東京都議会予算特別委員会速記録第二号

   午後一時一分開議

○三宅委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 委員会の要求資料について申し上げます。
 先ほど委員会として要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 これより総括質疑を行います。
 この際、一言申し上げます。
 質疑に当たりましては、さきにご了承をいただいております委員会実施要領等に従いまして運営してまいります。委員の皆様方には、円滑かつ充実した審議が行われますよう、ご協力をお願いいたします。
 なお、持ち時間につきましては、電光表示盤に残り時間を表示いたします。さらに、振鈴で五分前に一点、時間満了時に二点を打ち、お知らせいたします。質疑持ち時間はお守り願います。
 次に、理事者に申し上げます。
 答弁に際しましては、委員の質疑時間も限られておりますので、短時間で明快に答弁されるようお願いいたします。
 なお、各局長に申し上げます。
 発言の際には、必ず職名を告げ、委員長の許可を得た上で発言されますようお願いいたします。
 これより順次発言を許します。
 高橋かずみ理事の発言を許します。

○高橋(か)委員 東京都議会自由民主党を代表いたしまして、予算特別委員会総括質疑を行います。
 最初に、行財政運営の基本的な考え方についてお尋ねいたします。
 平成二十年度は、「十年後の東京」の実現に向けて本格的スタートを切る最初の年であります。これから数年間にわたる集中的な取り組みが、未来を展望する施策の苗をしっかりと根づかせ、育てていくために極めて重要であります。
 都財政を取り巻く環境は、景気の減速や法人事業税の暫定措置に伴う減収により、今後一層厳しさを増すことが予想されます。そうした中でも施策展開の手を緩めることなく、むしろアクセルを踏み込むぐらいの決意を持って臨まなければなりません。
 そのような中で発表された二十年度の当初予算でありますが、これは、十九年度最終補正予算と一体的に編成されているとのことであります。まずは、今回の予算の特徴について伺います。

○村山財務局長 お答えいたします。
 今回の予算は、都財政を取り巻く環境が厳しさを増す中にあっても、「十年後の東京」の実現など、東京の将来を見据えた取り組みを加速させる課題と、中長期的にその取り組みを安定的に実施する基礎をつくる課題、この二つをともに達成することをねらいとして編成いたしました。
 そのため、二十年度予算では、「十年後の東京」への実行プログラムに掲げた施策の積極的展開を図るとともに、都民生活が直面する課題に積極的に取り組んでおります。また、更新期を迎える大規模施設の改築、改修を本格的に開始すると同時に、これを計画的に進めるための基金の充実など、財政構造の弾力性を高める取り組みにも力点を置いております。
 また、十九年度最終補正予算では、新たに、法人事業税の暫定措置に伴う減収に対処するための特別基金を設置いたしまして、歳入歳出両面にわたる洗い出しにより確保した財源を全額積み立て、いかなる状況変化のもとにあっても必要な行政水準を確保できるよう、可能な限りの措置を講じたところでございます。
 二十年度予算と十九年度最終補正予算をこのように一体的に編成することで、積極的な施策展開を図る攻めと、それを支える備えの両面の取り組みを兼ね備えた予算としたものでございます。

○高橋(か)委員 施策展開の積極性と財政基盤の強化の堅実性を兼ね備えた予算だと認識いたしました。
 この予算を通して、財政再建の時代を乗り越え、新しいステージを迎えた都財政にとって、今後かぎとなる事柄を三つの点から明らかにしていきたいと思います。
 まず、先ほどの答弁にもあったように、今回の予算における特徴の一つは基金であります。
 十九年度最終補正予算で法人事業税国税化対策特別基金に二千百八十五億円、二十年度当初予算でも社会資本等整備基金に二千五百億円など、基金の積み立てが目立ちます。豊かな財源を基金で抱え込むのではなく、速やかに都民に還元すべきだと主張する向きも一部には見られますが、十年後というロングスパンで積極的な施策展開を進めようというとき、それを持続的に支え得る財政面の体力を十分に蓄えておくことが極めて重要だと考えます。
 そこで、基金の現状について、認識と今後の方針について伺います。

○村山財務局長 地方交付税の不交付団体である都が、だれにも頼ることなく、中長期的な視点から積極的な施策展開を行うとともに、大幅な税収減により財源が不足した場合においても、必要な行政水準を確保していく上では、基金は大変重要な役割を果たすものでございます。こうした考え方から、今回の予算では、可能な限り各種基金の充実を図っております。
 とはいえ、都財政が、財源面からは、わずか三年で都税が一兆円も減収するという構造的な特徴を持ち、需要面では、大規模施設の改築、改修需要だけで、今後おおむね十年間でおよそ八千億円も見込まれる点などを考慮すれば、現状の基金残高ではまだまだ十分な水準とはいえないというふうに認識しております。
 したがいまして、基金につきましては、今後とも一層充実するとともに、あわせて起債余力の拡大など、さまざまな財政面での工夫を重ねながら、「十年後の東京」の実現に向けた取り組みを安定的、継続的に実施できるよう、都財政の体力をさらに蓄えてまいります。

○高橋(か)委員 財政環境が厳しさを増す中で、施策展開のアクセルを踏み続けるために、引き続き財政基盤の強化に努めていただきたいと思います。
 二点目でありますが、今回の一般会計予算には、大規模施設の改築、改修の経費として六百二十億円が計上されています。我が党は、かねてから、都が所有、管理する大規模施設の改築、改修の必要性を主張してきましたが、その取り組みに当たっては、全体としての理念や方針のもと、取り組みの優先順位や手順を明らかにするプランを持って臨むべきであります。
 そこで、都が所有、管理する大規模施設等の改築、改修を今後どのように進めていくのか、伺います。

○村山財務局長 東京都の所有、管理する大規模施設は、その多くが、高度成長期と一九九〇年代という二つの時期に集中的に整備されておりまして、おのおの建物の改築や設備の改修が必要な段階に差しかかっております。
 しかし、改築、改修の際には、単に古くなったから施設をつくり変えるというのではなく、これまで施設が担ってきた事業自体の必要性を再点検するとともに、必要だとされた施設につきましても、集約化や容積率の最大活用など、資産効率を最大限に高める工夫を行い、改築、改修の取り組みを、都政のありようを新しい段階に引き上げるてことすることが重要であると考えております。また、安全・安心や環境、さらにはまちづくりなど、多面的な施策効果を追求する取り組みもあわせて実施することも欠かせないと考えております。
 このような観点から、今般、大規模施設等の改築、改修に関する実施方針を取りまとめ、各局に示しました。この方針に基づきまして、今後、各局との連携のもとに、主要な大規模施設について、二十年度中に改築、改修計画を策定いたしまして、お話しのように、優先順位や手順を明確にしながら、計画的に改築、改修に取り組んでまいります。

○高橋(か)委員 改築、改修は息の長い取り組みでありますが、大事なことでありますので、効果的に取り組んでいただきたいと思います。また、近々、東京の都市インフラも一斉に更新期を迎えることも考え、道路や橋など、他の分野についても計画的な取り組みを進めていくよう要望しておきます。
 三点目は、施策の中身であります。
 施策は、都政の現場で実際に実行され、効果を上げて初めて意味を持つものとなります。困難な課題解決に向け、道筋をつけるのが施策の役割であり、実効性ある施策を組み立てて、むだを省き、より高いレベルに磨き上げていくことが新しい時代の予算編成ではないでしょうか。
 財政当局においても、新たな公会計制度の導入など、意欲的な試みを取り入れているようでありますが、施策の実効性を担保するため、今回の予算編成で具体的にどのような取り組みがなされたのか、伺います。

○村山財務局長 施策の実効性を高めていくためには、その事業の実施結果をつぶさに点検いたしまして、現場でどんな問題が生じているのか、それはどうすれば解決できるかという視点を持って、施策を継続的にブラッシュアップしていくことが必要だと考えております。
 こうした観点に立ち、今回の予算編成では、事務事業評価を予算編成の一環として明確に位置づけまして、新たな公会計制度も活用しながら、きめ細かい事後検証を実施し、検証結果を予算に反映させ、次の事業展開をより効果的、効率的なものにしていく仕組みの充実を図っております。
 その中で、例えば、システム再構築の投資判断を行うに際して、発生主義に基づく試算を取り入れたコスト比較を行い、判断材料としてこれを役立てるなどの成果が生まれてきております。また、施策を所管する各局の自律性を支え、創意工夫を生かすための取り組みも取り入れました。
 今回の予算編成から開始したこうした取り組みを今後一層定着させ、強化することによりまして、予算編成過程を通じて継続的に施策の実効性を高めていくよう努力してまいります。

○高橋(か)委員 今後の都財政には、「十年後の東京」を目指す都政を財政面から支えるという、財政再建期とは違うものが求められていると思います。今回は、これからの財政運営においてかぎとなる三つの点について指摘させていただきましたが、実務を実際に担っている財務局長の所見を伺います。

○村山財務局長 財政再建期におきましては、膨大な財源不足に対処するため、いかに歳出総額を切り詰めるか、この点が財政運営上避けがたいテーマでございました。その結果、施策の優先順位づけにおいても、どうしても実施しなければならない事業を厳選するというスタンスを実務の上では重視せざるを得ない面がございました。
 財政再建の長いトンネルを抜けまして、都政が「十年後の東京」の実現という中長期の目標に向かって走り出した今日の財政運営におきましては、今後の環境変化の中にあっても、この課題遂行を財政面からいかに支えるかという、より攻勢的なテーマに軸足を置くべき段階に来ているというふうに考えております。
 そのためには、財政規律の保持という基本を堅持することはもとよりとして、さらに、都が実施している、あるいはしようとしている諸施策について、東京の置かれた複雑な状況の中でその施策目標を達成し得るよう、関連する事業を常にバージョンアップしていくことが求められております。
 財政運営の実務を担当する者といたしましては、こうした観点に立って、お話しいただきました財政面の体力の蓄積、トータルな事業プランの確立、施策の実効性の確保という三つの点を肝に銘じまして、新しいステージを迎えた都政を支えるにふさわしい財政運営の姿を目指してまいります。

○高橋(か)委員 これまで石原知事は、多くの困難を乗り越えて都政を導いてきました。がけっ縁にあった都財政を今日の状況まで立て直したことは、その最大の功績の一つであります。
 今回の予算は、財政再建をなし遂げた知事が、「十年後の東京」という近未来図を掲げて新たな一歩を踏み出した節目の年の予算であると思いますが、今後の都政の展開に向けた知事のお考えと決意を伺います。

○石原知事 ちょっと風邪ですか花粉ですか、わからぬのですが、声が聞き苦しくて申しわけありません。
 九年前の知事就任当時、都財政は破綻寸前でありました。以来、都議会の皆様のご協力を得て、塗炭の苦しみを重ねながら財政再建を目指して、何とか脱出を果たすことができたと思います。
 もとより、財政再建というのは、それ自体が目的ではありませんで、次のある新しい目的のための必要条件の整備でありますが、これによって得られた都財政の力を、東京の新しい時代を切り開く取り組みに生かしてこそ、苦労の意味があったと思います。
 「十年後の東京」というプランをつくりましたが、これは、東京を二十一世紀の新しい都市モデルへと高めていくための基本的な設計図でありまして、この設計図を実現するためにこそ、財政再建で培った力を存分に生かし、二十年度予算を新たな起点として積極果敢に都政の展開を果たしていきたいと思っております。

○高橋(か)委員 次に、東京の魅力の世界への発信と国際貢献についてお尋ねいたします。
 先日の東京マラソンは大成功でした。三万人を超えるランナーのほとんどが完走し、事故もなく、選手と観衆とボランティアが一体となった大会は、東京の大規模競技会の運営能力の高さを世界に示すものであり、この成功を二〇一六年オリンピック・パラリンピックの招致につなげたいと思います。そのためには、オリンピック招致の意義を都民、国民にしっかり理解してもらい、招致機運の醸成に努める必要があります。
 しかし、最も重要なのは、オリンピックの後に何が残るかということであります。一九六四年の東京オリンピックは、敗戦から立ち上がった日本人の気持ちに光明を与えるビッグイベントでありました。首都高速道路や地下鉄など交通インフラの整備や、二十三区内の下水道整備など、大改造が行われました。また、駒沢オリンピック公園総合運動場や国立代々木競技場など、スポーツに親しむ環境も整備されました。
 招致機運をさらに高めるためには、オリンピック・パラリンピックがどのような遺産を残すのか、広く訴えていく必要があると考えますが、大会開催によって東京に何がもたらされるのか、伺います。

○荒川東京オリンピック招致本部長 オリンピック・パラリンピックの開催は、さまざまな効果をもたらします。
 第一に、非常に大きな経済効果、具体的には、全国で二・八兆円、都内で一・六兆円の経済効果が期待されます。
 第二に、青少年が選手の活躍や精神力のたくましさに触れることで、未来に夢と希望を抱く大きな機会ともなります。
 第三に、選手だけでなく、子どもから高齢者、障害者など、多くの人々が競技を楽しみ、交流することで、すべての人々に優しい平和な社会の実現に貢献いたします。
 第四に、数々の感動を生んだ競技会場が、大会後もスポーツ・文化の拠点として都民、国民に利用されることにより、健康な社会づくりを推進することにもなります。
 第五に、緑豊かな競技会場の整備や最先端技術を駆使した大会運営によりまして、地球環境を大切にした水と緑の美しい東京を復活させるなど、都政が目指す「十年後の東京」の実現を加速させるものとなります。
 さらに、これらに加えまして、招致段階からオリンピックムーブメントを展開することで、次代に引き継ぐ遺産はより大きくなると考えます。

○高橋(か)委員 さて、オリンピックに関する予算は、開催概要計画書で招致経費五十五億円だったものが、招致経費を含む招致推進活動経費として百五十億円となっています。積極的な招致活動を行うためには予算を充実する必要があると考えますが、百五十億円の内訳はどうなっているのか、伺います。

○荒川東京オリンピック招致本部長 招致に係る経費についてですが、国内選定用に策定いたしました開催概要計画書の段階では、ロンドンなどの海外都市の申請ファイルに掲載された額を参考に、ほぼ同額の五十五億円を招致経費として計上いたしました。
 今回お示ししました百五十億円は、国内選定後から来年の開催都市決定までの約三年間における都と招致委員会を合わせた全体経費を招致活動推進経費として改めて積算したものでございます。
 その内訳は、第一に、熾烈な国際競争を勝ち抜き、招致を実現するための計画策定及び国際招致活動に要する招致経費として五十五億円、第二に、区市町村、全国自治体、スポーツ団体等と連携し、スポーツ、教育、文化、環境学習等と結びつけまして、オリンピズムを幅広く普及啓発するためのオリンピックムーブメント推進経費として九十五億円でございます。

○高橋(か)委員 また、オリンピックムーブメントを充実強化するという観点から、オリンピック招致委員会に対する補助が計上されております。一部には、当初、民間から調達する予定だった資金が集まらないため、都からの補助を導入するのだという的外れな指摘をする向きがあるようでありますので、改めてお聞きいたします。
 オリンピック招致委員会では、七十五億円の歳出に対し、民間から五十億円を調達するとしていますが、都の補助を充当する事業の性格と現在の民間資金調達の見込みについて伺います。

○荒川東京オリンピック招致本部長 まず、民間資金についてでございますが、これまで、アシックス、デサント、ヤフー、TBCグループ、大塚商会等の企業や経済界などに対しまして支援を要請してまいりましたが、その結果、現時点における支援の額は合計で約三十一億円でございます。さらに、現在、多くの企業、団体などからの支援の意向を受けており、予定の民間資金は十分調達できるものと確信しております。
 また、招致委員会に対する都の補助は、オリンピックムーブメントをより効果的、効率的に行うために実施するものでございまして、一部にあるように、民間からの資金が集まらないから補助するものではございません。
 対象となる事業は、具体的には、第一に、都民を対象に行うオリンピック・パラリンピックの開催意義の周知やオリンピズムの普及啓発など、都の役割を代替して行う事業、第二に、全国を対象に行うオリンピズムの普及啓発や、「十年後の東京」が目指す新しい都市モデルの発信など、都の施策を補完する事業などでございます。
 なお、国際招致活動に要する経費は、民間資金を充当することといたしまして、都の補助の対象とはいたしません。

○高橋(か)委員 既に調達予定額の六割を超える額についてのめどが立っているということであります。また、民間からの資金が集まらないから補助をするのだという指摘も、間違いだということがよくわかりました。
 今後、熾烈な都市間競争を勝ち抜くためには、国やJOCなど関係機関と連携して、質の高い立候補ファイルを策定するとともに、国の内外でオリンピックムーブメントを広く展開していく必要があります。
 二十一世紀のオリンピック開催においては、スポーツ、環境、文化がオリンピックムーブメントの貴重な要因であり、二〇一二年のロンドン・オリンピックは、文化面で評価を得たことも招致成功の要因だと聞いております。今後、東京の文化面での国際的評価を高めていくためには、これまでの手法にこだわらない新たな発想が重要であります。
 都は平成二十年度から、約十二億円の予算を活用して、東京ならではの文化事業を、伝統芸能、演劇、音楽などの分野から大規模な文化プロジェクトとして実施すると伺っております。
 そこで、このプロジェクトでは具体的にどんな事業を展開するのか、伺います。

○渡辺生活文化スポーツ局長 大規模文化プロジェクトでは、芸術文化の創造、発信、子どもたちの育成の二つの視点から、さまざまな分野において事業を展開してまいります。
 例えば伝統芸能分野では、都内の庭園において流派を超えた大規模な茶会を催し、日本の美意識ともてなしの心を多くの都民に堪能していただくとともに、海外からの観光客にもアピールしてまいります。
 また、子どもたちが、能や狂言、日本舞踊、邦楽などの芸術文化を体験、創造できるプログラムにつきましては、規模を大幅に拡大し、実施してまいる所存でございます。

○高橋(か)委員 東京には伝統と最先端とが織りなす魅力的な文化が存在します。これを世界に発信するには、都内での取り組みだけではなく、実際に海外で東京の文化的な魅力を多くの人に知ってもらう取り組みが不可欠と考えます。
 海外での公演活動等には、国内以上に費用がかかりますから、それに対する十分な資金的な支援がないと実現できません。東京のすばらしい文化を世界に知らしめるためには、海外に向けて発信する活動に対してこれまで以上に支援していく必要があると思いますが、所見を伺います。

○渡辺生活文化スポーツ局長 これまで都におきましては、東京を代表する質の高い芸術活動に対して助成してまいりました。
 来年度は、助成金の規模を総額で二千万円から六千万円に大幅にふやすとともに、東京の芸術文化を海外に紹介する事業などにつきましては、一事業当たりの助成金額の上限を二百万円から四百万円に引き上げる予定でございます。江戸開府以来四百年の歴史がはぐくんだ東京の魅力的な文化を世界へアピールしてまいります。

○高橋(か)委員 都は、「十年後の東京」への実行プログラム二〇〇八で、アジアの将来を担う高度な人材の育成施策を掲げています。
 アジア地域は、近年、経済成長が著しく、世界における存在感を高めています。また、グローバル化の進展で、アジア各国の相互依存関係はますます強くなっており、環境問題や感染症対策など、大都市共通の課題は国境を越えて他国にも大きな影響を与えるようになっております。
 アジアの大都市に共通する課題の解決には、優秀な人材の育成や確保が不可欠であります。また、東京がアジアのリーダーとしてアジアの人材育成に積極的に取り組むことも期待されております。都はアジア人材育成基金を設置することとしていますが、基金を設置する意義について伺います。

○大原知事本局長 今後、世界の中でアジアが一層発展するためには、東京を初め、アジアの頭脳部、心臓部である大都市が連携をいたしまして、直面するさまざまな課題の解決を図ることが重要でございます。人材育成はそのかなめとなるものでございます。
 都は、アジアの人材育成におきまして、東京に集積する知識や技術力を生かし、先導的な役割を果たすことが求められております。また、人材育成は、長期的視点に立ち、安定的、継続的に取り組むことが不可欠でございます。このため、今後十年間に展開する人材育成施策を見通して、新たに七十億円の基金を設置することとしたものでございます。

○高橋(か)委員 基金を活用して、長期的、継続的な視点で人材育成を行うとのことでありますが、具体的にはどのような施策を展開するのか、伺います。

○大原知事本局長 基金を活用した人材育成施策といたしましては、まず、都市づくりや上下水道等、都政のさまざまな分野におきまして、十年間で約五百名の行政職員を受け入れまして、研修を実施いたします。
 また、感染症対策や災害救助等につきまして、アジアの都市で実例を学び、あるいは、現地のニーズに合わせた技術指導を行うために、専門家の派遣や共同研究を新たに実施いたします。
 さらに、首都大学東京博士課程等に十年間で約五十名の留学生をアジアから受け入れまして、高度先端的な研究を行いますとともに、奨学金の支給ですとか、あるいは住居の確保等の生活支援を行ってまいります。

○高橋(か)委員 アジアの将来を担う人材の育成に、積極的な展開を期待したいと思います。また、留学や研修が終了したからそこで終わりということではなく、育成した人材が将来にわたって東京とのつながりを継続しつつ、アジア各地で活躍することが重要であります。
 都では、受け入れた留学生や専門家のデータベースとして、アジア人材バンクを設置するとのことでありますが、この人材バンクをどのように活用していくのか、伺います。

○大原知事本局長 アジア人材バンクでございますが、これは東京で受け入れた人材の情報を登録・管理するものでございまして、初年度はおよそ三百名の登録を予定しております。
 登録者に対しましては、ウエブマガジンによりまして、アジア諸都市が抱える課題ですとか、あるいは施策の最新情報を定期的に発信をいたします。また、蓄積いたしました人材情報を、専門分野ごとのメーリングリストによる情報交換や、あるいは専門家の紹介などに役立ててまいります。
 これらの取り組みを通じまして、アジアの人材が持つ知識や経験が地域を越えて共有されまして、活用されることを目指してまいります。

○高橋(か)委員 次に、都民生活の安全・安心の確保についてお尋ねいたします。
 まず、災害時の対応でありますが、震災発生時に迅速かつ的確に応急対策を実施するには、正確な情報を速やかに収集し、活用することが重要であります。
 そのためには、情報技術の活用が不可欠と考えます。昨年の新潟県中越沖地震でも、新潟県が情報技術を活用し、応急復旧対策をスムーズに進めたと仄聞しております。
 都は、既に災害情報システムの導入などを先進的に進めてきましたが、「十年後の東京」への実行プログラムでは、新たな災害情報システムを開発するとしております。これは、災害時の対応力を一層強化するためだと考えますが、現在のシステムにどのような問題があるのか、またどう強化されるのか、伺います。

○押元総務局長 現行の災害情報システムは、通信容量やプログラム上の限界によりまして、映像や画像を被災現場から直接送ることができず、また、個々の情報を合成して一画面に表示できないなどの制約がございます。
 このため、新しいシステムでは、消防職員などが撮影した被災現場の画像を取り込めるようにいたしますとともに、送られてきた被害情報や救出支援部隊の活動情報など、複数の情報を一つの地図上に表示できるようにいたします。
 このシステムの支援を受けることによりまして、救出救助に当たる地域の決定や、優先して復旧すべき地域の選定など、災害対応の意思決定がより迅速かつ的確に行えるようになると考えております。

○高橋(か)委員 災害発生時の意思決定を支援するシステムは、迅速な救出救助を行う上で大変重要であり、区市町村や防災機関でも活用しやすいものになっていなければなりません。そのためには、開発の構想段階から各市町村などの意見を取り入れ、活用しやすいシステムにすべきであります。
 区市町村がどのように活用できるシステムにするのか、また、今後の開発に当たりどう連携するのか、伺います。

○押元総務局長 震災のときに速やかに救出救助活動を実施いたしますには、都と区市町村、防災機関が緊密に連携をいたしまして、迅速かつ的確な判断を行うことが重要でございます。
 このため、新しいシステムでは、各関係機関との間で都が収集した情報の共有化を一層進めますとともに、区市町村等におきましても、必要な情報を地図上に重ねて表示できるようにするなど、活用しやすいものにしたいと考えております。
 今後、システムの構想段階から区市町村や防災機関とともに検討を行いまして、本システムが基幹的な、共通の災害情報システムとなりますよう開発を進めてまいります。

○高橋(か)委員 次に、中小河川の治水対策について伺います。
 都内の中小河川では着実に治水対策が進み、台風や集中豪雨のたびに水害発生におびえていた過去の状況は、改善されつつあります。
 しかし、近年、一時間一〇〇ミリを超えるような集中豪雨の発生がふえており、平成十七年九月の集中豪雨では、区部西部を中心に、浸水家屋が六千棟にも及ぶ大水害が発生しました。かくいう私も、このときの被害者の一人であります。
 水を治めることは、政治の根幹であります。くしくも、ことしは都内に未曾有の被害をもたらした狩野川台風から、数えて五十年目であります。こうした節目に、都民の命と暮らしを守る治水対策のあり方を改めて見詰め直すことは重要なことと考えます。
 そこで、まず、都は中小河川について、これまでどのような考え方で、どのように対策を進めてきたのか、伺います。

○道家建設局長 河川の整備は、水害から都民の命と暮らしを守ることを目的とし、下流から順次、川幅を広げることを基本に進めております。
 整備計画の策定に当たり、計画降雨を高い水準に設定すると安全性は高まりますが、護岸整備が上流に至るまでに、より多くの時間と費用が必要になります。
 このため、都は、財政状況などを勘案し、多くの流域で整備効果を早期に発現できるよう、計画降雨を定め、その水準を段階的に引き上げてまいりました。
 具体的には、お話の昭和三十三年の狩野川台風を契機として、時間三〇ミリ対策に着手し、昭和五十四年に完了いたしました。この間においても水害が相次いで発生したため、昭和四十四年から計画降雨の水準を上げて、五〇ミリ対策に着手いたしました。
 現在も、下流から鋭意、護岸整備を進めておりますが、河道拡幅による整備が困難な箇所などでは、分水路や調節池などの整備を進め、水害の早期軽減を図っております。

○高橋(か)委員 河川は下流から順次整備を進める必要があること、また、分水路や調節池の設置などさまざまな工夫で、都市化が進んだ東京の水害を軽減してきたという事情も、よくわかります。
 しかし、これまでのペースで整備を行っていたのでは、一時間五〇ミリの降雨に対応できる護岸の整備でさえ、完成までに数十年かかることになり、一層の工夫が必要であります。
 また、流域の都市化はさらに加速しております。このため、これからは確実に目標年次を決めて、計画的に護岸や調節池の整備を進めていくことが重要であります。
 そこで、現在進められている、一時間五〇ミリの降雨に対する中小河川の整備状況と、整備目標、整備効果について伺います。

○道家建設局長 中小河川では、三年に一回の確率で発生する一時間五〇ミリの降雨に対処する護岸などの整備を進めております。
 平成十九年度末の護岸整備率は六二%であり、これに調節池等の効果を加えた治水安全度は、七五%となります。
 平成二十七年までに、区部では石神井川、妙正寺川などの十三の河川、多摩では空堀川や鶴見川など十八の河川で、護岸や調節池の整備を重点的に実施してまいります。特に、環七に囲まれた中小河川流域では、五〇ミリ降雨に対する治水安全度を一〇〇%とすることを目標としてまいります。
 これらの対策が完了すれば、過去三十年間に水害をもたらしたものと同規模の降雨による溢水の九割は解消することが可能となります。

○高橋(か)委員 一時間五〇ミリの降雨は三年に一回の確率とのことでありますが、一方で、多摩川や荒川などの国が管理する大河川では、二百年に一回の確率の大雨が目標と聞きます。
 現在の中小河川の整備目標は、大河川と比べバランスを欠いています。中小河川でも、五〇ミリを超えるような豪雨に対しても十分な備えを講じるべきであると考えます。
 今こそ、五〇ミリ対策の次の段階として、狩野川台風級の時間七五ミリの降雨に備えることも視野に入れた、次期整備目標を明確にすべき時期と考えます。
 そこで、治水対策の根幹となる中小河川整備の今後の展開について、所見を伺います。

○道家建設局長 水害から都民の命と暮らしを守るためには、現在実施している五〇ミリ対策を早期に完了させていくことが重要であります。
 しかし、近年、時間五〇ミリを大きく超える豪雨を要因として、二千棟以上の浸水被害が数年に一度発生しております。
 首都東京においては、地下鉄や地下街などが増加しており、一たび大規模水害が発生した場合には、経済活動に多大な影響を及ぼすばかりでなく、人命にかかわる重大な被害につながるおそれがあることから、より高い安全性の確保が強く望まれております。
 このため、豪雨対策基本方針を策定し、五〇ミリ対応の護岸整備に調節池や流域対策などを加え、七五ミリの降雨に対処する考え方を明らかにいたしました。
 お話の狩野川台風級の七五ミリ降雨を視野に入れた中小河川整備の今後の展開については、この方針を踏まえ、調節池の増設など、河川整備のあり方を検討してまいります。

○高橋(か)委員 また、都市の浸水を防ぐには、河川と下水道の整備が一体となって、市街地に降った雨を速やかに排除することが基本であります。
 近年は、都市化の進展で地面や道路がコンクリートやアスファルトに覆われ、雨水がこれまで以上に下水道などへ流れ込むようになり、既に下水道が整備されていながら、浸水被害が発生している地域もあります。
 このような状況を踏まえ、これまで下水道局はどのように浸水対策を進めてきたのか、伺います。

○前田下水道局長 下水道局では、雨水排除能力の向上を図るため、新たな幹線やポンプ所など、基幹施設の整備を進めておりますが、これらの整備には多くの年月と費用を要することから、一時間五〇ミリの降雨に対応した整備の進捗率は、現在約六割となっております。
 そこで、繰り返し浸水被害が発生している地域では、早期に効果を発現させるため、できるところから、できるだけの対策を行うという方針で、平成十一年度にクイックプランを策定し、平成十六年度には新たに被害を受けている地区を追加いたしまして、新クイックプランとして改定しております。
 クイックプランでは、地形や浸水の発生状況に応じて貯留管やバイパス管の整備を行うなどの緊急的な対応を図ることとしておりまして、既に対策を実施した地域では、浸水被害の軽減効果があらわれております。

○高橋(か)委員 クイックプランを策定し、浸水の軽減に努めているとのことでありますが、一時間五〇ミリの降雨に対応する雨水整備率は、いまだに六割にとどまっております。
 抜本的な浸水対策のためには、幹線やポンプ所などの基幹施設の整備は不可欠であります。基幹施設の整備には、多くの時間と費用がかかります。一層の工夫をして、効率的な整備を図るべきではないでしょうか。
 そこで、今後、基幹施設の整備にどのように取り組んでいくのか、伺います。

○前田下水道局長 東京都豪雨対策基本方針におきましては、浸水予想区域図に基づきまして、浸水の危険性の高い地区や、くぼ地坂下など地形的に被害を受けやすい地区を、対策促進地区として選定いたしました。
 下水道局では、これらの地区に重点化いたしまして、幹線やポンプ所などの基幹施設の整備を効果的に推進し、今後十年間で一時間五〇ミリの降雨に対応できる対策を完了させる予定でございます。

○高橋(か)委員 また、特に地下街などがあり、浸水被害の危険性が高い地区では、現在の五〇ミリ計画にこだわらず、積極的な対策が必要と考えますが、所見を伺います。

○前田下水道局長 ご指摘のとおり、浸水が発生した場合に重大な被害を生じる危険性が高い地下街などでは、積極的な浸水対策を実施していく必要がございます。
 下水道局では、地下街などの対策として、一時間七〇ミリの降雨に対応できる施設の整備を進めておりまして、これまで、渋谷駅及び新宿駅周辺で対策が完了しております。
 引き続きまして、現在整備中である池袋駅周辺などの対策を早期に完成させるとともに、新たに東京駅丸の内地区周辺でも対策を進め、安全性の向上に努めてまいります。

○高橋(か)委員 二〇一六年オリンピック開催の夏は、集中豪雨の時期であります。大水害に見舞われた東京の姿を世界に報道されることのないよう、河川と下水道の整備が一体となって浸水対策に万全を尽くされるよう、強く要望しておきます。
 次に、健康危機管理対策についてお尋ねいたします。
 まず、新型インフルエンザ対策でありますが、その発生は、今や時間の問題と、多くの専門家が指摘しております。国内に新型インフルエンザが持ち込まれた場合、瞬く間に感染が拡大し、医療サービスや社会機能に甚大な被害が生じるおそれがあります。
 感染拡大のスピードを抑え、社会に与える被害を最小化するためにも、早期からの封じ込め作戦が重要であります。
 そこで伺いますが、都の健康危機管理の拠点である健康安全研究センターは、新型インフルエンザの発生をいち早く察知できる情報収集体制や検査体制などの機能の強化にどのように取り組んでいくのか、伺います。

○安藤福祉保健局長 健康安全研究センターでは、都内の保健所や医療機関を結びます感染症情報ネットワークで発生情報をいち早く共有するとともに、アジア大都市ネットワークを活用いたしまして、海外情報の迅速な把握に努めております。
 また、ウイルスを検出する精度の高い迅速遺伝子検査システムを全国に先駆けて独自に開発いたしましたほか、緊急時には二十四時間検査可能な体制を構築をしてございます。
 今後、センターを平成二十四年度までに、仮称でございますが、健康危機管理センターとして整備するとともに、救急搬送患者の症状から感染症の発生を探知する仕組みを構築するなど、情報収集機能を強化をいたしてまいります。
 さらに、検査設備も増強し、感染症危機管理の拠点としての機能を一層充実してまいります。

○高橋(か)委員 また、医療体制の確保も重要課題であります。
 患者が発生した場合、調査や治療に当たる保健所職員や医療従事者などは、多くの患者と接触し、感染の危険にさらされます。このため、関係者の感染防護策が非常に重要になってきます。
 そこで、流行が起こったときに、感染を防ぐための防護服などの備えは十分なのかどうか、伺います。

○安藤福祉保健局長 お話のように、治療や感染拡大防止の最前線に立ちます医療従事者や保健所職員の感染予防のためには、マスクや手袋、フードつきガウン等の防護具を備蓄しておく必要がございます。
 このため、特に厳密な感染防護が求められます封じ込め期におきまして、保健所や感染症指定医療機関等が十分に機能を発揮できますよう、平成二十年度には約五十万着を購入し、翌年度以降も計画的に備蓄をしていく予定でございます。

○高橋(か)委員 さらに、今後は封じ込め期だけではなく、広範囲への爆発的な流行であるパンデミックに対しても、抜本的な強化が必要であります。
 そこで、新型インフルエンザ対策を法定計画である感染症予防計画にきちんと位置づけ、都を挙げて対策に取り組むべきと考えますが、所見を伺います。

○安藤福祉保健局長 法定計画であります感染症予防計画に新型インフルエンザ対策を位置づけますことによりまして、都の方針を明確に示し、都民や医療機関及び区市町村などの関係機関が一体となりまして、対策を強力に推進していくことは、極めて重要であると考えております。
 このため、昨年十二月に感染症予防医療対策審議会からいただきました答申などを踏まえまして、新型インフルエンザの早期発見、検査、防疫、医療体制整備等を、本年度中に改定する感染症予防計画に位置づけてまいります。
 今後、この新たな計画に基づきまして、区市町村等関係機関との緊密な連携のもとに、総合的な対策を展開をしてまいります。

○高橋(か)委員 ぜひ、総合的な観点から対策を着実かつ迅速に進めていただきたいと思います。
 次に、肝炎対策について伺います。
 昨今のウイルス肝炎治療の進歩を踏まえ、これまで我が党はウイルス肝炎の医療費助成について、通院医療も早急に対象とするべきと主張してきました。
 我が党の提案を受け、都は国に先駆け、昨年十月から通院治療も対象とした、C型肝炎インターフェロン治療の助成制度を創設したところであります。
 一方、国は、ウイルス肝炎訴訟の動向も踏まえて、来年度から医療費助成制度を創設すると聞いております。
 そこで、都制度と国制度の主な違いについて、また、今回創設する国制度に対して、都としてどのように対応しようとしているのか、伺います。

○安藤福祉保健局長 今回創設されます国の制度は、肝炎のインターフェロン治療に対しまして、一年間を限度として医療費を助成するものでありまして、先行実施をしております都制度と、基本的に同じ仕組みでございます。
 国と都の制度の主な違いでございますが、国制度では、C型肝炎に加えてB型肝炎も助成対象としております。
 また、患者自己負担につきましては、都は住民税非課税世帯の方は負担がございません。それ以外は月額三万五千四百円でございますが、これに対しまして国制度では、所得の状況に応じて最低でも一万円、さらに三万円、五万円の三段階に区分して自己負担を求めております。
 都としては、これまでの都制度を踏まえながら、本年四月から、基本的に国に準拠した制度に移行することを検討しているところでございます。

○高橋(か)委員 国制度では、住民税非課税世帯も月額一万円の負担があるようでありますが、これまでの都の制度と同様に、自己負担なしに、ぜひともすべきであります。
 また、こうした方への配慮とあわせて、既に医療費助成を受けている方に不利益が生じないように、経過措置等講じるべきと考えますが、所見を伺います。

○安藤福祉保健局長 ウイルス肝炎の早期治療を促進をするためには、医療費の患者自己負担の軽減を図ることは重要であるというふうに考えてございます。
 新たな制度におきましても、B型肝炎も対象とするとともに、住民税非課税世帯の方について自己負担なしとするほか、既に医療費助成を受けている方に対しましては、引き続き現行制度での助成を受けられるよう経過措置を設けるなど、適切に対応していきたいと考えております。

○高橋(か)委員 次に、食の安全について伺います。
 都は、食品の原料原産地の表示に関する我が党の代表質問において、表示のあり方について、関係各局に推進調整会議で検討を進めていくことを明らかにしました。都民の不安を払拭するためには、消費者が知りたい情報を入手できることが必要であります。
 一方、加工食品の原材料の仕入れ先は、季節や相場価格によって常に変動するといった現実があります。都は、こうした現実を踏まえ、どのように対応するのか伺います。

○安藤福祉保健局長 加工食品の製造に当たりましては、原材料に多様な食材が使用されておりまして、また、その仕入れ先の変動も大きいなどの実態がございます。一方で、食品の原料の原産地についての都民の関心も、高いものがございます。
 こうしたことから、現在、関係各局による検討会議におきまして、対象とする食品の範囲や表示の手法などの課題について検討してございます。
 今後とも、関係者の声を幅広く聞きながら鋭意検討を進めてまいります。

○高橋(か)委員 より多くの情報を知りたいという消費者の立場や、中小事業者の実情など、関係者の声を幅広く聞いて、都民の食の安全・安心を確保するため、実現可能な仕組みとしていただくよう、重ねて要望しておきます。
 次に、快適な都市環境についてお尋ねいたします。
 良好な地球環境を次の世代へと引き継いでいくために、温暖化対策の取り組みは必然であります。同時に、温暖化対策の取り組みを進めることにより、都市の活力をさらに高めるという視点も重要であります。
 都は、二〇二〇年までに、二〇〇〇年比で二五%削減のCO2排出削減目標を掲げており、この達成に向けては、業務、産業、家庭、運輸の各部門で削減の努力をする必要がありますが、都市活動には部門により大きな違いがあるため、一律に二五%削減を求めるのは、必ずしも合理的ではありません。
 例えば、都心部でオフィスビルなどの大規模建築物の建設が続く一方で、産業部門では、工場や従業員の減少が続いております。家庭でもエアコンなど省エネ化が進む一方で、設置台数がふえているのもあります。
 こうした社会経済の変化、トレンドを見据え、東京の実情に沿った削減計画とすることが必要だと思います。
 都の環境基本計画改定に当たっての東京都環境審議会の議論の中でも、二五%削減という東京全体の目標に、業務部門は七%程度、家庭部門は二〇%程度、産業部門と運輸部門については、それぞれ四〇%程度と部門ごとの削減目標が目安として示されております。
 今後の部門別目標の検討に当たっては、東京の発展、都市の活力維持の証左ともいえる業務床の増などの要素が考慮されていくのか、伺います。

○吉川環境局長 CO2の大幅な削減を実現するためには、産業、業務、家庭、運輸のすべての部門でエネルギー消費を抑制していくことが不可欠であり、各部門ごとに、それぞれの特性を踏まえつつ、将来のCO2排出量の増減を推計した上で削減目標を設定し、施策を推進することが必要と認識しております。
 具体的には二〇二〇年に向けた産業構造の変化による事務所ビルなど業務床の増、世帯数の増加、自動車の燃費の改善や交通量の動向といった影響も見込みまして、東京の都市活力の維持とCO2の大幅な削減の両立を図ってまいります。

○高橋(か)委員 CO2の削減と成長との両立を可能とするシナリオを想定しているものと思いますが、それでも具体的に削減ということになれば、特に削減義務の対象となる大規模事業所からは懸念の声も出てきます。
 現在、都が検討している義務化の制度は、五年前から実施している都独自の地球温暖化対策計画書制度を見直し、強化するものであります。現行制度は、みずからのCO2排出量を把握し、削減計画を立てて公表するという自主的な取り組みに頼るもので、さらなる削減対策の必要性を考えると不十分であることも事実であります。
 現在でも約千三百の事業所が対象になっておりますが、我が党の代表質問でも要望したように、制度の強化に当たっては、今後の削減余地や課題について、これまで協力してきた都内の事業者の意見をよく聞きながら、実効性ある制度として構築していくべきと考えますが、所見を伺います。

○吉川環境局長 都は、平成十四年度から地球温暖化対策計画書制度を実施いたしまして、約千三百の大規模CO2排出事業所を対象に、みずからの排出量の把握や削減計画の策定、公表を求め、都といたしましてもその情報を蓄積してきております。
 新しい制度の検討に当たりましては、これらの実績を踏まえるとともに、さまざまな事業者団体やNPO等が一堂に会した意見交換会やパブリックコメントなどの意見を聞く機会を設けてまいりました。
 お話のとおり、制度対象となる事業所から、省エネへの取り組み状況や今後の可能性などについて引き続きご意見をお聞きし、実効性ある制度の構築を進めてまいります。

○高橋(か)委員 実情を踏まえた制度構築があって初めて、事業者もより積極的に取り組む意欲を持つことができるものと思います。
 事業者によっては、既にCO2削減の高い実績を上げているところもあると聞きます。都は、こうした積極的な事業者に対しては一律に削減義務を課すのではなく、一定の配慮を検討していると聞いておりますが、報道等では削減義務化だけが大きく取り上げられていることもあり、このことが事業者に十分伝わっていないのではないかという懸念もあります。義務の対象となる事業所への丁寧な説明を重ねて要望しておきます。
 ところで、二五%削減という目標は、削減義務化だけで実現できるものではありません。都は、全庁的横断組織によってカーボンマイナス東京十年プロジェクトを推進してきましたが、今回公表されたプロジェクトの施策化状況によりますと、事業数で九十八事業、平成二十年度予算案では二百三億円に上る対策が取りまとめられております。
 そこで、まだ制度化に向けて検討中の大規模事業所の削減義務化などを除き、今回のプロジェクトによる取り組みを二〇二〇年まで続けた場合、二五%削減目標のうち、どの程度達成できる見込みなのか、伺います。

○吉川環境局長 カーボンマイナス東京十年プロジェクトにより施策化した事業で、現在制度構築中でございます大規模事業所の削減義務化などを除きまして、太陽エネルギーの導入拡大や白熱球の一掃作戦など、試算が可能な取り組みについて見積もった場合、二〇二〇年までの削減量は目標の達成に必要な量のおおむね五割弱となる見込みでございます。
 二五%削減という目標を確実に達成するためにはさらに対策を重ねていくことが必要でございまして、全庁的横断組織を活用して検討を進めてまいります。

○高橋(か)委員 プロジェクト開始一年目の施策化で五割弱の目標達成を見込めるということはわかりました。しかし、残り五割について道筋をつけるには、今後相当な努力が必要ということであります。そのためには、CO2削減義務化を初めとした条例改正を検討中の事項に加え、対策や取り組みがおくれがちとなっていた中小企業や家庭部門における施策の充実を一層進めていかなければなりません。このことは、東京商工会議所からも同様の問題認識を聞いております。都が今後、実効性あるCO2削減対策を打ち出していくためには、今後も東商のように積極的に取り組む地域の事業者とも十分に連携し、地域や家庭での取り組みを強化していくべきであります。
 このように、温暖化対策は、社会全体で皆が取り組めるような仕組みをつくることが必要だと思いますが、改めてこの温暖化対策に取り組む知事の姿勢を伺います。

○石原知事 地球温暖化の進行によります破局的事態の到来を回避するためには、CO2を直ちにかなり劇的に削減していく必要がございます。多くの専門の学者が、このままでいくと、下手をすると、五年以内にポイント・オブ・ノーリターンを過ぎちゃうということをいっておりますが、CO2は、東京の都市活動のあらゆる側面に起因して発生しておりまして、つまりこれは、電気を使っているということです。その大幅な削減のためには、都民や事業者の意識の変革や具体的な行動が必要であります。
 こうした観点から、社会全体で積極的に温暖化防止に取り組めるよう、大規模事業所に対し、CO2削減の義務化を進めるとともに、環境学習の取り組み強化を初めとするライフスタイルの転換促進や太陽エネルギーの飛躍的な利用拡大、中小企業の省エネ支援など、さまざまな施策を複合的に展開して、二〇二〇年までにCO2の排出量の二五%削減を着実に実施していきたいと思っております。
 高橋さん、ご経験あるかどうかわかりませんが、私は子どものころ、戦争中、灯火管制されましたが、要するに、命を守るために、皆、灯を消したわけですから。電気をね。同じことだと思います。これからやっぱり企業も個人も、自分自身の生命を守るために本気で電気を節約しませんと、とんでもないことになると。それはもう着々と近づいてくるという実感が強うございます。

○高橋(か)委員 次に、土壌汚染対策について伺います。
 土壌汚染対策は、都民の健康と安全の確保や都市づくりの上でも極めて重要であると考えております。そのため、土壌汚染対策の促進には、環境保全の観点はもとより、都市再生や地域の活性化の観点を含めた仕組みづくりが必要だとかねがね我が党は主張してきました。
 都が設置した土壌汚染に係る総合支援対策検討委員会では、このような観点から議論されてきており、先ごろ報告案が出されたと仄聞しておりますが、その取りまとめの内容はどのようなものなのか、伺います。

○吉川環境局長 土壌汚染に係る総合支援対策検討委員会は、土壌汚染対策を促進するため、環境保全の観点からだけでなく、都市の健全な発展や地域の活性化等の幅広い視点から検討を行ってまいりました。先日、本年度第三回目の検討会が開催され、年度末に取りまとめる予定の報告案について活発な議論がなされました。
 報告案の主な内容は、工場廃止時ではなく、操業中からの調査、対策の促進や土壌汚染の状況に応じた合理的、かつ適切な対策の推進、また搬出土壌の適正処理と将来的な域内処理のルール化等が挙げられております。

○高橋(か)委員 報告案は、現実的な視点を踏まえた的確なものであることがわかりました。
 さて、現在、都内で掘削除去された汚染土壌の大半は、都外の浄化施設等に運ばれ、処理されていると聞いております。土壌汚染対策は、環境先進都市づくりという観点からも、掘削除去に偏らない合理的な対策の選択や、環境負荷の少ない汚染土壌の処理の仕組みづくりを進めることが極めて重要であります。
 具体的には、現場での対策から搬出土壌の輸送処理までの対策全般を通じて、CO2削減等の環境負荷の低減に配慮することが必要であります。
 このような観点からすれば、将来的には都内に処理施設の設置を検討することが必要ではないかと考えますが、見解をお伺いいたします。

○吉川環境局長 本検討委員会では、搬出する汚染土壌を適切かつ環境負荷をかけずに処理するためには、将来的に都道府県ごとに処理施設を整備するなど、域内で処理する方策も含め検討すべきとの意見が出されております。
 都といたしましては、検討委員会からの最終報告を踏まえ、今後検討してまいります。

○高橋(か)委員 次に、水道事業について伺います。
 我が党は、安全でおいしい水への取り組みの推進を機会あるごとに主張してきました。高度浄水処理の導入を初め、おいしい水への取り組みは徐々に実を結びつつあり、知事も東京の水のおいしさを積極的にPRされております。
 その東京の給水件数は六百五十万件を超えていますが、水道メーターの検針は一軒一軒訪問して行われるため、業務量は膨大であり、多くの人手を要しております。この膨大な業務量に対応するため、水道局はこれまでどのような取り組みを行ってきたのか、伺います。

○東岡水道局長 水道局では、以前、数百名にも及ぶ多くの職員が検針業務に従事しておりましたが、経営効率化の観点から、民間委託化を進め、大幅な職員定数の削減を行いました。
 料金収納など徴収業務全般にわたりオンラインシステム化するとともに、委託化した検針業務についても、現地でメーターの指針を打ち込むだけで使用水量や料金が計算される検針用のハンディターミナルを導入するなど、さまざまな効率化に向けた努力を行ってまいりました。

○高橋(か)委員 委託化を進めてきたことは評価できます。しかし、民間委託をしても、多くの人手を要していることに変わりはありません。検針を自動化できれば、効率的に業務を行うことができるようになるのではないでしょうか。
 そこで、検針の自動化の検討状況について伺います。

○東岡水道局長 自動検針につきましては、これまでも実地のフィールド試験を行うなど、調査を進めてきております。これまでの調査、実験におきましては、コスト面では、機器の導入などに必要な経費は現行の人手検針の諸経費を下回ることができないこと、技術面では、データ通信の安定性確保などの課題があります。

○高橋(か)委員 都内にはオフィスビルや一戸建てなど、さまざまな建物があり、電波が届きにくい場所もあるでしょうから、一斉に導入することが困難なことは理解できます。しかし、導入しやすい部分から順次導入していくという柔軟な発想も必要なのではないでしょうか。
 例えば、集中的に検針し、より効率的に行うことも可能になると思うのであります。見解を伺います。

○東岡水道局長 高層マンションなどの建設時にあらかじめデータ通信用の配線工事を行えば、一カ所で集中的に検針することが可能となり、より効率的な検針ができるものと考えられます。
 さらに、検針が困難な繁華街などでは、検針員が道路上から、無線を活用して検針データを取り込むモバイル型の検針システムを導入することができれば、多くの検針業務のより迅速な処理が可能になると考えます。

○高橋(か)委員 今答弁にあったような検針方法が導入できれば、より効率的に業務を行えるようになり、より少ない人手で足りるようになると思います。
 また、今日ではプライバシーの保護をより重視する住民もふえており、そのニーズにもこたえられるのではないかと思います。早急に導入すべきと考えますが、具体的な見通しを伺います。

○東岡水道局長 集中検針方式につきましては、今後建設されるマンションなどに対して、あらかじめ集中検針機器の設置や維持管理方法等について基準を設け、ガイドラインを示すことなどにより、導入が進むよう取り組んでまいりたいと考えております。
 また、モバイル型の検針システムについては、平成二十年度から通信機器などの実証試験を開始することとし、コスト面、技術面の諸課題の解決を図りながら、早期の実用化を目指して取り組んでまいります。
 また、ご指摘の点を踏まえ、今後は、新たな検針方法等について導入しやすいところから具体化に取り組み、一層の業務の効率化を目指してまいります。

○高橋(か)委員 これまでの質疑で技術やコストの面での課題が大きいことがわかりました。しかし、自動検針までは導入できなくても、現在の技術を活用したより効率的な検針は可能だと思います。また、情報通信技術は日進月歩ですから、その中で課題を解決し、新たな一歩を踏み出すよう期待します。
 次に、都市機能の拡充と首都再生についてお尋ねいたします。
 東京外かく環状道路は、昨年暮れの国土開発幹線自動車道建設会議、いわゆる国幹会議で基本計画路線に格上げされました。あわせて高速自動車国道法に基づく路線指定がなされました。これらの法手続によって外環のプロジェクトは具体化に向けて大きく前進しました。
 知事は、我が党の代表質問に、一日も早く整備計画を策定し、平成二十一年度の事業着手を国に強く要求すると答弁されました。これまでも、外環の事業着手にはもう一度国幹会議を開催し、整備計画の決定が必要と説明を受けてきました。
 まず、外環の基本計画でどのようなことが決まったのかを改めて伺うとともに、今後、整備計画ではどのようなことを決めるのか、伺います。

○只腰都市整備局長 外環の基本計画でございますが、昨年十二月の国土開発幹線自動車道建設会議、いわゆる国幹会議でございますが、この議を経まして、本年一月十八日付で決定告示がなされました。
 この基本計画では、外環十六キロの建設区間につきまして、練馬区から三鷹市までを関越道の一部として、また、三鷹市から世田谷区までを中央道の一部として位置づけるほか、標準車線数を六車線、設計速度を時速八十キロとすることなどを定めております。
 今後、事業着手に向けましては、高速自動車国道法に基づく整備計画を定める必要がございます。この整備計画は、基本計画で定めた車線数や設計速度などに加えまして、工事に要する費用の概算額等につきまして国幹会議の議を経て決定することとなっております。

○高橋(か)委員 事業を円滑に進めていくには、地元住民が外環の建設を安心して受け入れられる環境を整えていくといった視点も重要と考えます。大深度地下方式に都市計画変更がなされたとはいえ、沿線住民からは、環境対策や周辺のまちづくり等、外環の整備に伴う課題が数多く提起されております。
 先般、東京都議会外かく環状道路建設促進議員連盟でも、沿線の区長や市長と意見を交わしましたが、外環の早期整備の必要性を認めながらも、国や都に対し、住民の不安の払拭とともに、意見や要望に真摯に耳を傾けるべきとの意見が相次いで出されました。
 都は、そうした地元の意見や要望に対し、今後どのように取り組んでいくのか、所見を伺います。

○只腰都市整備局長 外環は、このたびの基本計画の決定を経まして、事業実施の準備段階に移ることとなります。これからは整備に伴う地域ごとの具体的な課題を解決していくことが重要と認識しております。このため、都は、事業予定者である国や沿線の区市と連携しまして、世田谷区の東名ジャンクション地区や練馬区の大泉ジャンクション地区などで、ワークショップ形式によりまして、環境対策やまちづくりなどにつきまして住民と意見を交換しております。
 今後もこうした地域ごとの話し合いを精力的に進めまして、本年夏を目途に、国などとともに、課題への対応方針を取りまとめてまいります。

○高橋(か)委員 外環は、東京の交通渋滞を解消するとともに、その便益が広く首都圏、ひいては全国に及ぶことから、我が国の経済の活性化に不可欠な道路であります。
 思えば、知事が平成十三年に扇国交大臣と現地を視察されて以来七年の歳月を経て、ようやく事業化の時期を迎えようとしております。しかし、この先完成までには、インターやジャンクション部の用地買収一つとっても、解決すべき課題は少なくないものと考えます。
 一刻も早い事業着手を強く要望するものでありますが、外環の早期整備に向けた知事の所見を伺います。

○石原知事 外環道の基本計画の決定は、さまざまな働きかけをしてまいりまして、ようやく実現したものですが、引き続き整備計画を定め、平成二十一年度に事業に着手するように強く国に要求しております。
 これは例の法人事業税を三千億もふんだくられたんですから、優先的にやるのは当たり前の話でありますが、この段階になって、国も財政不如意のためにまたちょっと虫のいい条件を提示してきておりますが、これはのめないものでもありませんから、そういうものも含めて、いずれにしろ、一刻も早くこれが着手実現するように努力いたしますが、お話のように、インターチェンジなどの用地の取得、対象とする家が千戸ぐらいあるそうですけれども、なかなか大変なんです。来年度から実質的に着手するといったって、その前に収用しなくちゃいけない用地がたくさんあるわけですから、もうこの夏前からチームを編成してかかりませんと、とても間に合いません。
 そういうことも含めて準備を進めておりますけれども、いずれにしろ、これはご指摘のとおり、東京、首都圏だけのためじゃなくて、日本全体の一つハブになる、ハブ・アンド・スポークになる幹線道路でありまして、いずれにしろ、都としてもできるだけ早い整備に向けて、国とともに具体的な策を検討するというか、実現してまいります。

○高橋(か)委員 強く期待させていただいておきます。
 次に、外環の地上部街路、外環ノ2について伺います。
 外環本線の地下化に伴い、地上に計画されている外環ノ2の計画がなくなったという誤った認識を持つ人もいるようであります。しかしながら、この地上部街路は東京の道路ネットワークの一部をなすものであり、地元からは地域のまちづくりを進める観点からも、計画の方向性を早急に明らかにすべきとの意見が多く寄せられております。とりわけ私の地元の練馬区では、都市計画道路の整備が十分でなく、防災、交通などの面で多くの課題を抱えており、この道路の整備は焦眉の急であると考えます。
 そこで、都は、この地上部街路について、これまでどのような検討を行い、今後どう進めていくのか、所見を伺います。

○只腰都市整備局長 お話の地上部街路でございますが、目白通りから東八道路までの外環ルート上に計画決定されました幅員四十メートルの都市計画道路でございます。都は、これまで外環の計画変更に際しまして、関係区市等から出された要望を踏まえまして、環境、防災、交通ネットワーク等の視点から、この道路の必要性や整備のあり方につきまして、調査、検討を行ってまいりました。近くそのあらましや方針策定に向けた道筋などを明らかにいたしまして、広く都民の意見も聞いた上で、都の考え方を取りまとめてまいります。

○高橋(か)委員 今後、この道路の方針をまとめるに当たっては、ゆとりある歩行者空間や緑の確保、自転車通行レーンの設置など、人間優先の視点も重視していただくよう強く要望しておきます。
 次に、スマートインターチェンジの整備について伺います。
 昨年、国が策定した道路の中期計画素案には、既存高速道路の有効活用の観点から、スマートインターチェンジの整備が位置づけられています。
 このインターチェンジは、高速道路利用者の利便性の向上を図ることを目的とし、高速道路のバス停やパーキングエリアなど、既存の施設を活用するものであります。利用車両をETC車に限定することで施設がコンパクトとなり、低コストでの整備が可能となることから、東京においても有効な方法であると考えます。
 スマートインターチェンジの整備に当たっては、高速道路に接続する道路の管理者である地方公共団体が主体となり、国、高速道路会社と共同で整備すると聞いております。
 そこで、スマートインターチェンジに対する今後の取り組みについて伺います。

○道家建設局長 昨年十一月に国が公表した道路の中期計画素案を受け、都は、スマートインターチェンジの必要性や効果、設置の可能性などについて検討を行ってまいりました。その結果、都道と府中市道が接続道路となる中央自動車道の府中バス停付近への設置について、地元府中市と連携し、来年度の採択申請に向け調整を行っております。
 また、スマートインターチェンジ整備の可能性がある他の箇所についても引き続き検討を進めてまいります。

○高橋(か)委員 こうした新しい取り組みを積極的に進めることを期待します。
 都は、集中的な渋滞対策事業として、平成十五年度から五カ年をかけて、都道百交差点、国道四十交差点においてスムーズ東京21拡大作戦を実施しており、平成十八年十一月の中間のまとめでは一定の成果が報告されています。
 しかし、都内の渋滞は、まだまだ解消されているとはいいがたい状況にあります。都内の渋滞解消には、道路ネットワークの整備とともに、既存の道路の有効活用により渋滞緩和を図ることも必要と考えます。
 それには、交通の流れなどの正確な情報をドライバーに提供し、渋滞を回避するなど、ITS技術を活用した渋滞対策も必要と考えますが、所見を伺います。

○久我青少年・治安対策本部長 最先端の高度道路交通システム、いわゆるITSを活用した渋滞対策といたしまして、来年度より新たにハイパースムーズ作戦を展開してまいります。
 具体的には、交通量を事前に予測し、信号機の青や赤の時間をリアルタイムに調整することや、渋滞を回避するため、ルート別所要時間等の情報を交通表示板により提供することで交通の流れの円滑化を図ってまいります。さらに、ITSの活用により、カーナビなどを通じてドライバーに最新の交通情報を提供し、交通の流れを分散化する方策などにつきまして、あわせて検討してまいります。

○高橋(か)委員 次に、地下鉄の安全対策について伺います。
 交通局は、年度内に大江戸線の可動式ホームさく整備計画を策定するとしていますが、ホームさくの整備は、東京メトロ丸ノ内線と同様に、大江戸線も営業しながら実施することから、期間は長期に及ぶものと思われます。しかしながら、大江戸線の乗客数は大幅に増加しており、安全確保の観点からも、可能な限り早期に整備すべきと考えます。
 そこで、大江戸線のホームさくをいつまでにどのように整備するのか、伺います。

○島田交通局長 交通局では、安全確保の観点から、現在、大江戸線に導入するホームさくの整備計画の策定に向けまして鋭意検討を行っております。
 大江戸線への整備に当たりましては、ご指摘のように、営業しながら、また、終車後、夜間の限られた時間の中で行うこととなるため、ある程度期間が必要と考えております。
 お尋ねの今後のスケジュール等でございますが、平成二十年度は整備にかかわる技術的検証を行ってまいります。その後、五十三編成の車両改修や三十八駅のホームさく本体の施工等を順次行っていくため、大江戸線の全駅への整備を完了するには、現時点ではおおむね五年程度の期間を要するものと考えております。

○高橋(か)委員 丸ノ内線では、二十五駅で百億円もの費用を要すると聞いております。
 交通局は、平成十八年度決算で初めて地下鉄事業が経常黒字に転換したものの、今後、累積欠損金の解消や長期債務の圧縮などの経営課題を抱える中で、ホームさく設置にかかる費用も可能な限り抑える工夫が必要であります。
 そこで、大江戸線ホームさくの整備費用はどの程度を見込んでいるのか、伺います。

○島田交通局長 お尋ねの整備費用でございますが、仮に現在ある標準的な単価に大江戸線の駅数などの規模を乗じて試算してみますと、約百九十億円程度になると見込まれます。
 ご指摘のとおり、都営地下鉄事業は、平成十八年度決算において経常収支の黒字転換を果たしたものの、依然として厳しい経営状況にあると認識しております。このため、大江戸線のホームさくの設置に当たりましては、安全を最優先に、既存設備を活用するなどしてコストの削減に努めてまいります。

○高橋(か)委員 おおむね平成二十五年度中には、大江戸線の全駅にホームさくが整備されるものと理解しました。今後は、整備されるまでの間の安全確保や、整備にかかる工期や費用の圧縮方法について検討した上で、早急に整備計画を取りまとめるよう、強く要望しておきます。
 次に、水の都東京の再生について伺います。
 かつての江戸・東京は、川や運河が縦横に流れ、その美しさはベニスにも比すべき水の都であったといわれております。隅田川を初め、日本橋、塩の道小名木川など、水辺が人々の生活に根差していました。その後の経済成長や物流の変化の中で、人々の暮らしは川や水辺から遠ざかり、舟運も衰退しました。
 水害への安全性向上はもとより、東京の魅力向上に大きなポテンシャルを持つ水辺空間の再生も強く求められております。
 こうした状況を踏まえ、我が党は、先月、「水の都東京」再生議員連盟を拡大再発足して、東京の誇るべき魅力を世界に発信していくこととしました。
 そこでまず、水の都東京の再生に向けた知事の所見を伺います。

○石原知事 かつて、日本の最初の商工会議所の会頭の渋沢栄一さんは、東京を再び、江戸の遺産を受け継いでアジアのベニスにしたいとおっしゃったそうですけれども、なかなかそうはまいりませんでしたが、いずれにしろ、ご指摘のように、江戸の昔に培われた豊かな水辺というものをもう一回取り戻しまして、東京の新しい魅力に仕立てていきたいと思っております。
 これまでも、親水テラスの整備や運河ルネッサンスの推進、舟運の復活など、総合的な取り組みを進めてきた結果、何とか水辺に人が戻りつつありますが、まだまだテムズの川のほとりのような盛況には至っておりませんけれども、しかし、先日、東京マラソンに招待しました台北の市長は、隅田川のスーパー堤防を見て、非常に風格のある水辺の景観とともに、大変感銘を受けたといっておりましたが、いずれにしろ、「十年後の東京」で掲げました海の森やスーパー堤防の整備などを含めまして、水と緑に囲まれた水の都東京にふさわしい都市空間を再生し、東京の価値をさらに高めていきたいと思っております。

○高橋(か)委員 水の都東京を代表する河川といえば隅田川であります。隅田川は、セーヌ川やテムズ川などと並ぶ世界有数の川として、東京の顔にふさわしい景観となるよう整備すべきであると考えます。
 そこで、この隅田川の整備において、景観や親水性にどのように配慮しているのか、伺います。

○道家建設局長 隅田川の整備においては、洪水や高潮に対する安全性を確保しつつ、首都東京にふさわしい緑豊かな水辺空間を創出していくことが重要であります。
 これまで、水辺を散策できるテラスや広がりのある緑の都市空間を生み出すスーパー堤防の整備を進めてきた結果、建物が川側を向き、水辺と一体となった魅力あふれる街並みが生まれております。
 さらに、地域性を踏まえ、護岸を蔵に見立てた江戸情緒を醸し出す修景や、アシが茂るテラスなど、景観や親水性に配慮した整備を行っております。
 こうした整備に合わせ、地元の方々が花壇の世話をする「花守さん」や、防潮堤を活用したギャラリーなど、さまざまな取り組みを引き続き進めてまいります。
 今後とも、美しいまち東京の実現に向け、隅田川の整備に取り組んでまいります。

○高橋(か)委員 景観や親水性にすぐれた河川の整備だけでなく、水辺に人々が集い、多様な船が往来し、にぎわいのある河川とすることも必要であります。
 昨今では、景観や水質の向上に伴い、隅田川などでは観光船や屋形船、プレジャーボートの往来、江東内部河川などでは和船やレガッタを楽しむ人々が多く見られます。これら多様な船が安全で活発に往来するとともに、水辺の景観をさらに向上させる河川利用が大変重要であると考えます。
 そこで、安全で秩序ある河川利用に向け、どのような取り組みを行っているのか、伺います。

○道家建設局長 安全で秩序ある河川利用を実現するためには、川の流れを阻害し、景観を損ね、船舶航行の支障となっている不法係留の適正化が極めて重要であります。
 このうち、プレジャーボートについては、その受け皿となる係留保管施設を整備するとともに、旧江戸川など六河川を中心に指導、警告に努めてまいりました。
 さらに、船舶の係留保管の適正化に関する条例に基づく区域指定をするなど、取り組みを一層強化し、これまでに不法係留船の六割に当たる約六百隻を適正化いたしました。
 屋形船などについては、生業に配慮し、長年にわたりきめ細かな指導を続けてきた結果、現在、事業者みずからが係留施設の共同設置と移動の準備を進めております。
 今後とも、不法係留船の適正化に努め、魅力ある水辺空間の創出に取り組んでまいります。

○高橋(か)委員 河川と連なる東京港においても、都民に身近で貴重な水辺空間が数多く存在します。都はこれまでも、海上公園や浅場、海浜の造成のほか、自然環境にも配慮した護岸の整備、運河ルネッサンスの推進など、都民が水に親しめる取り組みを進めてきました。
 東京港の魅力をさらに向上させていくためには、都民、企業等の主体的な参加や連携によって、都民が直接海にかかわる機会をつくり出し、都民共有の水辺空間としていくことが重要と考えます。
 そこで、東京港の良好な水辺空間の創出について今後どのように取り組んでいくのか、伺います。

○斉藤港湾局長 東京港におきましては、近年、カニや貝類、スズキ、イシダイなどの多様な生物が多く見られるようになってまいりました。水質の改善が進むことで、運河を生かしたお祭りや、カルガモの巣箱の設置といった活動が地域に根差した取り組みになりつつありまして、海辺の自然との触れ合いへの都民の関心は一段と高まっております。
 このため、都は、海上公園や運河沿いの遊歩道の着実な整備に加えまして、カキによる水質浄化の効果を観察する親子勉強会など、新たに都民参加の場も設けております。
 今後は、ぬくもりを感じられ、親しみやすい水辺とするため、多摩産材などの活用を検討してまいりますとともに、地元や民間企業の協力を得まして、遊歩道のネットワーク化や運河ルネッサンスの一段の広がりを推進するなど、東京港に都民が共有する豊かな水辺空間を創出してまいります。

○高橋(か)委員 高潮や津波といった危険にも十分に備えるとともに、安全で潤いのある水辺空間を創出するよう要望します。
 隅田川沿いには、浅草、両国、深川など、多くの歴史的な観光資源が豊富に広がっています。港湾地域でも、お台場や汐留など、若者を中心に新たな観光スポットとなっています。水の都東京を実現するためには、このような多様な観光スポットを結ぶ舟運ネットワークの形成が不可欠であります。複数の観光資源や交通結節点が舟運で結ばれれば、水辺に新たな人の流れを呼び込み、回遊性が向上します。
 八都県市でも、東京湾を活用した新たな観光の魅力づくりへ取り組む機運が高まっています。
 今後、魅力ある舟運ネットワークの構築に向けてどのように取り組んでいくのか、伺います。

○佐藤産業労働局長 魅力のある舟運ネットワークの構築のためには、河川や運河、東京湾の多様な観光資源をめぐる舟運ルートの開発や、水辺周辺におけるにぎわいの創出が重要であると考えております。
 このため、今年度は、舟運ルート開発に向けた課題につきまして、関係各局による検討を行っております。また、地域のイベントと連携した運航実験を小名木川を通るルートで実施することといたしまして、都民の参加を公募したところ、定員を大きく上回る申し込みがあるなど注目をされているところであります。
 さらに、広域的な舟運ルート開発のため、八都県市が連携し、東京、千葉、横浜を結ぶ客船の試験運航などを行ったところでございます。
 今後も、都内の水辺地域や他県市との連携を図りながら、多様で魅力的な舟運ネットワークの構築に取り組んでまいります。

○高橋(か)委員 次に、次代を担う子どもたちの育成についてお尋ねいたします。
 我が国では少子化が進行し続け、既に人口減少時代を迎えるに至っております。経済や社会保障に大きな影響を与える少子化の進行に歯どめをかけ、次世代に揺るぎない安心を確保することは社会全体の使命であります。
 都では、昨年六月、全庁横断的に子育て応援戦略会議を設置し、集中的な検討を重ね、十二月には子育て応援都市東京・重点戦略を策定いたしました。この中で、今後展開すべき施策として、ソフト、ハードの両面からさまざまな子育て支援策を打ち出しており、その柱の第一は、都民のニーズに合った保育サービスの充実であります。
 働きながらの子育てを応援していくためには、保育所待機児童の解消は焦眉の課題であります。全国約一万八千人の待機児童数の四分の一が東京都であり、都における対策こそが全国の待機児童解消のかぎを握っているといえます。
 そこで、改めて待機児童の解消に向けた知事の決意を伺います。

○石原知事 すべての子どもと子育て家庭を社会全体で支援する取り組みの中で、待機児童の解消は喫緊の課題であると思います。
 このため、今後三年間で一万五千人分という、これまでにないペースで集中的に保育サービスを整備することとしまして、来年度予算案には、東京の特性を踏まえた新たな施策を盛り込んでおります。
 また、都民から広範囲な支持を得ております都独自の認証保育所については、国の制度に位置づけるように、先般設置された実務者の協議会の場を使いながら、国へ働きかけを強めてまいります。
 こうした取り組みによりまして、すべての人が安心して子育てできる東京を実現していきたいと思っております。

○高橋(か)委員 三年間で一万五千人分の定員整備は、従来の一・五倍のペースで整備を加速していくものであり、待機児童解消に向けた都の意気込みが伝わってきます。
 これを達成するためにも、大都市のニーズにマッチした認証保育所の設置をさらに進めていくべきと考えますが、所見を伺います。

○安藤福祉保健局長 認証保育所は、平成十三年度の制度創設以来、着実に増加いたしまして、平成二十年三月一日現在の施設数は三百九十五カ所、定員は一万二千人を超えております。
 今後三年間で保育サービスを一万五千人分整備することとしておりますが、そのうちの六千五百人分を認証保育所で整備してまいります。このため、来年度、整備をする際の初期負担の軽減を目的といたしました開設資金無利子融資事業を創設し、さらなる事業者の参入を促進することといたしました。
 今後とも、認証保育所の一層の設置促進に努めてまいります。

○高橋(か)委員 我が党も、先月、認証保育所推進議員連盟を立ち上げ、東京の保育が一層充実するよう、党を挙げて支援しております。都としても、認証保育所の推進に一層ご尽力いただきたいと思います。
 さて、保育サービスの量的な拡充は急務でありますが、一方で、質の確保もおろそかにすることはできません。事業者が法令を遵守した上で適正にサービスを提供するよう、指導検査をしっかりと行っていくことが重要であります。
 そこでまず、認可保育所、認証保育所に対する都の指導検査方法について伺います。

○安藤福祉保健局長 都は、保育所の適正な運営及びサービスの質の確保を図るために、施設を実地に検査しておりまして、それぞれの指導基準に基づき、認可保育所、認証保育所を問わず厳正に指導を行っております。
 定期的な検査のほか、問題のあります施設に対しましては毎年検査を行っており、特に苦情や通報のあった場合には、迅速かつ機動的に対応しております。
 これらの検査の結果、改善が図られない場合には、直ちに改善勧告を行うなど厳正に対応し、適切な運営の確保に努めているところでございます。

○高橋(か)委員 指導検査は都の重要な任務であります。保育の実施主体である区市町村とも連携して、実効性のある指導検査を行ってほしいと思います。
 さて、ほとんどの事業者は良好なサービスを提供しているわけでありますが、残念ながら、一部に不適正な事例があることも事実であります。
 荒川区の認証保育所において不適正な運営が行われており、都は既に指導していると聞いておりますが、仮に重大な不正があった場合には、認証の取り消しも含め、厳正に対処すべきと考えますが、所見を伺います。

○安藤福祉保健局長 ご指摘の認証保育所についてでございますが、この施設に対しましては、立入調査を昨年八月以降、計四回実施し、改善指導を行ってまいりました。
 現在、これまでに立入調査等で収集した資料を精査するとともに、関係者から事情を聞いているところでございます。
 今後、認証保育所の健全な発展を図る観点に立って厳正に対処してまいります。

○高橋(か)委員 ルールを逸脱した事業者について厳しく対処するのは当然であり、都は事実関係をしっかりと調査してほしいと思います。
 子育て支援の柱の第二は、働き方の見直しであります。
 雇用環境の整備は、安心して子育てするために欠かせない条件の一つであります。企業が率先し、ワークライフバランスの実現に向け、職場の改善に取り組むべきであり、都としても企業の取り組みへの支援を強化していく必要があると考えますが、ご所見をお伺いいたします。

○佐藤産業労働局長 ワークライフバランスの実現のためには、働く人々が仕事上の責任を果たしながら、子育てなど家庭生活と両立できる雇用環境を整備していくことが必要となります。
 このため、都では、来年度、中小企業両立支援推進助成金の助成規模を、今年度の五十社から四百五十社に大幅に拡大して支援してまいります。
 また、働き方を見直して、子育てにも柔軟に対応できる勤務制度の導入や長時間労働の縮減を進めるなど、生き生きとした職場づくりに取り組む企業を認定する都独自の制度を創設いたします。
 さらに、多くの企業と団体を巻き込みまして、こうした先進的な取り組みを広く発信するイベントを開催し、企業同士の交流を進めるなど、社会機運の醸成を図ってまいります。

○高橋(か)委員 ぜひとも、企業を巻き込みながらワークライフバランスの実現に向けた機運を醸成していただきたいと思います。
 第三の柱は、安心してお産ができ、適切に医療を受けられる体制の整備であります。
 そこで、都立病院における周産期医療について伺います。
 先月末に策定された第二次都立病院改革実行プログラムの中で、周産期医療について、都立病院は、産科、小児科、新生児部門が緊密に連携し、一貫した総合的な周産期医療を提供するとされております。産科の医師不足や分娩を取り扱う医療機関の減少が全国的に大きな問題になっている中、行政的医療を担う都立病院においては、周産期医療を充実強化していくことが求められております。
 こうした中、都立病院は、今回の実行プログラムにおいて、周産期医療に関して具体的にどのような取り組みを進めていくのか、見解を伺います。

○秋山病院経営本部長 ご指摘のとおり、都立病院では、周産期医療を行政的医療に位置づけまして、第二次都立病院改革実行プログラムにおきましても、リスクの高い妊娠、出産及び低出生体重児等に対します医療を行う総合周産期母子医療センターを新たに二カ所整備するなど、高度な周産期医療を提供することとしております。
 具体的に申し上げますと、区部におきましては、平成二十一年度、大塚病院に、母体や胎児の集中治療管理を行いますM-FICUを六床新設するとともに、新生児の集中治療管理を行うNICUを三床ふやし、合計十五床とするほか、既に総合周産期母子医療センターとして運営しております墨東病院で、平成二十年度にNICUを三床ふやし、合計十五床にして機能を強化することとしております。
 また、多摩地域におきましては、平成二十一年度末に向けて、いずれも仮称ではございますが、多摩総合医療センター及び小児総合医療センターを整備するに当たりまして、M-FICUを九床新設、NICUを九床ふやして、合計二十四床体制といたしまして、両病院が一体となって運営することとしております。
 この結果、都内全体のNICU病床の約四分の一、とりわけ周産期医療のニーズが高い多摩地域におきましては、五割以上を都立病院が担うこととなります。
 こうした取り組みを通じまして、都立病院として子どもを安心して産み育てることができる環境づくりに貢献してまいります。

○高橋(か)委員 周産期医療の充実強化を実現するためには、こうした医療を担う人材の確保が不可欠でありますが、とりわけ産科医の確保は全国的に非常に深刻な状況であります。一方、産科医における女性医師の割合は年々増加しており、現在では、三十歳代の五割、二十歳代に至っては実に七割が女性となっているとのことであります。
 さきの本会議における我が党の代表質問に対して、本部長は、こうした女性医師の活用も含めた総合的な医師の確保対策を講じる旨を答弁されました。
 その結果、既に医師の採用環境に一定の手ごたえを感じているとのことでありますが、具体的な状況について伺います。

○秋山病院経営本部長 お話の都立病院におけます医師確保総合対策は、日本産科婦人科学会を初め大学の医局からも、医師の勤務の実情を反映したバランスのとれた施策であると評価をいただいておりまして、その結果、医師不足が顕著な産科などで大学から新たな派遣が行われるなど、医師確保に一定のめどが立ちつつございます。
 一例ではございますが、分娩を休止している豊島病院産婦人科におきまして、本年二月に一名の女性医師を確保したほか、来年度には大学から二名の医師派遣が見込まれることに加えまして、都が所管しております財団法人東京都保健医療公社におきましても、分娩が休止中の荏原病院に産科医師の派遣が行われることになりまして、二十一年度からではございますが、分娩再開につなげることができました。
 さらに、給与等の処遇改善によりまして、中堅医師層の退職、流出にも歯どめがかかるとともに、この四月に開講いたします東京医師アカデミーには多数の応募があり、将来の安定的な医師確保に向けても手ごたえを感じているところでございます。
 全国的に医師不足の状況にはございますが、引き続きこうした医師確保総合対策に全力を挙げて取り組みまして、都民の皆様に対して安全・安心な医療を提供してまいります。

○高橋(か)委員 都の取り組みが早くも功を奏し始めていることは、従来からこの問題を取り上げてきた我が党としても大変喜ばしいことであります。
 次に、非行少年の自立への支援について伺います。
 東京都内の非行少年の検挙、補導人員は徐々に減少傾向にあるものの、人口比や再犯者率の高さにかんがみれば、少年非行情勢は依然として深刻な状況にあります。しかし、非行少年と呼ばれる子どもたちは、みずから好き好んで非行に走るわけではなく、虐待やいじめなどで心に傷を負っていたり、孤独を抱えていたりするケースも多いと聞きます。これらの子どもの立ち直りのためには、地域社会が一丸となった取り組みが重要だと考えます。しかし、実際は、家庭環境がよくなかったり、地元の悪い仲間との関係を断ち切れなかったり、あるいは復学、進学や就職を希望しても、そのすべを知らなかったりするなど、少年たちは困難な状況に置かれているのが現実であります。
 都は、こうした子どもたちに対し、どのような支援を行っていくのか伺います。

○久我青少年・治安対策本部長 非行を犯した少年の立ち直りのためには、少年のさまざまな悩みを適切に受けとめることや、少年自身が将来について真剣に考えることのできる機会を提供することが必要であります。
 都では、少年が立ち直りのために必要なさまざまな支援を一カ所で総合的に受けられるよう、非行少年立ち直り支援ワンストップサービス事業を来年度から新たに開始いたします。
 この事業は、就労、就学や生活の悩み全般について少年の相談に応じ、カウンセリングを行うとともに、スポーツ・文化活動や社会参加の機会を提供することなどにより、少年の居場所づくりを行うものであります。
 こうした事業により、少年の立ち直りに向けた支援策をきめ細かく講じてまいります。

○高橋(か)委員 こうした事業は、行政の知識や体制だけでは少年たちにきめ細かい対応を行うことは難しいのではないでしょうか。官民協働の事業として、非行少年の支援について実績を持つNPO等、民間団体を活用すべきではないかと思いますが、所見を伺います。

○久我青少年・治安対策本部長 ご指摘のとおり、少年の立ち直りを支援するためには、行政のみならず、先駆的な活動を行っている民間団体と連携して取り組むことが効果的と考えております。都では、昨年、少年非行防止に携わるNPOやサポート校について調査し、少年及びその保護者に対する支援活動の状況等を把握いたしました。
 ワンストップサービス事業を行うに当たっては、すぐれたノウハウや人材を有するNPOと協働するとともに、就労、就学、福祉に関連するさまざまな機関との円滑な連携を図りながら、少年の多様なニーズに的確にこたえてまいります。

○高橋(か)委員 次に、教育環境の改善についてお尋ねいたします。
 今や、我々の社会生活にはコンピューターは不可欠であり、学校教育の場でもその活用が進んでいます。そうした中、昨年の予算特別委員会において我が党は、都立学校における校内LANなど、IT環境の立ちおくれを指摘いたしました。これに対する教育長からの、整備のあり方を早急に取りまとめ、具体化に向けて取り組んでいくとのご答弁に沿って、このたび、都立学校ICT計画事業の推進が図られたと認識しております。
 そこで、都立学校ICT計画事業のねらいとその整備方針はどうなっているのか伺います。

○中村教育長 児童生徒の学習に対する意欲や理解力の向上を図りまして、情報活用能力を育成するとともに、一人一人に対するきめ細かな指導を行うため、ICT環境を整備し、積極的に活用する必要がございます。
 このため、都教育委員会は、平成二十年度から二カ年で都立学校における校内LAN整備率を一〇〇%にするとともに、生徒三・九人に一台、教員一人に一台のコンピューター端末の整備を行うなど、全国トップレベルのICT環境に向け、早急に整備を進めてまいります。

○高橋(か)委員 平成二十年度からの二カ年で全都立学校に校内LANを整備するなど、ICT関連の環境整備を精力的に行っていくことはわかりました。
 では、全都立学校にICT環境が整備されれば、どのような効果が期待できるのか伺います。

○中村教育長 すべての教室で、コンピューター教材を使った個別学習が可能になります。これまで以上に、児童生徒の興味、関心や習熟度など、個に応じた学習指導が実現できます。また、複雑な図形を動画や展開図などで示すことによりまして理解を容易にするなど、ICT環境を有効に活用することによりまして児童生徒の学習意欲を高め、学力向上が期待できます。
 さらに、教員に一人一台配備されますTAIMS端末を活用いたしまして、教材作成や校務処理の効率化、高機能化を図ることによりまして、児童生徒と向き合う時間や教材研究などの時間をより一層確保するとともに、精度の高い分析データに基づく生徒一人一人に応じたきめ細かな指導を実現してまいります。

○高橋(か)委員 セキュリティー対策など早期に解決すべき課題はありますが、わかりやすい授業の展開や校務の効率化を図ることで児童生徒と直接向き合う時間を拡充していくことは、歓迎すべきことだと思います。
 次に、都立高校の冷房化について伺います。
 都教育委員会は、平成十九年度の都立高校環境改善事業において、これまで空調設備が設置されていなかった学校に一斉に整備し、平成二十年夏から、すべての都立高校で冷房が使用できるように取り組んできました。
 これまでも、生徒、保護者などから、普通教室に冷房が欲しいという強い要望が寄せられていました。今回、我が党の主張に沿って全校一斉に冷房が設置されたことは、教育環境の改善とともに学力向上にもつながるものと考えます。
 しかし、冷房化に当たっては、財政や環境負荷の低減対策など難しい問題もあったと思います。
 そこで、まず環境負荷についてでありますが、今回の空調設備の設置に対する環境への配慮はどのように考えているのか伺います。

○中村教育長 冷房化に伴いまして、都立高校に設置します空調設備につきましては、近年の目覚ましい技術の進歩によりまして、暖房時におけるCO2の排出量は、ほぼ従前の半分になる見込みであります。冷房を使用いたしましても、年間を通した環境負荷は従来とほとんど変わらないというふうに考えております。
 都教育委員会といたしましては、省エネ東京仕様二〇〇七に基づきまして、既に太陽光発電の設置や建物の断熱化を進めておりますけれども、一層の環境負荷の低減が必要であるというふうに考えております。今後、さらに環境に配慮した施設整備を着実に実施してまいります。
 また、空調機器の効率的な運転が可能となりますように、集中制御装置を設置するとともに、生徒、教職員の環境意識の一層の向上を図るために、例えば、毎日の空調使用時間を集計してCO2排出量を計算させる取り組みを行うなど、総合的な環境対策を進めてまいります。

○高橋(か)委員 次に、財政上の課題について伺います。
 空調設備の設置に当たっては、他府県においても保護者負担を求めており、大阪府では施設使用料として年額五千四百円、その他の県でも、PTAが年額一万円以上の経費を徴収しているところもあると聞きます。
 都では、十八年度に学識経験者や保護者、学校関係者の検討委員会において示された、受益者負担を求めるという方向性に沿って、三千六百円程度の保護者負担を求めていくとのことであります。
 改定予定の授業料は全国的にも適正な水準だと思いますが、この改定により、家計に直接影響を受ける保護者、とりわけ生活困窮世帯もあろうと思われます。都は、どのような考え方に基づいて保護者の負担を求めようとしているのか伺います。

○中村教育長 都教育委員会は、都立高校全校の普通教室に空調設備を導入するに当たりまして、設置工事等につきましては都の負担で実施するとともに、維持管理等に要する経費のうち、冷房分につきましては、受益者負担適正化の観点から保護者の負担を求めることとし、今回授業料の改定に含めることとしました。これは、冷房化に伴う経費を授業料として徴収することで、授業料減免制度の活用が可能となるよう配慮したものでございます。

○高橋(か)委員 学校と教育委員会が一体となって、教育環境や教育内容のさらなる改善充実に取り組んでいただくことを要望しておきます。
 次に、東京の産業力の強化についてお尋ねいたします。
 地域住民の消費生活を支え、地域コミュニティの核として重要な役割を担ってきた商店街は今、売り上げや集客力の低下、後継者不足など厳しい状況にあります。さらに、会員減少などの課題も抱えています。特に、新たに開店したチェーン店等が商店街に加入せず、商店街活動に必ずしも協力的でないために、商店街の活力や組織力の低下を招いている例も少なくありません。
 一方で、都内の自治体においては、商店街への加入促進を目的とする条例や要綱を定める動きが広がっており、ことし一月現在でその数は三十団体にも上っています。
 我が党は、さきの第四回定例会において、地域の事業者同士の連携や各自治体の取り組みを積極的に後押しし、商店街活動への実効性ある施策を実施すべきと提案をいたしました。
 この提案を受け都は、来年度から商店街組織力強化事業を開始するとのことでありますが、広域的に事業を展開しているチェーン店等の加入促進を図るには、個々の商店街の取り組みだけでは限界があります。商店街の連合組織を中心とした広域的な取り組みが必要であると考えますが、所見を伺います。

○佐藤産業労働局長 ご指摘のとおり、個々の商店街の取り組みだけでは解決困難な課題も多いことから、各商店街が連携して、広域的に加入促進や組織力の強化に取り組むことが必要であると認識をしております。
 このため、都は、区市町村の商店街連合組織が中心となって行う加入促進マニュアルの策定や、チェーン店本部への働きかけなど、一連の取り組みを包括的に支援する新たな制度を創設し、商店街の組織力強化に向けた広域的な取り組みを支援してまいります。

○高橋(か)委員 まちに活気とにぎわいを取り戻すためには、商店街と地域の一体となった取り組みが大切であると考えます。
 都は、平成十七年度より、地域連携型モデル商店街事業を実施し、これまでに、江戸町風の景観整備を行った浅草の伝法院かいわいや、まちの安心・安全に取り組む世田谷区祖師谷のウルトラマン商店街など都内九つの地域が選定され、各地域でさまざまな取り組みが実施されています。
 こうした全国でもモデルケースとなる取り組みは、都として地域を選定した後も節目節目で所期の目的が達成されるよう、商店街の活動の後押しを続けるべきと考えますが、所見を伺います。

○佐藤産業労働局長 地域連携型モデル商店街事業に選定をされた商店街は、地域に活気とにぎわいをもたらす取り組みを着実に実施をし、他の商店街のモデルケースとなるような成果を上げることが期待されております。
 こうした成果を上げるためには、商店街が事業着手した後も数年にわたり継続的に取り組むことが必要となります。このため、都は来年度、地域連携型モデル商店街フォローアップ事業の創設によりまして、中小企業診断協会東京支部との連携のもと、事業の実施状況に応じて中小企業診断士を派遣するなど、モデル商店街をきめ細かく支援してまいります。

○高橋(か)委員 次に、都市農業について伺います。
 我が党の都市農政を考える議員連盟は、都市の貴重な緑地空間である農地を保全するように、議会でさまざまな提案をしてまいりました。都市農地の保全には国の制度改善が必要不可欠でありますが、農業が営まれてこそ農地がさまざまな機能を発揮し、維持されていくのであります。現在では、農家が大都市の中で農業生産を続けていくためには、近隣の人々へのさまざまな配慮が必要になりました。
 こうした中、若い農業者は、代々続いてきた農業を都民のためにも次代に引き継いでいこうと考えております。昨年十一月の東京都農業祭でも、東京農業を多くの方に知ってもらおうと、表参道で野菜の宝船パレードを行っていました。ぜひ真摯な農業者に安心して農業に従事させてあげたいと思います。
 そこで、大都市東京における農業の今後の進むべき方向について、知事の考えを伺います。

○石原知事 都市化の影響による農地の減少や農産物の価格低迷、農業の担い手の減少や高齢化など、東京の農業を取り巻く環境は極めて厳しくなってきております。また、近年、食の安全に対する都民の不安も高まっております。
 しかし一方、日本の農業そのものはこのごろ世界の中で非常にブランド化してきまして、そういう評判をもってこれから売れ行きというものが期待されるわけでありますけれども、こうした中で、またさらに東京ならではのブランドがたくさんあるわけです。コマツナや、ブドウの「高尾」、あるいは稲城のナシなど、こういった全国に誇れる価値の高い農産物を生産するなど、東京の農業者というのは日々努力を重ねておられます。
 また、農業生産という一次産業の枠にとどまらず、加工品の生産から直売所や観光農園の開設など、多角的な経営への取り組みも進展しております。
 農業が活性化し、また都民から見ても魅力のある農業となることは、環境の保全や防災などさまざまな機能を持つ貴重な都市農地の保全にもつながってまいります。
 都としては、東京の農業が、大消費地に間近という有利性を生かしまして、都民のニーズを戦略的に取り入れた農業経営を展開することにより、活力のある産業として再生するように、今後とも都市農業の振興に努めてまいります。

○高橋(か)委員 次に、農産物の地産地消について伺います。
 私の地元の練馬区では、農業者が農産物の地産地消に熱心に取り組んでおり、現在、百カ所以上の直売所で地元産の野菜や花などの販売を行っており、住民の方々に大変喜ばれております。
 地産地消を進めることは、輸送時のエネルギー消費を減らし、地球温暖化防止につながり、大変重要であると考えております。
 また、都市に新しい緑を創出するという施策を展開する上でも、野菜や花だけでなく、街路樹や屋上、壁面を緑化するための植物についても地産地消を進めていく必要があると考えております。
 都では、緑の地産地消をどのように進めるのか、今後の取り組みを伺います。

○佐藤産業労働局長 ご指摘のとおり、都内で生産した緑化植物で東京の緑化を進めることは、地球温暖化防止の観点からも重要であると考えております。
 このため、都は来年度以降、苗木生産供給事業における生産量をふやしまして、都の公共事業等に積極的に供給をしてまいります。
 また、都内生産者が育成をしております約一千種類の緑化植物を、その情報をデータベース化するとともに公共団体等に情報提供いたしまして、都内産の緑化植物の需要拡大を進めてまいります。
 さらに、都市の狭小なスペースにも適した緑化植物や、簡単に屋上、壁面緑化ができる植物の開発、生産振興を図ってまいります。
 今後とも、農業振興と東京の縁の創出という両面から縁の地産地消を進めてまいります。

○高橋(か)委員 最後に、新銀行東京の質疑に移りますが、本件については、引き続き、川井副委員長より、関連で質疑を行います。
 私からの総括質疑は、以上で終了させていただきます。ありがとうございました。(拍手)

○三宅委員長 計測をとめてください。
 この際、議事の都合により、おおむね五分間休憩いたします。
   午後三時十一分休憩

   午後三時十七分開議

〇三宅委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 ただいま、川井しげお副委員長より関連質疑の申し出がありました。
 本件は、予算特別委員会実施要領第七の規定に基づき、質疑委員の持ち時間の範囲内で認めることになっております。
 川井しげお副委員長の関連質疑を認めます。
 なお、川井副委員長に申し上げます。発言は、高橋理事の質疑の持ち時間の範囲内となっておりますので、あらかじめご了承願います。
 計測を始めてください。

○川井委員 それでは、高橋理事に引き続き、関連質疑を行わさせていただきます。
 新銀行東京についてお伺いをするわけでございますが、先日、本会議において知事は、中小企業支援の重要性を切々と答弁されました。しかし、厳しい経営状況に陥った新銀行東京を再建して本当に有効な銀行になるのか、今問われているわけであります。
 新銀行東京をめぐっては、さまざまな報道がなされておりますが、ここは冷静になって、中小企業や都民にとって、この問題をどう解決するのが最善なのか、本質に立ち返り、客観的な事実を共有した上で、じっくり議論したいと思います。
 知事は、過去に、本会議あるいは記者会見において追加出資はしないとしながら、今回、四百億円の追加出資をすると表明されました。
 知事、知事は知事であると同時に物書きであり、文章あるいは言葉を大事にしてこられた方だと思います。一方、人間石原慎太郎を見たとき、大変負けず嫌いであるし、プライドの高い人だと思います。その知事があえて発言を覆すのです。ご自身も、まことに残念無念、歯ぎしりをする思いで、ざんきにたえないとおっしゃっているように、苦しいだろうと思います。
 そんな知事が、みずからのプライドを捨てて、傷つきながら、苦渋の選択をせざるを得なかった。これはやはり、新銀行東京に関係している多くの都民、そして中小零細企業を助けるための決断であるとともに、金融不安を起こしてはいけないというあらわれだと思います。苦渋の決断をせざるを得なかった知事の思いをお伺いいたします。

○石原知事 新銀行東京が、設立の志に反しましてこのような経営状態に陥り、追加出資が必要な事態に至ったことはまことに残念でありまして、ざんきにたえません。四百億円の重みは十分わきまえておりますが、一方、現に一万三千もの中小企業に銀行は支援しているわけで、これをつぶすと、広範囲に甚大な影響が及ぶのも自明であります。
 さまざまなご意見があるのは承知の上で、日々、必死に努力をしている中小企業への影響や都民への負担を考え、今回、追加出資をお願いいたした次第であります。
 本日から始まる予算審議では、経営悪化の原因、そして他の選択肢との比較などを踏まえて、この方法しかないということをご理解いただきたいと考えております。中小企業や都民への影響などを複合的に勘案しながらのご議論をぜひお願いしたいと思います。

○川井委員 さて、日本の金融システムは、この半世紀の間、さま変わりをしてまいりました。高度経済成長を支えてきた護送船団方式から、自己責任の時代へと大きく変化したのであります。そのような中で、バブル期になされた不動産担保融資により生じた巨額の不良債権を背景として、国内金融機関は、信用金庫、信用組合などの中小金融機関のみならず、大手銀行までが破綻や合併を余儀なくされたのであります。
 そうした状況の中で、新銀行東京が設立されたわけでありますが、改めて、新銀行東京を構想し、設立した経緯と意義について知事にお伺いをいたします。

○石原知事 東京と日本を支える中小企業が、ほんの数年前までは既存の金融機関の貸し渋りや貸しはがしのために苦境に陥っていたことはご承知と思います。
 ゆえにまた、就任しまして、これは対象とする企業はグレードがいささか違うでしょうけれども、あくまでも中小企業対策として、日本にはなかった社債担保証券あるいはローン担保証券を講じまして、これは一兆円ほどのマーケットになりましたし、それで再生して、既に七十社近い会社が上場までしておられます。
 私の地元の大田区というのは、これは中小企業の一種のメッカでありますが、そこの経営者や経済人などの話を聞きまして、これはとにかく何かしないと東京の中小企業が死んでしまうと、当時思いましたので、困難な道であるという意見もございましたが、ここで変えなければならぬという強い思いから新銀行の設立を決断し、平成十六年第一回定例会で大多数の皆様の賛成をいただき、新銀行東京は設立の運びになりました。
 バブル崩壊から今日に至る我が国の経済金融情勢を振り返っても、高い事業意欲がありながら資金繰りに窮している中小企業を支援することは極めて重要でありまして、それを目指した新銀行の志は、私はその正しさは、中小企業の方々だけではなくて、都民にも十分ご理解いただけると思っております。

○川井委員 新銀行東京は、こうした国内金融機関の状況を背景として収縮した中小企業の金融の空白を埋め、資金繰りに苦しむ中小企業に資金を行き渡らせ、疲弊した東京の地域経済を活性化する使命を担ってスタートしたわけであります。
 新銀行の構想が発表されたのは平成十五年五月であり、所管は出納長室でありました。当時私は、財政委員会委員長として、さまざまな角度からなされた質問に耳を傾け、その後は理事としてみずから疑問点をただしていました。あのとき新銀行東京の構想を発表したインパクトは、相当大きなものであったと思います。
 しかるに、開業後の新銀行東京の経営実績を見ますと、今年度の中間決算における累積欠損額は九百三十六億円に達するなど、危機的な状況にあります。新銀行東京の設立理念がすぐれたものであっても、それを実践に結びつけるアプローチは効果的に機能していたのでしょうか。
 こうした疑問に答えるものとして、昨日、新銀行東京から調査報告書が提出されました。旧経営陣が経営に当たった開業二年間の経営状況に関し、経営不振を招いた原因究明を行ったものでありますが、これをお読みになった知事のご感想をお聞かせ願いたいと思います。

○石原知事 この報告書が至るまでにいろいろ断片的な仄聞はしておりました。ゆえにも、この時点になって、とにかく銀行の当事者に弁護士を含めたメンバーによりまして、延べ八カ月以上にわたった調査をお願いして、その結果を見ましたら、経営不振を招いた原因がるる鮮明になったわけでございます。
 貸し先のデフォルトの発生を、それはそれでいいというような旧経営陣の、ちょっと常識から脱した営業実態が明らかになったわけですけれども、中でも、これは仄聞しておりましたが、実際にあったようですけれども、六カ月先のデフォルトならばどんどん貸せということで、貸し先の口数を数としてふやした職員には、融資実行実績に応じた、最大年間二百万円もの成果手当が支給されていたと聞きますけれども、その他、途中の経過報告を要請しても、事実の隠ぺいや不適切な報告などがありまして、経営者の姿勢としては非常に問題があったということがまずはっきりなったと思います。
 現経営陣が旧経営陣に対して、究明とどういう責任を追及するか考えておると思いますが、今後の推移を注視していきたいと思っております。

○川井委員 調査報告書によれば、デフォルトに基づく損害については、経営判断の責任によるところが大きいと考えると指摘されており、損害の額をどう評価するか、また、これを経営責任との因果関係とどのように結びつけるかについては、さらに専門家の意見を踏まえ、十分に検討する必要があるとされています。
 今後、責任追及が、法的なもの、刑事責任の追及をも含むことになれば、司法の場で判断されるべき問題となります。十分な調査権を持たない第三者が、そうした状況のもとで議論をしてどうこうする性格のものではなく、冷静にその結果を待つことが都や我々議会側としての立場ではないかと思うわけであります。
 今一番必要なことは、東京都民にとって一番実害のない方法を選び、結果として、新銀行東京に関係している預金者や融資を受けている一万三千社もの多くの中小企業、そしてそれにかかわる従業員やその家族を守ることではないでしょうか。
 かつて私たちの会派は、信金中央金庫の東京版のような機関にしては、あるいは、千店にも上る信用金庫の支店の窓口を利用してはなど、いろいろ意見具申をしてきましたけれども、当時の経営者には聞き入れられず、裏切られ、悔しい思いもありますが、今それを並べても解決にはならないわけです。我々が議会人として行政との両輪の一方の役割を果たしていく責任を貫くことが大事ではないでしょうか。
 きょうの新聞何紙かには、平成十六年第一回定例会で新銀行東京の設立に賛成した会派の幹事長が、設立そのものが暴走だといっておられるが、議会が賛成していなければ設立はできなかったはずであります。
 また、経営者に対する任命責任をおっしゃる方がおりますが、こうした主張は結果論であり、だれも経営の裁量権を超える非常識な経営を行うとは考えていなかったと思います。
 確かに東京都には、発案者としての責任、都民の税金をもって株主になったことから来る監視責任がありますが、それらの責任については、知事自身ももろもろの責任として認めており、その責任を全うする方法として、今とるべき責任は、新銀行東京を是が非でも立て直し、都民のお役に立つ銀行にすることが私の最大の責任といっておられますし、私もそのとおりだと思うわけであります。
 再度質問になりますが、知事、あなたの責任を全うする方法をお聞かせ願いたいと思います。

○石原知事 新銀行東京が結果としてこのような経営状態に陥り、追加出資が必要な事態に立ち入ったことはまことに残念でありまして、提案者として今、私のとるべき道は、いろいろご意見もあるでしょうけれども、何よりも、新銀行についての最悪の事態を回避して、都民の負担をできるだけ少なくするとともに、設立の理念を取り戻して都民のお役に立つ銀行に再生させることだと思っております。
 仮に清算や破綻処理となれば、現在懸命に頑張っている一万三千もの中小企業の経営者にも大きな影響を与えることは必至でありまして、これによって事業継続が困難になる企業が続出すれば、そこで働く従業員とその家族、取引先への深刻な影響も連鎖するばかりか、膨大な負担をさらに都民全体にお願いすることにもなりかねないわけであります。
 現況の日本の金融状況、経済状況を見ますと、やはり健全な借り手を破綻させて、整理回収機構か、政府もですが、預けることで進んでいいものか。ミドルリスク、ミドルリターンとしての市場がどんどん縮小していまして、サブプライムの問題など構えて金融引き締めの時期に、こうした弱い、しかも極めて可能性のある人たちを助けなくてはならないんじゃないかと思います。
 現に、政府も融資を拡大しておりまして、いわゆるマル経の額を五百万から一千万、さらに二千万に拡大するつもりのようですけれども、こういった事態の中、この銀行が再生できれば、私は日本の陰の経済の産業の推進力であります中小企業の方々に自信を持って仕事を続けていただくことができるんじゃないかと確信しております。

○川井委員 先日の本会議では、再建に向けて現在残されている選択肢として、追加出資、事業清算、預金保険法に基づく破綻処理の三つに絞られたとの答弁がありました。
 しかし、初めからこの三つの選択肢に限定されていたわけではなく、追加出資を仰がずに再建するという方法もあるわけでしょう。選択肢として、この三つ以外にも他の金融機関との資本提携や事業譲渡など、方策、あり得ると思います。新銀行東京は、そうした他の方策に取り組んだのか、また、その結果がどのようになっていたのか伺います。

○佐藤産業労働局長 新銀行東京は、昨年夏以降、新経営陣のもとで、新中期経営計画の内容を上回る経営改善に取り組んでおりますが、その一方で、再生に向けたさまざまな方策を検討してまいりました。
 具体的には、まず都の出資を前提とせずに、民間金融機関等との統合や資本提携を念頭にいたしまして、国内銀行五行、外国銀行を含む外資系六社との交渉を行ってまいりました。
 また、民間資本と東京都との共同出資についても調整を行いましたが、現段階では調うまでに至っていないという現状でございます。

○川井委員 いろいろな方策を講じたが、いずれも不調で、最終的にはこの三つの選択肢に絞られたということだと思います。
 先日の本会議で、知事は、追加出資について、選択肢はこれしかないということを重ねて強調されていましたが、三つの選択肢、つまり追加出資、事業清算、預金保険法に基づく破綻処理が、それぞれどういう考え方のものなのか、また、どの程度のコストがかかるものなのか、借り手である中小企業に対してどのような影響があるのかを示していただきたいと思います。

○佐藤産業労働局長 まず追加出資でありますが、経営再建の手段として新銀行東京の資本を手厚くすることによりまして、既存顧客を初めとする中小企業に対する継続支援を行うことを可能とするスキームであります。その所要額は、今回ご提案を申し上げました四百億円でございます。
 また、事業清算とは、金融庁の認可を受けまして銀行がみずから廃業するものであります。そのためには、前提として協力銀行による預金者と健全な融資先の保護を前提に段階的に事業を縮小いたしまして、清算会社に移るということが必要になります。
 新銀行東京の現在の預金残高は約四千億円であり、これに対する、資産的には十分ありますが、仮にいっときに払い戻しが請求された場合、直ちに現金化できる有価証券などの資産だけでは、その場合不足が生じる。このため、約一千億円の貸付金という形で新銀行東京を支援することが、設立主体であります東京都の責任であるというふうに考えます。
 その後に、融資返済などによりまして、貸付金は徐々に返済されるということになりますが、時期や最終的な金額は確定していないということになります。融資継続が行われないという形になりますので、そのことによりまして既存の融資先の経営悪化が発生するということ、また、清算ということを公表しますことによりまして、融資先にモラルハザードが起きるというような可能性もあり、融資返済の滞りから多額の損失が発生するということが予想されます。
 損失額につきましては、これは確実な試算方法というものはございませんが、清算をする場合、現実的には清算のための協力銀行へ債権を引き取るようなお願いをすることも考えねばならない事態も当然あると思いますが、過去の新銀行と同程度の資産規模を持つ破綻した金融機関の例を見ますと、最終的に五割以上の資産の回収が見込めずに、これを新銀行東京の例に当てはめますと、想定される損失の額は一千億円に及ぶものというふうに推計されます。
 また、この場合、既存融資先への継続支援ができなくなることによる中小企業への深刻な影響が考えられますし、さらに現実には、清算のための協力銀行が得られておりません。こうしたことから、実際にこの清算という手法をとることは現実的でないというふうに考えております。
 次に、預金保険法の破綻処理についてですが、債務超過または預金払い戻し停止のおそれがある金融機関に対して行われる措置でありまして、現在の新銀行東京には適用はされませんが、一般的な方法として、金融整理管財人の管理のもと、救済金融機関との合併や事業承継が行われるという形になります。
 その影響といたしましては、一千万円以下の預金の元本、利子等は保護されるものの、これを超える部分につきましては、銀行の財務状況に応じてカットされる、いわゆるペイオフが発動されることであります。一月末現在、一千万円を超える部分の預金は、法人、個人合わせまして九千六百十件、四百七十七億円に上り、個人顧客だけでも九千五百二十三人、三百十五億円に上ります。
 また、新銀行東京の顧客は無担保融資が中心であることや赤字、債務超過先が多いことから、整理回収機構に移管される可能性は極めて高くなるというふうに想定しております。中小企業等の融資先にとりましては、貸出債権が整理回収機構へ移管となった場合、社会的な信用が失われることや新たな融資が受けられなくなることから、事業継続が困難になるというふうに考えております。
 法的には都の負担は生じませんが、我が国で初のペイオフの実施に伴う影響ははかり知れず、国民経済上多大な損失が発生することには疑いがないと思っております。

○川井委員 三つの選択肢の内容について詳しく説明をいただきました。
 それでは、この三つを比較考量して、追加出資がすぐれていると判断されたのはどのような理由なのか、お伺いします。

○佐藤産業労働局長 新銀行東京は、ほかの金融機関と異なりまして、先ほど申し上げましたが、赤字、債務超過先への融資が多いという実態がございます。追加出資以外の方法は、資金繰りに窮する中小企業を救うという本来の目的に反することになると思います。既存融資、保証先一万三千社を初め、その取引先、従業員、家族などの関係者に重大な影響を及ぼしかねない。先ほどるるご説明したとおり、都民に膨大なコスト負担をお願いするということになります。
 一方で、追加出資は、銀行として第一に考えなければならない預金者の保護が可能であるとともに、新銀行東京の資本を手厚くすることによりまして、既存融資先を初めとする中小企業に対する継続支援を行うことを可能とするスキームでございますので、高い事業意欲を持ちながら資金繰りに窮している中小企業の支援を行うことができます。
 このような点にかんがみまして、現在とり得る唯一の方法として追加出資を選択いたしました。

○川井委員 事業清算の場合、当面、緊急の資金供給として一千億円の費用が必要になる。そして、今の説明では、それが戻るどころか足りなくなることもあるということでありました。
 また、預金保険法に基づく破綻処理の場合は、一万人近い人たちに影響が出る。日本は今までペイオフを経験したことがないわけでありますし、いわば伝家の宝刀なのであります。それが一度抜かれるということになれば、預金者はその厳しい現実を目の当たりにすることになるわけであります。
 ペイオフの場合、預金額一千万円以下の元本と利息は保護されるものの、一千万円を超える部分については保護の対象になりません。銀行の財産整理後の状況いかんによるとはいうものの、先ほどの答弁からいえば、一千万円を超す預金者は九千六百十件で、この方たちが四百七十七億円に上る被害を直接受ける可能性が高いということであります。
 これは大変な額であります。個人の預金者に限っても三百十五億円である。東京都がつくった銀行だということで信頼して預けた方々も多いわけで、ペイオフになれば、老後の蓄えとして当てにしていた高齢者の方々などにとっては、極めて深刻な問題であります。
 また、先ほどの答弁では、新銀行東京の顧客は無担保融資が中心であることや赤字や債務超過先が多いことから、整理回収機構に移管される可能性は極めて高くなると想定されるということですが、整理回収機構に回される事業者にとっては、まさに一大事であります。必死に頑張って返済に努力している企業が、一部の報道にあるような悪質な連中と十把一からげにされてよいのでしょうか。
 不幸にして倒れた人たちや現在返済に苦しんでいる方々の中で不良債権扱いされるだろう人たちを苛斂誅求の場にさらしてよいのでしょうか。
 新銀行東京が支援した企業は一万七千社ありますが、もし新銀行東京がなかったならば、高利の金に手を出さざるを得ず、同じような状況に追いやられた企業も少なくないと想像します。汗をかいて仕事に励み、地道に返済を続けている企業にとっては、新銀行東京はまさに天の助けであったはずであります。
 しかるに新銀行東京が、今回仮にペイオフという形の中で破綻処理されたならば、まさに整理回収機構に回されてしまうことによって、今、新銀行東京から融資を受けている多くの企業が同じような道をたどることも容易に想像できるわけであります。したがって、事業清算と預金保険法に基づく破綻処理の二つの選択肢は、非現実的なものとしかいいようがありません。
 こうしたことを考え合わせれば、苦渋の選択をされた知事の胸のうちを推しはかることができると思います。
 しかし、追加出資の四百億円という金額は、都民感覚として非常に重いものであります。追加出資の額がなぜ四百億なのか、金融の専門家でない一般の都民、私たちに理解しやすいように、その根拠と考え方を丁寧にお示しください。

○佐藤産業労働局長 新銀行東京の経営状況の悪化によりまして、追加出資がないとしますと、二十年度末には金融機関として健全な経営が行われるために必要な自己資本が不足する状況にあります。
 新銀行東京は、事業計画の抜本的な見直しを行うとともに、銀行業を行う上で最低限必要となる自己資本、それと今後の事業展開をする上で予想されますリスク、これに対する資本を確保する必要があることから、四百億円の追加出資を東京都に要請してきたところでございます。
 銀行の資本につきましては、国際決済銀行、BISの資本に関する規則があり、国内におきましては金融庁の監督指針により定められているところでございます。
 これは、平成十九年三月から新たに導入された規制の部分があり、従来の自己資本比率確保に加えまして、既に行われている貸倒引当金ではカバーできない、いわば将来発生することがあり得る損失について、あらかじめ資本化をしなければならないという規則でございます。
 この新BIS規制に対応するため、自己資本の維持に必要な八十億円、それから将来発生することがあり得るリスクに対するために必要なものが二百八十億円、さらに新規業務や風評等、その他のリスクへの備えといたしまして四十億円、合計四百億円が必要になるとの銀行の判断により、要請がなされたものでございます。
 都としましては、都の負担が他の方法に比べて少額で、中小企業等既存顧客に与える影響が最も少なくて、預金者保護の問題が生じない追加出資が最善の策という、この判断のもとで、再建計画の実現可能性、そして新銀行東京が市場からの信任を得られるための財政基盤の確保、都財政の状況等を総合的に勘案しまして四百億円が妥当と判断したところでございます。

○川井委員 追加出資の前提として再建計画が出されたわけでありますが、その中身に入る前に、まず足元の状況を確認したいと思います。
 新銀行東京の平成二十年三月期決算については、まだ事業年度の途中であり、確たることはいえる状況にないと思いますが、現時点における今期の着地見込みを示していただきたい。

○佐藤産業労働局長 新銀行東京によれば、平成二十年三月期決算の財務状況は、総資産五千二百八十六億円、融資・保証残高二千三百億円、預金四千七億円、純資産は約百五十億円というふうに見込んでおります。
 また、損益状況は、経常収益百四億円、経常費用二百五十五億円、経常損失百五十一億円、特別損失十七億円、純損失百六十七億円を見込んでおり、これにより累積損失は一千十六億円になる見込みであると聞いております。

○川井委員 こうした経営不振状態を克服し、新銀行東京を立て直すために、現在の経営陣はどのような経営努力をしてきたのか、お伺いをいたします。

○佐藤産業労働局長 新銀行東京は、昨年六月に刷新された新経営陣のもとで、デフォルト圧縮を最優先といたしました経営改善に取り組んでまいりました。そして、まず顧客の実態把握に注力することといたしまして、顧客の債務者区分の全面的な見直しを実施しますとともに、延滞を防ぐための返済状況の管理など期中管理の徹底を図ってきたところでございます。
 また、店舗を十店舗から六店舗に削減するとともに、ATMにつきましても、店舗外のATMをすべて廃止をし、お客様には新銀行東京のATMと同じ条件でご利用いただける提携金融機関のATMをご活用いただくようにしたところであります。こうしたことによりまして、経費を計画より十二億円削減してまいりました。
 さらに、本年一月からは、新たに抜本的なリストラと事業の重点化に向けた検討を開始いたしまして、二月に再建計画を取りまとめたところでございます。

○川井委員 新銀行東京がそれなりの努力をしてきたことは認めますが、お答えのあった今期の着地見込みを出発点として再建計画を進めていくことになるわけであります。計画に示された経営目標は、中小事業者の支援であり、これまでと変わっているわけではありません。これは当然のことであります。
 しかし、新銀行東京では、今まで何回か計画をつくられてきましたが、いずれも未達成であります。今度の再建計画は、そのようなことがあっては決してならないわけであります。目標を確実に達成できるのかを検証する観点から、再建計画のポイントを明らかにしていきたいと思います。
 まず、都として、この再建計画をどのように評価しているのか伺います。

○佐藤産業労働局長 新銀行東京の再建計画は、中小企業支援という都の政策目的の実現やビジネスモデルの確実性、収益計画の妥当性等を十分踏まえて策定されたものであるというふうに評価しております。
 すなわち、この計画は、既存の顧客のうち、延滞等が発生していない正常返済先につきましては、可能な限り継続的に支援を行っていくということを前提とした計画でありまして、中小企業支援の継続という都の政策目的が確実に達成されるものと考えております。
 次に、これまでの三年間で蓄積してきました営業ノウハウや反省点を踏まえまして、今までの事業実績の中で着実に収益が見込める事業に重点化をすることとしておりまして、ビジネスモデルの確実性は十分にあります。
 また、事業の重点化とあわせて、店舗の集約や人員体制の大幅な見直しを行うなど、徹底した執行体制の見直しを行うこととしており、収益計画の実現性は高いというふうに評価しております。

○川井委員 計画の中では、事業の重点化がうたわれています。これまでの実績で、不良債権の増大と並んで、収益確保の低調さ、経費の多さが際立っていました。この計画ではそれらをどのように改善されるのか、道筋を示していただきたいと思います。

○佐藤産業労働局長 既存顧客への継続的な支援が中心の一般融資や小口融資では、大きな収益は見込めないものの、成長が期待できるベンチャー企業に対する融資では一定の収益が期待できます。また、これまでの事業実績の中で収益を上げているファンド投資は、今後も着実に収益が期待できます。
 一方、経費につきましては、本部、店舗等の一店舗への集約や、四百五十人体制から百二十人体制への人員体制の大幅な見直しなど、徹底した執行体制の見直しにより削減することとしております。
 こうした取り組みを着実に進めることで、経営再建を確たるものとしていくところでございます。

○川井委員 経費の削減が経営改善に向けた大きな要素であることは理解できます。六店舗を一店舗に集約し、人員も四百五十人から百二十人へと四分の一に削減するなど、事業の縮小を目指しており、そうした体制で中小企業支援という目的を果たしていけるのかという声もありますが、店舗については、都と連携して、例えば東京都中小企業振興公社、秋葉原、蒲田、葛飾、立川に四カ所、これに東京ビッグサイトを加えて五カ所の拠点をつくることにより、今までと変わらない体制に近づけること、また、従業員については、現在の四百五十人のうち二百人が派遣スタッフであり、今後は、派遣スタッフで大量処理する体制から社員みずから事務処理をするように変えていくと聞いております。
 ここで、確認の意味を含めて、今回の再建計画が資金繰りに窮している中小企業を切り捨てるものではないということを明らかにしていただきたい。

○佐藤産業労働局長 再建計画はあくまで資金繰りに窮する中小企業への支援継続が目的でございます。既存顧客一万三千社のうち、大企業、それから破綻先、延滞している先などを除きました九千を超える融資・保証先は引き続き支援をしてまいります。
 加えて、ファンドを通じたベンチャー企業への出資や、中小企業振興公社など都の機関と連携した、従来よりも充実した中小企業支援を行ってまいります。
 審査能力の高い、目ききができる人材を選抜し、審査及び営業フロントに配置するとともに、今まで以上に社内研修等で間違いのない営業ができるような人材の教育について努力を行ってまいります。
 これらの取り組みによりまして、経営目標である中小事業者支援を実現してまいります。

○川井委員 また、都との連携という点では、公共工事代金に関係して、一歩進んだ新たな商品も提案されています。公共工事については、工事代金の四割が前払い分として支払われますが、残る六割は、工事が完成し、検査を受けるまで支払われません。工事の完成までには半年かかる場合もあれば、一年かかる場合もあります。その間は事業者が立てかえるわけです。その六割の立てかえ部分の資金を新銀行が事業者に供給するという商品でありました。銀行にしてみれば、検査が終われば東京都から自動的に間違いのないお金が、そして利益も確保されるという有力な商品であります。
 さて、ここで、新銀行東京から実際に融資を受けた私の知り合いの話をさせていただきます。
 一件目は、従業員十八名の物流・倉庫業を営んでいる方であります。この会社は、一時的に売り上げが減少し、取引先金融機関の既存融資を条件変更した際に、この金融機関から、減産目的の新規融資は応じないということをいわれたそうです。そのような状況の中で、新銀行東京が大変スピーディーに融資対応をしたため窮地を乗り切れた、こういっております。この社長さんは、新銀行東京の無担保融資に大変感謝をしている、その後、自分は知り合いの会社を何社か新銀行に紹介したんだ、こういうお話でありました。
 二件目は、従業員が三十一名の杉並区で建設業を営む方であります。新銀行が設立された直後の時期に指名停止になり、受注がなく、資金繰りができなくなってしまった。当時も建設業は不況業種ということで、都市銀行を初め、信金、信組も相手にしてくれない。そんなときに、わらをもつかむ思いで新銀行に三千万の融資をお願いしたところ、融資を理解していただいた。何とか従業員や取引先に迷惑をかけず事業の継続ができ、現在は完済することができた、大いに助けられたということでした。
 その後、昨年の夏、完済した実績があるのだからと、五千万の融資をお願いしたところ、融資を受けられないというので、理由を聞いたところ、チェック項目がふえた、一項目でもひっかかればだめですといわれた。こういう不満をいいながら、昨年の六月以降の新経営陣のチェック機能が働いていることまで証明をしてくれました。
 こうした声を聞くにつれ、経済活動の血液ともいうべき金融の重要性を感じるわけであります。
 それでは、実際に新銀行の融資や保証によって、貸し渋り、貸しはがしに苦しむどれだけの事業者が救われているのでしょうか。特に赤字や債務超過の企業は、金融機関から融資を受けることが難しいといわれていますが、現在、新銀行東京の融資先で赤字や債務超過に陥っている企業はどのくらいあるのか、また、そこで働いている従業員はどのくらいいるのか、それぞれお示しいただきたい。

○佐藤産業労働局長 平成十九年十二月末現在におきます新銀行東京の中小企業の融資・保証先は一万三千社ございます。そのうち五千六百三十五社、割合にして四三%が赤字、債務超過企業でございます。これらの企業は、新銀行の融資が断たれた場合には、他の金融機関から融資を受けられない可能性が高いというふうに思われます。
 また、新銀行東京の取引先中小企業の平均就業者数は一社当たり十四・七人であり、五千六百三十五社全体では約八万三千人と推計をされます。

○川井委員 融資を受けられなければ、八万三千人の人たちが路頭に迷うことになったかもしれないのですね。融資の実行は、単に融資先の中小企業の資金がつながるということにとどまらず、従業員や家族にも影響が及びます。八万三千人の方々がそれぞれ雇用者の平均世帯人員二・三人を有しているとするならば、家族の数は十九万人にも上ります。これだけ多くの方々が救われているわけです。
 また、従業員や家族だけではなく、融資先の企業が生き残ることによって、その取引先も助かるわけであります。
 先ほどの預金保険法に基づく破綻処理の場合には、影響を受けるという点からいえば、ペイオフの対象になる一万人とその家族も含まれますから、その影響は大きいものがあります。
 また、現在、新銀行東京は、信用金庫との連携の一つとして、新保証という制度を行っています。これは、信用金庫が中小企業者に融資を行う場合には、融資額の八割を新銀行東京が保証するというスキームであります。今年度九月末の残高は六百三十七億円ですから、新銀行東京の経営がもし立ちいかなくなれば、これらの信用金庫にとっても大きな痛手となり、金融不安につながりかねないわけであります。
 新銀行東京の再建については、金融関係者も、当時の金融情勢の中で、地域金融機関自体も不良債権処理に追われ、大変厳しく、中小零細企業への資金の供給は十分とはいえない状況にあった。そういう中で、新銀行東京が新保証を創設するなどにより、当時の中小金融機関も大いに助けられた。もし新銀行がつぶされるようなことがあれば、その影響は大きく、利用している中小企業や預金者に大きな不安を引き起こし、社会的にも大きな混乱をもたらすことは火を見るより明らかである。ぜひ新銀行をつぶさずに、今後とも地域金融機関や信用保証協会などと協力連携しながら、都内の中小企業への金融支援を続けてもらいたいと語っていました。このように、金融機関の関係者も、新銀行について一定の評価をしております。
 したがって、今回、東京都が新銀行へ追加支援し、再建を促すことは、意欲のある中小企業を支え、東京の産業力を強化していくためにも必要なものだと考えます。
 さて、冒頭で、新銀行東京の設立当時の社会経済状況についてのやりとりをしました。現在の状況を見ると、設立当時と理由こそ異なりますが、サブプライムローン問題による各行への影響が深刻化し、最近の金融市場は混乱を続けている状況であります。こうした背景のもと、再び金融機関の貸出姿勢が消極化していると聞いております。また、戦後最長といわれる景気回復の動きも、町場中小企業にはなかなか及んでいないというのが実感であります。
 そこで、中小企業をめぐる現状を具体的な数字を用いて示していただきたいと思います。

○佐藤産業労働局長 サブプライムローン問題に端を発しますアメリカ経済の減速や原油価格の高騰、また住宅着工のおくれなどを背景にいたしまして、日本経済も減速感を強めつつあり、中小零細企業におきましては、昨年一年間で倒産件数が前年より六・三%増大をしております。
 住宅着工戸数も、昨年十二月の都内住宅着工戸数の減少率は、前年同月比四三・三%減と、全国平均の一九・二%減を大きく上回っております。
 原油高などによる影響も深刻でありまして、昨年十一月に中小企業庁が実施をいたしました調査では、原油価格の上昇により収益を圧迫されている企業が九割を超え、価格上昇を販売価格に転嫁できないとする企業が六割に達しております。
 財務省の法人企業統計によりますれば、資本金一億円以上の大企業がバブル期を超えて過去最高の経常利益を更新しているという現状に対しまして、資本金一千万円以上一億円未満の企業は、経常利益ですけれども、バブル期の半分にも達していない、これが現状でございます。
 都が先月行いました都内中小企業の景況調査では、業況がよいとした企業の割合から悪いとした企業の割合を差し引いた割合が、二年十一カ月ぶりにマイナス四〇になるとともに、当月と比べた今後三カ月間の業況の見通しも大幅に悪化をしております。

○川井委員 現在のような金融情勢の中でこそ、あるいは新銀行東京がもう一度本来の役割を果たせるのではないかと考えるわけであります。
 振り返ってみますと、新銀行東京の構想当時、金融機関による貸し渋りや貸しはがしが続いたため、東京の中小企業は厳しい資金繰りを余儀なくされていました。そうした状況の中で新銀行東京が設立され、今日まで相応の役割を担ってきたわけであります。
 今日の質疑で、この銀行の存続意義、再建計画の重要なポイントについて丁寧な答弁を受けました。再建に向けて新銀行東京が歩む道は、容易ならざるもの、険しいイバラの道であることが想像できます。しかし、容易でなくとも、相当な覚悟を持って、しかも万難を排して再建をやり抜かなければ大変な事態になるということも、また今の質疑で明らかにされたわけであります。
 この銀行の再建のために、いろいろな手段、方法を考え、都民や中小企業に役立つ銀行を目指しているという説明をいただきました。しかし、再建のためには、かつて我々が主張したように、千にも上る支店や窓口を持つ信用金庫との連携が不可欠であろうかと思います。家庭や企業の中まで入り込み、お客様の家族構成や、何をどのようにつくり、営業しているのかという企業の実態を把握しているという、彼らが長年培ってきた情報力や営業力を大いに学び、利用させていただきながら、共存共栄を図り、ともに中小企業のニーズにこたえる金融機関としての地位を得ていただきたいと思います。
 また、信用保証協会との連携を利用させていただくことも、今後の商品づくりの上に欠かせないと思っております。そして、新銀行東京は、今回の支援がみずからを再生するに値するものであることを、みずから証明していかなければなりません。東京都は、単なる支援ではなく、今後は経営に参画するような思いを持って、あらゆる力をもって協力し、今回の支援策が都民や新銀行東京の利用者にとって最もよい判断であったということを、多くの都民に示すことができるようにしなければなりません。そうして、この銀行の再建をともにかち取らなければならないと思うわけであります。
 昨年の知事選において、知事は公約の柱を再起動としたわけでありますが、期待外れであった新銀行東京の旧経営陣による人事を昨年の六月に一新したわけであります。そして、その努力が始まったところであります。今こそ都民に理解をしていただき、都民や東京の中小企業に役立つ金融機関にすることこそが、まさに東京再起動といってよいと思うわけであります。再建に向けての知事の決意を改めてお聞かせ願いたいと思います。

○石原知事 ご質問の中のご指摘の事例や、局長からの数字を挙げての説明を聞きましても、私は、基本的には、この銀行の設立した意義はあったと思いますし、その志は間違っていなかったと思います。
 しかし、それでもなお、四百億円の追加出資は、私としても非常に重い苦渋の判断でありました。
 過去も今も中小企業の資金繰りは大変苦しいし、厳しゅうございます。この中小企業を支えていくために、より多くの施策、手段を用意することは、東京と日本の今後の発展のためにも必要不可欠だと思っております。そう信じております。
 新銀行東京の行き詰まりは、数多くの中小企業の行き詰まりを意味すると思います。ゆえにも、新銀行東京を何としてでも再建しなければならない。これは、伏してでも、都議会の皆様、都民の皆様にご理解とご協力をお願いしたいと思います。
 再建に当たりましては、新銀行東京の血のにじむような努力が前提でありますが、都としてもとり得るすべての手段を講じていくつもりでございまして、渾身の力を振り絞って、不退転の決意で、この銀行を何とかとにかく再建させていただきたいと思っております。
 しかし、やはり旧経営陣、殊さら非難をするつもりはございませんが、聞く耳を持たぬ唯我独尊という、そういう姿勢では、私はやはりだめだと思いますし、信用組合というものの活用をどうしてもうちょっと積極的に考えなかったのかと私も思いますし、それからまた、この一年、私も素人ですけれども、このピンチを目にして勉強しましたが、むしろ東京の可能性などについては、外国のファンドの連中の方が、ハゲタカか何か知りませんけれども、非常に目ざとくいろんな可能性を心得ているようでありまして、そういった知恵といいましょうか、ノウハウも活用すれば、私は、東京という非常に大きなポテンシャルを持っている大都市が背景になった中小企業政策というのは必ず成功すると思いますし、現にまた、社債担保証券、ローン担保証券も効果を上げてきたわけですから、私は、銀行もまた経営さえしっかりすれば必ず大きな成果を上げると思って、中小企業のために役に立つと思っております。そのつもりで頑張ります。

○川井委員 実は今、知事の方から信金等の話が出ました。先ほども私は触れておりますけれども、私どもの内田顧問の方からも、当時、実は全国信金中央のトップの方々にお会いさせていただいて、場合によっては競争相手になるけれども、この信金中央東京版、これを何とか理解いただきたい、こういう話などもさせていただいて、ある一定の理解をいただいておりました。だからこそ、私どもの会派は、信金中央の東京版ということの提案も当時させていただいたわけであります。
 同時に、その信用金庫が持っている千にも上るこの支店、それぞれの窓口、そして営業に対するノウハウ、こういうものをぜひ使ってみたらどうだろうか。そして、信金の方々に対しても、我々会派としての働きかけをさせていただき、その門戸を開いていただいた。
 しかるに、当時の経営陣がこういうことを全く無視した。それらについては、まさに私どももざんきにたえないというか、苦虫をかみしめるような実は思いであるわけでありまして、こういうものを、できれば今後しっかりと大きな反省材料としていただいて、銀行側と、そして東京都と、今後、東京都民から、そして多くの中小企業から支持をいただけるような、そういう銀行をつくり上げていただきたいと思うわけであります。
 実は、私は先ほど、時間がなくなるかなと思って、ちょっと飛ばしたところがあるわけでございますけれども、整理回収機構に回された一つの実例。実は私も一緒に体験をしたのでございますが、当時、バブルの崩壊後、大手銀行を含めて大量な不良債権を抱えて、ご存じのとおり、国の方が大きな出資を当時させていただいて、株を買うというような形の中で対応させていただいた。
 しかしながら、この多くが今回と同じように債務超過等々、あるいは赤字。こういうところはほとんど回収機構に回されたわけであります。この回収機構に回された、私の知っているある例は、まさに私も一緒に動かせてもらったんですが、その氷山の一角として、一山幾らでぼおんと売られてしまった。
 そして、何度か整理回収機構と交渉させていただいたんですが、その一部はまさに一山幾らでアメリカ企業に売られておりました。そして、やっとそこにたどり着いて、今度は、そこからアジア系の企業に売られていた。そこからの取り立てはすさまじいものでありました。まさにハゲタカ、ハイエナ、こういう感がしました。
 家族、そして親戚縁者までが生きた心地がしない、精神的に追い詰められた状態になり、家族そろって自殺まで考えざるを得ない、こういう状態に至ったということを、その方からも聞きましたし、私自身もその方と一緒に行動した時期がありまして、まさに忍びないというか、本当に苦しい思いをさせてしまったことがあるわけでございます。
 今、新銀行東京の顧客を再びこういうような、この人と同じような状況にさせては決してならないと思っておりますので、ぜひお考えをしっかりと持っていただきたい、こう思うわけであります。
 我々も、議会側の責任の一端を担うべく、行政とともに新銀行東京の再建に向けて協力をしていかなければならないと思っております。
 本日の質疑によって、三つの選択肢以外にも努力をしてきたが、最終的に選択肢は三つに限られたこと、その中で都民の実害が最も少ないものを選んだ結果が今日の追加出資であること、そして、新しい新銀行東京が確実に都民の役に立てる銀行としての経営を歩んでいけるかについての確認をさせていただきました。
 この議論によって、今回の追加出資の意味合いを多くの都民の方々に理解していただけたと思っております。そして、今回の苦渋の決断が必要な決断だったということを申し上げ、私の関連質問とするわけでございますが、私ども会派の新銀行東京の質問のまとめについては、私どもの締めくくりで改めて行うつもりでおりますので、よろしくお願いをいたします。
 これをもちまして、私の質問を終了させていただきます。(拍手)

○三宅委員長 高橋かずみ理事及び川井しげお副委員長の発言は終わりました。
 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後四時十七分休憩

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