東京都議会予算特別委員会速記録第五号

○三宅委員長 ただいまから予算特別委員会を開会いたします。
 お手元に配布してあります会議日程の三月十三日とあるのは、三月十四日と読みかえることをご了承願います。
 これより付託議案の審査を行います。
 第一号議案から第二十九号議案まで、及び第百三十一号議案を一括して議題といたします。
 昨日に引き続き総括質疑を行います。
 早坂義弘委員の発言を許します。

○早坂委員 日付が変わりました。おはようございます。
 まず、震災対策について伺います。
 六千四百人の犠牲者を生んだ阪神・淡路大震災から十三年が経過しました。兵庫県監察医の調べによると、神戸市内で亡くなった三千六百五十一人のうち、実に九五%が地震発生から十五分以内に亡くなっています。すなわち、即死でした。
 あなたは大地震に備えてどんな対策をとっていますかと、どこの防災訓練で尋ねても、水や食料の備蓄、あるいは避難訓練という答えが返ってきます。しかし、事阪神・淡路大震災において、命を守るという意味では、それは全く役に立ちませんでした。即死ということは、水も食料も必要ではなく、地震に襲われた瞬間に生死が決定したのです。
 では、その亡くなった方の死因は何か。圧死や窒息死など、倒壊した建物や転倒した家具の下敷きになったことによる死が八三%、火災による焼死が一五%です。しかし、この火災による焼死も、実際には倒壊した建物の下敷きになり、火災から逃げられなくなったケースがほとんどでありました。
 ここで、テープを聞いていただきたいと思います。阪神・淡路大震災の発生当日、AM神戸・ラジオ関西で放送された神戸市長田区の火災現場からの中継です。(録音聴取)ちょっと長くなりました。お聞きのとおり、倒壊した家屋の下敷きになり動くことができず、生きたまま火に巻き込まれたという内容です。
 地震が起きた瞬間に、私たちの生死は決まります。すなわち、大震災から命を守るためには、地震が来る前に建物の耐震補強、あるいは家具の固定をしておき、その下敷きにならないようにすること以外に方法はありません。備蓄も避難も、仮設住宅も帰宅困難者も、それはすべて生き残った後の話です。しかしながら、率直にいって、阪神・淡路以降も、政治、そして行政は建物の耐震化に熱心ではなかったと思います。
 私は、都議会議員になる前、防災のNPOで活動していました。平成十六年に発生した新潟県中越地震の避難所になっている体育館で、避難しているお年寄りに、視察に訪れた国会議員が、ひざ詰めで声をかけているのを目にしました。おばあさん、大変でしたね、もう大丈夫ですよ、今、一番欲しい物は何ですかと。おばあさんは、早くおふろに入りたい、体育館は疲れるから仮設住宅に入りたいと答えていました。避難所で困っているお年寄りの声をしっかり聞く、防災に熱心な国会議員。実は、これこそが落とし穴だと私は思っています。
 この地震では、阪神・淡路と同じく、建物倒壊の下敷きになるなどして、六十八人が死亡しました。つまりこのときも、地震に襲われた瞬間に生死が決まったのであります。先ほどの防災に熱心な国会議員は、永田町に戻って、被災者用におふろと仮設住宅を用意しただろうと思います。困っている被災者に直ちに手を差し伸べる国会議員。有権者はその姿を見て拍手を送る。当然選挙も強い。もちろん、そのこと自体はすばらしいことです。しかし、その国会議員は、実は一番大切な人の声を聞いていないと思います。
 それはだれの声か。それは、その地震で亡くなった方の声です。もし私が、その地震で死亡したとすれば、その国会議員に、あるいは自分の大切な家族にいい残したいことは、たった一つしかありません。それは被災者用のおふろの準備でも、仮設住宅でもありません。私のように地震で死なないためには、倒壊した建物の下敷きにならないよう、建物を強くしておけ、その一言です。先ほどの国会議員には、今生きている有権者の声は耳に届きますが、もう投票できなくなった、地震で亡くなった方の声なき声は決して届かないんだろうと思います。
 大震災から命を守るために何が必要かということと、生き残った後、何が必要かということの区別をつけることが必要です。
 最初に、大震災に備えてどんな対策をとっていますかと尋ねると、どこの防災訓練でも、備蓄あるいは避難訓練という答えが返ってくると申し上げました。震災対策の本丸である建物の耐震補強、あるいは家具の転倒防止という答えが返ってきたことは一度もありません。自然現象である地震の発生そのものは防げません。しかし、そこで生じる被害は、私たちの英知によって減らすことができます。
 政治も行政も市民も、地震から命を守るためには、建物を耐震化することが必要だということを、しっかり認識するところからスタートすべきであります。
 東京都は、昨年三月、東京都耐震改修促進計画を発表しました。その主な内容について伺います。

○只腰都市整備局長 耐震改修促進計画でございますが、十年後における住宅や建築物の耐震化の具体的な目標を設定しまして、その実現に向けた施策の考え方について明らかにしたものでございます。
 住宅につきましては、現在、耐震化率が七六%でございますが、これを平成二十七年度末までに九〇%とするほか、災害時の拠点となるなど防災上重要な建築物、病院とかでございますが、それにつきましては耐震化率を一〇〇%とすることを目標としております。
 今後、目標の実現に向けまして、木造住宅密集地域の住宅や分譲マンション、緊急輸送道路沿道の建築物などの耐震化を重点的に推進するとともに、公共建築物の耐震化に率先して取り組むこととしております。

○早坂委員 これまで建物の耐震化に行政が余り熱心でなかったのは、建物、すなわち私有財産の補てんを税金で行うのかという議論があるからだと思います。しかしながら、被災者生活再建支援制度により、全壊家屋には住宅再建のために、一世帯当たり三百万円が支給されることになっています。れっきとした税金による私有財産の補てんが予定されているのであります。
 そこで、発想を変えて、地震で建物が全壊した後、どっちみち三百万円支給することになるならば、地震が来る前に、つまり大切な生命と財産が失われる前に、仮にその中から十万でも二十万でも先に渡して、最低限の生存空間を守るための工事を行っていただくことの方が結果として安く済むし、税金の有効活用につながるだろうと思います。提案をしておきます。
 生活再建支援の充実は、先ほどの防災に熱心な国会議員の活躍の成果だと思います。しかし、もうこれ以上の充実は必要ないと思います。もちろん住宅が全壊して困っている被災者にとっては、五百万に、一千万にしてほしいだろうと思います。しかし、それは地震から命を守ることにはつながらないのです。むしろ逆に、全壊したら五百万円くれるなら、自分でお金を出して耐震補強工事をするなんてもったいないと考える人が生まれないかと心配です。
 生活再建支援の充実は結構なことですが、それより先に、地震に襲われる前の耐震補強工事にこそ力を入れるべきであります。
 東京都は、昨年十二月、民間建築物等の耐震化促進実施計画を発表しました。その主な内容と今後の取り組みについて伺います。

○只腰都市整備局長 耐震化促進実施計画でございますが、「十年後の東京」の実現に向けまして、民間建築物等を対象に、耐震化の目標達成への具体的道筋を示したものでございまして、今後、この計画に基づきまして、施策を積極的に展開してまいります。
 住宅につきましては、区市町村が行う戸別訪問などの普及啓発事業に対する支援、安価で信頼できる耐震技術の普及、助成や税制の活用など総合的な取り組みによりまして、三年後には耐震化率を八二%に向上させることとしております。
 また、緊急輸送道路沿道の建築物につきましては、今年度実施したモデル事業を来年度から全路線に拡大して、区市町村と連携して建物所有者への働きかけや助成などの支援を強化することによりまして、耐震化を促進いたします。

○早坂委員 建物の耐震化促進への取り組みは、中野区がとても熱心です。先ほど紹介のあった戸別訪問、ローラー作戦についても、既に中野区はこれに取り組んでいます。内容は、区内の耐震性に欠ける木造住宅四万戸を二年間かけて全戸訪問したというものです。その成果により倍増、中野区は二十三区の中でぬきんでて耐震診断を受ける人がふえました。
 しかし、倍増といっても、耐震診断を受けたのは、四万戸のうちわずか一千件、しかも、その後の耐震補強工事までとなると、さらにその一割。いかに耐震化が進まないかがわかります。
 十年後に住宅の耐震化九〇%を目指すには、東京都全体で三十四万戸の耐震化が必要ですが、現在は年平均一万三千戸の耐震補強工事でしか行われていません。耐震化が進まない理由には、一つには費用負担のことがあります。今後、助成金や税制の活用によって、このハードルを下げていただきたいと思います。
 地震で生命と財産を失うということはなかなか想像しにくいし、また考えたくないことです。あるいは、自分だけは大丈夫だろうという根拠のない正常化の偏見もあるでしょう。建物を耐震化することがいかに大切かという、都民の心に強く響く、ありきたりでないメッセージを発信することが必要だと思います。
 震災対策には、建物の耐震化に対する都民の意識啓発が不可欠であります。東京都は、今後どのような取り組みを行っていくのか、伺います。

○只腰都市整備局長 建物の耐震化を促進するためには、今お話しございましたように、自助の観点から、所有者の自覚と行動を強く促していくことが重要でございます。今後、都として、広報・普及啓発活動に力を入れていく覚悟でございます。
 先週の土曜日から今週の月曜日にかけて三日間でございますが、新宿の西口で、住宅の耐震化に関する展示会、見学会などを総合的に行う住まいの耐震フェアを実施いたしました。非常に大きな反響がございました。こうしたイベントを今後も継続的に実施するほか、来年度からは区市町村と連携して、建物所有者への直接的な働きかけを行ってまいります。
 また、先ほどもお答えいたしましたとおり、震災の悲惨さを映像で伝え、耐震化への取り組みを促すDVDを制作いたしまして、各種施設やイベント会場で上映するなど、広く広報事業に活用してまいります。
 こうした取り組みを重層的かつ波状的に行うことによりまして、建物所有者の防災意識を高め、耐震化を促進してまいります。

○早坂委員 ところで、都内では年平均八万戸のリフォーム工事が行われています。せっかくのこのチャンスを耐震化に生かさない手はないだろうし、あるいは賃貸アパートや借家には耐震化を義務づけることも考えられると思います。うんと乱暴にいえば、命の保障がない危険な商品、すなわち住宅を売っているのと同じことであります。
 平成十七年の姉歯建築士による耐震偽装問題では、日本じゅうが殺人マンションといって大騒ぎになりました。しかし、それより耐震強度の低い建物は、今日でもまだ膨大にあります。一部分を見て大騒ぎするが、もっと大きな問題には気がつかない。東京都は、実効的な耐震化施策の充実にさらに取り組んでいただきたいと思います。
 今後三十年以内にマグニチュード七クラスの大地震の発生確率は七〇%、気をつけなくてはならないのは、地震が三十年後に起きるのではなく、きょう起きる可能性も含めて七〇%だということです。
 大地震の発生と耐震化の取り組みは時間との闘いです。私も東京都議会議員として、石原知事としっかり力を合わせて、その役割を果たしてまいりたいと思います。
 次に、特別区消防団について伺います。
 消防団は、生業を持つ傍ら、地域にしっかり根をおろして、地域防災の担い手になっています。活動に熱心な団員も多く、毎晩のように訓練に精を出している方もいらっしゃいます。
 彼ら、彼女らの熱意にこたえるべく、実際の災害現場で、現在、主に行っている大切な交通整理やホース巻きなどの役割に加えて、消火、救助活動を実感できるような取り組みをすべきと考えます。ご見解を伺います。

○小林消防総監 消防団は、災害現場におきまして、消防隊の活動支援のほか、可搬ポンプや消防隊のポンプ車を活用した延焼阻止活動など、さまざまな活動を行っております。
 今後とも火災等の災害現場で消火のための放水活動を行うなど、さらに力を発揮していただけるよう、消防隊と連携した活動を推進してまいります。

○早坂委員 震災対策の本丸は、先ほど申し上げたとおり、建物の耐震化にあります。不幸にして倒壊家屋に挟まれた人の救出は一刻を争うものであり、まさにその地域で活動している消防団に対する期待は大きいものと考えます。
 消防団というと、まず消火活動が思い浮かびますが、これとは別の有効な救助活動を実施するため、どのような取り組みをしているか、伺います。

○小林消防総監 特別区消防団にチェーンソー、大型バール、鉄線鋏及び携帯型油圧式救助器具を整備するとともに、訓練を通じまして、消防団員の救助活動能力の向上に努めております。
 さらに、重機操作や大型自動車運転などの資格が活用できる特殊技能団員制度により、消防団の救助体制の強化を図っております。

○早坂委員 次に、地球温暖化対策について伺います。
 温暖化問題は、端的にいえば、産業革命以降、人類がCO2などの温暖化効果ガスを自然界が吸収できる量以上に排出するようになったため、地球全体の平均気温が上昇し、それが深刻な影響を与えていることが確実視されているということであります。
 地球全体では、年間に三十一億トンまでのCO2なら自然界が吸収できます。しかしながら、産業革命以降、人類は石油や天然ガスなどの化石燃料を燃やすことによって、経済発展と人口増加を支えてきました。IPCCによれば、一九九〇年の地球全体の排出は六十三億トン、この時点で自然界の吸収量の二倍を超えています。しかも、今日ではCO2の増加は加速度的に進んでおり、七十二億トンを超えています。このままのペースで排出し続けると、人間の活動による影響で、もはや回復不可能な気候変動が急激にもたらされる可能性があります。
 もし、地球全体の平均気温が三度上昇すると、干ばつが十年に一回発生し、四十億人が水不足になる。あるいは五十億人が洪水の危険にさらされるなど、想像を超えたリスクを全人類が負うことになります。すなわち、地球温暖化を二〇五〇年時点で現状比プラス二度に抑えられるかどうかが、人類が最悪の結果を迎えるか否かの分かれ目だとされています。
 一九九七年の京都議定書によって、人類は初めて、CO2に代表される温暖化ガスの排出量削減に合意しました。これが京都議定書の歴史的な意義であります。
 ここまでの話だと、CO2は悪者だから容赦なく減らせということになります。しかし、人類のあらゆる活動には、必然的にエネルギー消費を伴います。CO2半減のためとはいえ、地球全体で一年のうち半年間、電気とガス、ガソリンを燃やす自動車も一切使わないという話なら現実味は全くありません。ましてや、地球全体で見ると、人口の増加や発展途上国の近代化に伴い、エネルギー消費量がますますふえています。
 こうした中で、現在の生活水準を損なうことなく、地球全体のCO2排出量を半減させるということは極めて困難な挑戦ですが、これに地球全体の生死がかかっているのです。
 以下、着実な削減と成長の両立に、東京に何ができるかを考えてみたいと思います。
 二〇〇五年度における都内の産業・業務部門の排出量は、排出量全体の四割を占めています。このうち、産業部門では対九〇年比で四四%の排出量削減に成功していますが、業務部門では三三%も排出量が増加するなど、東京における温暖化対策を着実に進めるためには、業務部門における削減が必要です。
 東京都は、二〇〇二年度、平成十四年度から全国に先駆け、地球温暖化対策計画書制度を構築し、対策を進めてきました。今では一千三百の大規模事業所が参加しています。このたびの排出量削減義務化は、この制度を強化するものですが、義務化という重い選択、決断をするに至った理由を伺います。

○吉川環境局長 平成十七年度から開始いたしました現行の地球温暖化対策計画書制度のもとでは、当初、対象となる大規模事業所の約三分の二で、適切な室温管理さえ行われないなど、基本的な対策も十分行われておりませんでしたが、その後の都の指導を受けて、事業所が取り組みを見直した結果、ほとんどの事業所で基本的な対策が計画化されるなど、一定の成果を上げてまいりました。
 しかし、一方で、最新の省エネ設備への更新など積極的な削減対策を計画化した事業所は全体の四分の一にとどまるなど、事業者の自主的取り組みを前提とする現行制度では、基本的な対策を上回る削減対策までは多くの事業所で計画化されないという限界も明らかになりました。
 気候変動の危機を回避するためには、CO2の大幅な総量削減を早期に実現することが必要でございまして、すべての事業所が、より踏み込んだ積極的な削減対策を実施することが求められております。
 そのためには、現行制度を自主的取り組みに依存するだけではなくて、総量削減の結果を求める削減義務の制度へと発展させることが必要であり、この削減の義務化を実現することによりまして、削減に消極的な事業者が結果的に取り組みをしなくても済む不公平を取り除くことができるとともに、すべての事業者がCO2の削減費用を事業経営上、負担すべき必要コストとして位置づけることができると考えております。
 こうした観点から、CO2の削減義務化を目指すことといたしました。

○早坂委員 インターネット上で公表されている東京都気候変動対策方針に関するステークホルダーミーティングの議事録を読むと、出席者である相当数の事業者団体から、義務化に対する不安の意見が述べられています。
 私は、現在の生活水準を維持向上させつつ、また、そのための経済活動も損なうことなくという前提で話をしています。このことに配慮をしない施策は、結果的にうまくいかなくなるだろうと思います。
 東京は我が国経済の牽引車です。牽引車を失速させず、円滑に走らせながら、CO2を削減していかなければならない。この視点を忘れて、創意工夫を失った官僚的で硬直的な政策を強行しても、都民は幸せになりません。このことを強く指摘しておきたいと思います。
 他方、家庭部門は、都内全体の排出量の四分の一を占めています。家庭で使う白熱球を電球型蛍光ランプに交換すると、一個当たり八〇%もエネルギーの節約になります。このように省エネ技術は確実に進化しているにもかかわらず、家庭部門における排出量は、逆に一六%増加しています。これは世帯数の増加と、それに伴う家電製品の保有台数の増加に伴うものであろうと思います。
 東京都は、家庭部門における排出量削減に関して、都民にどのような意識啓発を行っているのか、伺います。

○吉川環境局長 都は、平成十四年、全国に先駆けまして、家電製品の省エネ性能をわかりやすく表示するラベリング制度を創設し、その活用によって省エネ性能の高いエアコン、冷蔵庫などの製品が選択されるよう都民への普及啓発を進めてまいりました。
 また、昨年夏からは、省エネ、節電の取り組みがCO2の削減に直結することを示すため、スーパー、電気店等と連携し、白熱球一掃作戦を展開しております。
 さらに、この二月には、温暖化防止の普及啓発活動の拠点となる地球温暖化防止活動推進センターを指定いたしました。今後、このセンターを活用するとともに、区市町村等との連携を強化し、家庭で取り組める具体的でわかりやすいCO2削減対策について意識啓発を行ってまいります。

○早坂委員 次に、運輸部門における排出量削減について伺います。
 運輸部門の排出量は減少してはいるものの、依然として都内全体の排出量の四分の一を占める高い割合を占めており、その削減が急務になっています。
 運輸部門の排出量のうち、その九割は自動車部門が占めており、さらにその六割は乗用車によるものです。そのため、乗用車に対する取り組みを積極的に講じる必要があります。次世代の乗用車には電気自動車と燃料電池自動車が有望視されています。
 こういった事情を踏まえ、乗用車からのCO2削減のため、東京都はどのような対策を講じていくのか、伺います。

○吉川環境局長 都は、都民や事業者に対しまして、環境負荷の少ないハイブリッド車等の自動車の普及に努めるとともに、環境に配慮して自動車を運転するエコドライブの推進や、電車やバス等の公共交通機関への転換促進を図るなど、乗用車から排出されるCO2を削減するための取り組みを進めております。
 今後とも、電気自動車等の次世代車の開発普及動向も視野に入れた低燃費車の利用等を促すガイドラインの策定や地域における人や物の流れに着目した環境交通モデル事業の展開を含め、さまざまな施策に積極的に取り組んでまいります。

○早坂委員 乗用車といっても、その使用実態は、買い物や通勤通学、営業活動など、都民あるいは事業者ごとにさまざまであり、都内においては公共交通機関が発達しているにもかかわらず、乗用車の利用が多く見受けられます。
 その中でも、特に日中、営業活動で使用されている乗用車は、走行時間が長く、また延べ走行距離も長いため、CO2の排出に関し、環境にかなりの負荷をかけていることは想像にかたくありません。エコドライブや電気自動車の普及促進もCO2削減の一助になると思いますが、自動車の使用抑制など、もう少し踏み込んだ対策が必要です。
 本年一月の報道発表によれば、東京都は、製薬業界に対し、自動車使用の見直しの取り組みを要請したとあります。車の使用が当たり前となっている営業の世界において、車に頼らない新しいビジネススタイルとして、他の事業者への波及も期待されるところです。
 そこで、この取り組み内容と今後の展開について伺います。

○吉川環境局長 営業活動で使用する乗用車について、日本製薬工業協会は、東京都の要請を受け、本年二月から協会に加盟する製薬会社の都内営業所百三十カ所を対象といたしまして、その使用の見直しの取り組みを開始いたしました。
 具体的には、車を使わずに、徒歩や自転車、または公共交通機関を利用する日を設けたり、車の相乗りの励行などを通じ、過度な自動車使用からの脱却を目指すものでございます。
 今後、七月までの半年間にわたる各製薬会社の取り組みにおけるCO2削減効果や課題などを踏まえた上で、他の業界に対しましても、その実情に応じ、自動車の使用抑制に取り組むよう促してまいります。

○早坂委員 ニューヨークのブルームバーグ市長は、二〇一二年までに一万三千台のタクシーの全車両をハイブリッド化する計画を進めています。この計画の特徴は、行政からの助成金なしでイエローキャブを全車ハイブリッドへ切りかえすることにあります。
 ハイブリッド化することによって、燃料費が年間一台当たり一万ドル、つまり百万円が節約できるため、五年あれば乗りかえのコストを回収できるという計算です。ハイブリッド車以外の車種を直接禁止するのではなく、厳しい燃費基準を設定することで、事実上、ハイブリッド以外の車種は締め出されるという仕組みです。これにより、乗用車三万二千台を削減したのと同じCO2削減効果が見込まれています。
 ロンドンでは、中心市街地に進入する自動車に渋滞税がかけられますが、エコカーは対象外とされています。諸外国の事例を踏まえ、東京都もあらゆる手段を講じるべきであります。
 時に、そもそも我が国全体のCO2排出量は、世界の五%未満です。一方で、京都議定書に批准していないアメリカと削減義務を負わない中国の二カ国で、全世界の四〇%を排出しています。そのほか、発展途上国まで含めると、全世界の七〇%が削減義務を負っていない国々からの排出であります。
 我が国は、二度のオイルショックを経験し、世界で最先端の省エネ技術を誇っています。我が国の省エネ技術がいかに進んでいるかを示すデータが、国別のGDP当たりのCO2排出量です。これによると、マスコミなどで盛んに環境先進国としてもてはやされているドイツでも、我が国の一・七倍、中国は十倍、ロシアに至っては十八倍であります。同じ単位量のアウトプットを得るために、我が国の技術がいかに環境に負荷をかけず、効率よく富を生み出しているのかがわかります。
 地球温暖化対策は、地球全体での取り組みが必要であり、ひとり我が国だけが、あるいは東京都だけが排出量を削減しただけでは解決できない問題であります。繰り返しになりますが、現在の生活水準を維持向上させつつ、また、そのための事業活動を円滑に行いながら、同時にCO2削減に努力していかなければなりません。
 環境対策のトップランナーである我が国が、さらに努力するのはもちろんですが、エネルギー効率のはるかに悪いそれらの国々に我が国の技術を普及させることで、圧倒的なCO2排出削減効果をもらたすのではないでしょうか。
 そして、二〇一六年東京オリンピックを活用して、環境に負荷をかけない新しい都市モデルを全世界に発信すべきだと考えます。知事のご見解を伺います。

○石原知事 東京の都民一人当たりのCO2の排出量は、ニューヨーク、ロンドンなどに比べ二、三割低く、現在、既に先進国の大都市の中ではエネルギー効率の高い都市となっております。ゆえにも、欧米の大都市会議の主唱者のロンドンのリビングストン市長は、東京にこの会議への参加を呼びかけてまいりました。
 このように相対的にエネルギー効率の高い東京が、みずから日本の誇る省エネ技術を活用してCO2を劇的に削減するとともに、環境技術の普及を先導する新たな都市モデルを早期に構築することは、アジアを初め、世界の温暖化対策に大きく寄与するものと考えております。
 このような観点から、都は現在、カーボンマイナス東京十年プロジェクトに全庁を挙げて取り組んでおりまして、「十年後の東京」で掲げた世界で最も環境負荷の少ない都市という近未来図を着実に実現して、これもあわせて二〇一六年の東京オリンピックに、世界に向かって発信していきたいと思っております。

○早坂委員 削減義務を負っていないアメリカ、中国、ロシア、インドの四カ国で全世界の半分のCO2を排出しています。地球温暖化に本当に危機感を持つのなら、たとえ内政干渉になってでも、これら世界最大のCO2排出国に、我が国のCO2削減、省エネ技術を輸出し、CO2排出削減を強く迫るべきだと考えます。
 かつて知事は、東京から日本を変えるとおっしゃいました。今、地球を救うために、東京から世界を変えるという意気込みが必要ではないでしょうか。最も本質的なところに切り込んでいかなければ、温暖化は解決しないと考えます。知事のご見解を伺います。

○石原知事 お話の四カ国は、合計して世界のCO2排出量のおよそ半分を排出しておりまして、これらの国々がしっかりと排出削減に取り組むことが必要でありますが、そのためには、すべての国が参加した排出削減の新たな枠組みを一刻も早くつくり上げなければならないと思います。
 しかし、リビングストンの招待に応じて参加しましたニューヨークの会議でも、私が主張しましたジョイントコミュニケに、京都議定書に参加していないアメリカ、ブルームバーグの祖国でありますアメリカ、それから中国、ブラジル、オーストラリアといった主要な国々が参加していないのはおかしいから、この参加を呼びかけろと申しましたら、なぜか知らぬけれども、彼は非常にリラクタントで、実現しませんでした。
 いずれにしろ、これは世界的な傾向でありまして、昨年のCOP13のバリ会議では、参加国の間で向こう二年間のスケジュールを決めただけで終わりました。我が国も、洞爺湖サミットを控えながら、実効性のあるCO2排出削減策をいまだに決定できずにおります。
 排出削減の本格的な実施が、国際的にも国内的にも極めておくれている中で、本来大きな役割を果たすべき日本のすぐれた省エネ技術、例えばソーラー発電システムなども、国内では使用する人が非常に少ないというのが残念な現況でございます。国がなかなか責任を果たさないならば、世界の大都市が先頭を切って手本を示して、世界全体を動かしていく必要があると思っております。

○早坂委員 次に、オリンピック招致について伺います。
 本年二〇〇八年八月八日午後八時八分、八並びのおめでたい時間に北京オリンピックの開会式がスタートします。その前の六月四日には、二〇一六年オリンピック大会の候補地が五都市に絞られるなど、いやが応にも本年がオリンピックの話題で持ち切りになることは間違いありません。私自身も、あらゆる会合でのスピーチに、二〇一六年東京オリンピック招致の意義を話しております。
 しかし、そこで最初に、そして必ず聞かれるのは、北京のすぐ後に同じアジアにオリンピックが来るはずはないのではという素朴な疑問です。まず、このことについてずばり答えることが、招致機運の盛り上げに必要ではないかと思います。ご見解を伺います。

○荒川東京オリンピック招致本部長 北京のすぐ後といいますか、次の次ということで八年後になるかと思うんですけれども、まずIOCには、開催都市につきまして五大陸を順番に回すというような方針あるいはルールはないということを申し上げておきたいと思います。現に二〇一二年に開催いたしますロンドン大会の八年前は、同じヨーロッパのアテネで開催されました。
 また、東京が出ております二〇一六年には、マドリードがロンドンの直後でありまして、やはり立候補しております。今度北米大陸を見ますと、一九六八年のメキシコシティー、七六年のモントリオール、八四年のロサンゼルスと、八年置きに開催されております。こういう状況でございますので、同じアジアで八年後だから来ないという心配はないのではないかというふうに思います。
 むしろ大事なことは、いかにIOC委員を引きつける魅力のあるオリンピックをアピールしていくかでございます。東京・日本が目指すオリンピック・パラリンピックは、アジアというよりも地球社会の未来のために人と人との連帯を高め、地球の可能性を最大限に追求した大会でございます。
 現在、立候補ファイルに向けて具体的な内容を詰めておりますけれども、こうした開催意義はIOC委員にきっと理解されるものと思います。今後、お話の趣旨も踏まえて招致活動を展開してまいります。

○早坂委員 八月の北京オリンピックに向けて、全世界を聖火リレーが通過します。我が国では、四月二十六日、長野県を通過する予定です。
 今からちょうど十年前の一九九八年、冬季長野オリンピックが開催されました。ここに、長野オリンピックに国内招致の段階から勝手連として協力した木田健二郎さんの手記があります。ご本人は信濃毎日新聞の営業マンで、かつて中学生のころ、猪谷千春選手の銀メダル獲得をラジオで聞いて以来、素朴にオリンピックが来ればいいなと思い続けてきた方です。すばらしい情熱を持って、長野オリンピック招致のために民間レベルで活動した内容がすべて書かれています。とても参考になると思われますので、幾つか紹介してみたいと思います。
 まずは、IOC委員に対するダイレクトメール作戦です。
 これがその四枚のはがきの拡大でございます。PTAや青年会議所の協力を得て、子どもたちの書いた英語やフランス語のメッセージを添えて、九十一人のIOC委員に五万通の絵はがきを出しました。単純計算で一人に五百枚以上の絵はがきが届いたことになります。
 効果は絶大で、立候補都市長野を事前調査に訪れたIOC委員は、両手をいっぱいに広げて、子どもたちからこんなに絵はがきが届いたと感激してくれたそうであります。
 はがきの種類は、コンテストで選ばれた子どもの絵が十二種類、葛飾北斎の浮世絵やコイのぼりの写真など、我が国の文化が十四種類、合計二十六種類の絵はがきをつくりました。
 今日ではデジタルカメラが普及しているので、それぞれ自分の絵を絵はがきにすることはたやすいし、東京でやる場合にはその方がいいと思います。自分で書いた絵はがきを先生や保護者と協力しながら、まずあて名を書く。そして英語、フランス語、中国語など、相手の国の言葉で簡単なメッセージを書く。当然、相手の国がどこにあって、どんな国なのかに話が及ぶでしょうから、その教育的効果ははかり知れないと思います。
 都内には、公立と私立を合わせて、小学生六十万人、中学生三十万人が在籍しています。IOC委員は百十五人。仮に都内の小中学生の半分が絵はがきを書くとすると、何と一人に三千九百枚のメッセージが届くことになります。
 絵はがきだけでなく、子どもたちの絵を使ったカレンダーも(パネルを示す)こちらはIOC委員に毎年送っていました。有名な一校一国運動も、長野がその始まりだそうです。その後のシドニーやソルトレークシティーでも、この運動は引き継がれています。
 次に紹介したいのは、いわゆる聖火リレーの実施です。
 これは国内招致の段階で実施されました。中心になったのは早起き野球連盟。県内の五つの地区から一カ月余りにわたってリレーされました。これがおもしろいのは、リレーする時間帯が早起き野球の開始時間の毎朝五時半から七時までということであります。連盟登録選手のほか、賛同するスポーツ団体や地域の大人から子どもまで参加がありました。県内を縦断したことで、県内各地の盛り上げにつながったそうであります。
 東京で行う場合には、東京マラソンの応募者が十五万人います。いろいろなやり方があると思いますが、ぜひその皆さんにも参加してもらったらいいと思います。
 開催地が長野に決定後、その間に開催されたバルセロナ夏季オリンピックとリレハンメル冬季オリンピックに合わせて、現地で子ども絵画展を実施しました。東京も、IOC委員が大勢来るような国際スポーツ大会あるいは国際会議の開催地で、その時期に合わせて、絵画展でも、あるいはジャパンウィークでも開いたらいいと思います。
 この手記には、世界各地でIOC委員が宿泊するホテルの新聞が何新聞かを事前に調べて、その宿泊の日に合わせて自分たち勝手連の広告を出したことなども紹介されています。
 長野県での民間レベルでの招致活動の事例をお聞きになり、どんなご感想を持たれたでしょうか、知事に伺います。

○石原知事 長野市民のオリンピックにかける一途な思いと旺盛な行動力がオリンピック招致に大いに貢献した事例として、大変興味深くお聞きしました。
 しかし、今の時代、この日本、特にぜいたくになった東京では、何があっても珍しくないという人が非常に多いのが残念であります。そういう中で、先月行われた東京マラソンでは、二百三十万人の沿道の応援やボランティアによって、東京がまさに一つになって大いに盛り上がりました。
 二〇一六年のオリンピック招致においても、都民、国民の自発的で力強いユニークな活動が巻き起こることを大変期待しております。

○早坂委員 各種行政機関などに、「オリンピックを日本に」の横断幕があちこち張り出されています。大いにやった方がいいと思いますが、今後さらに招致運動を進めていく上で必要なのは、参加意識だと思います。遠くで見ている応援団もいいですが、何か手伝ってもらうことで参加意識、帰属意識がより強まることになります。その意味で、昨年九月から実施し、短期間に百五十五万人を超える皆さんの賛同をいただいた署名活動は有益だったと思います。
 昨年十二月、東京都商店街連合会の協力を得て、都内の商店街に二万三千枚の招致フラッグが掲出されました。このうちの六分の一、三千七百枚は我が杉並区内に掲出されたものであります。期間を集中して、かつ、まとまった数のフラッグが出たことで、猛烈な勢いを感じ、大きなインパクトがありました。
 ただ、招致のキャンペーンは、これからさらに盛り上げていかなければならないにもかかわらず、掲出の期間が短く、寂しさも感じています。商店街は、人の集まる場所であり、招致キャンペーンの波及効果が大きいと思います。今後、商店街に対し、どのような協力のお願いをしていくのか伺います。
 オリンピック招致のキャンペーンは、ぜひとも皆がわくわくするような楽しいものを展開してほしいと思います。

○荒川東京オリンピック招致本部長 招致フラッグにつきましては、大変多くの商店街連合会や地域の商店街のご協力を得まして、昨年掲出をしていただきました。機運を盛り上げていく上で非常に効果的であったと思います。
 各商店街からは、ぜひ来年度も協力したい、次回はいつごろ実施するのかとの問い合わせも寄せられるなど、地域での盛り上がりを実感しております。
 ことし六月には立候補都市が決定されまして、五輪マークの使用も解禁になりますので、北京オリンピックなどの効果的な時期に合わせて、より多くの商店街にご協力いただけるよう準備を進めてまいります。

○三宅委員長 早坂義弘委員の発言は終わりました。(拍手)

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