東京都議会予算特別委員会速記録第三号

   午後三時二十三分開議

○高島副委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 神林茂委員の発言を許します。

○神林委員 これより、都政全般にわたって何点か質問いたしますので、明快なる答弁をお願いいたします。
 まず初めに、格付について伺います。
 都は、去る二月一日、ムーディーズ社からの格付を取得いたしました。外債はトリプルA、国内債もダブルA2と高い評価となり、都政にとっても明るい話題ではないかと思います。
 私は、高い格付は、我が党が知事とともに進めてきた財政再建の努力の結果だと思いますし、東京の大都市力を国際的にPRする有効なツールを得て、オリンピック招致にも有利になると期待しております。
 特に、国内債は国債よりも三段階上となりました。知事はかねがね、都の財政力から見れば、国より格付は上が当たり前といっていましたが、その正しさが証明されました。
 そこで、まず、格付取得の意義について知事の見解を伺います。

○石原知事 格付は、たった三個の英数字で都市力なり国力を評価する、ある意味で非常に冷徹な物差しだと思います。その評価の前にはかなり緻密な分析というものが行われていると思いますから、これは政治家に対する支持率などよりはずっと当てになる数字だと思いますけれども、今回、外債はトリプルA、国内債は三番目のAa2、ダブルA2を取得しました。都財政の健全度が証明されたと思っております。
 国は、圧縮したとはいえ、まだ借金依存体質から抜け切れておりません。借金がGDPの一・八倍もあり、あのイタリアと比べても一・五倍も高い。一時期、私、イタリアに非常に同情しておりましたが、あっという間にこれをマイナスの意味で抜いたわけですけれども、いずれにしろ、国よりも高い格付をてこにして、オリンピック招致や都市再生に弾みをつけていきたいと思っております。

○神林委員 まさに東京都の財政力の強さが国を上回ることのあかしとなりました。
 今後、財政再建を達成した都は、新しい都市モデルである「十年後の東京-東京が変わる-」の実現による都市再生を推進していくこととしておりますが、その財源としての都債をいかに活用するのかが重要となります。
 また、海外の諸都市とのオリンピック招致レースを勝ち抜いていくためには、都市力、とりわけ財政力の高さをアピールすることがポイントになると考えます。
 そこで伺いますが、今回の格付はこうした取り組みにどのような効果をもたらすのでしょうか。伺います。

○谷川財務局長 都はこれまでも、格付のない形ではありながら、国内の自治体では唯一、外債を発行してまいりました。今回の格付を踏まえまして、来年度以降も外債を発行し、都市再生の財源として適切に活用してまいります。
 また、高い格付は金利軽減効果もございます。仮に、今年度と同様の条件、今年度、五百億円で二十七年償還で起債したわけでございますけれども、それと同じようにした場合に、金利が〇・一%下がったといたしますと、年間五千万円、合計で十三億五千万円のコストが削減できる見込みでございます。
 また、国際的な機関からの評価である格付は、都の高い財政力を客観的に示すものでございまして、オリンピック招致選考を勝ち抜くための有力な手段の一つになると考えております。

○神林委員 ただいまも答弁にありましたとおり、都市再生にも、オリンピック招致にも効果の高い格付を取得したわけですが、ただ取得しただけではなくて、その効果を最大限に高めることが重要だと考えております。
 そこで、この高い格付をてこに今後どのような取り組みを進めるのか、伺います。

○谷川財務局長 格付の効果を高めるためには、海外に向け、東京の財政力を国際的に発信することが重要でございます。
 そのため、十九年度には、オリンピック招致やシティーセールス等、他の施策と連携するとともに、外国人投資家向けのPR活動の実施や、高い格付を最大限に活用しながら、英語版ホームページの充実などに取り組みまして、東京の都市力を積極的に発信してまいります。

○神林委員 せっかく高い評価を取得したわけでございます。ぜひ、それをしっかりと効果につなげていただきたいと思います。
 次に、羽田空港に関する諸問題について伺います。
 羽田空港再拡張事業は、平成二十一年末の供用開始に向けて動きを始めています。一年前、平成十八年第一回定例会での私の質問に対し、石原知事は、国や地方自治体とも調整し、跡地利用に主体的に取り組むとの意気込みを表明されました。先週、大田区が平成十九年度予算で空港対策積立基金に四十億円を計上することが明らかになるなどの動きも見られましたので、改めて跡地に関して質問いたします。
 まず、前回の質問以降の跡地に関する動きと、跡地の土地利用検討に関する今後のスケジュールについて伺います。

○柿堺都市整備局長 昨年十二月、国と都と地元区から成る羽田空港移転問題協議会、いわゆる三者協が開催されまして、国から、跡地の範囲と面積が提示されました。これを受けまして、今後、跡地に関する議論が本格化すると考えているところでございます。
 都といたしましては、三者協を来月に開催し、跡地利用の基本的な考え方や計画策定の具体的な進め方などについて協議してまいります。

○神林委員 間近に三者協を控えられているということでございますけれども、空港跡地の利活用をどのように図っていくのかは大変重要であります。跡地には、川に面する特性を生かした親水性の高い空間の整備、増大する人と物の流れに伴う交通の処理、物流施設の立地に対する対応、大田区の地場産業であるものづくりとの連携など、さまざまな課題があると私は考えております。
 したがって、私は、跡地利用の検討に際しては、ただ跡地の範囲に限るのではなく、広域的な観点からも考えていくべきと思っておりますが、都はこの点についてどう考えているのか、お聞かせください。

○柿堺都市整備局長 羽田空港跡地には、飛躍的に増大する空港機能をサポートするとともに、空港の持つ可能性を活用した利用計画を立てることが望ましいと考えております。また、再拡張、国際化、空港の二十四時間化による人や物の流れの増大に対応するためには、跡地だけでなく、周辺地域の役割が重要でございます。
 したがって、委員のご指摘のように、跡地利用を考える際には、周辺地域との関連性にも十分配慮していく必要がございます。都は今後、このようなことも視野に入れながら、国や地元区と協力し、跡地利用に主体的に取り組んでまいります。

○神林委員 地元地域の議員として、空港跡地の開発とともに、空港周辺地域の環境や産業も同時に前進することを強く望むものであります。ぜひ、周辺地域とのかかわりに十分配慮しながら跡地利用を進めてもらいたいと思います。
 ところで、地元大田区では、平成十八年十二月、国土交通省提案の五十三ヘクタールとは別に、海老取川沿いの地域を親水化するよう要望しております。海老取川沿いの地域は、市街地と海老取川を挟んで隣接する地域で、市街地と最も密接な地域であり、都で整備されている緑道、武蔵野の路の延長線上にあり、水際線の整備も期待されております。本当は地図で皆さんにお見せしたいところでございます、きょうは持っておりませんが。
 また、海老取川とB滑走路に挟まれた旧整備場地域は、いまだ具体的な空港用地としての活用が示されておりません。跡地を有効活用する観点からも、跡地と連携した利用が望まれます。
 これらの地域を適切に活用することは、跡地の持つポテンシャルをより高めるためにも重要な課題であると思います。したがって、跡地利用の検討に加え、海老取川沿いの地域と旧整備場地域についても検討されることを提案しておきます。
 三つ目の質問としまして、また、再拡張事業は、平成二十一年末を目途に完成、供用開始される予定です。再拡張後は、発着容量が一・四倍に増加し、国際旅客については年間七百万人の利用が見込まれております。再拡張、国際化により、これまで以上に社会経済の活性化や国際競争力の向上に資することが期待されます。
 国際競争力向上のためにも、再拡張後における羽田空港への鉄道アクセスを充実させるべきと考えますが、現在の取り組み状況について伺います。

○柿堺都市整備局長 羽田空港の持つポテンシャルを十二分に発揮することは、鉄道アクセスの強化が重要であると考えております。
 現在、京浜急行線では、京急蒲田駅付近の連続立体交差事業にあわせ、空港への直通運転の拡充に向けた駅改良工事が行われております。また、東京モノレールでは追い越し施設の建設が進んでおります。さらに、国際線ターミナルの開業に合わせ、両線それぞれが新駅を設置する予定でございます。
 これらにより、輸送力の大幅な増強や時間短縮など、利便性が向上し、羽田空港へのアクセスの強化がなされることになります。

○神林委員 今のご答弁の中に、JR蒲田と京急蒲田を結ぶ蒲蒲線の問題がちょっと抜けておりましたが、ぜひそういう部分についても検討を引き続きお願いしたいと存じます。
 羽田空港と地元がともに発展していく、よい関係を築いていくことが大切であります。そのために、羽田空港へのアクセス強化はぜひ進めていただきたいと思いますし、また、羽田空港の持つポテンシャルを最大限に活用して、跡地を中心とした周辺のまちづくりを進めるためには、大田区などの地元自治体や民間との連携が必要不可欠であると考えます。都としても、こうした点を踏まえ、今後さらに積極的に取り組んでいただきたいと存じます。
 第三点目の、水と緑の回廊で包まれた美しいまち東京を復活させるについては、既に我が党より何点か質問しておりますので、極力重複を避け、ここでは、今後取り組む上で十分な検討を加えていただきたい点について質問いたします。
 「十年後の東京」には、水と緑の回廊で包まれた美しいまち東京を復活させるため、東京の成長過程で失われた、水と緑に囲まれた都市空間を再生するとともに、美しい都市景観を創出し、東京の価値をさらに高めることが重要な目標となっています。
 私はかねてから、水と緑のネットワークづくりということをみずからの政策の一つに掲げ、取り組んでまいりました。目指すべき方向は同一ではないかと思います。この美しいまち東京の復活に向けた取り組みとしては、大きなネットワークづくりがポイントの一つと考えますが、見解を伺います。

○山口知事本局長 東京をさらに高いレベルの成熟した都市としていくためには、ご指摘のように、美しいまち東京を実現していくことがぜひとも必要でございます。現在、都心には、ニューヨークのセントラルパークの二倍近い豊かな緑がございますが、分散しているため、有機的に結びつけた活用がなされていないのが現状でございます。
 このため、「十年後の東京」では、臨海部に整備する海の森から皇居、明治神宮外苑、代々木公園などの既存の大規模な緑地を、外堀通りなどの幹線道路の街路樹で結びまして、グリーンロードネットワークを形成して、風の道を創出していくことを打ち出しました。
 東京を水と緑の都に再生し、その貴重なレガシーを次代に継承してまいります。

○神林委員 今、答弁をお聞きしまして、十年後に向けて大きなネットワークづくりを目指されていることがほぼ理解できましたが、私は、そこに、利用する側の視点を取り入れていただくことを要望しておきたいと思います。
 従来の緑あふれる都道や区道、緑道の計画や整備は、ネットワークの視点が十分でなく、運河や河川、大通りや建築物などによって各地で分断されており、歩行者や自転車が行き来できる対応ができておりません。近年、ジョギングやサイクリング愛好者が増加する中で、地図上だけの緑のネットワークではなく、実際に利用する方々が快適に行き来、活用できるようにつなげていくことを可能な限り進めていくべきだと考えておりますが、見解を伺います。

○依田建設局長 道路と河川の遊歩道や公園の緑道を結び、快適な歩行空間の連続性を確保することは重要でございます。
 都はこれまで、道路の新設や拡幅に当たって、緑豊かな歩道や自転車道のネットワークの整備に努めてまいりました。具体的には、上野公園と隅田川のテラスを結ぶ浅草通りや、大田区六郷から多摩川サイクリングロードを経由して多摩湖自転車道とを結ぶ調布保谷線などで、現在、事業を実施しております。引き続き、虎ノ門と新橋を結び、さらには臨海部に至る環状第二号線などにおいて、にぎわいのある歩行空間の創出に努めてまいります。
 今後とも、国や区市町村と連携を図り、快適で緑豊かな歩道など、利用者がネットワークを実感できるよう、積極的に取り組んでまいります。

○神林委員 これはまだこれからつくるということでございますので、たくさん要望はあるんですけれども、簡単に列記させていただきますと、課題としては、このほかにもたくさんあるわけですが、自転車道と歩道の分離、それから十分な自転車駐車場の確保、常夜灯や緊急通報システムなど、青少年のたまり場や犯罪の温床にならない対策、段差解消など障害者に優しいレイアウト、親水性をさらに生かして取り入れていく、こういうこともじっくり検討していただいて、できてからではなくて、計画の段階からしっかりと利用者からの視点を取り入れた取り組みを導入していただくことを要望しておきます。
 次の質問でございますが、水と緑の回廊で包まれた美しいまち東京は、それぞれ地元の方々が参画したい地域ごとに特色あるものであってほしいし、管理運営は基本的に愛着心のある地元に依頼すべきものであります。東京都は全体計画や造成を担当し、最大限地元地域の活用を図ることが大切だと考えます。
 各地域の地元の方々にさまざまな場面で参画いただき、管理運営も地元の町内会やボランティア団体などに積極的に委託して、地域の活用を図るべきと考えますが、見解を伺います。

○依田建設局長 都は、安全で快適な道路の維持管理に努めておりますが、地域の方が身近に親しみ利用するには、歩道における植栽の手入れや清掃などは、地域の住民や団体と協働して行うことも大切でございます。
 そこで都は、平成十四年度から、住民のボランティア活動を通じた歩道の良好な維持管理などを目的とする、ふれあいロード・プログラム事業を実施しております。現在、地元の町内会、商店会、学校、企業など五十四の団体が、花の植えかえや落ち葉の清掃などの活動を行っております。
 今後とも、地域に愛着心のある地元の方々の理解と協力を得ながらボランティア活動の輪を広げ、親しまれ潤いのあるまちづくりに取り組んでまいります。

○神林委員 この質問の最後に、一つだけ要望をつけ加えさせていただきますと、先ほども、きたしろ委員の方でも若干出ましたけれども、都内の土地の大部分を占める民有地に対しても、緑をふやすために、都からの働きかけや助成に積極的に取り組むべきであることを、あえてつけ加えさせていただきます。
 「十年後の東京」の中で、都は、災害に強い都市をつくり、首都東京の信用を高めるとしています。そこで、広域的な防災の拠点として期待される東京臨海広域防災公園の整備について質問いたします。
 東京臨海広域防災公園は、首都圏の基幹的広域防災拠点として、国との役割分担のもと、事業が進められていると聞いています。先般取りまとめられた東京都地域防災計画の素案でも、東京都の防災機能を向上させるためには、国や隣接県などとの連携が必要としており、本公園は大変重要な役割を担う施設であると認識しております。
 また、本公園が防災拠点として機能するためには、計画地が臨海部にあることから、液状化対策のための地盤改良が必要と考えます。
 そこで、都立公園のこれまでの取り組み状況と地盤改良について所見を伺います。

○依田建設局長 東京臨海広域防災公園は、地震発生時に国の現地対策本部や広域支援部隊のベースキャンプになるなど、首都圏の広域的な防災拠点機能を担う重要な基幹施設として計画されております。
 本公園は、国と都が連携して整備し、全体面積約十三・二ヘクタールのうち、北側六・七ヘクタールが国営公園、南側六・五ヘクタールが都立公園となる予定でございます。これまで都は、用地取得や実施設計などを行ってきており、現在、事業認可手続を進めております。
 地盤の改良につきましては、地震発生時に防災拠点としての機能が発揮され、円滑な活動が行われるよう、広域支援部隊などの車両が通行する園路で実施する予定でございます。

○神林委員 東京湾北部地震は、地震発生の蓋然性も高く、被害規模も大きいとされており、都が昨年発表した首都直下地震による東京の被害想定でも、甚大な被害が予想されています。
 首都東京の安全性を高めるためにも、基幹的広域防災拠点の実現に向け、本公園を早期に整備、開園すべきと考えますが、所見を伺います。

○依田建設局長 東京臨海広域防災公園は、首都圏における、いつ起きてもおかしくない大規模な地震災害に備え、国と連携して早期に整備を進めていく必要がございます。
 このため、国営公園部分の本部棟建築工事や地盤改良工事の進捗状況に合わせ、都は、園路の地盤改良工事を平成十九年度末に完了する予定でございます。これにより、地震発生時には、物資輸送の中継や広域支援部隊のベースキャンプなど、国営公園部分と一体となって、防災拠点としての基本的な機能を果たすことが可能となります。
 引き続き整備を進め、平成二十二年度の公園の全面完成に向け、積極的に事業に取り組んでまいります。

○神林委員 震災対策は、それこそこの東京都にとっては宿命的な課題ともいえますが、災害に強い東京の実現を願って、この質問を終わります。
 続いて、水道事業について伺います。
 知事のわきにあるお水は、東京の水道水だと思って、実はこれから安心して質問ができますので、よろしくお願いいたします。
 最新の高度浄水技術によりつくられた東京の水道水は、世界に誇る安全でおいしい水であり、知事も、今お話ししましたとおり、ペットボトル「東京水」を頻繁に取り上げております。そうしたこともあるのでしょうか、販売以来五万本以上を売り上げ、大変好評であると聞いております。まさに東京の水道水のおいしさが認められたあかしといえると思います。
 ところで、安全でおいしい水を供給するためには、原水である河川などの水質が良好であることが何より一番だと思いますが、例えば清流で有名な四万十川を調べてみますと、水道水としての適応性では、当然のことなのかもしれませんが、最高評価であるAAであり、カビ臭原因物質などは検出されていません。
 カビ臭といえば、都の主な水源である利根川水系では、昭和四十七年ごろから、夏になると、原水の水質が原因で水道水からカビ臭が発生し、多くの苦情があったと聞いたことがあります。そこで水道局では、オゾン処理と生物活性炭処理を組み合わせた高度浄水処理を導入したとのことです。その結果、現在ではカビ臭はなくなったと聞いております。
 そこで、高度浄水処理にはどのような効果があるのか、具体的な数値などでお答え願います。

○御園水道局長 水道局では、安全でおいしい水を供給するためにさまざまな取り組みを行っておりますが、高度浄水処理につきましては、より高いレベルの水質が確保できますことから、利根川水系の浄水場に順次導入をしております。
 高度浄水処理の具体的効果は、カビ臭の原因となります2-メチルイソボルネオール、ジオスミン、また、カルキ臭の原因となりますアンモニア態窒素を一〇〇%除去できるとともに、トリハロメタンのもとになります物質につきましても、約六〇%除去することができます。さらに、原水への油混入による水質事故などによりまして急激に水質が悪化した場合におきましても、より高いレベルの安全性を安定的に確保することが可能でございます。

○神林委員 カビ臭の原因となる物質は一〇〇%除去できるほか、よく水道水はカルキ臭いといわれることがありますが、その原因物質も一〇〇%除去できるとのことで、大変すばらしいものであります。そして、高度浄水処理によって東京の水道水がおいしくなったことを改めて認識いたしました。
 ところで、私の地元には、何と驚くべきでございますが、三郷浄水場からの水が供給されていると伺いました。その三郷浄水場では、現在、日量百十万トンある施設能力の半量について高度浄水処理が導入されておりますが、さらに全量導入に向け、平成十九年度から二期工事に着手するとのことです。
 そこで、これまでの浄水場への高度浄水処理の導入実績、それから、今後の予定はどうなっているのでしょうか。また、全体の事業費はどれくらいになるのか、全部まとめて、あわせて伺います。

○御園水道局長 高度浄水処理につきましては、平成四年から金町浄水場、三郷浄水場、朝霞浄水場に順次導入をしてきており、平成十七年度末における利根川水系の浄水場からの配水量に占める高度浄水処理量の割合は約五七%でございます。現在、三園浄水場、東村山浄水場において建設を進めておりまして、また、金町浄水場でも第三期工事に着手したところでございます。
 今後、平成十九年度中には三郷浄水場の第二期工事に着手する予定でございまして、平成二十五年度末までに、利根川水系のすべての浄水場からの配水量を高度浄水処理できるよう整備を進めていきます。
 これらの整備にかかわる全体の事業費は、これまでの投資と今後の投資を含めまして約二千三百億円と見込んでおります。

○神林委員 ただいまの答弁で、高度浄水処理を導入すれば大きな効果がありますが、一方では、整備費も、ただいま答弁のように二千三百億円と非常に巨額でございます。これだけの投資を行うのであれば、その投資に見合った効果というのが必要なのではないかと思います。
 そこで、高度浄水処理に対して優越性をいろいろと質問したいと思います。
 私は、ボトルウオーターと、まず水道水を比較してみました。水道水の給水原価は一トン当たり二百十二円と聞きましたが、一方で、「東京の物価」という資料によりますと、二リットル入りボトルウオーターの平均価格は百七十円で、水道水の約四百倍となっております。水道水がいかに安いかということがわかります。
 ところで、水道局のパンフレットを見ますと、トイレが二八%、ふろが二四%、洗濯が一七%と、飲み水以外の生活用水として使われているのが大半でございます。こうした用途にまで何千億円もかけて高度浄水処理した水を配らなくとも、飲み水だけであれば、浄水器を設置すれば足りるのではないかということを考える方もいると思います。
 そこで、高度浄水施設を整備した場合のコストと、浄水器を設置した場合のコスト比較をするとどうでしょうか、伺います。

○御園水道局長 ご指摘のとおり、高度浄水施設の整備に当たりましては多額の経費が必要となりますが、水道局では、大規模施設の建設に当たりましては、事前にコスト比較を含めた事業評価を行っております。来年度に工事着工いたします三郷浄水場の第二期高度浄水施設と浄水器使用の一般家庭一カ月当たりの平均コスト比較では、高度浄水処理が約二百四十円、浄水器一台の場合が約千八十円となっておりまして、高度浄水処理は、浄水器を使用した場合の四分の一以下のコストでございます。

○神林委員 今ご答弁にありましたとおり、浄水器をつけるよりも高度浄水処理が何倍も安いということでございますね。少し意外な感じもしますが、都の水道が毎日四百万トンを超える量の水を処理していることを考えると、まさに規模のメリットといえるのではないでしょうか。
 それでは、次に、飲み水とその他の生活用水を別々に配管して配った方がよいという、こういう意見もあろうかと思いますが、これについては、比較をいたしますとどうでしょうか。念のため伺います。

○御園水道局長 飲み水とその他の生活用水を別々に配るためには、現在の水道施設とは別に、飲み水専用の新たな水道施設が必要となります。これに要する費用といたしまして、新たな給水所、送配水管の整備のほか、各建物での給水装置の工事費など約五兆円が必要と見込まれ、使用者の負担が増大することとなります。
 さらに、新たな送配水ポンプなどの稼働に伴うエネルギー消費増などの環境負荷の増大や、道路下に送配水管を布設する施設整備工事に伴う生活環境への影響なども見込まれます。

○神林委員 最近では、ひとり暮らしのお年寄りの方もふえてきましたし、また、生活の苦しい方なども含めて、すべての都民が浄水器をつけて、それを適正に管理していくことは難しいのではないかと思います。また、再開発などの場合には、用途別に配管し、循環利用することが適していることもありますが、ただいま局長から答弁がありましたように、用途別に配管することは、社会全体で見るとやはり資本の二重投資で、むだということになると思います。
 高度浄水処理は、一つの浄水処理システムであらゆる用途に使うことができ、また、単に金をかけたハイテク利用だけに頼っているわけではなく、コストや処理方式などあらゆる面からすぐれているものということがわかりました。計画どおり、平成二十五年度までに利根川水系の全浄水場に導入していただきたいと存じます。
 ところで、おいしい水の供給ということでは、単に高度浄水処理を導入すれば事が足りるということではないと思います。水源から蛇口までに至るまでのきめ細かな水質の管理も必要なのではないでしょうか。
 水道局が昨年暮れに公表した東京水道経営プラン二〇〇七では、水質管理の徹底の一環として、残留塩素の低減化という施策を実施していくとのことですが、具体的にはどのような取り組みを実施するのか、また、その効果についてもあわせて伺います。

○御園水道局長 水道水の衛生確保のためには塩素の残留が必要でございますが、現在は浄水場のみで塩素注入を行っておりまして、浄水場から離れた地域においても最低量を常に確保する必要がございます。このため、浄水場に近い地域におきましては高い濃度にならざるを得ない場合がございます。カルキ臭の原因の一つとなっております。
 近年、水道水の安全性の確保はもとより、おいしさの向上が大きな課題となっておりますが、このため、都独自のおいしさに関する水質目標を設定いたしまして、中継点であります給水所で新たに塩素注入を行うことによりまして、浄水場での注入量を減らしていくことにしております。こうした取り組みを初め、よりきめ細かい水質管理を行い、残留塩素濃度について、ほとんどの人がにおいを感じない水準以下にしてまいります。

○神林委員 この項は、知事に最後にお伺いしたいと思います。
 今後、高度浄水処理の導入が進められるとともに、都内全域で残留塩素が低減化され、カルキ臭のないおいしい水が供給されれば、ますます東京の水道の評判は高くなるでしょう。こうしたきめ細かい対応は着実に推進していただきたいと思います。
 世界に誇る安全でおいしい水を蛇口まで届けるためには、ただいま伺った施策以外にも、貯水槽水道対策など総合的な施策を推進していく必要があります。そのためには、局長がしっかりリーダーシップを発揮して取り組んでいただきたいと思います。
 ところで、知事のところは三郷浄水場の水ではないようですが、私も知事と同じ大田区に在住しております。知事が本定例会の施政方針で表明された、安全な水が潤沢に供給されることは、都民生活を支えるための最も基本的な要素の一つという考えは、全く同感でございます。改めて知事のお考えを伺います。

○石原知事 委員がいわれました、この「東京水」が発売されたちょうどそのときに、私、朝霞にあります都の浄水場を視察いたしました。そのときに、今の局長から説明を受けて非常に感心したんですが、私の住んでいるところだけは、環八の西側だけが水源が違って、ちょっとこれと違うということで残念だと思っていましたら、その後、新たな浄水設備を整備したために、非常においしい水を飲めるようになりました。
 今、神林さんおっしゃったように、つまり我々、ふろに入ったりするときもトイレもこれを使っているわけですね。ふろに入るとき、あるいは洗濯にミネラルウオーターを使っている文化というのは、もうぜいたくきわまりない、非常に高度なものだと思いますが、これは決してむだでない。単価を比べても、ありがたいことに、中水道水を使って、そういうネットワークをつくるよりもはるかに安上がりで効果があるということですが、いずれにしろ、東京の水道の水質は、世界に誇る安全でおいしい水でありまして、技術の高さは実証済みであります。
 昨年十二月に公表しました「十年後の東京」では、豊かな水量を有し、安全でおいしい水を子どもから大人まで身近に感じ、味わっている姿を描いております。こうした姿の実現に向け、持続に向け、高度浄水処理の導入など、安全でおいしい水を安定的に供給していくとともに、東京の水の質の高さや水道技術をあらゆる機会に世界に向かって発信していきたいと思っております。

○神林委員 知事が皆さんの前で飲んでいただけば飲んでいただくほどたくさん売れると思いますので、ぜひ今後ともよろしくお願いいたします。
 それでは、最後に、飲酒運転させないTOKYOキャンペーンについて伺います。
 都は、昨年十月と十二月に、警視庁と連携して、飲酒運転させないTOKYOキャンペーンを行いました。歌舞伎のくま取りをアレンジしたインパクトのあるステッカーが多くの飲食店や駐車場に張り出され、また、都が飲食店や駐車場向けに飲酒運転防止のためのマニュアルをつくるなど、このキャンペーンは東京に大きな反響があったように思います。
 そこで、まず、このキャンペーンを展開した昨年十月から年末にかけての飲酒運転による交通人身事故は何件発生したのか、前年との比較も含め伺います。

○舟本青少年・治安対策本部長 ただいまの飲酒運転による交通人身事故の発生状況でございますけれども、昨年十月から十二月までの三カ月間に都内で発生いたしました飲酒運転による交通人身事故の発生件数は百三十二件であり、死者数は三人でありました。
 前年同期と比較してみますと、発生件数はマイナス二百九件であり、六一%の減少であります。死者数はマイナス十二人であり、八〇%の減少でありました。

○神林委員 昨年八月の福岡の飲酒運転による死亡事故以来、マスコミなどでもこの問題が大きく取り上げられたこともありますが、飲酒運転させないTOKYOキャンペーンが飲食店や駐車場の具体的取り組みを促し、飲酒運転事故の減少が実現できたのではないかと思います。
 しかしながら、聞くところによりますと、本年に入り、一月だけでも都内で三件の飲酒運転による死亡事故が発生したとのことですが、飲酒運転がなかなかなくならないことの背景に、日本人の酒に対する甘さがあるように思われます。
 都は、今後も、時期をとらえ、飲酒運転根絶に向けたキャンペーン活動を積極的に展開すべきだと思いますが、見解を伺います。

○舟本青少年・治安対策本部長 飲酒運転根絶に向けました今後のキャンペーン活動についてでございますけれども、飲酒運転の根絶を図るためには、酒に対する甘さを断ち切っていくための取り組みを進め、社会全体が足並みをそろえて、飲酒運転をさせない、許さない包囲網を形成していくことが極めて重要であると考えております。
 昨年は、そうしたことで、警視庁と連携をしまして、飲食店など酒を提供する側や駐車場など車を運転する際に利用する施設側などの業界とともにキャンペーンを展開いたしました。
 今後とも、さらにさまざまな業種の業界、企業、団体に参加を働きかけ、春、夏、年末など飲酒機会の多い時期をとらえ、委員ご指摘のとおり、さらに広範囲に、さらに工夫を重ねて、飲酒運転させないTOKYOキャンペーンを展開してまいる所存でございます。

○神林委員 平成十一年に東名高速道路で発生した、幼児二人が亡くなるという飲酒運転による死亡事故は、運転者がアルコール依存症であったと聞いておりますが、二〇〇三年に筑波大学の小畑助教授らの行った研究によりますと、アルコール依存症の患者のほとんどが飲酒運転の経験があり、しかも、その六割は飲酒して交通事故を起こした経験があるという結果であります。
 都は、さらにさまざまな業界や企業、団体に参加を呼びかけ、広範にキャンペーンを展開することを計画されていますが、これら企業等に対してアルコール依存症と飲酒運転に関する啓発を行うことが重要と考えています。
 アルコール依存症と禁酒運転の問題については大変難しいものがありますが、関係機関が協力して、ぜひ早期に実効性のある対策を実施してもらいたいことを要望いたしまして、私の質問を終わります。(拍手)

○高島副委員長 神林茂委員の発言は終わりました。

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