東京都議会予算特別委員会速記録第五号

○川井委員長 山口文江委員の発言を許します。

○山口(文)委員 ことし二月、気候変動に関する政府間パネル、IPCCの第四次評価報告書が出されました。この報告では、人の活動で排出されたCO2などの温室効果ガスが温暖化の原因であるとほぼ断定し、危機感をあらわにしています。
 世界最大のCO2排出国でありながら、温暖化の原因について科学的根拠が不十分だとして京都議定書から離脱したアメリカも、大型ハリケーンによる大災害など、温暖化の影響を無視できない状況に追い込まれています。日本にとっても、京都議定書で約束した目標達成は喫緊の課題です。
 「十年後の東京」では、世界で最も環境負荷の少ない東京を実現するとし、十年間の活動を支える地球温暖化対策推進基金を設立し、都庁みずから率先行動を起こし、都民、都市開発事業者、民間企業や環境団体が一体となって推進していくとうたっていますが、どこか他人事のような感が否めません。
 CO2排出量は、身近な業務部門や家庭部門からの増加が著しいということです。子どもから大人まで、一人一人の意識改革こそ重要であると考えます。
 そのために、教育の現場である学校の果たす役割は大きいと思います。
 教育庁が昨年十二月発表した都立高校教育環境改善検討委員会の報告では、普通教室の空調設備の整備とあわせてさまざまな環境対策を推進していく必要があるとしています。今後の施設整備においても、さまざまな機会をとらえて環境負荷の低減を図っていくのは重要なことだと思います。
 特に、学校は、公共施設として、また、教育の場としても、ハード面、ソフト面での環境教育の場としての効果も期待できると思います。
 改善検討委員会の中では、都立高校で取り組んできた環境改善策も紹介されていますが、これまで都立学校の環境対策として具体的にどのように取り組んできたのでしょうか。

○中村教育長 これまでも、都立学校の改築や大規模改修等の機会を利用いたしまして、雨水のトイレ洗浄水への利用、屋上緑化や壁面緑化、効率のよい照明器具の活用など、省資源、省エネルギー化や温暖化防止などの対策を実施してまいりました。
 また、平成十七年度の都の重点事業であります都有施設壁面緑化事業に関連いたしまして、都立高校六校で壁面緑化、都立高校二校、盲・ろう・養護学校四校で校庭の芝生化などの環境対策を行ってまいりました。

○山口(文)委員 敷地も建物も大きい都立高校が温暖化対策に取り組むことは、周辺に対しても影響力のあることです。都立学校における環境対策として、ソフト面も含め、今後どのように取り組んでいくのか、考えを伺います。

○中村教育長 平成十九年度は、引き続き、都立高校二校、盲・ろう・養護学校一校で校庭を芝生化するなど緑化対策を行うとともに、これまでの取り組みに加えまして、新たに、都立高校五校において、太陽光発電を設置するほか、熱を遮るフイルムを窓に張ることや、太陽光を反射する塗料を屋上に塗るなど、建物の環境対策も行っていく予定であります。
 また、平成十九年度から全都立高校で必修化されます「奉仕」等の時間の中で、多くの学校が地域清掃やリサイクルなどの環境保全活動への取り組みを計画しているところでございます。
 これらの活動を通じて家庭や地域との連携によります意識啓発や教職員の意識向上を図るなど、学校全体として環境に配慮した学校づくりに取り組んでまいります。
 今後とも、ハード、ソフト両面から環境対策の一層の充実に努めてまいります。

○山口(文)委員 都立高校がハード面で整備され、冷房が設置されることを契機に、より一層温暖化対策などの環境面への配慮が求められます。既にISO一四〇〇一を取得するなど先進的に取り組んでいる学校もあるようですが、こうした活動を他校にも広げるためには、独自の高校版ISOなどの環境管理システムを高校生主体でつくることなどで、意識改革を促し、さらなる環境教育を推進していくことになるのではないかと考えます。
 また、CO2削減量が数値などで示されれば、さらなる努力の意欲もわこうというものです。例えば、光熱水費の差額の半分は各学校に還元されるフィフティー・フィフティー制度や、岩手県の職員がつくった環境尺という早見表、(資料を示す)これがそれに当たりますが、こういったような参考になる事例もいろいろありますので、ぜひ検討されることを要望して、次の質問に移ります。
 阪神・淡路大震災では、建物倒壊による死者が犠牲者の八割を超えており、その多くが一九八一年の新耐震基準以前に建てられた建物の下敷きになって十五分以内に圧死したと見られています。高齢者だけでなく、安い下宿やアパートに住む学生の被害も多くありました。神戸で被災した人々からは、水や食料がなくて死んだ人はいない、あと十センチ、二十センチのすき間があれば助かったという声が聞かれます。
 この大震災を契機に、多くの震災対策、防災対策がとられてきましたが、「十年後の東京」では、ようやく、建物の耐震化は喫緊の課題として、住宅の耐震化率を今後十年間で九〇%にするとしています。しかし、実際に個人の持ち物である八一年以前の住宅をどうやって耐震化していくのか、これまでほとんど手つかずでした。
 都民が耐震補強を進める上で大きな壁になっているのは、何といっても費用の負担です。危険と診断されても、工事費を考えたら改修ができるかどうかわからず、診断さえも受けないというのが現状です。また、リフォーム詐欺のニュースは後を絶たず、情報不足による不安と不信が、より耐震改修への決断を阻んでいます。
 一般的には、耐震改修工事にかかる平均的な費用は百万円から二百万円というデータがありますが、中には五百万円や一千万円という法外な見積もりが提示されることもあるということです。一般の都民にしてみれば、耐震改修をしたくとも、適切な価格の目安や、補強工事が地震に対してどのくらい効果があるのかわからないと不安です。
 こうした中、中小の企業の中にはさまざまなアイデアがあり、簡便な耐震補強の方法を開発している例が数多く出ています。例えば、平塚市で活動しているNPOの平塚耐震補強推進協議会では、安くて、工事も簡単な、ワイヤーを利用した耐震工法を開発し、市民に広く普及しています。ケース・バイ・ケースですが、補強箇所が三カ所の場合、六十万円弱で工事ができるということです。
 都においても、昨年度、安価で信頼できる耐震改修工法を募集し、三十一の工法を選定しましたが、中小の企業やNPOの中には、まだまだ多くのアイデアや工法が埋もれており、今後ともすぐれた耐震改修工法を選定し、さまざまな機会を通じて普及していくことが重要だと思いますが、所見を伺います。

○柿堺都市整備局長 住宅の耐震化を進めるためには、すぐれた耐震改修工法の技術開発を促すとともに、都民にわかりやすく情報提供することが重要でございます。
 都では、昨年度、安価で信頼のできる耐震改修工法を広く募集し、紹介いたしましたが、都民や企業等からの大きな反響がございまして、改修工事に活用される例も増加しております。
 このため、今年度も募集を行い、近々、選定、公表を行うこととしております。
 今後とも、すぐれた工法の募集を行うとともに、区市町村とも連携して、パンフレットの配布や展示会の開催を実施するなど、幅広く普及が図られるよう努めてまいります。

○山口(文)委員 二〇〇三年の住宅土地統計調査によれば、東京ではファミリー世帯百五十四万世帯、単身世帯二百十四万、夫婦のみ世帯九十七万と、全国に比べて単身世帯が多いのが特徴です。そのうち高齢者世帯は八十六万世帯となっています。
 高度成長期に建設された大規模な公共住宅団地や多摩ニュータウンなどでは、同世代の入居者は一斉に高齢化を迎え、地域コミュニティの低下が懸念されています。また、低家賃のアパートには、若年単身者、ひとり暮らしの高齢者、外国人が多く住むなど、住まいによる人の差別化が進み、住まいの孤立化をつくり出しています。
 低所得者だけではなく、中間層も含めた住宅計画をつくるなど、人口住環境のあり方を住宅政策、総合的なまちづくりの視点でとらえる新たな発想の転換が必要です。
 本年一月に発表された東京都住宅マスタープランでは、本格的な少子高齢社会において、次世代を担う子どもたちを安心して産み育てることができ、高齢者や障害者等が地域社会の中で生き生きと暮らすことのできる環境の整備に向け、民間住宅も含めたセーフティーネットの構築に取り組んでいくとしています。特に、都営住宅においては、入居者の高齢化が急速に進行するなど、コミュニティバランスが低下しています。
 そこで、住宅政策におけるコミュニティバランスに対する都の認識と具体的な取り組みについて伺います。

○柿堺都市整備局長 年齢や世帯構成、所得等に偏りのない、バランスのとれたコミュニティを形成することは、地域活力の維持向上等に寄与するものと認識しております。
 都営住宅などの住宅政策を推進するに当たりましては、政策目的の範囲内で、可能な限りコミュニティバランスに配慮することが重要と考えております。
 具体的には、期限つき入居制度の活用等により、都営住宅への若年子育て世帯の入居促進を図っております。
 また、都営住宅の建てかえに当たりましては、地域の特性や敷地の条件を勘案しつつ、創出した用地を活用して、民間住宅の供給や保育園などの生活関連施設の整備に取り組んでおります。
 今後とも、こうした取り組みを通じて、多様な人々がともに暮らす、バランスのとれた地域社会の形成に努めてまいります。

○山口(文)委員 最後に、東京の位置づけについて伺います。
 東京は千二百六十六万人が暮らすまちであり、世代を超えて、生活する多様な市民の安心と共生のまちをつくることが重要と考えます。
 知事は、東京が日本の頭脳部、心臓部であり、東京が元気になることで日本を牽引するとかねがね発言していますが、地方の状況を見ると、最近は疲弊してきているように思えてなりません。しかし、その地方があるからこそ東京が成り立っていることを忘れてはいけません。食糧も水もエネルギーも、さらに人材までも東京は地方からかき集め、地方の恩恵なしには生活できない都市です。こうした地方との共生についてどのように認識しているのか、知事の見解を伺います。

○石原知事 東京も国から眺めますと一地方であります。しかし、やっぱりこれだけ集中、集積が進みますと、他の道府県と比べての比重というのはかなり重くなっていると思いますが、しかし、なお、つまりその集中、集積、特に人材でありますとか生鮮食品であるとか、その他日常用品、地方の方で支えなかったら、到底その生活というのはもっていかないわけでありますが、しかし、その東京対地方のバランスをとるのは、これは国のやっぱり責任だと思いますね。
 それはやっぱり、例えば、たびたび申していますけれども、つくば新線ができまして、あの周りにあいている広大な関東平野というものをこれからどう使うかというのは、東京や茨城県の問題じゃなしに、国がよほど乗り出しませんと、せっかくのあのアクセスが生きてこないと思いますが、そういう意味では、私はやっぱり、国が思い切って大きな視点で、東京問題も考えながら、日本全体の人口の流動というものを考え直していくべき時期に来ていると思います。

○川井委員長 山口文江委員の発言は終わりました。
 以上をもちまして、付託議案に対する締めくくり総括質疑は終了いたしました。
 お諮りをいたします。
 第一号議案から第二十九号議案まで、第百二十六号議案及び第百二十七号議案に対する質疑は、これをもって終了いたしたいと思いますが、これにご異議ありませんか。
   〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕

○川井委員長 異議なしと認めます。よって、本案に対する質疑は終了いたしました。
 なお、あす、三月七日の午前十一時から理事会を控室一で、また、午後一時から委員会を本委員会室で開催いたしますので、よろしくお願いいたします。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後七時四十四分散会

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