東京都議会予算特別委員会速記録第三号

○小磯副委員長 林田武委員の発言を許します。
   〔小磯副委員長退席、委員長着席〕

○林田委員 先ほど公明党の谷村議員から、横田基地の軍民共用化についての質問がありました。谷村議員も私も横田周辺の自治体を選挙区とする議員でございまして、横田基地のいろいろな課題、そして動きについては、まことに関心が深いということで、横田基地の軍民共用化について質問させていただきます。
 横田基地では、先月、二月十五日に航空自衛隊航空総隊司令部が府中基地から横田基地へ移転することに伴い、移転推進式典が行われました。私も地元の都議会議員として出席させていただきました。移転は、平成二十二年度を目途に、平成二十二年九月に横田基地内に航空総隊司令部の庁舎が完成し、自衛隊用の通用門や、自衛隊の隊員の宿舎、食堂、厚生施設、補給倉庫などが新設されます。同時に、米軍側の既存施設も建てかえられ、費用はいわゆる日本の思いやり予算の中で、平成十九年度、百四十三億円、平成二十年度、百三十六億円が支出されます。
 このように、現在、横田基地では日米軍軍共用化が進んでいます。横田基地は、日米の防空作戦の司令部機能として指導統制を担うこととなりました。このような状況の中で、石原知事が公約に掲げている軍民共用化はどうなるのだろうかと思う一人であります。情報が届かない日米によるスタディーグループの協議や、今後の方向性について、どのようになっているのか、横田基地を囲む自治体にとって大きな関心事であることは申し上げるまでもありません。
 そこで伺いますが、横田基地に移転する航空自衛隊総隊司令部については、航空総隊司令部とともに、同じ府中にある空自の作戦情報隊と防空指揮官など隊員六百人が配置され、自衛隊機の飛来回数が年間約四百回程度あると聞いております。このように米軍と航空自衛隊との連携強化が横田基地において進む中で、航空総隊司令部の移転は、都が進める軍民共用化にどのような影響があるのかとお伺いをいたします。

○大原知事本局長 現在、横田基地におきましては、日米両政府により合意をされました在日米軍再編の一環といたしまして、航空自衛隊航空総隊司令部の移駐の準備が進められております。
 国の説明によれば、移駐に伴いまして自衛隊の航空機が常駐することはなく、米軍の人員や規模についても大幅な変動はないということでございます。
 こうしたことから、航空総隊司令部の移駐は、軍民共用化に直接影響を与えるものではないというふうに認識をしております。

○林田委員 軍軍共用化が進む一方で、軍民共用化の日米協議については、在日米軍再編のロードマップに示されたスタディーグループでの検討期限を経過したものの、協議は引き続き継続されると聞いております。
 こうした中で、今月、いわゆる杉山委員会主催の横田基地軍民共用化推進セミナーが開催されるようですが、セミナーを開催するねらいは何か、お伺いいたします。

○大原知事本局長 今回のセミナーでは、米国の専門家にも講演をお願いしておりまして、日米の専門家から軍民共用化の意義や、米側から見た軍民共用化実現に向けた課題などにつきまして論じていただくことになっております。
 セミナーは、地元はもとより経済界や国内外の関係者と多方面からの参加をいただき開催をされますが、軍民共用化についての議論が一層深まりますとともに、日米の相互理解が進み、両国政府間の協議促進につながることを期待しております。

○林田委員 引き続き継続される日米協議ですが、これに関する最近の報道によると、米側の姿勢はかたくなで、協議を前進させるのには容易ではないと感じております。こうした状況を打開するには、これまで以上に協議促進に向けた働きかけを強めていく必要があると考えます。
 改めて知事に、軍民共用化に対する今後の取り組みと決意をお伺いいたします。

○石原知事 先ほど局長の答弁にもありましたが、加えて申し上げますと、日本の航空自衛隊の本部が横田に移ってくることは、私はむしろこちらにとっての一つの好都合な条件になると思います。ということはですね、ちょっと問題を起こして引退しました前次官、守屋次官も、このことについては非常に協力的でありましたし、それに付随して何度か会いました航空自衛隊の最高幹部たちも、アメリカがあそこを占有していることに非常に不満を持っておりました。
 その理由はるるありますが、いずれにしろ、アメリカの最近のペンタゴンの報告を見ましても、アメリカが日本に構えている空軍基地の中でフェイタルに、非常に致命的に大事なものは、三沢と、岩国と、沖縄の嘉手納でありまして、相変わらず横田は単なる兵たん基地でしかありません。それをですね、しかも、日本で一番長い滑走路を持ちながら、ほとんど使わずに放置してあるというのは大変心外な話でありますが、いずれにしろそういうことでですね、大分前になりますけれども、小泉・ブッシュ会談でも、これを検討するという合意が得られたわけです。
 いずれにしろ、これは、我が国全体の利益にかなう重要な国家的プロジェクトでありまして、有事の際の兵たん基地としては、かつてはベトナム戦争で、アメリカの兵隊の死骸をあそこで、外科医が来て、つなぎ合わせて、お棺に入れて送るという作業でしか頻繁に使われなかった。その後はがらあきの横田基地を、平時には民間と共用して使うということは当然のことで、決して無理な要求ではないと思います。
 ただ、基地の既得権に固執する米側の姿勢は、太平洋戦争のあれがアメリカにとって遺産である、そういう放言が表象するように、今日の世界情勢の中での日米関係というものの意味合いをしんしゃくしていない、非常に無神経なものだと私は思いますが、いずれにしろ、日米関係の存在意義というものを真摯に考えることで、この問題は当然解決できる問題だと思っております。
 さきに向こうの、ペンタゴンの、国防省のゲイツ長官が来ましたときにも、日本側の高村外務大臣が、東京の立場をしんしゃくして、決してこれで終わらせずに、重要な外交問題として協議を続けてくれということの言質をとりました。
 いずれにしろ、先ほどもずっと申し上げましたが、アメリカが難渋を示しているのは、非常に、ための口実でしかありませんで、あそこに弾薬庫があります。それでセーフティーアーク、つまり、あそこへ爆弾等を運び入れたりするときの危険の範囲が云々ということで、それと、あそこで落下傘とかヘリコプターの演習をしている。こんなものは、ほかに用地がたくさんあるわけですから、そこで行えばいいんで、いずれにしろ、そんなものは理由にならない。
 ただ、向こうが一番反発しましたのは、これはやっぱりちょっとこちらも反省といいますか、譲歩の余地があると思いますのは、要するに、既存の基地の中にターミナルを含めて物をつくるということには、非常に彼らは、要するに反発していまして、これは、周りにあいている用地もございますから、そこにそういうものをつくっていくという、そのために新しいアクセスも構えるということで、十分これからの議論のプラスの素材になると思っております。
 先ほどの質問にも答えましたけど、やっぱりウイン・ウインというんでしょうか、両方とも得るものがあるような交渉の条件というのをこれから整え直して、協議に臨むつもりであります。

○林田委員 先日の横田基地の移転推進式典に出席させていただきまして、いよいよ軍軍共用化が始まるのかな、動くのかなということを実感いたしました。
 今、知事が、国家的プロジェクトと申されました。国策だということで、この軍軍共用化に対しましては、意外と周辺自治体も容認しているわけであります。むしろ自衛隊と連携し、まちの活性化につながるのではないかという、そんな期待も地元では大きな声があるわけであります。
 このような状況の中で、知事の軍民共用化への取り組み、決意を今お伺いしたわけでありますけれども、同時に、私は議会で重ねて申し上げておりますけれども、地元の対策、周辺自治体の理解と協力を深めていただきたい。今、新しいアクセスのことも考えているというお話をいただきまして、心強く感じた次第でございます。
 次に、教育について伺います。
 特に、都教育委員会で、この一月に第二次東京都教育ビジョンの中間まとめを公表され、最終的な公表に向けて策定中の教育ビジョンについて、幾つかお尋ねいたします。
 教育委員会では、平成十六年四月に東京都教育ビジョンを策定し、さまざまな教育施策を進めていることは承知しておりますが、まず、現行の東京都教育ビジョンの主な施策の進捗状況について伺います。

○中村教育長 現行の東京都教育ビジョンは、二十一世紀の東京、ひいては日本の創造的発展を支える人間の育成の視点から、現行制度にとらわれず、中長期的な展望に立って策定したものでございます。
 今回、進捗状況を点検しましたが、教育ビジョンで示しました大半の事項につきましては、予算や重点事業に反映させ、着実に実施しております。
 例えば、ビジョンでいっております教員養成のあり方の見直しは、現実には、東京教師養成塾を開設いたしまして、学生段階からの実践的指導力の育成に取り組んでおります。
 また、ビジョンでいっておりました奉仕体験、勤労体験の必修化は、現実には、平成十九年度からすべての都立高校で教科「奉仕」を必修化し、生徒の社会貢献の精神や地域と連携した教育活動の充実を図っております。
 いずれの取り組みも国に先駆けてスタートいたしまして、他の地方公共団体にも広がりつつあります。

○林田委員 東京都教育ビジョンを踏まえて、都教育委員会が国をリードする先進的な施策を推進してきたことがわかりました。
 ところで、教育基本法を初めとする教育関連の法令改正や教育再生会議の提言、教育振興基本計画の検討など、教育をめぐる動きは激しいものがあります。さらに、本年度末には学習指導要領も改訂される予定と聞いております。
 また、教育問題も多様化して、子どもたちの学力低下、学力格差の拡大や、いじめ、不登校問題、また、教員の多忙感などが指摘され、それを一つ一つ解決の糸口を見つけることは大変なことだと思います。しかし、教育は国家百年の大計であります。日本の未来を担う人材を育成していかなければなりません。
 今議会で、我が党吉野幹事長の代表質問の中で、都が目指すこれからの教育において、子どもたちに身につけさせたい力は何かとの質問に対して、教育長は、自分の未来を切り開く生きる力をはぐくむことが重要であると答弁されました。
 そこでお聞きいたしますが、生きる力とは具体的にどのような力なのか、お伺いいたします。

○中村教育長 変化の激しいこれからの社会の中で、子どもたちが自分の未来を切り開いていくためには、確かな学力、豊かな人間性、健康・体力の三つの要素から成ります生きる力をはぐくむことが、ますます重要でございます。
 知識、技能に加えまして、みずから学び、主体的に判断、行動し、よりよく問題を解決することのできる確かな学力と、みずからを律しつつ、他人と協調し、他人を思いやる心や感動する心など、豊かな人間性、さらに、たくましく生きるための健康や体力などの力を総称して生きる力といっております。

○林田委員 都が目指す教育の方向として、生きる力、まさに知、徳、体のバランスある成長をはぐくむことが教育として大切なことだと思います。
 そこで、子どもたちにとって知、徳、体教育について伺います。
 まず、子どもたちに確かな学力を育成することは、子どもを持つ親として共通の願いであります。このことについて施策はどう考えているのか、伺います。

○中村教育長 都教育委員会では、基礎的、基本的な知識、技能の習得と、それぞれの教科で身につけた知識、技能を活用する学習活動を重視し、児童生徒の確かな学力を育成する教育を推進してまいります。
 また、基礎的、基本的な内容に関する指導の徹底を図るため、小学校、中学校、それぞれの段階で、すべての生徒に身につけさせるべき事項等についての指導基準、東京ミニマムを示してまいります。
 さらに、知識、技能を活用する力、思考力や判断力、表現力、学習に対する意欲などを育成し、伸ばしていけるよう、都及び国の学力に関する調査の結果等をもとに、授業改善の視点や効果的な指導例を資料として示すなどいたしまして、各学校における学力向上に取り組んでまいります。

○林田委員 子どもたちを社会の責任ある一員に育てるためには、その発達段階に合わせて、規範意識や公共心、思いやりの心など、人間として大切な心を育成していくことも教育の重要な役目だと思います。これまで取り組んでこられたこと、今後の施策として考えていることを伺います。

○中村教育長 子どもたちを社会の責任ある一員に育てるためには、その発達段階に即しまして、規範意識や公共心、思いやりの心などを育成していくことが必要であります。
 都教育委員会は、子どもたちの規範意識や思いやりの心は、学校、家庭、地域における教育を通じてはぐくまなければならないことから、これまで小中学校等で、道徳授業の地区公開講座に取り組んでまいりました。
 今後は、道徳授業の指導方法の改善や、教材の研究開発、社会的ルールや法に関する教材や指導方法の開発、福祉に関する学習の推進、家庭における生活習慣の確立やマナーの育成などの取り組みを行い、子どもたちに規範意識や思いやりの心などを育成してまいります。

○林田委員 次に、子どもたちの体力、健康づくりですが、東京都の「十年後の東京」施策の中にも、スポーツを通じて次代を担う子どもたちに夢を与えるという大きな指針があります。
 都は、二〇一六年オリンピック・パラリンピック東京招致に取り組んでおり、また、平成二十五年には東京国体が開催されます。子どもたちのジュニア期からアスリート育成システムも重要でありますが、子どもたちの体力向上、健康な体力づくりは大切です。今後の施策として考えていることをお伺いいたします。

○中村教育長 健康な体や体力は、人間の発達や成長を支える基盤となっており、学校、家庭、地域が連携を図り、幼いころから基本的な生活習慣を身につけるとともに、体を動かし、生涯にわたって積極的に運動やスポーツに親しむ習慣や意欲、能力を育成することが重要でございます。
 都教育委員会では、家庭教育への支援として、就学前の子どもを持つ保護者を対象に、生活習慣確立の取り組みを行ってきたところでありますが、今後はさらに対象を拡大し、乳幼児期からの教育支援を進めてまいります。
 また、学習指導要領の改訂を踏まえまして、学校体育を一層充実し、児童生徒が運動やスポーツに親しみ、積極的に体力づくりに取り組むよう指導するとともに、栄養教諭や食育リーダー等を中心に、食に関する教育を充実してまいります。

○林田委員 次に、地域人材活用について伺います。
 現在、教育現場では、学校の教職員だけで多様な教育課題に対応していくのは限界があります。これから退職を迎える団塊の世代の方々の中には、優秀な方々がたくさんおられます。学校内外を通じた子どもたちの教育活動に、こうした多様な人材を活用していくことは重要だと思います。
 平成十九年から始まった放課後子ども教室等の活動では、コーディネーターやスタッフなどで地域に精通した方が、まさに必要です。地域の方々が子どもたちの教育活動に参画することは、ご自身の自己実現につながるとともに、教師の多忙感の解消や教育効果の面でも大変有効だと思います。また、地域の教育活動の活性化にもつながると思います。
 社会総ぐるみで子どもの教育に取り組んでいく必要があるかと思います。都において、こうした人材育成や活用をどのように進めていくのか、お伺いいたします。

○中村教育長 都教育委員会では、これまで地域教育推進ネットワーク東京都協議会におきまして、学校と外部の社会資源をつなぐ教育支援コーディネーター研修や、企業と連携いたしました教育プログラムの開発を行うなど、地域の教育力を生かす取り組みが推進されるよう、区市町村を支援してまいりました。
 地域では、ボランティアによる学習支援や図書館での読み聞かせなど、子どもたちを支援する自主的な活動も進められておりますが、今後、都民の教育活動等への参画が一層進むよう、本協議会の活動内容を拡充し、学校教育への支援活動や学校教育外活動を担う地域人材、いわゆる教育サポーターの育成を図ってまいります。
 平成二十年度には、学校のニーズを反映した研修・養成プログラムを開発、作成し、二十一年度から養成を行ってまいります。

○林田委員 続いて、職員団体のことについて伺います。
 文部科学省の調査結果によると、教職員が加入する職員団体の組織率が三十二年連続低下し、平成十九年十月一日現在で組織率が四五%、このうち教員の全国組織で最大組織である日本教職員組合、いわゆる日教組においては、組織率が二八・三%、加入者数で二十九万百五十二人となり、昨年に続き三十万人を下回ったとなっております。
 私は、学校の先生という職業は、単なる労働者とは違うんだと思っております。教師は、私たちの子ども、人を預かる選ばれた人であり、その職は聖職であると思っております。人の生命と財産を守る警察、消防の職員と同じであります。
 今この場で教職員の職員団体活動について申し上げる時間もありませんが、加入者数や加入率が減少しているということは、先生の聖職としての自覚が高まっている証左かなとも思います。
 そこで、教育庁としてどのように現状を認識しているのか、お答えできる範囲で結構ですので、お伺いいたします。

○中村教育長 お話のように、都内の公立学校におきます教職員の職員団体への加入状況につきましては、十年前、平成九年の十月時点では、教職員総数の七万九千八百六名に対しまして、職員団体への加入者数は四万五千八百十五名でありまして、当時の加入率は五七・四%でございました。
 一方、十年後の平成十九年の十月時点では、教職員総数六万八千八百八十七名に対しまして、加入者数は二万五千六名でありまして、加入率は三六・三%になりました。
 このように、都におきましても、全国的な傾向と同様、加入者数、加入率ともに減少傾向にございます。

○林田委員 次に、学校における国旗・国歌についてですが、平成十一年に国旗・国歌が法制化され、都教育庁では、平成十五年十月二十三日には国旗・国歌の指導を徹底する通達を出しました。
 教員は、子どもたちに国旗・国歌を尊重する態度を指導すべきであります。これに反対する一部の教職員は、国歌斉唱のときに起立しないという、まるで逆の姿をあえて子どもたちに見せるという状況もありますが、そのような教職員はわずか〇・六%と伺っております。
 総合的に見て、都内小中高、特別支援学校とも、入学式における国旗・国歌が徹底されていると聞いておりますが、現状をお伺いいたします。

○中村教育長 都教育委員会はこれまで、学習指導要領に基づきまして、入学式や卒業式が適正に実施されるよう、通達を発出するなどして都立学校を指導してまいりました。
 その結果、通達発出後の平成十五年度の卒業式以降、すべての都立学校において、国旗が式典会場の壇上正面に掲揚されるとともに、ピアノ伴奏等により国歌斉唱が実施されております。
 義務教育の学校におきましても、区市町村教育委員会の指導によりまして、全校で入学式や卒業式が適正に実施されております。
 しかし、ご指摘のように、ごく一部の教員ではありますが、国歌斉唱時に起立しないなど、児童生徒の目の前で国旗・国歌を尊重しない態度を示すという課題もございます。
 今後とも、すべての教員がその職責を自覚し、学習指導要領や通達に基づき国旗・国歌の指導を適正に行うよう、各学校を指導してまいります。

○林田委員 次に、多摩地域に対する財政支援について伺います。
 平成二十年度の予算案を見ますると、法人二税を含む都税収入は、過去最高となる五兆五千九十七億円が見込まれ、一般会計予算は六兆八千五百六十億円、前年度対比三・八%の伸びとなり、四年連続の増加となりました。
 石原都政が出発した平成十一年ころは一千億円もの赤字を抱え、以来、石原知事は積極的な人員削減、全局での行財政改革を進め、都財政を立て直してまいりました。
 石原知事は、二十年度の重要施策として、「十年後の東京」への実行プログラム二〇〇八を掲げました。総事業数三十九施策、三百三十四事業、三カ年で一兆七千億円、二十年度は四千七百億円という大きなプロジェクトであります。都も私たち議員も、全力を挙げて実現、達成のために努力していかなければと思っております。
 東京都では、毎年のように多摩振興に対するプロジェクトを策定していただいております。私が議員になってからでも、ちなみに、平成十三年、多摩の将来像二〇〇一、平成十五年、多摩アクションプログラム、平成十七年、多摩リーディングプロジェクト、平成十九年、多摩リーディングプロジェクトの改訂と、次々と多摩振興施策が打ち出されました。
 一概に多摩の市町村といっても、都市化されたところや山間過疎化のところまで、さまざまであります。私は、特に財政力の弱い西多摩町村の振興策に力を入れてもらいたいと思っておりますが、多摩全体を考えても、区部に比べてまだまだインフラ施策が必要であり、財政支援が必要であると思っております。
 都の施策を見ると、いつも多摩に対しては、ポテンシャルの多摩地域、自然と緑の多摩地域、学園都市多摩などなどで、いま一歩、財政支援を含めて、多摩の振興策の充実、実現に向けて取り組んでいただきたいというのが率直な考えであります。
 そこで質問いたしますが、このように、行政サービスの提供や財政運営などさまざまで厳しい現実に直面している多摩地域であります。毎年、市長会や町村長会、市町村議会からも、東京都の財政支援を、行政支援をという強い要請が届いていると思いますが、どのように受けとめ、今後どのように取り組んでいく考えなのか、見解を伺います。

○押元総務局長 ただいま林田委員がご指摘になりましたとおり、多摩地域が重要かつ喫緊の課題を数多く抱え、また厳しい財政状況にありますことは、都も十分認識をしております。
 こうした状況を踏まえまして、都は、昨年改訂いたしました多摩リーディングプロジェクトや「十年後の東京」への実行プログラムにおきまして、多摩振興策をこれまで以上に充実強化し、例えば他県と連携したシカ被害地への抜本的対策などの新規施策を盛り込んだところでございます。
 また、地域の振興には、市町村自身の創意工夫によりますまちづくりも不可欠でございます。このため、市町村に対する包括的な財源補完制度でございます市町村総合交付金につきまして、過去最高額を更新する三百八十億円を予算計上いたしますとともに、公共施設整備等に要する資金をお貸しする区市町村振興基金につきまして、財政状況の厳しい市町村を対象に、高金利貸付分の借りかえを実施するなど、財政支援を充実することといたしております。
 今後とも、全庁を挙げた都の取り組みと市町村に対する支援とをより有機的に連携させることによりまして、これまで以上に積極的に多摩の振興を図ってまいります。

○林田委員 ただいまご答弁いただきましたとおり、都では、市町村に対する総合交付金、二十年度予算で、昨年よりも四十億円増の三百八十億円を計上していただきました。市町村にとって総合交付金の大幅な増加ということは、各市町村では本当にありがたく、感謝いたしております。
 しかし、欲をいえば切りがありませんが、東京都の人口の三分の一を擁し、また同じ都民として、区部に比べてどうなのかという思いがどうしてもあります。ある首長さんが、都から地方へ三千億円の支援はやむを得ないと思うが、欲をいうなら、都内市町村への財政支援がさらにあってもいいのではないかという声もありました。こういう声があることもしっかり受けとめていただきたいと思います。
 もう一つ要望させていただきます。
 奥多摩町の都営水道一元化ですが、私は昨年の三定の一般質問でお願いをし、我が党の川井政調会長が四定の代表質問の中でこの促進方を質問し、強く要望いたしました。今、知事本局、総務局、財務局、水道局で検討組織を設置し、精力的に検討中ということですが、奥多摩町の大きな犠牲をもって完成した都民の水がめ、小河内ダム--昨日「しょうがない」ダムというのは知事に初めて聞きました。そういう状況でつくられました。
 小河内ダム竣工五十周年を昨年十一月に迎えたこの機会に、奥多摩町の願望であります都営水道一元化の促進、実現を改めてお願い申し上げます。よろしくお願い申し上げます。
 次に、林道整備の促進について伺います。
 地球温暖化対策が強く叫ばれている中、東京の緑を守ることは極めて重要であることは申し上げるまでもありません。東京都では、緑の東京十年プロジェクト基本方針を策定し、緑あふれる東京の再生を目指しておりますが、特にその中では、都の面積の約三割を占める森林の果たす役割は非常に大きいものであります。
 ところで、東京都では、森林所有者が行う間伐への支援に加え、奥多摩町、檜原村を初め、八王子市、青梅市、あきる野市、日の出町など六市町村の森林約一万八千ヘクタールを対象に間伐を実施し、森林再生を進めております。しかし、現場では、間伐しても切りっ放し、搬出できないというのが実態です。それは林道がないからであります。
 林道の整備は、間伐の搬出だけではなく、林業経営、産業振興はもとより、花粉症発生源対策、シカや獣害対策、森林火災への対策、山岳救助など不可欠であります。
 そんな大切な林道でありながら、東京都の民有林林道網整備計画に位置づけられている林道路線の整備はなかなか進んでおりません。今、財政に少し余裕があるうちに林道整備の促進を図らなければ、森林再生も花粉症--今は知事、花粉症ですけれども、よろしくお願いします。花粉症発生源対策も手詰まりになるということは目に見えております。
 森林整備の根幹をなす林道整備についてどのように取り組んでいくのか、お伺いいたします。

○佐藤産業労働局長 林道は、間伐材を含め、木材を搬出し利用するために必要不可欠な基盤施設であるというふうに認識をしております。しかし、多摩の山は急峻かつ地形が複雑で、林道工事に多額の経費、また時間がかかることから、迅速な整備が難しいという状況にあります。
 そのため、複雑な地形に配慮した設計、また、急峻な地形に合わせた工法の工夫を行うなど、林道の効率的な整備に努めております。さらに、平成十九年度からは、木材の搬出を促進するため、林道整備に加えまして、林道の枝線といいますか、支線となる作業道の整備を開始しております。
 今後とも、さまざまな工夫を行いまして、作業道も含め、林道の整備を積極的に進めてまいります。

○林田委員 局長、作業道じゃだめなんで、林道でお願いいたします。
 次に、観光施策について伺います。
 私の地元西多摩では、豊かな森や緑、多摩川や秋川の清流など、自然の魅力が最大限に生かされた、都会にない観光資源の宝庫であります。しかし、昨年の調査によれば、西多摩地域における観光客の入れ込み数は、残念ながら減少傾向にあります。この原因としては、西多摩地域の魅力が十分に発信されておらず、旅行者のニーズに合った体験メニューや、遊歩道、案内板等の観光インフラが不足しており、魅力のある観光ルートが整備されていないことが調査などで指摘されております。
 西多摩地域により多く観光客を誘致するためには、広域行政を担う観点から、地元自治体や観光関連団体等が取り組むPR事業や観光ルートの整備などを都が積極的に支援すべきであると思いますが、所見を伺います。

○佐藤産業労働局長 西多摩地域の観光振興を図るためには、地元自治体や観光関連団体によります主体的な取り組みを支援することが重要であると考えております。
 都はこれまでも、観光協会に対しまして、地域の活性化に向けた方策などについて専門的な立場から助言をいたしますアドバイザーを派遣してまいりました。また、遊歩道の整備や観光案内板の設置、観光ルートマップの作成など、市町村が取り組む観光施策を支援しております。さらに、今年度は、西多摩地域の四季折々の魅力を紹介いたしますDVDを作成しますとともに、ウエブサイト「東京の観光」などを通じまして、多様な観光資源や地域が行う観光イベントのPRを行っております。
 都は今後とも、多くの観光客の誘致に資する地元の取り組みを積極的に支援してまいります。

○林田委員 西多摩地域へ訪れる都心からの観光客のほとんどが日帰りであります。地域への経済効果を考えると、観光客が宿泊して長い時間滞在してもらうことが重要であります。
 奥多摩町では、都心の住民が週末などに滞在し、農作業や地域の自然や文化等を体験する滞在型農園、いわゆるクラインガルテンを本年度オープンいたしました。入居希望者は定員の二倍に達する人気と聞いております。
 西多摩地域には、それぞれ魅力的な観光資源や宿泊施設など点在しております。各地域が特色ある体験メニューなどを充実させ、受け入れ体制の整備を行い、地域間が連携して広域的観光視点に立ったまちづくりを進めていくことが有効であると思います。
 そこで、西多摩地域における広域的な観光まちづくりの取り組み状況や今後の展開について伺います。

○佐藤産業労働局長 西多摩地域に新たな人の流れやにぎわいを創出するためには、点在をしております観光資源を有機的に結びつけまして、回遊性の向上を目指す広域的な観光まちづくりが重要であると考えております。
 このため、昨年度から、青梅・奥多摩地域に観光の専門家を派遣いたしまして、体験メニューの充実や宿泊施設のサービス改善への取り組みを支援いたしますとともに、観光スポットを結ぶ誘導標識の設置などを行っております。
 来年度は、檜原村、日の出町、あきる野市におきまして、地域の特色ある観光資源の調査を実施いたしますとともに、専門家を派遣しまして、新たな観光エリアの魅力や活気を創出する広域的な観光まちづくりを推進してまいります。

○林田委員 次に、土砂災害対策について伺います。
 昨年、台風九号が私の地元であります西多摩地域を直撃いたしました。檜原村では、藤原地区に有史以来という一〇〇〇ミリもの大雨が降り、大規模な土砂崩れに見舞われました。
 都では、土砂災害のおそれがある箇所に対して、砂防ダムの整備などの対策を進めていますが、土砂災害は一瞬にしてとうとい人命と財産を奪うものであり、砂防施設の整備など、ハード対策が急がれております。
 そこで、こうしたハード対策の取り組み状況と二十年度の取り組みについて伺います。

○道家建設局長 都は、土砂災害から都民の命と暮らしを守るため、土石流やがけ崩れの危険性が高く、対策が必要な箇所において、想定される土砂災害の形態に応じ、砂防事業、急傾斜地崩壊対策事業、地すべり対策事業を実施しております。
 具体的には、災害を未然に防ぐ対策として、土石流の流下を食いとめる砂防ダム、がけ崩れを防ぐのり枠、地すべりの原因となる地下水を排水する施設などの整備を進めております。
 さらに、大雨や火山噴火により土砂災害が発生した場合には、緊急工事を実施しております。
 このように、多摩や島しょ部を中心に、土砂災害のおそれのある箇所や災害発生箇所について、これまで百八十二カ所で事業を実施し、地域住民の安全確保に努めてまいりました。
 平成二十年度には、前年度に比べ一・三倍の約三十一億円の事業費をもちまして、檜原村の藤原地区や大島の大宮沢など二十五カ所でハード対策を進めてまいります。

○林田委員 西多摩地域ではハード対策が必要な箇所がたくさんあります。砂防事業をより促進していただきたい。
 中でも奥多摩町では、シカ食害により山腹が荒廃し、土石流が発生しております。シカの食害箇所には砂防指定地が含まれております。シカの食害により荒廃している砂防指定地についてどのように取り組んでいるのか、伺います。

○道家建設局長 シカによる食害で荒廃した斜面では侵食が進み、大雨の際には土石流などの災害発生の危険性が高まっております。このうち、人家や道路を土石流などから守るために砂防指定を行っている地域では、防災事業を早急に実施し、災害を未然に防ぐことが急務となっております。
 現在、被害を受けている奥多摩町水根沢と峰入川支川の二カ所で、砂防ダムや山の斜面の安定を図る木さく工など砂防施設を整備し、あわせて緑化を行っているところであります。
 このようなシカ食害に対する砂防事業についても、国費などの財源確保に努め、着実に進めてまいります。

○林田委員 都内には約八千カ所もの危険箇所があり、砂防事業や急傾斜対策などハード対策を進めているものの、すべての箇所を安全にするためには膨大な時間と費用が必要となります。
 そこで、都は、警戒避難体制の整備に向けて土砂災害警戒区域指定を進めているものの、進捗状況は一割程度であると聞いております。青梅市などで警戒区域の指定が進められておりますが、一刻も早く他の地域へも拡大していただきたいと思います。
 そのためには、事業の推進に必要な体制を強化すべきだと思います。今後、ソフト対策の一層の推進、強化に向けてどのような体制で取り組んでいくのか、伺います。

○道家建設局長 土砂災害から都民の命を守るためには、災害体制の基礎となる警戒区域の指定と土砂災害警戒情報の提供が重要であります。
 都は、地元の理解と協力を得ながら、順次警戒区域の指定を進めており、平成十九年度中に、青梅市やあきる野市などで約七百カ所の指定を完了いたします。
 今後は、二十六年度までに、残る七千三百カ所の区域指定を完了させることを目指して、二十年度から、土砂災害対策を専門に担当する組織を設置するほか、業務の一部を外部委託するなど事業の推進体制を構築し、区域指定を加速してまいります。
 また、本年二月から、土砂災害警戒情報の提供を開始したほか、地元と連携した防災訓練を強化するなど、避難体制を充実してまいります。
 今後とも、地元自治体と連携し、ハードとソフトの両面から土砂災害対策を推進し、都民の安全確保に努めてまいります。

○林田委員 今後ますます地球温暖化が進展し、極端な大雨の増加など、気候の変動に伴って土砂災害の増加が心配であります。都として、都民の安全・安心のために、引き続き財源の確保、体制の強化を図って、ハード面、ソフト面の両面から土砂災害対策を推進していただくようお願い申し上げまして、質問を終わります。(拍手)

○三宅委員長 林田武委員の発言は終わりました。

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