東京都議会予算特別委員会速記録第三号

○三宅委員長 酒井大史委員の発言を許します。
   〔委員長退席、大沢副委員長着席〕

○酒井委員 それでは、まず初めに新銀行東京について質問いたします。
 私からは、昨日、我が会派の政調会長が行いました質問に対する答弁を踏まえて、新銀行東京の再建計画につきまして、少し細かくなりますけれども、計数面から質問をさせていただきたいと存じます。
 去る六日、自民、民主、公明の三会派で行った勉強会において、新銀行東京の執行役員よりお伺いをしたところ、貸出先について、法的に破綻状態にあるものが六百件、八十六億、延滞期間が三カ月以上六カ月未満あるいは条件変更しているものが五百二十件、五十四億、延滞期間が六カ月以上あるいは弁護士が介入しているものが千百件、百三十二億円とのことでした。
 しかし、昨日の答弁では、法的破綻、延滞などの会社が約千五百五十社、約百八十億円としております。
 さきの法的に破綻状態にあるものと六カ月以上の延滞先とを合算しただけでも、千七百社、二百十八億円になると思いますけれども、都の延滞先のとらえ方についてお伺いをしたいと思います。

○佐藤産業労働局長 ご指摘のありました計数の相違でございますが、六日の勉強会で新銀行東京がご説明申し上げました六百件、八十六億、五百二十件、五十四億、千百件、百三十二億円につきましては、それぞれの債務者区分に応じた平成十九年十二月末現在の融資実行ベースの件数、金額を申し上げたところでございます。
 また、昨日答弁を申し上げました約千五百五十社、約百八十億円につきましては、十九年十二月末現在の残高のベースの件数、金額を申し上げたところでございます。
 なお、これには、三カ月未満延滞している案件が含まれております。

○酒井委員 今の答弁によりますと、融資実行額ベースと残高ベースという違いがあるということですので、その点については了解をいたしました。
 同じく昨日の答弁では、大企業向けの融資等が約五十社、千二百億円で、業況低迷先が二千四百社、約百二十億円とのことでしたが、これに先ほどの千五百五十社を足すと四千社になり、これを一万三千社から引くと、健全な返済先とされる九千社になります。
 ここで確認をいたしますけれども、三カ月以上六カ月未満延滞している会社五百二十件は二千四百社に含まれているのか。
 さらに、五千六百三十五社が赤字あるいは債務超過としておりますけれども、一般的にはこれを業況低迷先というのではないかと思いますけれども、その定義をお伺いいたします。
 また、健全とされる返済先九千社のうち何社が赤字あるいは債務超過の状態にあるのかも伺います。

○佐藤産業労働局長 まず、業況低迷先の定義としましては、新銀行東京では、返済はされておりますけれども、総合的に見て現段階で財務状況が脆弱であると判断した先を指しております。したがいまして、新銀行東京の融資先のうち、三カ月以上六カ月未満の延滞をしている会社、この五百二十件は業況低迷先の二千四百社には含まれないということになります。
 健全先の内訳につきまして、具体的な件数につきましては、営業情報にかかわるものでお示しすることはできませんけれども、健全返済先九千社の中には、赤字、債務超過先の一部は含まれております。

○酒井委員 今、この九千社の中に延滞先等も含まれているということでありました。
 ここで質問をいたしますけれども、この再建計画では、健全な返済先九千社をもとに、今後三年間で延べ一万八千社と二千百億円の融資・保証を実行するとしておりますけれども、新銀行東京としては、赤字、債務超過先に対しても今後新たな融資を行うのか。
 一方、五十社といわれる大企業とは、本来の設立趣旨に合わせて取引をしないのか、お伺いをいたします。

○佐藤産業労働局長 一般的に、赤字、債務超過先への融資・保証に当たりましては、延滞もなく今後成長が期待できる先につきましては、審査の上、個別の状況に応じて対応してまいります。
 また、再建計画は中小企業への資金供給を中心に据えているということから、原則として大企業は対象としないというふうに考えております。

○酒井委員 ただいまの二つの質問に対するご答弁を合わせますと、この再建計画の中で示されている九千社の中にも、数は示せないけれども、赤字、債務超過先が含まれているということで、それらの会社とは、今後、個々の状況に応じて融資をするかしないかということを決めるという話ですけれども、そうであるならば、この再建計画における融資・保証の実行計画の健全であるという基礎といったものが揺らぐことになるのではないかと思います。これは意見にしておきますけれども、その上で、次に収益見込みについてお伺いいたします。
 二十年三月見込みでは百四億円の収益見込みであるものが、来年度末の二十一年三月予想では六十七億と七〇%以下に減少しております。融資残高額の半数にも及ぶ大企業との取引を直ちにやめるのであれば、この数字も理解できるわけですけれども、その理由をお示しいただきたいと思います。
 ただ、あえていわせていただければ、この大企業との取引を直ちにやめるのであれば、新銀行東京の経営面を考えれば、せっかく収益が見込める企業との取引をやめるということで、今後の再建計画自体も不安が残るものとなると思いますけれども、いかがでしょうか。

○佐藤産業労働局長 基本的には、現在取引をされております相手先とは、約定弁済の期限が切れるときに、次をどうするかと、こういうことになりますので、来年度一気に全部大企業を切るとか、そういう形には当然ならないというのは前提になると思いますが、新銀行東京の再建計画では、今までの事業実績の中で着実に利益が見込める事業に重点化をしていくということで、事業の三本柱を立ててやっているわけです。
 一方で、既存事業、今既に貸し出しをしている、その残高は、当然、約定弁済の期限に伴って減少をしていくことから、既存貸出先からの利息収入は一方では減少すると、こういうことになりますが、そのため、利益の見込みも計画の中で少なくなるというふうになっております。

○酒井委員 ただいまご答弁はいただきましたけれども、当然、順次返済を受けて減っていくということであることは理解できるわけですけれども、この既存事業における貸出残高については、以前、これは大体三年で返済をされるものが多いというお話を聞いておりました。
 資料がないので、詳細な分析といったものはできないわけですけれども、仮に一年たって残債の三分の一が返済された場合、新たに七百億円の融資・保証が実行されるのであるならば、当然、これは七〇%ではなく、もう少し多目の収益といったものが見込めることになるのではないかと考えるわけです。
 この点については、うがった見方をすると、収益を低く見積もっておいて、来年の三月になったら予想よりもよい結果が出たと、よかったよかったということにしようと考えているのではないかなということも思ってしまうわけですけれども、その点については意見として申し上げさせていただきたいと思います。
 次に、人員削減について、現在の四百五十人を段階的に百二十人にまで減らすということです。労働行政を担当している産業労働局がこのような大規模なリストラを容認していること自体も本来問題であると考えますけれども、それへの対応は別途考えていただくこととして、人員体制について、資料第183号で示されておりますけれども、現行の焦げつきを少しでも減らすために、債権回収部を設置し回収努力を図る計画があるのか、また、与信管理を徹底するための人材はどうするのか、お伺いいたします。

○佐藤産業労働局長 新銀行東京では、債権回収のための専管組織を設けるということは考えておりませんが、再建計画では、これまでの融資・保証における問題点と改善点を踏まえまして、新たな与信管理体制の充実に結びつけてまいります。
 また、人材育成につきましては、さまざまなデフォルト事例の検証、また社内研修、これらを充実いたしまして、与信管理に重点的に人員を配置していくと計画しております。

○酒井委員 来年度においては、不良債権処理関連経費として百九十八億円を予定しておりますけれども、法的に破綻状態にある融資先のほか、どのような範囲の融資先を処理する計画なのか、お伺いいたします。
 また、処理対象とする融資先からの回収見込みについてはどのように考えているのか、伺います。

○佐藤産業労働局長 今お話のありました、不良債権処理関連経費として百九十八億予定をしているということでありますけど、これは個別貸倒引当金として計上しているところでございまして、これは現在、デフォルトが高いということがありまして、さきの再建計画の中で、予想以上にデフォルトが発生して、それに対応できないといけないということで、かなり厚目に組み上げた部分が、ここで、先ほどお話のありました不良債権処理関連経費として計上されております百九十八億円ということであります。
 そういう意味では、これは従来の債務者区分でいきますと、破綻懸念先以下の部分について、どれだけのパーセンテージでここへ見込むかというところがポイントになりますけれども、これを相当高率で見込んでおりますので、今実際に起きているデフォルト、それより高い確率で起きたとしても、既にそれは引き当てていると、こういうようなことで、再建計画の堅実さを示す数字というふうにとらえていただいた方が結構かというふうに思います。
 ただ、お話がありました債権の回収のこの努力につきましては、先ほど申し上げましたような人的な配置を厚目に置きまして十分な体制を組んでいきたいと、そういうふうに考えております。

○酒井委員 次に、預金残高についてお伺いしたいと思います。
 これから四年間で、現在の預金高の約二十分の一となる二百億円にまで減らしていくという計画でございますけれども、新銀行東京としてはどのような形でこの残高を減らしていくのか。これはみずから減らしていく計画なのか、それとも、預金者が新銀行東京離れをするということを想定した数字なのか、お伺いをいたします。

○佐藤産業労働局長 決して預金離れを想定したような形でもってつくり上げているわけではございませんで、平成十七年から四回実施をされました特別金利キャンペーン、これは最長でも五年間の期間であります。段階的に預金残高は当然減少してまいります。また、今後の預金残高については、貸出残高とのバランスを踏まえまして、最適量を確保していくということにしております。

○酒井委員 今、バランスを考えて最適量を確保していくということでしたけれども、その最適量の確保の仕方といったものについては、これまで行っていたような金利の優遇、セールみたいなことをやって集めるのか、その集め方についてお伺いします。

○佐藤産業労働局長 今までのキャンペーンによる預金の獲得、これが経営圧迫の一つの原因というふうに考えておりますので、決してそのような集め方はしないというふうに考えております。

○酒井委員 また、バランスシートを見ておりますと、有価証券の売却も進めるようでありますけれども、新銀行東京が保有している有価証券の種類と簿価に対する現状の評価額、運用状況と売却見通しについてお伺いいたします。

○佐藤産業労働局長 新銀行東京の平成十九年九月末現在におけます有価証券の種類と評価額ですけれども、国債、社債を中心とする債券二千六百五十二億円、投資信託等のその他の証券三百四十二億円で、合計二千九百九十四億円でございます。
 運用状況は、有価証券利回りが〇・七四%。売却についてでありますが、有価証券は短期で運用していることから、満期となった時点で、預金の払い出し状況に応じて順次現金化をしていくというふうに聞いております。

○酒井委員 今、有価証券の種類と運用状況についてはご答弁をいただいたわけですけれども、その中で投資信託等についても有価証券を持たれているということです。これは国債とか社債、社債はちょっと違いますけど、国債であれば、大体買ったときの値段というのは固定をしておりますよね。しかし、投資信託等については購入時の基準価格と現在の価格といったものは当然違うはずです。含み益があったり含み損があったりするものです。これはどこかの一定の基準を設けて算定をしなければ明らかになりませんので、その基準を設けて明らかにしていくべきであると思いますけれども、これは新銀行東京の財務内容を知る上で重要な数字ですので、お答えをいただきたいと思います。

○大沢副委員長 計測をとめてください。
 理事者においては、速やかに答弁をお願いいたします。
 計測を始めてください。

○佐藤産業労働局長 投資信託等のこの先についての評価損の計算については、ちょっと私どもはわかりません。

○酒井委員 今、わからないという答弁でしたので、ここで出せ出せといっても出てこないと思いますけど、これについてはしっかりと調べて、例えば十二月の末時点でも結構ですので、調べて報告はしていただけますか。

○佐藤産業労働局長 この先の計画上の含みのお尋ねですか。

○酒井委員 先じゃなくて、有価証券、今持っているんでしょう。

○佐藤産業労働局長 ええ、持っております。

○酒井委員 持っているものに関して、購入時の価格と現在の含み益、含み損がどうなっているのかと聞いているんです。

○佐藤産業労働局長 わかりました。そういう意味では、調べてご報告をさせていただきます。

○酒井委員 今、調べていただけるということでしたので、早急にその回答をいただきたいと思います。
 昨日の質問の中で、事業清算の質問に対して、事業清算とは、一部省略をしますけれども、預金者と健全な融資先の保護を前提に段階的に事業を縮小し、清算会社に移行ということを述べていましたけれども、今回の再建計画を見ていると、預金残高を四千七億から二百億に減らし、貸付残高を二千五百四十五億から四百四億円に減らすといった、まさに事業縮小を図り清算への道を歩んでいるようにも見えますけれども、今回の追加出資は清算への延命策ではないのか、見解をお伺いします。

○佐藤産業労働局長 この議会で何度もお話を申し上げておりますけど、今回の再建計画は、これまで蓄積をした営業ノウハウとか反省点とか、そういうものを踏まえまして、事業を重点化して、都との連携の強化を図りながら、今後成長が期待されるニュービジネスへの重点支援でありますとか、事業意欲の高い既存顧客への継続的な支援等、事業の重点化を図って、平成二十三年度には単年度黒字化をして経営再建を図るということにしている、これは何度もお話をしているところでございます。
 都としては、このような新たなビジネスモデルを着実に実施することで経営再建が図られるということを確信しております。清算への延命策というようなことはありません。

○酒井委員 ここまでの質疑を通じましても、再建計画の実現性についての不安は払拭されません。
 ところで、三月十日付の毎日新聞には、開業前に当初計画の収益目標を非公式に下方修正した事業計画を作成し、民間企業に出資を求めていたとする記事が掲載をされていました。
 この問題は三年前の開業直後にも指摘されたものでありますけれども、私の手元にも、当時、都議会に説明をしていた事業計画よりも厳しい見方をしている事業計画なるものがあります。この資料については、その真偽の問題もありますので、直接その内容には触れませんけれども、少なくとも当時、知事は記者会見で、いろいろなシミュレーションをするのは当然との趣旨の発言をされております。
 今回我々に示されている再建計画についても、最良のケース、最悪のケースなどさまざまなシミュレーションをしているのではないかと思います。三年前と同じ轍を踏まないためにも、我々の判断材料として、想定されているすべてのシミュレーションを明らかにすべきと考えますが、見解を伺います。

○佐藤産業労働局長 今、十七年当時の定例会に際しての下方修正のような話の事例がございましたけども、これは当時も、今お話にもありましたけども、本会議で、シミュレーションを行うのは当然であるという、その中での話でありまして、マスタープランを具体化するに当たりまして、新銀行が開業手続を進める中で、金融庁へ検討資料を提出しているわけです。マスタープラン以外の経営計画は存在しないと。また、新銀行東京は開業手続の中で、新銀行マスタープランを具体化したさまざまな資料を金融庁に提出してきました。参議院の財政金融委員会におきまして、金融庁はこれらの資料を、審査におけるさまざまなやりとりの過程で出てきたドキュメントというふうに答弁をしておりまして、この問題については明快に否定をされてきております。それをちょっと申し添えさせていただきます。
 お話のありました点につきましては、新銀行東京では、今回再建計画を策定するに当たりまして、さまざまなシミュレーションを行ったというふうに思いますが、これは現在公表されておりますものが、経営者が責任を持って決めた唯一の計画であります。
 都としては、今回示された再建計画に基づき新銀行東京の再建を支援してまいります。

○酒井委員 今、さまざまなシミュレーションはしていると思うが、経営者が責任を持って提出した再建計画だというお話がございましたけれども、通常、これは投資信託みたいなものなんですよね。東京都に投資してくださいといっているわけですよ。そうすると、当然、投資を求めるからには、通常の計画だけではなくて、どういったリスクが発生するのかということをしっかりと投資家に対して説明をして投資を求めるのが当たり前じゃないですか。いろんなシミュレーションがあるということを想定しているのであるならば、なぜ東京都として新銀行東京に対して、ほかのシミュレーションに対してもちゃんと東京都の耳に入れろ、そして議会にも説明をしろということをいわないんですか。その点について最後にお伺いします。

○佐藤産業労働局長 今回示されました再建計画は、新銀行東京が今後の経営を行う上で、責任を持ってこれで大丈夫であるということで計画をしております。その計画が認められないということになりますと、るる申し上げますとおり、この銀行に関係をしております融資先等に多大な影響が出るということをもって、今回いろいろお願いしているわけで、こういう計画そのものにつきましては、新銀行東京が自分たちの足元を見詰めた中で確実な計画を出してきたというふうに我々も判断をしているわけです。

○酒井委員 今の答弁を聞いても、ますますこの再建計画の信憑性といったものを疑わざるを得ないことを申し述べて、次の質問に移らせていただきたいと思います。
 次に、固定資産税等における評価についてお伺いをいたします。
 来年度予算に占める都税収入は約五兆五千九十六億円でございますけれども、そのうち固定資産税を初めとした不動産に関する税収は合計一兆三千二百三十一億円を見込んでおり、都税収入における割合は二四%にも及んでおります。
 都税収入の中では、業績によって変動する法人二税等に比べ安定した収入が見込める税目であり、さらに、都民の財産である土地、建物、償却資産に対し、課税庁である東京都が賦課している賦課税であることから、申告税にも増して課税の透明性や公平性を確保しなければならず、その基礎となる固定資産の評価に関しては、納税者の理解を十分得て、納得して納税していただく環境を整備することが重要であります。
 そこで、今回は、そのうち家屋分に関する固定資産税等について質問をいたします。
 まず、東京都においては、家屋に対し賦課したこれらの課税額の算定根拠について、地方税法で定めた方法によって行っていると思いますけれども、課税額の算定根拠を納税者に告知、開示し、納税者の納得を得ているのか、伺います。
 また、その課税額の算定根拠の算出方法は再建築価格方式を採用しておりますけれども、具体的にどのように行っているのか、お伺いいたします。

○熊野主税局長 固定資産税等の課税標準は、対象資産の適正な価格とされておりまして、その算定基準は総務大臣が告示いたします固定資産評価基準によることとされております。
 具体的な価格の算定は、原則として納税者の立ち会いのもとに実地調査を行いまして、また、一定規模以上の家屋の場合には、設計図書を借用して、これらに基づいて行っております。調査の際に税の仕組みや評価の方法等をご説明申し上げるとともに、価格の決定後は、価格や課税額、納付時期等を説明し、さらにご不明な点がある場合には、算定過程の書類を説明責任の一環として開示してございます。
 これらによりまして、ほとんどの納税者からご納得をいただいていると考えております。
 また、再建築価格方式につきましては、対象家屋と同一の家屋を評価時点で再度建築した場合に必要とされる建築費を算出するものでございまして、再建築価格が家屋の価格の構成要素として基本的なものであること、また、その評価の方式化も比較的容易であることから採用しております。
 その具体的な算出の手順といたしましては、まず、対象家屋に実際に使用しております建築資材の標準的な単価とその使用量を積算いたしまして、対象家屋の再建築費評点を求め、次に、家屋の現状によりまして、建築時からの経過年数による減価または損耗の程度に応じた減価を行い、これらに評点一点当たりの価額を乗ずることによって算出するものでございます。

○酒井委員 ただいまのご答弁によりますと、不明な点がある方には、算定根拠の書類を説明責任の一環として開示をしているということでございましたけれども、納税者からの賦課税の算出根拠の開示請求があった場合、東京都は積極的に開示をしているのか、お伺いいたします。

○熊野主税局長 算定根拠となる資料の開示につきましては、価格決定を行うための調査段階におきましても、納税者から納税資金の準備等のための特段のご要望があれば、価格の概算額や納税時期等をお知らせしてございますが、資料自体の開示は価格決定後でございまして、納税者から質問があった場合に、評価基準や調査票等の資料を積極的にお示ししながら、算出の根拠や具体的な算出過程について丁寧にご説明を申し上げております。
 また、新築以外の既存家屋につきましても、納税者から質問があった場合には、積極的に資料をお示ししながら説明を行っております。

○酒井委員 ただいまの答弁では、積極的に資料を示しているということでございましたけれども、開示請求に当たって、納税者が課税根拠である再計算費評点数計算書等の開示請求をしたところ、職員の対応が不親切で、郵送ではだめだ、取りに来いということをいわれたと聞いておりますけれども、主税局としては各都税事務所にそのような通達を出しているのか、お伺いいたします。

○熊野主税局長 課税の根拠となる資料につきましては、個人情報を記載した資料でございますので、個人情報保護条例に基づく情報開示と同様な扱いをしております。
 この個人情報保護条例に基づく開示請求につきましては、請求に係る個人情報の本人またはその法定代理人であることの確認を厳格に行うこと、開示については実施機関が指定する場所において行うこととされておりまして、このため、全庁的な取り扱いといたしまして、原則として郵送による開示は行っておらず、この旨を各都税事務所に周知しております。

○酒井委員 ただいまの答弁では、個人情報保護条例を根拠にしておりますけれども、郵送での申請にどのような問題点があるのでしょうか。
 市町村においては郵送での請求に対応しておりますし、例えば課税通知については郵送で送っております。仮に代理人による申請であったとしても、送付先を当該本人である納税者の住所地に送れば問題はないのではないかと思います。
 百歩譲って、申請自体は窓口に来てもらい、本人や代理人の確認をしたとしても、その場で開示できないときには郵送で対応すべきであると思います。そうでなければ、積極的に開示をしていないと思うわけですけれども、いかがでしょうか。

○熊野主税局長 納税通知書につきましては、地方税法に基づきまして郵送してございますが、課税の根拠となる資料につきましては、ただいまご答弁申し上げたとおり、個人情報保護の観点から、全庁的な取り扱いとして、原則として郵送による申請及び開示は行っていないものでございまして、主税局におきましても、こうしたルールに基づいて積極的に開示を行っております。

○酒井委員 今、課税通知の場合と開示請求の場合の違いについて、二つの根拠をお示しいただきましたけれども、個人情報保護の観点からいうならば、課税通知の方がよほど、税金の額が書いてあるわけですから個人情報としては重要なはずですよ。その根拠たる資料といったものは、これは個人情報で課税通知は税法だという、この違いについて、やはり一貫性がないと思いますので、これについては改めて納税者の利便性を図ることを求めておきます。
 開示請求に対しまして、資料の破棄を理由に開示をしていない例があると聞きますけれども、これは事実でしょうか。もし事実であるとすれば、財産権への課税であるにもかかわらず、その課税額の根拠とする資料を破棄していることは問題であると思いますけれども、いかがでしょうか。

○熊野主税局長 家屋に係ります再建築費評点の積算を行いました資料である家屋計算書、これにつきましては、平成八年度作成分までは、課税処分の取り消し等に係る期間制限に合わせまして保存期間を五年としておりました。このため、計算書の作成後五年間を満了したものにつきましては、東京都文書管理規則に基づきまして廃棄をしたものでございます。
 なお、平成六年度の評価基準の大改正以降、固定資産評価に関する納税者からの質問が増加したことなどを踏まえまして、文書保存期間表を改定いたしまして、平成九年度作成分以降の家屋計算書につきましては、家屋の滅失から七年間保存することとしております。

○酒井委員 ただいまの答弁によりますと、平成九年度作成分以降は保存して開示をしているけれども、平成八年度作成分以前のものについては破棄をしたとしております。
 しかし、ここに二つの資料があるわけですけれども、同じ都税事務所内で同じ年度の書類についても、これは平成六年度基準ですね、一つは破棄をしたという通知が来て、もう一つは開示がされているんですよね。ということで、同じ年度であって同じ都税事務所の中であっても、処分をしたといわれるものと処分をしてないといわれるものがあります。
 この実態といったものを早急に各都税事務所ごとにまとめて報告をさせるとともに、先ほども申したとおり、これは課税の根拠になる書類ですから、もともと捨てるということ自体があってはいけないものだと思いますので、破棄を直ちに凍結させて保存を図る必要があると思いますけれども、いかがでしょうか。
 ちなみに、多摩地区の市町村については、この書類については永年保存をしております。どうですか。

○熊野主税局長 文書管理規則上、保存期間を満了した文書を保存していることは、原則好ましくないと考えておりますが、ただいま申し上げた文書保存期間表の改定を踏まえまして、平成八年度以前の家屋計算書であっても、保存スペースの関係であるとか、事務処理の関係で現存しているものにつきましては、現状を把握の上、現在の保存期間表に従いまして、当該家屋の滅失から七年間保存することとなると思います。

○酒井委員 今、保存していただけるということでしたが、くれぐれも、調べてあったから捨てちゃいましたというようなことがないように、しっかりとその点については通達を出していただきたいと思います。
 この問題は、本来、申告税であれば納税者の責任であります。しかし、固定資産税等に関しては賦課税である以上、算定根拠の説明責任は評価庁である東京都にありますし、仮に評価額の算定根拠に間違いがあった場合は東京都の責任であると思います。納税者からの算定根拠の間違いを指摘された場合には、速やかに是正をすべきであります。
 東京都においては、東京都固定資産(家屋)評価事務取扱要領の中で、救済制度として、審査の申し出に先立つ制度として都独自の制度である再調査制度を定めております。この制度自体は透明性や公平性を担保する制度として大変望ましい制度であり、平成十七年度までは納税者にとって大変有益な制度でございました。しかし、平成十八年における要領の改定において、随時受け付けとした以外は本制度を利用しづらい内容に変わっております。
 一例でありますが、平成十五年版においては、再調査を慫慂するといった記述もありましたが、これが削除されたり、また価格等の修正に関して、不利益とならない場合としていたのに、これも削除したのは、本制度の利用を望んでいないとしか思えません。本要領の次回改正時における是正を求めるとともに、直ちに運用を変える必要があると思いますが、見解をお伺いいたします。

○熊野主税局長 再調査制度は、納税者の申請に基づいて評価庁が評価内容を再検証する制度でございます。審査申し出に至る前に窓口での処理を図ることによりまして、納税者の利便性を高めるために都独自で設けたものでございます。
 平成十七年度までは、今申し上げたように審査申し出に関連づけた制度であったために、実施を審査申出期間中に限るとともに、申し出に対する裁決と同様に、再調査による不利益変更は行わないこととしておりました。
 これに対しまして十八年度からは、課税の適正、公平を確保するために、納税者から疑義があればいつでも再検証を行うべきこと、また結果として誤りがあれば当然これを正すべきと、そういった観点から、制度の見直しを行ったところでございます。
 これによりまして、再調査の実施方法につきましては、期間を限らず通年とするなど利用しやすい方向に改めるとともに、価格を修正する場合には、本来あるべき価格に修正することとしたものでございます。

○酒井委員 ただいまの答弁をまとめますと、結果として誤りがあれば、当然これを正すべきとの観点から制度を見直したということであると思いますけれども、では、なぜ十七年度までは不利益変更を行わないこととしていたのかといった疑問が残ります。
 これは、課税をする評価庁の判断で評価していたにもかかわらず、仮に相違があった場合、納税者の協力を得て正しい形に更正しようとする都の積極的な思いがあったからではないでしょうか。また、行政不服審査法に不利益な処分をしてはならないと規定していることを根拠にしていたのではないでしょうか。
 この見直しは、地方税法四百十七条にある重大な錯誤を根拠としているのかもしれませんけれども、ちなみに、都としてはこの重大な錯誤というのはどのように解釈をしているのか。実際に価格修正を行っている判断基準について事例をお示しいただきたいのと同時に、現実の問題として、納税者から価格の修正を求められた件数、その結果価格の修正を行った件数、返還額はどのぐらいになるのか。内訳として審査の申し出を行ったもの、裁判に至ったもの、さらに再調査制度を使ったもの、評価員の判断によって評価を下げたものごとに、平成十五年から十七年までと十八年以降現在までの数字を明らかにしていただきたいと思います。
 また、十八年度以降において価格を上方修正した件数と金額も明らかにしていただきたいと思います。

○熊野主税局長 審査申し出は、納税者が評価庁の決定に不服がある場合、固定資産の評価について学識経験を有し、議会の同意を得て選任される委員で構成する固定資産評価審査委員会に審査決定させるものでございます。この審査委員会は、審査申し出の不服を審査する目的で設置されているため、その不服の範囲を超えて審査決定をすることはできず、結果、不利益な変更はできないこととされております。
 これに対しまして、私どもの独自の制度である再調査制度は、行政不服審査法による手続ではないため、そもそも不利益処分ができないという法的根拠はございません。再調査の結果、価格算出に重大な錯誤があったことを認識しながら、これを修正しないことがむしろ公平性を欠くこととなるため、平成十八年度から、法の規定に従って価格修正を行うよう改めたものでございます。
 その根拠となるのは、ご指摘の地方税法四百十七条でございまして、審査庁の裁決等によらず、評価庁自身が価格算出に誤りがあったと認識した場合に、本来あるべき価格に修正することを義務づけた規定であります。この場合にも納税者は、修正された価格に不服がある場合には、この修正された価格について審査申し出はできることとなっております。
 なお、重大な錯誤の事例といたしましては、評点項目や数量の誤認、計算誤謬、補正率の適用誤謬、床面積の適用誤謬等々がございます。
 さらに、件数でございますけれども、都の所管する家屋は全体で約百七十万棟と膨大でございまして、納税者から価格の修正を求められたすべての件数を把握はしてございませんが、制度にのっとって価格修正を求められた件数について申し上げますと、家屋について再調査を実施した件数は、十五年度が十五件、十六年度が七件、十七年度が四件、十八年度が六件、十九年度が七件でございます。
 これにより価格の減額修正を行った件数とその減額税額は、十五年度は七件で百五十九万七千八百円、十六年度は四件で一千六百七十三万九千円、十七年度は二件で五十六万五千円、十八年度は四件で九十三万一千二百円でございます。十九年度は六件で九十六万二千七百円でございます。
 家屋に係る審査申し出につきましては、十五年度は三十一件が提出され、その価格の減額修正を行った件数と減額税額は三件で三千九百七十九万八千三百円でございます。十六年度は十五件、十七年度は十六件、十八年度は三十四件、十九年度は一件の申し出がございましたが、価格修正になったものはございません。
 また、家屋に係る訴訟は一件でございまして、十五年に提起され、十八年に高裁判決で都が勝訴し確定したため、価格修正はしてございません。
 次に、十八年度以降において再調査制度により価格の増額修正を行ったものは、十八年が二件で十五万六千二百円であり、十九年度はございません。

○酒井委員 ただいまの答弁によると、実際に価格の評価を下げているということがあるということです。これは、納税者は役所を信頼して任せているのに、間違いがあるのはその信頼を裏切ることですので、事前にこういった書類を見せていくことも必要であると思います。
 本来、これは納税者からの課税根拠説明を受けた書類を受領してから課税すれば避けることができると思います。この点について、事前に課税根拠を示すことについての見解を求めて、質問を終わります。

○熊野主税局長 価格決定前の説明についてでございますが、本来、不動産取得税や固定資産税等の課税は、課税庁がその権限と責任に基づいて行うものでございまして、事前に納税者と協議し、承諾を得て行うものではございません。
 さはさりながら、納税者の十分な理解を得て適正に執行していくことも大変重要であるために、価格の縦覧制度が設けられ、不服がある場合には審査申し出ができる仕組みになってございます。
 都においては、これに加え、さらに再調査制度を独自に設けており、納税者の理解を求める取り組みは十分に行っているものと考えております。

○大沢副委員長 酒井大史委員の発言は終わりました。(拍手)

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