東京都議会予算特別委員会速記録第三号

○川井委員長 伊藤まさき委員の発言を許します。
   〔委員長退席、山下副委員長着席〕

○伊藤委員 私は、昨日の田中幹事長の質問に引き続きまして、知事がトップダウンで決めましたトーキョーワンダーサイト事業など、芸術文化支援事業についてお聞きをしたいと思います。
 私は、個人的には、芸術支援というのは必要だという立場に立ちたいというふうに思います。確かに、知事のおっしゃるとおり、コンテンポラリーアートの受け皿というものが、国の不作為によって全く日本において実現をしていなかった。そこで、知事が判断をしてこの事業をやったというのは、私は高く評価をしたいと思います。
 しかし、しかしですね、だからといって、この事業のずさんなところ、支出のいいかげんなところ、大きな問題点を議会としても私は看過できないんだというふうに思うんです。
 私は、この三カ月間、揚げ足取りにならないように現場に足を運んでまいりました。本郷や渋谷、青山、三つの施設を視察して、そして見た結果、いろいろ感じたこと、また関係者からお話を伺って感じたことなどを、大きな問題点がございましたから、いわれていることは省いて、数点に絞って問題を指摘し、トーキョーワンダーサイトの改善策や、また文化振興についての提案をさせていただきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 まず、事業の実績についてお伺いをしたいと思います。我々が要求をした資料でも明らかなように、最初に設置をされた本郷の実績が大幅に落ちているという状況があります。その原因がどこにあるのか、また、私は抜本的な対策が必要だというふうに思いますけれども、いかがでございましょうか。本郷と渋谷にそれぞれ分けて数字をお示しください。

○渡辺生活文化局長 ワンダーサイト本郷の平成十五年度以前までの入場者数につきましては、自動カウンターにより計測したものでございまして、必ずしも、観客数といいますか、展覧会に来た来訪者の数の実数を反映したものになっておりません。そこで、十六年度以降の数字と比較することは必ずしも適正でないと考えております。
 また、平成十七年度につきましては、前年度に比較いたしまして、ワンダーサイト本郷につきましては入場者数が減少しておりますが、これは、ワンダーシード展や集客の見込める企画展を、七月に開設いたしましたワンダーサイト渋谷に移したことなどによるものでございます。
 なお、本郷と渋谷を合わせますと、入場者数は前年度の二倍以上に増加をしております。
 現在、先生も既にごらんになっておられるということでございますが、ワンダーサイトは、本郷、渋谷、青山の三館体制になっております。そこでそれぞれの特徴を生かしながら事業の充実に努めていきたいと考えております。

○伊藤委員 この事業は、確かに、若手芸術家の支援ですから、入場者数が減ったからといって、それを問題というつもりは私はありません。しかしながら、これは実数を見てみますと、平成十四年から十七年、数を比較をしますと、先ほど答弁にもありましたように、自動システムカウントでカウントしているわけでありますが、入場者数は三万六千六百五十五人から年々右肩下がりで減って、本郷の場合は、平成十七年には二千百十三人、開館日数も二百三十三日から百三十五日、これは当初の一七%に落ち込んでいるわけであります。
 これを見ると、平成十四年は土日以外に平日のほとんどを開館していた計算になりますけれども、平成十七年には週三回程度という落ち込みであります。そして、展覧会などの回数も、平成十四年度は三十五回あったんですけれども、十七年度には二十四回と、すべての項目で右肩下がりになっているわけであります。先ほど二倍に観客がふえているとおっしゃいましたけれども、それはもう当たり前ですね。施設が二倍にふえているんですから、二倍にふえるのは当たり前なんですよ。
 この事業は、本郷と渋谷の役割というのは違うはずです。まず本郷で、本当に名もなき、やる気はあるけれども名もない人にそこに展示をしてもらって、そして評判になったら渋谷に移すという役割分担のはずですから、本郷がこれだけ減ってしまうということは、知事も答弁で認められておりますとおり、人的なちゃんとしたバックアップがきちんととられていないまま、残念ながらずさんに事業が肥大化をしているということに私はほかならないんだというふうに思うんです。
 次の質問に移りますけれども、きのう、さまざまなやりとりが食料費等の問題でありました。ここに、平成十四年度の食料費だけをお示しいただいた領収書のコピーがございます。きのう、どら焼きの話も出ておりましたけれども、それ以外にも昼間から日本酒を飲んでいたりとか、果たしてこれが本当に税金を使ってやるべき支出なのか、公金を扱うということに関して果たしてどれだけの注意を払っていたのか、甚だ疑問と思わざるを得ないことがここにはたくさんあります。
 渡辺局長につらい答弁を求めるのは本意ではございませんから質問はいたしませんけれども、ぜひとも知事も、こういう問題があるということは、頭の片隅にでもいいですから、とどめておいていただきたいというふうに思います。
 さらに、問題があります。それは、委託契約の内容と業者選定についてでございます。
 展覧会などイベントの開催に当たっては、それぞれ専門の業者に委託をして事業を進めております。こちらの調査によりますと、展示業務について、委託先が特定の一者に集中をしているということが確認をされておりますけれども、まずこの事実を確認したいと思います。
 平成十六年、十七年度で結構でございますので、委託先とその契約内容についてお示しください。

○渡辺生活文化局長 お答えいたします。
 展示業務につきましては、スタッフみずからが行う場合、共催者が行う場合、さらにワンダーサイトが業者に委託する場合がございます。
 お尋ねの平成十六年と十七年度にワンダーサイトが発注したということで、みずからがやったり、あるいは共催者がやったものではございませんが、発注したものにつきましては、平成十六年度は契約回数は計六回、これはすべて随意契約でございまして、契約先はスーパー・ファクトリーでございます。また、平成十七年度の契約回数は計九回でございまして、うち二回が随意契約、残りの七回が特命随意契約で、契約先はスーパー・ファクトリーとなっております。
 ただ、このワンダーサイトが発足した当時は複数の事業者がございましたが、技術力その他によって、スーパー・ファクトリーの方が結果的には選ばれてきているという状態でございます。

○伊藤委員 都自身が昨年の五月に策定をしておりますけれども、東京都文化振興指針で打ち出しておりますとおり、芸術文化振興のためには、芸術家の育成とともに、芸術を支える人材の育成も必要だと書いてあります。私もそうだと思います。芸術文化振興のためには、芸術家の育成とともに、芸術を支える、こうした人材の育成も必要なわけでありますから、展示のような芸術関連分野のすそ野を広げる必要があるというふうに思います。多くの事業者にそのチャンスを与えるべきだというふうに思いますけれども、いかがでしょうか。

○渡辺生活文化局長 展示業務におきます委託業者の選定に当たりましては、展示に関する技術力、アーチストなどからの信頼、内外の美術館などでの展示経験、臨機応変な対応の可否等を勘案して、一件ごとに判断をしてきたものでございます。
 そういうことで、やはり展示が失敗になってしまいますと大変でございますので、どうしても実績のあるところ、信頼できるところを選んできたという結果、ここ一年、この基準により同一委託業者が選ばれてきたのではないかと思っております。
 しかし、今後は、芸術を支えるすそ野を広げるという意味で、現在、ワンダーサイトは歴史文化財団に所属しておりますが、財団の規定に従いまして、展示や事業の特性に応じて利用する業者の幅も広げることも検討してまいりたいと思います。

○伊藤委員 やはり税金で行われている事業ですから、それはもう最低限必要なことだと思いますので、すぐに改善をしていただきたい、これは強く要望しておきたいと思います。
 次に、ワンダーサイト渋谷のカフェ事業についてお伺いをしたいと思います。
 渋谷では、公園通りに面したスペースにカフェを設置しております。大変人通りの多い立地を生かして入館を誘導する効果を見込んだ事業であると私は理解をしておりますけれども、現状は、残念ながら単にカフェとして営業しているにすぎないわけであります。
 実際私も、二月の上旬でしたか、見に行きまして、お茶を一時間ほど飲んでまいりました。中には、ワンダーサイトと関係づけられるのは、実はこれしかなかったんですね。(実物を示す)この割引券ですけれども、入り口にこれが二十枚ぐらいしかなかった。中には確かに端末もありましたけれども、そこは果たして一般の人が使っていいかどうかもわからないし、何の意味があってそこに端末が置いてあるかということすら書いていないわけであります。ですから、私はずっと見ていましたけれども、その端末を使っての美術館の検索をだれもやっておりませんでした。
 この立地のよさを戦略的に活用して、ぜひともこれは本体業務と関連を打ち出して相乗効果を生むような事業展開を図るべきだと思いますが、いかがでしょうか。

○渡辺生活文化局長 トーキョーワンダーサイト渋谷は、新進若手アーチストの作品の発表、それから販売の場及び文化芸術関係者の交流の機会を提供する場として、平成十七年の七月に開設いたしました。
 併設されたカフェにおきましては、たまたま委員が行かれたときは実施していなかったようでございますが、若手アーチストによる展覧会やトークなどの事業も行っております。また、情報検索のためのパソコンも置いているところでございます。
 表示がちょっと不十分である点につきましては、早速、表示の改善について指示をいたしますけれども、今後も展示スペースと連携を深めまして、アーチスト等との交流を通じ、アーチストを支援し、より一体的な運営ができるように努力してまいります。

○伊藤委員 ぜひとも改善方をお願いしたいと思います。
 次に、今回のワンダーサイト問題が表面化をしたことによる事業への影響についてお伺いしたいと思います。
 既に知事のご子息はもう懲り懲りだということで、かかわりたくないということをおっしゃっているようでありますけれども、ほかの若手アーチストは果たしてどうかということであります。
 本件については、この議会でもそうですけれども、昨年来より、各方面から多くの指摘や疑義が呈されているにもかかわらず、残念ながら、いまだ多くの都民の納得のいく説明や対応策がされているとは到底思えません。この間、さまざまなメディアを通して本件が都政の問題として喧伝されて、既に事業に悪影響が出ているということを聞いておりますけれども、いかがでしょうか。

○渡辺生活文化局長 トーキョーワンダーサイトの本郷の方でございますけれども、出展者の方といいますか、芸術家の方で、風評に影響されていたとは思いますが、展示会をキャンセルされる方が出てきまして、まことに残念なことでございました。しかしながら、現在では、それも予定の方に復しまして、事業が再開をしているところでございます。
 今後とも、PRを強化し、さらにワンダーサイト事業を推進し、都民の期待にこたえていきたいと存じます。

○伊藤委員 次は、行政による芸術文化支援と納税者の理解についてお伺いをしたいと思います。
 文化的魅力の向上は、都市の発展に欠かせない要素であると思いますが、芸術文化活動の支援に税金を投入するには、納税者である都民の納得を得ることが最低条件だと思います。これはすべての都の事業で同じだと思いますけれども、ワンダーサイト事業が都の既存の施設を活用して若手アーチストを支援する事業というのは名ばかりということは、きのうの幹事長の質疑で明らかになりましたが、私は、この旨、是と考えますけれども、今申し上げたとおり、運営には多くの問題を抱えております。
 知事は、ワンダーサイト事業の運営について、納税者であり多様な考え方を持つ都民に対して十分な説明ができていると思いますか。知事の所見を伺いたいと思います。

○石原知事 前に申し上げましたが、新しい、全く新規の事業でありまして、その立ち上がりの段階で、組織の未熟さといいましょうか、指揮系の混乱でいろいろそごを来したことは私も承知しております。しかし、その金銭にかかわる問題についてもるる担当局長の説明がありまして、議会を通じて、私は都民の皆さんにご理解いただけると思っております。
 いずれにしろ、アジアや欧米は若手芸術家の育成や交流をもう非常に積極的に進めておりますが、なぜか我が国の文化政策では、この点、非常に立ちおくれたことから、都の遊休施設を活用し、トーキョーワンダーサイトを開設しました。
 その結果、トーキョーワンダーサイトは若手芸術家の育成支援の新しい牙城として着実に成果を上げ、中には国際的なオークションにまでかかるような作品をつくる作家も出てきました。国際的にも注目される活動拠点となり、今では世界のサーキットにも載るようになりまして、これはトーキョーワンダーサイトだけであります。
 あらゆる機会をとらえて、こうした成果を都民により一層PRすることで、トーキョーワンダーサイトの活動に対する理解を広げていきます。

○伊藤委員 東京都の税金をここに投入している限り、やはり説明責任というのは常に問われることだというふうに思いますので、その成果についても、ぜひとも丁寧に都民に対して情報発信をしていただきたいというふうに思います。
 しかし、知事は十分説明がなされているとおっしゃいましたけれども、これは都のホームページから引っ張ってきたデータでありますが、都民の声の昨年十二月の分でありますが、千八百四十二件都民の声が寄せられた。その中で、ワンダーサイトに関する意見が二百八十四件と、全体の一五・四%、トップだったわけでありますが、ここ半年間を見ましても約四百二十八件ということで、全体で第四位なんですね。これも知事の進めるオリンピックが第五位で二百十六件、オリンピックの倍の声がこのワンダーサイトに対して寄せられているという事実は、ぜひともご理解をいただきたいというふうに考えております。
 次に、東京都写真美術館の経営改善についてお伺いをしたいと思います。
 昨年十月に日本経済新聞社が発表した全国の主要公立美術館を格付する美術館の実力調査によりますと、先日発足した東京芸術文化評議会にも名を連ねておられます福原義春氏が館長を務めます東京都写真美術館は、調査対象の百三十四館中、総合三位にランクをされるなど、大変高い評価を得ております。
 写真美術館は、過去には入館者数の低迷にあえいでいたということを聞いておりますけれども、具体的にどのような改革を実施して、そしてどのような成果を上げているんでしょうか、お示しください。

○渡辺生活文化局長 東京都の写真美術館におきましては、館長は知事が任命したといいますか、指名した福原館長でございますが、館長のリーダーシップのもとで、職員全員による来館者のご意見を共有する、また、企画諮問会議を設置いたしまして外部の有識者の意見を取り入れる、また、戦略的な広報を実践する、カフェやショップを改善する、あるいは友の会を創設して多くの方に友の会員になっていただく、さらに、協賛金を集めて収蔵品の購入に充てるなど、大変地道な努力を丁寧に積み重ねてきております。
 その結果、展覧会及びお客様サービスの向上につながりまして、平成十一年度に十八万人でございました来館者数が平成十七年度には四十四万人と、二倍以上に増加しております。この間、経費につきましては、予算は約半分になったというように記憶しておりますが、一人当たりということになりますと、経費は四分の一であるということでございます。
 また、お話ありましたように、昨年行われました日本経済新聞の美術館の実力調査では、全国主要公立美術館百三十四館中の三位、中規模施設では唯一トリプルAの評価を得ております。
 さらに、内容につきましても企画展が非常に充実しているということで、昨年の十二月には、写真文化の普及発展に貢献したとして日本写真家協会賞を受賞しているということで、経費は節減し、かつ入場者数はふえ、企画力が上がり、サービスも上がったという大変すばらしい事例であるというぐあいに考えております。

○伊藤委員 ここに本当にいい例があるんですね。同じように知事のトップダウンで人事を決めて、人、物、金がうまく連携してこれだけうまくいっているわけですから、ぜひともこの写真美術館の成功事例も踏まえて、ワンダーサイト事業のその本来の事業目的を達成するために、効率的かつ適正な運営を確保する必要がある、その改革をする必要があるというふうに私は思うわけであります。
 具体的には、これは人事の一新も含めて運営体制を一新するか、写真美術館がやったように税金ではなく賛助金などの民間の資金を活用した運用への転換が必要であると考えます。
 例えば、都のほかの事業でも、社会福祉協議会の関連事業だと思いますが、ボランティアセンターというものがあります。ここも都が資金補助をして、そして、そこを情報交換または人的交流の場の提供として東京都がお金を出しているわけであります。そしてさらに、NPOをとったり、また公益法人の法人格を取得すれば税制の優遇も得られるわけであります。これは、知事が旗振り役になって民間からの資金を集めれば、私は相当な額が集まるんだろうなというふうに思います。
 このような改革が必要だというふうに思いますが、いかがでしょうか。

○渡辺生活文化局長 ワンダーサイトにつきましては、立ち上がって、いろんな組織的な変更がございました。しかしながら、現在は、財団法人の東京都歴史文化財団のもとにおりまして、ことしの一月に組織体制を一新いたしまして、より充実したところになっております。
 先ほどご答弁申し上げました写真美術館の例なども参考にいたしまして、昨年の十一月には、青山のレジデンス対象でございますが、外部の有識者の声を運営に生かすために選考委員会を設置しております。また、既に要項は決めておりますが、人選をこれからという点もございますが、本年の四月からは、同じく外部委員による運営諮問委員会を設置する予定にしております。
 お尋ねの民間の助成金についてでございますけれども、写真美術館もやはり圧倒的に税金による運営でございます。協賛金は得ておりますが、文化につきましては、民営でできるということであればすべて民営の美術館になっておるわけでございまして、やはり公共の関与というのが大変重要だと思っております。
 そういうことではございますが、民間の助成金などもこれまで以上に活用して事業展開を一層充実していきたいと思っております。
 ただ、お気づきかと思いますけれども、美術館というのはある程度評価が定まったものを収集、展示するというところでございまして、このワンダーサイトは、評価がまだ決まっていない人たちを何とか支援して評価ができるようなところに持っていこうということになりますので、なかなかそういう点でスポンサーが多くつくかという点については難しいところがあるという点がございます。
 そこで、外国の諸都市におきましても公共が関与する場があるという点をぜひご理解いただきたいと思います。

○伊藤委員 いや、だからこそ税金を使うべきじゃないと思うんですよ。評価が定まらないものに税金投入するというのは、やはり非常に大変な都民への説明責任が伴います。だからこそ民間の資金を集めて、そこで芸術家を私は育成をするべきだというふうに思います。
 そして、この事業に年間五億円使われておりますけれども、仮にこれに民間資金が導入できて、この五億円をワンダーサイト事業に投入する必要がなくなれば、こういった文化芸術支援の事業にお金を十分に振り分けることができるという観点から、私は、以下三問の提案をしていきたいというふうに思います。
 次に、鑑賞機会の拡充について私はお伺いをしたいと思うんです。
 芸術家に対する支援は必要であるというふうには思いますけれども、都民がさまざまな文化芸術を身近で、そして気軽に楽しむことができるよう、また、次代を担う子どもたちがさまざまな文化芸術に触れて感動や共感を体験することができるように、都民が芸術に触れる機会をふやすことが重要だと思います。
 今後、都民が芸術に触れる機会をどのように拡充していくのか、お伺いします。

○渡辺生活文化局長 都民が芸術に触れる機会を提供するというのは大変重要でございますが、都立文化施設におきましては、多様で魅力的な展覧会あるいは演奏会などの開催によりまして、毎年六百万人を超える人々が足を運んでおります。都民に身近な機会を提供しているということは、誇ってもいいことかと思います。
 また、東京都交響楽団では、年間約二百回の演奏会のほか、常任指揮者が学校に出向く特別授業も行っております。さらに、都民が気軽に芸術文化を楽しめるヘブンアーチスト事業、子どもたちが芸術と直接に触れ合う子ども向け舞台芸術参加・体験プログラム、低廉ですぐれた舞台芸術を鑑賞できる都民芸術フェスティバルなども開催するとともに、ホームページを通じて多岐にわたる文化の情報提供を行っております。
 先ほど、評価の定まらないものについて税金を使う必要はないというお話がございましたが、やはり芽から育てていくことが大変重要でございまして、中小企業の育成におきましてもインキュベーションというのがありますが、芸術の場合においても、将来のことを考えればそういう投資も私は必要だと考えております。

○伊藤委員 局長、答弁するときは、私の目を見て答弁してください。どちらの方を向いて答弁しているんでしょうか。
 私がいったのは、別に局長を責めるためにいっているわけじゃないんですよ。先ほどいったのは、それは税金でやるよりも民間の資金を導入した方がいいんじゃないでしょうかということだけですから。丁寧にご答弁をいただきましたけれども、それは誤りですから、訂正をしていただきたいというふうに思います。
 次に、これは外国--日本国内でも二、三の例があるようでありますけれども、公共の建物を建てるときに建設費の一%を芸術作品に使うことを法律で定めている例があるようであります。パーセントプログラムというそうでありますが、フランスでは一九五一年から、そして一九五七年にはアメリカのフィラデルフィア市で、一九八二年にはニューヨーク市で導入をされているそうであります。
 どの例も、学校や警察署など公共の建物を建築または改築する際に、建設費の一%を芸術作品のために使わなくてはならないという内容だそうであります。都民が日常生活の中で芸術に触れる機会をふやすのに私は有効な手段だと思いますけれども、いかがでしょうか。

○渡辺生活文化局長 お話の、公共施設である建築物、そのコストの一定割合について芸術作品の設置に充当するというパーセントプログラムにつきましては、設置された作品が公共の場にふさわしくないというような批判がある場合もございます。また、建築物の特性、用途、規模にかかわらず一律にパーセントを定めることについても疑義がある場合もございます。
 一方、こういうことがございますが、公共建築物に限らず建物に芸術作品を設置することは、都民が身近に芸術に触れることができ、建築物に芸術的な空間を醸し出す効果もあるのかなというぐあいに認識をしております。

○伊藤委員 次に、これも海外の例でありますけれども、無料で美術館を見られる例がございます。例えばワシントンDCのナショナルギャラリーだとか大英博物館、だれもが自由に、そして無料で芸術に親しむ環境の整備が必要だというふうに思います。
 疎遠になった芸術と都民をつなぐ人材の育成も必要だと思いますけれども、ご所見を伺います。

○山下副委員長 答弁を簡潔に願います。

○渡辺生活文化局長 都立文化施設では、児童や生徒、障害者について常設展を無料とし、六十五歳以上の高齢者の割引を行っているほか、六十五歳以上の高齢者の無料観覧日の設定も行っております。ただ外国には、ルーブルはたしか有料だったような気がいたしますが、無料な館もあれば有料の美術館もあろうかと思います。
 また、芸術と都民をつなぐ人材の育成でございますが、都立文化施設では五百人を超えるボランティアが登録をされておりまして、来館者に対し常設展示室の作品等の解説を行っております。ボランティアの方には、研修会を実施するほか、他の施設のボランティアとの交流の機会などを提供し、育成に努めているところでございます。

○伊藤委員 次に、デジタルミュージアムについてお伺いをしたいと思います。
 東京にも、さまざまな事情によりまして美術館に足を運ぶことができない、そういった困難な条件を持つ方々がおられると思います。今後は、こうした方々に対する鑑賞機会の提供も私は必要だというふうに思います。
 これからどんどんネットが発達していって、だれもがどこでも美術作品に触れる機会をつくるというのはまさに東京都の役割なんだろうというふうに思いますが、いかがでしょうか。ご所見を伺います。

○渡辺生活文化局長 平成十八年度の都の重点事業でございますトーキョー・アート・ナビゲーションにおきましては、都の文化のホームページでございますアートインデックスと東京都歴史文化財団が運営するホームページを統合、拡張いたしまして、情報量と内容を充実するような形で作業を進めております。
 今後、コンテンツとしてデジタルミュージアム機能を構築し、江戸東京博物館、現代美術館、写真美術館の主要な収蔵品を来年度から画像で公開していくことと既になっております。

○山下副委員長 伊藤まさき委員の発言は終わりました。

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