東京都議会予算特別委員会速記録第五号

○大沢副委員長 遠藤守委員の発言を許します。
   〔大沢副委員長退席、小磯副委員長着席〕

○遠藤委員 夜も更けてまいりました。お疲れだと思いますが、テンポのいい質問を心がけますので、理事者の皆さんもどうぞよろしくお願いを申し上げます。
 ことしの都立高校の入試がほぼ終わりました。都立回帰の見出しも踊るなど、都立高校出身の私としても大変うれしい限りでございます。しかしながら、これからチャレンジをされる受験生もいらっしゃると思います。ぜひ最後まで頑張っていただきたいとエールを送らせていただきます。
 都立学校のICT整備について、まずお伺いいたします。
 ICと聞くと、もうだめだと、こうおっしゃられる方もいらっしゃいますので、ICT、すなわちインフォメーション・コミュニケーション・テクノロジー、日本語で訳すとほぼインターネットをベースとした情報伝達、または情報交換技術、このように訳せるかと思います。
 この問題につきまして、私は昨年一定の一般質問で、東京都の公立学校のICT環境は全国最低であって、知事の所信に反することを指摘し、早急な対応を迫りました。この際、中村教育長からは、今後の導入計画については庁内の検討委員会において総合的に検討して早急に考え方をまとめる、このようなご答弁がございました。この答弁どおり、早速来年度から新しい事業として、しかも「十年後の東京」にも盛り込まれた、都立学校ICT計画事業として結実をいたしました。この点、高く評価をしたいと思います。
 なお、この事業がこれほどまでに早く着手できた背景には、この私の質問の直後に、石原知事みずから教育庁に対して、しっかりやろうじゃないかと、このように強力に後押しをされたやにお伺いいたしました。石原知事の英断にも心より敬意を表したいと思うわけでございます。私のもとにも現場から続々と喜びの声が届いておることをご報告させていただきたいと思います。
 ところで、都立学校ICT計画事業は、来年度で十一億円が計上をされておりますが、この事業の概要と見込まれる効果について、まずお伺いいたしたいと思います。

○中村教育長 都教育委員会は、平成二十年度から二カ年で、都立学校におきます校内LAN整備率を一〇〇%にするとともに、生徒三・九人に一台のコンピューター端末を配置してまいります。このことによりまして、ネットワークを生かして、どの教室でも教材を掲示することができるようにし、児童生徒の学習意欲を高め、理解力の向上や情報活用能力の育成を図ってまいります。
 さらに、平成二十一年度に教員一人に一台のTAIMS端末を配備しまして、教材作成や校務処理の効率化、高機能化を図ることによりまして、児童生徒と向き合う時間や教材研究などの時間をより一層確保するとともに、精度の高い分析データに基づく、生徒一人一人に応じたきめ細かな指導を実現してまいります。

○遠藤委員 以前にも指摘いたしましたとおり、都立の砂川高校を初めとしたIT推進校などで作成してきました学習用コンテンツ、これは電子教材とでも訳すんでしょうか、これが一校だけでしか使えないというのは、このICTを活用した教育環境としては十分でないと思います。
 そこで、このようなIT推進校が先駆的に作成いたしましたこうした電子教材を他の都立学校や、または区市町村等でも使えるようにすべきと考えます。見解をお伺いいたします。

○中村教育長 IT推進校などで作成されました教材を含めまして、すぐれた学習コンテンツを都教育委員会として一元的に蓄積いたしまして、全都立学校からいつでもアクセスして授業に活用できるようにいたします。
 また、区市町村の小中学校からもアクセスが可能となるようにいたします。

○遠藤委員 同じ一般質問で、この計画策定に当たっては、ぜひ学校現場の声を最重視してもらいたいと、このように強く訴えました。
 特にICT、こうした機器が整備されると、日常的に発生してくるのが、この機材の保守点検作業でございます。こうした作業が現場への過度なしわ寄せになっている、こういう指摘もございました。ぜひこうした点に配慮してほしいと、このように私自身、注文させていただきました。
 そこで、こうした提案が今回の事業計画の中でどう生かされたのか、お答えいただきたいと思います。

○中村教育長 都教育委員会では、教育庁や都立学校の関係者などで構成いたしますIT環境整備委員会におきまして、IT推進校を初めといたしました都立学校五校の実態調査を行いました。現場の情報科教員等からの意見、要望などをICT計画事業に反映させてまいりました。
 具体的には、全都立学校を結ぶネットワーク化への設計や学習コンテンツの管理のあり方などの面で意見を取り入れることといたしました。
 前回ご指摘のありました教員の負担軽減につきましては、ICT機器の運用管理を外部委託といたしまして、設定方法などの疑問に答える体制を整備することといたしました。
 また、すべての教員に操作マニュアルや操作学習ソフトを配布するなどいたしまして、ICT機器が学校で円滑に利用されるよう対応を図っております。

○遠藤委員 昨年十一月の総務委員会におきまして、都職員の情報セキュリティー対策の強化を訴えました。今回のICT計画には、この情報漏えいの起きない環境を整備していくと、こういう観点も盛り込まれているようでございます。
 学校数が多いということもありますけれども、都立学校では近年、この個人情報の紛失という事故が後を絶たず、本年度だけでも既に九件発生をいたしております。
 理由はさまざまあろうかと思います。学校の先生は、日中は授業や、または生徒指導に追われておりまして、しかも校務用のパソコンも一人に一台与えられていない、供与されていない。このために、どうしても自宅に帰って作業するという、こうしたことが行われている。結果的に、事故がふえている、この一因になろうかと思います。今後ICTがさらに進めば、大量の情報が流出するという、こうした危険性もぬぐえないと思います。
 そこで、これまでの事故防止対策の取り組み、そして今回新たな計画を踏まえて、今後一切事故が起こらない対応を期すべきであろうと思います。見解をお伺いいたします。

○中村教育長 昨年末に、都立学校におきます個人情報の安全管理に関するモデル基準を策定いたしまして、個人情報管理体制確立のための手順を示しました。個人情報の学校外への持ち出しを原則禁止といたしまして、限定的に持ち出す場合にも、校長の個別許可と電子媒体等へのパスワードの設定を義務づけるなど、詳細なルールづくりを行いました。
 都立学校のICT計画事業におきましては、校務で個人情報を扱う場合には、すべてセキュリティーの高いTAIMS端末を利用することといたしまして、学校内における私物のパソコンや電子媒体の使用を全面的に禁止いたします。重要度の高い個人情報につきましてはアクセス制限を設けるなど、個人情報保護の徹底を図ってまいります。

○遠藤委員 これまでルールがないに等しい状態にあった都立学校の個人情報保護について、規定を明確にされたということは評価いたしたいと思います。個人情報保護の観点からも、このICT計画事業を早急かつ着実に進めていただきたいことを重ねてお願いをいたしまして、この項の質問を終わらせていただきます。
 次いで、がん教育についてお伺いをいたします。
 日本は、二人に一人ががんになる、世界一の、がん大国であります。今、お隣の顔をお見詰めくださいませ。その方ないし自分どちらかが将来がんになる可能性が大いに高い、こういう統計でございます。
 患者・家族はもちろんのこと、私は一歩進んで、若い世代ががんに関心を持って、正確な知識を得ていくことというのが、大変今後必要になろうかと思います。
 私ごとで大変恐縮ですけれども、一昨年、私も父をがんで亡くしました。その際、実感をいたしたことは、がんになってからでは、平常心で対策を立てるというのはなかなか難しいということでございます。いいかえれば、前もって敵を知っておく、このことが本当に大事だということを痛感いたしました。
 都はこのたび、がん対策推進計画を策定中で、間もなくその最終案が固まる段階と聞いております。がん予防に向けては、幼いころ、子どものときから健康的な生活習慣を身につけるという観点が私は非常に大事だと思います。福祉保健局長の見解をまず求めたいと思います。

○安藤福祉保健局長 がんを予防する上で、子どものころからの健康的な生活習慣の形成が大切でございます。
 このため、現在策定中の東京都がん対策推進計画におきまして、バランスのとれた食生活や喫煙による健康影響防止等に関しまして、普及啓発や環境づくりに取り組むことといたしております。
 具体的には、都の作成いたしました、幼児向け食事バランスガイド等を活用いたしまして、幼稚園や保育所等におきまして適切な食育が行われるよう働きかけてまいります。
 また、家庭や学校、地域などにおいて、子どもの喫煙防止教育に取り組めるよう、新たにリーフレットを作成するなど、未成年者の喫煙防止対策に取り組んでまいります。

○遠藤委員 では、続きまして、これまで、学校でのがんの予防に関する指導について、どう行われてきたか。そして今回の計画策定を受けて、教育庁としてもより積極的な取り組みが必要かと考えます。それぞれ見解をお伺いいたします。

○中村教育長 学校におきましては、健康的な生活の維持増進と生活習慣病の予防を学習することが大切であることから、小学校の段階から、喫煙による健康被害や薬物乱用の防止などと関連させまして、がんの予防と健康的な生活について指導しております。
 今回の計画策定を踏まえまして、都教育委員会は、区市町村教育委員会と連携を図りまして、食育に関する既存の資料や、東京都がん対策推進計画に基づいて新たに作成されます喫煙防止のリーフレット等、補助教材を有効に活用し、児童生徒が健康的な生活習慣を確立していくことができるよう、学校を指導してまいります。

○遠藤委員 ところで、日本のがん放射線医療の第一人者であり、都のがん対策推進協議会のメンバーでもあります東大病院放射線科の中川准教授が母校の高校で行いました特別授業がNHKテレビで放送されるなど、大変大きな反響を呼びました。
 また、ある新聞の投書欄にも、命考えるがん教育広がれ、と題した投稿がございました。そこには、若い時期に、第一線で活躍をする専門医から説得力のある話を聞けるのは大変すばらしいし、命の大切さや適切ながん治療の重要性を実感できたことでありましょう、こうつづられておりました。私も全く同感でございます。
 都として、将来、都立学校でこうした授業の実施を視野に入れて、まずは教職員を対象に、がんに関する正確な知識を得るための研修を実施すべきと考えます。所見をお伺いいたします。

○中村教育長 都教育委員会は、健康教育に関する専門研修におきまして、がんを初めとする生活習慣病の予防に関します国や都の新たな施策について、教員の理解を深めるとともに、指導内容、方法等の改善についても取り上げ、教員の指導力を高め、児童生徒の健康教育の充実に努めてまいります。

○遠藤委員 今回の質問に当たりまして、都のがん対策推進計画最終案を詳細に読ませていただきました。
 本計画は、十年後のがん死亡率の減少を目指して、来年度からの五年間の取り組みを定めたものでありますが、それにしても学校教育の現場での展開が少ないという感じがいたしました。将来を見据えて、都内で死亡率の高い大腸がんであるとか、さらには乳がんなどについて、児童や生徒の発達段階に応じた、よりきめ細やかな指導も必要だと思います。
 ただ、一口に学校教育といいましても、教育委員会がカバーするフィールドは小学校から高校まで実に幅広く、私立学校も含めれば、この計画の推進に当たっては、生活文化スポーツ局、さらに所管でございます福祉保健局など、密接に連携をとりながら取り組んでいくことが非常に重要だろうと思います。こうした点、強く要望いたしまして、次の質問に入らせていただきます。
 一昨日の質疑で、三原委員から、テレビやまたは舞台、ここで使われた脚本を保存することが非常に重要であるというご指摘がございました。猪瀬副知事との間でも極めて興味深い議論が展開されて、私も熱心に聞かせていただきました。
 私は、現在都が指定をしております文化財の保存、そして活用について、次に質問をさせていただきます。
 「十年後の東京」におきましては、東京には江戸開府四百年来の伝統に根差した独自の文化が存在をしていて、その文化資源を次世代に継承していく重要性が記されております。また、観光振興、そしてオリンピック招致、こうしたものを進める上で、東京の魅力を語り、その上で文化財の存在は欠かせないわけでございます。
 ご案内のとおり、先月、ソウル南大門が焼け落ちました。六百年もの伝統を誇る韓国第一号の国宝でございます。嘆き悲しむソウル市民の絵がテレビで連日報道されていたことを、皆様記憶にあろうかと思います。東京の友好都市での事件、事故でございます。まず心からお見舞い申し上げたいと思います。
 また、ほぼ同時期に、国の中央防災会議が、中部・近畿地方の直下型地震による被害想定を発表いたしまして、現状のままでは多くの国宝等が被害を受けることがここに書かれておりました。
 南大門焼失の例、そしてこの国の被害想定を見るにつけ、都内にある都指定の文化財においても、その活用はおろか、同様の危機にさらされている、こういう問題認識から、以下何点か質問をさせていただきます。
 前後しますが、そもそも東京都文化財保護条例によりますと、都の文化財は、我が国にとって歴史上または芸術上価値の高いものと定義をされております。決して東京だけの財産ではないと、こういうわけでございます。
 これまでに、有形の文化財、形ある文化財は、建造物、絵画、工芸品、古文書など三百二十五点が現在までにこの指定をされ、うち建造物は、旧前田公爵邸洋館、旧日比谷公園事務所、旧朝香宮邸など、現在までに五十九件が指定を受けております。これらの文化財の保存、活用につきましては、文化庁が出しております重要文化財保存活用計画策定指針、これに基づきまして、その所有者が個々の保存活用計画をつくる、こういう仕組みになっております。
 そこでまず、この五十九件の建造物のうち何件がこの保存活用計画を定めているか、それぞれの所有者を含めてお答えください。

○中村教育長 都指定有形文化財、建造物でございますけれども、ご指摘の全五十九件のうち、保存活用計画を定めているのは、残念ながらわずか二件でございます。
 具体的には、東京都建設局が所管いたします旧日比谷公園事務所及び財団法人和敬塾が所有いたします旧細川侯爵邸でございます。
 二件にとどまっている理由でございますけれども、計画策定は、ご指摘のように所有者の判断によるもので、強制ができません。策定するためには、専門家の助言や費用負担が必要となること、また、文化財は、年月を経る中で危機を乗り越え、修理を重ねながら伝わってきたものでございまして、さまざまな部位にわたって意匠的、歴史的な価値が認められているために、一律的な基準に基づいて保存活用計画を策定することが非常に難しいという事情でございます。

○遠藤委員 答弁をお聞きのとおり、たった二件しか策定されていない、こういう結果でございます。しかも、都が所有者となっているのは、五件、建造物ございますけれども、この計画を策定済みなのは、そのうちの一件という実態でございます。私は、何もこの計画を策定することが直ちに保存計画の推進、進展につながると短絡的に申し上げているわけでは決してございません。しかし、この二件という数字を見る限りにおいては、極めて都の文化財の置かれている状況は無防備であると、こう批判されても反論のしようがない、私はこのように思います。
 ところで、消防総監、現在の文化財の防火対策はどうなっていますでしょうか。

○小林消防総監 文化財は、消防法に基づき、消火器具、自動火災報知設備、漏電火災警報器などの消防用設備等を設置するとともに、防火管理者を選任して、消防計画を作成することが義務づけられているほか、火災予防条例に基づき、喫煙や裸火が制限されております。
 東京消防庁では、こうした消防用設備等の維持管理などを確認するため、消防法に基づく立入検査を実施しております。また、定期的に防災訓練の指導を実施しており、毎年、文化財防火デーに合わせまして、消防演習を行うなど、関係者の防災意識の高揚を図っております。

○遠藤委員 火災に対しては計画の有無にかかわらず、強制力をもって消防庁が指導している、こういう趣旨のご答弁であったと思います。
 話を戻します。計画策定が、さきに答弁があったとおり、五十九件中二件と低調な理由は、私は大きく二つあろうかと思います。
 第一は、先ほど紹介いたしました、この文化庁が定めました指針、極めて詳細かつ緻密な計画づくりを求めております。その内容も、例えば防災計画をつくるだとか、保存管理計画をつくれだとか、環境保全計画をつくれだとか、最後に活用計画をつくれだとか、一つ一つ細かく幾つも分類されているわけでございます。
 思うに、たとえこのような緻密な計画が仮に必要であったとしても、それをすべて完璧につくり上げることを求めていては、よほど組織がしっかりしているところでもない限り、とても無理な話であろうと思います。現に五十九件中二件しか策定計画をつくっていない、この数字が雄弁に物語っております。
 そこで提案がございます。都教育委員会として、文化庁のこの指針を踏まえながらも、都の文化財の保存、そして、活用に最低限必要な事項に特化したいわば東京モデル、こういったものをつくった上で、計画策定を加速させるべきではないでしょうか。見解をお伺いいたします。

○中村教育長 委員ご指摘のとおり、国の今定めております重要文化財(建造物)保存活用計画策定指針、非常に細こうございまして、とはいえ、文化庁が専門家の意見を聞いて取りまとめたものでございまして、文化財を保存するためには必要な配慮事項を網羅しているというふうには考えております。
 都教育委員会は、この指針を通して文化財に適用しておりますが、ご提案の趣旨を踏まえまして、国の定める計画の内容すべてではなく、まずはその一部である保存管理計画と防災計画のみを策定するなど、簡略化した文化財保存活用計画の策定も可能なものにしていくということで対応してまいりたいと考えております。

○遠藤委員 ご明言をいただきました。東京モデルをつくった上で、簡素化にして策定計画を進めると、こう答弁であろうかと思います。
 文化財の保存活用計画が進まないもう一つの理由、それはやはり都の姿勢にあるといわざるを得ないと思います。先ほど述べましたとおり、確かに文化庁の指針では、保存活用計画の策定は文化財の所有者が第一の責任を担う、このようになっております。しかし、その一方で、都の条例には、文化財の保存活用に関する都や教育委員会の責務が明確に書かれているわけでございます。決して後見人的、二次的であってはならない、私はこのように思います。
 教育長は、冒頭の私の質問に対して、活用計画の策定が進まない理由、さまざまエクスキューズされていましたけれども、であればこそ、私はなおさら教育庁がふなれな所有者をバックアップして、貴重な歴史、遺産を後世に伝えていくべきだと思います。市区町村教育委員会との連携を含めて、改めて教育長の見解をお伺いしたいと思います。

○中村教育長 都教育委員会は、これまでもさまざまな機会をとらえまして、区市町村教育委員会と連携をとりながら、所有者に対しまして計画策定を促してまいりました。しかし、ご指摘のとおり、わずか二件しかないという実態にございます。
 先般の中央防災会議による被害想定の発表などの動きにもかんがみまして、今後はより一層区市町村教育委員会とも連携しまして、各所有者に策定を呼びかけてまいります。

○遠藤委員 次いで、予算に関連して伺いたいと思います。
 都はこうした文化財の保存、活用などのために原則二分の一の補助金を出しております。教育庁にこの文化財保存事業費の予算額を尋ねましたところ、十八年度は総額二億七千万、十九年度は約三億、そして、現在審議中の二十年度予算では四億七千万ということで増加いたしております。この点は評価したいと思います。
 しかしながら、今後ともこうした補助金制度には高いニーズがあると予想されます。さらに、同時にまた、この文化財の保存、活用等に当たる学芸員にも質の高い仕事をしてもらわなければならないわけでございます。文化財の保存活用行政を進めていくために、今後さらに財政、人員双方からしっかりとした体制を確立すべきであると考えます。教育長の見解をお伺いいたします。

○中村教育長 文化財につきましては、その維持保存のために緊急の補修等が必要なものも多く、都教育委員会といたしましても、ご指摘のように、必要な予算の確保に努めてきたところでございます。
 また、職員の体制につきましては、これまでも専門職員である学芸員と一般行政職員の連携によりまして文化財保護行政を進めてまいりました。来年度からは非常勤学芸員制度を導入することといたしまして、経験豊富な即戦力の人材を採用することで、多様な専門性を確保し、文化財保護に向けた体制を整備する予定でございます。
 今後も文化財保護行政を適切に進めてまいります。

○遠藤委員 非常にタイムリーにも、先日、石原知事は、テレビ収録の会場といたしまして、この都の文化財の指定を受けております旧前田公爵邸洋館を利用されたということでお伺いいたしました。知事は、その際、今後の都の文化財の保存、そして活用について熱い思いを語っておられたと、このようにお伺いをいたしました。
 最後に、石原知事に、今後の都文化財の保存活用に関する所見、そして、決意をお伺いいたしまして、この項の質問を終えたいと思います。

○石原知事 東京には内外の多くの文化財がございます。文化財は、歴史、文化の正しい理解のために欠かすことのできないものでありまして、かつ将来の文化の向上、発展の基礎を成すものであると思っております。
 したがって、文化財は貴重な公共の財産であることを自覚し、これを大切に保存するとともに、できるだけ公開するなど、その文化的な活用に努めなきゃならぬと思いますが、この保存に関してはほとんどのものが野ざらしに近くて、寒心にたえません。
 かつては、幸田露伴の有名な小説の「五重塔」のモデルになりました谷中の五重塔が一晩に消滅しました。先般ある新聞に、東京にあります有名な作家による彫刻を洗って、寄附しているボランティアの報道がありましたが、大変結構なことだと思います。ご指摘の文化庁の、細々、官僚のつくった規則というのは本当に有名無実なもので、国のやることは大体そんなものだと思いますが、例えば話は飛びますけれども、小笠原の南島のようなすばらしい自然をほったらかしにして、仕方なしに東京がレンジャー制度であそこを制限しましたら、そのオープニングにぬけぬけと農林省の役人がやってきて、一枚加わるというばかな現象がありましたが。
 とにかく都は都で、都の抱えている国有財産でもある重要文化財も含めまして、都の責任でやはりこれを維持し、保存していく努力を十全にしなくてはならぬのです。そのゆえにも、ご指摘ありました都独自のもうちょっと簡略な、効果的な、最低限の保存を担保できる、そういう規則というものをつくるべきだと思っております。
 またこれを、東京の文化財も一つのセールスポイントとしてこれからも喧伝していきたいと思っております。

○遠藤委員 ぜひよろしくお願いいたします。
 次いで、都有地の活用についてお伺いいたします。
 私の地元には、交通局の馬込車両工場跡地がございます。既にこの建物は取り壊され、土地の造成も進められております。この様子を見て、私は地域を回っていますと、跡地の活用は一体どうなるんだ、こういった声をよく耳にいたします。また、別の方は、交通局だけじゃなくて、より大きな概念で都は利活用を考えているらしい、こういう声も聞かれます。さらに、先行まちづくり云々、こういった声も聞こえてきます。
 そこで、まず、この先行まちづくりプロジェクトの内容とこれまでの実績についてお答えください。

○大原知事本局長 先行まちづくりプロジェクトでございますが、これは都営住宅の建てかえなどにより、新たに利用が可能となる都有地を活用いたしまして、都が地域ごとの課題に対応したまちづくりの目標を設定いたしまして、民間プロジェクトを誘導していくものでございます。
 行政分野の縦割りを超えまして、横断的、総合的に取り組むことで、環境、産業、文化など、多様な視点に立ったまちづくりを進めております。
 現在までに四地区を指定しておりまして、例えば昨年指定いたしました上目黒一丁目地区では、地域の特徴を生かした美しいまちの形成や、周辺地域がはぐくんでまいりました魅力ある文化の継承、発展などをまちづくりの誘導目標に掲げまして、「十年後の東京」の実現に向けた先導的な取り組みを実施しているところでございます。

○遠藤委員 都有地は貴重な財産であり、有効に活用すべきことは当然でございます。今の答弁にもあるように、周辺地域との調和もその上で極めて重要であります。その意味からも、地元のニーズを十分に掌握し、活用の方向性を速やかに示すことが何よりも必要かと思います。
 そこで、跡地活用に向けた基本的な考え方、そして、今後の具体的なスケジュールについて、まとめてお答えいただきたいと思います。

○島田交通局長 馬込車両工場跡地の活用に向けた基本的な考え方でございますが、跡地の活用に当たりましては、地域の活性化や環境への配慮など、地域のまちづくりに寄与することが大切であると認識しております。また、独立採算を原則といたします公営企業の立場からして、厳しい経営環境などを踏まえ、収入を確保し、局の経営基盤の強化に資することもまた重要でございます。
 こうした考え方のもとに、地元区の意見も参考にしながら、総合的に検討し、有効活用を図ってまいります。
 次に、お尋ねの具体的なスケジュールでございますが、現在行われております跡地の整地工事は三月中に完了する予定でございます。今後は、資産を有効に活用するため、事業の実施方針を策定の上、平成二十年度の早期に事業参加者の公募を開始する予定でございます。

○遠藤委員 馬込地区は、大正末期から昭和初期を中心に多くの作家、そして芸術家が住んでいたことから、いつごろからか、この一帯、馬込文士村と呼ばれるようになりました。いわば文化学術の一大拠点でございました。そして、現在も多くの文学ファンが全国からこの地を訪れているそうでございます。
 また、同地域は、大田区内でも公園や畑、屋敷林など、比較的緑が多い地域、そして、住宅街でございます。今、知事本局長から答弁のございました先行プロジェクトの指定を含めて、ぜひともこうした馬込地域が持つ歴史的、または地域的な特性を踏まえた先導的な活用策を早急に提示していただきたいことを要望し、この項の質問を終わらせていただきます。
 最後に、伊豆諸島の振興についてお伺いいたします。
 日がかわりましたので、一昨日、八丈のフリージア娘の方が、香りいっぱいのフリージアを携えて、控室にごあいさつにお越しをいただきました。観光アピールのためでございます。
 伊豆諸島の島々、基幹産業は観光ではございますが、もう一つ、すなわち漁業でございます。ことし一月末、伊豆諸島の神津島を、今委員長席にいらっしゃいます小磯議員ともども訪問してまいりました。漁業関係者の方々と意見交換を行いました。原油高に端を発した漁船の燃料費の高騰等、漁業を取り巻く非常に厳しい状況について、さまざまご意見、ご要望をお伺いしてきました。そんな中で、サメ等による漁業被害が今なお深刻であるというお話を聞きました。
 現在、この伊豆諸島におきましては、キンメダイやトビウオ漁が行われておりますけれども、これらの漁場には時折サメが出没するようでございまして、せっかくかかった魚がサメに食べられてしまったり、または大切な漁具をこっぱみじんに破壊してしまう、こういう被害が出ているそうであります。さらに、サメがあらわれた漁場では、魚がいなくなって、数日間操業ができない、こうした事態があるようでございます。
 幸い、人には危害を加えないようでございますけれども、サメによる漁業被害は、都の推定によると伊豆諸島全体で年間一億六千万に上っているということでございます。また、今回、話を聞いて正直驚いたのは、こうした被害は、サメに加えて、イルカによるものもあるそうでございます。今後この対策について都の見解をお伺いいたして、質問を終わります。

○佐藤産業労働局長 サメによる漁業被害に対しましては、平成十七年度から漁業協同組合が実施いたしますサメの防除に対する補助でありますとか、漁業被害の実態調査、また、利用加工技術の開発に取り組んできたところでございます。しかしながら、いまだ漁業に影響を及ぼしているため、来年度から漁業協同組合や関係町村とも連携を図りまして、サメ被害対策を引き続き実施いたしますとともに、利用加工技術の開発成果を普及してまいります。
 また、イルカも含めまして、これらを寄せつけない音波や電気を使いました装置の効果検証試験を行うなど、今後とも被害軽減に向けた取り組みを進めてまいります。

○遠藤委員 どうもありがとうございました。(拍手)

○小磯副委員長 遠藤守委員の発言は終わりました。
 この際、議事の都合により、おおむね十分間休憩いたします。
   午前二時十七分休憩

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