にその銀行開設の準備というものは任されるべきラインなんじゃないですか。それが、なぜ出納長室になったのか。なぜなんでしょうか。

○佐藤産業労働局長 一般的には、それぞれの施策に応じてプロジェクトチームをつくって、庁内全局を挙げてやるとか、いろんな方法でもって政策立案をやっていくわけで、必ずしもその局だけの組織の中でやるということではありませんし、また、実際に構想が発表された後、設立準備組織ができた後には、関連局の所管を集めた連絡協議会、これを準備担当のところが設けまして、都庁挙げての検討に入ったということは事実でございます。

○田中(良)委員 さあ、本当にそういうことで、例えば答弁を聞いている人たちが納得をするでしょうか。事実は違うんじゃないですか。銀行をつくる、つくらないということについて、当然こういう大きな事業ですから、賛否両論あったと思います。その賛否両論ある中で、産労の立場としては、既存の金融機関に協力を得て、制度融資あるいは新たな事業を中小企業対策として進めていくという中で、この銀行構想というものに少なくとも賛成をして、自分たちから推進していこうと、こういうことではなかったんじゃないですか。これはもう庁内の周知の事実だと私は思いますよ。(「そんなことないよ」と呼び、その他発言する者あり)
 そういう中で--いや、別に推測、憶測で物をいっているわけじゃありませんよ。そういう中でこの銀行はつくられたということが、これは事実なんですね。
 知事は、さきの予算特別委員会で、私どもの山下委員の質問に対して、その知事のトップダウンの進め方ということについて、こういうふうにご答弁しているんですね。トップダウンという言葉を余りやっぱり軽率にお使いにならない方がいいんじゃないかと。この膨大な組織の中で、私一人が物を発想して、それで全部決まるなんて、そんなもので行政なんか動くわけないと。合議の上に一つの成案ができ上がってくるわけでありまして、この事業をすべて私の一存で進めてきたかのような指摘は全く当たりませんと。
 私は、すべて一存で石原知事が進めてきたとは申しません。いろんな人たちがここに関与をしてきたというのは、それは今日に至る経過の中であったと思います。
 しかし、この銀行を創設するということについて、都庁の中で今まで積み上げてきた中小企業に対する施策についての知識、ノウハウ、そういったものが本当に生かされた形で、これが立ち上がっていったかどうかということについては、今、やりとりの中でも明らかなように、これについて組織的な所管局での検討がなかったということを見ても、私は、そういう部分が非常に弱かったんじゃないか、むしろなかったんじゃないか、これは明らかだというふうに思います。
 ここに、私は、この銀行創設、設立のそもそもの問題の根があったんじゃないかなというふうに思わざるを得ないわけですね。
 さて、引き続き、次の観点からお尋ねをしていきたいというふうに思います。
 知事は、この銀行の中の風通しの問題ということに触れていらっしゃいました。執行役員と取締役の風通しが悪かった、それが、この銀行経営がどんどんどんどん横道にずれていったということの原因の一つだということをおっしゃられていたわけです。それから、旧経営陣の隠ぺい体質、これもまた経営を誤らせた一因ではないかということもおっしゃっていましたし、経営の重要事項というのが執行部から、これは執行役員会ということだと思いますけれども、この取締役会に適切に上がってこなかった、こういうことを答弁の中で触れていらっしゃいました。
 そこで、この執行役員会のあり方とか取締役会のあり方、こういうことについて少しお聞きしていきたいんですけれども、マスタープランで執行役の候補となった人たちの名簿が出ているんですね。この方々とは、そもそもどういう都との雇用契約というか、仕事の契約というものがあったのかについて、ちょっと聞かせていただけませんか。

○佐藤産業労働局長 マスタープランに載っております候補者のメンバーでございますけれども、ご案内のとおり、この新銀行設立に際しましては、財団法人の東京税務協会におきまして実質的な検討が開始をされたわけでございます。その税務協会におきます検討の組織の中に、顧問という形でこれらの候補者が契約により採用されたというふうになっております。

○田中(良)委員 そうすると、税務協会の顧問という形で、この銀行設立に参画をいただいた、こういうことなんでしょうけれども、その顧問としての契約というのは、銀行を設立したら、銀行の会社の人になるということになっているんですか。

○佐藤産業労働局長 顧問としての契約をするときに、執行役の候補としての立場ということで顧問に就任をしていただいているということです。

○田中(良)委員 この執行役の方々というのは、ほぼこのマスタープランの作成に携わっているというふうに理解してよろしいんでしょうか。

○佐藤産業労働局長 そのような理解で結構だと思います。

○田中(良)委員 最初の、新しい会社が設立をされて、そして知事も構想の中で、あるいは都議会の本会議場で、全く新しい、既存の銀行にはできない全く新しい銀行をつくるんだ、そういう大きな理想というものを掲げて、そしてスタートをしたということなんでございますけれども、このマスタープランの中に、じゃ、東京都と銀行というのはどういう関係でいくのかということが、わずかに触れられているわけなんです。
 それによると、銀行から報告を受けるということ、この報告は当然、我々議会にも示される内容のものであります。一年に一回、今まで、十七年、十八年、十九年、ご提供いただいた資料では、確かに我々にも示されていた内容でありました。
 ただ、もう一つ、実は大きな東京都とのかかわりということでは、この人事にかかわることがはっきりと書かれているわけです。東京都から取締役を就任させると。つまりは、銀行と東京都との関係、つまり東京都が銀行創設によってなそうとする、その目的、これを進めていく上で、その銀行の経営に対してどういう影響を、どういう手段で行使していくかということについての、唯一最大といってもいいかもしれませんけれども、それはやはり人事。支配株主としての立場での人事権の行使。この人事権の活用をもって、フルに活用することで、つまり人をもって、この新しい銀行の経営が本当に都政の目標に向かって正しく進んでいくかをコントロールしていく、こういうことだと思うんですけれども、私の理解でよろしいでしょうか。

○佐藤産業労働局長 今のお話は、マスタープランの中で具体的に記載をされております。それによりますと、都は、過半の株式を有する株主の立場から、これらの経営の大枠から逸脱がないか監視するとともに、適宜、経営の方向性を示していくと。その具体的には、というところで記載をされておりますけれども、都は、株主としての権利を行使し、社外取締役として都の関係者を就任させると、こういうふうな形でマスタープランに記載されております。

○田中(良)委員 それでは、この大枠の監視をするために送り込んだ社外取締役という方が、どういう視点で、どういう感性で、この東京都の目標というものを認識して大枠の監視に当たっていたか、その責任を果たしてきたのか、果たしてこなかったのかということが、今日の事態を迎えた上で、都として検証されるべき重要な一つだというふうに私は思っているわけです。
 さて、それを念頭に置いてお尋ねをしたいんですけれども、大枠の監視という東京都の認識というのは、この社外取締役に課した大枠の監視という認識、期待した認識というのはどういうものなんでしょうか。

○佐藤産業労働局長 大枠の監視はどのようなことだということでありますけれども、新銀行東京の経営監視については、当然、都は株主として、その大株主としての立場から、そもそも新銀行東京を設立した目的、この政策目的を実現するという、そういうことが、基本的な大株主としての持っている監視をするための理念であるというふうに認識をしております。

○田中(良)委員 大枠の監視を果たしていただくというためには、まず、その社外取締役という立場で、新銀行の一体どういう場面に、この社外取締役が発言の機会が、あるいはまた、新銀行の実態について尋ねたり、報告を受けたりする機会があるんでしょうか。

○佐藤産業労働局長 今のご質問は、社外取締役として就任をした都の関係者が、社内での役割ということだとすれば、当然その取締役会の一員として、執行役の業務執行の監督等についての活動、発言等が適切に行われるということを、我々としては期待をして送り込んでいるということになります。

○田中(良)委員 社外取締役というのは、取締役会に当然出席をされるということなんだろうと思いますけれども、この取締役会というのは、この会議の持ち方として、どういうメンバーでこの会議が持たれていたんですか。

○佐藤産業労働局長 取締役会原則といたしまして、当然、全取締役、それから全執行役が出席をして構成をされます。

○田中(良)委員 としますと、いただいた内部調査報告書で、今日のこの事態に至ったさまざまな原因について触れられておりますよね。その中では、例えば、開業の当初のデフォルトが予想よりも相当高いという事態になっていると。その時点で、例えば、察知をして手を打っておけばというようなことも書かれている。そのほかいろいろ問題になったことは、内部調査報告書の概要版ですけどね、私どもいただいたのは、その中でいろいろ触れられている。
 そういうことでいえば、例えば、この開業当初の--大体、銀行に私なんか全然、お金を借りることがあっても銀行業そのものには全く素人でありますけれども、その素人の立場からいっても、例えば銀行業というのは、一体どれだけ、例えば、どんな金利で預金を集めているのだろうかとか、あるいはそれを融資に回すときに、例えば、実行件数というのが何件ぐらいあるのだろうかとか、あるいは貸し出した実行額というのはどれぐらいになっているのだろうかとか、あるいはこの銀行についていえば、最も関心を、多分だれがその地位、立場に立っても持つだろうと思われるのは、無担保・無保証、スピード融資、この二本の柱で始めた銀行である限り、全く新しい銀行かどうか私わかりませんけれども、一般の金融機関が担保というものをとる。一般には、担保があるから、みんなまじめにせっせと返さなきゃいけないというモラルが働くのだという認識が、私はあるのだと思うのですよね。
 住宅ローンだって、家が担保に入っているから、何とかこの家を守らなきゃならないから、みんな働いてお金をちゃんと返していこうということになるので、すべてでなくても、大体そういうふうに理解をされているところが、無担保・無保証、スピード融資と。確かに斬新な打ち出しをした。それゆえ、この無担保・無保証で貸し付けたお金が、本当にちゃんと返済がされているのかどうかということは、だれがその立場に立っても一番関心を持つ点だというふうに私は思うのです。
 その点について、この取締役会には執行役も加わった会議であるというお話がありましたけれども、そのいわゆるデフォルトの実態というものについては、この会議では全く報告されてないのですか。

○佐藤産業労働局長 社外取締役が知り得る経営情報、これは、先ほど来お話があるように取締役会ということですので、これはおおむね月一回開かれるという会議になりますが、ここで執行役から提供される情報、これによって会社経営上の現状についての理解をすることができるというのが、取締役に与えられた機会であろうというふうに考えます。
 調査報告書でもありましたけれども、こういう体制の中で、取締役会に報告をされた内容が必ずしも十分でなかったということ、それから、説明についても十分でないと。取締役会に提出をされる資料というのは、私の聞くところでもかなりの分量に、一回、なりますので、その中で説明が不十分であるとすれば、なかなか取締役として、それを敏感に察知するということが必ずしも十分にできないという限界があったのであろうということは、これも調査報告書の中に多少記述がございますけれども、そういう意味では、取締役会に求められる所定の監督機能というのでしょうか、これについての一定の限界が生じたことは否めないだろうなというふうには思います。

○田中(良)委員 私は、今申し上げたのですが、素朴なだれもが持つ考えだと思いますけれども、無担保・無保証、スピード融資ということを中心に立ち上がった銀行が、貸したお金が実際に、多少の焦げつきはあるにせよ、それが当初予想された範囲内なのか、それから大幅に逸脱した状態になっているのかどうかというのは、やっぱり一番の関心事でないかというふうに私は思うのですよ。
 どんなに膨大な資料があっても--だって、私たちだって議員になれば、膨大な資料がどんどん来るわけでしょう、皆さん。それをほとんどみんな、全部読んでいる人なんて、私はいないだろうと思うのですよね。膨大な資料が来るけれども、自分がどこに関心があるか、人によってさまざまでしょうが、しかしその中で、自分が、これはきちっと見ておかなきゃならないとか、そういうことを選択する、見分けるという能力が、やっぱり管理職とか会社の経営に携わる人たちは、地位があればあるほどそういう能力が求められる。
 しかし、それは特別なことでは、この場合において、なくて、貸したお金が一体どれだけ戻ってきているのか、戻ってきてないのか、それが当初の予想の範囲内なのか、大幅に上回っているのかどうなのか、これはだれでもが関心を持つことで、幾ら膨大な資料があるからといって、それは、見過ごすとかどうかということは、ちょっと私は、もしそういうことを見過ごす人であれば、それは適任じゃなかったということではないかと思うのですけど、そういうことについて、当時のこの社外取締役というのは把握していたのか、してなかったのか。と同時に、東京都として把握していたのか、してなかったのか、いかがですか。

○佐藤産業労働局長 今、当時というのがどの時点を指してお尋ねなのかが、ちょっと……

○田中(良)委員 最初いったでしょう。内部調査報告書に、開業当初、予想が上回ったということが書いてあるから、そのことについて伺った。

○佐藤産業労働局長 開業当初というのは、恐らく指していることは、調査報告書の話からすれば、十八年の年明けという時点のことだと思いますけれども、その時点でデフォルトが想定以上に発生をしていたということを認識しましたのは、会社の中ではコンプラ管理委員会での議論があったというふうに聞いておりますけれども、そこから取締役会に適切な情報が上がらなかったというようなことが会社側からの報告にもありましたので、その点につきましては、取締役が十分にその点を認知するというようなことがなかなか十分できなかったということがあったというふうに、会社側で調査の結果を出しております。
 ただ、それはそうにしても、今お話もありましたけれども、取締役として、そのような会社にとってとても重要なデフォルトの問題を適時適切に認知できなかったということについては、それはそれとして事実なわけでありまして、取締役の責任が全くないというようなことではないのだという--ただ、一定の制約があったというようなことについては、事実としてそうだったということは、調査報告書の中にも記載されているところであります。

○田中(良)委員 内部調査報告書に書いてあることしか、私、聞けないのですよね。ですから、開業当初、十七年から、今おっしゃったように十八年の初頭に関して、予想よりも、つまり開業当初の時点で、一年目でデフォルトがかなり異常な数字を示しているということであったということは、内部調査報告書には書いてあるのですけど、そのことを、例えば東京都が知った、あるいは取締役が知った時期というのはいつなのかということは、これ、書かれていないのですよね。
 だから、会議にそういう数字が報告されていたのか、されてないのか。されていたとしたら、いつされていたのだろうか。されていれば、当然その時点で東京都がそれを把握してなきゃならない、これが大枠の監視ですよね。それがちゃんと果たされていたのか、果たされてなかったのかということをご答弁いただけますか。

○佐藤産業労働局長 東京都として、把握といいますか、デフォルトの発生が大きくなったというのを認識したのは、十八年の夏のころだったと思います。それは、当然その間で、社内の取締役にはそういう情報が上がったということだと思いますけれども、基本的には、社内の取締役会での協議事項なり内容について、それを直接的に取締役が東京都にすべてを明らかにするというのは、守秘義務上の問題もありまして、それは一定の制約がございます。

○田中(良)委員 結局、開業当初の一番大事な、いってみれば、もう本格営業しているから試運転とはいえないでしょうけれども、しかし、一年間、無担保・無保証、スピード融資ということで走ってみて、それが当初のマスタープランに想定されているようなリスクの範囲であったのか、なかったのかということは、十八年度、つまり開業した二年目のこの営業のやり方、経営のやり方に大変影響があるわけですよね。
 だから、非常に大事な一つの節目であったというふうに私は思います。ご答弁では、十八年の夏までわからなかったと。でも、十八年の六月の株主総会で、これは役員が交代するわけですよね。
 ということを考えると、一体この大枠の監視というふうにうたったマスタープランで、その大枠の監視という大変重要な、この新規事業について役割を背負った、責任を背負った、その責任が果たされてこなかったということは、これは明らかなのではないかと思うのですよ。
 にもかかわらず、この出資の案件が出て、もうじき決をとるという状況になっても、この都の責任、けじめということについて全く何もなされてないということについては、これは、一般に私は大変理解されない今状態ではないかなというふうに思うのです。
 報告書では、開業初年度で、デフォルトの実績というものが想定率を大幅に上回ったということを語っていると。今、そのことについてはお尋ねをいたしました。その十八年の夏までの間、そのことについて知っていた人は、だれとだれとだれとだれなのですか。あるいは、そんなにいないのか。知っていた取締役とか執行役というのは、どの範囲までそういう事実というものは知っていたのでしょうか。

○佐藤産業労働局長 当然のことながら、十八年の三月期の決算の状況というのは、取締役会、つまりはそこに出席をする取締役、執行役、これについては、三月時点での見込みの状態から決算の確定の状態に至るまでに、そのデフォルトの量の認識はされたというふうに考えるのが通例だと思います。

○田中(良)委員 開業当初から、いわゆる融資、審査部門、この執行役というのはどなたがやっていたのですか。

○佐藤産業労働局長 済みません、時期はいつの……

○田中(良)委員 開業当初から。開業って十七年の四月、営業始めてから皆さんが気づくまでの間。

○佐藤産業労働局長 これは、当然東京都から行った執行役ではございませんで、民間の金融機関からの採用された執行役が当たっております。

○田中(良)委員 当時、今内部調査報告書でもいっているように、当初、営業開始してからデフォルトが予想よりも上回った、大変それは重要な本当は情報だったと。当然そのラインの融資審査部門の担当の執行役というのは、その事実を知っているわけですよね。その方は、今、この銀行の中で何をされているのですか。

○佐藤産業労働局長 現在、なお執行役を務めております。

○田中(良)委員 現在も執行役でとどまっている。ならば、担当している部門というのは何ですか。

○佐藤産業労働局長 現在、融資審査部門におります。

○田中(良)委員 内部調査報告書で、これは大変な見逃しがあった、情報が風通しが悪くて東京都にも伝わってこなかった、知事が嘆くような大きな問題があったということは内部調査報告書で書いてあって、今度再建するというときに、その当時のその審査融資部門の執行役が、この再建策、今私たちの前に出しているときに同じいすに座って四百億円出してくださいとやっているという、こういう姿は一体都民にどういうふうに映るのでしょうか。これが正常なあり方だというふうには、私、到底思えない。何か説明がなければ納得できない話ではないでしょうか。

○佐藤産業労働局長 確かに審査部門の執行役でございますので、トータルとしての責任はあると思いますけれども、調査報告書の中でいろいろな細かい調査された結果は、既にご案内のとおりでありますけれども、どうしてこれだけのデフォルトが出たか、その分析をされた一番の大きな原因というのは、やはり代表執行役のいわば業務運営、これに起因するところが大きいという話に整理をされているわけで、ただ単にこの融資担当の執行役というだけの責任というよりは、そういう会社全体を引っ張っていった代表執行役の業務運営に大きな起因があるというふうに述べているところでございます。

○田中(良)委員 私たち、銀行の実態というものを一生懸命勉強しようと思っても、なかなか情報がないのですよ。情報がないけれども、この民主主義の社会ですから、いろんな報道機関が、毎日毎日いろんな情報を報道する。そういう中に、きょう、保証に大阪の融資と、これは東京新聞ですか、一月末現在で肩代わり累計六十五億円、二〇〇六年、正しくいうと平成十八年(二〇〇六年)、こういうことになるのでしょうけれど、この秋大阪市内の信金の申し出を受けて、保証のため提携を結んだという記事がありますよね。局長、これ、ごらんになっていると思うのですよね。ここに書かれていることは事実なのですか。

○佐藤産業労働局長 大阪信用金庫との提携の内容については事実でございます。

○田中(良)委員 この報道が事実だと。東京の中小企業対策ということをうたいながら、大阪にも進出をしていったと--進出といっていいかどうかわかりませんけれども、これはどうしてこういう経過になったのでしょう。

○佐藤産業労働局長 会社の説明によりますれば、当時、銀行の預金がかなり活用されないという部分がありましたので、その運用先として融資をするという、そのターゲットとして、この大阪信金についての保証ということをやったというふうに聞いております。
 ただ、これは、従来の、こちらでやっていた保証というのとまた別の形での保証形態ということで、その辺の試行的な部分も含めた判断だったというふうに聞いております。

○田中(良)委員 今は、これは解消しているというのですけれども、これはなぜ解消したのですか。所期の目的、目標というものに照らして、効果がなかったとか、あるいは予想以上に大変焦げついたとか、どういう要素でこれは解消されたのですか。

○佐藤産業労働局長 これを解約したつぶさな理由についてはちょっと承知をしておりませんけれども、先ほど申し上げましたとおり、これを実施いたしましたのがトライアル的な位置づけでやっておりますので、そういう意味での解消が図られたのではないかというふうに推定はいたします。

○田中(良)委員 このときの融資審査部門の執行役というのは、どなただったのですか。

○佐藤産業労働局長 先ほどの開業当初の方とは、また別の執行役でございます。

○田中(良)委員 この方、お名前、何とおっしゃるのですか。

○佐藤産業労働局長 開業当初の審査部門担当は大塚宗一、ただいまお話のありました時期につきましては、丹治幹雄でございます。

○田中(良)委員 丹治さんという方が、その当時の大阪の件については担当の執行役だったということがわかりました。この丹治さんという方は、この方は、いつからこの銀行にかかわりを持つようになったのですか。当初のマスタープランの執行役のリストにはなかったはずですけど。

○佐藤産業労働局長 丹治氏が執行役に着任をいたしましたのは、十八年の六月でございます。

○田中(良)委員 執行役に就任した日時を聞いているのではなくて、この銀行と関係をしたというのはいつからですか。

○佐藤産業労働局長 丹治氏は、平成十六年十月に入社をしております。

○田中(良)委員 この方は、入社をしてすぐ執行役になってないのですよね。この大阪の件をやったときは担当の執行役だったと。それまではどういう立場にいらっしゃったのですか。

○佐藤産業労働局長 審議役として採用されたと聞いております。

○田中(良)委員 審議役というのは、これは役員ではありませんよね。当たり前のことですけれどもね。役員ではありませんよね。この丹治、当時審議役というのは、取締役執行役員会に出席をしたことがありますか。

○佐藤産業労働局長 丹治氏は、代表執行役補佐の任に当たっていたため、取締役会にも出席していたというふうに聞いております。

○田中(良)委員 一説には、法律的にこの方が執行役になれない事情があったということで審議役にとどまっていて、そして、この取締役会に常時出席をしていたということがいわれているのですけれども、そういう事実はあるのですか。

○佐藤産業労働局長 その点につきましては、個人のプライバシーの問題がありますので、お答えできません。

○田中(良)委員 私どもが銀行についていろんな資料を請求しても、例えば、それは銀行法がある、あるいは民民だ、あるいは守秘義務だ、あるいは所有と経営の分離だと、さまざまな理屈、確かにもっともなものもあるのでしょうけれども、そういうことでほとんど、なかなか私たちが知りたいことが私たちには伝わってこないという中にあって、例えば銀行の経営の最も中枢、最もそういう意味では重要な、企業秘密も含めて重要な協議の場であり意思決定の場である会議に、だれが出ているか、出てないかということを確認さえもできないで、一体大枠の監視というのは議会としてもできないではないですか。どうしてはっきりそういうことはお答えできないんですか。

○佐藤産業労働局長 先ほどもお答えしたとおり、出席していたということは申し上げておりますけれども、その個人のプライバシーにかかわることについてはお答えできないというふうに申し上げたわけです。

○田中(良)委員 プライバシーも大切だと思います。しかし、今回、事実上の公的資金の注入だというふうに世間一般だれもが理解している、こういう事態に至っても、その中で守られるべきプライバシーと、やはり公共の利益というものの兼ね合いというものは、あっていいんじゃないかというふうに私は思います。
 私は、冒頭申し上げたように、この会社が何でこうなっていったんだろう。我々は、東京都が大枠の監視をする、その大枠の監視は、人事権を活用して、いかに都政の目的に沿ってこの会社が運営されているか、このことしかマスタープランには事実上ないわけですから、社外取締役が出ていってテーブルに着いたところに、一体どういう人たちがどういう立場で座っているのか。ここからやはりきちっと大枠の監視というものが働いていかないことには、銀行法があって、民民があって、プライバシーがあって、何があってという話では、到底、都政の目的に沿ってちゃんと銀行が経営できるかどうかということを監視することはできないんじゃないでしょうか。
 具体的にもう少しお尋ねをいたしますけれども、平成十八年五月に会計監査人の改善提案というものがなされた、こういうふうに調査報告書でも書かれていますよね。十八年の九月中間決算で、実績デフォルト率を使用するように改善提案された、しかし、これがちゃんと実現されなかったということが書かれてあったと思うんですね。
 では、この会計監査人の改善提案というものがあったことについて、これは取締役会のメンバーとか、あるいはそこを通じるなりで、東京都に対して、この改善提案というものが会計監査人からなされた、その事実を知ったのはいつなんですか。

○佐藤産業労働局長 まず、十八年五月に行われました会計監査人からの提案についてでありますけれども、当時、在籍をしておりました執行役は認識をしていたのは当然でありますが、取締役会には報告がされていなかったというふうに聞いております。

○田中(良)委員 それでは、この会計監査人の改善提案というのは、取締役会に報告をされていなかったから、社外取締役は知ることはできなかった、そういう理解でよろしいんでしょうか。

○佐藤産業労働局長 そのような理解で結構だと思います。

○田中(良)委員 新聞報道によれば、というか庁内ではもう前提になって話をされていますけれども、金融庁の報告命令というのが十八年十二月下旬あったと。翌年、十九年一月下旬までに経営状況の報告をしろと命ぜられたということがあるんですが、この当時の執行役の方は、金融庁がこういうことをいったということは、直ちに取締役会に報告をしないで、一月になって、約一カ月タイムラグがあって報告をしたんだと。こういう報道がありましたよね。これは事実ですか。

○佐藤産業労働局長 我々は金融庁と銀行との関係については把握をしておりません。

○田中(良)委員 そうですか。
 それじゃ、ちょっと別の件をお尋ねいたしますけれども、日銀の考査が去年二月、三月あったというふうにいわれていますけれども、経済・港湾委員会でもこれについては質疑をいたしました。この日銀の考査というものがあったということについて、お尋ねを委員会でしたところ、日銀の考査の公表というんですか、結果というんですか、そういうことを東京都はちゃんと、きちっと受けていますかというお尋ねをしたところ、何とお答えいただきましたかね。もう一回ちょっと答えていただけますか。

○佐藤産業労働局長 正確にそのときの答弁を復元できるかあれですが、趣旨としては、個別金融機関の日銀の考査結果については、日銀としては当該金融機関の経営陣に伝達をすることというふうにしておりまして、原則として第三者への開示はしない扱いであるというふうに聞いておりますので、そのような答弁をしたかというふうに思います。

○田中(良)委員 確かにそのようなお話だったように、私も傍聴をしていて覚えているわけですけれども、果たして新銀行東京にとって、東京都というのは単なる第三者という位置づけなんでしょうか。
 日銀の考査がありましたと。そのことを知れば、一体どういう内容なんだということを東京都は当然関心を持つはずですよね。関心を持たなきゃならない。そのことについてきちっと報告を出してくれということを求めていいと思うんですね。
 この日銀の考査については、日銀考査結果については、考査に関する契約書というのを日銀と銀行が結ぶと。その中に、確かに十二条に守秘義務というものがうたわれているんですよね。その守秘義務の中には、正当な理由があるとして日銀が特に認めた場合は、考査の内容については提供してもいい。こういう例外規定が入っているんですね。
 東京都として、新銀行東京に日銀の考査の内容についてきちっと出してくれということを求めたことはありますか。

○佐藤産業労働局長 お話のありました十九年四月までの考査につきましては、私どもの金融部から新銀行東京を通じまして、日銀の金融機構局に対して、最大株主にも公開しないということなのかということについての確認は行っております。

○田中(良)委員 要するに、新銀行東京に東京都として結果を出してくれということは求めたんですね。

○佐藤産業労働局長 当然、第三者へ開示しない扱いであるというようなことをいわれていましたので、そのことを求めたということについて、日銀の方に確認をしてもらったのが先ほどの話でございます。

○田中(良)委員 要するに結果として、局長、その考査の結果というのは来ていないということでしょう。結果として。この間の委員会での質疑ではそういうことだったと受けとめているんですけど、結果として来ていないんですよね。

○佐藤産業労働局長 来ておりません。

○田中(良)委員 ということは、それはもうその当時、東京都にとって必要じゃないという判断をして、求めなかったということなんですか。

○佐藤産業労働局長 先ほど申し上げたように、第三者への提供をできないかということで、常に新銀行を通じての交渉になりますけれども、そういうことをやった結果として、日銀に確認をしてもらったと。出せないということです。

○田中(良)委員 先日、日銀、金融庁と私ども、きちっと話をしたんですよ。これは報道もカメラも全部オープンでやりましたから、その場にいる人はみんな知っていることです。来た方々もちゃんとした立場を持って来ている方ですよね。
 そのときに、日銀の考査について、新銀行からきちっと要請があれば、出せますかということを聞きました。もちろん個別のことにはお答えできないけど、一般論として、例えば持ち株会社に対して提供するということはあり得ますと。この新銀行東京についても、きちっと要請があれば十分検討しますということをいわれました。
 では、要請が今までなかったんですかといったら、ありませんとはっきりいっているんですよ。ということは、だれかがうそをついているということしかないんですね。これが事実だとしたらですよ。どうしてこういうことになるんですか。理解できないんですよ。

○佐藤産業労働局長 ちょっとその話については、私は直接伺っていませんので、わかりませんけれども、文書での要請をすると、相手が正式な要請として受けとめるケースが通常ありますけれども、口頭の段階、事前の話の中での、我々は新銀行を通じては、文書でということではなくて、口頭で日銀の判断を確認したというふうに聞いております。

○田中(良)委員 それでは、新銀行東京も経営陣が変わったということでありますので、早急にこの日銀の考査について東京都として求めて、そして、新銀行は日銀にきちっと照会をして、要請をして、そして、いいということであるならば、それは東京都に来るわけでしょう。大枠の監視と、過去のことですけれども。しかし、やはりそういうことはきちっとやっておいた方がいいと思いますけども、求めておきたいというふうに思います。
 さて、去年、予算特別委員会で、やはり私、銀行の件を取り上げました。そのときに、この銀行の発足当初からいろいろ人事がごたごたしているんじゃないかというようなことをお話ししたわけです。そのときのご答弁では、人事がごたごたしているということではないと。やめるやめないは、その人の個々の事情だというようなご答弁があったというふうに思います。
 さて、しかし、ここに至って振り返ってみると、また内部調査報告書にもはっきり記載がありますけれども、執行役の中でさまざまな意見の対立があったとか、代表執行役が不適切だ、人事について権限を行使した、こういうことが書かれているんですね。いつごろ、どういうような意見の対立というものが経営陣の中であったのか。それぐらいのご説明ぐらい、ちょっとしていただけませんか。

○佐藤産業労働局長 具体的にどの時期にどういうことということは、正確にはちょっとお答えできませんけれども、調査報告書の書かれていたことを見れば、恐らくデフォルトが異常発生したときに、その時点での社内での意見というのは当然交わされていたと思いますので、その辺についての意見の違いというのが社内的にあったんではないかということは推定をされます。

○田中(良)委員 この銀行が今のような惨たんたる状況になってしまった。しかし、そこにいきなりなるわけじゃなくて、そこには内部調査報告書でも書かれて、若干触れていますけれども、この時点で例えばこういう対策を講じていれば、ここまで至らなかったというようなこともありますよね。
 私たちが今これからどういうふうに生きていこうか、どういう道を進んでいこうかということを真剣に見詰めて考えるときに、直近の自分たちがかかわったその過去について、一体どうしてこうなったのかということについて、十分に検証するということが、私は前向きに生きていく上で重要な要素だというふうに思うんです。この銀行の経営もそうです。
 ですから、例えば経営者の中で対立があった。具体的にどういう経営方針や内容について、意見の対立がいつごろあったんだ。そして、そのときにどういう選択をだれがしていったのか。この積み重ねをきちっと検証していって、いってみれば、もろもろの責任の一端は明らかになってくるんだろうと思うんですね。そして、その責任というものがきちっと明らかになって、少なくてもその上でこの銀行をどうしたらいいだろう、どうあるべきだろう、これが私は手順というものではないかなというふうに思います。
 さて、これから仮に、世論がこれだけ反発をしているという中でありますけれども、それこそ力ずくで四百億円の出資ということにこぎつけたとしたとして、この銀行が本当に東京都に役に立つ、あるいは東京都の目標に沿って機能していくのかどうかということなんですけれども。
 基本的に私、いろいろ疑問があるんですけれども、先ほどの議論を聞いていてもそうなんですが、知事、この銀行が今に至ったということで、この定例会の冒頭でもお話をされていましたけれども、残念無念だというお考えを披瀝されていらっしゃいました。マスタープランは、当時においては最善を尽くして策定された、そういう認識だということで、その後、不良債権の処理が進んだ大手金融機関が中小企業金融市場に参入するなど、金融環境の急激な変化が起きたことにより、挫折を強いられた面がある、こういうことも議会でご答弁をされております。
 さて、それで金融環境の急激な変化というんですけど、知事、大手銀行の中小企業向けの商品というものは、新銀行がターゲットとしている領域に対して、どのような競合性を持ったものなんですか。

○佐藤産業労働局長 当時、貸し渋り、貸しはがしで、中小企業がなかなか市中既存の金融機関から借りられなかった。これに対して金融庁が、いわば中小企業への資金を潤滑にしろという指導をして、二回ほどの指導、通達があったと記憶しておりますけれども、そういう中で、当初、新銀行がもくろんでおりましたミドルリスク、ミドルリターンという、当初のマスタープランでは二%から八%ぐらいの利率のところを顧客対象とするという発想でつくったわけでありますけれども、そこの層に対しての市中金融機関の商品化がなされたというふうに理解しております。

○田中(良)委員 つまり、東京都が最初設立したときに、バブルの崩壊による不良債権という負の遺産を抱えた既存銀行はできないから、負の遺産のない新しい銀行をつくる、これが大義名分だったんですね。不良債権の処理が終わって、負の遺産を清算してきた大手銀行を含め既存の金融機関が、今おっしゃったようなミドルゾーンの市場にどんどん参入してきた。逆に新銀行東京は負の遺産ばかり背負って、これからどうしようというところに今あるんでしょう。
 東京都がやりたかった、東京都が銀行をつくってやりたかったということは、今、民業の世界でどんどんどんどん市場競争の原理も働いて開拓されていると、こういう認識でいいんですか。

○佐藤産業労働局長 先ほど、前の質疑ではありましたけれども、新銀行東京が設立をされたときの市中における資金調達、中小企業への資金貸し出しについては、その時点で底を打ったまま、ほとんど横ばいの状態が続いております。そういう意味では、とりわけまた昨年からことしにかけて、昨年も倒産件数が年間でたしか六%強、前年比でふえていたかと思いますけれども、そういう意味では、今、これからもまた、ある意味では中小企業にとって非常に厳しい経済環境が来ます。
 そういう中では、市中の既存の金融機関の貸し出しの状況というのは、かなり非常に敏感なところがありますので、そういう意味では、今なお新銀行の当初の設立をした理念、それが発揮される環境といいますか、必要性というのはまだ十分あるというふうには思っております。

○田中(良)委員 発揮をされる環境があるかないか、私にはわかりません。わかりませんが、仮に百歩譲って、そういう市場があったにせよ、一般の企業でいえば今まさに倒産するかしないか、そういう状態に、危険水域に入ってしまっているこの新銀行東京が、その市場に手を伸ばせない状態になっているということは認めざるを得ない事実じゃないですか。認識として。

○佐藤産業労働局長 かねてから説明をしておりますけれども、少なくとも先ほどもご答弁申し上げましたけれども、赤字債務超過の企業というのは、五千を超える企業に今、新銀行は融資をしているわけで、そういうところの部分のうちの四千ぐらいは引き続き融資対象としていきたい、こういう発想の中で新しい業務展開をしていくということがあるわけですね。
 ですから、経営ですから、そもそも延滞が既に起こっているようなところ、法的な破綻が起きているようなところ、こういうところは、経営上の問題としては引き続き融資ということはできませんけれども、いわば市中の金融機関ではなかなか貸しにくいところ、これが実際に新銀行から借りているというところが、先ほどお答えしたような数字の中にあらわれているわけですね。この銀行をこの段階でつぶして、そういうところがどうなるのか。そこのところが、この銀行に対する追加出資をするのかしないのかという判断の一番重いところだというふうに私どもは思っております。
 これをこのままつぶして、中小企業はもうどこも行くところもないというような状態、貸し先がないというような状態の数を抱えた銀行をつぶすことが、どれだけの影響があるかと、ぜひここのところを考えていただいて、ご判断をいただきたいというふうに思います。

○田中(良)委員 要するに、健全な融資先、いろいろ、どんどんお金を融資したけれども、その中では詐欺のように借りっ放しで、翌月から返済しないで逃げてしまうということがあったとか、そういう報道もありましたよね。そうじゃなくて、いわゆる健全な融資先、そこについていうならば、この銀行を清算したら大変な影響があるんだということをおっしゃっているわけですよね。
 だけど、本当におっしゃっているようなことになるのかどうかということを、私はちょっと、にわかに同意できないんですね。これまで借り入れをして、その後、きちんと返済をしているというところは、さっきいったように、もちろん詐欺みたいなふまじめないいかげんな人たちじゃないわけですよね。まじめに借りたものを返済しているということでいえば、ほかの金融機関、ほかの銀行が、その一つ一つの企業の事業のリスクをどういうふうに見るかということによって、当然、そういった銀行との関係というものは視野に入ってくる話だと。むしろ、新銀行東京が、ある意味ではいいスクリーニングをしたということさえいえるんじゃないかというふうに思うんですけどね。そういう見方はできないですか。

○佐藤産業労働局長 今のまま、私どもが検討してきた中では、この銀行を自主清算するなり破綻処理をするといったときに、貸出先である中小企業の方々の債権がどういう形になってしまうかというところの問題の理解の仕方だと思います。
 そういう意味で、我々もいろいろ試算をしております。そういう中では、通常の金融機関に新銀行の貸出先である中小企業の債権がちゃんと引き継がれるかどうか。今までの破綻した金融機関、これは平成三年から平成十四年までの間には、百八十の金融機関が実は破綻をしております。そういう破綻をした金融機関の中で、どれだけの債権が通常の引受銀行の方に行くかということになると、ほとんどといいますか、半分ぐらいはRCCに行くというのが実態であります。それは担保があってという状態のものが通例だと思います。それに比べて、新銀行でやっております無担保の債権が、通常の金融機関にスムーズに引き継がれる率というのは極めて少ないというふうに考える方が一般的だと思います。
 そういう中で、この間、いろいろ金融機関とのお話もしましたけれども、つまりは新銀行東京というのの歴史がまだ非常に浅い。そこの新銀行東京が正常だといった債権が、ほかのお客様を多数抱えて、長い期間の融資をやっているほかの金融機関から見て、三年の歴史しかない金融機関、新銀行東京の持っている債権を自分のところと同じように扱うということは、ほぼ不可能に近いですよと、こういうふうな判断をされるのがまず一般的であります。
 それも、先ほど申し上げましたように、通常の担保をとっての融資というお客さんじゃございませんので、そういう意味では、極めて新銀行東京の持っている債権というのは、一般的な金融機関にとっては、先生がおっしゃるような形で、当然のごとくに引き受けられるというような状況にはないというふうに認識した方が正しいのではないかと私は思っています。

○田中(良)委員 さて、それについてはいろいろ見解が多分分かれるところだというふうに思いますよ。今、ほとんどの専門家といわれる識者が、もう清算をした方がいいんじゃないかということを多くいっているということからすれば、やっぱり見方が違うんじゃないだろうか。借り手のうちでも、例えばまじめに返済をしている、あるいは返済期限よりもっと早く返済を終わらせているというようなケースも、新銀行東京だって相当あると思うんですよ。でも、むしろ、例えばそういう会社は、逆にほかの金融機関と取引をする方が金利が安いとか、いい条件であるというようなことで、どんどん移っていっているというのが多分実態じゃないかなというふうに思うんですよ。
 議会の議論の中で、先ほどもありましたけれども、この新銀行東京というのは、制度融資を補完することで、多様な資金需要にこたえる役割があるということをおっしゃっているわけですけれども、先ほどもご答弁でもありましたけど、原則として無担保・無保証をやめるというわけですから、この制度融資の補完的な役割というのはどういう機能になるんですか。

○佐藤産業労働局長 先ほどもご答弁申し上げましたけれども、過去の返済履歴等々、返済能力もちゃんと審査をしまして、できるだけ無担保についても対応していきたいというのが新銀行の基本的な姿勢であります。

○田中(良)委員 当初のご説明では、原則無担保・無保証はもうやれません、やりません、こういう話だったんですよ。今度は逆に、無担保・無保証を引き続きやりますということに比重を置いてご答弁されるんだとしたら、今出した議案の四百億の算出の根拠というのは、一体どういう数字の積み上げでなされているのか、この議論に戻ってしまうと思うんですよ。どうなんですか。

○佐藤産業労働局長 ただいまの答弁は、無担保・無保証をやらないというお話に対して、やらないということではないんだという趣旨をお話ししているんです。

○田中(良)委員 だから、制度融資の補完的な役割ということでお話しになったのが、過去にきちっと答弁をされているから、制度融資の補完的な役割ということを担ってきたという部分は、今までの無担保・無保証、スピード融資ということを自負していたんでしょう。今度、それを原則的にやりませんというふうにかじを切るというなら、制度融資の補完的役割というのは一体どういうことになるのかと、実態としてですよ。そこについてもう少し詳しく説明をもらいたいということなんですよ。

○佐藤産業労働局長 制度融資の補完的な役割というのは、無担保・無保証というところに限っての話ではありませんで、ミドルリスク、ミドルリターンというのを当初目指したこの銀行のありようは、制度融資の場合には、かなり厳しい審査の中で制度融資をやっていく。制度融資にはまらないところ、これはリスクがちょっと高いところになりますけども、そういうところに対しても積極的に融資をしていきましょうと。これが新銀行の持っている役割ということで、補完的な役割をしていこうと。既にそういう状況の中で、既存のお客様方が一万三千社いらっしゃるというところで、なるべくそれを引き継いでいけるような形でもって、再建計画を立てているということですので、補完的な役割というのがなくなるというような理解は私どもはしておりません。

○田中(良)委員 さあそれが理解されるかどうかですよね。他行には全くできない新しいことをやるんだということから、随分現状としては大きくずれてきている。
 健全な融資先というのは、たまたま九千社ですか、先ほどの説明では一万前後の会社の数だということでありますけれども、例えば制度融資の対象として十分になり得るんじゃないか。一般的にやっぱりそういうふうに理解をされるんだと思うんですよ。どうでしょう。

○佐藤産業労働局長 制度融資で全く吸収できないかといわれれば、それはそんなことはないというのが事実でしょうけれども、しかし、赤字や債務超過、赤字かつ債務超過でも返済されているところがありますけれども、そういうところを制度融資が積極的に扱うというような制度になっておりませんので、そういう意味では、新銀行等、制度融資の補完的な役割というのはあるというふうに理解をしております。

○田中(良)委員 だから、例えばいろんな政策の組み合わせは確かに必要だということになるんでしょうが、しかし新銀行東京がこれまでのような分野には役割、機能を果たせないんだということはもうはっきりしているわけですよ。だから、無理くり存続のためにいろんな理屈を並べて、要するに、銀行業というものは、中小企業対策を進めていく上で本来手段だったはずですよね。ところが、今、この銀行を残すということが目的化している。手段がいつの間にか目的化してしまっている。そういう印象を抱くわけなんですね。この銀行を本当にこのまま存続させるということで、期待した役割が果たせるかどうかということに大いなる疑問が残るというご答弁だったというふうに思います。
 さて、清算ということの検討ですけれども、これはご答弁の中では、三つの選択肢があってという説明がありました。事業清算の検討、協力銀行の模索というものについては、具体的になさったんですか。

○佐藤産業労働局長 新銀行東京では、前にもお答えしましたけれども、昨年の夏以降、新しい経営陣のもとで改善にいろいろ取り組む一方で、再生に向けていろんな方策を検討してきて、その過程で具体的な金融機関の名前は出せませんけれども、資本提携や業務提携、統合等の交渉を十一の機関と行ってきました。
 そういう中で、当然、事業清算を行う場合の協力銀行的な役割を担ってもらえるところであるかどうか、そういう目での交渉というのも当然銀行はやっておりますし、具体的に協力銀行ということだけを目的とした交渉も行っております。

○田中(良)委員 知事はセカンドステージということをおっしゃっていますよね。先ほど泉谷議員からの質問でもありましたけれども、この議会で認証されれば、即日次へ動くと、手のうちは今明かせないというお話をされたんですよね。でも、本当は、こういう全体構想の中で、四百億円というのはこういう部分なんだということはやはり明らかにして、そして、議案を提案して、我々が審議をするということがあるべき姿じゃないかと思うんですけれども、手のうちがあるのかないのか、私はわかりませんけれども、手のうちがあるんだったら、まずそれを明かして、そしてゆだねるということがあっていいんじゃないかと思うんですけど、いかがですか。

○石原知事 私も銀行に関して危機感を持ち出して、過去一年間、いろいろ内外でヒアリングをしてまいりました。非常に有効なサジェスチョンもありました。そういったものをフルに利用していこうと思いますけれども、これは相手もあることでして、またアイデアを今出したりというようなことで、これがほかに奪われることもありますから、これはこの段階で控えさせていただきたい。
 ただ、ブリーフィング、自分の勉強も含めまして、銀行は必ず再建し、さらに足腰の強いものにできるという確信がございますから、追資をお願いしたわけであります。

○田中(良)委員 私たちとしては納得できませんね。本来なら、全体の今後のスキームなりビジョンというものが、もし示していないものがあるなら、やっぱりそれを示した上で、今の再建計画というのがどういう位置づけなのかということはきちっと明示した上で、そして、追加出資を出すなら出すということが、議案を出すここに至った責任ということも含めて、あるべき姿というふうに思うんですけれども、いかがでしょうか。
 さて、もう一つ、知事にお尋ねしますけれども、仮にこの銀行が追加出資を受けたとして、何らかの監視機関というんですか、監査機関というんですか、そういうものが必要だというようなお話をされていましたね、記者会見でも。これは具体的にどういうことですか。

○佐藤産業労働局長 監視機能がこの間の経営状態が悪化するまでの中で十分であったかということになれば、十分でなかった面があるということは、我々も感じております。
 そういう意味では、今後、知事も発言をしましたけれども、一つは、都における監視の機能、また、新銀行に対する支援をどういうふうにしていくかということを考える、こういう組織を早急に検討していく必要があるだろうというふうに考えておりますことと、銀行の方につきましても、委員会等設置会社ということで、仕組みとしてはその機能があるわけですけれども、実態としては代表執行役に権限が集中したというようなこともあり、また、風通しが悪かったというような部分もありますので、人によりというような過去のそういう反省を踏まえていけば、新たに専門家等々を活用した監視機能を銀行側にも充実させていくというような必要性があるのではないかというふうに考えております。

○田中(良)委員 銀行法とか守秘義務とか企業秘密、所有と経営の分離、民民、いろんなことをいわれて、我々もほとんど情報過疎の中で、外形的なところからいろいろ想像して、今回臨むしかないんですね。
 つまり、今までそういうことで、さっきの日銀の考査の話もそうですけれども、いろんな壁があって、東京都としてもわからなかったんだと。実は監視機関があるないにかかわらず、本当に社外取締役がちゃんと期待された責任をそこで果たしていれば、もっと早い時点で改善されたんじゃないかと。我々の方から見ると、全くそういうことに思うんですよ。どんな制度、法律があっても、やっぱり運用するのは人だから、人がそこでどれだけ適材適所でちゃんとやってくれるかということに尽きるんじゃないか。その人事権を活用して、大枠の監視というものが結果としてできなかった。新たな組織をつくっても、今申し上げたようなさまざまな壁を、本当に組織をつくったことで超えていけるのかどうか。私は甚だ疑問に思います。
 それで、いろいろ議論をしていると、都との連携というものを非常に強調される、今後について。でも、先ほどもありましたけれども、他の金融機関において、特定の政策目標実現のために協力要請が例えば東京都にあるというようなことがあった場合、そういうものを後押しするような金融機関に対する施策というものも、東京都の重要な政策だというふうに私は思います。そもそもが、かつて二信組、その後、コスモとかありましたね。そのときに議論されてきたことというのは、地域の金融機関を都政は応援する側に回らなきゃいけないんだ、そういうことが基本だったんですよね。そこに戻って、私は、もう一回政策を練り直した方がいいんじゃないかというふうに思います。
 それで、もう一つは、銀行業というのは、あくまで民業だと。民業の宿命というのが、私、この銀行の議論の中で表裏一体であるように思うんです。つまり、新銀行が成功すれば、ほかに市場参入の道を開くということになる。他の金融機関がその市場に参入して競争が生まれていけば、新銀行の存在意義というものはなくなってくる、こういうことなんですよね。(「そのとおり」と呼ぶ者あり)そのとおりでしょう。そのとおりだというふうに聞こえましたけれど。これを機に、事業清算というものを真剣に検討するべきじゃないか。
 そして、これ以上やっていくことは、これから将来、景気動向もよくわかりません。しかし、銀行業として見た場合、存続のリスクというものも同時に選択をしていくことになるわけです。ですから、四百億の今度の追加出資が、果たしてそれだけで終わるのかどうか。あるいは、今の資産の査定、不良債権の規模というものが、本当に今いわれているような額であるのかないのか。それが将来どういうふうに推移をするのか。私は第三者のきちっとした査定を、あるいは金融庁に検査を要請して、きちっとそういうことをやるということがまずありきじゃないかというふうに思ってなりません。これについては、最後にご答弁をお願いしたいと思います。
 もう時間もありませんので、私、金融の専門家ではもちろんありません。去年、私、予算特別委員会のときに高橋是清の話をしましたね。その中で、金融、銀行業の基本的なモラルということを書き残しているんですよ。
 一つは、人様のお金をお預かりした、それを大切に守る精神。もう一つは、借り手が一体何にそのお金を使おうとしているのかということを見きわめるということ。それからもう一つは、経営者の社会的な信用だ。この三点について、私はこの銀行が非常に逸脱をした、その結果が今日を迎えたというふうに思えてなりません。
 どうか再考していただいて、新たな選択をされることを希望して、私の質問を終わります。(発言する者あり)じゃ、最後のご答弁をお願いします。

○佐藤産業労働局長 金融庁の検査につきましては、かねがねからお話をしていますとおり、金融庁が責任ある監督官庁としてみずからの判断で行うものというふうに考えております。

○大沢副委員長 泉谷つよし委員及び田中良理事の発言は終わりました。(拍手)
 この際、議事の都合により、おおむね三十分間休憩いたします。
   午後五時四十七分休憩

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