東京都議会予算特別委員会速記録第四号

○川井委員長 串田克巳委員の発言を許します。
   〔委員長退席、高島副委員長着席〕

○串田委員 障害者就労支援について伺います。
 昨年四月に、障害者自立支援法及び改正障害者雇用促進法が施行され、障害があっても働ける社会づくりに向けて制度の枠組みが整備されました。
 「十年後の東京」では、障害者雇用の三万人以上の増加を目指すとともに、福祉施設の経営改革を支援するとしており、時宜にかなったものといえます。
 数値目標を掲げ、全庁横断的に取り組んでいくことは、障害のある方が就労により可能な限り経済的自立を果たし、尊厳を持って生きることにつながり、非常に有意義であると考えます。しかし、民間企業の法定雇用率については、残念ながら東京では過去一度も達成していません。
 このチャレンジともいうべき高い目標達成には、東京都を初め、国、区市町村、企業等の連携による精力的な取り組みが必要であると考えます。
 そこで、障害者雇用促進に総合的に取り組む意義と、実現に向けた知事の決意をお伺いいたします。

○石原知事 障害者の雇用促進に取り組むことは、障害者が尊厳を持って、みずからの人生を決定できる足場を築き、一人一人が持つ人間としてのはかり知れない可能性を引き出すことになると思います。
 東京では、全国の三分の一を超える十万人の障害者が民間企業に雇用されていますが、法定雇用率を達成している企業は残念ながら三割を切っております。
 多様な企業が集中、集積する東京が、具体的な数値目標を掲げて障害者雇用に取り組むことは、東京のみならず、日本の社会全体の障害者の自立と社会参加を大きく前進させることになると思います。
 このため、「十年後の東京」では、三万人以上の雇用創出という目標を打ち出しまして、福祉・保健、教育、労働の各分野の協力はもちろん、企業や雇用支援機関などと連携を含め、身近な地域での職業訓練や障害者の雇用、就労を促進する人材の育成など、障害者の自立に向けた多角的な取り組みを示しました。
 東京の持つ強みを生かし、障害の有無にかかわらず、だれもが地域で安心して暮らせる社会を実現していきたいと思っております。

○串田委員 民間企業に一層の努力を求めていくには、企業のインセンティブ策はもちろんですが、まずは、都から率先的な取り組みを行うべきと考えます。障害者雇用に積極的な企業や、経営改革に取り組む福祉施設等の受注機会を拡大するなど、都の契約面での新たな取り組みを要望しておきます。
 次に、精神障害者に対する医療施策について伺います。
 障害者自立法により、身体、知的、精神の三障害は同一の体系に基づくサービスの利用が可能になり、また、他の二障害に比べておくれているといわれていた精神障害者の福祉サービスについても一層の充実が図られていくものと期待しています。
 ところで、精神障害者は病状が変化しやすく、退院して地域生活に移行してからも、地域の精神科医療機関と緊密に連携して病状の安定を図る必要があり、そのような特性に十分に配慮した施策の推進が望まれます。
 そこで、まず、精神障害者の医療についてどのような認識をお持ちであるか、福祉保健局長にお伺いいたします。

○山内福祉保健局長 都は、これまでも、低所得世帯に対する通院医療費の助成を独自に実施するとともに、三百六十五日二十四時間対応可能な精神科救急医療体制を整備するなど、精神障害者の医療の中断を防止するための取り組みを行ってまいりました。
 ご指摘のとおり、疾病と障害をあわせ持つ精神障害者の特性として、病状が変動しやすく、状態に応じた対応が必要になるなど、精神障害者が安定した地域生活を送るためには、継続的な医療の確保が不可欠であると認識しております。

○串田委員 継続的な医療の確保のために、都としてきめ細かな対応をされているとのご答弁ですが、いわゆる社会的入院、精神障害者の退院に当たっても、そのようなきめ細かな対応が必要と思います。
 いわゆる社会的入院の状態にある精神障害者は、全国で約七万人、都内では五千人に及ぶといわれていますが、これらの方々が地域で安定して生活を営むことができるようにしていくことが、精神障害者保健福祉施策の大きな課題となっております。
 十九年度予算では、重点事業の一つとして精神障害者の退院促進支援事業があります。この事業は、病状が安定して、受け入れ条件が整えば退院可能な精神障害者の退院を促進し、入院医療中心から地域生活中心へという精神保健福祉施策の大きな流れを具体化する重要な取り組みであると思っております。退院支援促進事業においては、退院後の精神科医療をどのように確保していくか伺います。

○山内福祉保健局長 精神障害者の退院促進支援事業は、いわゆる社会的入院の状態にある精神障害者の方に対しまして、退職後の医療や住まいを確保するなど、地域での生活への移行を支援することによりまして、安定した地域生活の実現を図ろうとする取り組みでございます。
 このうち、お尋ねのあった退院後の医療の確保につきましては、地域活動支援センターや保健所、医療機関等で構成する地域生活ケア会議におきまして、個々人の状況に応じた支援計画の中で定めております。
 これに基づきまして、地域生活サポーターによりまして、外来受診への同行や服薬管理などによりまして、病状の悪化や医療中断の防止を図っております。

○串田委員 地域社会復帰施設の不足や社会の精神障害者に対する偏見などもあり、精神障害者の社会復帰がなかなか進まないという状況があります。これらはすぐに解決できるものではありません。行政と医療機関がこれまで以上に協力して、東京の精神科医療の質の向上や医療サービスの充実に取り組んでいくことが必要であります。
 都では、障害者自立支援法に対応して、執行体制確保のため、三障害一元化を図り、機能別に組織の再編成が行われ、医療分野については、精神保健・医療課を設置する予定と聞いております。
 これまでも、精神保健福祉施策については、専門家をスタッフに置くなどして執行体制の強化を図ってきています。しかし、医療関係者の間でさえ、精神障害者に対する理解は十分とはいえない現状では、精神科医療の専門家である精神科医をより一層活用し、精神障害者施策の執行体制の一層強化が必要だと考えますが、所見を伺います。

○山内福祉保健局長 福祉保健局におきましては、これまでも、精神科医師を初め、保健師や精神保健福祉士など専門職の知見を活用するとともに、本庁や精神保健福祉センター、保健所などが連携しまして、精神障害者の特性を踏まえた施策の推進を図ってきたところでございます。
 今後も、ご指摘のような視点を踏まえながら、ニーズに応じた適切な執行体制を確保し、精神障害者施策の一層の充実に努めてまいります。

○串田委員 ぜひ医療機関とも連携をとって頑張っていただきたいと思います。
 次に、土砂災害対策について伺います。
 昨年も、集中豪雨により、九州の各県を初め、近くの長野県諏訪湖周辺で土砂災害が発生し、二十五名にも及ぶとうとい人命が奪われています。幸いにして、東京では、ここ十年以上人命が奪われるような大規模な土砂災害は発生していませんが、いつ異常な豪雨が多摩地域の山間部に降らないとも限りません。
 都内で土砂災害の可能性がある危険地域に生活している都民は十八万人ともいわれております。都では、土砂災害を防止する砂防ダムなどの対策も進められていますが、危険な地域に対してすべてハード対策を施していくには、膨大な時間と費用がかかります。
 私は、昨年の第三回定例会において、こうした考えに基づき土砂災害対策について質問し、建設局長から、人的被害防止のため、警戒区域の指定と警戒情報の提供が不可欠、また、避難所の安全確保が重要な課題との答弁がありました。さらに、今回の定例会で、今後十年間の主要な目標として、速やかな避難体制の確立のため、警戒区域指定などソフト対策の構築と避難所の安全対策の設定が明らかにされました。
 そこで、これらの目標に向かって、いつまでに、どのように事業を進めていくのかお伺いいたします。

○依田建設局長 土砂災害から都民の命を守るためには、お話の警戒区域の指定など三つの施策を実施することが重要でございます。
 まず、警戒区域につきましては、航空測量により調査箇所を抽出し、現地の詳細調査などに基づき、指定案を作成し、住民説明を経て指定いたします。
 都は、平成十八年度末までに約三百六十カ所の指定を行うとともに、危険箇所として想定されている残りの約七千五百カ所についても、調査結果を踏まえ、西多摩地域から順次指定を進め、平成二十六年度の完了を目指してまいります。
 次に、避難の目安となる警戒情報につきましては、都内全域を百二十八のブロックに区分し、危険な状態となったブロックに対して、気象庁と連携し、発表していきますが、この情報は、平成二十年から報道機関と関係区市町村へ提供してまいります。
 さらに、避難所の安全確保につきましては、区市町村と調整し、斜面の安定を図る防災工事などを、平成二十七年度の完了を目指し、緊急度の高い箇所から重点的に進めてまいります。

○串田委員 警戒区域の指定が西多摩地域を中心にここ数年のうちに実施されることは、土砂災害から生命を守るためには極めて有効であり、早急に進めていただきたいと思います。
 一方、こうした地域は、高齢化や人口減少が進み、地域振興策に苦慮している厳しい現実があります。さまざまな地域社会の課題に苦悶している中で、警戒区域の指定は土地の値段が下落するという声もありますが、地域社会の発展には安全・安心が第一であると思います。
 このような状況の中で、区域指定を拡大していくには、地元区市町村との十分な連携が何よりも重要と考えますが、今後、どのように連携を図っていくのかお伺いいたします。

○依田建設局長 警戒区域の指定箇所を拡大していくためには、地元の理解と協力を得ることが重要でございます。
 このため都は、地形や土地利用状況などを把握する基礎調査から、区域指定に至る各段階で、地域の現状や区域指定の必要性などについて、地元住民の理解が得られるよう、きめ細かく説明しております。
 これらの説明に当たっては、地域を熟知し、身近な行政を行っている区市町村と連携し、円滑な区域指定に努めております。
 引き続き、避難の目安となる警戒情報の提供や、避難所などを記載したハザードマップの作成支援などを通じて、区市町村とより緊密な協力体制を確立し、警戒区域の指定に努めてまいります。

○串田委員 ところで、都はこれまでも、土砂災害の危険が差し迫っている箇所は、災害防止施設の整備を行うなど適切に対処していますが、今後、広範な現地調査が進められる中で、緊急な対策が必要な箇所が明らかになった場合の対応についてもお伺いいたします。

○依田建設局長 都はこれまでも、がけ崩れや土石流の危険が高く、土砂災害対策が必要な箇所について、順次、砂防ダムやがけ崩れ防止施設の整備を実施してまいりました。
 今後、実施していく現地調査において、斜面の大きな亀裂など大規模な災害のおそれがあり、緊急対策を施す必要が判明した箇所につきましては、関係自治体と連携し、緊急防災工事を実施するなど適切に対応してまいります。

○串田委員 わかりました。東京都議会でも平成十九年度から地すべりがけ崩れ対策道県協議会へ加入する予定であり、都の取り組みを支援していくこととしています。今後とも、都民の命を守るため、土砂災害対策の一層の推進を強く要望します。
 次に、道路の土砂災害対策への取り組みについて、具体的に伺います。
 都が管理する多摩地域の道路は、地域の幹線道路であるとともに生活道路ともなっています。土砂災害等が発生した場合は、通行どめになり、生活物資の輸送に支障を来すなど、日常生活に及ぼす影響は甚大であります。
 昨年五月に奥多摩町境地区の都が管理する国道四一一号に面した石積み擁壁が崩落し、住民の生命線である国道が全面的に通行どめになりました。迅速な応急復旧により、同日中に交通が確保されましたが、八王子市や奥多摩町などの多摩地域を中心に、都内には同様な構造の石積み擁壁が数多く存在しております。
 このような箇所についても、道路の機能を確保し、都民が安全に通行できるように、早急に対策を実施する必要があると考えますが、所見を伺います。

○依田建設局長 都はこれまで、定期的に石積み擁壁等の点検を行い、危険箇所の災害防除などの対策に取り組んでまいりました。
 しかし、昨年、奥多摩町で石積み擁壁の崩落があったことから、改めて都内全域で緊急点検を行った結果、擁壁の形状に変化があるなど緊急に対策が必要な二十七カ所と、安全対策が必要である約百カ所が判明いたしました。緊急対策が必要な二十七カ所につきましては、既に工事を実施しており、平成十八年度中に完了する予定でございます。その他の約百カ所は、都の重点事業に位置づけ、早急に対策を実施していくこととし、まず平成十九年度は八王子市や奥多摩町などで対策工事を行います。
 今後、今回の奥多摩町での経験を踏まえ、点検内容を充実し、災害の発生を未然に防止するとともに、多摩地域に暮らす都民の安全確保に努めてまいります。

○串田委員 ぜひ早急な対策をお願いいたします。
 次に、八王子三・三・一三号線の進捗状況と今後の整備について伺います。
 東京の西南部に位置する八王子市は、首都圏の西の玄関口ともいわれ、中央道、国道一六号、そして国道二〇号が市内で交差する交通結節点であり、さらに、ことしの六月には圏央道と中央道との直結が実現し、交通上極めて重要性が増す地域であります。市内中心部では中央線や横浜線など鉄道網が発達しており、鉄道輸送においても結節点機能を有しております。このため、市内における幹線道路と鉄道との多くの交差箇所で、踏切渋滞を初めとしたさまざまな問題が日常的に発生しています。
 このような中、川崎街道と町田街道を結ぶ八王子三・三・一三号線、北野街道では、国道一六号、一六号バイパスへの流出入交通などにより交通が集中し、さらに、横浜線と交差する打越踏切付近では、昭和六十三年の複線化以降、渋滞が一層激しくなっています。また、踏切前後の歩道は狭小な上に片側にしか設置されておらず、歩行者は非常に危険な状態で通行している状態です。
 そこで、八王子三・三・一三号線と交差する横浜線との立体交差事業の取り組み状況について伺います。

○依田建設局長 八王子三・三・一三号線は、京王線北野駅付近のJR横浜線打越踏切を含む四百四十メートルが未整備であり、現在、八王子市施行の区画整理事業にあわせ、踏切をアンダーパスで立体交差する事業を実施中でございます。
 工事は、JR横浜線直下のトンネル部をJR東日本に委託し、取りつけ部は東京都が施行いたします。これまで、区画整理事業により事業用地が確保され、占用物件の移設工事や取りつけ部の仮設工事などを実施してまいりました。また、JR横浜線との立体交差の施工に向け、現況の道路交通や鉄道の運行に影響が少ない施工方法や手順についてJRと協議を行い、平成十八年九月に施行協定を締結いたしました。現在、JRがトンネル工事の契約手続を進めております。

○串田委員 現在までの状況はわかりました。
 この事業は、交通量の多い北野街道で鉄道と交差する工事を実施することから、難工事が予想されますが、この工事の特徴と完成の見通しについて伺います。

○依田建設局長 JR東日本が施行する横浜線直下の工事は、線路下からトンネルまでの深さが一メートル余りしかないことや、トンネル上部の構築が終電から始発までの三時間足らずの間での作業となることなど、厳しい制約条件下での施工になります。施工に当たっては、線路の沈下や傾斜など工事の影響を常に監視するなど、鉄道輸送の安全を確保しながら実施いたします。
 また、北野街道の一日約一万六千台に及ぶ道路交通に対して、工事中も現状の機能を確保する必要がございます。そのため、仮設の踏切や切り回し通路を適切に確保しながら、トンネルや取りつけ擁壁工事などを半幅員ずつ段階的に施行いたします。
 今後とも、JRと連携を図りながら安全管理や工程管理を的確に行うとともに、関係住民の理解と協力を得まして、平成二十五年度完成を目指し、事業を着実に進めてまいります。

○串田委員 ぜひ早期完成に引き続き努力をお願いしたいと思います。あわせて、今回は三・三・一三号線の話題を取り上げさせていただきましたが、市内には新滝山街道という重点路線も抱えておりますので、そちらの早期完成もぜひよろしくお願いさせていただきます。
 次に、借地公園について伺います。
 多摩地域の丘陵地には雑木林などの里山の景観が残されており、ハイキングなど自然との触れ合いの場になっています。これら丘陵地にある緑を将来にわたり保全し活用することは、大切なことと思います。
 都では、公園整備の促進策として、地権者から無償で土地を借りて公園として整備する借地公園事業を平成十八年度から開始しました。そこで、借地公園事業とは地権者にとってどのようなメリットがあるのか、改めてお聞きします。

○依田建設局長 借地公園事業は、都立公園を早期に整備するため、既に開園している公園に隣接している土地などの地権者から、原則十年以上、無償で土地を借り受け、公園としての整備を行い、開園するものでございます。
 この事業に協力し、土地を貸していただいた地権者には、固定資産税及び都市計画税が非課税になるほか、契約期間が二十年以上など一定の要件を満たす場合には、相続税の土地評価額が軽減される税制上の利点がございます。また、これまで地権者が行っていた雑木林の下草刈りなどの作業については、都が引き続き適正に維持管理を行うことになります。

○串田委員 税制上のメリットについてはよくわかりました。
 私が住む八王子市内にある長沼公園の地権者から、長年手入れをして大事にしてきた雑木林を公園として活用してくれるなら貸してもよいという申し出がありました。私もこれまで働きかけをしてきたところですが、長沼公園での取り組み状況についてお伺いいたします。

○依田建設局長 長沼公園は、計画面積約四十六ヘクタールのうち、現在三十二ヘクタールを開園しております。
 平成十八年度は、地権者の協力を得まして、〇・七ヘクタールについて借地公園として土地の使用貸借契約を結びました。現在、豊かな自然に親しまれるような園路の整備や、安全対策のためのさくの設置工事などを実施しており、本年六月に開園の予定でございます。
 さらに、平成十九年度には、新たに地権者から土地をお借りし、園地を整備して、三ヘクタールを開園する予定となっております。

○串田委員 長沼公園では、借地公園事業により二カ年で三・七ヘクタールが開園されます。この事業は、地権者にとっても公園を利用する都民にとっても大きな利点があります。今後、丘陵地公園で借地公園事業による整備を一層推進すべきと思いますが、所見をお伺いいたします。

○依田建設局長 丘陵地の豊かな自然環境の保全と活用をさらに推進するため、借地公園事業を進め、都立公園を整備していくことが重要でございます。このため、長沼公園などの丘陵地の公園で、既に開園している区域に隣接し、一体的に利用が可能となるなど整備効果が見込まれる場所において、借地公園事業を順次行ってまいります。
 今後、地権者を対象に公園ごとに説明会を開くなど、地権者に事業の内容を具体的に説明し、協力を得て、借地公園事業に積極的に取り組んでまいります。

○串田委員 ぜひ積極的に進めていただきたいと思いますが、借地のできないところについても、買い取り等の対策を要望しておきます。
 次に、都営交通などで導入を進めているICカードについて伺います。
 首都圏の鉄道やバス事業によるICカードPASMOの導入がいよいよ来月十八日に迫っています。JR東日本が発行するSuicaと相互利用を行うことと相まって、鉄道やバスの利便性が飛躍的に高まると期待しています。
 そこでまず、ICカードの導入メリットをどのように考えているのか、確認の意味で伺います。

○松澤交通局長 お話しのとおり、今回のICカードPASMOの導入によりまして、一枚のカードで、Suicaとの相互利用を含め、首都圏のほとんどの鉄道、バスが利用できるようになり、公共交通における移動の円滑化が飛躍的に進むものと考えております。
 また、クレジットを利用して駅の改札機で自動的に金額を積み増しできるオートチャージサービスや、子ども用カードの導入、定期券を紛失した場合の再発行など、新たなサービスが可能となるところでございます。
 さらに、こうした乗車券機能以外にも、駅の売店や自動販売機などで電子マネーとして利用できるほか、ICカードの特性を生かしてそれぞれの交通事業者が独自のサービスを付加できるなど、これまでの磁気カードなどに比べまして、格段に利便性の向上が図られることになると考えております。

○串田委員 次に、現在の磁気カードであるパスネットやバス共通カードを持っている方が多いと思います。これらのカードを引き続き使用できるのかどうか、利用者としては気になるところですが、その点はいかがでしょうか。

○松澤交通局長 お尋ねのパスネットやバス共通カードにつきましては、発行枚数も多く、現在お客様に広く利用されていることから、当分の間は現状どおり利用できることとしております。
 このうち、パスネットにつきましては、ほとんどの鉄道事業者がICカードを今回一斉に導入するため、カードの普及状況などを見ながら、発売を中止する方向で検討を行うこととなっております。また、バス共通カードにつきましては、バス事業者の導入がこれから順次進むことから、今後十分検討することとしているところでございます。

○串田委員 引き続き利用できることを確認いたしました。
 次に、ICカードのサービスについて伺います。
 先ほど申し上げたバス共通カードでは、例えば五千円のカードで八百五十円のプレミアがついております。ICカードでも同様のサービスを行うことは不可欠であると思います。都バスを含むバス事業者では、これをバス利用特典サービスとして対応を検討していると聞いていますが、これはどのようなサービスなのか、伺います。

○松澤交通局長 今回のICカードPASMOの導入に当たりましては、基本的には現行のバス共通カードにおけるサービスというものを低下させることなく引き継ぐこととしております。
 このため、ご質問のバス利用特典サービスでは、ICカードでバス、都電に乗車されるお客様に、月の一日から末日までの利用額に応じまして、一定の運賃相当額をサービスしていくというものでございます。具体的には、ICカードでの利用額千円ごとに百円分が、さらに五千円に達した時点では新たに四百五十円分が付加され、総額では五千円に対して八百五十円分がサービスされ、利用可能になるものでございます。

○串田委員 次に、行政施策との連携について伺います。
 ICカードの特性を生かし、交通局としても、都政の課題に対して行政部門との連携を図り、積極的にその活用に取り組んでいくべきであると思います。私は、それが都営交通に求められる社会的要請であり、それを果たしていくことが使命だと考えます。
 この点について、都営交通では、電子マネーを活用して花粉症対策に協力することを計画されていますが、具体的にどのような取り組みなのか、伺います。

○松澤交通局長 今回のICカード導入に伴い、交通局では、公営企業としての役割を十分に踏まえまして、電子マネー機能を活用して、ご指摘のとおり花粉症対策に協力することとしているところでございます。
 具体的には、交通局と契約して電子マネーを導入いたしました都営地下鉄の駅構内にある店舗や、浜離宮や小石川後楽園など都立施設におきまして、お客様がPASMOなどの電子マネーにより買い物をしたり入園料をお支払いいただいた場合、その一部が自動的に、花粉の少ない森づくり運動に寄附されるという仕組みになっております。
 今後とも、関係局と連携を図りながら、電子マネーを利用できる店舗等の開拓、拡大に努めてまいります。

○串田委員 ぜひ努力をよろしくお願いしたいと思います。
 次に、公立小学校の水飲み栓直結給水化モデル事業について伺います。
 知事は、本定例会の施政方針表明でこのモデル事業に触れておられました。日本が誇る水道文化を次代を担う子どもたちに継承していきたいと発言されており、強い意気込みを感じております。水道局では、平成二十年度までに区市町立小学校の約三割に当たる四百校で実施することといたしました。このモデル事業をぜひ成功させ、全国で進んでいる蛇口離れを東京から食いとめることができるものと期待しております。
 そこで、このモデル事業の実施の見通しと実施に当たっての課題、それからその対応について所見を伺います。

○御園水道局長 水道局では、都の平成十九年度の重点事業の一つであります、公立小学校の水飲み栓直結給水化モデル事業の実施に向けまして、小学校の設置者である各区市町を個別に訪問し、協議を行っております。
 その結果、約九割に当たる四十二区市町で事業を実施する予定でございます。現在、具体的な実施校などについて調整をしているところでございます。一方、残る六つの区市町では、直ちに実施することが難しいとしておりますが、改修工事等に合わせて実施する方策などを含め、引き続き協議をしてまいります。
 また、切りかえ工事に当たりましては、児童の安全や連続した施工日数を確保する必要があることから、夏休み期間中に集中して施工するとともに、学校関係者の負担軽減を図るため、設計段階や施工段階において技術的支援を実施してまいります。

○串田委員 多くの区市町では実施に前向きということです。しかしながら、区市町によっては、このモデル事業の趣旨に賛同するものの、財政的な問題から、単年度に複数校で実施することが難しいところもあると聞いております。そうすると、二十年度には三百五十二校を計画していることから、計画どおりに実施できるのか、心配されます。とりわけ多摩の市や町の財政は非常に厳しい状況にありますので、ぜひとも支援をお願いしたいと思います。
 水道事業については、水源確保の問題などから広域的な取り組みが進んできております。そもそも水道事業は、水道法において、原則として市町村が経営するものとされておりますが、県が直接水道事業に携わっているところも多いと聞きます。まず、全国では現在どのような形態で運営されているのか、伺います。

○御園水道局長 水道事業は、一般的には、水源を確保し、使用者に直接水道水を供給する事業でございまして、一定の区域を給水区域とする公益事業でありますことから、水道法では市町村経営を原則としております。平成十六年度末現在の全国の水道事業数で見ますと、千九百十八事業のうち、約九割に相当する千七百三十七事業が市町村経営となっております。
 しかし、市町村単位では水源を確保することが難しいなどの理由から、県が水源を手当てし、市町村などに水道水を供給している場合も多く存在しております。また、県が市町村などを介さずに、使用者に直接給水している形態も存在しております。いずれの場合も、水源の状況など、それぞれの地域の実情に合わせた形態で運営されていると思われます。

○串田委員 地域の実情に合わせた形態で運営しているとのことですが、それでは、都では、なぜ、区部はもちろん、多摩地区についても都営で行っているのか、伺います。

○御園水道局長 多摩地区では、昭和三十年代以降、急速な人口増加に伴いまして水道需要量が増大しましたことから、市町における水源の確保が困難となるとともに、普及率や水道料金に格差を生じる事態となりました。
 このため、水道局では、昭和四十六年に市町からの要請や諮問機関の答申などを踏まえて策定いたしました多摩地区水道事業の都営一元化基本計画に基づき、二十五市町の水道事業を都営一元化してまいりました。
 この結果、給水に必要な水源を確保するとともに、広域的な送配水管網の整備及び水運用により、多摩地区の給水安定性が格段に向上しております。また、料金水準などの格差が解消するとともに、規模のメリットを生かすことなどにより、効率的な事業運営が可能となっております。

○串田委員 都営一元化にはさまざまなメリットがあるとのことです。しかしながら、実際には市町へ事務を委託し、各市町が直接給水を行っております。そのため、本来的な広域経営とはなっていない状況にあります。
 そこで、水道局では、平成十五年六月に多摩地区水道経営改善基本計画を策定し、各市町への事務委託の解消を進めてきております。既に策定から三年が経過しております。そこで、これまでの事務委託解消の状況とその効果はどうなのか、伺います。

○御園水道局長 水道局では、多摩地区水道経営改善基本計画に基づきまして、平成二十四年度までに二十五市町のすべての事務委託を解消する予定でありますが、平成十七年度までに七市町の解消を完了しております。
 この事務委託解消効果といたしましては、市町水道職員百六十六人分の業務が既に都に移管されましたが、重複業務の解消、施設管理の一元化及び業務の委託化などを実施したことによりまして、年間約九億円の経費を削減しております。また、今年度末にはさらに八市町が追加され、合わせて十五市町の事務委託を解消できる見込みでありまして、一層の効率的な経営に努めてまいります。

○串田委員 年約九億円の効果が既に発揮されているとのことであり、多摩地区の広域経営がいかに効率的であるか、改めて認識いたしました。
 今後さらに、私の地元である八王子市を初め、町田市など大きな市が事務委託の解消をしていきます。特に八王子市は、人口約五十六万人と多摩地区最大の都市です。都へ業務移管を円滑に進めなければ、サービスの低下を招きかねません。万全を期してもらいたいと思います。
 ところで、水道局では、広域経営ばかりでなく、近隣事業体に対して主体的に働きかけを行い、震災時や大規模な水源水質事故時など非常時に都県境を超えた水の相互融通を行う連絡管の整備にも取り組んでおります。そこで、この取り組みの現状とその効果について伺います。

○御園水道局長 水道局では、これまでに、埼玉県との間で当局の朝霞浄水場付近で相互の送水管を接続する朝霞連絡管を平成十七年九月に整備したほか、現在、川崎市とも登戸及び町田連絡管を整備中でございまして、今月中に完成予定でございます。
 朝霞連絡管及び登戸連絡管の整備費用は、それぞれ約一億七千万円、そして約一億五千万円でございまして、約三十万人都市の規模に相当する日量十万立方メートルの相互融通が可能となります。町田連絡管につきましては、整備費用は約九千万円でございまして、約五万人都市の規模に相当する日量一万五千立方メートルの相互融通が可能となります。
 この水の相互融通は、費用対効果が極めて高く、震災時や大規模な水源水質事故などの非常時における水への安心が格段に向上するという効果がございます。今後とも、こうした近隣事業体と連携した取り組みを一層進めることによりまして、給水安定性の向上に努めてまいります。

○串田委員 近隣事業体との連携した取り組みは、工夫次第ではさらに拡大することもできるのではないでしょうか。今後も積極的に進めていただきたいと思います。
 質疑の中で明らかにしたように、水道事業のようなインフラ事業は、広域的な経営がすぐれているのではないでしょうか。そこで、水道の広域化について、日本水道協会の会長でもある知事の基本的な考え方をお伺いいたします。

○石原知事 水道事業の運営形態は、各地域みずからの責任において選択すべきものであると思いますが、給水安定性などを向上させるためには、区市町域を越えた広域化が望ましいと思っております。国は、こうした観点から国内の水道事業の広域化を打ち出しておりますが、ほとんど進んでいない状況です。
 都における広域化の取り組みは、全国に先駆けて実施しております。また、非常時などの対応として、都県域を越えた近隣事業体との広域的な連携を推進しております。今後とも、給水安定性と経営効率の向上を目指した水道事業の広域化を推進し、都の取り組みを全国のモデルとして広く発信していくつもりでおります。

○串田委員 次に、多摩地域の水再生センターの効率的な更新について伺います。
 多摩川は、憩いを求めて年間二千万人を超える都民が訪れる貴重な水辺空間となっており、「十年後の東京」において、水と緑の回廊の軸として位置づけられています。余り知られていませんが、多摩川の水量の五割以上を下水処理水が占めており、その水質は水再生センターの処理機能にゆだねられております。
 流域下水道の事業開始から既に三十年以上が経過し、こうした水質を支える水再生センターでは、施設の老朽化により処理機能の低下が懸念されるところです。そこで、流域下水道の水再生センターにおける施設の老朽化の現状と対応について伺います。

○前田下水道局長 流域下水道の水再生センターは七カ所ございます。このうち、多摩ニュータウンの入居開始に合わせて稼働した南多摩水再生センターを初め四つの水再生センターでは、昭和四十年代から五十年代に整備されており、設備の約四〇%が既に耐用年数を超えております。こうした設備については、老朽化の度合いや故障の頻度などを考慮し、優先度の高いものから順次更新を行ってきているところでございます。
 今後は、耐用年数を超える機器がさらに増加いたします。予防的保全に努め、設備の延命化を図るとともに、事業費を平準化するなど、計画的かつ効率的な設備の更新に努めてまいります。

○串田委員 今後は耐用年数を超える機器がさらに増加していくとのことです。引き続き効果的な更新に努めていただきたいと思います。
 ところで、水処理施設など大規模な施設の更新に当たっては、長期間にわたり施設を停止させて実施しなければならないことから、本来であれば、バックアップのための施設を新たに整備する必要があると思います。
 しかし、多摩川を挟んで対面する二つの水再生センターを結べば、対岸の水再生センターの施設を有効利用できるため、バックアップ施設も不要となり、スムーズに更新できると考えました。昨年の四月に多摩川上流と八王子水再生センターとを結ぶ連絡管が供用開始されましたが、その効果について伺います。

○前田下水道局長 連絡管の効果についてでございますが、それぞれの水再生センターでは、施設の点検整備などに対応するため、一つの施設が停止しても処理機能に支障が生じないように、予備施設を持っております。
 今回のこの連絡管により、八王子水再生センターの予備施設を活用することができることから、多摩川上流水再生センターの焼却炉の更新に当たっては、二基の焼却炉を大型化して一基に集約し、更新費を約十三億円縮減いたしました。このほか、八王子水再生センターを多摩川上流水再生センター側から遠方監視制御することで人件費を、また、一体的に運用することによって電力費や燃料費など維持管理費をそれぞれ縮減いたしました。

○串田委員 連絡管は施設の更新を効率的に実施する上で大きな効果があることが実証されました。
 ところで、経営計画二〇〇七には、新たに北多摩第一号と南多摩水再生センター間の連絡管の整備が盛り込まれていますが、連絡管の整備には多額の建設費が必要だと思います。私は、市町村の負担軽減を図るという観点から、広域的に効果が及ぶ施設の建設財源には利益剰余金を充当していくべきと考え、主張してきました。昨年供用開始した連絡管の建設に当たっては利益剰余金が充当されたところですが、新たな連絡管の建設についても同様の取り組みがなされるのか、伺います。

○前田下水道局長 新たな北多摩一号と南多摩水再生センター間の連絡管の建設財源についてでございますが、さきの多摩川上流、八王子水再生センター間の連絡管と同様、ご指摘のように、維持管理費の縮減等の経営努力により生じました利益剰余金の一部を積み立て、市町村負担分に充当いたしまして、新たに市町村の負担を求めることがないように努めてまいります。

○串田委員 ありがとうございました。(拍手)

○高島副委員長 串田克巳委員の発言は終わりました。

ページ先頭に戻る