東京都議会予算特別委員会速記録第二号

   午後七時一分開議

○小磯副委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 藤井一理事の発言を許します。

○藤井委員 初めに、都財政について伺います。
 私たちは、都が過去に三年間で一兆円もの税収減があり、結果的にぎりぎりの財政運営状況に追い込まれた事実を忘れてはなりません。税収は上下するのが当たり前という認識がなければ、過去と同じ轍を踏むことになります。
 都でも、バブル期以降の財政が厳しい時期には基金を活用してきているはずであります。安定的な都財政運営のため基金が果たしてきた活用の実績と、もし基金がなかったとした場合に想定される影響について、まず伺います。

○村山財務局長 都財政は、バブルが崩壊した以降の非常に厳しい状況のもとにあって、それまでに蓄えた基金を取り崩すことで都民生活への影響を最小限にとどめ、どうにか乗り切ってまいりました。
 具体的な取り崩し額は、まず、当時の都市交通基盤整備基金あるいは福祉施設整備基金など、いわゆる特定目的型の基金を平成六年度から八年度に計四千百五十億円、そして財政調整基金を平成七年度から九年度に計四千六百三十二億円でありまして、四年間合計の取り崩し額は約八千八百億円となりました。これにより、施策への影響を最小限にとどめることができたのであります。
 仮定のお話でございますが、その時期にもしこれらの基金がなかったとしたらということになりますと、方法といたしましては、都民サービスの一定の低下を覚悟して歳出を削減するか、または、起債を毎年、平均にならしますと二千億円程度になりますけれども、それを増発して対応するほかなかったというふうに考えております。
 仮に、もし起債で対応したとするならば、当時、ただでさえ相当起債額がふえておりましたので、毎年の起債額が一兆円にも及ぶ年が数年続いて、それがちょうど、その十年後ぐらいが現在の時点に当たりますので、現在においては、その償還費の負担によりまして、都財政は相当程度の負担を背負っていたというふうに考えております。

○藤井委員 ただいまありましたように、もし基金がなければ、毎年二千億円の規模で歳出をふやすしかなかったということでございますが、この財政が厳しい時期に、こうした基金の活用や都債の発行など、その時々の財政状況を考慮し、最も適切な財源対策を行う必要があります。その中でも基金の積み立ては、万一再び著しい税収減などにより厳しい財政状況になったとしても、適切な財政運営をするための選択肢を大きく広げることにつながるわけであります。特に特定目的の基金は、複数の年度にわたって集中的に施策展開を行うための財源として確保しており、それはすなわち都民のための施策推進にほかなりません。
 二十年度予算では、その一例として、十九年度に設置した三つの基金、すなわち、福祉・健康、地球温暖化、スポーツ・文化、この三つについて、事業費の財源として一部を取り崩すことを始めたわけであります。
 そこで、十九年度に設置した三つの基金の取り崩しについて、具体的に伺います。

○村山財務局長 十九年度に創設した福祉・医療、環境、スポーツ・文化の各分野の三基金につきましては、早速二十年度において合計で二百四億円を取り崩し、各基金の目的に合った都民サービスの向上に役立てることとしております。
 具体的には、充当事業といたしましては、新型インフルエンザ対策、事業所内保育施設支援事業、公立小中学校運動場芝生化補助事業、街路樹の充実、スポーツにおけるジュニア選手の発掘・育成事業などでございます。
 基金は、積み立てることはもとよりでございますが、その目的に合った施策を推進し、都民生活を向上させるため、いかに適切に取り崩すかが重要でございます。これら三基金は、「十年後の東京」の実現に向けた都政の重要な分野において、今後、集中的、重点的な財源投入によりまして積極的な施策展開が見込まれる事業に対して、十九年度に千二百億円を積み立てたものでございますが、今後とも福祉や環境、文化施策など都民生活の充実に積極的に活用してまいります。

○藤井委員 ハード、ソフトに限らず、この首都東京として膨大な財政需要に対応するために、今から準備を進めておくことは極めて重要であり、まさに都民のためであります。しかし、共産党は、相も変わらず基金をため込み過ぎであると批判をしております。しかも、わざわざ基金の額を大きく見せるために、都債の償還に必要な減債基金についても、あえて合算して二・九兆円という数字をつくり上げているわけでございます。これは、共産党が財政の仕組みを理解していないだけでなく、法人事業税の一部国税化の発端ともいえる東京富裕論をさらに助長させることにもつながる、まさに敵を利する利敵行為であり、無責任を通り越して悪意すら感じるものであります。
 以上、財政について質問を終わります。
 次に、新銀行東京について伺います。
 二月二十日、都は新銀行に対して四百億の追加出資をする補正予算案を出しました。同日、私たち公明党は、この党内に新銀行問題調査特別チームを結成いたしまして、きょうまでいろいろと調査研究を進めてきたわけであります。新銀行に勤めていた方からもお話を聞きました。あるいは銀行の経営に詳しい公認会計士からも話を聞きました。そしてまた、何といっても我が党には公認会計士である東村都議会議員がおりますので、これは他党に負けないだけの調査研究をしてきたと自負をするわけであります。
 そこでまず、新銀行東京は、開業後三年間で多額の不良債権を発生させ、平成十九年九月期の中間決算では九百三十六億円という累積損失を発生させました。この経営悪化の原因究明のため、何点か質問をいたします。
 昨日、この新銀行東京の内部調査委員会による調査報告書が発表されました。この報告書では、経営悪化をもたらした原因といたしまして、一つには、デフォルト発生を容認したかのような常識を逸脱した業務行為、二つには、甘い状況認識から致命的におくれたデフォルト対策、三番目には、取締役会に対するデフォルト発生実態の不適切な報告、四つ目には、代表執行役による反対意見を抑え込む経営、以上、四点を挙げて説明をいたしております。
 そこでまず、甘い状況認識から致命的におくれたデフォルト対策について質問いたします。
 新銀行東京のビジネスモデルは、スコアリングモデルの融資について、デフォルトをリスクに応じた利息収入でカバーするというものであります。しかし、報告書によりますと、平成十七年度下期に大量のデフォルト、二十四億円が発生をいたしまして、損失七億円を計上しましたが、この時点で踏み込んだデフォルト対策を実施しませんでした。平成十八年十二月に至って、ようやく厳しい属性チェックを導入するなどの踏み込んだデフォルト防止対策に着手をしたわけですが、それが大幅な経営悪化につながったとあります。
 そこで、二百八十五億円のデフォルトのうち、平成十八年十二月までに融資並びに保証をしてデフォルトになった金額と件数についてお聞きいたします。

○佐藤産業労働局長 新銀行東京調査委員会調査報告書に記載をされました、平成二十年一月末現在のデフォルトの累計二百八十五億円のうち、これは二千三百四十五件になりますが、新銀行東京に確認をいたしましたところ、平成十八年十二月までに融資が実行されたもののデフォルト額は二百七十五億円、二千二百五十七件であるとのことであります。

○藤井委員 二百八十五億円のデフォルトのうち、平成十八年十二月までの融資並びに保証額からのデフォルトは二百七十五億円とのことでございますが、これは全体の九六%に当たるわけであります。まさに報告書で指摘されたとおりのおくれたデフォルト対策といわざるを得ません。
 さらに、調査委員会の報告書においては、会計監査人の改善提案と当社の対応についての記載があります。その中で、会計監査人が開業初年度の時点で想定を上回るデフォルトが発生していたことから、十八年九月中間決算では一般貸倒引当金の額を、想定デフォルト率ではなく実績デフォルト率を使用するよう改善提案をいたしました。しかし、仁司元代表執行役からは、想定デフォルト率に基づく引き当てによる決算を行い、中間監査報告書は不要と回答をしていたことが報告されています。
 中間決算書の一般貸倒引当金の額は百十三億円でありますが、実績デフォルト率を使用すると約四百五十億円になり、何と四倍の開きがあるわけであります。しかしながら、仁司元代表執行役は、平成十八年九月の中間決算のディスクロージャー誌に、財務諸表等に記載された事項が適正に表示されていると記載した確認書を署名、捺印して添付しています。これがディスクロージャー誌二〇〇七年三月決算の報告書ですが、その一番後ろに、このように仁司代表が署名、捺印をしております。
 内容は、私は第八期中間事業年度にかかわるディスクロージャー誌について、財務諸表等に記載された事項が適正に表示されていることを確認いたしましたというふうに署名しております。この元代表執行役の確認書によって、東京都のみならず、我々都議会、そして都民も新銀行の正しい経営実態を知らされなかったわけであります。
 そこで、この元代表執行役の責任について、都の見解を伺います。

○佐藤産業労働局長 調査報告書では、デフォルト発生を容認したかのような常識を逸脱した業務執行、甘い状況認識から致命的におくれたデフォルト対策、取締役会に対するデフォルト発生実態の不適切な報告、そして代表執行役による反対意見を抑え込む経営など、仁司代表執行役等による企業運営の問題点を指摘しております。
 ご指摘のありました平成十八年九月中間決算時におきます会計監査人の提案を適時適切に経営判断に生かすことができなかったことも、そのうちの一例であります。株主にとりまして決算報告は、会社の経営実態を把握する重要な情報であります。ご指摘の事例は株主の信頼に背く経営判断であったというふうに考えます。
 都といたしましては、今回の報告を踏まえた、現経営陣によります今後の徹底した責任追及の推移を株主として注視してまいります。

○藤井委員 今後、都として、調査報告書にあるとおり、新銀行の現在の経営陣に対して、新銀行東京に損害を与えた代表執行役を初めとする旧経営陣の相応の責任を求めていくべきであると申し上げ、次の質問に移ります。
 都議会公明党は、さきの本会議代表質問において、経営状況が悪化した場合、民事再生や破産、事業清算など幾つかの選択肢があるが、その中で最も批判が集中しやすい追加出資による再建策を提示した理由を問いました。
 その際、都は、民事再生や破産などの預金保険法に基づく処理は、預金者や融資先に甚大な影響を与えるとともに、金融不安を引き起こすおそれがある、また、事業清算については、既存融資先への継続支援が難しくなるとともに、追加出資に比べ多額の資金が必要となると答弁をいたしました。この答弁を受け、さらに具体的に何点か質問を行います。
 第一番目に、この預金保険法による破綻処理についてであります。この方法は、新銀行東京が債務超過、または預金支払い停止等の場合に、金融庁の指導により発動される処理方法であります。確かに新銀行東京は債務超過でもなく、平成二十年三月期における決算見込みにおいて純資産が百五十億円になると試算されており、現時点では選択できません。
 そこで、もし仮に債務超過になったという前提でお聞きしたいと思います。預金保険法による破綻処理の場合、預金の処理方法、正常債権及び不良債権の処理方法、東京都の資金援助額並びに処理が終了するまでの期間についてお伺いいたします。

○佐藤産業労働局長 預金保険法の破綻処理は、債務超過または預金払い戻し停止のおそれがある金融機関に対して行われる措置でありまして、現在の新銀行東京には適用されませんが、一般的な方法として、金融整理管財人の管理のもとで、救済金融機関との合併や事業承継が行われるというのが一般的であります。
 預金の処理につきましては、一千万円以下の預金の元本、それと利息は保護されますが、これを超える部分につきましては、銀行の財務状況に応じてカットをされる、いわゆるペイオフが発動されることになります。一月末現在で一千万円を超える部分の預金は、法人、個人合わせまして九千六百十件、四百七十七億円に上る状況であります。また、そのうち個人顧客だけでも九千五百二十三人、三百十五億円に達しております。
 正常債権につきましては、受け皿金融機関へ、受け皿金融機関が見つからない場合、承継銀行へ譲渡されるという形になります。金融整理管財人によりまして円滑な業務承継等を図る観点から、承継銀行等に引き継ぐべき資産として選定をされなかった資産、いわゆる不良債権と認定された債権につきましては、整理回収機構に売却をされるということになります。新銀行東京の顧客は、無担保融資が中心でありますことや赤字、債務超過先が多いという現実があります。このことから、整理回収機構に移管される可能性は極めて高くなるというふうに想定することが妥当だろうというふうに思っております。
 中小企業等の融資先にとりましては、貸出債権が整理回収機構へ移管となった場合、社会的信用が失われること、また新たな融資が受けられなくなるというようなことから、事業継続が困難になるであろうというふうに考えます。
 破綻処理が終了するまでの期間でありますが、一概にはいえませんが、例として平成十五年に破綻をいたしました足利銀行の場合、まだ現在終了しておりません。相当長期間を要するものもございます。
 法的には、都の負担というものは生じませんが、我が国で最初のペイオフの実施に伴う影響ははかり知れず、国民経済上多大な損失が発生することは疑いがないものというふうに考えます。

○藤井委員 この方法によると、日本初のペイオフや正常債権が整理回収機構に回され、事業が存続できないおそれがあるため、最も避けなければならないという答弁でございました。
 第二番目に、事業縮小による清算処理についてであります。
 まず、預金保険法による破綻処理の場合と同様、この方法による預金の処理方法、正常債権及び不良債権の処理方法、また東京都の資金援助額が幾らになるか、そして処理が終了するまでの期間についてお伺いをいたします。

○佐藤産業労働局長 事業清算といいますのは、金融庁の認可を受けまして、銀行がみずから廃業するものであります。そのためには、協力銀行によります預金者、それと健全な融資先の保護、これを前提に段階的に事業を縮小いたしまして、清算会社に移行することが必要になります。
 この場合、預金者保護がまず大前提でありまして、すべての預金者の払い戻し請求に対応できる体制を整えなければなりません。新銀行東京は、これに対する資産は十分ありますが、預金の払い戻しに当たりまして、保有する有価証券等の売却とあわせて、約一千億円の資金を流動性確保という意味で確保する必要があります。
 また、清算によりまして融資継続が行われないということによりまして、既存融資先の経営悪化が発生することなどにより、融資返済の滞りから多額の損失の発生が予想をされます。
 損失額につきましては、確実な試算方法というのはございませんけれども、過去の同程度の貸出金規模を持ちました破綻をした金融機関の例を平均してみますと、五割以上の貸し出しの回収が見込めないということがあります。新銀行東京の例に当てはめてみますと、想定される損失の額は一千億円に及ぶものというふうに推計をされます。
 事業清算を行う場合には、まず第一に、預金払い戻しに対するための、先ほど申し上げました流動性補完の措置、それから最終損失が生じた場合の損失の補てん、加えまして協力銀行の確保、これが不可欠の条件となりますが、受け皿となります協力銀行の確保の見通しは立っておりません。これが現状であります。
 清算処理が終了するまでの期間につきましては、新銀行東京に預け入れられました預金、これは大半がキャンペーンの定期預金であります。預け入れ期間が満了するものから順次払い出しを行っていくということになると考えますが、最も遅い満期日は平成二十三年九月となっておりますため、例えば、それ以降直近の決算期である平成二十四年三月末に清算処理を完了するということになれば、約四年間を要することになるというふうに想定はされます。

○藤井委員 この方法によりますと、預金支払いのための資金が最大で一千億円必要となり、デフォルトに応じた損失補償も想定で一千億円必要とのことでございますが、平成十九年九月の中間決算書を見る限り、流動性ある有価証券の残高が約三千億円、そして、破綻懸念先、実質破綻先、破綻先債権についても、現在は三百三十五億円、十分な貸倒引当金を設定しているため、このような多額の資金は必要ないというふうに考えます。さらに、終息まで四年間という期間があることを考えれば、キャッシュ・フローとしても十分に対応できると考えるわけでございます。
 そこで、私はこの旧経営陣への責任追及をした上で、この方法を現実的にとり得るのではないか、このように考えますが、改めて事業清算ではだめなのか、見解を伺います。

○佐藤産業労働局長 事業清算が公表された場合、現在の預金残高四千億円がいっときに払い戻し請求される、いわゆるそれは取りつけ騒ぎというようなことが起きる可能性があります。新銀行東京は、これに対する資産は十分にありますが、直ちに現金化をできる有価証券などの流動性の高い資産だけでは約一千億円の不足が生じる、先ほど申し上げたとおりです。貸付金という形で都がこれを支援することが必要になると考えます。
 その後、融資返済などによりまして、貸付金の返還が徐々にされますが、その時期や金額は確定ができない。融資継続がまた行われないことで、既存融資先の経営悪化が発生するということ、また清算の公表によりまして、融資先のモラルハザードが起きる可能性もあります。融資返済の滞りから多額の損失の発生が予想をされるというふうに考えております。
 このように都民の負担が極めて大きいこと、さらには協力銀行の確保の見通しが立っていないこと、このため金融庁の認可を得ることが困難であるということから、実際に事業清算の手法はとり得ないだろうというふうに考えております。

○藤井委員 預金の取りつけ騒ぎが起これば、瞬時に多額の資金が必要となり、損失補償額も多額になるわけであります。しかも、協力銀行が得られていないため、金融庁の許可を得ることは困難とのことでありますが、本当に事業縮小による清算ができないのか、我が党としてもさらに調査研究をしてまいりたいと考えております。
 その上で、四百億円の追加出資についてお聞きいたします。
 過日の本会議の答弁では、四百億円の根拠について、銀行の自己資本に関する新しい国際合意であります新BIS規制により、事業を展開する上で避けられないリスクに対応する資本を確保することが求められており、この考え方にのっとって算出された結果である、このように答弁をされました。
 しかしながら、平成十九年九月中間決算の自己資本比率は一七・三%であります。新BIS規制の国内基準の四%、さらには国際業務を行う基準であります八%を大幅に上回っております。なぜ四百億円が必要なのか、本会議の答弁では明らかになっておりません。大事な視点ですので、先ほどの自民党の質問ともダブっておりますが、都民が聞いてわかるように説明をすべきであります。見解を求めます。

○佐藤産業労働局長 新銀行東京の経営状況の悪化によりまして、追加出資がなければ、平成二十年度末には、金融機関として健全な経営が行われるために必要な自己資本が不足するという状況にあります。
 このため、新銀行東京は事業継続を行うことを前提に、事業計画の抜本的な見直しを行いますとともに、銀行業を行う上で最低限必要となる自己資本と、今後事業展開を要する上で予想されますリスクに対する資本、これを確保する必要があることから、四百億円の追加資本を東京都に要請してきたところであります。
 銀行の資本につきましては、国際決済銀行、BISの資本に関する規制がございまして、国内におきましては、金融庁の監督指針により定められているところであります。これは、自己資本比率確保に加えまして、貸倒引当金ではカバーできないような、将来発生することがあり得る損失、非期待損失といわれますが、これについてあらかじめ資本化しなければならないという、こういう規制であります。
 この新BIS規制に対応するため、自己資本の維持に必要な分として八十億円、貸倒引当金以上に貸出金が回収されないというようなリスクや金利変動などの市場リスク、こういったリスクに対応するために必要な分として二百八十億円、さらには、新規業務や風評等その他のリスクへの備えといたしまして四十億円、合計四百億円が必要になると、そういう銀行の判断により要請がなされたものです。
 都としましては、都民の負担がほかの方法に比べてこの方法が少額で、また、中小企業等既存顧客に与える影響が最も少ない、また、預金者保護の問題が生じない追加出資が最善の策という判断のもとに、再建計画の実現可能性や、新銀行東京が市場からの信任を得られるための財政基盤の確保、また都財政の状況等を総合的に勘案いたしまして、四百億円が妥当であるというふうに判断をしたところでございます。

○藤井委員 ただいま個別具体的に説明がありましたけれども、中小企業向け貸し出しのリスクウエートが従来の一〇〇%から七五%に軽減されたり、破綻懸念先、実質破綻先、破綻先債権についても、先ほど述べたとおり、三百三十五億円と現在は十分な貸倒引当金を設定していることを考えれば、こんなに手当てすべき自己資本は要らないのではないかと考えますが、再度見解を求めます。

○佐藤産業労働局長 新銀行東京は、事業計画の抜本的な見直しを行いますとともに、銀行業を行う上で、先ほど申し上げましたが、最低限必要となる自己資本、それから今後事業展開をする上で予想されますリスクに対する資本を確保するという必要があることから、四百億円の追加出資を要請してきたものでありまして、そのうち、繰り返しになりますが、貸倒引当金ではカバーできないリスク等に対応するために必要な資本の額が二百八十億円でございます。
 仮にこれに対応する自己資本が手当てされていないときは、貸し出し等のリスクを一切とれないということになりまして、新銀行東京の貸し出し業務等はすべて停止せざるを得なくなるということになります。
 新規業務や風評等その他のリスクへの備えとして計上した四十億円、これは再建計画により具体化された事業以外の今後の新規の商品開発ですとか、災害等の不測の事態に対応するためのものでありまして、これだけでは再建計画を実施することはできないということになります。
 したがいまして、再建計画を軌道に乗せて、新銀行東京を再建していくためには、四百億円の出資が不可欠であるということを、ぜひご理解いただきたいと思います。

○藤井委員 貸倒引当金でカバーできないリスクが二百八十億円もあるというのは理解しがたいわけでございます。そしてまた、ただいま局長からるるご説明をいただきましたけれども、なかなか専門用語があり、そしてまたわからない点も多々あって、本当に四百億円、何で必要なんだという疑問がまだまだ都民には多く渦巻いております。
 そういった意味で、きょうの夕刊にこのように出ております。新銀行東京がことしの三月期決算について、監査法人から、事業を継続するならば、増資を行わないと適正意見をつけられないと指摘されている、そしてまた、新しい決算基準のもとで再建計画を実行するには、今後の不良債権の発生を厳格に見積もり、増資することが必要だ、それを前提にしないと、ことし三月期の決算は適正とできないと指摘されたと出ています。これが本当の理由なんじゃないんですか。局長、どうでしょうか。

○佐藤産業労働局長 私ども、この新聞記事を先ほどやはり見まして、この中で特に不良債権の焦げつきなどについて計算をしたところ、三百五十億円以上の増資が不可欠との結論を出していたというような記載もございますが、監査法人から、こういう不良債権の焦げつきなどで三百五十億円以上の増資が不可欠といわれたような事実はないということであります。
 ただ、昨年六月に旧経営陣が策定をいたしました新中期経営計画、これのもとで来年度継続企業としてやることは難しいと。これは、先ほど来ご答弁申し上げましたけれども、今期末の資本残が百五十億ということで、このままの状態で企業継続をやっていきますと、年度末には四%の自己資本比率を切るということが想定されますので、そういう意味では、監査法人が、仮にこういう継続企業としてやることは難しいというのは、監査法人ということではなくて、通常の想定の中で当然あり得る判断だというふうに考えております。

○藤井委員 いずれにしても、こういった、なぜ四百億円なのかということを、議会、そしてまた都民の前に明らかになるよう、今後とも努力をお願いしたいと思います。
 次に、新銀行東京が提示した再建計画について何点か質問いたします。
 今回の再建計画は、戦略的展開による再建計画ではなく、こういっては失礼かもしれませんが、事業縮小再建計画ではないのかと考えます。特に、設立時にうたい文句にした無担保・無保証融資、これは原則として行わないとのことであります。
 そこで、この再建計画により新銀行設立の理念は果たして生かされるのかどうか、民間の銀行に比べて存続させていくメリットはあるのかどうか、あわせて伺います。

○佐藤産業労働局長 この再建計画でありますが、既存の顧客のうち、延滞等が発生していない返済先につきましては、可能な限り継続的に支援を行っていくことを前提とした計画でございます。既存の融資・保証先を引き続き支援をしていくものでありまして、資金繰りに窮する中小企業を支援するという新銀行設立の理念が生かされているものというふうに考えております。
 新銀行東京は、ほかの金融機関と異なりまして、赤字や債務超過先への融資が多いという実態があります。赤字や債務超過の企業への融資だけで五千六百三十五社に上っております。これらの企業は、新銀行東京の融資が仮に断たれた場合には、恐らく他の金融機関からの融資を受けられないという可能性が高いというふうに考えております。
 中小企業の厳しい資金繰りの状況は今も変わっておりません。中小企業の経営環境が悪化している現状にかんがみますと、新銀行東京は引き続き存在意義があるものというふうに考えております。

○藤井委員 今回の再建計画では、平年度ベースの残高は七百億円であります。平成二十年三月決算見込みの融資・保証残高の三分の一以下となるわけです。
 このことからしますと、赤字、債務超過先への融資も五千六百三十五社から相当減少すると見込まれますけれども、これでも新銀行東京の存在意義は引き続きあると考えるのかどうか伺います。

○佐藤産業労働局長 再建計画では、事業意欲の高い顧客への支援など、確実に収益が見込める事業への重点化が図られるということを計画しておりますが、新銀行の既存融資先は、今、一万三千社ございますが、そのうち、赤字や債務超過先を含む九千社、これは正常にご返済をいただいている、いわゆる健全返済先であります。今後もこうした企業を中心に新銀行が支援をしていくということになります。
 新銀行東京は、みずからの経営体力に配慮しつつ、できる限りの中小企業支援を行っていくということにしております。

○藤井委員 次に、都議会公明党が、本会議代表質問の中で、再建後の中長期の展望について問いただしました。そのとき、都は、将来的には、最新の金融ノウハウを有する銀行等との連携をも視野に入れて、事業内容の充実を図ると、このように答弁をいたしました。知事も記者会見でこのことを述べています。
 このことは、再建計画どおり、四年後、新銀行東京が単年度黒字基調に転換した後、新銀行を譲渡するということを含んでいるのかどうか、それとも、新銀行を継続させながら新たな提携をしていくのか、大事な点なので、この点を知事に伺います。

○石原知事 新銀行東京の再建が着実に行われました暁には、その後の展開については、東京の持っているポテンシャル、有利性というものも生かしまして、さまざまな可能性が考えられます。当然、他の金融機関などとも新たな提携はあり得ると思います。
 将来展望としてさまざまな可能性を視野に入れていきますが、まずは、この銀行の足元をしっかり固めるために、第一ステージとしての再建計画を軌道に乗せることが優先だと思っております。

○藤井委員 初めに譲渡ありきの再建計画では断じて認められない、このことを申し上げておきたいと思います。
 また、知事は記者会見で、現在の経営陣はリリーフ登板であると、このように述べておられますが、現経営陣は追加出資後に交代となるのか、それとも、再建計画を作成した責任者として黒字基調になるまで責任を持って取り組んでもらうのか、この点も知事にお伺いいたします。

○石原知事 再建計画をつくればそれで終わりということでは決してございません。現経営陣は、その達成に向けて、まずしっかりとやってもらいたいと思います。
 とはいえ、今の代表執行役は、もとは都の官僚でありまして、その経験からいっても、発想にも限界があると思います。
 再建計画の進捗状況を見ながら、現経営陣を補充、補てんすべく、広く内外の金融の専門家を求めていく必要があると思っております。

○藤井委員 我が党にも、四百億円の追加出資について、なぜ都民の税金だけで賄うのか、責任あるところにも応分の負担を求めるべきではないかという声が多く寄せられております。
 確かに、新銀行東京のビジネスモデルでは、スコアリングモデルが強調されますが、そのほかにも、提携をした信用金庫との協調保証、つまり信用金庫からの紹介で新銀行東京が八〇%保証をし、信用金庫が二〇%負担をするというスキームもあったはずであります。
 そこで、二百八十五億円のデフォルトのうち、この信用金庫との協調保証でのデフォルトはあるのかどうか。ある場合、その金額と件数をお伺いいたします。

○佐藤産業労働局長 新銀行東京に確認をいたしましたところ、提携信用金庫の融資に対する保証でデフォルトしたものは、五百六十件、六十五億円であるとのことであります。

○藤井委員 五百六十件、六十五億円とのことでございますが、これは全体の二三%にもなるわけでございます。
 そこで、提案ですが、仮に四百億円の追加出資がどうしても必要であるならば、こうした提携をした信用金庫にも応分の負担を求めるべきであると考えますが、この点いかがでしょうか。

○佐藤産業労働局長 地域に根差しました信用金庫は、新銀行東京のパートナーとして非常に重要な存在であります。
 新銀行東京と信用金庫との関係では、既に保証契約上の応分の負担がなされたものでございます。このため、デフォルトが多かったことによる責任として負担を求めるということは、納得が得られるかは極めて不透明であるというふうに思います。

○藤井委員 いろいろ議論してまいりましたが、いずれにせよ、さまざまな問題が明らかになってくればくるほど、仮にどうしても四百億の追加出資が必要であったとしても、全額東京都が出資をするというのは検討すべきであると、このように考えます。
 都議会公明党は、代表質問で述べたように、この問題に対処するに当たっては、都民の負担を最小限に抑え、間違っても一時しのぎや先延ばし、あるいは責任転嫁などに終始してはならないという原理原則のもと、今後もさらに調査特別チームによる徹底した調査と研究をしてまいりたい、このように考えております。
 なお、この問題については、後ほどの一般質問、そしてまた最後の締めくくり総括においてさらに議論をしてまいりますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。
 続きまして、監理団体改革についてお伺いいたします。
 これまで我が党は一貫して監理団体の退職金の廃止や役員の退職金の廃止、役員報酬の削減を訴え、先頭に立って取り組んでまいりました。
 石原知事就任以降も、従来に増して監理団体改革が加速してきたことは高く評価するものであります。
 そこで、まず初めに、これまでの監理団体改革の取り組みと具体的成果について、確認の意味でお伺いいたします。

○押元総務局長 監理団体につきましては、団体の統廃合、都の財政支出や都派遣職員数の削減、役員退職金の廃止、役員報酬の引き下げ、経営目標の達成度評価制度や中期経営計画の策定など、行財政改革の大きな柱の一つとして、これまでいただいたご指摘も踏まえながら、さまざまな改革を積極的に進めてまいりました。
 その結果、団体数は、平成十一年度に六十四団体でありましたものが、ことしの四月には三十六団体となりますほか、平成十九年度予算における都の財政支出も、平成十一年度予算に比べますと約二四%、金額にして六百五十六億円の削減を行っております。
 また、役員報酬につきましては、報酬基準の見直しによりまして、平成十一年度と比べますと約二〇%の削減を行ったところでございます。
 さらに、都の派遣職員数も、平成十一年度の四千五百九十人に比べますと千四百八十六人削減をしておりまして、行財政改革実行プログラム等に掲げた数値目標をすべて達成するなど、大きな成果を上げたと認識をしております。

○藤井委員 これまでの取り組みについて敬意を表したいと思います。
 次に、監理団体の経営改革については、過去の審議を通じて、中期的視点を踏まえ、戦略的に取り組むべきと指摘してまいりましたが、東京都は十八年度から全団体に中期経営計画を導入し、その進捗状況を公表するなど、民間的発想で経営改革を進めてきたというふうに聞いております。
 監理団体については、民間企業以上に業務運営状況などを都民に公表して透明性を高めることはもちろん、もっと積極的に団体をPRするなど、都民が身近に感じられる存在となっていくことが重要だと考えますが、この点について見解をお伺いいたします。

○押元総務局長 公を担う主体が多様化する中で、監理団体が引き続きその一翼を担いますためには、事業運営のあり方等につきまして都民の皆様の理解を得ることが重要であると認識をしております。
 このため、都は、毎年度、監理団体の経営実績や経営目標の達成状況等を議会や都民に公表しておりますが、監理団体におきましても、みずから役員の報酬や給与関係情報を公表いたしますほか、主要事業の指標や財務指標といった経営情報について四半期ごとに公表するなど、取り組みを進めているところでございます。
 今後、外部監査の導入の促進や、都民の皆様にわかりやすい契約類型に基づいた契約情報の公表を推進してまいりますほか、ご指摘の事業PRにつきましては、団体のホームページ等を活用しながら効果的な広報活動を展開いたしまして、都民にとって不可欠な団体として認知されますよう、取り組みを促してまいります。

○藤井委員 次に、団体固有職員の人材育成についてお伺いいたします。
 民間企業では、都と同様、団塊世代のベテラン社員の大量退職が進む中、これまで抑制をしていた採用活動を活発化させており、次代を担う人材の獲得に躍起となっております。
 監理団体が今後とも安定した事業運営を続けるためには、将来の団体を支える固有職員の人材確保とスキルアップが必須になってくると思います。
 そこで、都としても団体固有職員の人材育成を支援していく必要があると思いますが、見解をお伺いいたします。

○押元総務局長 監理団体におきまして固有職員の高齢化や都派遣職員の削減が進む中、団体が引き続き都民に不可欠な存在として存続していくためには、団体固有の優秀な人材の確保、育成が急務と認識しております。
 このため、効率的な執行体制の構築を前提に、新規職員や即戦力となる経験者の計画的な採用などにより、事業運営上、真に必要な人材の確保を進めていくこととしております。
 また、固有職員のスキルアップを図るため、首都大学東京と連携をし、経営改革研修を実施いたしますとともに、若手職員の都などへの長期派遣研修を制度化し、来年度から実施いたします。
 今後は、団体みずからのオン・ザ・ジョブ・トレーニングとあわせまして、都などが実施する外部研修へ一層の参加拡大を図るなど、団体改革のリーダーとなる固有職員の育成を都としても支援してまいります。

○藤井委員 どうもありがとうございました。
 次に、環境について伺います。
 我が党が主張し、東京都が全国に先駆けて実施しました電力のグリーン購入について伺います。
 我が党は、グリーン電力証書の購入が税務上単なる寄附金として扱われていることから、昨年、この予算特別委員会で損金処理化を提案し、その際、都は国に働きかけていくと答弁をいたしました。
 そこで、その後の都の取り組み、現状、さらには今後の取り組みについて所見を伺います。

○吉川環境局長 グリーン電力証書は、環境に配慮した電力を購入する方法として、民間企業が自発的に構築した仕組みであることから、現時点では証書の保有によるCO2の削減効果が法律において明確に位置づけられておらず、その購入代金は税務上単なる寄附金として扱われております。
 このため、都は、グリーン電力購入代金を税務上経費として認める損金化について、昨年来、国へ提案要求を行ってまいりました。
 その結果、お話しのように、現在、資源エネルギー庁と環境省がそれぞれ所管する法律に位置づける具体的な検討を始めております。
 今後は、この損金化を大きな契機といたしまして、民間企業にもグリーンエネルギー購入フォーラムへの参加を広く呼びかけるとともに、電力のグリーン購入の普及に努めてまいります。

○藤井委員 ぜひ積極的に進めていただきたいと思います。
 次に、大規模事業所に対する削減義務と排出量取引制度について伺います。
 大規模事業所に対しては、都は、これまで、地球温暖化対策計画書制度を運用し、対象となる事業所の排出量などのデータを把握しております。
 そのデータに基づいて新しく導入を検討している削減義務の制度においても、これを踏まえ、事業者が行ってきたこれまでの省エネ等の努力が報われるような、客観性のある公平なものにすべきと考えますが、この点いかがでしょうか。

○吉川環境局長 お話しのとおり、都は、平成十四年度から地球温暖化対策計画書制度を実施し、対象事業所の排出量や削減対策の実施状況などの実績データを蓄積してまいりました。
 新たな制度の構築に当たりましては、こうしたデータを十分に活用することにより、客観性のある公平な削減義務制度の実現を目指してまいります。
 また、個々の事業所の事情を踏まえた公平な制度とするため、先行して省エネ、節電活動に取り組んだ事業所には、現行制度での削減量を、新しい制度での削減量に算入することを認めるとともに、省エネ性能の特にすぐれた設備を導入した事業所に対しましては、削減義務率を軽減する措置なども検討してまいります。

○藤井委員 次に、土壌汚染対策について伺います。
 我が党は、中小事業者による土壌汚染対策の円滑な推進が重要であると主張してまいりました。法令では、工場を廃止するときに土壌汚染の調査、対策が義務づけられていることから、廃業時に一度に対策費用の全額が必要となるため、中小事業者にとっては大きな負担の一因となっております。
 都が設置いたしました、土壌汚染に係る総合支援対策検討委員会、この検討委員会の報告案の中で、操業中からの調査、対策の推進は、中小事業者にとって効果的な取り組みであると考えますが、そのメリットと実施に当たっての課題について伺います。

○吉川環境局長 本検討委員会の報告案では、操業中から調査、対策を実施するメリットといたしまして、揮発性有機化合物、いわゆるVOCの汚染に対しましては、時間的な余裕を生かした微生物処理など、低廉な方法を採用することが可能であることや、工場廃止時の対策経費の負担を分散できることなどが挙げられております。
 一方、操業中に調査、対策を実施する課題といたしましては、事業者は当然のこととして建物を使用しておりまして、操業を中断しにくいことから、調査や対策にはおのずと制約があることなどが挙げられております。

○藤井委員 次に、中小企業者にとっても大きな負担となるもう一つの要因であります対策コストについて伺います。
 現在、都内で実施されている土壌汚染対策のうち、九割が堀削除去であり、汚染土壌は都外に運搬され処理されているといわれております。先ほど、高橋かずみ議員との答弁の中で、汚染土壌の域内処理の答弁がありましたが、搬出コストを低減させる観点からも、将来、搬出土壌の域内での処理を検討すべきと考えますが、この点いかがでしょうか。

○吉川環境局長 本検討委員会では、搬出する汚染土壌を適切かつ環境負荷をかけずに処理するとともに、お話しの、コスト縮減の観点からも、将来的に都道府県ごとに処理施設を整備するなど、域内で処理する方策も含め検討すべきとの意見が出されております。
 都といたしましては、年度末にまとめられる最終報告を踏まえ、今後検討してまいります。

○藤井委員 ぜひとも、搬出コスト低減の観点から積極的に検討いただきたいと思います。
 次に、合理的かつ適切な対策の促進について伺います。
 法令が求める必要以上の対策は環境に大きな負荷を与えることから、汚染の程度に応じた、合理的かつ適切な対策を促進することが重要であると考えますが、この点、見解を伺います。

○吉川環境局長 本検討委員会では、現在実施されている土壌汚染の対策は、掘削除去による処理が大半を占めておりますが、今後は、覆土による封じ込めや、当該地で掘削せずに行う浄化処理など、掘削除去以外の方法を優先させるべきとの意見が出されております。
 また、そのためにも、汚染の程度や地下水の状況などを踏まえ、適切な方法を選択するためのガイドラインづくり等が必要との意見も出されておりまして、今後、最終報告を踏まえ、検討してまいります。

○藤井委員 どうもありがとうございました。
 続きまして、がん対策について伺います。
 日本は今、世界一のがん大国になりつつあるといわれております。厚生労働省の人口動態統計によりますと、日本人の三人に一人ががんで亡くなっておりますが、現在、放射線治療の現場では、がん患者の数が急増しており、二〇二〇年には国民の四人に一人が放射線治療を受けるようになると予想されております。
 アメリカでは、物理工学の専門家である医学物理士あるいは放射線治療品質管理士が五千人いて、最先端の治療の開発を行っていると聞いております。これに対し日本では、医学物理士が三百八十二名、放射線治療品質管理士が五百七十一名と約千人程度しかいません。そのため、早急に放射線治療を支える専門家の育成が重要であると考えます。
 現在、首都大学東京には放射線学科というのがあるそうです。この大学院において、これらの専門家の養成にも対応したプログラムがあると聞いておりますが、そこで、複雑で精密な放射線治療を支える専門の人材をこの首都大学東京で早急に養成すべきであります。所見を伺います。

○押元総務局長 高度で複雑ながん放射線治療におきましては、放射線専門技術者の役割が極めて重要であることはご指摘のとおりでございまして、首都大学東京では、前身であります都立保健科学大学の時代から、大学院におきまして放射線専門技術者の人材養成を行ってまいりました。
 また、今年度から、文部科学省の補助金を受けまして、慶応義塾大学等の八大学が国内外の医療機関と連携をして取り組む先端的がん専門家の育成プログラムがスタートいたしましたが、これに首都大学東京も参加をしております。
 このプログラムで、首都大学東京は、医学物理士養成の役割を担うことになっておりまして、来年度から大学院に新たに養成コースを開設いたしまして、がん医療を担う高度な放射線技術者の育成を図ってまいります。

○藤井委員 ぜひ人材育成、力を入れていただきたいと思います。
 次に、がん治療は、がんの状態や進行状況に応じて、手術療法、放射線治療、化学療法、この三つを組み合わせて行う、いわゆる集学的治療を今後充実させなくてはなりません。
 特に、化学療法と放射線療法を推進していくためには、人材育成が何よりも重要であります。がん診療連携拠点病院を活用して、医師や看護師、薬剤師などを対象に、放射線療法や化学療法などの研修を実施することにより、具体的な人材育成を推進すべきと考えますが、所見を伺います。

○安藤福祉保健局長 平成二十年四月から、都立駒込病院と財団法人癌研究会有明病院が都道府県拠点病院となります。
 このうち、癌研有明病院は、がん医療にかかわります人材育成の中心的役割を担うこととしておりまして、地域拠点病院や東京都認定がん診療病院などの医師、看護師、薬剤師等を対象に、お話のありました放射線療法や化学療法の専門研修を実施してまいります。
 さらに、地域の医療機関等を対象に研修を実施いたします十二カ所の拠点病院に対しましても、研修のノウハウを提供し、人材育成に広く取り組んでまいります。

○藤井委員 次に、がんの治療の相談の窓口となります相談支援センターについて伺います。
 都は、新たに整備します拠点病院と認定病院において、がん患者と家族及び地域の医療機関からの相談に適切に対処するため、相談支援センターを平成二十年四月に設置することとしております。
 この相談支援センターにおいて、患者や家族に対して適切なアドバイスができるように相談員の質を向上させることが大変重要だと考えますが、そのために具体的にどのように取り組むのか、伺います。

○安藤福祉保健局長 相談の質を確保するために、すべての相談支援センターに、国立がんセンターが開催しております相談員研修を受講した者を配置してまいります。
 また、都道府県拠点病院のうち、都内の地域連携の中心的な役割を担います駒込病院におきましては、相談員相互の技能向上を図るための研究会を開催いたしまして、この中でカウンセリング技術や相談に必要な情報の収集、提供などについて検討することによりまして、相談員の資質の向上に取り組んでまいります。

○藤井委員 次に、がん検診対策について伺います。
 都民のがん検診受診率、これは、全国と比較しますと大変低い、こういう状況にあります。例えば平成十七年の区市町村におけるがん検診の受診率というのを見ますと、乳がんの検診は全国では一七・六%に対し東京都は八・六%、約半分、肺がんについては全国二二・三%に対し東京都は六%、大腸がんは全国一八・一%に対し東京都は一三・七%、こういう状況になっております。
 都民に対するがん検診の受診状況に関する調査という調査があるそうですが、それによりますと、がんの検診を受けなかった理由は何かということで、第一番目は、健康に問題なく、必要性を感じないが最も多く、次に、検診をどこで受けられるかわからない、そして、検査が怖い、苦痛だというような結果が上がっております。
 そこで都は、都民に対して検診の重要性を訴えるとともに、がん検診に対するさまざまな不安や、あるいは疑問を解消するため、十分な情報提供を行うべきと考えます。また、受診率を高めるため、都民一人一人のがん予防への意識を高め、がん検診を受診するきっかけとなるような積極的な取り組みを行うべきと考えますが、この点いかがでしょうか。

○安藤福祉保健局長 がん検診の受診率を向上させるためには、がんの予防や検診に関する都民の理解を深め、主体的な受診行動につなげることが大切であると考えております。
 都は、区市町村の検診情報や検診の流れ、結果の見方などを、インターネットを活用して情報提供するとともに、乳がんにつきましては、マンモグラフィー検診車を用いて検査方法等の説明会を行うなど、都民が安心して検診を受診できるよう取り組んでまいります。
 また、来年度新たに、がん検診の必要性を伝えるメッセージ入りのはがきを二十万枚作成いたしまして、家族や友人など大切な人に受診を呼びかけてもらう取り組みを実施してまいります。

○藤井委員 次に、後期高齢者医療制度について伺います。
 急速な高齢化による老人医療費の増加に対応するため、本年四月から、いよいよ後期高齢者医療制度がスタートすることになります。
 そこで、これまでの老人保健制度にかわりまして、七十五歳以上の後期高齢者による独立した医療保険制度が創設される、その趣旨について改めて伺います。

○安藤福祉保健局長 後期高齢者医療制度は、高齢化の進展に伴い増大することが見込まれます医療費を安定的に確保するために、現役世代と高齢者の医療費の負担を明確にいたしまして、世代間で負担能力に応じて公平に負担するとともに、公費を重点的に充てることにより高齢者の医療を国民全体で支える仕組みでございます。
 また、複数の疾患を抱えやすく、治療が長期化しやすいなど、心身の特性を踏まえました、後期高齢者にふさわしい医療を提供することとなっております。

○藤井委員 老人保健制度からこの後期高齢者医療制度に移管をいたしますと、区市町村からは、都の財政負担が減少するというふうにいわれておりますが、実際には現行の老人保健制度に比べてどうなのか、予算額について伺います。

○安藤福祉保健局長 都は、平成二十年度予算案におきまして、法定負担分として、制度移行に伴って生じます老人保健制度の一カ月分の負担とあわせて七百五十億円を計上しており、平成十九年度予算におけます老人保健医療給付費分六百五億円に比べまして、平成二十年度は百四十五億円の増となっております。

○藤井委員 来年度、百四十五億円の増ということでございますが、昨年の第四回定例会における都議会公明党の提案を受けまして、都は、広域連合の行う後期高齢者の健康診査事業に対する財政支援など、今後、制度の円滑な実施に向けて効果的な支援策を検討するといたしまして、平成二十年度の予算に計上いたしました。
 この、都が行う広域連合に対する具体的な財政支援の内訳をお伺いします。

○安藤福祉保健局長 広域連合への財政支援は、健康診査事業に対する補助といたしまして七億円、制度の円滑な実施のための支援として、システム開発費に対する補助分八億円、制度広報啓発費に対します補助分が二億円、合計で十七億円を計上してございます。

○藤井委員 この、都の財政支援を踏まえまして、広域連合及び構成団体であります全区市町村は、先月二月の広域連合議会において、低所得者層に対するさらなる保険料軽減措置をとることとしたというふうに聞いております。
 そこで、その内容について、保険料が具体的にどれぐらい軽減されるのか、例示も含めまして説明を求めたいと思います。また、全国水準との比較について、この点いかがでしょうか。

○安藤福祉保健局長 広域連合は、年金収入二百八万円以下の被保険者を対象に、二年間の時限措置として保険料を軽減することを決定いたしました。このさらなる軽減措置によりまして、平均的な厚生年金収入二百一万円の単身者の場合で申し上げますと、年間保険料額が七千九百円減額されて五万三千八百円となり、これは全国でも一番低い保険料額となってございます。

○藤井委員 この後期高齢者医療制度の円滑な運用について、都もしっかりと支援をお願いしたいと思います。
 次に、救急医療について伺います。
 公明党として、救急医療の実態について全国レベルで把握をするため、昨年の十一月から十二月にかけまして二次救急病院に対する調査というものを実施いたしました。全国千百四十病院、二百二の団体に調査をしたわけでございます。
 その結果、救急医療現場の厳しい状況が浮き彫りになってまいりました。救急医療が病院経営にとって重荷でないと、このように回答した病院は二七%であったのに対しまして、病院経営にとって重荷であると回答した病院が六六%という結果でありました。
 そこでまず、都内における救急医療機関の数の推移について伺います。

○安藤福祉保健局長 都内の救急告示医療機関の数でございますが、五年前の平成十五年三月一日時点では三百八十一施設であり、平成二十年三月一日現在では三百三十八施設となっておりまして、四十三カ所の減少となっております。

○藤井委員 四十三カ所もこの救急の医療が減っているという大変厳しい現状があります。
 こうした中、救急医療向上のための改善策といたしまして、診療報酬の引き上げをしてほしいという回答をした病院が八一%ありました。
 診療報酬は国の問題でございますが、調査結果を見る限り、都の救急医療体制にも深刻な影響を与えかねない状況であります。都としても、国に対して診療報酬の引き上げなど積極的に提案要求をしていくべきでありますが、見解を伺います。

○安藤福祉保健局長 これまでも救急医療に対します診療報酬の改善については、国への提案を行ってまいりましたけれども、救急医療の現場では、必要な医師の配置を初め医療体制の確保について厳しい状況が続いておりまして、さらなる診療報酬上の評価が不可欠であると考えております。
 先般、検討を開始いたしました救急医療対策協議会において、診療報酬の充実や救急医療を担う医師、看護師の養成など、救急医療体制に関して国が取り組むべき事項についても検討し、その結果を踏まえて国へ働きかけてまいります。

○藤井委員 ぜひ積極的に国に働きかけをしていくよう要望したいと思います。
 東京都においては、東京都指定二次救急医療機関に対して、既に救急医療情報システムへの正確でリアルタイムな入力を依頼しており、システムの内容や運用については全国で最も進んでいると聞いております。先般の国の調査でも、全国の即時更新を行っている病院のうち、三分の二以上が東京都の病院でありました。
 しかし、この救急医療機関における努力には限界があります。行政としても、病院におけるリアルタイム入力を行う、例えば救急医療クラークや救急搬送コーディネーター、こういったものを配置するなど、円滑な患者受け入れのための措置を講じていくことを検討すべきと思いますが、この点の見解を伺います。

○安藤福祉保健局長 救急医療クラークや、あるいは救急搬送コーディネーターについてご提案をいただきましたけれども、現在、ただいま申し上げました救急医療対策協議会では、救急医療情報システムのリアルタイム入力などの運用方法や、救急搬送におきます効果的な調整のあり方、さらには地域の医療機関相互の連携などをテーマに検討を開始いたしました。
 今後、都の救急医療の現状に即した実効性ある施策に向けまして検討を深めてまいりたいと思います。

○藤井委員 次に、羽田空港の国際化について何点かお伺いをいたします。
 今定例会における知事の施政方針にもありましたが、先月十八日に、千葉県や神奈川県も参加した、羽田空港の国際化に係る国との分科会が開催されました。この分科会の主要テーマは、羽田空港の国際線の発着枠の増大と就航距離制限、いわゆるペリメーター制限の見直しの二点と聞いております。
 国は、羽田空港の再拡張事業で生まれる年間約十一万回の新たな発着枠のうち、国際線の発着枠を年間三万回、羽田空港から国外に飛べる距離については、国内線で最も長い距離の、羽田空港と石垣の間の千九百四十七キロメートルが制限とする、いわゆるペリメーター制限が目安と定めております。
 知事は、事あるごとに、羽田空港からASEAN諸国までの国際線を就航すべきであると訴えております。アジアの大都市と手を携え、東京を二十一世紀の都市型モデルとして世界に示していくためにも、羽田空港からこれらの諸都市に国際線が自由に乗り入れできるようにすべきと考えます。また、これらの諸都市から国際線を受け入れるには、発着枠が一日四十往復、年間三万回では余りにも少ないという感じを否めません。
 日本がアジアの中でリーダーシップを発揮し、アジアの雄として確固たる地位を築くためにも、羽田空港の国際化をより一層推進し、魅力ある首都圏空港として機能させるべきと考えます。
 そこで、羽田空港の国際化に関する東京都の基本的な考え方について、知事の所見を伺います。

○石原知事 羽田空港の再拡張、国際化は、我が国の経済を活性化し、国際競争力を強化するために極めて重要な国家的プロジェクトであります。
 しかし、今まで成田絡みの千葉県に対する遠慮もありまして、また、千葉県も妙な被害感を持ったりするものですから国交省もなかなかいえなかったんですけど、実際に工事ができ上がる段階になれば自明のことでありますけれども、いずれにしろ、現在の発着枠、それから以遠性の問題、どこまで飛べるかという問題は論外でありまして、それでなくても日本はオープンスカイ、オープンスカイといわれているわけですから、特にアメリカはいっていますけれども、これはやっぱり、何といっても首都圏に対する需要でありますから、東京の一番ダウンタウンにも近い、世界で比類のない便利な空港が国際化し、滑走路もふえるわけでありまして、その機能を日本のために十二分に発揮するには、発着枠の拡大と、需要の多い、発展の著しい東南アジアの主要都市との国際定期便の就航は当然というか、不可欠なことであります。
 このため、先月、国とともに打ち上げました分科会において、猪瀬副知事をトップに徹底した交渉を行いまして、さらなる国際化の実現に全力で取り組んでまいります。
 しかし、第四滑走路ができますと、これは自然にでき上がっていく問題と思います。

○藤井委員 次に、羽田空港へのアクセスについて何点か質問いたします。
 昨年十月、羽田空港移転問題協議会から空港の跡地利用基本計画素案が発表されました。この素案の中に、神奈川方面から羽田空港へのアクセス改善の一つとして、多摩川を渡って羽田側との連絡道路が別途検討されているとしております。
 この羽田空港と神奈川県の間にある多摩川の河口をつなぐ連絡道路をつくる計画を神奈川口構想と呼んでいますが、そこでまず、この連絡道路の検討状況、どうなっていますか。

○只腰都市整備局長 羽田空港と神奈川県を結ぶ連絡道路につきましては、国、都、神奈川県、横浜市及び川崎市で構成されます京浜臨海部基盤施設検討会におきまして、整備箇所の候補地を三つのゾーンに分けまして検討が進められております。
 本年二月に開催されました検討会におきましては、連絡道路の役割や効果、ゾーンごとの概略ルートなどが報告されました。

○藤井委員 この今回の検討会におきまして、多摩川の上流、中流、そして下流の三つのルートについて構造が示されたとのことであります。
 羽田空港の地元大田区では、現在、この空港跡地の有効活用を検討しております。この神奈川口構想の連絡道路の位置や構造によっては、この大田区の跡地利用計画に支障が出てくるのではないかというふうに懸念をされております。このため都は、大田区とよく話し合い、国や他の関係自治体との調整を十分に行っていくべきであると考えますが、所見を伺います。

○只腰都市整備局長 連絡道路につきましては、ルート、構造によりましては空港跡地の土地利用への影響が懸念されることから、お話にございましたように、地元区を初め関係機関との調整が必要であると考えております。
 さらに、既存道路との接続形態や航空法による高さの制限など設計上の制約条件が厳しいこと、また、事業主体が定まっていないことなども課題であると認識しております。

○藤井委員 ぜひとも地元区と調整をして、しっかりと対応するよう強く求めたいと思います。
 さて、羽田空港周辺の道路については交通渋滞が起きております。空港アクセスを改善するには、国道三五七号の整備が促進されるべきと考えます。この国道は、新木場からお台場の埋立地を通って羽田空港から神奈川に延伸する予定でございますが、残念ながら、現在、空港でとまっております。
 この国道三五七号、東京港トンネル部と多摩川トンネル部が整備されていないため、東京臨海部の連携が不十分であります。また、基幹施設であります羽田空港や港湾施設につながる重要な道路であり、また、将来、オリンピック招致も視野に入れれば、これらのトンネル部を最優先に整備すべきと考えます。国道三五七号の整備促進に向けた都の取り組みについて伺います。

○只腰都市整備局長 国道三五七号線、いわゆる湾岸道路でございますが、東京臨海部における広域的な道路ネットワークの形成に不可欠であるとともに、羽田空港の高いポテンシャルを十二分に発揮させる上でも極めて重要な路線であると考えております。
 しかしながら、東京港トンネル部と多摩川トンネル部が未整備であるため、道路交通上のネックとなっております。
 このため、都はこれまでも、国への提案要求などさまざまな機会をとらえまして、これらトンネル部の整備促進を国に要請してきております。
 今後とも関係自治体と連携を図りつつ、早期整備に向けまして積極的に取り組んでまいります。

○藤井委員 積極的な答弁、ありがとうございます。
 次に、雇用、就労について質問をいたします。
 まず、仕事と子育ての両立支援についてでございます。
 国は、公明党の推進により、平成十八年度からの時限措置といたしまして、初めて育児休業取得者を出した中小企業に百万円、二人目の取得者については六十万円を給付することにいたしました。しかし、何枚もの申請書類の作成を必要とするこの国の制度の活用は、経営者みずから生産現場に立つことの多い中小企業では困難であると予測される面もありました。
 そのため、都議会公明党は、平成十八年の第一回定例会におきまして、中小企業の事業主に対し育児休業制度の普及と利用の促進を図る、実効性ある方策を講ずるべきであると訴えました。これに対して産業労働局長は、人事管理や経営面で中小企業に助言、指導を行っている社会保険労務士等による事業主への直接的な働きかけを図るなど、制度の普及と利用促進に向けた新たな取り組みを開始すると答弁をいたしました。
 そこで都は、その後、この国制度に加えまして、中小企業がより活用しやすい東京都独自の両立支援事業を開始しまして、大変好評を博していると聞いております。そこでまず、都単独の両立支援の助成制度の実績と来年度の事業展開について伺います。

○佐藤産業労働局長 都は、今年度、仕事と子育てが両立をできる雇用環境の整備に向けまして、中小企業に対する独自の助成制度を創設いたしました。
 初年度は、試行といたしまして、社内の取り組み体制を構築するための責任者の設置と研修等の意識啓発に係る助成を行うことといたしました。昨年九月から募集を開始しましたところ、多数の応募がありまして、目標数を超える五十四社に対して支援をしております。
 来年度は、この試行結果を踏まえまして助成規模を四百五十社に大幅にふやすとともに、対象を社内ルールや規定整備に係るコンサルタント等の経費、育児休業取得者の代替要員の経費に拡大をいたしまして、制度の充実を図ってまいります。

○藤井委員 前向きな取り組み、ぜひよろしくお願いします。
 一方で、今後多くの中小企業が両立支援に取り組むようになれば、行動計画の策定方法や具体的な取り組み内容、社内での進め方などがわからないで、子育てと両立できる職場づくりがスムーズに進まないところも出てくるのではないかと危惧をいたします。
 そこで都は、こうした中小企業に対して、より実践的で、きめ細かい支援をしていくべきと考えますが、所見を伺います。

○佐藤産業労働局長 お話しのように、中小企業の取り組みを促進していく上で、両立支援制度の導入の手順や運用方法など、実践的ノウハウを提供することが重要であるというふうに考えております。
 このため、都は、来年度、両立支援アドバイザーを増員いたしまして、相談体制を拡充するとともに、育児休業中や復帰時の支援方法など、人事管理の問題にも即応する社内責任者向けの研修会を実施いたします。
 さらに、都内企業のすぐれた取り組みを集めまして、来年度、事例集を作成し、広く普及をしてまいります。
 都は、こうした取り組みによりまして、中小企業の仕事と生活が両立できる雇用環境の整備を促進してまいります。

○藤井委員 次に、雇用、就労の二点目に、障害者雇用の促進について質問をいたします。
 昨年の第二回定例会代表質問におきまして、我が党が、障害者雇用を新たに三万人創出への決意を石原知事に尋ねたのに対しまして、知事からは、障害者雇用に対する理解と関心を高め、新たな雇用機会の拡大を図っていきたいとの答弁がありました。
 この具体化に当たっては、特別支援学校における職業教育の充実や、福祉分野における生活支援、就労支援の充実など、各種施策を総合的に実施していく必要があります。特に、三年間のアクセル期間の第一年目となる平成二十年度の施策の拡充が重要であり、障害者の雇用機会を拡大するには、企業みずからが障害者雇用に取り組むよう効果的な支援を行うことが必要と考えます。
 そこで、都の具体的な取り組みを伺います。

○佐藤産業労働局長 都はこれまで障害者雇用促進ハンドブックの作成、配布や、企業向けシンポジウムの開催等を通じまして、企業における障害者雇用の理解促進に努めてまいりました。加えて平成十八年度から、ほかの企業のモデルとなる取り組みに対しまして、障害者職域開拓支援事業を実施して、障害者の働く場の拡大を図ってきたところでございます。
 来年度はさらに、障害者雇用を目的とした特例子会社の設置を支援するために、三百万円を限度として、設立経費の二分の一を助成する制度を創設することによりまして、障害者の雇用機会の拡大を図ってまいります。

○藤井委員 ぜひこの特例子会社の設立に、しっかりと取り組んでいただきたいと思います。この特例子会社の設立を支援します三百万円、二分の一を助成する答弁、大変明快な答弁だと敬意を表したいと思います。
 一方、働く障害者の数をふやしていくためには、雇用の場や就職件数をふやすだけではなく、一たん職場に入った障害者が、その職場で継続して働けることを支援する仕組みが大事であります。そのために具体的に取り組む都の方策について伺います。

○佐藤産業労働局長 障害者の職場への定着を促進するためには、職場に出向いて障害者と企業双方への支援を行う、いわゆるジョブコーチを活用することが有効であるというふうに考えます。
 しかしながら、支援ニーズに比べまして、現在、国等が養成をしておりますジョブコーチの数が不足している、このことから、都におきましても、独自に国と同等の研修を行いまして、来年度、新たに東京ジョブコーチを養成することといたしました。
 さらに、この東京ジョブコーチを派遣して、初めて障害者を雇用する中小企業などへ支援を行いまして、今後三年間で八百八十人の障害者の職場定着を図ってまいります。
 こうした事業によりまして、今後、障害者雇用の一層の促進に努めてまいります。

○藤井委員 この東京ジョブコーチの拡大について、ぜひ取り組みをよろしくお願いしたいと思います。
 次に、特別支援教育について何点か伺います。
 発達障害においては、発達障害のある生徒自身への対応だけでなく、周りの級友たちへの理解の普及も大事であります。発達障害とわかっても、特効薬か何かで短期間に治療できるわけではありません。障害のある生徒に適した教育方法の工夫によって、何年間かをかけて、よりよい成長を導くものであると考えます。
 その成長の期間であります学校生活におけるドロップアウトなどの不幸から救うためには、都教育委員会が、発達障害児などをクラスメートとする周囲の生徒たちへの理解啓発についての取り組みを、さらにしっかりと重視していくべきであると考えますが、この点についての所見を伺います。

○中村教育長 都教育委員会は、これまでも都立高校における発達障害のある生徒への支援につきまして、リーフレットの配布などを通して、教員の理解啓発に努めてまいりました。また、学校の要請に応じまして、発達障害の正しい理解や生徒同士のかかわり方などについて、学校に指導助言してきたところでございます。
 今後は、新たに全都立高校の特別支援教育コーディネーターを対象とした研修を実施するとともに、来年度新たに、教員向けの指導資料を作成、配布するなどいたしまして、発達障害について、生徒がより理解を深められるよう、指導の一層の充実に努めてまいります。

○藤井委員 次に、特別支援教育の現場になくてはならない支援員の確保策について伺います。
 支援員の確保策については、教員志望の学生や退職教員の活用など、区市町村によってはさまざまであります。地元の大学や大規模なNPOとの連携が可能な区市町村はともかく、円滑に人材を確保できない地域では、支援員になる人材不足の放置は、公立の小中学校における障害児教育の円滑な進展を阻むことになってしまいます。
 こうした現状に対する支援や発達障害等の児童生徒を担当する教員の専門性や資質の向上を図るためには、例えば東京都特別支援教育推進室に、仮称人材バンクをつくって、特別支援教育支援員となる人材や校内研修の講師を紹介するなど、都として区市町村を支援する具体的な支援策を講じるべきと考えますが、所見を伺います。

○中村教育長 東京都特別支援教育推進室、仮称でございますけれども、これは、これまでの東京都就学相談室の機能を拡大いたしまして、全都の特別支援教育を推進する中核的な役割を担うことを目指しまして、本年の四月に設置いたします。
 区市町村を支援するために、特別支援教育支援員として学生の募集に協力できる大学あるいは特別支援教育の経験のある退職教員、それから校内研修の講師の紹介を行うなど、四月に設置しますこの推進室に、人材バンク的機能を持たせてまいります。

○藤井委員 前向きな取り組みであると思います。
 次に、学習障害について質問します。
 学習障害は、特別支援学校や固定制の特別支援学級の対象にはならない。小中学校の通常の学級や高校で学んでいるのが現状であります。障害症例の顕在化において個人差がありまして、学習面や適応面での困難さに周りが気づかなかったり、適切な支援を行えなかったりすると、ストレスなどから二次的な障害を招く危険もあるといわれております。
 学習障害は、読み書きなどの障害ということで、幼児期に発見することが困難な場合もありますが、小学校のなるべく早い時期に発見し、障害特性を踏まえた適切な指導や支援を行うことによりまして、障害による困難さがかなり改善、克服できる例もあると聞いております。
 有名な事例では、ハリウッド俳優のトム・クルーズさんが、失読症という学習障害の診断を受けながら、自分に合った勉強の技術と出会い、障害を克服した体験を告白し、さまざまな機会にみずから講演をしております。
 そこで、この早期発見による個別状況に応じた教育方法の工夫が、学習障害児の円滑な高校進学や社会参加の道を開くと考えます。
 そこで、都教育委員会は、学習障害の早期発見に向けて、本格的な取り組みを開始するべきであると考えますが、この点、所見を伺います。

○中村教育長 ご指摘のとおり、学習障害の子どもに対しましては、何よりも早期の発見と支援が最重要でございます。しかし、読む、書く、計算するなどの一部の能力だけにつまずきがあるということで、なかなかその障害に気づかないということがございます。
 都教育委員会では、小学校の低学年段階で、学級担任ができるだけ早く当該児童の学習障害に気づくことができますように、その発見や指導に関するリーフレットを全教員に配布するなど、これまでも取り組みを行ってまいりました。
 今後は、通級指導学級の担当教員が各学校を巡回いたしまして、発達検査や担任への指導助言を行うなど、モデル事業を実施いたしまして、学習障害児童の早期発見と支援の充実に努めてまいります。

○藤井委員 次に、低所得者対策について伺います。
 都が平成二十年度から実施をいたします低所得者生活安定化プログラムについて何点か伺います。
 このプログラムは、東京都が直接実施するものだけではなく、区市町村など関係機関との連携により実施するものも含まれます。低所得者の生活安定に向けて、関係機関と調整の上、できる限り早期の実施が必要と考えますが、所見を伺います。

○安藤福祉保健局長 このプログラムのうち、低所得の方を職業訓練や貸付金等につなげるなどの支援を行う相談窓口につきましては、住民に身近な区市町村に設けることとしておりまして、現在、早期開設に向けて、関係機関と調整をしているところであります。
 また、住居を失い、インターネットカフェ等で生活している方に、生活、居住、就労相談等の支援を行いますサポートセンターにつきましては、本年四月、東京都健康プラザ「ハイジア」内に開設する予定でございます。

○藤井委員 次に、低所得者生活安定化プログラムにおけます職業訓練について伺います。
 このプログラムの対象者には、いわゆる就職氷河期に正社員として就職したくても就職できなかった人や、一たん就職したものの、何らかの事情で職を離れた後、長年、非正規就業を余儀なくされた方などが多く含まれています。こうした方々は、低賃金で、暮らしていくのに精いっぱいであり、貯蓄等の余裕が乏しく、訓練を受講しようとすれば、その間の生活を維持できないと推測されます。
 都は、今回のプログラムにおける職業訓練と受講奨励金の内容、さらに職業訓練の際に不可欠なカリキュラムの内容について、具体的に明らかにすべきと考えます。
 所見を伺います。

○佐藤産業労働局長 今回の職業訓練では、新たに民間教育機関等を活用いたしました三カ月程度の訓練を実施しますとともに、職業能力開発センターにおきます訓練に優先枠を設定してまいります。
 訓練に当たりましては、対象者に、職業人としての知識、経験を補完するため、就職先を想定いたしました、より実践的な訓練を行うことといたしまして、現職従事者との意見交換や模擬実習等のカリキュラムを実施してまいります。
 また、受講奨励金は、受講者が訓練に専念できるよう、訓練期間中支給するもので、生活費や通学費として月額十五万円程度を支給いたします。

○藤井委員 次に、就職に向けた訓練生への支援について伺います。
 この事業の対象者の多くを占めるフリーターについては、やや古い統計ですが、平成十六年度の厚生労働省の調査では、マイナス評価をする企業が約三〇%もあり、その理由としては、根気がなく、いつやめるかわからない、責任感がないなどが多くなっています。こうした企業の厳しい評価を克服すべく、訓練生への手厚い就職支援が必要であります。そのための都の積極的な取り組みを求めたいと思います。
 また、低所得者対策の実施対象となる人々は、安定した就労の経験に乏しく、履歴書などの経歴だけでは企業から敬遠されてしまうおそれがあります。その意味で、受講した訓練内容を企業に効果的にアピールしていくべきと考えますが、所見を伺います。

○佐藤産業労働局長 まず、訓練生への就職支援でありますが、今回の職業訓練では、コミュニケーションスキルの向上、また面接技法等の就職ノウハウの付与を目的といたしまして、毎月グループカウンセリングなどを行いますとともに、訓練生の就職意欲の向上を図るために、平日夜間、また土曜日にも個別カウンセリングを受けられるように、体制を整備いたします。また、訓練終了後は、就職に向けたセミナーや合同就職面接会も開催をいたします。
 次に、訓練内容の企業へのアピールについてでございますが、今回新たに履修した訓練内容を記載した書面を作成することといたしまして、訓練生の求職活動に活用をしてまいります。
 こうしたきめ細かな支援によりまして、安定した就業の実現に努めてまいります。

○藤井委員 低所得者対策の充実は、世界の大都市に共通する深刻な問題であります。低所得者生活安定化プログラムは、いわゆるトランポリン政策といわれる、社会復帰支援を主軸とします新しい低所得者対策の先駆け的実例であります。
 大都市がみずからの構造変化に対応して、持続可能な経済発展や社会保障の安定を実現するための政策のモデルの一つを、アジアに向けて、ひいては世界に向けて力強く発信していくものであり、まさに減税公約の進化に値するものと考えます。
 今後は、福祉保健局、産業労働局に限らず、局の垣根を超えた取り組みが不可欠であり、三年間の緊急対策後を見据えて、早急に局横断的な組織を立ち上げて検討を開始するべきと考えます。
 この項目の最後に、今回の低所得者生活安定化プログラムの実施にかける知事の決意を伺います。

○石原知事 今回のプログラムは、真に困窮している都民の方々が、みずから生活安定への道を切り開けるように、多様な施策を重層的に講じるものであります。当然、将来は局をまたいだ総合施策として推進しなくてはいけないと思っております。
 具体的な施策展開については、今後、他の関係機関とも力を合わせまして、着実に進めていきたいと思っています。
 こうした取り組みによりまして、都民一人一人が意欲と能力に応じて活躍し、将来に明るい展望の持てる社会を実現していきたいと思っております。

○藤井委員 次に、介護保険制度における地域密着型サービスの整備について伺います。
 認知症高齢者グループホームや、平成十八年の介護保険制度改正の際に創設されました小規模多機能型居宅介護といった地域密着型サービスは、今後急増するひとり暮らしや認知症高齢者への介護サービスとして、一段と重要性を増しております。
 小規模多機能型居宅介護についていえば、全国で千三百を超える施設が整備されておりますが、用地費の高い都内では、事業者が用地確保に大変苦労している実態があります。それが整備が進まない要因の一つとなっております。
 そこで、整備促進のための用地確保については、行政による一層の支援措置が必要と考えますが、見解を伺います。

○安藤福祉保健局長 これまで都では、未利用の都有地を減額貸付することによりまして、介護サービス基盤の整備促進に努めてまいりましたが、平成十八年度から小規模多機能型居宅介護事業所などにも対象を拡大いたしました。
 また、平成二十年度におきましては、区市町村みずからが事業者に所有地を貸し付けて整備する場合、通常の補助に一千五百万円を加算いたしますモデル事業を実施することといたしております。
 今後とも、都としても小規模多機能型居宅介護事業所の整備促進のため、積極的に区市町村を支援してまいります。

○藤井委員 次に、介護保険制度の開始時点から導入されております居宅サービスに比べて、小規模多機能型居宅介護は新たなサービス体系であることから、まだまだ十分浸透していないのが現状であります。
 従来の居宅サービスを受けている利用者が、小規模多機能型居宅介護を希望する場合、ケアマネジャーもかえなくてはならないため、その利用にちゅうちょするケースもあると聞いております。
 小規模多機能型居宅介護を利用しやすいものとするため、利用者や家族だけでなく、ケアマネジャーなど介護にかかわる関係者への周知や制度利用促進に力を入れて取り組むべきと考えますが、見解を伺います。

○安藤福祉保健局長 小規模多機能型居宅介護の利用促進を図るために、区市町村におきましては、利用者や事業者等を対象に、シンポジウムの開催や利用ガイドの作成、配布などを行い、普及啓発に努めております。
 都といたしましても、新たなサービスであります小規模多機能型居宅介護が積極的に活用されるよう、在宅の要介護者のケアマネジメントを担います介護支援専門員に対し、研修の場などを通じて、周知徹底を図ってまいります。

○藤井委員 さらに、地域密着型サービスのもう一つの重要な柱であります認知症高齢者グループホームについて伺います。
 さきの本会議一般質問で、我が党の質問に対し、平成二十年度から補助制度をさらに充実させるとの福祉保健局長からの答弁がありました。そこで、十九年度と比較して、二十年度に充実させる具体的な補助額について伺います。

○安藤福祉保健局長 試算の前提といたしまして、まず高齢者人口に比べて整備状況が十分ではございません重点的緊急整備地域を想定いたしまして、次に、都内の認知症高齢者グループホームの運営主体として最も多い民間企業でございますが、この民間企業が、標準的な定員十八人のグループホームを建設するというケースで申し上げますと、この場合、平成十九年度の補助制度では、国の交付金も含めました公的補助金の額は三千二百五十万円、これに対しまして、二十年度の補助制度を適用いたしますと、最大で七千五百万円となり、差し引き四千二百五十万円の増額となる見込みでございます。

○藤井委員 福祉保健局の前向きな政策に対して評価をしたいと思います。
 次に、救急医療体制の整備に関連いたしまして、子どもの不慮の事故防止対策について伺います。
 公明党の提案を受けまして、都は子どもの事故予防対策の一環として、東京都版幼児視界体験眼鏡、いわゆるチャイルドビジョンを作製いたしました。東京都主催の行事や区市町村を通じて、安全対策に取り組んできたところであります。
 また、全国で初めてとなる乳幼児期の事故防止学習ソフト、別名、「見つけて防ごう!子どもにとっての身近な危険」というのが完成をいたしました。既にこのソフトで体験学習したお母さん方からは、ぜひ普及してすべての子育て家庭で体験してほしいという声が寄せられております。
 この学習ソフトの特徴、また普及啓発の方策と今後の展開について、都の所見を伺います。

○安藤福祉保健局長 事故防止学習ソフトは、保護者等が、子どもの事故が起こる様子や、子どもの目線などを映像により疑似体験することで、事故防止への意識を高め、防止策を図る上で役立つ内容となっております。
 このソフトの普及啓発を図るために、事故防止教室等で役立てられますよう区市町村に配布をいたしますとともに、インターネット上で公開し、都民にも周知を図っております。また、現在、より学習効果を高めるために、適切な解説を加えました指導用の総合的なマニュアルを作成しております。
 今後とも、こうした取り組みを継続いたしまして、事故防止の普及啓発に努めてまいります。

○藤井委員 関連しまして、都が、子どもの事故予防対策に尽力をされていることに敬意を表したいと思います。
 子どもの事故予防対策検討委員会が消防庁を中心に開催をされ、平成十八年三月に報告書が出されました。非常に貴重なデータと提言がまとめられていると思います。
 この検討委員会の内容、成果とともに、その後の取り組みについて伺います。

○小林消防総監 平成十七年度に教育、建築、遊具等の専門家で構成しました子どもの事故防止対策検討委員会を設置しまして、十二歳以下の子ども約一万人の救急事故事例を分析し、受傷形態や傾向等を明らかにするとともに、保護者等に対する事故防止に係る知識の普及啓発や安全環境の整備等の必要性について提言を受けました。
 東京消防庁では、本提言に基づきまして、事故事例集を作成し、ホームページへの掲載やマスメディアの活用により注意喚起を行うとともに、関係する行政機関、教育団体等に対しまして、事故防止対策の協力を依頼いたしました。
 今後も、最新の救急事故事例や毎年作成する事故事例集により都民等への注意喚起を行いますとともに、当庁で取り組んでおります児童等への防火防災教育の中におきましても、事故から身を守るための知識や行動力の向上に努めてまいります。

○藤井委員 こうした子どもの事故予防対策の具体的な取り組みは、間断なく継続していくべきであります。
 そこで、今後策定する次期の次世代育成支援東京都行動計画、その行動計画の中で、局横断的に、子どもの事故予防対策というものを検討するなど、都は子どもの事故予防対策に全力で取り組むべきと考えますが、所見を伺います。

○安藤福祉保健局長 不慮の事故を初め、あらゆる危険から子どもを守り、子どもの健やかな成長と安心できる子育てを進めていくことは、極めて重要であると考えております。
 都は、これまでも次世代育成支援東京都行動計画の中で、子どもの事故防止に関する情報提供や相談支援体制の充実など、安心して子育てができる仕組みづくりを目指してまいりました。
 次期の行動計画の策定に当たりましては、子どもの事故防止の視点をこれまで以上に重視した取り組みを検討してまいります。

○藤井委員 最後に、中小企業対策として、資材高騰と契約問題について伺います。
 現在、中小企業は厳しい受注競争にさらされ、疲弊をしております。そんな中、このところ公共工事では不調が次々と続いております。東京都の発注工事においても、十九年度は前年度に比べ、増大していると聞いております。
 その契約の不調の原因は、施工が困難である、技術者の確保が難しい、工期が厳しいなどの理由が複合的にさまざま考えられております。工事価格が合わないということも原因の一つと聞いていますが、その要素として、実勢価格に設計単価が合っていないのではないかと考えられます。
 今回は、この設計単価を取り上げますが、設計単価はどのように決めているのか、まず伺います。

○村山財務局長 東京都の発注する公共工事につきましては、工事を発注する各局ごとに工事費の積算基準を定めまして、工事に必要な資材や施工費を設計単価として決めております。
 そのうち、各局で共通して使用するコンクリートとか、あるいは鋼材などの主要な資材につきましては、当局が幹事局となっております東京都工事関係基準協議会におきまして、財団法人建設物価調査会や財団法人経済調査会がそれぞれ出版する「建設物価」及び「積算資料」などを基礎といたしまして、設計単価を定めております。
 これらの単価の見直しにつきましては、平成十六年度までは原則として年一回行っておりましたが、十七年度以降、この見直し期間を短縮いたしまして、市場の動向をより適切に反映できるよう、年四回、四半期ごとに行っております。

○藤井委員 年四回行っているということでございますが、それが現状と合っているのかどうかということが大変重要であります。国の設計単価は、原則年一回の改正と聞いております。それに比べて東京都は一年に四回改正して、市場の動きをそれなりにとらえているというのはわかりました。
 しかし、資材の中には、鋼材のように、最近の原油や鉄鉱石など、世界市場の変化によって、このところ急激に価格が高騰しているものもあります。急激な価格変動に対して、より速やかに都は対応を図るべきと考えますが、この点、いかがでしょうか。

○村山財務局長 資材のうち、特に鋼材等につきましては、ご指摘のように、本年年明け以降、大幅な価格高騰の状況を呈しております。これを踏まえまして、先ほど申し上げた工事関係基準協議会における各局の協議に基づきまして、直近の市場価格に基づいた設計単価に改正することといたしまして、本年四月から実施をいたします。
 今後とも、資材等の急激な価格変動が生じた場合には、速やかに調整の上、必要に応じて設計単価の見直しを行うなど、迅速に対応してまいります。

○藤井委員 これは当初の予定には入っておりませんでしたけれども、これに、契約に関連いたしまして、建設局にお伺いいたします。
 この契約制度の中で、特に不調が多いといわれているのが建設局と聞いております。この建設局関係における公共工事において不調が続く原因、そしてまた、それに対する対応策、どのように取り組むか最後に伺って、終了いたします。

○道家建設局長 当局におきましても、契約において不調が最近多発をしております。私どもも、この不調についていろいろ原因を調べておりまして、先ほど先生もおっしゃったような原因が主な原因でございます。
 特に、業界で技術者がかなり不足しているということもございますし、年度末において工事がふくそうする中で、技術者の不足が原因になっていることもございます。
 それから、いろいろな現場条件によって、都市特有の複雑な工事現場の状況というのもございまして、そういうものについても、標準の設計ではなかなか反映できない要因もあるということを承知しております。
 このようなことにつきましては、私どもも標準設計だけに頼るだけではなくて、現場の状況に応じて、適宜必要な積算を行うということに心がけておりますし、それから、不調が多発する部分につきましては、今後の--今検討中でございますけれども、この件につきましては、特に不調がたび重なる場合は、それぞれの事業について、それぞれの対象とする施工業者から見積もり等を聴取して、きちんと審査をした上でその見積もりを採用するなど、そういう対策を講じていきたいというふうに考えておるところでございます。

○藤井委員 以上で終わります。
 ありがとうございました。(拍手)

○小磯副委員長 藤井一理事の発言は終わりました。
 この際、議事の都合により、おおむね十分間休憩いたします。
   午後九時二分休憩

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