東京都議会予算特別委員会速記録第六号

○三宅委員長 ただいまから予算特別委員会を開会いたします。
 これより付託議案の審査を行います。
 第一号議案から第二十九号議案まで、及び第百三十一号議案を一括して議題といたします。
 この際、部局別質疑について申し上げます。
 去る三月十四日に議長を通じ各常任委員長に依頼してありました部局別質疑につきましては、お手元配布のとおり報告がありました。ご了承願います。
 これより締めくくり総括質疑を行います。
 順次発言を許します。
 野島善司理事の発言を許します。

○野島委員 都議会自由民主党を代表いたしまして、予算特別委員会締めくくり総括質疑を行います。
 去る三月十一日のこの委員会におきまして、我が党の高橋かずみ理事の質疑に対し、平成二十年度の東京都予算は、積極的な施策展開を図る攻めと、それを支える備えの両面の取り組みを兼ねた予算である旨の答弁をいただきました。都はこれまで、平成十八年十二月に「十年後の東京」を、平成十九年十二月には財政の裏づけのある「十年後の東京」への実行プログラムを策定いたしました。そして本予算はその実現に向けての第一歩と位置づけられるものと受けとめております。
 その認識に立ち、以下、施策別の質疑と若干の提案も申し上げたい、こんなふうに思っております。
 初めに、地球温暖化対策について伺います。
 今月十六日、知事は、ブレア前イギリス首相と温暖化問題で会談し、国際炭素行動パートナーシップ、いわゆるICAPへの参加を表明されたと聞いております。まず、会談についてのご感想とICAPへの参加のねらいについてお伺いをいたします。

○石原知事 ブレア前イギリス首相とは、地球にかかわる温暖化の負荷の蓄積は、もはや臨界点目前まで来ておって、直ちに行動を起こす必要があるという認識を共有することができました。また、前首相は、東京都の気候変動対策について非常に関心をお持ちで、高い評価をしてくれておりました。
 お話しのICAPは、削減義務と排出量取引の導入によりまして、CO2の削減を目指す国や都市がより実効性の高い削減義務制度のあり方について意見を交換する場所であります。こうした場において、都も独自の制度案をアピールすることによって、日本の気候変動対策をリードし、世界的規模でのCO2削減に貢献していきたいと思っております。
 ちなみにこのICAPは、アメリカ政府は入っておりませんけれども、アメリカの各州は入っておりまして、そこら辺ばらつきがございますが、しかし、やはり日本の政府も非常に慎重な姿勢のようですけれども、東京が率先して加わることで、国全体の動きを引っ張っていけるんじゃないかと思っております。

○野島委員 ありがとうございました。
 地球温暖化を防止するためには、都民や企業、そして行政など、社会を構成するあらゆる主体が自主的、積極的にCO2削減に取り組まなければなりません。その中でも家庭部門は、二〇〇五年度のCO2排出量が、一九九〇年度対比で実に一五・七%も伸びており、特に大きなテーマであります。
 家庭対策とは、すなわち私たち自身のライフスタイルの転換ですから、規制といった手法はなかなかなじみにくく、私たち一人一人が温暖化防止のための節電に努めるような、みずからを律する意識を醸成する仕組みを構築していかなければなりません。そのためには市民生活に密着した区市町村の取り組みがかぎになると思います。都内六十二の全区市町村が、みどり東京・温暖化防止プロジェクトとして共同でキャンペーンを行うなど、また、一部の区市町村では、家庭における省エネ相談に応じたり、太陽光発電装置に補助金を出したりといった取り組みを進めておりますが、すべての区市町村が積極的に温暖化対策を進めていくという状況ではありません。
 こうしたことを踏まえ、今後、家庭におけるCO2削減策を強化していくため、都は区市町村と連携し、その取り組みを支えていくことが重要であると考えますが、所見を伺います。

○吉川環境局長 家庭部門のCO2削減は、都民一人一人の生活のあり方にかかわる問題でございますので、その対策の強化に当たりましては、区市町村における地域ごとの特徴を踏まえた取り組みと連携していくことで、その効果をさらに高めることができます。
 都内の区市町村の中には、既に独自の推進計画を策定し、家庭部門も含めた温暖化対策に積極的に取り組んでいる自治体がございます。こうした実情も踏まえまして、今後、すべての区市町村で取り組みが進むよう、来月から活動を始めます地球温暖化防止活動推進センターを連携の核として、都といたしましても、都の持つさまざまなノウハウを使って区市町村の取り組みを後押しし、相協力して家庭部門のCO2削減を推進してまいります。

○野島委員 ぜひ取り組んでいっていただきたい、こんなふうに思います。
 そして家庭対策上大きなかぎとなる環境学習に関していえば、中央防波堤内側埋立地に、その立地を生かして風力発電などの再生可能エネルギーやごみ問題を実感できる拠点を設けることは大変結構なことだと思いますが、私としては、家電製品を小まめに節電してどれだけのCO2削減効果が得られるのかといった、より生活者の視点に立った展示を備えた学習の場も必要であると考えます。
 何も箱物をつくれということではなく、例えば生活都市の色彩の強い多摩北部の五市が共同経営している多摩六都科学館の活用なども考えられます。十八年度では、年間十五万六千人、うち子どもは学校の社会学習などで八万三千人も利用しております。多摩の市町村はリサイクルや緑化行政に大変積極的でございまして、環境問題の取り組みも熱心でございます。こうした環境学習の場が多摩地域において省エネムーブメントを起こすきっかけになる、このように思います。
 今後、各市町村と連携強化を図っていく中で、こうした広域行政の取り組みに対しても都が後押しすることも視野に入れて取り組んでいただけるよう要望し、次の質問に入ります。
 かつて水再生センターは悪臭の発生源で、迷惑施設とされ、清瀬水再生センターも例外ではなく、建設時には地元の反対運動の対象にもなりました。今日では、センターの環境対策も進み、柳瀬川には多くの生き物が戻ってきました。また、平成十七年には、住民とともにつくり上げたビオトープが完成するなど、地域の憩いの場となっており、センターが地域の水環境の向上に貢献していることを実感をいたしております。
 一方、今日的課題である地球温暖化に対しても、多くの温暖化ガスを排出している下水道局が、いち早くアースプランを策定して削減に取り組んでいることは評価できるものでございます。
 先日の我が党の代表質問に対して、下水道局では、温暖化対策の一環として、清瀬水再生センターで汚泥ガス化炉の建設に着手し、従来の焼却炉に比べて約八割の温暖化ガス削減を目指していくとのことでありますが、新たに購入するガス化炉の仕組みと温暖化ガス削減効果について伺います。

○前田下水道局長 従来の焼却炉では、汚泥を焼却する際に、二酸化炭素の三百十倍もの温室効果がございます一酸化二窒素が発生しておりました。このため、これまでも一酸化二窒素の抑制効果の高い汚泥の高温焼却や汚泥炭化炉の導入を進め、温暖化ガスの削減に取り組んできたところでございます。
 こうした取り組みに加えまして、今回国内で初めて導入いたします汚泥ガス化炉は、汚泥を低酸素状態で蒸し焼きにいたしまして、一酸化二窒素の発生を大幅に抑制するものでございます。
 また、この蒸し焼きする際に汚泥から発生いたします可燃性ガスについては、発電に有効利用いたします。
 これらによりまして、従来の焼却炉と比較いたしまして、山手線内側の約半分の面積に相当する森林が吸収する量に当たります、年間約一万九百トンの温暖化ガスを削減することができるものでございます。

○野島委員 実はここの場所は、何年前であったか、テレビ朝日の風評被害で、ダイオキシンが着地点になるんじゃないかということで、大変皆さん心配した場所なんですよ。そこにこういうふうな取り組みで、文字どおり環境の先進的な取り組みがなされるということは大変すばらしいことだろうというふうに思ってございます。水再生センターでこのような取り組みをいただきまして、今後とも国に先んじて東京都の温暖化ガス削減対策が推進されるよう大いに期待をするものでございます。
 次に、東京国体についてお伺いいたします。
 平成五年に開催された多摩東京移管百周年記念行事、TAMAらいふ21では、三百六十五万人リサイクル型都市の形成が提唱されまして、これを契機にごみの分別、リサイクルの流れが大きなムーブメントとなったわけでございます。今後、東京国体に向けて施設整備などの諸準備が本格化していくわけでありますが、こうした環境ムーブメントをさらに高めていくために、東京国体を都民参加型の環境に優しいまちづくりの促進剤にできないかと考えております。
 先般の東京マラソンにおける、大会を通じた地球温暖化防止の取り組みと同様に、東京国体においても、開催準備から大会期間中の競技会場運営に至るまで、環境に配慮した取り組みを積極的に進めるべきと考えますが、見解をお伺いいたします。

○押元総務局長 オリンピックを初めといたします国際的なスポーツイベントでは、温暖化ガスの排出を再生可能エネルギーの活用で相殺するなど、意欲的な環境対策を盛り込んだ環境配慮型の競技会を実施しております。
 東京国体におきましても、大会を通じた環境への取り組みにつきましては積極的に推進をしていく考えでございまして、現在策定中の開催基本構想におきまして明らかにしてまいります。
 また、来年度から、競技施設整備費補助事業を開始いたしますが、今後、競技施設の整備を含め、環境に配慮した事業が促進されるよう、関係局と連携し、検討を進めてまいります。

○野島委員 ちょっと日にちを失念しているんですが、二月の中旬に、私は東京オリンピック・パラリンピック招致に向けた協力要請のため、同僚議員とともに山形県を訪れました。その際、山形県知事からは、積極的に協力する旨の力強いお言葉をいただき、早速、たしか三月七日からだと思いますが、開催予定の知的障害者の方々のスポーツ大会、スペシャルオリンピックス日本冬季大会の場でも招致アピールをしようと、こんなお話もいただいたところであります。
 この大会は、競技だけでなく、企画段階から障害者の方も参加し、開催プロセスを通じてさまざまな交流が織りなされていくとのことで、人と人との心のきずなを深めていく、スポーツのすばらしさを再認識したところです。東京国体でもぜひこうした視点を取り入れながら、多摩・島しょ地域の魅力を引き出し、だれもが夢や感動を共有できる、創意工夫ある運営をなされるよう強く要望します。
 次に、緑施策についてです。
 「十年後の東京」への実行プログラムにはさまざまな緑施策の展開が掲げられていますが、中でも街路樹の倍増など、新たにつくる緑に注目が集まりがちです。しかしながら、今ある残された緑を守り、後世に伝えていくことも大切でございます。都市整備において、開発と緑の保全のバランスは非常に重要であると考えます。都市化の波の中で、多摩地域においても、武蔵野の面影を残す雑木林や農地など、緑の減少が著しい状況にあります。
 都は、このように緑の減少が著しい地域に残された貴重な緑を積極的に保全していくべきと考えますが、所見をお伺いいたします。

○吉川環境局長 ご指摘のとおり、残念ながら東京の緑は減少傾向にあり、多摩地域などの市街地に残されました緑は特に貴重なものと認識しております。
 このような状況に対しまして、都は、緑あふれる東京の再生を目指し、現在、緑の東京十年プロジェクトを全庁横断的に推進しておりまして、今ある緑の保全と新たな緑の創出に積極的に取り組むこととしてございます。
 今後とも、武蔵野の面影を残す雑木林や屋敷林など、市街地の貴重な緑を保全するため、開発許可制度の見直しを含め、全庁挙げて各種制度を活用し、多角的な取り組みを進めてまいります。

○野島委員 失われたものを取り戻すというのは時間もかかりますし、大変なことなんですよ、私みずから実感をしておりましてね。環境局長も同類の感がいたしますが、ぜひそういうことで、その保全策、しっかり取り組んでいただきたい、こんなふうに思っております。
 次に、市街地の緑の取り組みですが、地元自治体の中には、官民を挙げてのさまざまな取り組みを進めているところもあります。例えば大変緑の濃い清瀬市では、昨年末に市民から成るみどりのサポーター制度を立ち上げ、市が所有する雑木林の保全活動を開始をいたしております。また、この他にも民間の奉仕団体がいろいろな緑施策について取り組んでおります。
 一方、より広域的な取り組みとしては、緑のネットワークの形成を目指して、多摩北部都市広域行政圏協議会が昨年三月に多摩六都緑化計画を策定し、来年度はこの計画に基づいた具体的な取り組みの検討を始めることとしております。
 緑施策の推進に当たっては、都と各区市町村との連携が重要と考えますが、見解をお伺いいたします。

○吉川環境局長 緑施策の推進に当たりましては、都と区市町村が適切に役割分担しながら連携して取り組むことが重要でございます。お話のように、住民と協働した積極的な緑の保全活動や、地域の自治体が共同して緑の計画を策定するなど、地域の緑の状況や価値を熟知している地元区市町村による積極的な取り組みは、緑あふれる東京の実現に向けて不可欠でございます。
 都は、広域的な立場から骨格的な緑づくりに取り組んでおりますが、こうした地元自治体の取り組みと連携することで、地域にとりましても良好な緑の保全と創出に寄与することが可能となります。
 今後とも区市町村と十分連携しながら、保全地域の指定など、地域の実情を踏まえた実効性のある緑施策を推進してまいります。

○野島委員 一月に私は空から北多摩地域を俯瞰をいたしました。この地域には、狭山丘陵、多磨全生園を初めとする公的機関、そして都の保全地域など、比較的まとまった緑がまだまだ残されておりました。
 その緑の一つとして、都有地である都立清瀬小児病院があります。同病院は平成二十一年度に閉院する予定です。同病院の敷地は五ヘクタール、市街地が進む地域にあって、残された貴重な緑であります。周辺の緑との連続性を保ち、緑の持つ多面的な機能を十分に発揮する上でも、また、病院の地域との長い歴史や関係などを考えても、閉院後の活用策としては、現在の豊かな緑が保全される計画を第一に考えるべきであります。そうすることにより、地元自治体や地域住民との関係においても相互理解と連携が図られ、地域の良好な環境の保全と発展に寄与することができます。こうした観点から、私はこの貴重な緑の将来にわたる保全を強く要望しておきたいと思います。
 地元市清瀬の市長さんのそんな意向も知事にはお届きになっているかどうかわかりませんが、ぜひ積極的なご検討をお願いをしておきたいと思います。
 次に、八ッ場ダムについて伺います。
 さきの総括質疑における知事答弁にもあったように、水源の確保は一朝一夕にはなし得ません。長期的な視点で将来を見据え、首都東京の水の安定供給を確保していくことが重要であります。都は今回、八ッ場ダムの基本計画変更にかかわる国からの意見照会に対し、さらなる工期の延長や事業費の増額を招かないことなどの意見を付して同意する旨の議案を提出されました。
 そこで、八ッ場ダム建設事業について幾つかお聞きをいたします。
 平成十五年の基本計画変更時、私は都市整備委員会に所属し、我が会派も活発な議論を経て同意をしたということを記憶をいたしております。その際、八ッ場ダムの必要性は議論し尽くされた感がございますが、今回の基本計画変更に関して、一部の会派では、あえて八ッ場ダムの不要論を蒸し返している感がいたします。
 そこで、まず八ッ場ダムの必要性について確認をしておきます。
 今回の八ッ場ダム基本計画の変更議案に関しては、本会議や本委員会においても質疑が重ねられてきましたが、この間の議論では、水需要予測との関係から利水面での役割が強調されております。八ッ場ダムは、利水はもとより、首都圏の洪水被害を軽減する治水の面からも極めて重要な役割を担うものと考えます。改めて治水面における八ッ場ダムの必要性について伺います。

○只腰都市整備局長 八ッ場ダムでございますが、治水、利水、両面の役割を担う多目的ダムとして事業が進められております。利根川の治水計画は、二百年に一回の確率で起こるカスリーン台風規模の洪水が発生しても、下流域ではんらんさせずに安全に河口まで流すことを目標としております。八ッ場ダムはこの治水計画の一翼を担う重要な施設でございまして、利根川上流ダム群の中でも最大の洪水調節能力を持つものでございます。渇水時における利水の安全性を確保するとともに、東京を水害から守るという治水の安全性を高める上でも八ッ場ダムは必要不可欠な施設であり、早期の完成が求められております。

○野島委員 八ッ場ダム事業の意義と必要性についてはわかりました。
 ところで、昨年の夏、私はダム予定地に赴き、現地の状況をつぶさに見るとともに、関係者の方から直接お話をお伺いいたしました。現地の実情を知るにつけても、公共事業には事業協力者の生活再建、暮らしの安定に留意しながらの早期完成が求められていると改めて認識したところでございます。
 代替地造成などで新しいまちをつくる現地再建計画は、地域の人々の生活再建が第一でありまして、その実現は一朝一夕には参りません。今回提案されている計画変更では五年間の工期延長が予定されており、この延長は地元の意向も踏まえた工期延長と理解しておりますが、工期のおくれに対する地元の受けとめ方についてお伺いをいたします。

○只腰都市整備局長 今回の計画変更でございますが、代替地計画の大幅な見直しのほか、地域の生活環境に配慮して、夜間、休日作業を減らすことなどによりまして、工期延長が必要となったものでございます。現地ではダムの完成を前提にしたまちづくりが進められておりまして、地元では移転後の生活を早期に安定させるためにも、代替地や道路、鉄道などの施設をできるだけ早く完成させるよう、国に対し強く求めております。

○野島委員 生活を早く安定させ、代替地での新生活に早くなじみたいと思う地元の方々にとって、この八ッ場ダムの早期完成こそ何よりも必要なことだろうというふうに思います。国や関係都県は、移転を余儀なくされる人々の気持ちを第一に考えなくてはなりません。
 こうした現地の状況を踏まえた上で、八ッ場ダムの早期完成に向けた知事のご認識をお伺いいたします。

○石原知事 八ッ場ダムにつきましてはいろいろ論もあるようでありますが、この天候異変の時代に、将来の水需要や渇水に対する安全性などを総合的に検証した上で、都にとって、治水、利水の両面から必要不可欠な施設であると認識しております。
 ダム建設は水源地域に大きな影響を与える事業でありまして、地元の方々との話し合いを重ねながら、その理解と協力を得て進められてきたと思っております。今後とも地元群馬県及び国とも連携して、現地の地域振興、生活再建など、諸施策が適切に行われ、早期にダムが完成するように都としても努めてまいりたいと思っております。

○野島委員 どこかの政党がポスターのコピーで国民の生活が第一、こういうのを拝見いたしました。地元の生活を安定させるためにも、今日までの経過を踏まえつつ、ダムの早期完成こそが必要であります。そのためには計画変更に速やかに同意し、八ッ場ダムを一刻も早く完成させることこそ、地元のみならず首都圏の利益にも資するものと確信するものでございます。
 次に、水道事業について伺います。
 昭和三十年代後半、東京は長期にわたる厳しい渇水に見舞われ、特に、オリンピックが開催された昭和三十九年には、最大五〇%の給水制限が行われ、東京砂漠と例えられるなど都民生活に深刻な影響を及ぼしたとの記録があります。
 この慢性的な渇水から東京を守る切り札として、当時の河野建設大臣の英断により、突貫工事で整備促進されたのが武蔵水路でございます。この武蔵水路は、利根川から首都に水を導く大動脈として、東京の生命線ともいうべき役割を果たしてきましたが、完成後約四十年が経過し、老朽化が進行しております。
 私も、昨年、視察をいたしましたが、水路周辺の地盤沈下の影響を受けて、水路が変形している様子を目の当たりにいたしました。その導水する能力が大きく低下していると説明を受け、非常に心配にもなったわけでございます。
 そこで、武蔵水路の現状と対策について伺います。

○東岡水道局長 武蔵水路は、日量二百万立方メートルを超える水を利根川から荒川に導水しており、都の安定給水を確保する上で、生命線ともいうべき最も重要な施設の一つであります。
 この水路は、完成してから四十年が経過して老朽化が進んでおり、水路部に多数のひび割れが発生するとともに、周辺地域の地盤沈下などの影響を受けて、導水能力は二割程度低下してきております。
 また、平成九年に改正された耐震基準を満たしていないことなどから、阪神・淡路大震災のような大規模地震が発生したときには、構造的に大きな被害が生じることにより、首都東京の給水に大きく影響するとともに、二次災害のおそれも懸念されます。こうした状況から、導水量の確保と耐震性の強化を図るため、施設の改築は必要となっております。
 改築に当たりましては、施工時における導水量の確保などに留意しながら、その施工方法等につきまして慎重な検討を行いますとともに、事業主体である水資源機構や関係自治体に対して、早期着工に向けた働きかけを行ってまいります。

○野島委員 武蔵水路の改築については、事業主体である水資源機構や関係自治体に対して積極的に働きかけを行い、事業を円滑に進めていただきたいと思います。
 この武蔵水路から送られた水は、秋ヶ瀬取水堰で取水された後、原水連絡管により東村山浄水場へと運ばれるわけでございます。この原水連絡管が敷設される水道道路は、実は私のすぐ近くでございまして、野火止用水と並行しております。野火止用水は、江戸時代に松平伊豆守がその命によって、多摩川浄水から武蔵野の新田開発のために四十キロにわたって手掘りで自然流下の用水をつくり上げたんですね。その後、東京オリンピックのときにこの水道道路が導水管としてこういった--そして今回、なお一層東京の水需要にこたえるためにこれを改修していくと。今昔を知る者としては、大変感慨深いものがあります。そのことはそちらといたしまして……。
 この施設は、東京の主要な水源である利根川水系と多摩川水系を相互融通できる貴重な導水施設とのことでありますが、武蔵水路と同様、老朽化が進行していると思われます。
 さきに行われた一般質問で、我が党はこの問題を取り上げ、水道局は、原水連絡管の二重化に向け、平成二十年度から調査、設計に着手するとの計画を明らかにいたしました。
 そこで、原水連絡管の二重化は、具体的にどのような方法で行うのか、また、二重化により、どのような機能向上の効果があるのかをお伺いいたします。

○東岡水道局長 原水連絡管の二重化に当たりましては、この施設が東京の安定給水に果たしている重要な役割を踏まえた上で、今後、具体的なルートや工法を早期に確定していく予定でございます。
 このため、平成二十年度より、詳細な現地調査や埋設物調査に着手するとともに、関係機関と調整を図りながら、送水機能のリスク分散等を考慮したルートの選定や、周辺環境に配慮した施工方法等について検討してまいります。
 また、二重化することによりまして、バックアップ機能が確保され、施設事故時の安定性が向上するとともに、送水能力が強化されることにより、利根川水系及び多摩川水系の原水の相互融通機能が向上いたします。
 加えまして、点検や補修等の維持管理が容易となるなど、さまざまな効果が考えられます。
 さらに、二本の連絡管を活用することにより、これまでよりも少ない電力で送水することが可能となり、二酸化炭素の排出量削減にもつながるものと考えております。

○野島委員 都の安定給水を維持していくためには、渇水や震災時にも一層強い水道システムの構築が必要でございます。八ッ場ダムなどの水資源開発を確実に進めると同時に、武蔵水路や原水連絡管などの基幹施設の整備についても、着実に推進していただきたいと思います。
 最後に、安定給水の確保に向けた水道局長の決意をお伺いいたします。

○東岡水道局長 首都東京の安定給水を確保するためには、長期的視点で将来を見据え、取り組みを行っていくことが重要であると考えております。
 これまでも、水源の確保や水道施設の耐震化、バックアップ機能の強化などを進め、給水安定性の向上を図ってまいりましたが、都の水源は、渇水に対する安全度が低いことや、施設によっては老朽化により機能が低下しているなどの課題がございます。
 このため、八ッ場ダムを初め、渇水時にも対応できる安定した水源の確保に努めるとともに、武蔵水路や原水連絡管等の導水施設や、浄水場、管路などの耐震化を進め、さらに、送配水施設のネットワーク化など、水道施設全体の総合的かつ計画的な整備を着実に推進し、首都東京の安定給水の確保を図ってまいります。

○野島委員 水道の安定給水は、東京にとって一日たりとも欠かすことはできません。今後とも、安定給水の確保に向け、しっかりとした取り組みを続けていっていただきたいと思います。
 次に、道路整備を促進する観点から、面的な無電柱化の推進について伺います。
 私は、昨年二月の第二回定例会の一般質問で、面的な無電柱化の促進のために、区市町村の事業に対する財政支援を強く要請いたしました。このたび、区市町村が負担する費用の二分の一を都から補助する制度が新たに創設されたことを、高く評価いたします。
 そこで、今後の区市町村と連携した面的な無電柱化の取り組みについて、所見をお伺いいたします。

○道家建設局長 良好な都市景観を創出し、成熟した街並みを実現するためには、都道だけでなく、区市町村と連携した面的な無電柱化が必要であります。
 このため、都は、これまでの設計や施工などの技術支援に加え、無電柱化をさらに加速するため、かねてより区市町村の要望が強かった財政負担の軽減方策として、お話のように、平成二十年度から新たな補助制度を創設することといたしました。
 この補助制度を活用することにより、神田地区などセンター・コア・エリア内はもとより、八王子駅前などの主要駅や主要観光地周辺などで、区市町村の無電柱化を促進してまいります。
 今後とも、国や区市町村、電線管理者と連携して、面的な広がりを持った無電柱化を一層推進してまいります。

○野島委員 ところで、この清瀬駅南口などの無電柱化が、みちづくり・まちづくりパートナー事業を契機に進められてきました。この、みちづくり・まちづくりパートナー事業は、地域の道路ネットワーク形成を進める上で大変効果があるばかりでなく、地域のまちづくりにも貢献してまいりました。
 そこで、この事業のこれまでの取り組み状況について、お伺いいたします。

○道家建設局長 みちづくり・まちづくりパートナー事業は、多摩地域のまちづくりに密接に関連する都道のうち、地元要望の強い路線について、都と市町村が役割を分担し、互いに協力して早期に整備を行うものであります。
 平成十一年度から二十年度までを事業期間とし、十一市一町が十六路線で事業を実施しており、六路線が完成しております。
 完成した路線では、現道の拡幅や歩道の整備等により、交通混雑の緩和、歩行者の安全性、利便性の向上が図られ、地域のまちづくりに寄与しております。

○野島委員 この事業は、平成二十年度までとされておるわけであります。そして、今ご答弁にありましたように、採択された事業もほぼ完成に向かっていくわけでありますが、この事業効果は極めて大きく、地元市町村にとっても重要な役割を果たしてきました。このことからも、我が党は、事業の継続のための調査費を復活要望いたしました。
 そこで、今後の取り組みと事業のあり方について、お伺いいたします。

○道家建設局長 幹線道路の整備とともに、地域のまちづくりや地域交通の円滑化に有効な都道の整備は重要でございます。本事業は、多摩地域の道路整備の促進、とりわけ地域住民の生活の向上に効果があり、多くの市町村から事業継続を求められております。
 このため、平成二十年度は、事業中路線の整備促進を図るとともに、新規路線について、地元市町村の意向や事業効果、まちづくりとの整合等の調査を行う予定であります。これらの調査結果や事業中路線の進捗状況等を踏まえ、今後の事業のあり方について、関係部局と調整を図りながら検討してまいります。

○野島委員 私は、この事業により、市全体のポテンシャルが高まり、さらに多摩地域全体の振興に寄与するものと考えております。事業継続に向けた調査をしっかりと行い、地元市町村の意向も踏まえ、取り組んでいただくことを要望しておきます。
 次に、低所得者対策にかかわる諸課題についてでございます。
 戦後の我が国は、奇跡的な経済復興を果たし、額に汗し、働く者が報われる社会、いわゆる一億総中流社会を築き上げてまいりました。政権政党として輝かしい発展を推し進めたのは、我が自由民主党でございます。
 しかし、近年、グローバリゼーションの進展により、企業も個人も世界規模での厳しい競争に巻き込まれています。こうした中、多くの中小企業の経営環境は厳しさを増し、また、いわゆるネットカフェ難民の出現など、セーフティーネットのやや上の所得階層に新たな弱者を生み出しております。
 今、政治は、こうした時代の変化に手をこまぬくことなく、すべての人が生きる希望を持って、一時的に苦しくなろうとも再挑戦し、生活水準を再構築できるようにしなければなりません。来年度予算では、中小企業支援策が多数盛り込まれ、また、今回の低所得者対策も、我が党の求めにこたえた内容になっておると、このように思っております。
 いにしえより有徳の為政者は、人々の暮らしを安んじるため腐心してきました。仁徳天皇の、高き屋に登りて見れば煙立つ民のかまどはにぎはいけり、こういう歌がございます。
 天皇御みずから、国民の暮らしに最大限の関心を払っていたことがしのばれ、まさに政治家として胆に銘ずべきものであります。大御心に知事もお感じになるところが多いと思いますので、今後の都政運営にも、引き続きこうした心で臨んでいただくことをご要望申し上げておきます。
 そこで、続けて低所得者対策についてお伺いいたします。
 格差是正策は、どちらかというと、累進税率や年金制度など所得の再分配機能として、全国一律、国が責任を担うべきものとされてきましたが、懸命に働いても低所得の状態からなかなか抜け出せない人々の存在は、新たな都市問題として深刻であり、今や首都東京に喫緊の課題として、その施策構築が求められております。
 共産党は、低所得者に対する一律の家賃助成を内容とする大変乱暴な条例を提案しておりますが、正しい施策のあり方を理解しているというふうには理解ができないわけであります。税収減と歳出増圧力を同時に招来する危険性を内在する、いわゆるばらまき的な施策は、納税者の納得も得られず、何ら個人の自立にもつながらず、結果として社会全体が疲弊し、都市としての活力を失っていくという悪循環を生むだけでございます。
 そうした意味において、区市町村と連携しながら、意欲のある都民に対して支援の手を差し伸べるという今回の取り組みは、まさに公約の進化であると考えますが、改めて今回の対策の意義についてお伺いをいたします。

○安藤福祉保健局長 現在の東京には、懸命に努力しているにもかかわらず、低所得の状態から抜け出せない方々が存在いたします。
 この緊急総合対策は、区市町村に相談窓口を設置いたしまして、一人一人の状況を詳細に把握するとともに、生活安定への意欲を確認した上で、適切な支援策につないでいくものでございます。
 今回、都の就業支援窓口を通じました職業訓練や、東京都社会福祉協議会が行います生活資金の貸し付けなど、さまざまな施策を展開することとしておりまして、これにより、支援を必要とする方々がみずから生活安定への道を切り開き、社会を支える力となるものと考えてございます。

○野島委員 よくわかりました。
 今回の施策は、低所得者が支えられる側から支える側へと回り、今度は納税者として社会を支えていくという大変意義のある施策であり、好循環社会を実現するものと期待をいたしております。
 また、今回の対策では、区市町村に設置する相談窓口において、個人の状況を詳細に把握し、適切な支援策につなげていくとのことですが、親切、丁寧、そして最後までのフォローアップも重要と考えます。見解をお伺いいたします。

○安藤福祉保健局長 ご指摘のとおり、今回の低所得者対策の実施に当たりましては、対象となる方について、必要な支援策へつないだ後も、相談窓口におきまして継続した支援を行っていくことが重要でございます。
 このため、相談窓口と職業訓練など支援を実施しております関係機関との間で緊密に情報交換するとともに、相談員が定期的に対象者の生活状況等を確認しながら、さらなる相談にも応じていくことといたしております。
 このように、一貫した支援体制を確保し、安定した生活への足取りをより確かなものとしてまいります。

○野島委員 ただいまお答えいただきましたような対応は、自立を目指す側にとっては心強いのはもちろんでございますが、区市町村にとっても、こういうノウハウの蓄積につながるわけでございます。さらに、こうして得たノウハウは、低所得者対策のみならず、今後、区市町村が展開していくさまざまな施策にも有用になるものと思います。まさに「市民の役に立つ所」、こう書いて市役所と読むわけでありますから。
 そこで、このように将来的には全都的な広がりも期待できるこの施策にかける知事の決意をお聞かせいただきたく思います。

○石原知事 今回のプログラムは、本当に困窮している都民の方々が、みずから生活安定への道を切り開けるように、多様な施策を重層的に講じるものでございます。
 施策の展開に当たっては、都と区市町村を初めとする関係機関が手を携えて、着実に進めていくことが肝要であると思います。
 こうした取り組みによりまして、都民一人一人が生活向上への意欲を持ち、それぞれの能力に応じて活躍し、将来に明るい展望の持てる社会を実現していきたいものだと思っております。

○野島委員 次に、障害者施策について伺います。
 障害者自立支援法では、制度を安定的に運営していくため、利用者負担のあり方についても、これまでの応能負担から新たに定率負担の考え方が取り入れられたところでございます。
 そこでまず、この利用者負担の考え方について、都の基本的な認識を伺います。

○安藤福祉保健局長 障害者自立支援法の利用者負担でございますが、障害者自身も、サービスを利用する対価として一定の費用を負担し、都民、国民みんなで安定的、継続的な制度運営を支え合うという趣旨から、定率負担が採用されております。
 また、低所得者に対しましては、所得に応じた月額負担上限額の設定や個別減免など、さまざまな負担軽減措置が講じられているところでございます。

○野島委員 定率負担ではなく、応能負担へ戻すべきであるという党、主張もあるわけでありますが、定率負担の眼目は、利用者がみずから障害福祉サービスを選択し、事業者との契約に基づきサービスを受ける仕組みでありまして、このことによって事業者も利用者のために競い合って経営努力し、より質の高い障害福祉サービスが確保されることにあると、私はこのように受けとめております。
 昨年末、我が党の要望を受け、知事は、さらなる利用者負担の軽減措置を国へ提案要求いたしました。この結果、本年七月からの低所得世帯への利用者負担軽減や、個人単位を中心とした所得段階区分の見直しなどの国の緊急措置に結実したものであります。
 今後とも、定率負担の仕組みを堅持しつつ、経済的に困窮する障害者については、恒久的な負担軽減措置を講じていくべきであり、障害者自立支援法の抜本的な見直しに向けて、国にいうべきことはしっかりといっておく必要があると考えますが、都は、今後どのように対処していくのかお伺いいたします。

○安藤福祉保健局長 障害者自立支援法は、障害者がその有する能力や個性に応じ自立した生活を営むことができるよう支援を行いまして、障害の程度や種別にかかわらず、地域で安心して暮らすことのできる社会の実現を理念としております。これは、これまで都が進めてまいりました福祉改革の考え方とも一致しております。
 また、障害者自立支援法では、法を円滑に運用していくため、施行後三年を目途に施行状況を勘案、検討の上、必要な措置を講じることとしてございます。
 都といたしましては、障害者の生活実態に即した効果的な仕組みとなるよう、利用者や事業者の意見を踏まえ、国へ提案要求をしてまいります。
 特に、利用者負担の軽減措置につきましては、平成二十一年度以降も継続されるよう国へ積極的に働きかけてまいります。

○野島委員 次に、介護保険制度についてお伺いいたします。
 質の高い人材の確保、定着のためには、それに見合った給与や待遇が必要であり、そのためには事業者が安心して運営できる介護報酬が求められることはいうまでもありません。
 都は、昨年五月、国に対する介護報酬の地域差等に関する提言、この中で、現行の介護報酬の問題点について詳細な分析を行い、具体的な改善策を提言しております。この提言が発端となって、昨年八月の国の人材確保指針において、地域差という表現が新たに明記されました。都の提言が国を動かした証左として、高く評価するものでございます。
 また、昨日、都が昨年実施した都内の特別養護老人ホーム、老人保健施設の実態調査結果の速報が発表されました。改めて、大都市東京における施設経営の困難さが浮き彫りになっており、極めて有用なものであると思います。
 そこで、今回の調査結果を活用し、国に対して、大都市東京の実態を反映した介護報酬の水準を設定するよう、エビデンスに基づいた具体的提言をすべきと考えますが、所見を伺います。

○安藤福祉保健局長 お話のございました今回の調査は、特別養護老人ホームと介護老人保健施設の経営実態を把握するために実施したものでございます。
 調査結果の速報では、多くの施設で支出に占める人件費の割合が上昇し、事業収支も悪化するなど施設の厳しい経営実態が明らかになりました。
 また、施設長の七割以上が緊急の課題といたしまして、人材の確保が困難であることを挙げており、その最大の理由は、介護報酬に起因する給与水準の低さにあるとしてございます。
 今後とも、国に対しまして、東京の介護事業者が安定的に事業運営を行えるよう、今回の調査結果を詳細に分析いたしまして、大都市にふさわしい介護報酬のあり方について、さらなる提案要求を行ってまいります。

○野島委員 次に、福祉人材の育成について伺います。
 介護人材を初め、福祉人材の育成は、福祉行政の根幹的な課題であります。そもそも福祉サービスは、人が人に対して行うものであり、サービスのよしあしは人材の質に大きく左右されます。質の高い人材を確保するためには、労働条件が重要な要素となりますが、それは、単に給与の改善というだけで解決するものではありません。
 福祉に携わる人々が、みずからの技術を磨き、それを発揮することによって得られる達成感、感謝されることの生きがいなど、魅力と働きがいのある福祉職場をつくることこそが重要でありまして、人材育成に積極的に取り組むべきと考えますが、所見をお伺いいたします。

○安藤福祉保健局長 質の高い人材を確保するには、職員一人一人がみずからの能力向上を図りまして自己実現することができる職場づくりが必要でありまして、そのためには、人材育成に積極的に取り組んでいくことが重要でございます。
 都はこれまでも、認知症介護実践研修や障害者の就労支援研修会など、新たなニーズに対応できる人材の育成に取り組んでまいりました。
 来年度は新たに、職場での人材育成の強化を目的といたしました、経営者やリーダー層に対するモデル研修の実施や教材開発を行うなど、介護福祉士などの有資格者の資質向上に向けました区市町村の取り組みを支援するなど、人材育成をより一層充実をしてまいります。

○野島委員 次に、高齢者のデイサービスについてでございますが、私は一昨年、山口県にあるデイサービスセンターを視察してまいりました。施設は自然環境豊かな場所にございまして、広い敷地と、建物はそんなに立派じゃなかったんですが、温水プールも設けられておりまして、規模の大きさに驚いたところでございます。
 そこには、毎日八十人以上の高齢者が通ってきているとのことでございました。たまたま行った時間が、利用者がそこにいらっしゃる時間帯と一致したものですから、私も利用者と一緒に行動をしてみました。まず、一日をどう過ごすかということを、実は百種類以上ある活動メニューから選んでみずから決めると、こういう形でございます。例えばパソコン、プールでのリハビリ、パンづくり教室、あるいは木工、こういったふうな、一人一人が違うものを選択できるシステムになっております。ほかの施設のように、みんなで歌ったり、あるいは体操したり、画一的な光景は実は余り見られませんでした。
 たまたま食事もごちそうになりまして、バイキングの食事でございまして、好きなものを食べられるだけじゃなくして、利用者の方がトレーで自分の席まで持っていくこと、後片づけもリハビリと、こういうとらえ方をしているわけでございます。車いすでトレーを持って、周りの人もせっつかずに、その人がゆっくりとっていくんですね。あるいは、半身にちょっと障害のある方が、ステッキをつきながらこうやって食事をとっていって、自席で食べて片づける。いわばそういう行動そのものがリハビリだと、こういう位置づけでございました。
 それから、バリアフリーとよくいわれているんですが、この施設はバリアアリーと呼んでいまして、手すりのない長い廊下や広い敷地内を自力で移動し、その生き生きとした姿が私にはとても印象的でございました。
 一方、東京のデイサービスセンターは、利用者定員規模が大体二十名から三十名程度の小規模な施設--これは施設の制約がございますので--が多く、一日の活動予定もあらかじめ決められているものが多いと聞いております。実は私も、近くに養護老人ホームがあるものですから、そこへ行って、体験までいかなかったんだけれども、見てまいりました。いわば、こういうことをいうと言葉はいけないんですが、二、三十人が一緒にやっていくような定食型のメニューなんですね。
 今後は、高齢者が急増する東京においても、多彩な活動を実施できる大規模なデイサービスセンターを整備することは、高齢者の住みなれた地域における生活を支えるための有効な取り組みの一つであると、こんなことを実は感じたところでございます。
 しかし、地価が高い東京では、事業者にとってはとても採算が合わないのではないかと、こんなふうにも思います。そこで、利用予定のない都有地等を貸し付けるなどの支援策が必要であると思います。例えば私の地元にある清瀬小児病院は、八王子小児病院、梅ケ丘病院を含めた三病院の統合により、土地、建物があくことになります。
 都では、平成十四年から都有地活用による地域の福祉インフラ整備事業実施要綱を定め、認知症高齢者グループホームや特別養護老人ホームを整備する民間事業者に対して、都有地等を貸し付けて整備促進を図ってまいりましたが、貸付対象となる施設にデイサービスセンターも加え、大規模なデイサービスセンターの整備促進を図るべきと考えますが、ご所見をお伺いいたします。

○安藤福祉保健局長 高齢化が進展する中で、高齢の方が施設に通い、入浴、食事等の介護を受けたり、機能訓練などを行いますデイサービスは、在宅高齢者の自立した日常生活を支える上で重要なサービスであると認識をしております。
 お話の画一的なサービス提供から脱却をして、創意工夫を凝らした多様かつ個別性のあるプログラムを提供するというデイサービスにつきましては、高齢者が増加いたします東京においても有効な取り組みであると考えております。
 大規模デイサービスを、お話の都有地活用によります地域の福祉インフラ整備事業の対象に加えることにつきましては、都民ニーズや利用者の送迎など、広域的にサービス提供していく上での課題等も踏まえまして、検討してまいりたいと思います。

○野島委員 ぜひ関係局間で連携をとり合って、都民の共有財産である公有地を、その時々の都民ニーズに応じて積極的に利活用できるよう、前向きな検討をお願い申し上げておきます。
 次に、子育て施策について伺います。
 先日、福田首相が都内の事業所内保育施設を視察いたしました。ここは昨年、石原知事も視察されたと伺っております。待機児童の解消に向けて、首相と都知事がともにみずから視察されたことは大変意義深いことと考えます。
 先日の我が党の質問で、知事から、今後三年間で一万五千人というこれまでにないペースで保育サービスを整備すると明確なご答弁をいただきました。ぜひとも実現していただきたいと思いますが、現在、都の保育サービスは認可保育所が主となっており、それも公立が中心で、都内でも公立が六割を占めております。
 さて、平成十八年度のデータによりますれば、認可保育所における二時間以上の延長保育の実施率は、公立は七%、民間立でも一六%、こういうことでございます。ちなみに、認証保育所はすべて十三時間以上の開所、つまり認可保育所でいう二時間以上の延長を行っているということになるわけでございます。
 そもそも延長保育という言葉自体、子どもを託す親から見れば、延長でも何でもない、なくてはならない本当に必要な保育でございます。
 また、今は保育の実施というふうに改められましたが、かつては措置、また特例保育という言葉もありました。こういういい方一つをとっても、国の保育所制度では、供給側の論理でしか制度設計がなされていないような気がいたします。
 一方、都が創設した認証保育所は違います。平成十三年度の制度創設以来、施設数、定員ともに着実に増加をしています。
 そこで、認証保育所がここまで普及した要因について、どのように考えているのかお伺いをいたします。

○安藤福祉保健局長 認証保育所は、平成十三年度の創設より着実に増加をいたしまして、平成二十年三月一日現在、施設数は三百九十五カ所、定員は一万二千人を超えております。
 このように短期間で設置が進んだ最も大きな要因は、ゼロ歳児保育や十三時間開所、駅周辺への設置など、大都市特有の保育ニーズに的確に対応してきたことでございます。また、利用者と施設による直接契約や保育に欠ける要件を必要としないなど、保護者が利用しやすい形態としたこと、民間企業、NPO法人など多様な事業者の参入を促し、それぞれの事業者の創意工夫による運営を可能としたことなども挙げられます。さらには、保育の実施主体であります区市町村が積極的に取り組んだことによりまして、設置が進んだものと考えております。

○野島委員 利用者の立場に立って、民間の活力により良質なサービスを提供し続ける認証保育所は、需要者側の論理での制度設計と、こんなふうに私は受けとめております。先ほどと極めて対照的な感じがいたします。
 都は、従来から保育所制度の抜本的改革を国に提案要求していますが、国の検討は遅々として進んでいません。昨年十二月、福田首相と石原知事が会談し、実務者による国と東京都の協議の場が設けられることになり、協議事項のリストの中に、東京独自の認証保育所制度の承認が取り上げられております。
 今後、所管省庁と具体的な協議に入ると聞いておりますが、なぜ今、認証保育所をこの協議事項に入れたのか知事にお伺いをいたします。

○石原知事 認証保育所は、都民の広範な支持を得て、短期間で設置が大幅に進んできたと思います。この実績を踏まえて、国の硬直した保育所制度を大都市のニーズに対応できるように抜本的に改革を求めてまいりました。
 しかしながら、私も国会に長くいましたけれども、幾つかある国の役所の中で、厚労省というのは最も頭のかたい、融通のきかない役所の一つでありまして、ほかにもいろんな事例がございますが、例えば坂口さんが大臣をしているときに、何といいましたか、一晩じゅうやっているショップがあります。何ていいましたかな、火事を起こしたところですけれども。(「ドン・キホーテ」と呼ぶ者あり)ドン・キホーテ。それで、ニーズが高いので、とにかく薬を売りたいと。しかも、独自に売るわけにいかないから、薬剤師と契約して、どんな時間でも電話一本で相談して、それで薬剤師の処方に従って、ごく簡単な売薬ですけれども、これも厚労省はかたくなに拒みまして、結局、坂口大臣の政治的な判断で押し切ったんですけれども、しかし、役人独特の意地悪で、夜の十時から朝の六時。
 六時から薬局があく九時までどうするんだという話なんですが、これはもう無視してやれといってありますけれども、事ほどさように、国はとにかく非常に頭がかたい。これが一向に進まぬものですから、これだけニーズのある認証保育所をもっと敷衍して進めるためにも、今度の協議事項の中にこれを入れて、もっと違う方面から厚労省の頭を変えていこうと思っております。今後も努力をいたします。

○野島委員 都民から広範な支持を受けている認証保育所制度をより一層普及させるために、ぜひこの協議において、国からの財政措置もかち取ってほしいと思います。我が党も全面的にバックアップをしてまいります。
 私は、これが国制度として承認されることによって、財政上の問題のみならず、国の保育所制度という中に入り込むことによって、この認証保育所の質、量の拡大はもちろんでありますけれども、実は、今までやってきた公における保育に大きな風穴をあけるというふうに思っております。公の保育所の運営実態をよく知る私としては、ぜひこの認証保育所制度の承認を頑張っていただきたいというふうに思います。
 さて、認証保育所は順調にふえておりますが、一方で質の確保も大変重要でございます。この質の確保なくして利用者の信任は得られないわけでございます。
 先日、荒川区にある認証保育所について、都から認証取り消しという処分が下されました。ルールを逸脱した事業者が淘汰されるのは当然の結果であります。
 一方で、今回の処分によって、現在利用している方々が不利益をこうむることは避けなければなりません。
 そこで、今回の認証取り消しに当たり、利用者に対する周知や代替サービスへの移行をどのように行ってきたのか、お伺いをいたします。

○安藤福祉保健局長 今回の認証取り消しに当たりましては、現在、保育所を利用している子どもたちやその保護者の方が不利益をこうむることがないよう、最大限努力をしております。
 具体的には、関係区と協力しながら、保護者に対する説明会や個別の相談を実施するとともに、子どもたちの新たな受け入れ枠を全員分確保したところでございます。また、保育サービスが滞ることがないよう、事業者に対しまして、認証取り消しとなる今月末まで事業の確実な継続を指導いたしております。

○野島委員 子どもたちや保護者のことを最優先に考えて、円滑な移行を進めていただきたいと思っております。
 本件は、あくまでも一事業者の話であり、すべての認証保育所がこのような悪質な行為を行っているわけではなく、この一件が認証保育所に対する都民の期待を裏切ることになってはならないわけであります。大都市特有の多様な保育ニーズにこたえるため、各事業者が懸命に努力し、都民の広範な支持を得、今日の普及につながったことは紛れもない事実でございます。
 今後、このような事態を二度と招かぬよう、改めて指導を徹底すべきと考えますが、いかがでしょうか。

○安藤福祉保健局長 当該保育所は、職員配置についての虚偽の申請を行い、認証及び補助金の交付決定を受けるという著しい不正がありましたために、認証取り消しを行ったものであります。
 認証保育所は、大都市のさまざまな保育ニーズにこたえ、都民の広範な支持を得て拡大してきたものであることから、今回の不正は、虚偽の申請というばかりではなく、都民の期待を大きく裏切る行為でもあり、決してあってはならないと考えております。
 このため、早急にすべての認証保育所の設置者を招集し、認証保育所が持つ社会的使命と責任を十分に自覚するよう、改めて強く求めてまいります。
 また、今後の指導に当たりましては、法令を遵守し、指導監督基準で示しております職員配置や保育内容、施設の安全性などにのっとりました適正な保育サービスを提供するよう、徹底をしてまいります。
 さらに、今回の件を踏まえ、新規施設に対する現地指導を強化し、区市町村と協力しながら、来年度早期から実施をしてまいります。
 今後とも、認証保育所の健全な発展を図ってまいります。

○野島委員 認証保育所に対する都民の期待を裏切ることのないよう、指導を徹底していただきたいと思います。
 次に、医療制度改革に伴う健康診査などの保健サービスについて伺います。
 これまで区市町村で行われてきた基本健康診査では、本来の健診項目に加えて、結核検診やがん検診などの保健事業が身近な医療機関で同時に受診できるように工夫されていました。しかし、本年四月から特定健康診査が始まることから、基本健康診査はこの特定健診に引き継がれて健康保険組合などの医療保険者が実施し、がん検診等の保健サービスは区市町村が行うこととなるため、検診を別々に受けなくてはならなくなるなどの不便が予想をされます。
 区市町村の国民健康保険に加入する方については、これまで同様、特定健診と同時に複数の保健サービスが受けられる体制をつくる区市町村が多いと聞いておりますが、その他の保険に加入している方についても、サービスの低下が生じない工夫が必要でございます。
 国の制度改正によるものでありますが、特定健診に含まれない保健サービスについても、都民が利用しやすい体制をつくることが必要と考えます。見解をお伺いいたします。

○安藤福祉保健局長 ご指摘のとおり、この四月から、メタボリックシンドロームに着目をいたしました特定健康診査は、健康保険組合等の医療保険者が実施をいたしまして、肺がん検診等の保健サービスは区市町村が実施をするという体制になります。これらの健診は、病気の早期発見や生活習慣を見直す機会として重要でありますことから、区市町村の国民健康保険以外の医療保険加入者についても、引き続き区市町村の保健サービスを効果的に提供していく必要があると考えております。
 このため都では、区市町村や医療保険者などが参加をいたします地域・職域連携推進協議会、これを設けまして、この場を活用いたしまして、それぞれが実施をいたします健診情報の共有化を図るとともに、都民が利用しやすい健診の実施体制を整備するように働きかけてまいります。

○野島委員 次に、地域産業の振興について伺います。
 地域産業が自立的に発展していくためには、商工業者や農林水産業者など、地域を支える事業者がともに手を携え、新たなビジネスを生み出していくことが重要でございます。国においては、農商工連携の促進に向けて、農林水産省と経済産業省が法律案を国会に提出するなど、新たな取り組みが始まろうとしております。
 都としても、製造業、サービス業などと農林水産業との多様な連携による新事業の創出をきめ細かく支援すべきと考えますが、所見をお伺いいたします。

○佐藤産業労働局長 都内には、魅力あふれる農林水産物や、また商工業者が持ちます独自の技術、ノウハウがございます。これらが有機的に連携をすることで、新たなビジネスが生まれる可能性があります。
 このため、都といたしましては、東京都地域中小企業応援ファンドといたしまして、国から二十億円、都が百八十億円をそれぞれ出捐いたしまして、二百億円の基金を組成いたします。そして、十年間にわたり、その運用益を活用して、新製品、新サービスの開発に取り組む中小企業やNPOに助成をしてまいります。
 また、こうした取り組みを数多く創出をし、成功に導くためには、資金供給に加えまして、事業の掘り起こしから立ち上げ、また販路開拓に至るまで、一貫した支援が必要となります。このため、都内各地域にビジネス経験豊富な企業OB等を地域応援ナビゲーターとして配置をいたしまして、事業の進捗状況に応じたきめ細かなアドバイスを行うなど、地域資源を活用した新事業を総合的に支援をしてまいります。

○野島委員 国の農商工連携は、もともと都市と地方の格差是正の観点から検討がなされたと、こんなことも仄聞しておりまして、地方の再生が念頭にあるものと考えられるわけでございます。
 こうした中で、都が十年間という長期的な視点で地域密着型のビジネスを支援することは、地域の事業者にとっても大変心強いものになるものと思っています。
 また、地域産業の活性化には、その担い手である事業者が数多く存在していくことが不可欠でもございます。しかし、事業所統計を見ますと、都内の事業所は過去二十年間に約十万カ所も減少しております。
 こうした状況に危機感を募らせ、一部の区市町村の中には独自の企業誘致策を打ち出しているところもあります。都としても、区市町村との連携による企業立地の促進や、都内に新たな立地を図る中小企業への支援など、さまざまな手法を用いて産業集積の維持、発展に取り組むべきと考えますが、所見を伺います。

○佐藤産業労働局長 産業集積の維持、発展を図るためには、地域の特性に応じた企業立地に取り組む区市町村を後押しするとともに、事業用地ですとかインキュベーション施設の入居状況といった立地情報の提供、また立地に伴う資金負担の軽減など、さまざまな観点から支援を行うことが重要であるというふうに認識をしております。
 そのため東京都は、まず平成二十年度に、区市町村と連携をいたしまして、都内に立地を希望する中小企業に対しましてタイムリーに情報を提供する体制を構築いたします。
 また、創造的都市型産業集積創出助成事業を新たに立ち上げまして、産業集積の創出、活性化に計画的に取り組む区市町村に対して、最大三年間で一億五千万円を上限に助成をいたします。
 あわせまして、融資期間十年超の長期融資制度を創設いたしまして、都内で工場等を新設、拡張する中小企業を資金面でも応援するなど、産業集積の維持、発展に向けた施策を多面的に講じてまいります。

○野島委員 企業の立地促進に向けて、都も力強くアクセルを踏んでいっていただきたい、大きく動き出すことを期待を申し上げております。
 東京には、大学や研究機関と連携し、高付加価値製品を生み出している中小企業が数多く存在しています。都においては、こうした中小企業の立地を促進し、都市型産業ともいうべき産業集積の維持、発展に積極的に取り組んでいただくよう強く期待をいたします。
 次に、港湾連携について伺います。
 先般、東京、横浜、川崎の三港が、将来のポートオーソリティーを視野に入れ、国際競争力強化のため、連携強化に合意したとの発表がございました。実質的な一港化を目指すとのことであり、知事の強力なリーダーシップにより実現した画期的なことだと、このように受けとめております。
 我が党は、本定例会の代表質問において港湾連携の推進を提案いたしましたが、これに十分よりも十二分にこたえる第一歩と高く評価をいたします。
 一方、国の交通政策審議会は、二月に、国と地方の役割分担の整理、一体的な運営等国家戦略としての港湾のあり方など、主要港湾の国営化を示唆するかのごとき答申案を公表しております。このような国の動きも踏まえ、今回の合意の意義について知事のご所見をお伺いいたします。

○石原知事 日本の港湾は、現在熾烈な国際競争にさらされておりまして、非常に苦戦をしております。これに対して国は有効な処方せんを示すことができずにおりますが、また、現場の事情を踏まえた実践的なノウハウを最も必要とする港湾経営について、ご指摘のように国家戦略とか称して、今まで以上に国の関与を強めようとする非常に逆行的な動きが見られます。
 今回の合意は、我が国の港湾政策がスピードと戦略性を欠く中で、全国の港湾荷役の扱い量二六・五%、価格として二十七・二兆円の成績を上げている、この京浜三港のみずからの判断と責任において港を一体的に管理する。今までは、東京である荷物をおろして横浜へ行ったら、別に入港料を払わなきゃいけない。こういうばかなことを廃して、将来はポートオーソリティーの設立も視野に入れまして、実質的な一港化を目指すことで港湾の新時代を切り開いていきたいと思っております。
 これによりまして、東京湾の中核に位置し、世界最大の規模の経済圏を背負う三港が世界の港湾との競争に何とか勝ち抜き、日本の国際物流の玄関口としての役割を果たしていきたいと思っております。

○野島委員 ありがとうございました。
 次に、文化の振興についてでございますが、都立文化施設は、東京における文化の基礎として、これまで重要な役割を果たしてきました。一方、文化を取り巻く社会経済環境の変化に伴い、都民の文化に対するニーズはより一層多様化、高度化をしております。
 現在、東京都美術館と東京芸術劇場の改修が計画されていると聞いておりますが、両施設の改修に当たっての基本的な考え方と今後の推進方策について所見を伺います。

○渡辺生活文化スポーツ局長 東京都美術館につきましては、昨年の九月に基本計画を策定し、現在、二十四年度のリニューアル開館を目指して基本設計を進めております。
 また、東京芸術劇場につきましては、来年度の基本計画、基本設計に向けて改修の内容を検討中であります。
 この二つの施設の改修に当たりましては、老朽化が深刻な設備の全面更新や、ユニバーサルデザインの導入などに加えまして、東京芸術文化評議会からの改修内容及び自主事業の充実など事業展開に関するご提言も踏まえ、展示室やホールの機能改善、快適な鑑賞環境づくりへの対応を図ってまいります。

○野島委員 ところで、東京都美術館は、これまで公募展の殿堂として美術界の発展に貢献し、また、都民が一流の美術に接する場を提供してきました。現在の建物は老朽化が進み、リニューアルへの都民の期待も高く、改修に当たってはその期待にこたえる必要がございます。
 一方、現在、上野公園を文化の森として再生するグランドデザインが検討されており、加えて、国立西洋美術館の世界遺産登録に向けた動きも進んでおるやに聞いております。美術館の改修に当たっては、それらの動きも視野に入れて進めることも重要であると考えます。あわせて見解を伺います。

○渡辺生活文化スポーツ局長 東京都美術館は、多くの美術団体の発表場所、多数の来館者を迎える企画展の開催場所として三十二年間フル稼働してきておりまして、施設設備の老朽化への根本的な対応が喫緊の課題であります。加えて、東京都美術館が果たしている役割の重要性を踏まえ、改修に当たりましては、美術団体を初め利用者ニーズの変化に対応し、照明や壁面など展示施設のグレードアップを図ってまいります。
 また、理事ご指摘の上野公園を文化の森として再生する取り組みなどの動きも十分に踏まえた上で、改修を進めていく所存でございます。

○野島委員 このリニューアルの経費として百億円かかると聞いておりますが、今後とも、利用している美術団体を初め、さまざまな関係団体、来館者の要望や意見を十分聞くとともに、上野公園総体のステータスを高めるようなリニューアル開館に向けた取り組みを着実に進めていくようご要望を申し上げる次第でございます。
 次に、今後の財政運営について伺います。
 都財政は、財政再建をなし遂げ、ようやく将来に目を向けた取り組みができるようになりました。これからの都政は、東京という都市の力を高めていくためにいかにすべきかという点を正面に掲げ、その実現に資する質とスケールを備えた施策を展開していく必要があります。
 そのためには、安心・安全や利便性といったサービスを供給する都市基盤の整備や、都民がそこで働き、子を産み育て、幸せな生活が享受できるソフト面での施策など、実効性のある施策の積み重ねが必要でございます。そのための財源を単なるばらまきに使ってしまえば、財政負担のみが残り、施策としてのノウハウも何も残らないわけでございます。
 さらに、先ほど申し述べましたが、財政状況が悪化したときには、その収入減と支出増の両面からの圧力で行き詰まりが生じ、本当に必要な施策ができなくなり、結果的に納税者である都民の信頼を失うことになりかねません。
 石原知事が九年間で財政運営を見事に達成できたのは、定石を踏まえた財政運営を行ってきたからだと考えます。それは、都政を取り巻く経済環境が変化する中にあっても、なすべき施策を機動的、継続的に実施できるよう財政的に支えることであり、税収動向に一喜一憂しない安定的な財政運営を行うということでもございます。基金や都債を活用した堅実な財政運営や積極的な施策の見直しが、結果として都民のためになっていることは疑う余地がないのであります。
 そこで、税収の変動が激しい東京都にとって、状況が変化する中にあっても、必要な施策を安定的に展開することの重要性について見解をお伺いいたします。

○村山財務局長 この間実施してきた財政再建におきましては、バブル崩壊後の都債の大量発行に依存した財政構造を改革し、財政の対応能力をいかに高めるかという課題に取り組んでまいりました。そのため、税収減が続く状況にあっても、都債発行をそれ以前に比べ格段に低いレベルに継続的に抑制し、逆に税収がふえる局面にあっても、安易な歳出拡大に走ることなく基金の充実を図るとともに、見直すべき施策は厳しく見直しつつ、創意工夫を凝らした有効な施策を展開し、都民の期待に的確にこたえるべく努力をしてまいりました。
 こうして達成された財政再建の意義は、単に財源不足を解消したことにとどまるものではなく、税収の変動が激しいという都財政の構造的な特徴のもとで、施策を安定的に展開するために必要な弾力的な財務体質を身につけていく上での道筋をつけた点にございます。
 したがいまして、今後におきましても、外部環境が変化する中で、必要な施策を機動的かつ継続的に実施していくため、お話しいただいた財政運営の定石をしっかりと踏まえ、都債や基金が持つ財政調整機能を十分に活用し、弾力性を持ち、かつ堅実な財政運営を目指してまいります。

○野島委員 都は、景気動向が不透明な中で、これまでとは違う財政再建後の新たなステージに立っています。そこでは、「十年後の東京」を初めとしたハード、ソフトの両面で東京の力を高めていく必要があり、それは息の長い取り組みになります。その実現に向けては、これまで以上に中長期を見据え、効率性に配慮した財政運営が求められます。
 そうした施策の展開を持続的に支えるためには、「十年後の東京」の実現を財政面から裏打ちするような財政運営の見通しとプランが必要です。すなわち、社会資本の更新需要など東京が抱えている中長期的な需要をマクロ的に把握するとともに、その需要にこたえるために必要な財源をいかに確保するかについて、財政フレームとあわせて道筋を明らかにすることが必要だと考えますが、所見をお伺いいたします。

○村山財務局長 都政は、財政再建の長いトンネルを抜けまして、今日ようやく、二十一世紀の東京という都市をどう形づくっていくかという課題を正面に据えて、中長期的な視点に立った施策展開を目指す新しい段階に入っております。激しい税収変動が想定される中にありまして、これを財政面から裏打ちするためには、社会資本インフラの更新など膨大かつ長期にわたるハード、ソフト両面の財政需要に対し的確にこたえられるよう、財源をしっかり確保し、施策の実効性を継続的に高めていくことが財政運営の今後の課題となっております。
 こうした観点から、お話しの中長期的な財政需要の見通しと確保すべき財源を示す財政フレームや課題の解決に向けた道筋などを明らかにする新たなプランの作成につきまして、今後具体的に検討を進めてまいります。

○野島委員 次は、市町村総合交付金についてお伺いいたします。
 一九六四年、昭和三十九年の東京オリンピックが、戦後復興をなし遂げ、日本が世界にデビューを果たした場であるとすれば、現在招致に取り組んでいる二〇一六年のオリンピックは、成熟した都市としての東京の魅力を世界に披露すべき機会になるかと思います。首都東京があらゆる面で世界の先進都市となることが必要で、都が策定した「十年後の東京」は、まさにそのためのビジョンといえます。
 例えば、このビジョンの目標の一番目にある水と緑の回廊で包まれた美しいまち東京の復活を具現化していくには、各区市町村の協力が不可欠です。特に、豊かな自然環境を抱える多摩・島しょ地域に期待される役割は大きなものがあります。
 そこで、「十年後の東京」の実現に向けて、都と市町村との連携がますます重要となる中、都は来年度、三百八十億円の市町村総合交付金についてどのように活用をなされるのか、制度創設からこの二年間の、その評価も踏まえた基本的な考え方についてお伺いをいたします。

○押元総務局長 市町村総合交付金の創設後、各市町村では地域の特性を踏まえたまちづくりや行財政改革の取り組みがこれまで以上に進展いたしました。市町村の創意工夫と自助努力の発揮という観点から大きな成果があったと考えております。このため、来年度も市町村の取り組みを引き続き強く後押しできるよう、交付金予算を増額したところでございます。
 さらに、実行プログラムの施策を着実に推進するには、都と市町村とが連携して取り組むことが不可欠でございまして、市町村を適切に支援することで地域振興の観点からも大きな効果が期待されるところでございます。
 来年度は、このような考え方のもとに交付金をより効果的に活用し、多摩地域を首都圏の中核拠点として、また、島しょ地域を豊かな自然と調和したリゾート空間として、一層の発展を促してまいります。

○野島委員 総合交付金は、市町村への財政支援としてますます重要性を増しておりますが、私は、これからの市町村の行財政運営にとってポイントとなる三つの視点から新たな提案を申し上げたく思います。
 まずは、地方分権の推進でございます。分権改革の進展により、市町村の役割は今後ますます拡大していくことになります。実際に、多摩地域では保健所事務や建築確認事務等について都から移譲を受ける動きが出てきております。
 次に、広域行政の展開です。先ほど環境学習に関する質問で申し上げた多摩六都科学館やみどり東京プロジェクトの推進、あるいはまた図書館などの公共施設を共同利用する取り組みなど、多様で広域的な連携策があちこちで進んでおります。
 三点目は、環境です。町村部を中心とした豊かな自然の保全や活用は、環境問題が重視されている今日、それぞれ市町村のみの課題にとどまらず、オール東京の課題となっています。
 市町村総合交付金において、こうした三つの視点にも配慮し支援を行うことは、市町村及び都の双方にメリットがあると思います。都のご見解をお伺いいたします。

○押元総務局長 市町村総合交付金は、今なお財政状況が厳しい多摩・島しょ地域の市町村の一般財源を補完する制度であることから、市町村を取り巻く環境変化に柔軟に対応し、常に時代に適応した的確な支援制度としていかなければならないと考えております。
 ただいま野島理事からご提案のありました地方分権の推進、広域行政の展開、環境保護などは、今後の市町村にとって重要な視点であり、貴重なご提言であると考えます。
 今後、ご提案や市町村からの要望も踏まえまして、都として市町村の自助努力を幅広くとらえられるよう十分な検討を行い、市町村の自主性、自立性のさらなる向上につながる改善を図ってまいります。

○野島委員 続いて、区市町村包括補助事業について伺います。
 昨年の予算特別委員会において、私は、福祉保健区市町村包括補助事業を創設する意義についてお尋ねをいたしました。区市町村の地域特性に応じた一つ一つの取り組みを福祉の木と例えるのであれば、都が広域的、専門的な立場から区市町村を支援し、一本一本の福祉の木を豊かな森へとはぐくむのがこの包括補助事業と、このように申し上げたことを記憶しております。都独自の取り組みとして、この役割を高く評価するものでありますが、区市町村による積極的な活用が図られてこそ意義ある事業となるわけでございます。
 平成二十年度予算案における包括補助事業の予算額は、さらなる執行率向上の期待を込めて我が党が強く要望し、平成十九年度と同水準に復活したところでございます。東京における福祉の森づくりとして必要な保水機能を果たすべき包括補助事業は、分権時代にふさわしい政策誘導を図りながら、区市町村による積極的な活用を促進していく必要があります。
 そこでまず、平成二十年度における本事業の新たな取り組みについてお伺いをいたします。

○安藤福祉保健局長 都は今年度、区市町村の地域特性に応じた取り組みを支援するために、高齢、障害、保健医療、基盤整備の各分野におきまして包括補助事業を創設いたしました。平成二十年度は、これに加えまして、ひとり親家庭の就業、自立支援につながる取り組みを幅広く支援していくため、ひとり親家庭支援区市町村包括補助事業を創設いたします。
 さらに、既存の包括補助事業におきましても、感染症対策の普及啓発事業や子育てひろばの相談対応力を強化する事業、災害時の要援護者対策事業など、区市町村に積極的な取り組みを促す事業を追加いたしまして、一層の充実を図ってまいります。

○野島委員 福祉保健施策の推進に向けて、包括補助事業の対象拡大と、提示する補助メニューの拡充を図ることは評価をいたします。
 これに加えて、区市町村に対し包括補助事業の一層の活用を呼びかけて、独自のアイデアや創意工夫を引き出す努力をすべきと考えますが、見解を伺います。

○安藤福祉保健局長 地域の福祉保健行政の担い手であります区市町村が、みずから創意工夫を凝らした事業を展開することが、東京におけます福祉保健施策総体の向上を図る上で大変重要でございます。そのため、新年度早々に区市町村との意見交換の場におきまして新たな補助メニューを十分に周知してまいります。さらに、包括補助事業を活用いたしました先進的な取り組み事例を発表会などにより紹介いたしまして、新たな課題への対応も促進してまいります。
 こうした働きかけによりまして、区市町村が行います地域特有のニーズに即した施策展開を積極的に支援をしてまいります。

○野島委員 福祉保健区市町村包括補助事業の一層の活用が図られるよう、広域的、専門的な立場から積極的な働きかけをご期待申し上げます。
 次に、「十年後の東京」への実行プログラムの今後の展開について伺います。
 かねてから、我が党は財政再建を高く評価しつつ、その成果を幅広く都民に還元することを要望してきました。今回、都が、我が党の主張を踏まえ、長期構想である「十年後の東京」の実現に向けて、財源の裏づけのある三カ年の実行プログラムを策定し、東京の将来を見据えた施策を集中的、重点的に展開することは、そうした観点からも極めて高い意義を持つものであります。区市町村からも、都と連携を図る上で、中長期の目標を掲げ、その達成に向け具体的な道筋を都が示したことに期待が高まっております。
 いよいよ来年度から実行に移るわけでありますが、今後は、社会経済状況の変化が予測される中でどのように目標を達成していくのか、その仕組みが問われると、このように思います。
 そこで、「十年後の東京」を確実に実現するためには、実行プログラムに掲げた事業の実施結果を検証し、新たな目標設定や施策のブラッシュアップなどにつなげていくことが重要と考えますが、知事のご所見をお伺いいたします。

○石原知事 国では、美しい言葉が並ぶ計画が次々につくられておりますが、何かが具体的にはっきり変わったという実感が一向にございません。また、机の上でしか物を考えられない国家の官僚は、計画をつくること自体が目的化している感がございます。
 一方、今回の実行プログラムでは、まず三年間を一区切りとしまして、着実に「十年後の東京」の実現に向けて、東京という現場を抱えた我々ならばこその中身のある実現可能な目標と、その手だてを用意できたと思っております。
 もともと計画というものは、最善を尽くしてつくられたとしても、時間が経過すれば鮮度は失われます。ゆえにも、今回の実行プログラムの実施に当たりまして、折節に施策の実施状況や新たなニーズに目配りし、適切にかじをとっていかなければならないと思っております。
 今後、施策の進捗状況を随時点検しながら、実行プログラムを毎年度改定していきたいと思っております。
 地球温暖化対策推進基金など三つの基金を有効に活用し、計画の実効性を高めるとともに、区市町村を初めとして、都民、企業、地域などと連携を一層強化して、「十年後の東京」で描いた二十一世紀の都市モデルを確実に実現していきたいと思っております。

○野島委員 最後に、新銀行東京についてです。
 新銀行東京は、中小企業支援という都の政策目的に沿った独自の役割を担うことが期待されており、この意味からは、都といかに連携を図っていけるかということが、新銀行東京の存在意義を決定づける上で大きなかぎを握ることになります。
 新銀行東京においては、これまでも都の施策との連携を意識した取り組みが行われてきたと思いますが、今後は、環境や福祉の問題など、都政の重要課題の解決に資するための方策についても、都との間で本格的な連携のあり方を模索すべきだと考えております。
 我が党はそうした視点に立ちながら、都と新銀行東京とが十分な連携を図り、例えば福祉の分野では信託併営の特色を生かした事業展開を新銀行が行えるのではないか、また、環境や中小企業支援に関しても、それぞれ所管の常任委員会で我が党の委員の方から提案をいたしております。ぜひとも、きょうはここでは一々取り上げられませんので、議事録をご一読いただきたい。それらの具体化が、「十年後の東京」に向けての一つの武器にもなるものと、このように考えております。
 こうしたことを踏まえながら、今後、都は、各局間の連携を図りながら、新銀行東京に対して強力に働きかけていただきたいことを申し上げておきます。
 なお、新銀行東京についてと知事の基本姿勢については、引き続き我が党の川井副委員長より関連で質疑を行います。
 私からの総括質疑は以上で終了させていただきます。ありがとうございました。(拍手)

三宅委員長 計測をとめてください。
 ただいま、川井しげお副委員長より関連質疑の申し出がありました。
 本件は、予算特別委員会実施要領第七の規定に基づき、質疑委員の持ち時間の範囲内で認めることになっております。
 川井しげお副委員長の関連質疑を認めます。
 なお、川井副委員長に申し上げます。発言は、野島理事の質疑の持ち時間の範囲内となっておりますので、あらかじめご了承願います。
 計測を始めてください。

○川井委員 私から、新銀行について何点かお聞きをします。
 この新銀行東京の経過を若干述べさせていただきたいと思いますが、平成十五年の知事の選挙のときに公約にされたと。政治家として公約にした以上は、これを具現化する努力をするのが政治家としての務めだろうと、こう思っております。
 その中で、これを東京都の中でということでありましたが、当然、東京都は銀行においては素人でございますから、専門家にゆだねるというところがあるんだろう。その中で、基本スキームをつくるということで、まず最初に金融コンサル、そして後の執行役の方々に基本スキームづくりをお任せをした。そして、東京都としてこれをまず発表し、その次にマスタープランということでありますが、このマスタープランについても、当然、金融に関しては素人の都行政でございますので、当時、税理士協会の方にお任せをし、そしてそこに金融コンサルが加わり、後の執行役、仁司代表を初め六名の後の執行役が加わった。そしてマスタープランをつくられ、そして、でき上がったものを東京都の名のもとに発表したと、こういうことであろうかと思います。そして、十六年第一回定例会でこれを提案されて、我が自民党はこれに賛意を表させていただきました。
 東京都の経済を支える中小零細企業の方々、これを救う。当時の貸し渋り、貸しはがし、まさに厳しいものでありました。中小零細企業に対する融資残高、ピーク時では二百三十兆円あったものが、この銀行設立時には百七十一兆円まで落ち込んでおりました。まさに、あすの生活、あすの運転資金に事足らないという状態であったわけであります。
 一部の報道あるいは一部の方々がこれを誤解されて、銀行ができるころはもう既に中小企業に金が行き渡っているんだと、こういう方々がいらっしゃいますが、日銀の方の発表では、その後現在まで百八十兆から百七十一兆の横ばい状態にあるということは、ピーク時から六十兆円あるいは七十兆円、中小零細企業には金が行き渡っていない。
 同時に、破綻も倒産件数も、この銀行をつくった十七年が、東京都の中で二千三百台であります。翌年十八年には二千四百台、そして、翌年十九年には二千五百件の倒産がこの東京で起きているわけでございます。自殺者の数についても、まさにそうだろう。
 こういう前提の中で、他の金融機関との提携があるのか、あるいは譲渡というものもあるのか、残された方法は三つしかないということの中で、預金保険法による破綻処理なのか清算なのか、そして今回の四百億円の出資ということになるわけでございます。
 私は、どれをとっても大変厳しいと思いますが、この清算あるいは破綻処理というのは、まさしく関係する預金者あるいは中小企業、融資を受けている一万三千、そしてそこに働く八万三千の従業員、家族を含めると十九万人、この方々に大変な迷惑をかける、そういう思いの中から、現実的ではないなと。あるいは、ペイオフが行われるならば、一千万以上預金している一万人近い方々が直接四百七十七億円被害に遭う、こういうことを考えると、この破綻処理、清算、協力銀行の見出せない中での清算、現実的ではない。そうなると、四百億円の追加出資、これを間違いのない再建計画実施という形の中でつくり上げていかなければならない、こう思っております。
 そこで、苦言を呈しながら、一点お聞かせを願います。
 新銀行東京の再建計画に対して、現在新銀行東京から融資を受けておられる多くの事業者の皆さんは、果たして今後も継続して融資が受けられるのかどうか、非常に不安な気持ちを持っております。
 しかし、これまでの審議の中では、赤字・債務超過企業の融資が今後どうなるのかといった点について、新銀行の重要な営業情報であるなどの理由により、明確に示されておりません。
 経営破綻の危機に瀕している銀行が、今後、都からの税による出資を受けて再建を進めようというのに、このまま何も示さないということでは、到底都民の方々は納得をしないでしょう。
 そこで、赤字・債務超過企業のうち、どの層が引き続き融資や保証の対象となるのか、さらに、中小零細企業のための新銀行設立理念に基づく無担保・無保証融資が今後も継続されるのかどうかについて、明確なご答弁をいただきたいと思います。

○佐藤産業労働局長 今般示されました再建計画の目的は、あくまでも資金繰りに窮する中小企業への支援の継続でございます。
 赤字や債務超過である融資先は五千六百三十五社ございますが、現在、経営が健全で正常にご返済いただいている約二千社、それと、業況低迷先ではありますが、審査の上、返済に滞りがなく、返済能力があると判断をされる融資先約二千社については、引き続き融資の対象になるものでございます。
 また、無担保・無保証融資についてでありますが、現行の融資案件はそのまま継続されることになりますが、一般融資といたしまして新たに実行される場合には、再建計画が、これまでの反省を踏まえまして、デフォルト、いわゆる焦げつき発生を極力抑制する、こういう方針でありますことから、原則として、担保保証つきということになります。しかしながら、その場合でも、財務内容やそれまでの返済履歴等を考慮いたしまして、可能な限り無担保融資にも対応することとしております。

○川井委員 赤字や債務超過先五千六百三十五社のうち、正常返済先二千社と、業務低迷先の一部である二千社については引き続きお取引をいただけるということ、さらに、無担保融資についても、財務内容などに応じて継続されるということが明らかになったわけであります。
 しかし、一方では、都議会議員の一部や報道などにおいて、できるだけ早期に撤退すべきであるなどといった無責任な声もあるようであります。
 三月二十一日付の読売新聞によれば、金融機能強化法が三月末で期限切れとなり、これによって、政府が金融機関の経営を支援する安全網は、大規模破綻に対応する預金保険法だけになってしまうことが指摘されています。また、金融業界からは、今ペイオフが起きたら、どんなに小さな金融機関でも、金融市場の混乱に拍車をかけるだろうとの懸念の声が聞かれるとの紹介もありました。
 こうした状況の中で、新銀行東京が事業継続を断念するようなことにでもなれば、地域金融業界を中心に大きく金融不安を起こしかねなく、大変なことになってしまいます。
 ところで、金融庁自身は新銀行東京についてどのような見解を持っているんでしょうか、わかる範囲でお答えをいただきたいと思います。

○佐藤産業労働局長 一般論といたしまして、金融庁は、個別銀行についてコメントはしないということになっておりますが、渡辺内閣府特命担当大臣は、さきの三月十一日の閣議後記者会見におきまして、新銀行東京に関して、今現在、一万三千先に融資があって、これらが全部デフォルトするわけではないわけです、そういたしますと、きちんとお客さんに対して銀行としての責務を果たすことは大事なことなのではないでしょうかと述べております。

○川井委員 大臣の発言は至極真っ当なものであろうと思います。預金者や、融資先であるお客様に迷惑をかけるわけにはいきません。
 東京都は、新銀行東京が発行する株の八四%を保有する大株主です。銀行の議決権の五〇%以上を保有する、いわゆる支配株主については、当該銀行の業務の健全性を確保するための責務があると思いますが、銀行法上、この点についてどのように規定されているのか、お伺いをいたします。

○佐藤産業労働局長 若干長くなりますが、銀行法の規定を紹介させていただきます。
 銀行法では、内閣総理大臣は、銀行主要株主の業務または財産の状況に照らして、当該銀行の業務の健全かつ適切な運営を確保するため特に必要があると認めるときは、その必要の限度において、当該銀行株主に対し、措置を講ずべき事項及び期限を示して、当該銀行の健全性を確保するための改善計画の提出を求め、もしくは提出された改善計画の変更を命じ、またはその必要の限度において監督上必要な措置を命ずることができると、同法五十二条の十四で規定されております。具体的な措置といたしましては、銀行の自己資本に問題が生じるおそれがある場合には、当該銀行の資本増強のための経営計画の策定やその実施への協力、資金援助などを行うことなどが想定されております。
 これは、銀行の過半数の議決権を有する銀行主要株主、いわゆる支配株主については、銀行経営の健全性を確保するための方策の実行が求められるものと解されるものであります。なお、地方公共団体は、銀行法上の主要株主としての位置づけから、同法の五十二条の二または五十二条の九で除かれております。

○川井委員 地方公共団体は、ただいまご説明のあった主要株主の位置づけから除かれているということでありますが、それは、民間株主とは異なり、自主的な取り組みが当然期待できるとの前提があるからだと思います。
 都は事実上の支配株主であり、新銀行東京の再建に向けて、その役割を果たすことが求められていると思います。中小企業支援という新銀行東京の設立目的をにらみつつ、都と新銀行東京が十分な連携を図っていくために、都は監視責任だけではなく、各局が経営参加するような気持ちで新銀行との連携を深めていく必要があります。
 都の政策課題の解決に向けた新銀行との連携がうまく進めば、都内の中小零細企業が、十年後の東京をつくり上げるための中心的な役割を果たせるようなことも夢ではないかと思っております。
 すなわち、新銀行東京が信託併営であるという利点を生かしつつ、我が党が今回各常任委員会で提案している、例えばCO2の削減を企業、団体等に義務づけた場合、大企業はこれにたえ得ることができる、こたえることができるでしょうけれども、中小零細企業は、なかなかこれはたえることができない、あるいはそれにこたえることができない。そこのところを、この銀行が信託銀行としての価値を生かしてお手伝いをする方法もあるんだろうと、こう思っています。
 都の政策課題の実現に向けて、この銀行をいかに利用できるのかということについて、各局がそれぞれの立場から努力すべきであります。また、環境や福祉、教育など、都庁を挙げてこの課題に積極的に取り組むために、これまでと違った形で都の関与が必要になってくるだろうと思います。新銀行東京との連携について、横断的な取り組みができる組織、体制が必要であり、また、経営監視の面で、外部の専門家など活用を図るなど、体制整備についてもさまざまな角度から努力する必要があると思います。
 今後の都と新銀行東京とのかかわり方について、見解をお伺いいたします。

○佐藤産業労働局長 新銀行東京は、所有と経営の分離という原則はありますが、都の政策遂行に寄与する役割が期待された銀行でもあります。
 新銀行東京は、これまで、既存の金融機関では支援が難しい、赤字や債務超過企業に対しても支援を行うなど、中小企業を支える銀行として独自の役割を果たしてきたと思っております。
 今議会を通じ、また、ただいまも、都と新銀行東京との連携や経営監視について数々の貴重なご提言をいただいております。今後、新銀行東京が都政の今日的課題の解決に寄与すべく一層果敢に挑戦することによりまして、その存在感を高め、都民の信頼を確たるものとすることができると考えます。
 再建計画では、都及び関係団体との連携を今まで以上に図ることで、中小企業にとってより効果的なサービスを供給することとしております。都といたしましては、中小企業への資金供給とともに、都の政策課題への貢献を同時に進めていくという発想に立って、新銀行東京との連携を検討していく必要があるというふうに考えております。
 また、経営監視につきましては、銀行法上の制約があったわけでありますが、結果としてこのような経営状態に至ったことにかんがみますと、都としての監視が必ずしも十分とはいえなかった、このことから、今後、より専門性を高めた監視の強化や支援強化を図るための組織整備について積極的に検討してまいります。

○川井委員 全国信用保証協会連合会が肩がわりする代位弁済額は、五年ぶりに実は増加する見込みとのことであり、中小企業をめぐる状況は厳しさを増しております。
 先日の本委員会の審議の中で、新銀行東京に対して追加出資をしなかった場合の、平成二十年度末自己資本比率の見込みが四%を下回るということが明らかにされました。今この時期に追加出資をしなければ事業継続が困難であるという厳しい現実を目の当たりにした以上、都としては、今回の新銀行東京からの追加出資の要請には的確にこたえていくべきだと考えます。
 知事にとっては、新銀行の設立に当たって出資した一千億円に加え、さらに四百億円の追加負担を都民に求めることは、まさしく苦渋の選択であるとともに、都民に対して重い責任を感じていることでありましょう。平成十六年第一回定例会において、新銀行設立に賛意を表した我が都議会自民党としても、まさに知事と同じ責任を持たなければならないと思います。
 我々が出資に賛意をあらわすとしても、当然、この上さらなる追加出資は決して許されるものではありません。追加出資する四百億についても毀損することのないよう、決死の覚悟で都も新銀行も再建に臨んでもらいたいと思うわけであります。
 こうした我が党の強い思いを踏まえた上で、知事、新銀行東京の再建に向けた決意をお伺いいたします。

○石原知事 今議会においての質疑の中で、今回の追加出資については、私としても苦渋の選択でありましたことを再三申し述べてまいりました。新銀行東京の設立の発案者としては、私の責任についても十分重く意識しております。
 しかし、新銀行の経営が行き詰まった場合に、清算にしろ破綻にしろ、結果、大きな大きな大きな混乱が生じます。その支援を頼りに、銀行の支援を頼りにして懸命に努力している既存の融資先一万三千社や、その取引先、従業員、家族などの関係者に重大な影響を及ぼしかねます。
 今回の追加出資を行うことによって、都は引き続き中小企業の支援という政策目的を遂行することが可能になります。困難な道ではありますが、今ここで投げ出すわけにはいかないんです。是が非でも立て直し、都民のお役に立つ銀行とすることが私の最大の責任と思っております。
 新銀行東京の再建に失敗することは絶対にできません。都との連携を初め、とり得るすべての手段を講じることにより、不退転の決意で、この銀行を必ず再建させてまいります。
 残された選択肢の中では、追加出資による新銀行東京の再建が、最も都民の負担の少ない方法であると思っております。四百億円の税の投入は極めて重いものでありますが、ぜひともぜひとも都民の皆様にご理解をいただきたいと思います。
 中小企業を救うために設立したこの銀行が、結果的にこのような状態になった。これはもう都民の皆様に心配をおかけしましたことは大変申しわけなく、深くおわびを申し上げます。ゆえにも、ご理解いただきまして、都全体のために、この銀行の存続、再建にお力添えをいただきたいと思います。

○川井委員 都民に対する知事の思い、中小企業支援と新銀行に対する知事の思いは理解いたしました。知事がそこまで責任を重く受けとめておられる姿を見たとき、我々も、新銀行再建に向けてしっかりとその責任を果たし、知恵も出していく覚悟であります。
 新銀行東京の設立理念どおり、中小企業の方々のために、そして、都民のために、力を、知事、合わせていこうではありませんか。都民の皆様にも必ずご理解をいただけるものと考えております。
 さて、今回の予算特別委員会は、同時補正予算案、新銀行東京に対する四百億円の追加出資はもとより、本予算案として、一般会計六兆八千五百六十億円、全会計合計十三兆円を超える、まさに都民の生活予算を審議する東京都の予算特別委員会であります。それゆえ、あえて最後に、都政全般を見渡す視点から、一言申し上げます。
 首都東京が、その総力を挙げて数々の難局を乗り越え、地球温暖化対策から都民生活の安全・安心に至るまで、「十年後の東京」に挙げる目標を実現していくこと、日本の再生に向けて確かな展望を開くことにほかなりません。
 都は、「十年後の東京」への実行プログラム二〇〇八の計画期間である三年間の最初の第一歩を踏み出すわけであります。新たなステージの第一歩であります。今後、東京が展開する先進的な取り組み、今後の都政運営について、知事のご決意をお聞かせ願います。

○石原知事 就任以来、議会の賛同を得まして、私からの発案あるいは周りからの発案、いずれにしろ、東京から日本を変えようということで幾つか新しい試みをやってまいりましたし、多くのものが成功したと思います、この新銀行を除いては。
 しかし、私たち、ここで足踏みするわけにいきませんので、非常に厄介な時代が到来していると思います。世界の経済情勢を見ましても、特に弱い立場にあります中小企業にとっては、これから恐らく厳しい、冷たい風が吹いてくる時代がまたやってきたと思います。そういう中で、片っ方では、人間の存在そのものを左右しかねない環境問題が到来しています。
 そういうことで、そういうものを踏まえながら、私たち、これを克服する努力を、東京が先頭を切ってこの日本の中でやっていきたいと思っております。

○川井委員 知事、知事は前回の知事選前と知事選後で政治姿勢が変わったでしょうか。私は、知事の政治姿勢、スタンス、ポリシー、まさにその政治姿勢は変わっていないと思うわけでありますが、昨年十九年度予算、組みかえもなく、単に知事の政治姿勢を問題にして反対した、そして東北の自治体の首長をおやめになった方を推し立てて知事選を戦い、今回も八ッ場ダム、豊洲の市場、問題提起をし、さらに、新銀行については、追加出資についても、知事のトップダウンのもとにつくられた新銀行と位置づけ、その責任追及をしてきた会派が、まさか公党として二十年度予算に賛成はしないだろう、こう思うわけであります。知事、それとも、それとも、知事の政治姿勢が変わったんでしょうか、お伺いをさせていただきます。

○石原知事 一切変わっておりませんし、これからも変わりません。

○三宅委員長 野島善司理事及び川井しげお副委員長の発言は終わりました。(拍手)
 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後三時十六分休憩

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