東京都議会予算特別委員会速記録第三号

   午後六時五十三分開議

○石川副委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 野上純子委員の発言を許します。

○野上委員 教師が変われば子どもが変わります。子どもにとって最大の教育環境は教師自身です。一人の偉大な先生との出会いが子どもの一生を左右することもあります。これからの十年間で約半分の教師が入れかわる時代を迎えます。こうした意味で、優秀な管理職、あるいは優秀な新採用教員をどう確保していくか、東京都としても大変大事な課題だと思っております。
 そこで、優秀な教育人材の確保について質問いたします。
 最初に、教育管理職についてです。
 いよいよ大量退職の時期を迎え、優秀な教育管理職を確保しなければなりません。特に大量退職を迎えている小学校を中心に、定年退職をする教育管理職、つまり校長先生を、再任用フルタイム勤務で継続して、勤務する制度が我が党の代表質問で明らかになりました。
 平成十九年度再任用校長の任用予定は何人になるんでしょうか。

○中村教育長 平成十九年度は、再任用フルタイム勤務の校長といたしまして、小学校で二十四名、中学校で二名、合わせて二十六名を任用する予定でございます。

○野上委員 この制度の周知が九月という時期だったんですね。それにもかかわらず、二十六名の校長先生が退職後、引き続き任用されることになりました。フルタイムで働いて、職責は同じなんですが、給与は現役の約七割。同じ仕事をし、同じ責任ものしかかってきますが、金銭の問題ではないと。本当に教育に情熱を持っている人が、引き続き同じ勤務校で校長として手腕を発揮してもらえる、そういう制度です。児童生徒にとっても、引き続き指導してもらえますし、学校経営の責任者として教師にも継続して指導できる。
 今後、大量退職が続く間は、経験豊富で学校教育に対する情熱を持ち続けている退職予定の校長を再任用校長とするこの制度の周知徹底を図り、この再任用制度をより拡充していくべきと考えます。
 次は、新採用の優秀な教員確保について質問いたします。
 団塊の世代を中心にした大量退職の到来により、今後十年間は毎年二千人以上の退職者が予想されます。採用者数も大幅な増加が見込まれます。
 今、教育界は、親が教育力がないとか、いじめとか、不登校とか、学力低下、あるいは生活貧困者の増加とか、学校教育の抱える課題は複雑化、多様化しております。即戦力のある教師が求められております。そのために、都教育委員会は、これまでも他県の現職教員選考とか人事交流選考を実施してきたという経過がございます。
 学校現場には、正規教員だけでなく、産休、育休代替教員や非常勤講師など、臨時的な任用教員が活躍をしております。また、新しい期限つき任用教員などの臨時的な任用教員の活躍が期待できます。
 この先生方は、東京都の正規教員になることを希望し、採用選考を受験する率も高いと聞いております。もしも優秀な人であれば、採用選考のときに、指導力があるとか勤務状況がきちんとしているとか、現場の実践を適切に反映し、優秀な人材として確保すべきと考えますが、どうでしょうか。

○中村教育長 学校現場では、正規教員のほかにも、産休、育休代替教員、それから、ご指摘のように非常勤講師が授業を行っております。さらに、来年度から、病気休職などで欠員が生じた場合に、一年以内の期限で任用いたします期限つき任用教員も教育活動に携わることになっております。
 このような臨時的任用教員や非常勤講師は、学校現場で実際に授業等の教育活動に携わります。こうした実践的な指導力など、教員としての適性を見きわめることが可能でございます。
 そのために、学校現場での勤務実績に対します学校長やあるいは教育委員会の評価を、採用選考におきまして適切に反映させる仕組みを構築していくことが必要でございます。来年度の採用選考での導入に向けまして検討してまいります。

○野上委員 こうした先生は、現場で経験してきたことが即戦力になると。そこで、臨時的任用の教員が学校現場で実践力を磨いているので、採用選考に合格した場合は、児童生徒の関係から、引き続きその勤務している学校、勤務校に配置するなどの配慮をすべきと思いますが、いかがでしょうか。

○中村教育長 勤務校におけます高い実績が評価されて、採用選考で合格した臨時的教員でございますので、児童生徒を継続的に指導しなければならない、あるいは新規採用教員の育成の観点からも、原則として、引き続き勤務校への配置を行ってまいります。

○野上委員 さらに、幅広く優秀な人材を確保するために、教員任用制度のあり方検討委員会の報告にもありますが、社会経験を持つ人の中から採用していくことも重要だと思います。
 これまでは、都教育委員会は、小学校、あるいは高等学校の工業など限られた分野で社会人選考を実施してきましたが、これからはすべての校種、すべての教科で社会人選考を実施すべきと考えますが、見解を伺います。

○中村教育長 これまで都教育委員会では、採用倍率が低下傾向にあります小学校や、より実践的な指導力を必要とします高校の工業などで社会人選考を実施し、優秀な人材確保に努めてまいりました。
 今後は、中学、高等学校などにおきましても、採用数の増加が見込まれます。
 また、学校が抱えます多様な課題に対応するためには、多様な経験と専門的な知識を持ち、その経験に裏打ちされた熱意と改善意欲がある人材が必要となってまいります。そのため、すべての校種、教科で社会人選考を行うべきと考えておりまして、来年度採用選考での実施に向けて具体的な検討を行ってまいります。

○野上委員 小学校だけでなく、中学校、高等学校、またすべての教科において社会人選考を行っていくということは、さらに優秀な人材が集まるものと期待しております。
 次に、都は、主幹制度を国に先駆けて導入いたしました。国の方でも、いよいよ中教審の教職員の給与のあり方に関するワーキンググループの審議経過報告の中に主幹制度の導入が盛り込まれております。これは、まさに都が国に先駆けて国を動かすという知事の方針と一致しているのではないでしょうか。
 現在の給与制度に関していえば、一般の教員は、採用されてから退職するまで、一律的、年功的に給与が上昇する制度となっております。ただし、主幹とか管理職になると別ですけれども、一人一人の意欲を引き出していくためにも、めり張りのある教員の給与制度の実現に向けていくべきと考えております。都教委の取り組みについて伺います。

○中村教育長 ご指摘のとおり、現在、教員の給与制度は、主幹や管理職になる者を除きまして、採用から退職するまで、一律的、年功的に給与が上昇する制度となっております。
 昨年の七月に、教員の職のあり方検討委員会報告を取りまとめましたが、この中で、教員全体の約八五%を占めます教諭は、児童生徒への指導や校務分掌上の役割などの点で、同じ職でありましても、職務の困難度や責任の度合いに大きな違いが生じているとしたところでございます。
 また、校長につきましても、学校の困難度に応じて職責の違いが生じております。
 このため、より的確な任用管理と処遇を行い、教員の資質、能力の一層の向上を図ることを目的に、教諭の職、校長の職をそれぞれ分化し、仮称ではありますが、主任教諭、統括校長の職を設置するなど、見直しの方向性を示したところであります。また、現行、小中学校の教員と高校等の教員とで適用が異なっております給料表につきましても、適切な水準における給料表の一本化の検討が必要であるとしております。
 このため、都教育委員会は、報告を踏まえまして、今後、関係機関と積極的に協議を進め、教員一人一人の意欲をさらに引き出すためのめり張りのある任用、給与制度を構築してまいります。

○野上委員 統括校長、校長、副校長、主幹、そして主任教諭、教諭というような段階ということですけれども、この具体的な効果について伺います。

○中村教育長 教諭の職の分化は、採用後十年程度の教員経験を積んだ時点から選考の機会を設け、一定の能力実証を経た者を上位の職に昇任させることによりまして、学校全体の教育力を高めていくことを目的に行うものであります。
 具体的な効果といたしましては、上位の職に昇任した者が、みずからの職責を自覚し、実践的、効果的な指導力をさらに高めるとともに、若手教員への指導や校務運営全体に貢献するよう努める一方、若手教員も上位の職を目指して自己研さんを積むことによりまして、学校の活性化と質の高い教育を確保することが期待されております。

○野上委員 教育については、国においても大きな論議となっています。しかし、人事制度、給与制度を着実に構築していくことが大事であって、まじめに一生懸命働く人が報われるような仕組みをつくるべきです。
 これから東京都においては、平成二十三年まで児童生徒がふえる一方で、教員の大量退職時代を迎えるわけです。そのためには、本当に大量の新採教員を迎えなければなりません。大量の新採教員の育成、能力開発を図ることが大切です。そして、納得できる人事給与制度をつくることが大事と考えます。
 次に、子どもの生活習慣の確立、特に食をめぐる問題についてお伺いいたします。
 外食やレトルト産業、お弁当、脂質の過剰摂取、野菜不足、栄養の偏り、朝食の欠食、子どもの肥満、糖尿病など生活習慣病の増加など、多くの課題があります。
 そうした中にあって、「そうだ、やっぱり早起き・早寝!」というテキストをつくり、公立小学校入学を控えたすべての家庭に配布されたことに対して敬意を表します。このテキストですね。基本的な生活習慣が身についていると、学校生活が円滑に対応できます。知事のリーダーシップのもと、食育政策が進んできたことを感じております。
 栄養のバランスのとれた食事として、学校給食の存在が大きく、東京都には、一部には学校給食の行われていない中学校もありますが、都内全小学校はほぼ一〇〇%の学校で実施されております。
 文部科学省が調べた結果、全国の小中学校の四四%で学校給食費の未納問題が生じております。児童生徒では、約一%の児童に未納問題があることが明らかになっております。
 この給食費の未納問題に関しては、二つの課題があると思います。
 一つは、所得格差による社会の二極化の問題です。生活保護世帯も百万件を超えて、貯蓄ゼロ世帯が二三・八%、ジニ係数も〇・三一四に上昇していることに代表されるような生活困窮者の急増したこと。
 二つ目には、支払い能力があるにもかかわらず、義務教育だから無償のはずである、あるいは払いたくないといった自分本位の甘えた考えの親の存在です。
 所得格差に対しては、就学援助や生活保護で、生活保護費の中に給食代も含まれていますので、そこで対応できるはずです。しかし、親の金銭管理能力がなかったり、生活費に使い込んだりする家庭も多いです。
 私も教師時代に、生活保護を受けている家庭に、生活保護費が支給された翌日の朝早くに給食費を取り立てに行ったものです。主税局もびっくりです。母親に経済感覚がないと、それがパチンコ代になったり、洋服代に消えたりして使われてしまいます。生活保護費が出たら袋に入れて、給食費だけは使い込まないでねと指導しても、何回も同じことを繰り返してしまいます。この生活保護費の中に給食費も含まれていますので、学校に払わないで使ってしまうと。
 給食費に関しては、集金できなければ、食材で調節するしかございません。給食代を払っていないからといって、あんたは給食を食べないでとはいえない。ですから、払わない人が多くなればなるほど、食材が乏しくなる。この調整する時期になると、本当は一人に三つずつイチゴがつくところを一つしかつかなかったり、魚も高級な魚から安い魚に、肉も牛肉から豚肉にと、だんだん変化していくということなんです。
 先ほども自民党の方からございましたが、この問題は大変大事でございますので、給食費を支払うことができるにもかかわらず、支払わない親がいることに対しての知事のご見解を伺いたいと思います。一部の区では、PTAがPTA会費とともに引き落としている例もあるようでございますが、よろしくお願いします。

○石原知事 学校給食は、当然親が負担すべきものであります。生活に困っている人は別としても、支払うことができる親が支払わないのは、もう基本的なモラルの混乱。窃盗とはいいませんが、一種の無銭飲食でありまして、非常に破廉恥な行為で、もしレストランでこれを行えば、店によっては警察を呼ぶことになるでしょう。
 子どもにとっても、教育の原点は家庭でありまして、親は子どもたちの教育について責任を自覚し、その役割をしっかりと果たすべきであると思います。親がみずからこういうことをして、子どもは知るかわかりませんが、知れば子どもにとっても恥ずかしいことですし、それを親の行いとして子どもがまねることになれば、もっと社会は混乱すると思います。

○野上委員 ありがとうございます。
 ここで一つの提案ですけれども、就学援助を受けている家庭では、就学援助費の中に当然給食費も含まれていますので、この就学援助費用を直接校長に渡すような仕組みを考えてみてはいかがでしょうか。

○中村教育長 ご指摘のような就学援助におきまして、学校給食費相当の支給を受けながら学校に納入しない事例につきましては、就学援助制度の適正な実施の観点からも課題があると考えております。
 既に幾つかの区市におきまして、就学援助費を直接学校長に交付するような取り組みが行われております。
 また、学校給食費の未納問題に関しまして、先日出されました文部科学省の通知におきましても、学校長に交付するような運用も一つの有効な方法である旨が述べられております。
 これらを踏まえ、都教育委員会として、学校長に交付するような方策も必要に応じてとり得る旨、改めて区市町村教育委員会に示し、また、参考となる情報提供をしてまいります。
 それぞれの区市町村でいろんな工夫をしておりまして、未納を少なくするために、保護者が交代で学校に出向きまして、授業開始前に児童が持参した集金袋を回収するとか、あるいは教室で担任が集金袋を集めるとか、あるいは徴収専門員を雇用しまして家庭訪問を実施するとか、いろんな団体がございます。これらの事例も区市町村に通知してまいります。

○野上委員 また給食費だけでなく、卒業アルバムとか、また教材費など、教師が立てかえて、そのまま払ってもらえていないということも多いです。私の友達も現にそうで、ぜひこうした制度を確立していただきたいと思います。
 次に、給食の残菜についてですが、学校給食の残菜については課題が多く、現在、給食の残菜は、約七割の学校がごみとして廃棄処分されております。
 特に、中学校給食の残菜の多さには問題があります。給食時間が短く、ゆっくりと味わって食事をする時間が少ないとか、給食前に教室移動や片づけが大変な教科の後、給食を食べる時間的に余裕がなかったり、また今はスリムな体型に人気があって、太ることを気にして給食を残す女子生徒も多いとか、好き嫌いがあってもそれを無理やり直すことをしない、食べられるだけ食べればよいという指導で、今は無理やり全部食べるような指導がなされていないとかあります。
 学齢期は心身の健全な成長を図る大事な時期です。栄養のバランスが崩れてしまいます。食育の推進をより一層図る必要があると思いますが、いかがでしょうか。

○中村教育長 ご指摘のように、学齢期は心身の健全な成長や基本的な食習慣が形成される時期でありますことから、子どもたち一人一人に望ましい食習慣の基本を身につけさせることが重要でございます。
 ご指摘の中学校給食における残菜の多さにつきましては、私どもも十分に把握しているところであります。
 都教育委員会としましても、児童生徒に対し給食を残す理由について実態調査を行っていくとともに、昨年七月末に出しました公立学校における食育に関する検討委員会報告書を受け、各学校におきまして、食に関する校内指導体制づくりに努めるよう働きかけてまいります。
 また、平成十七年度から実施している教職員対象の食に関する指導研修会等におきまして、残菜量を調査し給食指導に生かすなどの取り組みによりまして成果を上げた事例などを紹介し、学校給食を活用した食育の推進を図ってまいります。
 なお、学校での給食のこうした状況は、家庭にも問題があると考えておりまして、学齢期だけでなく、就学前の子どもを持つ親への働きかけが必要なことから、子どもの生活習慣を確立するために、都教育委員会で進めております子どもの生活習慣確立プロジェクトで、平成十九年度には食育を重要なテーマとしまして取り組んでまいります。

○野上委員 学校において食育を実践していくためには、各学校で食育を推進する責任者が必要です。文科省は、全国で学校栄養教諭として二十人分を予算化しております。仮に都内小中学校すべてに配置するとなると、都が公表している小中学校の教育職平均給与から試算すると、約百六十億円かかると見込まれております。莫大な費用がかかります。
 東京都は、現場に即して実践ができるよう、昨年、私の一般質問の中で食育リーダーを配置すると答弁いたしました。
 食を制するものは国を制する。アメリカでは国家戦力として食育に取り組んでおります。
 食育を推進することが医療費の抑制にも通じます。
 そこで、具体的に実践的な食育リーダーを育成するための研修計画について伺います。

○中村教育長 学校において食育を充実していくためには、食に関する指導計画の作成や、家庭、地域との連携等を行います食育リーダーを育成することが重要であります。
 これまで都教育委員会は、食育の指導内容や方法に関する研究を進めますともに、教員を対象に、健康教育の一環として、食に関する指導を改善、充実するための研修を実施してまいりました。
 また、学校栄養職員を対象に、給食の管理や食に関する指導内容、方法の研修を実施してまいりました。
 今後、こうした研修を合同で実施することにより、学校における食育を組織的、計画的に推進する食育リーダーを育成するとともに、子どもの望ましい生活習慣の確立を目指し、食育リーダーが家庭や地域における食育を支援できるよう努めてまいります。

○野上委員 いよいよ来年度から実施されますので、よろしくお願いいたします。
 次に、規則正しい生活習慣の確立は、児童生徒の学力向上にもつながる大切なことです。
 しかし、今、子どもたちを見ていると、一日に数時間テレビを見、ゲームをし、何時間もメールをしていれば、生活習慣の乱れや家族とのコミュニケーション不足、ひいては学力低下するのは当たり前であると思います。
 私事性が高い領域である家庭に対し、子どもの生活習慣プロジェクトで、小学校入学前に身につけたいこととして、テレビやゲームの時間を決める提案とか、インターネットやゲームに関して、家庭内でのルールづくりを支援する冊子「ファミリeルール」を作成するなど、都の取り組みは評価しております。これですね、この冊子です。
 このような取り組みは各家庭の対応が基本でありますが、都内にはノーテレビデー、ノーゲームデーの取り組みを実施している小学校もあり、学力向上を図っているところもあります。生活習慣を培う取り組みの一つとして、学校やPTAの活動として、ノーテレビデー、ノーゲームデーの取り組みとかを提案したいと思うのですが、これは要望にしておきます。
 学齢期の大事な時間をバーチャルな世界に長時間浸ることが、子どもたちの健やかな成長に影を落としてしまいます。子どもたちにバーチャルではない本物の触れ合い、感動、感性を磨く体験をさせることが大切だと思っております。自然体験、動物との触れ合いとか、スポーツ体験、本物の文化芸術に触れることも大切であります。
 東京都は、子どもが直接芸術文化に触れる機会を提供する子ども向け舞台芸術参加・体験プログラムを実施しております。今回報告書が送られてきまして、オーケストラ、バレエ、絵画、演劇、落語など、多くの子どもたちが体験しておりますが、三年目を迎え、充実してきたこの内容について伺います。

○渡辺生活文化局長 平成十六年度から開始いたしました子ども向け舞台芸術参加・体験プログラムは、地域の学校や児童館などで、子どもたちがプロの芸術家と一緒に演劇の創作や楽器の体験をしたり、あるいは東京芸術劇場や江戸東京博物館において本物の舞台公演に触れる事業でございます。
 年々充実に努め、平成十八年度は、従来の音楽、児童演劇、能楽の分野のほかに、新たに寄席や日本舞踊などの伝統芸能を加えたところでございます。また、実施場所も、区部だけでなく、多摩地域にも拡大して開催いたしました。
 今後、区市町村の文化行政担当者に対し、一層事業の周知に努めるとともに、都内の芸術文化団体等とも連携を密にしながら、できるだけ多くの子どもたちが芸術文化に触れる機会を持てるように努めてまいります。

○野上委員 次は、都バスについて伺います。
 昨年の予特で、我が党の東村議員から、AEDを設置すべきであるという質疑に対して、すぐに設置していただき、都庁駅前のAEDを使用して、係員の方が実際に人命を救助するということがございました。新聞やテレビでも大きく報道され、その後、迅速にAEDを地下鉄の駅やバス営業所すべてに配置したと伺っております。
 路線バスにも試行的に搭載して、AED機器が振動や熱などによって受ける影響について調査し、耐久性をテストしたと聞いております。
 こうした結果を踏まえて、都バスにAEDを搭載するのか、今後の導入拡大について伺います。

○松澤交通局長 AEDについては、これまですべての都営地下鉄の駅、バス営業所などへの配備を行いまして、お客様への安全・安心の確保に努めてきたところでございます。
 また、路線バスにも搭載することを目指しまして、お話のとおり、AED機器が振動や熱などによって受ける影響について調査してまいりましたが、現在のところ、ハード面において問題は発生しておりません。
 ただ、路線バスの場合には、乗務員が運行の安全を確保しながら、一人でAEDを使用することとなるため、本格的な導入には乗務員への徹底した教育訓練が不可欠でございます。
 このため、今後は、そうした条件が確実に整ったところから導入を進めることとし、まずは平成十九年度からの三カ年で三路線への実施拡大を図っていく予定でございます。

○野上委員 積極的に導入を進めていっていただきたいと思います。
 次に、障害者が働く駅構内店舗について伺います。
 これは、平成十七年の第四回定例会で我が党の吉倉議員からの質疑で、障害者の働く場の提供も公営交通の役割であり、局の採算性なども考慮しながら、出店条件などについても検討を進めるとの答弁をいただいております。障害者の雇用、そして就労の場を確保することは、ユニバーサル社会の形成を目指す観点から重要な取り組みといえます。
 現在の店舗出店についての進捗状況を伺います。

○松澤交通局長 都営地下鉄の駅構内におきまして、障害者が働く店舗を設置することは、障害者の自立した社会生活を支援する観点から、公営交通として重要な役割でありまして、これまで設置に向けて、障害者団体等と具体的な条件について検討を行ってまいりました。
 その結果、使用料の負担割合や出店場所などの条件について、一定の目途が立ちましたので、平成十九年度に第一号店を出店すべく、現在準備を進めているところでございます。
 これに引き続き、新しい経営計画では、二十年度、二十一年度におきましても各一店舗、三年間で三店舗の設置目標を掲げており、その達成に向けて今後鋭意取り組んでまいります。

○野上委員 ぜひ関係局の調整を進め、第一号店を早期に実現していただきたいと思います。
 交通局の新しい経営計画では、人に優しい都営交通を目指すことが利用者への約束として挙げられております。これまで伺った二点は、その実現を図る上で、いずれも重要なものと思います。
 またもう一つですけれども、女性に優しいサービスとして、かねてから提案していた女性専用車両について、都営地下鉄では新宿線の双方向に導入をしていただき、大変好評で、多くの方々から喜びの声を聞いております。
 先日公開された映画、「それでもボクはやってない」にあるように、実際に罪で悩んでいる方も多いと聞いております。男性にもメリットがあると思います。女性専用車両の導入拡大にはいろいろと課題がありますが、都営地下鉄としてぜひ積極的に取り組まれるようお願いいたします。
 昨年十二月に新宿線で拡大したばかりなので、今回は要望にとどめて、次回提案したい……(発言する者あり)
 次に、観光振興に関連して、都営交通の利便性について伺います。
 私は、東京を訪問する国内外の観光客のために、これをより快適で利用しやすくすることが重要であると考えます。オリンピック招致を目指す東京にとって、大変重要な取り組みの一つであります。
 中でも地下鉄やバスを運行する交通局は、公営交通として、外国人にも利用しやすい交通機関を率先して目指すべきです。また、わかりやすい案内や情報の提供に取り組んでいくべきと考えます。見解をお伺いします。

○松澤交通局長 交通局におきましては、これまで、東京を観光で訪れる外国人が都営交通を利用して目的地まで安心して便利に移動できるよう、地下鉄の路線名や駅名に番号などを併記した駅ナンバリングや、路線図を多様な外国語で表記するなどの取り組みを進めてきたところでございます。
 これに加えまして、来年度からは、地下鉄全駅に設置している列車運行情報表示装置の画面や、観光客の多いバスターミナルにある路線案内板を英語、韓国語、中国語で表記することとしております。
 また、都営地下鉄のすべての路線に英語による自動放送を行うなど、外国人のお客様への案内サービスの充実に積極的に取り組んでまいります。

○野上委員 ぜひ国際観光都市東京としての安心感につながるよう、外国人にも優しい対応をお願いしたいと思います。
 次に、水道局に何点か質問いたします。
 漏水防止について伺います。
 いただいた資料を見ると、東京の水道の漏水率は、平成十七年度末で四・二%と、世界的に見ても極めて少ないです。戦後を除けば、昭和三十年代には二〇%であった漏水率が四・二%に変わってきております。
 例えば二〇%の漏水率は、現在都が保有する水源量、日量六百二十三万トンの二割で百二十万トンもの量になります。そうすると、さらに百万トン以上の規模のダム開発が必要となります。
 そこで、ダムの開発には、一トン当たりどれぐらいの費用がかかると試算しているのでしょうか。

○御園水道局長 ダムの開発費用は、建設する場所の地理的条件やダムの規模などによって異なりますが、直近の平成十年度に完成いたしました浦山ダムを例にとりますと、日量一立方メートルの水源を開発するための費用は約二十七万円でございます。

○野上委員 日量百万トン以上のダムを開発したとすると、約二千七百億円。漏水が多ければ、必要以上にダム開発を進めることになります。
 現在進めているダム開発は、むだな投資では決してなく、逆に、むだな投資を徹底して省いた上で、将来にわたる安定供給に必要な投資だと思っております。現在開発の八ツ場ダムについては、ぜひ着実な実施を要望しておきます。
 漏水は、貴重な水資源を浪費するだけではなく、水をつくるためには大量のエネルギーを使うと聞いておりますが、二酸化炭素の余分な排出にもつながる。カーボンマイナス都市づくりを推進していかなくてはなりません。
 先ほど、漏水を放置した場合、ダムの開発経費について伺いましたが、日量百万トンの水をつくるのにどれぐらいのエネルギーを消費するのか、また、そのときの二酸化炭素の排出量について伺います。

○御園水道局長 平成十七年度の水道局における電力使用量の実績で試算いたしますと、日量百万立方メートルの水をつくるために必要な電力量は、年間約一億八千四百万キロワットアワーとなり、金額にしますと約二十四億円にも及びます。
 当該電力の使用に伴う二酸化炭素排出量は、年間で約八万一千トンに達し、約三万四千台の自動車の年間排出量に相当いたします。また、この二酸化炭素排出量を森林で吸収するためには、二十三区の約四割に及ぶ広大な面積の森林が必要となります。

○野上委員 大量のエネルギーと二酸化炭素についても、ダム開発経費と同様、漏水防止により大幅に削減されるということです。環境という観点からも、むだを出さない施策といえます。今後もむだを省いて、安定供給につながる漏水防止に努めていただきたいと思います。
 最後に、飛ばしまして、地元葛飾区の問題なんですが、京成高砂駅付近の踏切について、これは何回も質疑をしておりますが、あかずの踏切であり、交通渋滞の発生や鉄道による地域の分断など、多くの問題が生じております。また、平成二十二年度には成田新高速鉄道の開業が予定されており、遮断時間がさらに多くなると。
 そうした中、京成電鉄が、成田新高速鉄道開業への対策として金町線の高架化事業を実施することと聞いております。その工事の内容と効果、そして今後の取り組み、それから高砂団地の建てかえについて、三点にわたり質問いたします。

○柿堺都市整備局長 本工事は、京成金町線の京成高砂駅付近を高架化するとともに、駅に直結する通路やエレベーターを設置するものでございます。
 京成電鉄は、昨年十二月、地元住民に対して説明会を行い、工事に着手したところでございます。
 本工事により、京成高砂駅付近の踏切遮断時間の増加防止が図られ、また駅施設のバリアフリー化が進むなど、利用者の利便性が向上いたします。
 次に、京成高砂駅付近は、踏切対策基本方針の中で鉄道立体化の可能性を検討すべき区間の一つに位置づけられております。都は、地元区が設置した勉強会に参画し、検討しておりますが、立体化に当たっては、駅直近にある高砂車庫の取り扱いなどの課題がございます。
 現在、鉄道事業者が車庫の縮小化に向けた検討を行っており、今後、こうした状況や沿線まちづくりの熟度、関連する道路整備計画、さらには現在実施中の連続立体交差事業の進捗状況などを踏まえながら、引き続き関係機関と検討を深めてまいります。
 次に、都営住宅の建てかえに当たってでございますが、老朽化した住宅を更新するだけでなく、地域の活性化や防災性の向上、住環境の整備に資することが重要でございます。
 お話の都営高砂団地は、昭和三十年代を中心に建設された住宅であり、一団地の住宅施設の都市計画が定められております。
 このため、建てかえに当たっては都市計画の見直しが必要になることから、周辺のまちづくりの動向も見ながら、現在地元区と検討を行っているところでございます。

○石川副委員長 野上純子委員の発言は終わりました。(拍手)

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