東京都議会予算特別委員会速記録第四号

   午後三時二十三分開議

○山下副委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 佐藤広典委員の発言を許します。

○佐藤委員 まず、知事の政治姿勢について、ここでは、政策選択の一つとして、海外事務所の廃止について伺います。
 資料第1号で、旧東京都海外事務所に関する資料を提出していただいておりますが、この事務所の業務内容について、もう少し詳しく、知事本局長にご説明いただきたいと思います。

○山口知事本局長 旧東京都海外事務所でございますが、ニューヨーク市及びパリ市との交流事業に係る連絡調整、海外都市の情報収集及び調査研究、海外都市への都政情報の提供、東京都の使節団の受け入れなどを業務内容としておりました。
 このうち、情報収集及び調査研究の内容につきましては、海外事務所を閉鎖する平成十一年度の資料しか現在、現存しておりませんけれども、それによりますと、各局の依頼に基づき、バス等の車体利用広告、ごみの夜間、早朝収集などに関する調査を行っておりました。その成果は、都の事務事業に反映されております。

○佐藤委員 東京都の使節団の受け入れ、連絡及び調整という業務もあるということですが、この業務は、全体業務の中でどの程度の割合を占めるのでしょうか。
 とりわけ、使節団の中でも都議会議員を主とするものは年間何件程度あったのか、国際部長も経験された局長よりご説明願います。

○山口知事本局長 比較はかなり難しいのでございますが、海外事務所を閉鎖する平成十一年度の資料しか今、現存しておりませんけれども、年度当初から十二月末までの九カ月間の受け入れ実績をまとめた資料によりますと、六件、十三人の都議会議員のほか、行政職員の海外出張や研修者対応等を含め、総計三十五件、八十七人の実績となっております。九カ月間のみの実績であることに加えまして、受け入れした者の滞在日数等を考慮すれば、相応の事務量であったものと推測されます。

○佐藤委員 そうしますと、議員を主とする使節団はそう多くないということですね。知事はこれまでもたびたび、議員の案内するだけの仕事ですから廃止したと述べておりますが、事実と異なるのではないでしょうか。
 次に、知事に伺います。
 さきの答弁では、わからないから、とも述べておりますが、わからないけど廃止した、そんなことで廃止されてしまったのでは、当の事務所で働いていた職員はたまらないのではないでしょうか。改めて、何を根拠、理由として、これらの海外事務所を廃止したのか伺います。

○石原知事 要するに費用対効果の問題でありまして、議員に対するアテンダントも必要でしょうけど、そのほかに、今、局長がるる申しましたが、しかし、個々の問題なら、個々の担当の都の職員が、要するにニューヨークへ行ったならニューヨークへ行って、必要とすることなら調査すればよろしいんですね。
 私は、そのためには無用な経費だと思いました。費用対効果の問題からいっても、あの二つの事務所の存在が東京の抱えている問題に直接それほど大きな影響を与えたと思いませんし、また、そういう必要があれば、その担当の職員が出かけて、現地で調査をし、意見交換する方がはるかに効果があると私は思います。

○佐藤委員 費用対効果との答弁でありましたが、さきに私ども民主党の質疑でも申し上げておきましたように、海外出張には十分な調査と、また、精査した内容をもって調査活動を行うべきと申し上げております。
 それでは、次の質問に移ります。
 次に、再開発法に基づいて実施されている民間再開発事業について伺います。
 都内では、多くの場所で再開発事業が行われております。私も、昨年の一般質問の際にも質疑を行いましたが、組合などが行う再開発事業の手続や進め方について、改善すべき課題があるのではないかと考えております。
 民間再開発事業は、権利変換手続が終わったり、建設の段階が近くなってから地域の住民の議論が盛んになり、反対運動が強くなる場合もありますが、権利変換が終わり、土地の所有権などが移った後での事業中止は難しいのが現状です。事業を進めるべきかどうかという意思決定に住民の意向を反映させるには、都市計画決定の際に十分な議論を行うべきではないでしょうか。
 現状では、都市計画決定をするに当たって、住民の意思を反映させるために、説明会や案の縦覧により都市計画の内容を周知し、意見聴取や意見書受け付けにより住民の意思を反映するといった手続がとられております。
 しかしながら、過去、都市計画決定前の説明会などの実績を見ても、多くの市民が参加しておりません。多額の税金を使う事業ではありますが、十分な民意を反映できているのか疑問を持ちます。また、地方自治体の費用負担が具体的になっていないなど、住民が判断する材料が少ないように思えます。
 そこで伺いますが、組合再開発事業を進めるに当たり、都市計画決定の手続に際し、地権者への説明と同時に、地域住民への説明責任をどのように果たすべきと考えるか、見解を伺います。

○柿堺都市整備局長 再開発事業の都市計画を決定するに当たりましては、地域住民に対し説明会や計画案の縦覧などによりその内容を十分に周知し、意見を聞きながら進めることが重要でございます。
 組合再開発事業は、地権者みずからが利害関係者の合意形成や資金調達を行う、民間が主体となる事業でございます。そのため、施行者である再開発組合が、地元区市の協力を得ながら、事業説明会や組合窓口での住民対応などにより説明責任を果たすべきだと考えております。

○佐藤委員 都市計画審議会での審議段階において、広い周知と議論を行うよう申し上げましたが、都市計画決定を行う際に改善をすべきと考えている点は、再開発事業を行うべきかどうかという客観的な判断の指標となる費用負担の金額の明示がないことです。
 再開発事業には多額の費用がかかり、地元自治体も大きな財政負担となりますが、都市計画決定を行う際には、事業認可がおりていないため、事業計画をつくる主体となる組合も設立されておらず、費用負担の概要もないわけです。そのため、地元地方自治体の費用負担がどれくらいになるかという客観的な判断の指標がない中で都市計画決定が行われているのが現状です。せめて費用に関すること、つまり、地元市や地方自治体の負担について、大枠の数字で構わないですから、客観的な判断の指標を提示すべきではないかと考えます。
 事業計画書をつくり、費用負担を明らかにした上で、事業を進めるべきかどうかの決定を行わなければ、後で過大な財政負担を負うことにもなりかねません。市施行の再開発事業であれば市が主体となりますので、都市計画決定に際して、事業計画をある程度煮詰めてから費用の概算を出し、事業を行うべきかどうかを決定することも可能ではないかと思います。
 組合による再開発事業についても、再開発法の制約はありますが、現制度のもとででき得る限り費用負担の概要を明らかにして意思決定を行うことが必要ではないでしょうか。
 地域住民による反対運動が起きる理由の一つに、過大な地元自治体の費用負担が挙げられます。再開発事業に伴う多額の財政負担に対して住民がどう判断するのか、十分な時間をとり、議論と意思決定を行うべきと考えます。
 また、地元自治体の負担の一つに、権利床または保留床の取得費用が挙げられます。特に、多摩地域の駅前再開発事業では、再開発事業で建設するビルの中に、地元の自治体が権利床または保留床を取得する例がよくあります。再開発ビルの中に自治体の公益施設が必要なのかどうか議論が必要だと考えますし、自治体が保留床を使って何らかの事業を行うとしても、きちんとした事業計画書をつくり、財政負担がどれほど予想されるのかを明らかにした上で、事業を行うべきかどうか判断することが望ましいのではないかと思います。
 保留床の取得を決定した後でも、地元自治体の判断で保留床を売却することも選択肢として選べるような余地があった方が望ましいのではないかと考えますが、都の見解を伺います。
 そこで、組合再開発事業で、地方自治体が保留床を取得するのは義務づけられたものなのでしょうか。また、区市が取得した保留床を売却することはできるのかどうか、見解を伺います。

○柿堺都市整備局長 再開発事業においては、地方自治体が社会福祉施設など公共目的で保留床を優先的に取得する事例は多く見られるわけでございますが、保留床の取得は、あくまでも再開発組合と地方自治体が協議の上、決定するものでございます。
 また、都市再開発法上、保留床の売却は不可能ではございませんが、仮に地方自治体が優先的に取得した保留床を売却する場合には、個別の協定や契約内容に即して判断されるべきものと考えております。

○佐藤委員 保留床の取得は義務づけられておらず、売却も選択肢となり得るわけですから、無理に地方自治体が赤字運営となるような事業を行う必要はないと思います。いかに地元自治体の財政負担を減らし、財政運営に支障のない事業のあり方を考えるかが課題であると思います。
 一方、再開発事業を行う地方自治体や組合の多くは、再開発事業を行った経験がありません。都も多くの指導を行っているようでありますが、事業を円滑に進めるためにも、他の事例を学び、書類の内容を参考にすることは非常に有効ではないかと考えます。
 都は、区市に対して、ノウハウを提供するために、都職員の区市への派遣や、区市職員の研修生を都に受け入れるなどの取り組みを行っているとのことですが、組合への派遣は行っておりませんので、やはり何らかの参考事例の提供が役立つのではないかと思います。
 私も、過去の組合施行による再開発事業の事例を調べようと考え、幾つかの過去の資料を集めようといたしましたが、資料が残っておりませんでした。
 例えば、平成十一年三月から平成十四年三月の間に、石神井公園駅北口地区市街地再開発組合が実施した、石神井公園駅北口地区第一種市街地再開発事業施設建設物新築工事の内容を調査いたしましたが、わかったのは、西武建設株式会社が工事を行ったということだけで、入札経過調書を含め、当時の資料が残っておりませんでした。
 組合施行の事業であっても、都からの補助金が入っている以上は、都と同じ基準で文書保存年限を定め、資料を保存するべきではないでしょうか。
 しかしながら、組合施行の再開発事業の場合、事業が完成すれば、事業主体である組合が解散してしまうため、どこが資料の保存を行うかという問題があります。そこで、区市や都に資料を移し、都と同じ基準で文書保存年限を定め、資料を保存するよう義務づけるべきであると考えますが、都の見解を伺います。

○柿堺都市整備局長 事業計画や総会の議事録などの事業に関する書類は、都市再開発法に基づき、事業完了までは当事者である再開発組合が保存すべきものとされております。
 また、事業完了後は、施設建築物の竣工図など維持管理上必要な書類は管理組合へ引き継がれております。
 なお、都においては、規則に基づき、各種認可に関する資料などを保存しており、区市においても同様に補助金に関する書類などを保存しております。

○佐藤委員 それでは、再開発組合が解散し、さまざまな資料が散逸してしまう前に、再開発事業が公正に透明性を持って行われているかどうか、検証することが必要となります。
 補助金を導入する事業でありますので、区市、都、国の検査があることは十分に承知をしておりますが、それで十分なのでしょうか。透明性を高めるためには、例えば、再開発組合が工事を発注するに当たっては、一般競争入札を原則とし、都の職員が無理ならば区市の職員が入札に立ち会うこと、入札経過調書などを公開することなどが考えられます。市が補助金を交付している再開発組合が進んで情報を公開することが、納税者である市民の理解と協力を得られることにつながるのではないでしょうか。
 そこで、市民が納得するように組合再開発事業の公正性、透明性を高めるには、入札制度の改善が必要ではないかと考えますが、どのように取り組むのか、都の見解を伺います。

○柿堺都市整備局長 組合再開発事業の公正性、透明性の確保につきましては、基本的には、補助金の直接の交付者である区市と、施行者である再開発組合の判断によって行われるべきものであると考えております。
 都といたしましては、再開発事業の公共性にかんがみ、再開発組合も可能な限り区市の入札基準を踏まえるなど、事業の公正性、透明性を高めることが望ましいと考えております。
 今後とも、区市に対し、事業の適正な執行が図られるよう指導してまいります。

○佐藤委員 東京都市街地再開発補助金交付要綱によると、補助金の交付の決定後、ほかの用途に使用したときや、事業を中止し、または廃止したときなどは、補助金の交付の決定の全部または一部を取り消すことができる。この場合において、既に交付した補助金の全部または一部の返還を命じることができるということになっているわけです。
 都の補助金を出す以上、厳正な審査が求められます。現状のチェックは、中間審査と精算確認にとどまっていると聞いています。
 都が審査を行い、違反があった場合、都は補助金の返還を命じることができるようではありますが、そもそも違反が起こらないよう、きちんと都からも厳正な指導を行っていただきたいと思います。
 組合施行による民間再開発事業は、非常に難しい事業であり、多くの改善点を抱えた事業であると思います。ぜひ今後も事業の進め方について、区市及び再開発組合に対して適切な指導を行っていくよう強く要望いたしまして、次の質問に移ります。
 次に、鉄道関連事業について伺います。
 私は、昨年十月の平成十七年度各会計決算特別委員会で、鉄道に関する工事、特に連続立体交差事業に都は多くの負担をしていることから、その現状を確認し、改善について意見を述べました。
 連続立体交差事業は、交通渋滞を解消し、地域の活性化に効果が極めて高く、多くの都民の方からも要望が強い事業であります。
 都は、鉄道に係る道路や河川の工事に関して、鉄道事業者と協定を結び、工事の見積もり、業者選定を鉄道会社に委託しています。平成十三年度から平成十七年度までの過去五年間に新規に結ばれた協定総額における都支出額だけで、約九百二十八億円にも上ります。新規協定の締結に際しては、議会の議決事項にはなっておらず、各年度の支出分が予算項目として審議されているだけです。
 複数年に及ぶ協定は、年度ごとの協議を結び、事業執行を行っております。協定は複数年度にまたがる契約であり、鉄道関連工事という事業の性格上、事業途中の凍結は難しいといえます。
 複数年にわたって工事が続く事業の協定を結ぶということは、つまり、将来にわたって複数年の固定的な巨額の費用負担を生み出すことになっているわけです。それが、議会の議決を経ることなく決まっているのが現状です。
 平成十九年度予算案を見ると、この連続立体交差事業の予算は五百七十五億円となっており、今年度当初予算から増額され、さらに新規路線の事業が始まります。
 そこで、予算要求時にこの連続立体交差の事業費をどのように見積もっているのか伺います。

○依田建設局長 連続立体交差事業は、交通渋滞や地域分断を解消するなど、極めて効果の高い事業であり、現在、JR中央線や京浜急行線など七路線九カ所で重点的に取り組んでいるところでございます。
 本事業におきましては、鉄道利用者の安全を確保し、安定した輸送力を維持するために、運行管理に責任を持つ鉄道事業者と東京都が施行協定を締結しております。
 お尋ねの予算要求時における事業費の見積もりでございますが、都と事前に現場状況の確認や当該年度の工事予定の調整を行い、鉄道事業者が次年度の工事計画を立て、過去の工事実績などを基礎として予定額を算出いたします。
 都は、それをもとに工事内容などを把握、確認し、予算見積もり方針や事業進捗状況を勘案しながら事業費を算出し、予算案としております。
 この予算案は、常任委員会、予算特別委員会、本会議の審議を経て議決をいただいており、事業の目的、実施の位置、概算総事業費、事業予定期間など、重要な事業概要は提案内容に含め、ご審議いただいているものと認識しております。
 予算案は、当該年度分だけの議決であり、将来の事業経費まで承認をいただくものではなく、したがって、事業の継続、休止、事業期間の延長などは、いつ何どきであっても、社会情勢や財政状況の変化に応じて、その時々に慎重な検討のもと、判断できるものであると認識しております。

○佐藤委員 しかし、これだけ多くの予算を執行するに当たっては、鉄道事業者への都の関与が極めて重要であると考えております。
 連続立体交差事業は、都が主体となって地元区市と鉄道事業者からも費用の負担を求め進めておりますが、都の費用負担は基本的に区部であれば三〇・一%、多摩地域の場合は三一・五%となっていて、事業に多くの税金が投入されています。
 都は、事業を進めるに当たり、鉄道事業者と協定を結び、鉄道施設の工事を委託します。私は、昨年の各会計決算特別委員会において、この都から委託を受け鉄道事業者が行う工事に関して、見積もり方法、契約の方法、契約経過の関係書類についての確認方法と情報公開などについて質疑を行い、現状を確認するとともに、改善についての意見を述べました。
 そこで伺います。鉄道事業者が発注する工事に関する契約手続について質問いたしましたが、質疑に基づいて改善した点をお答えください。

○依田建設局長 都はこれまでも、連続立体交差事業について毎年度、鉄道事業者に対し、その執行状況の確認を厳正に行ってまいりました。
 さらに、一層の適正化を図るため、鉄道事業者が発注する工事の透明性や公正性の確保を図る観点から、検討委員会を設置し、工事費の積算は局の積算基準によること、契約は競争に付すこと、特命随意契約理由については事前協議すること等を原則とする基本方針を平成十六年三月に定めました。
 都は、鉄道事業者に対し、この方針に基づく取り組みを実施するよう求め、十六年度以降、透明性、公正性の確保について順次対応が図られているところでございます。

○佐藤委員 昨年の決算特別委員会では、私の質疑に対して、今後も、社会的要請を踏まえ、鉄道事業者に対して、この事業が公共事業であることを十分に認識させ、より一層の意識改革を求め、透明性及び公正性の確保に確実に取り組むよう積極的に進めていくとお答えいただきました。
 事業に税金が投入されている以上、契約の検証と都民への説明のため、契約案件の確認、契約経過の関係書類の精査と開示が必要と指摘したところです。この質問以後も、都の鉄道事業者への働きかけの結果としての成果があらわれているものと見受けられます。
 では、十九年度の新規事業となる西武池袋線連立事業においては、鉄道事業者が行う契約手続に対し都はどのような姿勢で対応するのか伺います。

○依田建設局長 都は、西武池袋線連続立体交差事業において、今後、工事を発注することとなる西武鉄道株式会社と、透明性、公正性の確保を図るために定めた基本方針に基づいた協定を締結しております。
 西武鉄道は、民間企業であるため、地方自治法や都の契約事務規則などによる制約は受けませんが、本事業が公共事業であることにかんがみ、工事契約に当たっては、基本方針どおり、原則として競争に付す方法で行うこととしております。
 引き続き、都はすべての鉄道事業者に対して強く働きかけ、公共事業に求められる透明性、公正性を確保しながら、積極的に連続立体交差事業を進めてまいります。

○佐藤委員 今後の鉄道関連工事における予算管理に関して申し上げます。
 複数年に及ぶ協定は、年度ごとに年度協議を結び、事業執行を行っております。協定は複数年度にまたがる契約であり、鉄道関連工事という事業の性格上、事業途中の凍結は難しいといえます。つまり、将来的にわたって複数年の固定的な巨額の費用負担を生み出していることになるわけです。それが議会の議決を経ることなく決まっているのが現状です。
 協定は毎年度の予算によることとなっており、この事業スキームでは債務負担行為には当たりません。そうなると、各年次の予算審議で議論するべきかもしれませんが、新たな協定締結に伴う将来的な負担の審議がなされているとはいいがたい状況にあります。
 確かに、会計年度独立の原則が地方自治法により規定されておりますが、一方で、その限界を指摘する声も大きくなっております。
 毎年、年度協議の執行内容を確認するにとどまるのではなく、規律のある財政運営を行うためにも、現在の協定の残り総額を把握した上で、新規協定の締結を行うかどうかについて、議会で審議を注意深く行う必要があります。
 このように負担金が長期間にわたる事業では、貸借対照表や債務負担行為で管理をするのではなく、毎年度の執行額だけで管理をするということになりますので、都民にとってもわかりづらく、進捗管理が心配になります。
 鉄道関連事業は、多くの乗客の命を預かっている営業中の鉄道を改変する工事であるため、安全面での配慮が非常に大切であるとともに、多くの税金が使われていることから、その契約手続の競争性が求められており、都は税金の使い方を説明する義務があります。
 鉄道事業者は民間企業ではありますが、制度の枠組みの中でどのようにして協力させ、都民の信頼を得るような事業運営を行っていくことができるか、今まさにこの事業の主体である都に求められているわけです。
 税金の使い方を検証し、契約内容を見直すためにも、鉄道事業者の契約情報の公開徹底を強く要望いたします。
 鉄道関連事業は、多くの都民及び利用者からの要望の強い事業です。安全かつ積極的に事業を推進していく中で、その透明性と公正性を確保する取り組みを進めるとともに、新規事業の予算措置を行うに当たっては、規律ある財政運営を行うためにも、議会において注意深く審議し、その意思反映が不可欠であると強く申し上げておきます。
 次に、防災対策について伺います。
 まずは、震災対策についてです。
 さきの代表質問では、建築物の耐震化促進という、いわばハード面の対策が取り上げられたわけでありますが、ここでは主にソフト面の対策について取り上げたいと思います。
 現在、地域防災計画の見直し作業が進められているところです。その素案には、事業継続計画の策定が新たに盛り込まれ、都政のBCPを策定することがうたわれています。BCPとは、防災リスクマネジメントの一環として、災害発生時等に短時間で重要な機能を再開し、事業を継続するために、事前に準備しておく対応方針を計画として作成するものだと理解しています。
 そこで、まず、都政のBCP策定に当たっての基本的考え方について、総務局に所見を伺います。

○大原総務局長 都政の事業継続計画、BCPでございますが、これは、医療、介護等、都民生活に不可欠なサービスを災害時にも中断することなく一定水準を確保し、早期の回復を図りますために策定をするものでございます。
 都は来年度、重点事業といたしまして、全庁的な検討組織を立ち上げまして、策定に取り組んでまいります。

○佐藤委員 改定版地域防災計画の素案では、地震に関する調査研究の一つとして、長周期地震動に関する調査を行うことが示されています。
 昨年十一月には、海溝型巨大地震による長周期地震動と土木・建築構造物の耐震性向上に関する共同提言が、土木学会と日本建築学会から出されました。この中では、既存超高層建築物について、構造特性に適した振動解析モデルを用いて、長周期地震動を受ける場合の耐震性能の検討の必要性や、在館者のパニック行動の発生予防のため、地震発生時に避難形態を即座に的確に判断し、在館者に安全情報や避難誘導情報を逐次提供するシステムを導入すること、在館者の地震後の避難生活のために、ライフラインを含めた設備機器の機能維持などが提案されています。
 都政のBCP策定に当たっては、特に都庁舎の機能の継続性という観点から、超高層ビルである都庁舎に対する長周期地震動の影響とその対策について検討すべきではないかと考えますが、財務局に所見を伺います。

○谷川財務局長 都庁舎機能に対する長周期地震動の影響を検討することは、BCP、事業継続計画の観点から必要であると認識しております。
 ただ、長周期地震動につきましては、現在、研究が進められている段階にありまして、今後の学会等の検討の推移、あるいは国の動向等を踏まえながら対応してまいります。

○佐藤委員 震災によって都庁舎の機能がある程度低下するのはやむを得ないだろうとは思いますが、早期に回復する、その対策を行うためにも、ぜひ都としても独自の調査研究を行った上で、都庁舎自身の長周期地震動対策、これを検討していただきたいと思います。
 さて、震災対策では、震災時の水や食料、生活必需品などの備蓄、調達体制も重要です。そこで、まず、食料の備蓄、調達体制について伺いますが、改定版計画の素案では、都の役割の一部として、食生活の多様化や高齢化等に配慮した食料の供給を図るため、クラッカー、五目ご飯やおかゆといったアルファ化米、即席めんのほか、低たんぱく米など、災害時要援護者に対する食料を確保することとなっています。
 そこで、具体的には災害時要援護者についてどのように対応するのか、福祉保健局に所見を伺います。

○山内福祉保健局長 都はこれまで、食生活の多様化に合わせまして、お話しのとおり、即席めん、アルファ化米、クラッカーを備蓄品目に取り入れるとともに、高齢者や幼児等に配慮しまして、おかゆを加えるなど、災害時の要援護者の対応を進めてまいりました。
 東京都地域防災計画については、本年五月の改定に向けて作業中でありまして、これに先立ち、本年一月に計画素案を公表したところでございます。この中で、腎臓病等の方のための低たんぱく米の確保についてお示ししておりますが、具体的な対応については現在検討中でございます。

○佐藤委員 また、都は、被災乳幼児用として必要な調製粉乳と哺乳瓶をランニングストック方式で備蓄するとしており、必要数は、調製粉乳五万七千百八十五缶、哺乳瓶一万本となっているわけですが、現状では必要数は充足しているのかどうか、所見を伺います。

○山内福祉保健局長 災害時の乳幼児用の調製粉乳と哺乳瓶については、都の被害想定に基づきまして、区市町村と連携し、必要な物資を備蓄することとしております。
 被災後当初の三日分は区市町村が対応し、四日目から七日目までの四日分は都が対応するとしております。
 現在の都の備蓄量は、調製粉乳五万七千百八十五缶、哺乳瓶一万本であり、これに区市町村分を加えますと、想定する被害におおむね対応できる体制となっております。
 なお、備蓄に当たっては、市場における流通在庫の一部を都が備蓄分として確保するランニングストック方式を採用しているところでございます。

○佐藤委員 次に、生活必需品について伺いますが、都は主に避難所生活者を対象に、毛布、敷物、肌着などの備蓄を行っているとのことでありますが、現状ではどの程度備蓄ができているのかについて所見を伺います。

○山内福祉保健局長 毛布、敷物、肌着等の生活必需品についても、都の被害想定に基づきまして、区市町村と連携し、必要な物資を備蓄することとしております。
 都の備蓄量は、平成十八年十二月一日現在、毛布八十九万四千枚、敷物九十七万三千枚、肌着二十八万八千組であり、これに区市町村分を加えますと、想定する被害におおむね対応できる体制となっております。
 仮に想定を超える大きな被害が発生し、不足が生じた場合には、直ちに関係業界等から必要量を調達するほか、八都県市等の協力を得ながら確保するなど、対応に万全を期してまいります。

○佐藤委員 改定版地域防災計画の素案には、地下鉄大江戸線防災ネットワークとして、大江戸線の清澄白河駅と麻布十番駅の二駅に設置している地下防災施設に物資を備蓄し、地震に強い地下鉄の輸送力を活用した支援と輸送を行うことが示されています。
 これら二カ所の地下防災施設には現在どの程度の備蓄がなされているのか伺います。

○山内福祉保健局長 二つの倉庫は地震に強い地下施設でありまして、また、建物等の倒壊で陸上交通路が遮断された場合でも、地下鉄による輸送が可能なため、迅速な物資の搬出拠点となるものでございます。
 備蓄内容は、平成十八年十二月一日現在、毛布九千五百枚、敷物一万六千枚、安全キャンドル五千四百個でございます。

○佐藤委員 大地震はいつ起きてもおかしくないといわれている中、想定されている以上の被害をこうむる可能性もあり得るわけですから、そうした事態も念頭に置いて、都として可能な限りの対策をとっていただきたいということを申し上げて、私の質問を終わります。(拍手)

○山下副委員長 佐藤広典委員の発言は終わりました。

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