東京都議会予算特別委員会速記録第四号

   午後六時四十一分開議

○石川副委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 中山信行委員の発言を許します。

○中山委員 初めに、食文化を活用した観光振興策について産労局に尋ねます。
 平成十七年三定の私の質問に、知事は、おでんや焼き鳥に感動した外国人バックパッカーの話を引用されました。日本ならではの多様な食文化を観光資源として生かすよう積極的に宣伝していくと答弁されました。私も、日本の食は世界に誇れる文化であり、言葉の壁さえ乗り越えれば、自分で旅を組み立てることが好きな外国人の関心を呼んで、自然のうちにリピーターをふやすと思います。
 昨年の予特でも、我が党の長橋議員が飲食店向けの外国語メニューづくりを提案しました。確かに外国人が多い地域でもまだ外国語メニューまで用意している店は少ないと思います。しかし、食べ物には宗教や習慣などの違いもあります。料理方法など外国人の知りたい情報を取り入れた親切な外国語メニューの作成を促す工夫が重要です。この点の来年度の産労局の取り組みを伺います。

○島田産業労働局長 東京を訪れます外国人旅行者が東京の持つ多様な食の魅力を堪能できるようにするには、わかりやすい外国語メニューの作成が必要であります。また、外国人旅行者の増加が見込まれる中、飲食店のメニューの作成に当たりましては、多言語化や食習慣への配慮がますます求められてきております。
 来年度は、外国人旅行者が多く訪れます築地周辺をモデル地域といたしまして、地元飲食店の協力を得まして、外国人旅行者のニーズに対応した外国語メニューの作成に努めてまいります。

○中山委員 築地の人たちも大変喜ぶと思います。モデル事業でも、その波及効果が大きいと考えます。例えばモデル事業で作成されました外国語メニューをウェブサイトに掲載しておけば、ほかの店もこれを加工して利用することができます。しかし、インターネットになれた経営者が少ないのも現実です。関西地区の同様の取り組みでも、その利用は余り進んでおりません。料理は店舗や料理人によって用いる素材や調理の方法が異なります。メニュー例にそれぞれの店ごとのアレンジを加える手間が必要となっており、負担となっております。
 そこで、モデル事業の活用による外国語メニューづくりの都内店舗への普及を図るためには、都はいま一重踏み込んだ施策を行うべきと考えます。所見を伺います。

○島田産業労働局長 モデル地域で作成した外国語メニューを都内の飲食店に普及していくことは重要と認識しております。このため、モデル地域の外国語メニューをサンプルといたしまして、言語や料理分野別に整理し、各飲食店が外国語メニューを作成できるようウェブサイトに掲載してまいります。
 さらに、地域や団体の協力を得ながら、飲食店の参加を促して研修会を開催し、モデル地域のメニューをもとに、個々の飲食店に応じた外国語メニューをみずから作成する機会を提供してまいります。こうした取り組みを通じまして、多様な東京の食の魅力に対応した外国語メニューの普及を促進してまいります。

○中山委員 インターネットソフトの研修まで行うというきめ細やかな対応に敬意を表します。食の背景には、その国の歴史や伝統があります。日本人のモラルの高さや品格のあるマナー、みずみずしい感受性まで伝えられる観光産業に育てていくべきと考えます。
 次に、観光に関連しまして、都立動物園について質問いたします。
 動物園というと、とかく北海道の旭山動物園が話題になります。そこで、私は先日、上野動物園を訪れてみました。象の水浴びやライオンの生態を間近で見る工夫が凝らされており、迫力を感じました。また、リニューアルされたクマ舎では、生き生きと動くクマの姿を楽しく見学することができました。
 特にツキノワグマは、冬眠をしていて、モニター越しに寝返りを打つ様子などを観察することができます。本来野生動物であるクマに人間の飼育下で冬眠をさせることはとても難しい試みであったと思います。クマ舎の展示に際しての工夫の概要を伺います。

○依田建設局長 恩賜上野動物園のクマの展示では、クマ本来の生態を来園者が観察できるように工夫いたしました。特に冬眠の様子を展示するため、温度調節のできる部屋と冬眠用の小部屋を設け、徐々に温度を下げ、冬の環境にならしていくなど万全な準備を進めてまいりました。その結果、世界初の冬眠展示が実現できました。今後とも、細心の注意を払って取り組んでまいります。

○中山委員 クマの冬眠につきましては、首都大学東京との共同研究の成果に大きな期待が寄せられています。クマは冬眠中も体を動かしており、そのおかげで長い眠りから覚めた後もすぐに体を動かすことができるそうであります。SF映画に描かれる長期間宇宙を旅するロケットの狭い睡眠カプセルは、むしろ非現実的ということらしいです。こうした新しい展示の試みは、多摩動物公園でもオランウータンなどで人気を呼んでおります。動物園の来園者数に工夫の成果はあらわれているのかお伺いいたします。
 あわせて、旭山動物園に負けない、さらに動物と身近に触れ合えるような魅力ある展示施設の充実を期すべきであると思います。今後の取り組みを伺います。

○依田建設局長 平成十五年に約四百万人でありました上野動物園と多摩動物園の来園者数でございますが、平成十八年には四百五十万人に上り、三年間で五十万人増加を見ております。この間、それぞれの動物園でさまざまな工夫をした施設を整備してきました。平成十六年には、恩賜上野動物園において象舎を、また、十七年は多摩動物公園においてオランウータン舎を、十八年には恩賜上野動物公園で先ほどのクマ舎をオープンし、十月からは、ユビキタス技術を活用し、携帯端末により動物の見どころをガイドする本格サービスを開始したところでございます。こうした展示方法などの工夫が来園者数の増加につながったものというふうに考えております。
 また、現在多摩動物公園では、アジアの水辺にすむコウノトリやインドサイなどを展示する新施設、アジアの沼地の整備を進めておりまして、これらの施設は、開園五十周年を迎える平成二十年五月にオープンする予定でございます。さらに工夫を重ね、魅力ある動物園づくりに取り組んでまいります。

○中山委員 具体的に来園者の増加を果たしている点がすばらしいと思います。東京の動物園は、パンダやインド象など国際親善の歴史そのものであります。引き続き職員のアイデアを存分に発揮して、新たな施設整備に反映させ、都民に感動を与える施設であり続けることを要望いたします。
 次に、新たな産業需要の仕組みづくりについて質問いたします。
 平成十六年十一月の地方自治法施行令の改正により、いわゆる政策目的随意契約制度が創設されました。これは新事業分野の開拓につながる中小企業の新製品を地方自治体が随意契約により購入できる制度であります。東京の中小企業には世界的にもすぐれた技術力を持つ者が多く存在しますが、販路開拓に悩む企業が多いのも現実であります。その点、この制度を活用すれば、行政が中小企業のすぐれた新製品を率先して購入し、普及促進することが可能となります。都は、この新制度を積極的に活用すべきであります。取り組みの現状を伺います。

○島田産業労働局長 都におきましては、中小企業の販路拡大に資するため、本年度よりベンチャー技術大賞受賞製品などを対象といたしました政策目的随意契約の認定制度を創設し、現在までに十の商品を認定しております。また、同制度の円滑な運用に向け、各局に対し制度の趣旨を周知徹底するとともに、認定した新商品に関する情報提供を行っております。

○中山委員 新制度に早くも動き出していることを高く評価いたします。今後は、既に開発された新製品への対応だけでなく、行政自身が必要としている新製品や新技術を中小企業に開発させ、それを行政が確実に購入していくという好循環を制度的に構築すべきであります。所見を伺います。

○島田産業労働局長 来年度創設いたします社会的課題解決型研究開発事業におきましては、各局から懸案となっております課題の提案を募り、その解決に資する製品開発を行う中小企業に対し、研究開発助成を行うこととしております。同事業により開発された製品につきましては、提案局がモニタリングを行った上で、政策目的随意契約制度により購入する仕組みを構築してまいります。

○中山委員 今後、社会的課題解決という新たな発想の助成制度に対する産業界の期待は急速に広まっていくと予想します。現に下水道局は、既に公募により民間企業と共同研究を行い、多大な成果を上げております。こうした試みを広げていけば、それまで公共工事に縁のなかった企業も、自社技術の新しい活用の可能性に気づき、ビジネスチャンスに恵まれます。そこで、この試みのより一層の成果を目指すため、社会的な課題を解決できる有益な製品につきましては、都だけでなく他の公的機関や民間企業による活用も含め、広く販路を開拓していくべきと考えます。所見を伺います。

○島田産業労働局長 社会的課題解決型研究開発事業により開発されました製品につきましては、都における購入だけでなく、同種の事業を行う公的機関等へも推奨してまいります。また、民間企業におきましても、活用可能な汎用性のある製品につきましては、ニューマーケット開拓支援事業や海外販路開拓支援などにより、販路開拓を積極的に支援してまいります。

○中山委員 次に、産業人材の育成について質問いたします。
 日銀短観によれば、企業の雇用不足感が一段と強まっております。生産年齢人口の減少や二〇〇七年問題と相まちまして、特に中小企業では人材確保がますます困難になりつつあります。
 一方、昨年度の民間調査でも、求める人材や必要な能力を持った応募者が少ないとの回答を示した企業が六割と最も多く、企業のニーズに対応した産業人材の育成が急務となっております。このような状況を放置すれば、資金や技術力は十分であったとしても、企業にとって最も重要な資源である人材が質的、量的に不足し、東京の産業発展を抑制しかねません。ひいては、国際競争力の低下を引き起こす危険性があります。
 私は、産業人材の量的、質的確保は東京の産業振興を図っていく上で最重要の課題と考えます。今こそ、このような状況を東京の産業の危機ととらえ、中小企業の実態を的確に把握し、抜本的な検討につなげていくべきであると考えます。見解を伺います。

○島田産業労働局長 団塊の世代の大量退職、雇用の流動化など、社会経済状況が大きく変化する中で、多くの中小企業が人材の確保や育成に苦慮しております。特に、ものづくり産業の人材の確保、育成は、技術、技能の継承の困難性や、若者のものづくり離れといった状況も相まって、個別企業はもとより、産業全体にかかわる重要な課題であると認識しております。このため、来年度は、産業界と連携した新たな調査である産業人材育成実態調査を実施し、ものづくり産業における企業の人材ニーズやその確保動向等を把握してまいります。今後、この調査結果を踏まえ、産業実態や企業ニーズに応じた雇用施策や人材育成施策を検討してまいります。

○中山委員 次に、キャリア教育について質問いたします。
 キャリア教育の進展には、職場体験やものづくり体験の導入が不可欠であります。都教委は、本会議等の我が党の要請にこたえ、キャリア教育に必要な地域とのネットワークづくりの具体的成果として、過日、ロータリークラブとの間でインターンシップの受け入れなどに関する協定を締結したと聞きます。その概要に関する質問は省略いたしますが、ともかくその協定により、新たに八千人の高校生のインターンシップの受け入れが可能となったことにその努力をたたえたいと思います。しかし、私は、まだまだ学校による取り組みの差が大きいと心配いたしております。
 一方、産労局が所管する都の技術専門校やしごとセンターでは、地域の企業と連携してインターンシップを実施し、職業訓練やものづくり体験に関する知見が豊富であります。来年度は技術専門校が四つのブロックに再編され、職業能力開発センターが新設されます。そこで、産労局はこれを機に、職場体験企業の紹介やものづくり体験の場の提供に努めるなど、都教委のキャリア教育を積極的に支援すべきであると考えます。見解を伺います。

○島田産業労働局長 都はこれまで、技術専門校で小中高生向けにものづくり教室等を開催し、キャリア教育を支援してまいりました。来年度、都内を四つのブロックに分けまして、それぞれに開設する職業能力開発センターでは、教育機関や業界団体等から成る協議会を活用し、キャリア教育の支援を一層強化してまいります。
 具体的には、工業高校等を対象に実施してまいりました実習講座を学校のカリキュラムに適した内容に充実し、より実践的なものづくり体験の場として提供してまいります。また、職場体験先を探す地域の教育機関に対して、そのニーズを踏まえ、製造業からサービス業まで幅広く企業を紹介してまいります。

○中山委員 ものづくり企業だけでなく、サービス業まで紹介していくとのこと、産労局と都教委との連携の効果に期待いたしております。ごく普通の勤労者が極めて優秀で勤勉であったという点が、かつての日本経済の急成長の要因でありました。その意味から、公立学校が果たすキャリア教育の役割はまことに大きいものがあると考えております。
 私は、さまざまな機会をとらえて、キャリア教育に取り組む都教委の真剣さを広く都民にアピールし、大いに協力を得ていくべきと訴えてまいりました。都教委はその要請にこたえ、過日、キャリア教育に関するフォーラムを実施したと聞きます。キャリア教育フォーラムの内容や運営方法、参加者の人数や反応などをお伺いいたします。

○中村教育長 現在、都内の公立学校では、児童生徒に望ましい職業観、勤労観を育成するために、発達段階に応じまして職場体験やインターンシップなどを通しましてキャリア教育を推進しております。
 お尋ねのフォーラムは、これらの取り組みを広く都民にご理解いただくために開催いたしました。当日は、小中高等学校からの実践報告や、インターンシップの経験者によります座談会、また、経済界、PTA、関係行政機関などの代表によりますパネルディスカッションなどを行いました。
 運営に当たりましては、都立高校生が手づくりで看板やプログラムなどを作成したり、司会、受付案内や会場誘導を行うなど、大きな役割を果たしました。
 参加者は、保護者と子どもを含めた都民が二百名、その他学校関係者、企業関係者などが二百五十名、合計四百五十名でありました。
 フォーラム終了後に行いましたアンケート調査では、多くの都民から好意的な感想が寄せられており、キャリア教育の重要性について理解が得られたものと認識しております。

○中山委員 このフォーラムが、学校ごとの取り組みの特色をいい意味で競い合い、就労の魅力と重要性を自分たちで発見し合う機会に育っていくことを期待いたしております。
 また、キャリア教育の充実を願う者として、ぜひ知事の次回フォーラムへのご参加をお願いいたします。
 さて、今月、足立区にある都立荒川商業高校の模擬株式会社レガロ工房による商業ポスター展が都議会棟の一階ロビーで開催されました。レガロ工房とは、授業の一環として、地元商店街のポスターなどのデザイン、都電のラッピング広告、企画、交渉、販売、財務処理など一切を生徒が切り盛りして行うものであります。隣接する荒川区の商店街からも大変に親しまれております。
 私も昨年、同僚議員とともに学校を訪問し、生徒さんたちと懇談させていただきました。社長も生徒、社員も生徒、すべては生徒の工夫と努力次第という斬新な発想により、生徒の職業意識の向上はもとより、地域への愛着心、そして愛校精神までもが大いに醸成されております。
 都教委は、このような取り組みを他の専門高校にも広げていくべきと考えます。見解をお伺いいたします。

○中村教育長 都立荒川商業高校のレガロ工房の取り組みは、生徒一人一人に望ましい勤労観、職業観を身につけさせ、進路選択の能力や態度を育成する上で大変効果的でございます。
 今後、都教育委員会は、このような取り組みを他の都立の専門高校においても実施できるよう、模擬株式会社の設立方法などを紹介いたしまして、各学校を支援してまいります。

○中山委員 学業テストには当然点数の高低は伴いますが、職業自体には貴賤はありません。さらに、仕事こそは、学校時代の成績にかかわらず、すべての社会人に共通する大切な自己実現の方法であります。そして、高校生活は、卒業後の進路の相違にかかわらず、自分と社会とを結びつける大事な分岐点となります。
 そこで、その高校生活における職業意識の醸成を効果的に進める取り組みの工夫が大切であります。その意味で、私は、荒川商業のようなキャリア教育を生徒主体、地域密着で行う取り組みこそ、普通高校を含むすべての都立高校に共通した新しい魅力づくりのキーワードになると考えております。
 「十年後の東京」の中にも、東京から人材育成システムのあり方を発信するとあります。私は、これからの十年、オリンピックの開催や環境モデル都市への取り組みとともに、この人材育成システムの改革こそが日本の将来を左右する最重要の課題となると考えております。
 産業人材を育てる視点を含め、教育改革を通しての人材育成にかける知事の決意と所見をお伺いいたします。

○石原知事 ご指摘のとおり、いつの時代、いかなる社会においても、最も重要な社会資本は人材であると思います。明治以来我が国の近代化を支えてきた人材育成にやや揺るぎが見え始めている中、日本にとって二十一世紀の重要な課題の一つは、人材育成の再構築といっても過言ではないと思います。このため、「十年後の東京」では、全体を貫く視点の一つとして、東京から新たな人材育成システムのあり方を発信することを掲げました。
 いうまでもなく人材育成の基本は教育でありまして、まずは確かな学力を身につけさせるとともに、地に足のついた確固たる職業意識を形成することが大切であると思います。こうした教育の基本を徹底した上で、東京のものづくり産業を担う人材を育成するため、高等専門学校から産業技術大学院大学までの一貫した技術者育成など、いわゆる複線型育成ルートの構築や現場の教育機関を活用したキャリア教育の推進などによりまして、新たな教育システムを確立することが必要であると思っております。
 東京から、だれもが意欲と能力に応じて多様な可能性にチャレンジできる社会を創出していきたいと思っております。

○中山委員 ただいまの知事のご発言にかなう都庁各局連携の新たな取り組みが一日も早くスタートすることを望んでおります。
 次に、障害者の就労について質問いたします。
 東京における民間企業の障害者雇用率は一・四四%と法定雇用率の一・八%を下回り、全国でも最低水準になっております。雇用率が低いサービス業などが集中するという東京の立地の特殊性はあるものの、障害者の一般就労を拡大させるため、職業訓練や就労支援の取り組みの強化が求められております。
 産労局では、小平の東京障害者職業能力開発校と新宿の東京しごと財団の心身障害者職能開発センターで職業訓練を実施しております。その訓練の内容と就職の実績をお伺いいたします。

○島田産業労働局長 東京障害者職業能力開発校では、身体障害者を対象といたしまして、ビジネス文書の作成、CAD製図などの訓練を実施するとともに、知的障害者を対象として、倉庫管理、配ぜん作業等の訓練を行っております。平成十七年度は、二百七人の訓練生のうち百五十二人が就職しており、就職率は七三%であります。
 また、より重度の方への訓練を行います心身障害者職能開発センターでは、身体障害者を対象としたパソコン操作、簿記などの訓練を実施するとともに、知的障害者を対象としては、店舗の陳列管理等に関する訓練を行っております。平成十七年度は、六十九人の訓練生のうち三十九人が就職しており、就職率は五七%であります。

○中山委員 就職の実績もよく、訓練は障害者の就労に大変に役立っていると思います。私も拝見させていただきましたが、先ほど店舗の陳列管理とありましたが、特に商品を管理する企業のバックヤードを想定したワークアシスト訓練がすばらしいと思います。ぜひこのプログラムの充実を図るべきと考えます。
 仄聞するところでは、養護学校を卒業して就職する生徒の約三割がほどなく退職してしまうそうであります。今後は、やむなく離職した障害者が職業訓練を受け直すことでスキルアップを遂げ、就労に再びチャレンジできる体制の充実が必要であります。その際、障害者やそのご家族からは、できる限り身近な地域で職業訓練を受講させてほしいという要望が多いと聞いております。
 そこで、より身近な地域での障害者の職業訓練について、産労局の今後の取り組みをお伺いいたします。

○島田産業労働局長 障害者の職業訓練を身近な地域で行うことは、通学の負担が軽減されるなど、受講者の利便性の向上につながります。そのため、都は、来年度設置いたします城東職業能力開発センター足立校におきまして、新たに知的障害者を対象とした職業訓練を開始いたします。
 今後は、都における障害者訓練のあり方を検討する中で、他の地域においても障害者向け訓練科目の設置を検討してまいります。

○中山委員 足立校での取り組み、ありがとうございます。
 都は、「十年後の東京」の中で障害者雇用三万人以上の増加という目標を掲げております。その達成のためには、さきの第三回定例会で我が党の質問に対する答弁にもありましたとおり、心身障害者職能開発センターのコーディネート機能を具体的に強化していくことが重要であります。
 そこで、産労局は今後、コーディネート機能の具体的な強化策の一つとして、直接個々の雇用主に対し障害者雇用にかかわる意識を啓発するべきと考えます。所見をお伺いいたします。

○島田産業労働局長 都はこれまで、心身障害者職能開発センターにおいて、企業等を活用した委託訓練、職場体験実習、企業合同説明会などを通じまして、企業と障害者との相互理解を図りながら就業促進に努めてまいりました。
 来年度は、これらの事業の効果をより高めるため、障害者を雇用していない企業や障害者の送り出し側である福祉施設の職員等を対象とした啓発セミナーを新たに開催し、企業就労への理解を促してまいります。
 今後とも、企業等関係者の意識啓発を促進し、障害者雇用の一層の拡大に努めてまいります。

○中山委員 ぜひ啓発セミナーなどの新しい試みが成功するよう、応援してまいりたいと思います。
 一方、都教委は既に、知的障害の程度が軽い生徒を対象とした高等部を三校設置すると発表しております。この四月に都内初となる永福学園養護学校が開校するほか、私の地元の足立区でも足立養護学校がビジネスコースを開設します。
 そこで、十九年度開校の両校の入学希望状況をお伺いいたします。

○中村教育長 永福学園養護学校は、募集人員百名に対しまして、前期、後期合わせて三百二十八名の出願がありまして、倍率が三・二八倍となりました。それから、足立養護学校のビジネスコースは、十六名募集のところ三十六名の出願がありまして、二・二五倍の倍率でございました。

○中山委員 両校とも高い倍率であります。将来の自立を見据えた実践的な職業教育が保護者の共感と期待を集めていると感じます。
 知的障害の軽い生徒を対象とした養護学校には通学区域の指定はありません。しかし、現在の生徒数の増加傾向を考えると、足立区を含む東部地域にも永福学園養護学校と同規模の養護学校の整備が必要と考えます。この点は要望とさせていただきます。
 私は先日、足立養護学校の展示販売会を見学いたしました。生徒が自分で製作した品物を自分で販売しておりました。同校の卒業生は、採用された後も、試し雇用期間の適用すら必要なく、直接本採用に結びつきやすいという学校長の言葉もうなずけるほどの盛況ぶりで、感心いたしました。
 障害児の就労促進のためには、本人の状況に応じた職業訓練にできる限り早い段階から取り組む環境を整えていくことが重要であります。今後、養護学校の関係者は、地域の小中学校に通う障害のある児童生徒の保護者や心身障害学級の担当教員とも交流を深めるべきと考えます。そして、都立養護学校の持てる職業教育の知識や技術を広く地域や小中学校にも活用させ、その啓発を図るべきであります。都教委の見解をお伺いいたします。

○中村教育長 小中学校の障害のある児童生徒の保護者あるいは担当教員が都立養護学校の職業教育を理解することは、児童生徒の将来の社会参加、自立に向け、大変重要なことでございます。
 現在、都立養護学校では、学校公開日等に、児童生徒や保護者、心身障害者学級の担当教員に職業教育の実践を紹介しております。
 今後、さらに、養護学校のセンター的機能を発揮いたしまして、区市町村教育委員会と連携して、地域の小中学校の教員に職業教育に関する研修を実施するとともに、保護者に対しても入学相談時に実践例を紹介するなど、養護学校の職業教育への理解が進む取り組みを行ってまいります。

○中山委員 ぜひお取り組みの充実をよろしくお願いいたします。
 次に、集合住宅の防犯対策について質問いたします。
 昨年から、子どもの投げ落としなど、マンションでの痛ましい事件が相次いでおります。仄聞するところによれば、一昨年のデータで、都内窃盗犯や十三歳未満の児童を対象にした強制わいせつの実に四五%が共同・集合住宅で発生しております。そのため、治安対策本部は、住宅の防犯対策を強化するため、住宅の防犯指針を改正し、来年度、地域防犯モデル事業を実施すると聞きます。
 そこで、モデル事業の概要、加えて都営住宅や公社住宅も対象となるのかという点、あわせてモデル事業の成果の活用方法についてお伺いいたします。

○舟本青少年・治安対策本部長 地域防犯モデル事業につきましては、地域活動が消極的になりがちなマンションなどの住民と町会、自治会との連携を深め、地域の防犯力を高めることを目指しております。都は、都営住宅や公社住宅も含めて、マンション、団地などが多い地域を防犯モデル地域として指定いたします。
 今後、補助事業などを通じまして、防犯カメラ、防犯性の高い建物部品などの普及や住民の自主防犯活動の立ち上げを促進してまいります。
 さらに、モデル事業をてこに、そのベースとなっております、今回改正をしました住宅の防犯指針の普及を図るなど、共同・集合住宅を初め地域の防犯力向上のための施策を推進してまいります。

○中山委員 防犯のための住民組織づくりを都が直接支援するという積極性を高く評価したいと思います。
 特にマンション住民の方々の防犯活動が活発でない事例が多く、そこが地域防犯の弱点となっておりました。また、さまざまな事件で防犯カメラの映像が犯人逮捕の決め手ともなっております。そうしたことから、モデル事業の効果に大いに期待いたしております。
 一方、私の地元の足立区には、都内で最大の三万戸を超える都営住宅があります。都営住宅における防犯への取り組みは、地域全体の治安に直結した重要問題であります。今回、治安対策本部が防犯カメラの効果に着目して普及を図るモデル事業を展開することであり、都市整備局が管理する住宅についても都としての積極的な姿勢を示すべきと考えます。見解をお伺いいたします。

○柿堺都市整備局長 防犯カメラの設置については、都営住宅におきましても居住者の安全・安心を確保する上で有効な手段でございます。設置する際には、建物への出入り口が多い都営住宅の特性を踏まえ、密室性の高いエレベーター内に設置していくことが効果的であると考えております。
 今後、新たにエレベーターを設置する際には、防犯カメラの設置について検討してまいります。

○中山委員 既存の住宅のエレベーターへの対策も重要であります。建てかえまではまだ時間を要する団地も多く、ぜひご検討いただくよう要望させていただきます。
 また、治安対策本部のモデル事業は、都営住宅への防犯カメラ設置も補助対象であること、加えて設置箇所もエレベーター内に限らず補助できることなどを、都市整備局から都住の自治会に対し積極的に情報を提供するべきと考えます。
 都営住宅の自治会も、近年は名義人の半分以上を六十五歳以上が占める団地があるなど、高齢化が進行しております。また、外国人の居住も目立ち始め、日常のコミュニケーションすら困難になりつつあります。自治会という住民組織が弱体化してしまっては、防犯面での地域貢献も果たせなくなってしまいます。
 一方、自主管理を基本とする都営住宅にあって、特に自治会役員の負担になっているのが、生活のルールを守らない人への対応です。耐え切れない悪臭や騒音、言葉の通じない人への説明など、第一義的にはすべて自治会の役員が矢面に立ちます。難題ばかりが多い自治会の役職にはだれもがつきたがらないのが現状です。
 そうした意味で、私は、都住自治会による治安対策の取り組みを強めるためにも、都市整備局が、居住ルールを守らない人への指導などの点において自治会の負担を軽減する支援策を強化するべきであると考えます。
 そこで、供給公社による取り組みの現状と今後の強化策をお伺いいたします。

○柿堺都市整備局長 都営住宅の住まい方につきましては、入居の際、基本的なルールを説明するとともに、随時、居住者向け広報紙で周知しているところでございます。住まい方のルールを守らない居住者に対しては、都が管理を委託している住宅供給公社が自治会等と連携をとりながら是正指導に当たっております。
 現在、事実確認の調査や初期指導などは巡回管理人が行い、その指導に従わない場合には専門の指導員が是正指導に当たっております。さらに、解決が見込めない場合には、都において法的措置も含めて対応しております。
 今後、より適正な管理に向けて、指導員を増員するとともに、具体的な事例に即した指導方法の研修など、指導員の質の向上を図ってまいります。

○中山委員 指導員をふやし、質の向上を図ることは、大変にうれしい朗報であります。今後は、指導員と団地自治会との一層の連携により、自治会活動が効率的に展開されていくことを期待いたしております。
 しかし、中には、既に自治会活動が極端に不活発な状態に陥り、悩んでいる団地もあります。そうした現状を打開し、団地のコミュニティを活性化して、よりよい居住環境を生み出すための積極的な支援策が必要であります。
 そこで、都市整備局は、充実した活動をしている自治会の取り組みを広く取材し、その情報を全団地に提供していくべきと考えます。所見をお伺いいたします。

○柿堺都市整備局長 自治会の活動は団地によってさまざまでございまして、充実した活動事例を広く情報提供することは、その自治会の励みになるとともに、他の自治会の活動を促進する効果も期待できます。
 こうしたことから、都としては、全戸に配布している居住者向け広報紙などを活用して情報提供を行うなど、団地のコミュニティの活性化に努めてまいります。

○中山委員 次に、鉄道立体化事業について質問いたします。
 この三月で東武伊勢崎線竹ノ塚駅付近の踏切事故から二年が経過いたします。この間、足立区は、さまざまな経緯を経て連続立体交差事業の区施行を決断いたしました。竹ノ塚付近の立体化事業は、もともと、私の前任都議である土持先輩が平成元年の一定の一般質問で取り上げた問題であります。都も地元自治体、議会と連携して、施行者の拡大や採択基準の緩和について国に働きかけてきたとお伺いしております。
 その結果、国交省の幹線道路を条件としていた従来の国補助の考え方を是正させ、歩行者や自転車の生活道路も補助対象とさせることになったことが大きく事態を前進させる要因となりました。政府の十九年度予算原案に新規着工準備箇所として盛り込まれるなど、ここまでは順当な進捗ぶりでございます。まさに都区一体となった取り組みで国を動かしました。
 そこで、採択されれば都内では初めての区施行となる今回の事業につきまして、円滑な事業実施に向け、引き続き都が積極的に役割を果たすべきと考えますが、見解をお伺いいたします。

○柿堺都市整備局長 都といたしましては、足立区が設置した検討会への参画や、新規着工準備採択に向けた国との調整などを通じて、これまでも本事業を支援してきております。
 今後とも、都施行による連続立体交差事業の経験を踏まえ、事業段階に応じた技術的支援や関係機関との調整など、積極的に協力するとともに、都市計画決定の手続などを適切かつ迅速に行ってまいります。

○中山委員 勇将のもとに弱卒なしと申します。石原都政の都庁各局は、財政力の弱い足立区の悲壮な決意に思いを寄せていただき、経験や技術面での助言だけでなく、残る最大の課題である財政面につきましても都施行同等の積極的な支援を強く要望いたします。
 次に、区画整理事業について質問いたします。
 東京が高いレベルで成熟していくためには、都心部と周辺区部とのまちづくりとをバランスよく整えていくことが重要であります。区画整理事業はその中心的な役割を担います。地元足立区でも、六町地区、花畑北部地区で都施行により進められております。とりわけ六町駅は、つくばエクスプレスの開業もあり、補助一四〇号線が都道七号線に早く抜けていくことを地元住民は期待いたしております。
 そこで、この補助一四〇号線の整備の見通し、あわせて、整備率が二割と遅い現状もあります、六町地区の区画整理事業の一日も早い完成に向けた決意をお伺いいたします。

○柿堺都市整備局長 六町地区の区画整理区域内の補助一四〇号線につきましては、これまでつくばエクスプレス六町駅の開設に合わせ、駅北側の区間や交通広場の整備を進めてまいりました。一方、駅南側から環状七号線までの約六百メートルの区間については、権利者の移転先の確保が困難なため、その整備になお時間を要する見込みでございます。
 しかし、交通の安全性を早期に確保することは重要であることから、仮移転先に先行取得地を活用するなどの工夫により、歩道を備えた十二メートルの幅員での暫定整備を行っております。
 今後とも、権利者の理解と協力を得ながら、早期の交通開放に努めてまいります。
 次に、六町地区の区画整理事業の進捗でございますが、つくばエクスプレスの導入空間を確保し、新駅を中心とした地域の拠点の形成を図ることなどを主な目的として施行しております。当地区では、これまで多くの権利者の意見調整にきめ細かく対応しながら事業の実施に努めてまいりましたが、六町駅の開設に伴い、駅周辺エリアのにぎわいが早期に創出できるよう、整備の促進が求められております。
 今後とも、円滑な事業の進捗を図るため、必要な財源の確保に努めるとともに、関係権利者の協力を得ながら事業の推進に積極的に取り組んでまいります。

○石川副委員長 中山信行委員の発言は終わりました。(拍手)

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