東京都議会予算特別委員会速記録第四号

○高島副委員長 山口拓委員の発言を許します。
   〔高島副委員長退席、山下副委員長着席〕

○山口(拓)委員 それでは、私はまず、知事の政治姿勢についてお伺いをしてまいりたいと思います。
 皆様もご承知のとおり、各地での知事の逮捕が昨年相次ぎました。これは、地方分権を目指す我が国にとって、あってはならないことであり、危機的な状況にあるともいえます。しかも、その大半が、知事という権力が集中する立場を利用した業者との癒着、また汚職によるものでした。もちろんすべてとはいいませんが、原因の一端として、多選の弊害があることは事実であります。この多選の問題は、ここ近年は各自治体で条例化をされるなど、議論は激化をしているところであります。
 さて、この二十四日に発表されました共同通信社のアンケートによりますと、全四十七都道府県知事全員がアンケートに答えているわけでありますが、こういった弊害があるとするのは二十二人、ないという答えをしたのは六人と、大きく上回ったことが明らかになりました。
 知事は以前、平成十四年第四回定例会において、我が党の和田宗春元議員の、知事の二期目における出処進退や多選にかかわる質問に対して、政策の苗を植え、実ったものもあれば、まだかなり時間がかかるものもあるとし、私は基本的には多選は好ましくないと思いますが、再選は多選とはいえないと思っていますと答弁をされています。
 さて、知事は三期目の立候補を正式に表明されているわけですが、いま一度お伺いをいたします。では、三期目となる今回は多選ではないとお考えでしょうか、お聞かせをいただきたいと思います。

○石原知事 時間のとらえ方は人によっていろいろあると思います。しかし、その一つのメルクマールは、英語でいえばディケード、つまり十年。日本では十年一昔と申しますが、私は十年というのは意味のあるとらえ方だと思います。
 ということは、二選ですと、再選ですと八年、三選ですと十二年あるわけでありますけれども、私はやはり三選が限界だと思いますね。

○山口(拓)委員 難しいところのお答えでしたが、しかしながら、知事のその感覚というか、お考えと、一般市民の感覚というのは、大分かけ離れていることがわかります。
 読売新聞社がことし一月に行った政治に関する世論調査を見ると、都道府県知事の多選を制限する規定を設けるべきかという質問について、そう思うとお答えになった方が約六〇%に上り、九七年の同様の質問では三八%であったことを考えると、以前に比べて多選批判が大変強まったと考えられます。
 また、知事の適当な在任期間については、二期八年までと答えた人が四七%と約半数、続く一期四年だけの一九%を合わせると、二期以下が適当だと考える人は約七〇%近くに上りました。ちなみに、知事が目指される三期十二年までが適当だと考えられる方は、わずか一八%しかおりませんでした。
 ご承知のとおり、知事の権限は、官僚組織に支えられ、人事権、予算編成権、許認可権、補助金の支給など一手に握る、とても強いものです。その強い権限を持つ知事が多選を繰り返すと、周りにイエスマンばかりがふえ、知事自身がみずからの行動を省みなくなりやすいといわれています。
 私たち民主党は、これまで質疑の中で、知事の側近政治に対する批判や身内に対する甘さ、海外出張、会食などにおける公金の使い方などについて一つ一つ資してまいりました。まさに多選の弊害とされるさまざまな問題と同じ問題がこの石原都政に突きつけられ、同様に都民がそれを感じていると考えています。
 今まさに、知事に対して多くの都民から厳しい評価がされているわけでありますが、知事は、こういった厳しい都民の評価やご自身が置かれている状況をどのように認識をされているでしょうか。また、こういった都民の声にはどのようにお答えになりたいですか、お聞かせください。

○石原知事 私は三選表明いたしました。やりかけている仕事がございますから、それをこの手で完遂することが責任だと思います。都民がそれをどう評価するかしないかということは、今度の選挙で問われることと思います。

○山口(拓)委員 私たちは、今回の予算特別委員会を通じて、都政の私物化という、あってはならない運営が、都民が主体であるべき都政においていかに弊害を及ぼしているかということを示したわけでありますが、私たちは、都民の皆様は実に冷静に見ていると思います。
 例えば、ことしの二月の朝日新聞の世論調査発表によりますと、議会や記者会見での発言への印象に、好感を持てないという無党派層が五五%、中でも差別的な発言が目立つと感じられている方が四五%、いい方が威張っているというのが三五%と、厳しい評価でありました。さらに、海外出張や交際費の公金の使途が適切でないという都民は六四%、逆に適切だという方は一九%しかおりません。また、ご子息の問題にも、都民の中で、ご子息の都政関与に、適切だという方はたったの一九%であり、適切でないとされるのは六三%です。知事を支持するという方でさえ、適切でないという都民がそれぞれ過半数を上回っているんです。
 ここまで都民が、知事の運営や発言に疑問や不快感をあらわにしているわけです。ここで、問題点を指摘する結果にもかかわらず、知事はまだ、一つの数字に惑わされずといい切れますでしょうか。やはり都民が疑問に思うこと、すなわち、この予算特別委員会を通じて私たちが伺っているさまざまな疑問に、知事はしっかりと答える説明責任があるはずです。
 知事は、十分にその説明責任を果たしているとお考えですか。この結果を踏まえても、真摯な姿勢で、納得のいく詳しい説明が都民に対してなされているといい切れますでしょうか、知事のご見解を伺いたいと思います。

○石原知事 世論調査の結果は、結果として受けとめますけれども、メディアによっては、私は信用できる筋とできない筋があると思います。
 いずれにしろ、選挙によって、私は都民の声を広く真摯に聞くことが肝要だと思います。
 説明責任ですけれども、私も含めて、局長があれだけ懇切丁寧に具体的に答えているじゃないですか。これ、皆さん、議事録読んでみたらわかることと思います。

○山口(拓)委員 都民が理解ができるかどうかが重要だと私たちは思います。(発言する者あり)確かに、多選の知事でも立派な業績を残されているという方はたくさんいらっしゃいます。しかし、分権社会に突入しているこの時代に、世界の中堅国家と……
   〔発言する者多し〕

○山下副委員長 速記と計測をとめてください。
   〔速記中止〕

○山下副委員長 速記と計測を再開してください。

○山口(拓)委員 確かに、さかのぼってお話をしますと、多選知事でも立派な業績を残されている方も大勢いらっしゃいます。しかし、分権社会に突入しているこの時代に、世界の中堅国家と同じ予算規模を持ち、強大な権力が集中する東京都知事は、多選の弊害といわれるものに対し、常に襟を正しておかなければなりません。
 多選禁止や任期制限を採用している国や地方は、アメリカを初めなど、多々あります。知事もよくお話に出されていたジュリアーニ元ニューヨーク市長も、惜しまれながら、三選禁止のためにその職を去りました。知事には、もう一度冷静にこれまでのあり方をお考えいただき、その批判を真摯に受けとめていただくよう強く苦言を申し上げ、次の質問に入らせていただきます。
 それでは、次に、下北沢駅周辺まちづくりについてお伺いいたします。
 下北沢駅周辺のまちづくりについては、世田谷区が示した地区計画案に対して賛否両論があるということで、たびたび新聞などで取り上げられてまいりました。私の地元の話題でありますから、いろいろな意見があることも、現在どのような状況なのかも承知をいたしております。その上で質問をさせていただきます。
 昨年十月、区の都市計画審議会で地区計画案が了承され、続く十一月、都の都市計画審議会で用途地域変更案が了承されました。その後、現在では、補助五四号線と世田谷区画街路一〇号線の整備について、地元住民への用地買収に向けた説明会が開催されるに至っています。
 ところで、昨年八月三十日付で、一万八千人に上る署名を集めた市民団体から都知事あてに、補助五四号線事業認可の見送りと計画の見直しを求める要望書が提出をされていると思いますが、その要望内容についてお伺いいたします。

○柿堺都市整備局長 要望の趣旨は二点でございます。
 一点は、都市計画道路補助五四号線及び区画街路一〇号線の事業認可の見送りについてでございます。
 二点目は、新しい話し合いの場をつくることを世田谷区に指導し、市民案を議論の机上にのせて、補助五四号線、区画街路一〇号線及び下北沢駅周辺地区地区計画を柔軟に見直すことについてでございます。

○山口(拓)委員 では、その大きく二つの要望について、都はどのように受けとめて、どのように対応したのでしょうか、お伺いをいたします。
 また、要望者である市民団体に対してはどのような対応をされたのか、あわせてお伺いをいたします。

○柿堺都市整備局長 一点目の補助五四号線等の事業認可の見送りについてのご要望は、ご意見の一つとして承っております。
 この事業認可につきましては、都は、事業者である世田谷区からの申請を受けまして、都市計画法の規定に基づき審査を行ったところ、適正であったため、昨年十月十八日に認可を行いました。
 なお、本件については、同日付で「東京都公報」により告示を行っていることから、個別の通知は行っておりません。
 次に、要望の二点目につきましては、対象となっている道路事業や地区計画の主体が世田谷区であることから、本要望内容について同区に通知したところでございます。

○山口(拓)委員 都市整備局の場合、こうした個別の具体的な要望書が一般都民や団体から提出されることも多いと思いますが、こういった要望書に対しては、都市整備局としては一般的にどのように事務処理をされているのでしょうか、お伺いをいたします。

○柿堺都市整備局長 要望書につきましては、所管する部署において要望内容を確認いたしまして検討を行うとともに、事柄に応じ、取り扱いについては適切に対応しております。

○山口(拓)委員 昨年十一月十日付で、やはり都知事あてですが、日本建築学会の都市計画委員会から、都市計画補助五四号線の認可及び下北沢駅周辺地区の用途変更に関する要望書というものが提出されているはずですが、その要望内容についてお伺いいたします。

○柿堺都市整備局長 要望の趣旨は二点でございまして、一点目は、補助五四号線の事業認可について再考し、世田谷区への差し戻しも視野に入れた慎重な検討をお願いしたい。
 二点目は、下北沢駅周辺地区における用途地域変更についても、地元における十分な合意形成の結果を待つようにお願いしたい。
 また、本要望に対する回答をいただきたいというものでございました。

○山口(拓)委員 要望書の提出の時期が違うということもあって、先ほど伺いました市民団体からの要望とは、細かな部分では若干異なっておりますが、基本的には同じことを求めているんだというふうに理解できます。
 では、先ほどの市民団体からの要望書と同様に、この日本建築学会からの要望書の内容について、都としてどのように受けとめ、どのような対応をしたのか、お伺いをいたします。
 また、要望者である日本建築学会に対してはどのような対応をしたのか、あわせてお伺いをいたします。

○柿堺都市整備局長 一点目の補助五四号線の事業認可につきましては、先ほどもお答えいたしましたけれども、要望書が提出される前の昨年十月十八日に認可を行っております。
 また、二点目の用途地域につきましては、世田谷区は、当地区の特徴や資源を生かし、まちの魅力をさらに発展させるとともに、防災性の向上を図るなどの観点から地区計画の案を作成いたしました。
 区は、この案と一体となる、都が作成した用途地域の変更案とあわせて、説明会や意見交換会で多くの区民の意見を聞くとともに、広く周知に努めてまいりました。
 これらを勘案し、都は、都市計画審議会での議決を経て用途地域を変更いたしました。
 また、要望者に対しては、担当者が直接面会し、回答したところでございます。

○山口(拓)委員 建築学会の要望書が東京都に提出されたのは、下北沢駅周辺地区の用途地域変更案が都の都計審で審議される一週間前、要望内容から察するに、都計審での審議に入る前に検討してくださいという趣旨のものであったと思うわけです。それも、学会あてにきちんと回答をくださいというものであったわけです。
 それにもかかわらず、都が回答したのは、資料要求でもその回答書の写しを出してくださいとさせていただきましたが、要望書提出の一カ月後、都計審の審議も終わってずっと後のことで、しかも文書ではなく、口頭による回答でありました。
 冒頭の質問では、要望書を提出した市民団体にはどのように対応したのかということをお聞きしましたが、特段リアクションをされた様子もありません。こうしたことでは、行政に対する信頼感が損なわれかねませんということをここに指摘せざるを得ません。
 いずれにせよ、こうした要望書提出の動きがあった中で、区や都による都市計画の変更が決定されたわけです。ちなみに、昨年十月の区の都計審についての新聞報道を見ますと、怒号の中、採決と表現されています。そして、審議会の会長が審議終了後に、審議の中立性を疑うと述べたということであります。
 採決の結果については、賛成九、反対五であったわけですが、東京都の元技監を除き、出席した都市計画の専門家が全員反対をいたしております。また、欠席された法学者の方は、反対の意見を文書として提出しておりました。事実上、賛成九、反対六ということになり、四割もの反対意見があった。こうした中での採決結果であったということは、私たち皆が事実として受けとめなければいけないことだと思います。
 法手続上の瑕疵はないということは理解をしておりますが、今なお、この都市計画決定に対して納得のいかない方たちがたくさんいらっしゃるということを念頭に置きながら、今後の下北沢駅周辺のまちづくりを進めていただくよう意見を述べまして、次の質問に移らせていただきます。
 それでは、子どもにかかわる緊急的な課題について数点伺わせていただきます。
 まずは、小児救急医療対策についてお伺いをいたします。
 救急病院の現状は、小児医療の危機の問題が、ここ数年、頻繁に話題として取り上げられています。しばしば論点とされるのは、子どもを二十四時間体制で診療する救急病院に、夜間おびただしい数の患者が殺到し、疲れ切った小児科医が一人、また一人と病院を去り、残されたスタッフは、さらに過酷な状況下で診療を余儀なくされる小児科の実態が報道されています。
 夜間に子どもが急病にかかり、救急病院を訪れ、一時間、二時間の診療待ちとなる状況は、また小さな子どもたちを持つ親にとっても、そして、ぐあいが悪く苦しんでいる子どもたち本人にとっても大変つらい状況であるといえます。
 また、病院の小児科の先生に何人かお話を伺ったところ、多くの病院では、夜間の多数の救急患者に当直の医師一名で対応せざるを得ない状況にあり、その背景として、小児科医の不足とともに、小児科診療の不採算性が高いということでありました。
 医師の養成や診療報酬の改善は、小児医療が抱える諸問題を解決するために不可欠であります。本来、これは国の責務でありますが、都はこれまでも、小児科医の養成や診療報酬の抜本的改善を重点的に国に要求してきたと聞いております。引き続き、国に対して働きかけを行うことを強く要望いたしておきます。
 そして、長期的な視野に立った医師の養成や小児科診療の不採算性の改善は重要でありますが、東京都として、現在の状況下でできる限り効果的な仕組みづくりを進めることも重要であります。
 夜間に急に子どものぐあいが悪くなったときに診療してもらえる医療機関が確保されていることは、親の立場にとって切実な要求でありますが、夜間の小児の救急診療の確保に関する東京都の取り組み状況について、まずお伺いをいたします。

○山内福祉保健局長 都は、夜間、休日の小児救急診療を確保するために、入院治療も可能な二次救急医療機関を現在四十七施設指定しております。
 しかし、来院患者の多くは、入院を必要としない軽症な患者であるため、都は、区市町村が実施する小児初期救急事業についても独自に支援を行っております。
 現在、二十九の区市で実施されており、引き続き、都内すべての地域で小児初期救急体制が整備されるよう取り組んでまいります。

○山口(拓)委員 夜間に救急病院に患者が殺到してしまう、もう一つの側面としては、子どもの急病時の親の不安があります。少子化、核家族などの影響もあり、祖父母など相談ができる相手が身近にいないなどの理由から、子どものぐあいがにわかに悪くなった際、不安に駆られ、大きな病院に駆け込んでしまう例は少なくないはずであります。
 率直にいって、親の立場として、受診すべきなのか、様子を見るべきなのかわからない、判断がつかないことは私も非常に多いです。このような親の不安を完全に解消することは難しいですが、不安の軽減に向けた知識の付与や相談体制の整備などが必要ではないかと考えます。
 私の地元世田谷区では、子どもの病気に関する知識の普及啓発や、区が実施している初期救急事業の活用などについての情報提供を行う事業を実施した実績もございます。この中では、ガイドブックの頒布や、保育園などに出向いてのミニ講座の開催など、地域に密着した形で住民に直接働きかける草の根的な事業も実施をしております。
 子どもを持つ親の不安を軽減するために、東京都としてどのような取り組みを行っているのか伺います。
 また、例に挙げたような区市町村の主体的な普及啓発の取り組みについても、都として積極的に支援をするべきでないかと考えますが、いかがでしょうか。

○山内福祉保健局長 都では、子どもの病気やその対処方法などの情報をインターネットで提供する、全国初の東京都子ども医療ガイド事業や、子どもの急病時に保健師等が相談を受ける小児救急電話相談シャープ八〇〇〇番を実施しております。
 さらに、区市町村が地域の実情を踏まえ、主体的に普及啓発に取り組む場合、新たな包括補助事業を活用できるようにし、きめ細かな支援を行ってまいります。

○山口(拓)委員 今、新たな包括補助事業を活用できるようにという言葉もありました。具体的な施策を今まさに親は待っています。小児救急医療、とりわけ夜間の小児救急体制を確保するには、二次救急を担う中核的病院、地域の医師会、その他の病院勤務医など、地域の小児科医が力を合わせて小児救急医療に取り組む仕組みづくりが必要であり、それとともに、親である私たち自身も、子どもの体や病気について日ごろから学び、地域で子どもを守り育てていくという強い気持ちが必要であると思います。
 都や区市町村は、行政として、そうした地域の取り組みに十分な支援を行うことを強く要望いたします。
 続けて、今お話をした小児救急医療体制にせよ、また、これから後ほどお話をする保育にせよ、すべての施策の基礎となる次世代育成支援東京都行動計画についてお伺いをいたします。
 東京都は、平成十七年四月、次世代育成支援対策推進法に基づき、次世代育成支援東京都行動計画を策定いたしました。この計画は、子どもと子育て家庭全体を総合的に支援するもので、地域で安心して子育てができる新たな仕組みづくりや、仕事と家庭生活との両立の実現など五項目の目標を掲げ、東京都の施策と区市町村への支援策を盛り込んだ東京都における地域行動計画となっています。
 一方、我が国は、平成十七年、初めて総人口が減少に転じていく人口減少社会を迎え、合計特殊出生率も一・二六と、過去最低を更新いたしました。中でも東京は一・〇〇と、全国最低の状況が長く続いております。
 子どもを産む、産まないは個人の問題であり、施策を何か一つしたからといって、すぐさま出生率が上がるわけでないということは理解をいたしております。
 しかし、子どもを産み育てたいという人たちが安心して子育てをし、子どもたちを健やかに育てることができる環境を整えていくということは、社会全体で取り組まなければいけないと考えますし、その結果として、子どもを産みたいと思う人もふえていくのだと思います。
 現状として、平成十六年の合計特殊出生率の数値一・〇一が、十七年には一・〇〇になったということは、やはりまだまだ子育て支援のための環境整備に課題があるのではないかと考えます。
 そこで、まず現状について伺いますが、次世代育成支援東京都行動計画が策定をされてほぼ二年がたちます。次世代育成支援に関する取り組みを都がどのように行ってきているのか、主な施策とこれまでの実績についてお伺いをさせていただきます。

○山内福祉保健局長 行動計画の推進に当たっては、すべての子どもと家庭を対象に、大都市東京のニーズと特性を踏まえた支援を行うことなどを基本的な視点としております。こうした考え方に基づき、都は、全庁を挙げて次世代育成支援の取り組みを推進しております。
 大都市の多様な保育ニーズに対応した都独自の認証保育所は、平成十三年度の制度創設以来、三百五十カ所、利用定員約一万五百人にまで達しております。
 子どもと家庭に関する地域の相談拠点である子ども家庭支援センターは、全区市町村の約九割に当たる五十六区市町村で設置が進んでおります。
 また、児童相談所の児童福祉司の大幅な増員や、養育家庭、グループホームによる家庭的養護の拡充など、虐待や非行等により特別な支援を必要とする子どもたちへの施策の充実にも努めております。
 このほか、福祉保健分野にとどまらず、東京しごとセンターにおける若年者の就業を支援する取り組みや、都立高校における奉仕体験活動の必修化に向けた取り組みなど、あらゆる分野での取り組みを積極的に推進しております。

○山口(拓)委員 次世代育成支援を進めていく上で、仕事と家庭の両立というものは不可欠だと考えますが、これについても、取り組みはまだ一向に進んでおりません。
 例えば都内の企業、とりわけ多くを占める中小企業では、次世代育成支援の取り組みが遅々として進まないのが現状です。結婚し、子どもを持とうという二十代から三十代の若い世代が一番遅くまで残業している。あるいは、子どもが産まれるのに育児休暇をとれないなどというようなことは、今でもよく聞く話であります。
 仕事と家庭生活の両立は、何も女性に限ったことではありません。最近では、子どもを抱いている父親をよく電車などでも見かけます。家事や育児を仕事より優先したいという希望を持つ父親もかなりいるはずです。
 東京都として、企業も含め、社会全体で次世代育成支援の取り組みをしていくよう啓発をし、機運を盛り上げていくべきと考えますが、所見を伺います。

○山内福祉保健局長 子どもたちが健やかに育つ環境を整えることは、社会全体で取り組むべき重要な課題であります。
 都では、企業の取り組みを促すため、今年度、次世代育成に積極的に取り組む企業の公表等を行う、とうきょう次世代育成サポート企業登録制度を新たに創設いたしました。
 また、広く都民を対象として、昨年度は仕事と家庭生活の両立、今年度は男性の子育て参加をテーマとしたシンポジウムを、関係各局が連携し、企業や大学などの協力を得ながら進めております。
 こうした行動計画に基づくさまざまな取り組みの成果は、都のホームページ等で都民にわかりやすく公表する予定でございます。
 今後とも、都民や企業などの協力を得ながら、各分野での取り組みを一層推進し、社会全体で次世代育成支援に取り組む機運を高めてまいります。

○山口(拓)委員 これから、さらに具体的な施策を必要とされておりますし、この計画の中には、さまざま細かいところまで施策が書き込まれております。こういったことを一つ一つしっかりと実践をされなければ、この少子化の問題や子育ての問題が解決をすることはありません。どうか積極的に取り組んでいただきたいと思います。
 また、この中でも保育の問題、こういった子どもを持ちたいと希望する人たちがそれぞれちゅうちょする原因を一つ一つ解決しなければいけないわけでありますが、基本的には国において、子育てを、年金、医療、介護とともに、社会保障分野における四つの主要分野として施策を確立すべきというより、させなければいけません。つまり、民主党が主張しているように、現在はばらばらで細切れの少子化対策を一本化して、子ども家庭省を創設、社会全体で子育てを支える仕組みづくりが必要とされているのです。もっといえば、今やらずして、いつやるのかとすらいえるのです。
 さて、この少子化対策は、すべて国任せではなく、東京都においてもしっかりと、かつ具体的に進めていかなければいけません。
 石原知事のもとで実施をされた認証保育所では、平成十八年四月現在で、定員九千六百八十一名、約三百二十三カ所が整備をされています。また、認可保育所も、定員で七千七百九名、六十カ所がふえています。合計で一万七千三百九十人の定員がふえています。
 子どもの数は、年によって約千人の増減はありますが、ほぼ横ばいです。つまり、待機児童だけが保育ニーズであるとすれば、あえて単純に申し上げますと、保育所の整備が進んだ現在、待機児童はゼロになっているはずです。しかし、現実にそうなっていないのは、保育所の整備が呼び水となり、潜在的児童の顕在化が起こっているためといわれています。
 例えば、二〇〇四年に内閣府が行った調査に基づく試算によれば、東京都の潜在的児童数は約七万人といわれています。私は、こういった潜在的待機児童にもしっかりとした対応をされていくべきだと考えます。そのためには、まず、潜在的児童などのニーズがどれだけあるのか、東京都として正確に把握をしなければいけません。
 そこで伺いますが、都としては、待機児童として数にあらわれている以外の多様な保育ニーズについてどのように認識をされていますか、伺います。

○山内福祉保健局長 都はこれまでも、認可保育所の設置促進を図るとともに、独自の認証保育所制度の創設など、多様な保育ニーズに的確に対応することによりまして待機児童の解消に努めてまいりました。
 しかし、待機児童数は、ほぼ横ばいで推移し、減少していないのは、女性の社会進出や就労形態の多様化等により、新たな保育ニーズが呼び起こされているためと認識しております。
 また、大都市東京では、核家族化等によりまして、子育て家庭の負担の増大などから、一時保育や病後児保育、休日保育など多様な保育ニーズが存在していると考えております。

○山口(拓)委員 今お答えをいただいた中にも、潜在的待機児が含まれているわけです。早急に把握に努めて対策をしていかなければいけません。
 また、待機児童として申請をすることをあきらめている、保育に欠けるが潜在をしているニーズ、今は家庭で子育てをしていて保育に欠けないが、受け皿があれば職場復帰したいなどのニーズも含まれています。こういった多様なニーズに対してはどのように対応するお考えでしょうか。

○山内福祉保健局長 増大する大都市特有の多様な保育ニーズに対応するためには、保育の実施主体であり、地域の子育て支援の中核を担っている区市町村の柔軟かつ的確な取り組みを促す必要がございます。
 このため、地域の実情に応じた施策展開が可能となるよう、今年度新たに、子育て推進交付金や子育て支援基盤整備包括補助制度を創設しまして、区市町村の創意工夫による自主的な取り組みを積極的に支援しております。

○山口(拓)委員 核家族化が進み、地域社会のありようも変化をしている現在、ほとんどすべての子育て家庭が何らかの保育ニーズを抱えているといってよいでしょう。こういった多様なニーズに迅速にこたえていくためにも、新たな仕組みが必要です。
 しかし、認可保育所以外の保育サービスは、国の補助金の対象とならないため、料金が高額で、そのためにも、保育サービスを利用したくてもできないという人がたくさんいます。こういった負の連鎖に陥っている状況があるわけです。
 私たちは、かねてより保育バウチャーの導入を提唱してまいりました。バウチャーというと、昔の現金ばらまきを連想される方が多いかもしれませんが、しかし、IT企業の進展によって、個々のニーズの度合い、経済状況に応じたバウチャーを付与し、認定されたサービスを利用することは、そう難しいことではありません。
 昨年、一昨年の答弁では、なお検討すべき課題が多いというものでしたが、ぜひ実施に向けて取り組むべきと考えます。これまでの検討結果と都の認識をお伺いいたします。

○山内福祉保健局長 バウチャー制度には、利用者の満足度を高め、事業者の競い合いを通じてサービス向上を図れるという効果があるとされております。
 しかし、これまでも繰り返し答弁してまいりましたけれども、現在の施設に対する補助の見直し、児童手当制度との調整、低所得者に配慮した利用方式など、実現には多くの解決すべき課題がございます。
 また、仮にこの制度を導入するとしても、保育サービスの大宗を占める認可保育所制度において、利用者が施設と直接契約する方式の導入など、国において抜本的な保育所制度の改革が行われることが前提であると考えております。

○山下副委員長 山口拓委員の発言は終わりました。(拍手)
 この際、議事の都合により、おおむね三十分間休憩いたします。
   午後六時四分休憩

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