東京都議会予算特別委員会速記録第四号

   午後十時十三分開議

○大沢副委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 西岡真一郎委員の発言を許します。

○西岡委員 新銀行東京に関して伺います。
 予算委員会総括質疑の前日に、三月十日に提出されました、都の出資金一千億円相当を毀損させた新銀行東京が発表した内部調査報告書に関連して伺ってまいります。
 この報告書の作成者は、新銀行東京の設立をまさに担当した、当時の東京都出納長室理事である現代表執行役の津島氏や、同じく都庁出身者を含めた、銀行経営者の専門家ではない三人の内部関係者により作成されたものであります。
 本来、このような調査は、幾ら新銀行の内部調査とはいえ、第三者機関も参画すべきものであったと考えますが、この報告書に公平性が担保しているとお考えなのか、まず伺わせていただきます。

○佐藤産業労働局長 お尋ねの本調査委員会は、昨年七月に、前代表である森田氏を委員長に、さらに執行役一名、そして弁護士一名を加えまして、三名を委員として設置がされまして、その後、津島現代表が委員長を引き継いで取りまとめたものでございます。
 調査に当たりましては、会議等の記録の調査や、仁司元代表など旧経営陣や職員へのヒアリングを実施いたしまして、調査委員会として一つ一つの事実を積み上げて、責任を持ってまとめたものというふうに受けとめております。
 この報告書を受けまして、銀行は、今後、信頼できる専門家に任せるなどいたしまして、法的責任追及も含め、さらに調査を進めることとしております。
 都は、今後とも、その推移を注視してまいります。

○西岡委員 公平性が担保されているかということをご質問したのですけれども、この報告書でよいという都の認識でございますが、この報告書では、代表執行役職務分掌が代表執行役への権限を集中させた旨の報告がありますが、そもそもこの職務分掌は、取締役会で決定されたはずであります。取締役会で議決してしまったのはどうしてなのでしょうか。
 この職務分掌のあり方は、東京都が作成した新銀行マスタープランとは違う考え方のものになっているものだと思います。取締役会が代表執行役に権限が集中することをスタートの段階でとめられなかったことに起因するのではないでしょうか、ご見解を伺います。

○佐藤産業労働局長 マスタープランでは、取締役会で執行役職務分掌を定めるということは記載されておりますが、その具体的な内容までは記載をしてございません。
 実際、執行役職務分掌規程の制定に当たって、新銀行東京は、代表執行役の経営手腕に期待するとともに、創業期における統一的かつ効率的な経営執行を行うため、代表執行役の権限を強める形で経営のスピードアップを図ることとしたものです。このことは、当時の判断としては、代表執行役の経営管理経験を生かすための方策であったと、こういうふうに考えられます。しかし、すべての決定について実質的に代表執行役が関与できる結果となりまして、適切な経営が行われなかったことにつながったものと思われます。

○西岡委員 執行役職務分掌を定めるということは記載されていたけれども、具体的中身がないというのは、これはもうマスタープランに問題があったのではないでしょうか。
 このような職務分掌が検討されたり、また誕生したとき、取締役会には東京都から派遣された都の関係者も存在をしております。重要な役割と認識しているはずでありますが、このマスタープランとの違いが発生していることを是正できなかったのはなぜか、伺いたいと思います。

○佐藤産業労働局長 ただいまお答え申し上げましたけれども、マスタープランでは、取締役会で執行役職務分掌を定めるということは記載されておりますけれども、具体的な内容までは記載をしておりません。そういう意味では、マスタープランとの違いが発生していることを是正できなかったのではないかということについては、ちょっとお答えのしようがございません。

○西岡委員 プランにないからいいというものではないと思います。ここは極めて重要な、新銀行東京の根幹になるんだと思うんですね。権限集中が生まれた要因はこの時点で食いとめているべきだったと思います。派遣された都の関係者の責任は大変大きいものだと思わざるを得ません。
 一方、報告書では、代表執行役が、二〇〇五年度第四・四半期にデフォルトが利息収入を上回る、取締役会への説明が不十分であるとした一方、資料としては取締役会に提出をされておりまして、デフォルト発生の状況や収益に与える影響を相当程度把握することが可能であったと推察されると、この報告書概要には明記をされてあります。したがって、取締役会にとっては、銀行業経営の最大の関心事の一つであるこの数値を見逃してきた、そして、極めて重たい責任が果たされていなかったことも事実であります。
 提出された資料によれば、少ない出社状況のようで、いただいた予算特別委員会の資料では、この取締役会の方々は、一人年間一千万円くらいの報酬をいただいている方々です。代表執行役の責任追及はもちろんですが、東京都として、取締役会にも相当の責任を求めていくべきと私は考えますが、ご見解を伺います。
 また、報告書では、取締役会の位置づけについては、厳格な法的責任には及ばないと述べられていますけれども、取締役の責任の範囲に関する東京都の見解を伺います。

○佐藤産業労働局長 調査報告書は、経営の重要事項が執行役から取締役会に適切に上がらなかったことなど、旧経営陣の隠ぺい体質があったこと、また、取締役会に求められる所定の監督機能に一定の限界が生じたことは否めないというふうにしております。
 都としましては、今後の新銀行東京の対応を注視してまいります。

○西岡委員 都として、大株主として責任がある取締役に関しては、今後の対応を注視していくということでございますが、取締役会は、委員会設置会社の中では、株主総会の次に位置づけられている大変重要な機関ですね。そして、一千億円も毀損させた責任が、都としてもはっきりと見解を述べられないということには大変疑問を感じざるを得ないことを指摘しておきたいと思います。
 一方、報告書では、デフォルト発生が融資実行後六カ月を超えた場合には、融資実行実績により、何と、最大年間二百万円という報奨金が支払われたと明記をされております。結果的には何人に幾ら支払われたのでしょうか。年度ごとにお答えください。また、そのうち、六カ月以後に回収不能となった融資実績への報奨金は幾ら支払われたのか、教えていただきたいと思います。

○佐藤産業労働局長 新銀行東京におきまして、成果手当として支払った報奨金、これは、平成十七年度は延べ七十人に総額約一千九百万円、平成十八年度は延べ百四人に総額二千六百万円というふうになっていると聞いております。
 また、六カ月以後に回収不能となった融資実績への報奨金については、把握をしていないと聞いております。

○西岡委員 トータルで、総額が四千五百万円とは、これはもう大変な金額であります。しかし、そのうち、六カ月以後に回収不能となった融資実績の報奨金はわからないということでありましたので、この委員会が終わるまでに把握できるようでありましたら、ぜひ私にお示しをいただきたいということを要望しておきたいというふうに思います。ここは大変重要な数字であります。
 一方、報告書では、与信審査の甘さが指摘されているが、一方で、銀行業務には債権回収業務も、これは極めて重要な業務だと思います。貸した企業に対してどのような回収作業が行われ、その回収作業への評価が一切この報告書では述べられておりません。債権回収業務への調査が行われなければ、今後の新再建計画に展開できないと思います。東京都は債権回収業務の状況を把握しているのか、実態を把握しているのか、伺いたいと思います。

○佐藤産業労働局長 回収業務につきましては、まず銀行みずからが実施をしております。旧経営陣の段階では、債権の適切な管理、いわゆる期中管理、これを怠りまして、返済日前後の電話入金督促ですとか延滞後の面談による督促、資産調査など、基本的な債権回収業務を行えていなかったというふうに聞いております。
 新経営陣のもと、この期中管理の徹底が行われまして、今申し上げました返済日前後の電話入金督促、また延滞後の面談による督促及び資産調査、あるいは返済が厳しい顧客への条件緩和と担保徴求などを実施しております。
 法的破綻につきましては適切な対応をとり、また、最終的には外部機関を使った回収を行っております。

○西岡委員 都は、この新銀行東京の経営実態を、極めて最近その実態を知ったわけですね。ですから、都は、債権回収業務の実施方法や内容ではなくて、債権回収の実態をしっかりと、適切に行われていたかどうかを把握するべきだと思うんですね。この回収業務の実態がわからないままでは、この件についても、やはり新しい再建計画にしっかりと展開できるのかどうかが大変不安であるということは指摘しておきたいと思います。
 一方、報告書では、調査の目的として融資業務の管理が中心で、執行役への権限集中と融資における与信審査の甘さが主に指摘をされている報告書でありまして、調査の目的が極めて限られている報告書であります。
 しかし、累積損出が二十年三月期で一千十六億円になるという見込みのうち、焦げつきは二百八十五億円であり、差し引いた残りの損出額は、融資の失敗による影響額をはるかに超える約七百億円に上ります。この七百億円の部分の損出にはこの報告書は一切触れられておりませんが、これでは報告書として不十分ではないでしょうか。累積損出が発生した全容を解明するには至らないのであります。一般的に高額といわれるシステム投入費がどうだったのか、また、物件費や人件費、どうであったのか、ランニングコストなど、幅広い見地からの検討が必要なはずであります。デフォルト発生の背景ももちろん重要ですが、他の分野に踏み込んでいない内部報告書の概要版だけでこの四百億の追加出資を判断するというわけにはいかないはずですし、東京都も大株主でありますから、新銀行東京にさらなる調査を求めることが当然のことと思います。ただ、今のところ、そのようなお話は全く聞こえてきません。
 この融資業務を中心とした報告書だけで経営実態の把握は十分だとお考えなのか、見解を求めたいと思います。また、不良債権二百八十五億円以外の損出部分の内訳も、ここであわせてお示しをいただきたいと思います。

○佐藤産業労働局長 不良債権以外の損出分の内訳というお話、その前に、計画といいますか、実態の運営の中での問題ということが今回の調査報告書では限られているということのお話がございました。しかしながら、再建計画では、執行体制及び規模を抜本的に見直しまして、経営資源の選択、集中を徹底することとしておりまして、低コスト体質の確立を目指しているところでございます。
 お尋ねの平成十六年度から平成十九年度までの累積損失見込みにつきましては、約一千億円になっております。その間の経常収益は約二百六十億円に対しまして、費用は一千二百六十億円となっております。費用の主なものといたしましては、営業経費約五百億円、資金調達費用約百億円、デフォルト関連といたしまして、不良債権処理額が、先ほどございました二百八十五億円及び貸倒引当金の繰り入れ、戻し入れが約二百億円、また特別損失が約百五十億円などでございます。

○西岡委員 内訳はわかりましたけれども、私は、七百億円の損出の分析が一切銀行からも行われていないし、都も把握していないということを証明してしまうんですね。これで本当にいいんでしょうか。損出全体の要因がわからないままではこれは再建計画につながらないと思いますし、ご答弁では、新再建計画では云々とおっしゃっていますけれども、この七百億円の分野にもたくさんの要因があるはずなんですね。ここも解明しないと、四百億円の追加出資や新再建計画プランが本当にいいのかどうかという判断には至らないんですね。そういう、この七百億円の分野に関する大株主としてのしっかりとした分析が行われていない都の姿勢は、これは極めて不十分だというふうにいわざるを得ません。
 次に行きます。報告書では、東京都が作成したマスタープランや東京都の対応については一切言及をされておりません。この銀行の土台となっているマスタープランやビジネスモデルという根幹への見解が述べられていないのは、正しい自己評価にはつながらないと思います。不十分ではないでしょうか。東京都の見解を求めます。

○佐藤産業労働局長 今回の調査の目的は、そもそも、旧経営陣が経営に当たった開業後おおむね二年間、この経営状況に関して、経営悪化の主因とされている不良債権を増加させた融資業務の管理を中心に調査を行いまして、経営悪化を招いた原因を究明することにあります。
 新銀行マスタープランは、金融の専門家のほか、旧経営陣も多数参画して策定したものでございまして、預金者や中小企業の意向をモニタリングするなど、当時において最善を尽くして策定されたものであるというふうに認識をしております。
 また、東京都の対応につきましては、都は、新銀行東京が、中小企業支援など、この銀行が担う役割を適切に果たしているかどうか、そういう観点から、事業の進捗状況ですとか決算内容等の報告を受けまして、中小企業支援の一層の充実などについて株主として意見表明や申し入れを行うなどの経営の大枠を監視をしてきたところでございます。
 それから、先ほどのお話でありましたけれども、やはり今考えるのは、再建計画がどれだけ効率的な運営体制を確保した上でなされている計画なのかどうか、これを見ることの方が重要だというふうに考えております。

○西岡委員 再建計画の見通しだけではないと思います。最後に申し上げますが、この判断には、いろんな観点から、いろんな角度から検証しなければいけないし、そのための予算特別委員会であって、ほかのことは余り意味がない、再建計画の見通しだけでいいという局長の認識は間違っているのではないでしょうか。
 また、専門家百人でつくったとよくいわれますけれども、もうこれは四年前の話であります。今、時代は変わりました。マスタープランを実行した銀行の総括がなされなければ、これも次につながらないのであります。計画の理念と実際の現場は違うということが大変重要だと思っております。
 一方、報告書では、統合リスク管理委員会に設置された、法令遵守を担当するコンプライアンス専担者の機能や実績が、これもまた一切明記されておりません。多くの問題点が、新銀行東京や東京都からの出向者に報告されていたはずであります。この事実関係を伺いたいと思います。このコンプライアンス専担者の立場というのは大変重要なポジションになるというふうに認識をしております。
 また、コンプライアンス委員会の報告書や議事録が存在しているはずです。あるのか、ないのか、伺います。また、どこで保管されているのか、伺いたいと思います。

○佐藤産業労働局長 調査委員会の報告では、代表執行役等は、十七年度第四・四半期には、デフォルト発生額が利息収入を上回る深刻な状況にあるということを統合リスク管理委員会で議論をしながら、定例の取締役会への月次報告の際に、膨大な報告資料の中で、単に延滞や法的破綻等のデフォルト実績数値を添付するにとどめまして、説明が極めて不十分であったというふうに記載をされております。このことが、結果としてデフォルト発生が経営に与える深刻な影響を適時的確に認知することができなかったというような分析がされております。
 お尋ねの統合リスク委員会に関する件ですが、これは社内の調査委員会でありまして、都への報告など、対外的に活動するものではございません。
 なお、コンプライアンス委員会の報告書や議事録につきましては、あることは聞いておりますが、銀行内部の資料であり、公開をしておりません。

○西岡委員 コンプライアンス委員会の議事録などは存在しているということはわかりました。
 もろもろと内部調査報告書に関して伺ってまいりましたけれども、やはりこの報告書の概要だけでは銀行の経営実態が明らかにされません。調査の範囲が狭いものであります。代表執行役への権限の集中や融資の実態、甘い審査のみでは経営の全容はなかなか明らかにされないと思います。デフォルト二百八十五億円以外の七百億円の損出の原因、これを銀行から見た東京都のマスタープランの評価など、銀行から報告されるべき事項が多くあります。また、大株主として判断すべきものも多くあるはずであります。
 きょうで総括質疑が終わるわけですけれども、来週からは常任委員会、経済・港湾委員会、予算委員会締めくくり総括質疑もまだ残されております。なぜ東京都は積極的に、銀行に融資の焦げつきが発生した分野など調査報告書概要版以外の調査を求めていないのか、これは大変疑問が残るところであります。
 知事は、審議する議会への新銀行からの報告書として、これだけの内容で十分だとお考えになっているんでしょうか。ご見解を伺いたいと思います。

○石原知事 今回の内部調査報告書は、まさに概要でありますが、事の本質はきちっと分析し、記載していると思います。
 今後、専門家による検討が進んでいくと思いますけれども、法的追及の可能性等の理由によりまして、新銀行東京は、調査内容の公表はできないと判断したと聞いております。
 都としても、本日、産業労働局長が説明をした理由により、銀行のこの判断を尊重することとし、今後の銀行側の対応を注視してまいります。

○西岡委員 知事、本編については考え方はわかったんですけれども、極めて狭い範囲の銀行からの調査報告書だけで本当に審議にたえられるんですかということをお聞きしているんですね。そのことについて改めてご見解を伺いたいと思います。
 で、次の質問もあわせて伺いたいと思いますが、本来私は、この場で、概要版ではない、内部調査報告書の本編の議会への提出が必要だということを主張したいと思っておりました。しかし、本日の予算委員会冒頭に、委員会としてこの本編を求めたところ、局長からは、新銀行東京が、経営悪化をもたらし、尋常でない経営が行われた旧経営陣への損害賠償請求を想定した訴訟に備えるため、あるいはこの訴訟に勝利するため、現時点では提出できない旨の理由が述べられておりました。
 一方、これは日本経済新聞三月十二日の朝刊ですけれども、三月十一日、この予算総括質疑の初日の日の夜だと思いますが、この委員会後、知事の発言として、抄訳じゃみんな、フラストレーションが残るとして、名前を初めとした個人情報などに関する部分は伏せた上で、銀行側に公開を求めるとした、との記事が記載をされております。
 この数日間の変化は何だったのか、この点について確認をしておきたいと思います。

○石原知事 私も当初そう思っておりました。しかし、その後、この概要についての詳細な、何というんでしょうか、評価といいましょうか、これからの展望を踏まえての論議がありまして、たとえこれを、偽名といいましょうか、A、B、Cという形で個人の名前を表現してもなお、会話というものの形からして、だれに聞いたかということはすぐわかることでありますから、今後の法的な問題の追及云々に絡んでも、やっぱりその方たちの立場を守らなければいけないと思いますし、それから、やはりこれからの進展のために、むしろそれを明かすことは、いたずらにメディアを騒がすことになるだけで、私はプラスにならないと思いますし、銀行側の説明を了としたわけであります。

○佐藤産業労働局長 他の経費等の分析についてもう少し行うべきではないかというお話でありますが、先ほどもお答え申し上げましたけれども、再建計画をごらんいただきますとわかりますとおり、人件費にしろ物件費にしろ、相当な圧縮をもって今後の経営をしていくということが明記をされておるわけでございまして、そのことの遂行を我々は注視していかなければいけないと、そういうふうに思っております。

○西岡委員 済みません、先に局長の答弁にお答えしますが、過去の反省なくして次に向かえるんですか。それはあり得ないと思うんですね。その姿勢では新再建計画の行方が本当に心配をされます。
 また、知事からはるるご説明いただきました。私も、訴訟の行方にかかわる資料ということになれば、この内部調査報告書の本編というものの位置づけというものが大変微妙だなというふうに思いますし、理解できるところであります。しかし、しかしです、同時に私たちは、新銀行東京の経営悪化の全容を解明もしなければならないんですね。ここで私は、新銀行東京の、この間の東京都に四百億の出資を求めた新銀行東京の姿勢というものは大変、甚だ間違っているし、失礼だと思っております。
 改めて要望いたしますけれども、局長から、また知事からそういうご答弁がありましたけれども、裁判に影響が及ぶと判断される範囲や個人情報などをマスキングして、より精査をして、新たに資料の提出を銀行側に求めるべきだと思いますが、ご見解を伺います。

○佐藤産業労働局長 本日の委員会の冒頭で申し上げましたけれども、個人名、また個人名が類推をされてしまう部分、それからまた、今後の可能性のある訴訟についての影響が出てくる部分、こういう問題があって報告書は公開をされないと、こういう銀行側の判断に対して、都としてもそれを理解をしたということでありまして、さらにそういう意味で両方の個人名等々の問題、それから今後の訴えに対する影響の問題、それらを、ないところにつきましては、先般公表されました調査報告書概要のとおりでありまして、現在のところ、これ以上の公表は難しいということをご理解いただきたいと思います。

○西岡委員 ちょっと残念なご答弁でありました。これはやっぱり再度求めるべきだと思うんですね、より精査をして新たな資料というものを、つまり概要版よりも詳しくわかるものをですね。
 確かに裁判の行方も大事です。それは我々も否定しません。代表執行役に対しては、きちっとした責任が負われるべきだと思います。ただ、同時に、議会で今、四百億の追加出資が必要なのかどうかを議論している段階でありまして、東京都は、その議会に対して真摯な姿勢を示さなきゃいけないんじゃないですか。その姿勢がないというのは、私は大変疑問であります。
 続きまして、次の質問に移ります。
 これまでの質疑で、津島現代表執行役の後任が新たに選任される見通しであることが知事からも答弁をされておりますが、具体的な後任人事構想というものがまだ示されておりません。知事も、モデルカーと運転手というように、経営計画と経営者は実は一体のものであります。旧経営陣の責任を強調するなら、具体的な人事構想も一体で示すのが、これは筋なのではないでしょうか。選定作業は行われているのでしょうか。だれが候補者になっているのか、知事に伺いたいと思います。

○石原知事 これからの人事はまさにこれからのことでございまして、先般からるる局長が説明しておりますけど、銀行は墜落ぎりぎりのところまで来ているわけです。これがもし墜落すればもっとたくさんの死者を出すわけですよ。それを救うために、このタイミングで私たち四百億の追資をお願いしたわけでありましてね。ですから、これから裁判なら裁判が行われるとしたら、そこで、その中でもっと皆さんが今要求されている詳細な事実関係がわかってくると思います。それをもって了としていただきたいと思います。

○西岡委員 それをもって了といいますけれども、新銀行東京が陥った原因の大きな一つに、やっぱり人事があったわけですよ。この人事構想が示されずに、あの七枚でしたっけ、新再建計画、あれだけ。あれと補足資料をもって四百億の追加出資をしてくれというのは物足りないんじゃないですかね。
 しかも、知事はよく、発想に限界があると、役人出身では発想に限界があるとおっしゃっています。しかし、この新しい再建計画は、知事が発想に限界があるという人が代表を務めているもとで作成されたものではないでしょうか。そこのところをぜひご理解いただきたいと思います。
 最後に、この新銀行東京の問題で私は最も大切なことは、新銀行東京への四百億円の追加出資への都民の理解についてであります。理解をされているかどうかであります。
 私は、これまでの議論を通じて、また私のところにもいろんな方から意見が来ます。都民の理解を得るには、五つの観点が重要だというふうに認識をしています。
 一つは、事業清算、預金保険法に基づく破綻処理、追加出資という東京都が検討した残された三つの選択肢の中で、本当に追加出資という選択肢が最もベストであり、追加出資をしなければ、中小企業に多大な影響が及び、金融不安を招き、都民にも多大なコストが発生するという想定も含まれた理由だけで本当に判断できるのかどうか。
 二点目が、再出資はしないと明言してきた大株主である東京都が、なぜこのような事態に至るまで放置をしていたのか。銀行発足以来、東京都の大株主として責任が果たされていたのかどうか。
 三点目に、四百億円の追加出資により、新銀行東京が本当に生まれ変わって、これ以上赤字を生じさせず、追加出資の追加が求められることなく、本当に新しい再建計画に実現性があるのかどうか。
 四点目に、三年間で一千億円超毀損した、尋常ではない一日一億円が消えていく計算になる経営が行われ、提携や合併などの打診が行われても民間市場からの賛同を得られなかった新銀行東京には、今後も民間企業として銀行業を存続していく意義があるのかどうか。
 五点目に、経営実態が詳細に、全体的に、客観的に評価、公表され、ビジネスモデルを含めた経営計画と経営者の手腕が、全般にわたって総括が行われ、正しくない経営が行われていた際の経営者や知事である任命者の責任が都民の納得のいくものになっているかどうか。
 この五つの観点であります。私は、これまでの質疑を通じて、これらの疑問にはいまだ答えられているとは思いません。
 知事は、これまでの予算委員会総括質疑を通じて、今申し上げた五つの都民の疑問に十分に答えられていると考えられていますでしょうか。最後に知事のご見解を伺いたいと思います。

○石原知事 質問の仕方あるいは回答の仕方でいろいろ余波があると思いますけど、決してすれ違いではなしに、今まで説明してまいりましたが、選択肢は三つしかないんですよ。どう考えてもないんですよ。そうすると、四百億の追資のお願いというのは、大変こちらもつらいことですし、了とされる方だってやっぱりつらいと思います。しかし、目前に迫っている墜落を考えれば、これはやっぱりセコンドベストといいましょうか、これしか施策がない。これ以上死者を出したくない、損害を出したくないということでこれをお願いしているわけで、その要するに三つしかない選択肢のどれがせいぜいのベストであるかということの、その選択についての成否というのは、私は必ず都民に理解していただけると思っております。

○西岡委員 知事の視点もあるでしょう。しかし、新銀行東京が、この示された新再建計画で四百億円追加出資をされて、離陸できるかどうかの確証がまだないのであります。そのことも大事なんですよ。こんな大変なことが起きちゃうからということだけじゃなくて、離陸できるかどうかの確証が、まだこの議会ではしっかりと認識ができておりません。そのことをぜひ知事は認識をするべきであるというふうに思います。
 これまで私たち都議会民主党の質疑を通じても、知事や東京都側の姿勢を見ても、また、四百億円の追加出資の要請をしている新銀行東京の姿勢や内部調査報告書の概要を見ても、私はいまだ都民の理解、四百億円追加出資すべきだという都民の理解は得られていないというふうに思います。現時点では、知事の精神論だけでの四百億円の追加出資をしてくれと、そこまでしか私たちはまだ理解できておりません。そのことを私は申し上げ--不退転の決意はわかりました。でも、もう今回ここで判断を誤ったら、それこそ大変なことになります。そのことを我々は肝に銘じています。そのことを申し上げて、次の質問に移りたいと思います。
 次に、大きな二問目として、児童生徒への災害時ボランティア訓練の推進の取り組みについて伺ってまいります。
 定期的な避難訓練や学校校舎の耐震化が重要であることはいうまでもありませんが、きょうの視点は、青少年たちが他人の命を守ることや、積極的に災害時の救急救命活動や避難所でのボランティア活動に従事することを学ぶことも極めて重要で、自他の命を守る教育の実践であります。
 私は、体力的にも、中学生以上ならば、避難訓練だけではなくて、率先して人助けの側に立って災害時のボランティア活動に従事していくべきであると常々考え、決算委員会でも提案をしてまいりました。
 児童生徒たちは、生活の大半を自宅や学校とその周辺地域で過ごしているので、災害が起きたときに、地域に存在している青少年の存在は非常に重要であり、実践的な訓練を年齢に応じて学んでいけば、大震災のおそれがある東京においては大きな戦力になります。
 現状では、こういった取り組みを行っている高校や中学校も幾つかはあるようですが、まだまだ不十分であります。災害時ボランティアを学ぶということは、教育的観点に立っても、不足していると指摘される公共的精神を養い、奉仕の精神を学ぶことは人間的成長にもつながります。
 私の地元の小金井市では、ことしの二月二日、青少年への取り組みに極めて熱心な小金井消防署が主催し、地元消防団、災害ボランティア、地域自主防災組織と連携し、市内中学生を対象に、「地域と中学生を結ぶ防災体験ふれあい広場」と題した都内初の試みが行われました。また、小金井では公立中学校が五校ありますけれども、既に三校において、地元小金井消防署が消防団と連携し、全校生徒を対象とした学校独自の災害ボランティア訓練を実施しております。この取り組みも都内では初の試みであり、新聞でも大きく報道されました。残りの学校もこれから行われる予定であります。私も市内全域を対象とした訓練や学校独自の取り組みの双方を視察してまいりました。この訓練内容は、極めて大人顔負けの本格的な内容でありました。また、参加した子どもたちのアンケートでは、今回の体験を生かせるが九一%など、防災意識を高める効果があることがわかります。
 小金井の事例でもわかるように、災害時ボランティア訓練を実施する上で、東京消防庁との連携も不可欠であります。東京消防庁と連携した災害時のボランティア訓練の実践をさらに広める必要があると考えます。この取り組みの教育的意義とあわせてご見解を伺いたいと思いますし、また、消防総監には、この取り組みのパートナーとして欠かせない存在です、児童生徒に対する防火防災教育をどのように考えているのか、最後に伺いまして、質問を終わりたいと思います。

○中村教育長 児童生徒は、お話しのように、その年齢に応じまして避難所における救護活動の手助けや倒壊家屋の後片づけ、人命救助など災害復旧活動に貢献すべきでありまして、災害時のボランティア訓練を行いますことは、奉仕の精神を学び、社会に貢献できる資質や能力を育成するために大変よい機会になるというふうに考えております。
 これまで、都教育委員会は、安全教育の推進校におきまして、児童生徒の災害時のボランティア訓練を東京消防庁の協力を得て実施してまいりました。
 今後は、引き続き推進校の実践を公開するとともに、実践事例を紹介する啓発資料を作成、配布するなどいたしまして、東京消防庁とより一層連携した災害のボランティア訓練を普及してまいります。

○小林消防総監 小中学生が、防火防災に関する知識、技術を身につけておくことは非常に重要なことと認識しております。
 東京消防庁では、小学生に対し、各種災害や事故から身を守るための知識や行動力の習得、また、中学生を対象に、軽可搬消防ポンプ等による消火訓練や、AEDを活用した応急救護訓練を行うなど、防災行動力を高めるための防火防災教育に取り組んでおります。
 今後とも、小中学生に対する指導マニュアルの充実を図りますとともに、教育関係機関等との連携を深め、防火防災教育を積極的に実施してまいります。

○大沢副委員長 西岡真一郎委員の発言は終わりました。(拍手)

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