東京都議会予算特別委員会速記録第三号

○高島副委員長 高木けい委員の発言を許します。
   〔高島副委員長退席、委員長着席〕

○高木委員 東京都は、ことし、平成十九年度予算案、十三兆円を超えるという非常に大きな予算編成をしているわけであります。よく世界の大都市、また国とも比較で例えられますが、大体世界でも、国と比較しても七番目ぐらいの大きな予算を持っていると、東京都はそういわれるわけでありますから、私たち都議会も、ここで議論をして、十三兆円を超える予算を議論する場というのはやはり厳粛に、格式を持ってやらなければいけないんだろうなと思っております。きのうからの議論を聞いておりますと、どうもそういうことではない場面がたびたび見られるわけでございまして、今の時間帯も非常にやりにくいなと思いながら質問のこの席に立たせていただいたわけであります。だれとはいいませんけれども、そういう意味で、極めて都民生活に直結をする東京都の予算でありますから、きちんとした議論をもって、都民に還元をすべく、私たち議会も努力をしていかなきゃいけない、そういう気持ちで議論をしなきゃいけないんだろうなと思うわけであります。
 最初に、産業振興基本戦略についてお伺いをしたいと思います。
 これまで東京都は、創業から事業再生、技術、経営の支援、円滑な資金調達など、幅広く中小企業の支援を行ってきたと思います。私は、これは非常に評価をすべきものだというふうに思っております。
 この一月に、東京都は産業振興基本戦略を発表いたしまして、先ほど来議論になっております「十年後の東京」が目指す都市像を産業振興の面からどう推進するのかということを方向性としてこの施策で示したわけであります。
 この中で、東京の産業全体を活性化させるために、四つの戦略、十二の柱、そして三十の施策をもって取り組むということ。この資料にもありますけれども、極めて産業振興基本戦略はある意味で配慮のきいたプランだというふうに私は思っているんですが、四つの戦略、十二の柱、三十の施策をもって取り組みを行うということになっているんですが、その中でも、戦略の第一番目に位置づけられている重点産業の育成というのは、国際競争を勝ち抜くために、新製品を開発したり、そして規模を拡大しながら成長していくような、トップを走る中小企業を育てる上で重要であるというふうに理解ができるわけであります。
 しかしながら、東京の産業を支える圧倒的多数の中小企業というのは、実はこうした企業ばかりではないというのはご案内のとおりであります。中小企業の大半を占めるのは、基盤を支える中小企業でありまして、この基盤を支えている中小企業の活性化なくして東京の産業の発展というのは、私はないんだろうというふうに思うわけであります。
 そこで、産業振興の中心には中小企業を当然ながら据えるべきであって、重点産業の育成についても、その観点が実は必要なんだろうと思うわけであります。重点産業の育成という新たな取り組みを、産業の基盤を支える中小企業の育成にどのように結びつけていくのか、まずこのことから見解をお伺いしたいと思います。

○島田産業労働局長 これからますます激化するでありましょう国際競争の中で、東京の産業を発展させていくためには、多くの中小企業の基盤技術に支えられた、東京ならではの重点産業を育成していくことが重要であると考えております。例えば、大都市の課題を解決する健康、環境、危機管理産業、東京の情報発信力を高めるコンテンツ、ファッション産業、高度な技術を生かす航空機関連や情報、家電産業など、こういったものを想定しておりますが、こうした重点産業育成の波及効果をより多くの中小企業が受けとめ、発展できるよう、技術力や経営力を強化し、きめ細かな施策展開を実施していく必要があると思っております。
 具体的には、金融支援を初めといたしまして、中小企業の独自技術の開発、顧客ニーズに合った商品開発、販路開拓や知財の取得などまで、産業技術研究センター、中小企業振興公社などを活用いたしまして、さまざまな支援を行ってまいります。来年度策定いたします産業振興指針におきまして、こうした展開すべき施策を盛り込み、重点産業の育成を多くの中小企業の発展に着実に結びつけていきたいと考えております。

○高木委員 重点産業の育成を通じて、それが牽引力となって東京全体の中小企業が発展をしていく、それは一つのプランであると思いますし、それが要するに一面的な方策だというふうに思うんですね。それとともに、東京はやっぱり地域が広うございますから、東京全体の産業振興を考える上では、そういうプランと、さらに地域の特色ある産業の振興があってこそ産業振興が実現をするんだろう、こう思うわけであります。それぞれの特色ある地域の産業の集積の維持、そして活性化を図るとともに、集積を支える個性ある企業が安心して活動を続けられることが私は重要であると思っております。
 しかしながら、地価の問題でありますとか、あるいは一定規模の用地の確保というのが、首都東京においては非常に困難であることから、都外への転出や廃業を余儀なくされる企業もまた多いわけでございまして、集積の崩壊というのも危ぶまれていると思っています。
 去る十八年十二月の第四定例会でも、私が本会議の質問でも取り上げましたが、事業者の相続税の問題も、事業承継が困難になっている、相続税の問題で困難になっているという例も少なくないということをご指摘をさせていただきました。このことについては、知事からも前向きな答弁をしていただいたと記憶をいたしております。
 こうした厳しい条件のもとで、なお、活躍する企業を支えることは、首都東京の産業振興を担う東京都の重大な使命であるというふうに思っています。基本戦略にもこうした方向性は盛り込まれておりますが、地域の産業集積とその活性化に向けて、都は今後どのように取り組むつもりなのか、ご所見をお伺いいたします。

○島田産業労働局長 東京には、高度な技術力を持つ中小企業が多数存在し、集積を形成して、相互に補完、連携しております。こうした地域では企業の相乗作用が起こり、新製品の開発や新事業の創出が促進されることから、企業の立地や事業の継続を確保するとともに、集積のメリットを高めていくことが重要であります。
 このため、中小企業の大きな課題であります事業承継に対する相続税制の見直しを国に積極的に働きかけるとともに、区市町村の産業集積に向けた取り組みに対する支援を検討いたしてまいります。また、産学公の連携促進、企業間ネットワークの形成支援などにより、地域特性を生かした産業集積の活性化を図ってまいります。
 産業振興基本戦略に基づきまして、国や区市町村等と連携した多面的な取り組みを行い、東京の産業を発展させてまいります。

○高木委員 ぜひ力強く産労局として取り組んでいただきたいと思っております。
 そこで、二つばかりご意見を申し上げておきたいと思うんですが、この産業振興基本戦略は、私は本当によく目配りのきいたプランになっているのではないかなと思っています。ただ、そのことにおぼれることなく、やはりいろんな、各界各層、そして議会からの意見というのも当然あるわけでありますから、これからの東京の産業をどのように振興していくのか、共通の目標に向けてこれから柔軟な施策展開をぜひしていただきたい、このように思います。
 そしてもう一つは、実はこのプランをずっと読ませていただいておりまして、一つだけ決定的に欠けているなと思ったのは、中小企業の税制に対する東京都の取り組みということだと思っています。先ほど相続税の問題についてはご指摘をいただきましたし、答弁もいただきました。ただ、これは、国の相続税に対する政策に東京都が意見を申し上げていく、こういう限界がありますので、東京都独自でできる中小企業に対する税制というのは、ほかにももっとアイデアがあるのではないか、私は常にこういうふうに思っています。
 例えば、かつては固定資産税の前納金制度というのがあったと思いますけれども、こういうものこそ、景気が少しずつ上向いてくる中では、もう一度復活をさせるということも考えてもいいんじゃないでしょうか。中小企業の皆さんは、やっぱり景気のいいときに、あるいは利益が上がったときに、当然将来的に払わなきゃいけないものについては今のうちに払ってしまった方が得じゃないか、そんな考えだってあるわけですよ。ですから、そういう東京都が独自にできる税制面も含めて、東京の産業振興、どうあるべきかということを全庁的にやっぱり考えるべきじゃないでしょうか。そこが実はこの産業振興基本戦略の、私は、もう一つやっていただきたい仕事だというふうに思っております。ぜひご検討いただいて、次の質問に移りたいと思います。
 続きまして、理容業、床屋さんですね、理容業の問題についてお伺いをしたいと思います。
 最近、インターネット等を通じて、出張専門で理容業を営む業者及び理容師が見られるようになってまいりました。このような形態での理容業は、届け出義務がないため、実態が大変つかみづらく、現在都内でどのぐらいの業者が存在をし、何人の理容師が携わっているのか、ほとんどわからない状態であります。例えば、ある出張専門の理容業者は、ホテルの私書箱を拠点といたしまして、インターネットと携帯電話で営業を行っているようであります。(資料を示す)そのチラシが、ちょっと見えにくいんですけれども、これがそのチラシなんですが、つまり理容所を持たずに、ホテルの私書箱が受付になっているんですね。ですから、実態がないという、そういう業者さんであります。特に城南地区を中心にというふうに書いてありますけれども、営業をされているようでございます。
 理容師法によれば、本来理容師は理容所以外でその業を行ってはならないとされており、理容所の設置は、保健所に届け出をし、洗い場や消毒施設の設置が基準に適合した上で営業の許可がおりることになっております。ところが、出張理容については、理容師法第六条二のただし書き、例外規定を根拠に、現実的には理容師免許を持っていれば、自宅でもどこでも、届け出をせずに営業することができるといわれています。そうなれば当然保健所の目が届かないことになり、衛生管理など都民の衛生環境、健康維持に直結する問題が発生をするおそれがあると思っています。
 そこで、まず、理容所での営業を原則とした昭和二十六年の法改正で、理容師免許を持っていれば、例外として出張理容業が認められるとの規定が設けられたその趣旨を明らかにしていただきたいと思います。

○山内福祉保健局長 お話の理容師法の改正では、公衆衛生増進の観点から、それまで何ら制限がなかった理容師の営業場所について、原則として理容所において行うこととされました。
 また、病気等のやむを得ない事情によりまして、理容所へ行くことができない方のために、理容所以外の場所での理容師による出張理容を認める規定が設けられたものであります。

○高木委員 これはあくまでも例外規定なんですね。実は例外規定が設けられたというのは、一番大きな理由というのは、やはり身体的に不自由な方、こういう方に対しては、理容所に来られないので、それを理容師が出張して髪を切ってさしあげる、こういうことを認めていこうということだったと思うんですが、ですから、その例外規定が設けられた趣旨というのは理解ができるんですね。政令あるいは都道府県知事が定める特別の事情について、今申し上げたような特別の事情、大体四項目というふうに聞いておりますが、その配慮はやっぱり必要だと思うんですね。
 しかしながら、法律で、理容師は理容所以外でその業を行ってはならないと規定しているにもかかわらず、ただし書きの例外規定をもって、店舗を持たず、出張のみを専ら業とすることも差し支えないとしたこの法律の解釈自体は、実は今申し上げた、業を行ってはならないということと、例外だからこれはやってもいいということは完全に矛盾をしてしまうというふうに、私はこの法解釈自体に非常に疑問を持っております。ですから、こういう問題が現実として起こっているんだと思うわけであります。
 この解釈によって、保健所の目の届かない出張専門の理容業が今後ふえるという可能性も考えられておりまして、はさみやかみそりなどの衛生管理の不備によって、感染症の罹患など、直接都民の健康に被害が及ぶ可能性も否定できないので、大変心配だといわれているわけであります。先ほどC型肝炎のお話もございましたけれども、そういう意味では、感染症の問題というのは大変深刻なことでありますから、こういうところからやっぱり穴があいてしまってはいけないんだと思うんですね。
 一方、今後の高齢化社会を展望したときには、先ほど申し上げたような例外規定、身体的な理由によって理容所に行くことができない方のために、出張理容というのはますますある意味では必要になってくる都民サービスであると考えられておりまして、東京都理容生活衛生同業組合では、TOKYOケア理容師という制度をつくって、介護などの福祉に関する知識や、衛生管理に関する厳しい基準をクリアした出張理容のスペシャリスト養成に力を入れていると聞いております。
 こうした状況を踏まえて、出張理容を必要とする都民が安心してサービスを利用できるようにするために、出張理容の良好な衛生状態の確保について、都は適切な取り組みを行っていくべきだと考えますが、いかがでございましょうか。

○山内福祉保健局長 都はこれまでも、事業者からの相談等に応じて、出張理容における衛生上の注意や出張先の制限などについて指導するとともに、不適切な営業に対しては、厳格に対処してまいりました。
 出張理容については、お話のとおり、高齢社会の進展に伴いまして、都民ニーズの増加が見込まれることから、今後きめ細かい衛生管理が必要であると考えております。
 このため、新たなリーフレットを早期に作成いたしまして、理容師試験の実施機関と連携いたしまして、免許の交付時等に出張理容に関する留意事項について周知を図ってまいります。
 また、引き続き事業者団体や社会福祉関係団体等と必要な情報交換を行いまして、都民が出張理容を安心して利用できるよう、衛生水準の確保に努めてまいります。

○高木委員 ぜひお願いをしたいと思います。
 衛生面で安心できる出張理容サービスを都民に提供するためには、やはり最低限保健所の目の届く仕組みづくりが必要であり、そのためにどんな対策が考えられるのか、法改正を国に働きかけることも視野に、東京都として精いっぱい知恵を絞っていただきたいと思うわけであります。石原知事のメーンスローガンは、東京から国を変えるわけでありますから、そのことをぜひもう一度思い出していただいて、現実的にこういう問題があるということに対して、ぜひ東京都として、国に対して法改正も含めて働きかけをお願いをしていただきたい。そして、都民が安心して出張理容を利用できるように、ぜひお願いをしたいと思っております。
 次の質問に入ります。
 都市河川にかかわる諸問題についてお伺いをいたします。
 東京都では、中小都市河川の護岸や調節池の整備を進めておりますが、近年、一時間に一〇〇ミリを超える局所的集中豪雨が発生をし、大きな被害が生じているケースがふえております。先ほど我が会派のきたしろ議員も、同じような趣旨の質問をされております。
 このような豪雨に対して、東京都では豪雨対策基本方針を定めるため、精力的な検討をしていると聞いております。河川、下水道の整備だけでなく、豪雨をできる限り川に流さない流域対策、地下空間への浸水を防ぐ家づくりなどの促進、水害に関する情報提供による避難の迅速化を図るなど、ハード、ソフト両面からの取り組みを行うとも聞いております。
 私も、一〇〇ミリを超えるような豪雨に対して、総合的な治水対策が必要と考えておりますが、その中でもやはり河川の対策というのが中心であり、中核を占めると思っています。
 今後の河川整備では、過去に水害が発生した箇所や大規模な水害が発生するおそれのある箇所について、まずは五〇ミリの降雨に対応する護岸や調節池の整備を重点的に実施していくと聞いておりますけども、このような取り組みによって大幅に被害を軽減するための河川の治水対策について、改めてもう少し詳しくその内容と取り組みを教えていただきたいと思います。
 そして、それが行われた結果、どういう成果を見出すことができるのか、予想されるのか、そこも含めてお伺いをさせていただきたいと思います。

○依田建設局長 今後の河川整備につきましては、環七に囲まれた中小河川の五〇ミリ降雨に対する治水安全度の一〇〇%達成、多摩地域でこれまで水害が発生した河川の護岸整備完了など、十年後の明確な目標を設定いたしまして、その達成を目指して積極的に事業を推進してまいります。
 具体的には、区部では石神井川、妙正寺川など十三の河川、多摩では空堀川など十八の河川で護岸や調節池の整備を重点的に実施してまいります。
 これらの対策が完了いたしますと、過去三十年間に発生した水害と同規模の降雨による溢水の九割が今後解消でき、また残る一割につきましても被害の程度を大幅に減少できるものでございます。
 さらに、一〇〇ミリを超えるような集中豪雨に対しましても、住民が安全に避難できるよう、洪水情報の提供など、ソフト対策もあわせて一層推進してまいります。

○高木委員 大変心強いご答弁であったと思います。十年後には、過去の水害と同規模の降雨があった場合でも、その九割の溢水被害を防止し、残り一割についても大幅に被害を軽減することができるということでございましたが、だからといって、その一割が残されていいということでもないわけですよね。ですから、ぜひ整備水準、そしてスピードをともに上げていただいて、残りの一割を救うためにも全力を尽くしていただきたいと思います。
 そうはいっても、河川整備というのは、用地の取得や地元の理解を得るために相当の時間を要する、もちろん予算もかかるということは理解できますので、ハード対策、調節池や護岸整備やそういうことに全力を挙げて取り組んでいただくということを前提に、これ、前提ですね。前提に、緊急的に対応可能な施策であるソフト対策として、自助、共助に役立つ水害に関する情報を適切に都民に提供していただくことも必要であると考えられます。
 現在、二十三区では、洪水ハザードマップなどにより浸水予想区域はわかるんですが、実はいつあふれるかということはわからないんですね。
 そこで、今現在、都内では、どのような河川において、どのように洪水予報がなされているのかお尋ねいたします。

○依田建設局長 国土交通省が管理する荒川や多摩川などの大河川では、気象庁と国土交通省が共同で洪水予報を発表しております。これらの河川は、流域面積が大きく、緩やかに水位が上昇することから、比較的水位予測がしやすい河川でございます。
 予報には、避難準備の目安となる注意報と、避難指示の目安となる警報がございます。この三年間では、注意報は荒川などで十二回、警報は平成十六年に多摩川で一回発表されております。
 これらの予報は、報道機関や都などへ通知され、都はこれを受けまして関係区市町村及び自衛隊に周知することになっております。

○高木委員 現在、国が発表している大河川の洪水予報についてはわかったんですが、都道府県が管理をする中小河川についても洪水予報が必要だと思います。
 都では、水害の多い神田川水系で水位予測システムを開発していると聞いておりますが、この水位予測システムの開発状況、そしてその信頼性も含めてお尋ねをしたいと思います。

○依田建設局長 都内の中小河川は、集中豪雨の際には水位が上昇する時間が極めて短いことなどから、大河川と比較して水位予測が困難でございました。
 しかし、都は、神田川水系について、気象庁の一時間先までの予測降雨量と、これまで蓄積してきた雨量や水位観測データを活用し、一時間先の水位を予測できるシステムの開発に取り組んできました。
 開発したシステムを用いまして、予測水位と実際の集中豪雨時の水位を検証したところ、高い相関性が認められ、実用可能な精度であることが立証されております。
 そのため、平成十九年度には、神田川水系について、気象庁や地元区と連携し、洪水予報の発令基準や住民への周知方法など検討し、平成二十年度からの運用を目指してまいります。

○高木委員 実用可能な精度であることが立証されたと。大変心強いですね。これは、やっぱり都市部の中小河川において、水位の上昇というのが急激に起こるという中にあっては、私は画期的なシステムではないのかなというふうに思います。
 これは、そういう意味では非常に大いに評価をしたいと思いますし、恐らく全国でも初めての試みなのではないかなと思います。ですから、その成果を速やかに洪水予報として都民に還元をしていく。何かあった、集中豪雨があった、そういうときには、速やかにそれを還元していくことが必要であると思います。
 今までも水防災総合情報システムの雨量データ等をインターネットにおいて公開し、多くのアクセスがあったと聞いておりますが、インターネット等のデジタル的な情報提供だけでは、高齢者の方などに必要な情報が行き渡らない、そういう懸念もあると思います。
 そこで、災害時要援護者といわれる高齢者等への情報提供には、区市町村と連携をし、それぞれの地域の防災行政無線の活用を図ることや、テレビ、ラジオ等の放送を利用することが必要と思われますが、今お話をいただきました神田川水系における洪水予報の提供方法、どのように周知をしていくために提供していくのか、その提供方法についてお尋ねをしたいと思います。

○依田建設局長 お尋ねの高齢者などにつきましては、災害時の避難がおくれがちになることから、洪水予報を素早く、きめ細かに提供していくことが重要でございます。
 神田川水系の洪水予報は、テレビなどマスメディアを通して広く周知されるほか、都が水防管理団体である地元区市に伝達いたします。地元区市は、防災行政無線や広報車により、ハザードマップなどを活用し、地域住民に対する直接的な広報活動を行っていきます。
 今後とも都は、地元区市や消防、警察などから成る水防連絡会などにおいて、高齢者など災害時要援護者にも迅速かつ確実に情報が伝達されるよう要請するなど、関係機関との連携を強化してまいります。

○高木委員 万全の体制でぜひお願いしたいと思います。
 しかしながら、神田川流域以外でも、中小河川の流域には水害の不安を抱く多くの都民がいることもぜひ忘れないでいただきたいと思います。さきの本会議でも取り上げましたが、私の地元の石神井川もその一つであります。
 そこで、ここ数年大きな水害が発生している都内の他の中小河川についても、水位予測システムを活用し、洪水予報を行うべきであると考えておりますが、今後の取り組みについて、どのように、どんなスケジュールで行っていくのか、お尋ねをしたいと思います。

○依田建設局長 水害のおそれがあります他の都内の中小河川につきましても、先行的に実施しようとしております神田川水系での取り組みを踏まえまして、河川ごとの水位予測システムを構築の上、洪水予報の早期実現を目指してまいります。
 今後とも、河川の整備を推進するとともに、こうしたソフト対策を充実し、都民生活の安全確保に努めてまいります。

○高木委員 早期実現をぜひ目指していただきたいと思います。
 基本的には水害が発生しない治水対策の構築というのが、河川を預かる建設局の任務の一つであると思いますし、我が会派自民党も再三にわたってこの問題については、東京都内全体の河川の問題として、治水対策については質問あるいは意見を申し上げているつもりでありますから、自民党も一生懸命応援をしていきたいと思っています。そういう意味で、東京都の治水対策に対しては、ぜひ一体となって努力をさせていただきたい決意を私からも申し上げておきたいと思っております。
 安全・安心な首都東京を目指す上でも、ぜひこれから対策を積極的に進めていただくようにご要望をさせていただきまして、次の質問に移らせていただきます。
 続きまして、学校教育の課題、給食費未納問題も含めて、学校教育の課題について質問させていただきます。
 まず初めに、私学の問題について取り上げます。
 現在、国において、地方教育行政の組織及び運営に関する法律、地教行法の改正が検討されると聞いております。
 先日の新聞報道によると、私立学校の未履修が公立学校の二倍以上に達していたことが発端となって、私立学校について教育委員会が関与できるようにしようとしているというふうに新聞報道にありました。
 私もこの新聞を見て、一瞬非常にびっくりしたんですが、新聞報道が正しいのか正しくないのかということは別にして、これだけを見ると、本当に私立学校に対して教育委員会を関与させる方針を固めたというふうに決定されたように書いてありますので、こういうのはやっぱり問題だと思うんですね。
 先ほど来、石原知事の問題も取り上げられておりますけども、マスコミのこういうミスリードというのは、本当に私は問題だと思いますね。こんなのまだ固めてないと思いますよ。にもかかわらずちゃんと新聞に載ってしまって、これだけを見た場合には、ああ、そうなのかと。これ見た人はみんなびっくりしちゃうと思うんですね。
 確かに未履修の問題などを含めて、私学であっても守るべき最低限のルールというのはあるわけでございまして、未履修の問題については、各学校において責任を持って自律的に改めるべきだというふうに思っています。
 しかしながら、一方では、教育の問題は未履修のような部分的な問題だけでは論じられない。学力を向上させたり、個性を伸ばしたり、社会に適応する人間を育てるといった教育の本質にかかわる問題も念頭に置いて、広くこの議論をしていくべきだろうと思うわけであります。
 東京の私立学校は、そうしたことを踏まえて、それぞれ建学の精神や教育理念に基づき、創意工夫による個性的で特色ある教育を積極的に展開をしてきましたし、今も展開をしているわけでございます。
 例えば私の地元の北区王子というところは、かつては王子駅は女子校銀座といわれたほど学校が多かったんです。今、こういう少子化の時代ですから、ほとんどの学校が、幾つかを除いて共学になりましたけども、それほど学校の多いところでございました。
 そこで、先日行われた東京マラソンで、女子の十キロのスコアというか、結果を見ましたら、第二位から第八位まで、実は私の地元の順天学園高校の生徒が独占をしているんです。(発言する者あり)ありがとうございます。
 なぜかというと、この学校には実は駅伝をやるクラブがございまして、毎年やっている京都の女子高校駅伝には東京代表でいつも出ている。そういう、一つの例ですけども、個性的な教育をやっていて、結果として東京マラソンで第二位から第八位までを独占するという結果になったわけですね。
 ですから、こういう東京の私立学校の実績というのがあるわけでございまして、このようなところに教育委員会が要するに指導していくなんていうことは、やはりナンセンスなんだと私は思います。
 そこでお伺いをしたいんですが、このような東京の私立学校の実績をどのように評価をしているのか、お伺いをしたいと思います。

○渡辺生活文化局長 東京では幼稚園から大学まで、多くの子どもが私立学校に通っており、幼稚園では園児の九割、高等学校では生徒の五割以上を私立学校が占めております。
 ご指摘のように、私立学校が建学の精神に基づき、幼稚園から大学までの一貫教育、情操教育や人間教育、学習がおくれがちな子どもへの懇切丁寧な教育など、個性的で特色ある教育を行った結果、多くの保護者や生徒の信頼を得ていると考えております。

○高木委員 局長ご答弁のとおりだと、私も全く同感であります。私立の小学校や中学校で受験生がふえているというのも、そのあかしだと思うんですね。それだけやはり都民から信頼を得ている、それが今の私立学校、私学だと思います。
 それはなぜそうなったかといえば、私立学校の自主性、独立性を尊重した教育方針、そして具体的なカリキュラムが組まれているからだろうと思うわけであります。
 今回の地方教育行政の組織及び運営に関する法律の改正により、本来、公立学校を設置し、設置者として指導している教育委員会が、私立学校の教育についても指導するということになると、この自主性、独立性を損なうおそれがあります。結果として、実績のある私学の活動を阻害し、多くの都民の期待を裏切ることになるんではないかということも考えられます。
 さらに、私立学校はその自主性に基づき、中高一貫教育や習熟度別授業などさまざまな手法を生み出し、日本の教育界をリードしてきています。国は、こうした私立学校の成果を取り入れながら、教育改革を行っているんではないかというふうにも考えられるわけです。
 ただ単に未履修問題があったというだけで、私立学校に対して教育委員会を関与させる仕組みにすることが、日本の教育にとって、将来にとってよいことなのかどうか、甚だしい疑問を感ぜざるを得ません。
 そこで、今回の地方教育行政の組織及び運営に関する法律の改正に対して、知事はどのように考えられるのか、何度もこの問題についてはご答弁いただいていると思いますが、改めてご答弁をお願いしたいと思います。

○石原知事 大分以前のことでございますけれども、私が尊敬しておりました政治家の一人の奥野誠亮さんが文部大臣を務めましたときに、ある席で、大分前のことですが、既に、公立の学校は私学に学ぶべきだということをいわれて、その印象で今でも覚えております。
 今日の公立に比べての私立学校の高い評価は、これはやはり私立学校の自主性に裏打ちされた努力の結果であると思います。
 東京における私立学校の実績を考えると、公機関である教育委員会が私立学校を指導することは、僣越、論外な話だと私は思います。これは、教育の現場を知らない国の官僚がいかにも考えがちなことだという気がしますが、絶対にあってはならないことだと思います。
 私も竹花副知事にいわれて、大体これがレベルだという都立の高等学校をひそかに視察しましたが、その乱脈、荒廃には驚きました。そういう現場を知らない役人が国で考えそうなことでありますけども、東京の公教育は、今後も私立学校と公立学校がそれぞれの教育内容で切磋琢磨して、その結果、さらに発展するべきものと考えております。
 法律改正に当たって、間違っても私立学校の自主性を侵すことのないようにするべきだと思います。

○高木委員 ありがとうございました。全くそのとおりだと思います。
 この問題は、東京の教育において非常に大きな問題、全国的にも大きな問題だと思いますが、東京は私学が集中をしておりますので、都議会としても国に対してどのようにアプローチをしていくべきなのか、きちんと考えていかなければいけない、そういう重大な課題だと思っているわけであります。私たちもそういう視点で、この私学の問題をこれからも取り上げていきたいと思っております。
 続きまして、最後の質問になりますが、昨今話題になっております給食費の未納問題についてお伺いをしたいと思います。
 学校現場では、給食費の未納が発生をするたびに、教職員、あるいは学校事務職員が対応しております。このことは非常に教職員の負担になっておりまして、また市区町村でもその対応に苦慮していると聞いております。
 こういう給食費未納の問題というのは、もちろん払わない保護者のモラルの問題ですとか、いろんな側面があるとは思いますが、区市町村を都教委としても支援をしていくべきだというふうに思うんです。どのように対策を講じていくか、ぜひ教育長のご答弁をお願いしたいと思います。

○中村教育長 ご指摘のように、昨年秋実施いたしました文部科学省の調査結果におきましても、都内の公立小中学校では、給食費未納への対応者のうち、学校の担任の先生が五六・五%、それから学校事務職員が三九・五%、これが対応に追われております。本来、教育の充実などの業務に取り組むべき教職員の時間や労力が、この未納問題に割かれている、こういう問題がございます。
 都教育委員会といたしましても、給食費未納は看過できない問題であるため、未納解消に関する他府県や都内の好事例などを収集し、その内容を情報提供するなど、区市町村教育委員会を支援してまいります。

○高木委員 時間がありませんので、端的にお伺いするんですが、この問題のやはり本質というのは、払わない保護者がいるということなんですね。払わないというのはどういうお考えなのかなと思うんですけども、現実に払わない親がいる。払わない親に育てられる子どももいる。この悪い連鎖というかですね、そういうものが発生をしかねないという意味では、親に対してどう自覚を促していくのかということも一つの課題だろうと思っています。
 それに対してどういうお考えを持っているのかということを一つ伺わせていただきたいと思います。
 それともう一つは、学校の給食費以外の学校徴収金というのがありますが、卒業アルバム代ですとか、いろんな項目があります。その学校徴収金全体についても未納が生じている可能性があると思います。このことについて掌握をする必要が私はあると思いますが、どう対応していくのかということ。
 そしてもう一つは、就学援助などの給付を受けながら、これらの学校徴収金の未納という事例も少なくないというふうに聞いております。これは校長先生に直接支給をするという制度もあるようですが、未納防止をどう働きかけていくのか、ご答弁をお願いしたいと思います。

○中村教育長 保護者の問題でございますけれども、保護者が給食費を支払わない背景には、保護者の規範意識の欠如、あるいは食育や学校給食の意義が十分理解されていないというふうに考えております。
 都教育委員会といたしましても、食育の重要性、学校給食の意義について、保護者の方々へ理解を促すよう、さまざまな機会を通じまして区市町村に働きかけてまいります。
 さらに、都教育委員会で進めております子どもの生活習慣確立プロジェクトにおきましても、食育をテーマとして取り上げまして、学校給食の意義を広く啓発してまいります。
 次に、学校徴収金の問題でございます。ご指摘のように、修学旅行費だとかいろんな学校徴収金もやはり未納状況にあります。
 設置者である区市町村教育委員会において把握し、対処していく必要があると考えておりますけれども、今後、区市町村教育委員会と情報交換を行ってまいります。
 次に、未納防止事例を示すことでございますけれども、学校長への直接納付を円滑に行っている事例、これは確かにご指摘のとおりございまして、そういった情報を集めまして、学校徴収金の未納防止に取り組む区市町村を支援してまいりたいと、こういうふうに考えております。

○川井委員長 高木けい委員の発言は終わりました。(拍手)
 この際、議事の都合により、おおむね三十分間休憩をいたします。
   午後六時十九分休憩

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