東京都議会予算特別委員会速記録第二号

   午後三時三十三分開議

○山下副委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 田中良理事の発言を許します。

○田中委員 先日の十四日の本会議の代表質問のときに、知事に対して、オリンピックの関連で核の問題について質問をさせていただきました。なぜこの問題を私が質問をさせていただいたかというと、平和の祭典のオリンピックを招致するということに際して、知事自身が、平和の問題、また、平和を阻害する重要な要素の一つである核の問題に対してどのような見解をお持ちであるかということが、私どもとしては大変関心があるわけで、そういった点からご質問をさせていただいたんです。
 そのときに、知事に対して私がご質問したのは、知事は、答弁では、政治家としての信条は一貫しておりまして、ご懸念には及びませんと、こうお答えになったんですが、私がその前に伺ったのは、実は知事が一貫してないのではないかということで具体的にご指摘をしてお尋ねをしたんです。
 参議院のときには、何で政府が非核三原則をつくったのか理解に苦しむと、そう語って、今度は大臣になると、閣僚として非核三原則の姿勢を遵守すると、こう答弁をされる。また、今度しばらくすると、政治にはいろいろ、政治係数というものがあって、その変化の中で核の問題もさまざま議論をしていくべきだという趣旨のことをお話しをされ、そしてさらに昨年の二月の「文藝春秋」誌上では、私が民営化された日本郵政公社の社長だったら、うまく政府に根回しして核開発にでも資金を回しますなと、こういう発言をされているから、一体、知事の核に対するその信条というのはどこにあるのかということでお尋ねをしたんですが、再度この場でお答えをいただきたいというふうに思います。

○石原知事 核というものは、あなたにお説教するわけじゃありませんけれども、持つ者の姿勢によって、平和を守りもするし、乱しもするわけです。私は、日本がアメリカと安保条約を結んで、アメリカの核の傘にあると信じて、それに依存している限り、アメリカの核は日本をもつためにあるのでしょう。
 で、非核三原則なるものは、もともとは二原則だったんですね。岸さんの時代には、つくらぬ、持たぬ上に、はっきり日本におけるアメリカの文化を顕在化させるということでした。私は、それはそのとおりだと思います。ところが、佐藤さんの時代になって、沖縄の返還絡みで、核つきは困るという声がごうごうとした。とにかく、とにかく一刻も早く取り戻そうということで、非核三原則を打ち出された。私は、それには反対し疑義を呈しました。
 しかし、これは閣僚になって、それが一応国是という形である限り、閣僚になれば、遵守するといわざるを得ませんよ。それをもって私は閣僚をやめるつもりもないし、閣僚なんかせいぜいやっぱり限られた時間でしかありませんし、そのときは--まあ非核三原則を遵守するといったって、恐らく積んでいるでしょう。原子力空母であるとか、原子力潜水艦に入っていって、私は核--二原則論者ですから、おたくの核を外して持っていきますというわけにいかないし、アメリカも心得ているから、日本にやってくる重要艦船は核は搭載していません、途中でおろしてきますといっていますけど、そんなことありっこないですよ。行ってごらんなさい、キティーホーク積んでいるんだから。沖縄なんて核があったんだから。みんな見て、知らぬふりをしているわけです。それは大人の政治かどうかわかりませんけどね。そういう実態を踏まえて、こういう事の何というか、片言隻句をとらえて事を論じたって、私は何の意味もないと思いますよ。

○田中委員 知事は、今お話しされたことは、この間、本会議で私が質問したときの答弁でも同じようなことをおっしゃっていたわけですが、しかし、ここには重要な問題があるわけなんですね。
 要するに、知事は、大臣になる前に非核三原則は守られていないのだということを承知していたけれども、だけれども、大臣になったから、守られていないということを承知していながら、自分はそれに対して遵守しますということを答弁されている、こういう事実になるのですよね。そのことを今、知事は答弁で、大臣になったら遵守するといわざるを得ないじゃないですかと、こうお答えになったわけですよね。
 つまり、大臣になったときには、要するに守られていないということを知りながら、国民に対しては遵守します、こういうふうに答弁をされたということになるのですが、そういう理解でよろしいのでしょうか。

○石原知事 歴代の自民党の政治家、閣僚で、実質的に日本が要するにアメリカの核の抑止力の下にある、そう信じ、それが正しいと思っている限りの人で、日本を守るためにやってきているアメリカの航空母艦なり原子力潜水艦が、そのたびに核を外して寄港するなんていうことを考えている人間は一人もおりませんな。(発言する者あり)ああ、小沢君もそうだな。

○田中委員 それでは、少し角度を変えてお尋ねします。
 ここ数年、大変この核の問題も、近隣諸国の情勢変化の中でいろいろな議論が起こってきているということは皆さんもよくご承知のとおりだと思いますけれども、そういう中で、いわゆる非核三原則というもの、この国是として我が国が核に対してとってきた立場というものを、これからきちっと守っていきたい、あるいは守れるような環境をつくっていきたい、そういうことを世界的にも広めていきたいという立場でおられるのか。それとも、隣国が核というものを開発したというような状況になってきたら、日本も核を保有することを検討するということの議論を進めていくべきだ、こういう立場に立っていらっしゃるのか。そのことについてはいかがですか。

○石原知事 あなたみたいにそんな大事な問題を短絡的にいったって、何の議論にもなりませんよ。
 これから北朝鮮が核を開発する。恐らく六カ国協議なんて破るでしょう。今まで何度も破ってきたんだし。アメリカは、こういうことになったから、こんな点で妥協しましたが。それから、中国の核、これはとにかくみんなが自粛している宇宙兵器を使って、自分の星とはいえ、自分の情報衛星を破壊してみせた。これはさらに危機の進展ですよ。この中国の核戦略というものをかざしての外交姿勢の前で、私たち、どういう形で追い詰められていくかどうかということはわかりません。
 そのときに、アメリカがますます国力が衰退していって、本当に日米安保が信頼できるものかどうか、その時点になってわからなくなったら、それこそ小沢君がいったように、あなた方の党首の小沢さんが申し上げられたように、持とうと思ったら日本はすぐ核を持てるわけですから、そういう挙に踏み切るか踏み切らないか、そのころの政権次第でしょうね。間違って民主党内閣が出たら、ひょっとすればやるかもしれませんな。

○田中委員 私は、こちらが質問をさせていただいているので、そのことをぜひ大前提にしてご答弁をお願いしたいと思うのですがね。
 オリンピックの関連でさらにお尋ねをさせていただきたいと思いますけれども、一昨年の六月、知事は雑誌「文藝春秋」において、今後も反日デモが続くなら、モスクワ・オリンピックと同様、北京オリンピックのボイコットを考えたらいい、こうおっしゃっておられる。昨年の七月、福岡と国内選定都市を競っていたころには、知事は講演で、北京オリンピックはヒトラーのやったベルリン・オリンピックにある意味で似ている気がしますな、こうおっしゃっている。
 IOCや各国オリンピック委員会が、二十世紀における世界大戦での中止や冷戦下におけるボイコットといった危機を乗り越えて、二十一世紀にこのオリンピックの精神をつないできたわけでありますが、このような、今申し上げたような知事の発言というものは、どう考えてもいかがかなと思うのですが、それについて見解を伺います。

○石原知事 日本の政府がかわったのを幸いに、北京が日本に対する姿勢を変えましたね。しかし、その根底に何があるか、私はわかりません。
 いずれにしろ、彼らはかつて熾烈に反日運動をやったし、日本を冒涜し、内政の問題である靖国の問題にまでかなりどぎつい発言をしてきた。その限りで私は、あの国は日本にとって親日的な国とは思いませんでしたね。思った日本人はだれもいませんね。
 あの国際競技のところで日本の選手に何をし、北京の政府が何で知らぬ顔をしてほったらかしにしたか。その態度が直って、これから変わっていくことを望みますけれども、いずれにしろ、あの国は市民社会というのをいまだに経験していないし、あの国をコントロールする政権というのは共産主義政権、共産党の独裁政権でしょう。法輪功を含めて、違う信念で、ごくごく少数の人でも限られた人間たちが連帯することを絶対に許さない。自由な発言を許さない。私は、こういう国は不幸だと思いますね。
 ですから、オリンピックをきっかけに彼らが本当に成熟してくれれば結構ですけれども、これは私の言葉じゃございませんが、たまたまこの間、ロゲIOC会長が来られたときに、ロゲさんはベルギーの人で、私の横に、私は正面に向かって座っていましたが、ベルギーの大使がおられた。北京に五年いて、最近日本に来られたばかりの大使で、これから信任状を奉呈するっていってましたけれども、石原さん、不思議ですね、これはどうなるかわかりませんが、北京という国は私自身は好みませんとはっきりいっていました。
 それで、こういう独裁政権がやったオリンピックというのは、必ず後に事が起こる。まず、ムッソリーニのイタリアはオリンピックをローマでやったけれども、間もなくついえた。ヒトラーはすぐついえた。共産主義の独裁政権だったモスクワ・オリンピックは非常に、何か半分欠けたみたいな形で行われましたけれども、あの政権もすぐついえた。これは、歴史の一つの原理かもしれませんよ。

○田中委員 知事のこのお話を、やりとりしていると知事の演説会になっちゃうので、私が伺いたいのは……(石原知事「演説させるなよ、おれに。ばかな質問するから」と呼ぶ)今、何とおっしゃいましたか。ばかな質問。ばかな質問というのはどういうことですか、それは。ばかな質問はないじゃないですか。(発言する者あり)

○山下副委員長 済みません、計測をとめてください。時計の計測を一たんとめてください。
〔石原知事「取り消しします。しかし、的外れな、余りこの場にそぐわない質問をされるから」と呼び、その他発言する者あり〕
〔田中委員「いや、ばかな質問というのはちょっとないんじゃないですか、それは」と呼び、その他発言する者あり〕

○山下副委員長 ちょっと済みません。知事も含めて、指してからお答えをいただきたいと思います。失礼します。
 時計の計測を再開してください。

○田中委員 それでは、核やアジアに対して知事の見解を伺ってまいりましたけれども、二十世紀は大変大きな大戦、世界戦争がありました。この二十一世紀には、絶対に核戦争など、あるいは第三次世界大戦を起こしてはならないというふうに私どもも考えております。これはすべての人類の願いだというふうに私は思います。この平和とスポーツの祭典、オリンピックのまさに理念というものも、そこにつながっているものだというふうに思います。
 そういう意味で、東京で二度目のオリンピック開催を望んでおられる。招致をしようということで運動をされている。そこに、このオリンピックの平和への明確な理念というものがもう少し打ち出されてもよろしいのじゃないかというふうに考えているのですね。
 そういう意味で、いつも日ごろ知事から、提案型の質問を望むようなご発言がいろいろありました。私どもも、このオリンピックについては、いろいろな意見が会派の中でありましたけれども、オリンピックそのものについては、それは賛成をさせていただいたのです。ただ、オリンピックを招致するという、その招致の理念というものをぜひ大切にしてもらいたいということを機会あるごとに申し上げてまいりました。
 今まで申し上げてきたように、やはり平和を阻害するさまざまな要因があろうかと思いますよ。核だけではなくて、テロもあるし、あるいは感染症というようなものもあるし、いろいろなことがあると思います。そういういろいろなことがあるのでしょうけれども、そういう中で日本というのは、やはり世界の中で唯一の被爆国である。その立場から、私どもは、広島、長崎、この地で一体さきの大戦のときにどういうことがあったのかということを忘れてはならないと国民としても思いますし、世界に対してもそういうことを発信する、そういう必要性を感じるわけであります。
 オリンピックの機会にぜひそういう意味で、世界が注目する、そういうときに広島とか長崎である種の競技を開催して、そこに全世界のマスコミも全世界の人々もその地に関心を寄せる。そういうことにもし実現をすればなるのじゃないかなというふうに思います。そういったオリンピックの開催の形態というものをぜひ検討してはいかがかというふうに思いますが、いかがでしょうか。

○石原知事 平和を願わない者はだれもいないと思いますが、とにかく人間の存在というのは平和があってのことでありまして、では一体、今人間の存在そのものを脅かす、つまり恐ろしい懸念、それを誘発する存在は何かというと、わけのわからぬ、アメリカからいっても理由がわからぬというような、中国のああいう宇宙にまで対する武力の拡大も脅威でありましょう。北朝鮮の目的のわからない核も脅威でありましょうが、しかし、この間のマラソンでも私は付言したのですけれども、やはり環境そのものが破壊されて、例えば日本に肩を並べるような経済大国である中国であるとか、日本の総量をはるかに上回る経済大国、アメリカそのものが、環境に対する責任というのを一向に感じていない。それは、元の副大統領のゴアがせいぜい頑張って走り回っていたって、ほとんどの人は聞く耳を持たない。
 私はやはり、広島、長崎も一つのモニュメンタルな場所でありますけれども、平和そのものを毀損しかねない環境、この地球というものを守ろうという、そういう志。オリンピックに集まる人、アスリートだけじゃなしに観客も、いつも申していますけれども、ゲオルグの歌のように、地球がたとえあす滅びるとも、君はきょうリンゴを植えるという、そのきょうリンゴを植える、そういう志と行動力を持った人たちとの連帯にしたいと思っております。

○田中委員 では、続いて新銀行東京について伺ってまいります。
 知事はこの銀行の経営不振について、さきの代表質問、それに対して、新銀行の実現は私の責任だが、その後の営業責任は経営者にある、こう述べられました。しかし、知事は、新銀行の経営に関してしばしば述べている。銀行の中の人事のごたごたがあったとか、ほかの銀行がさまざまな商品を開発したというようなことで、当初の設立のときと思惑が違ってきたというようなご発言をされている。
 しかし、こういうことは一体だれの責任なのかということなんですね。人事については、この新銀行の役員というのは、取締役と執行役の両方を兼ねている仁司さんを除くと、取締役六人のうち二人、執行役六人のうち五人が既に退任をしているのですね。二月の十一日に知事はテレビに出演をされて、その中で、銀行の運営に関しては中に摩擦があって人事がかわった、こういうお話をしていらっしゃいましたけれども、こういった人事のごたごたというようなこと、それから、どうもビジネスモデルが思惑と違ったというようなことについて、再度お尋ねをいたしますけれども、どう認識をしているのか。

○石原知事 銀行が今日の状況に至った経緯については局長から詳しくお話しいたしますが、やはり最大の原因は、ふなれな仕事をふなれな人にさせたという嫌いはございます。とにかく自動車のセールスのように物を売ればいいというような業務じゃございませんし、そこら辺のところに勘違いがあったなと。結果として、開業して幾つか行った貸し付けがほとんどがデフォルトしたということは、これは経営者側の見識の問題だと思います。
 それからもう一つ、これは決していいわけをするわけじゃありませんけれども、東京都がやってきた社債担保証券とかローン担保証券などで立ち直って、上場する会社が出てきた事実がある。やはり大手の銀行をして、東京にある中小企業も技術を持っているところは非常に優秀なんだ、可能性があるんだなということで、がらっと風向きが変わりまして、大手が中小企業対象の融資を積極的にし出した。これは結果として結構ですけれども、我々の銀行としてはそのあおりを食ったというのは否めない経緯だと思います。

○島田産業労働局長 先ほど人事のお話がありましたので、その点でございます。
 取締役は、七名中二名、十八年の六月、二年間たって、ちょうど任期になりましたので、退任をしております。執行役につきましては、七名中二名が、十六年六月から十八年の六月、任期満了に伴い退職、その前後にほかの三名の方が退任をされております。
 こうした役員の退任につきましては、任期満了に伴う方、また、設立間もない銀行でありますので、それぞれの方の考え方や個別事情により任期途中でやめた方もいると思っております。

○田中委員 何か知事のさきの答弁は、ふなれな人に銀行の役員をさせてしまったということにこの人事のごたごたの原因があるというようなお話があったように私は聞き取りましたが、今度は局長のお話は、任期が来たとかいろいろな事情だというようなことで、若干何かニュアンスが違うような感じがしますけれども、ただ、いずれにしてもこの銀行の人事は、だって最初銀行というのは、銀行があって人事があったわけじゃなくて、最初に知事が選挙公約で銀行をつくりますよといって、それでつくられてきた会社なんですよね。
 ですから、最初の人事というのは、これはどなたにやっていただくかということについて、実態上知事が主導をされてきたというふうに私たちは大体理解しているのですけれども、そうじゃないのですか。

○島田産業労働局長 役員の候補者でございますが、平成十六年の二月に策定いたしました新銀行マスタープランでは、その時点での役員候補者として、都において選任した方々を掲載いたしました。役員候補者は、当時の銀行設立準備担当部署において決めました上で、最終的に知事の了承を受けております。

○田中委員 私は過去、二〇〇四年の十一月の五日、各会計決算特別委員会、そこでこの銀行の人事についても質問しているのですよね。元東京都の局長から転身をして、実は当時債務超過企業であった多摩都市モノレール、ここにいらっしゃった方。この債務超過の企業の、会社の社長が新しい銀行の社外役員になるというのはちょっと理解できない、どうしてこういうことになるんだというようなことも聞いたりしました。
 そのときの答弁は、都の関係者の人選に当たっては、マスタープランに反映された都の政策目的に基づき経営の大枠を監視するという観点から、都の政策全般に対する理解あるいは都民感覚にすぐれた人材ということで選任した、こういうふうにそのときは答弁をされていらっしゃるのですね。
 その後、例えばこの方は昨年六月に退任をしました。後任にはまた元東京都の部長級の方が就任をされた。例えばこういう人事の問題というのは、本人の意向なんですか。あるいは、東京都の人事政策上の人事異動なんですか。

○島田産業労働局長 お話のありました取締役の退任につきましては、任期満了に伴うものであり、個別の事情によるものと認識しております。

○田中委員 知事は、マスタープランを策定した二〇〇四年二月六日の定例記者会見で、経営陣には企業経営や地域金融、IT技術などそれぞれの分野で卓越した実績を発揮されてきた人材を選んで据えた、こう述べています。役員選定の理由というのは今も変わらないのか、改めてお尋ねします。

○島田産業労働局長 新銀行マスタープランで、取締役につきましては、株主の意見を反映させるため、都の関係者を選任したほか、経営全般に高い識見を有する人材を、経済界、弁護士、公認会計士、学識経験者など、幅広い分野からバランスを考えた上で選任しております。
 執行役につきましては、経営者としての経験、実績、金融に関する専門的な能力等を有していることはもちろん、何より新銀行の理念の実現に意欲を持つ人を候補者として選任したものであり、この方々が、平成十六年六月に新銀行東京の取締役会決議を経て、正式に執行役に就任をいたしました。
 役員の選任につきまして、株主としての基本的な考え方は変わってございません。

○田中委員 そういうことなんだろうというふうに思いますが、だとするならば、この銀行というのは、開業後三年で単年度黒字を出そうというのを目標で始めたことですよね。ですから、そういう目標がまだ、まさに半ばであるにもかかわらず、このように退任をされるというような方がふえている。それがどのような事情かということをお尋ねしても、それは個別の事情だというふうにしかお答えにならないわけでありますけれども、しかし、こうやって見ていると、事実上この役員の体制というものは大幅に変わってしまっている。
 それで、冒頭申し上げましたように、この新銀行の業績がなかなか思うようにいかないということに関連して、知事はさまざまな場面で、内部でいろいろ人事上も問題があったというようなご発言をされているということから推察をすると、やはり人事政策というか、人事のやり方を間違ったのじゃないかというようなことを、どうしてもこれは感じざるを得ないのですよね。知事にその点再度、くどいようですけれども、どういうふうにお考えなのか、お聞かせいただけますか。

○石原知事 都は確かにこの銀行の大株主でありますが、立場はあくまでも株主であります。ですから、そういった問題も含めて、会社の法規にのっとって、とにかく我々は人事の問題も含めて株主総会で発言するべきだと思うし、そのつもりでおります。

○田中委員 なかなか伺ったことに率直にお答えをいただけないというのは大変残念ですが、まだまだたくさん聞かなきゃならないので次に行きますが、この銀行の経営見通し、これの関連でお尋ねをしたいと思うのですね。
 この銀行の経営の悪化に関して、ちょっとした思惑違いで、ほかの大手銀行が同じことをやり出した、こういうようなことを知事は弁明されているようです。二〇〇四年の三月二日の代表質問、このときは、うちは名取幹事長ですね、新銀行のターゲットとなる中小企業群に対する融資は、都市銀行や地方銀行などの金融機関の主戦場になることが予想されるということで、それでもなお新銀行設立の意義は変わらないのかとただしたわけですね。それに対して知事は、都市銀行などの取り組みは、規模も小さく、融資対象も優良な企業が中心だ、こう反論をされたのですね。
 会社の設立に先立つこのような思惑違い、見込み違いというのでしょうか、これは今の経営者に責任があるのか。それとも、設立ということを発議して、そして提案をした知事に責任があるのか。知事自身はどのようにお考えになっていらっしゃいますか。

○石原知事 私は政治家です。都庁の官僚は官僚です。銀行を預けた人たちは経済人ですね。やはり経済においても、環境の変化というのは当然起こり得ることでありまして、その変化に柔軟に対応して経営を行うことが、私は経営者に求められるべき責任だと思っております。

○田中委員 いや、環境に応じて経営をされていくのは、それは経営者の責任としては、何もいわれるまでもなく当たり前のことなんですけれども、要するに、この銀行が設立をされた、この銀行設立というのは、これはもう知事の選挙公約なんですよね。
 私は、この銀行設立の際に、皆さんが、理事者の方がいろいろ説明をしていただいた、何度もやりとりを、例えば議会のこういう場でなくても、それは真摯にやりとりをさせていただいた。その際にも、要するに都庁という組織の中で、例えば中小企業対策というようなことで、今おっしゃられたような、官僚は官僚の仕事がある、専門家は専門家の仕事があるというようなお話をされていたけれども、そういう意味では、都庁の中からボトムアップで出てきた政策ではないんだ、これはトップダウンで決められた政策なんだということははっきり、説明にいらした方が異口同音に我々に対して語っていたことなんですね。
 ですから、こういう思惑違いとか見込み違いというのは、今の経営者の責任ではなくて、この会社を、銀行をつくろうという公約を掲げて当選されて、銀行をつくれというふうに、まさにトップダウンで指示をされた知事の責任になるのではないのかなということをお尋ねしているんで、その点についての知事自身のお考えはどうかということを聞かせていただきたいんですね。

○石原知事 銀行の現況は、実質的に開業してから一年半、まあ名目は二年になりますけれども、その間、努力はそれなりにしてきたと思いますが、回収不能の状況になっているわけじゃございません。
 先般も、日銀との定期的な話をいたしました。日銀は日銀なりに評価もし、期待もしているようです。
 私はやはり、起死回生とまではいきません、この銀行を立て直す方策は幾らもあると思いますし、現にそのために部外者の意見も聞いておりますし、その策をこれからも講じてまいります。そうすることが、株主としてそういう努力をすることも、私の責任だと思っております。

○田中委員 中小企業の支援が目的だということで立ち上げた銀行です。
 ただ問題は、今、私がご指摘させていただいたように、経営陣も大幅にかわって、経営の赤字も予想を超えて、事業計画どおりには進んでいない、都民の税金は一千億円ここにつぎ込まれている、そういうことを考えると、設立した当初の目的、中小企業のためという目的が十分に果たされていないんじゃないかというふうに考えざるを得ないわけです。
 さらに、私は過去、本会議の代表質問、二〇〇三年の七月一日という日付ですが、新銀行創設の目的が中小企業への資金供給であるならば、あえて決済業務を行う必要はなく、また、資金調達においても、コストのかかる調達手段である預金業務よりも、債券や借り入れでの資金調達の方が現実的だと、こう申し上げた上で、東京都が出資した、例えばノンバンクという形態でも中小企業への資金供給は可能なのではないかと、こういうふうに申し上げたことがございます。
 当時、なぜ、私たちが申し上げた、例えばノンバンクという形態ではなくて、どうしても銀行という形にこだわったのか、その点について再度ご答弁をお願いしたいと思うんです。

○島田産業労働局長 日本の経済再生のために、眠っている巨大な個人金融資産が生きた資金として中小企業に流れる仕組みが必要であり、これをノンバンクで実現することは不可能であることから、預金業務と決済業務をあわせまして行う銀行を開設することとしております。
 現在、新銀行東京における平成十八年九月末の預金残高は五千四百三十六億円で、その多くが個人資産であることからも、新銀行東京は、個人金融資産を中小企業の資金、現在累積で一万一千五百社、二千八百十九億円の融資を保証してございますが、こういった中小企業の資金に循環させる役割を果たしているものと考えております。

○田中委員 さて、銀行が中小向けの無担保融資を始める、これが一つのこの銀行の目玉というか、売りであったというふうに思います。
 しかし、その結果、高コストで調達した預金がだぶついている。これら新銀行の経営の大前提となる思惑の違い、見込みの違い、こういう責任は一体どこにあるんでしょうか。

○島田産業労働局長 平成十六年の二月に策定いたしました新銀行マスタープランでは、平成十五年度当時の銀行業界の状況、貸し渋り、貸しはがしなどを前提に、専門家の知見を動員しつつ、貸し渋りや貸しはがしなどで資金不足に苦しむ中小企業に対して融資を行うことを想定して策定したものであります。
 先ほど知事からお話がありましたが、経営環境の変化は当然起こり得るものであり、この時点で責任を論ずることは適当ではないと考えております。

○田中委員 ああいえばこういう、こういえばそういうみたいな、そんな議論にも聞こえるんですけれども、私は、今だからいうんじゃないんです。
 当時、私は大塚さんにもお話をしたと思うんですけれども、当時ご説明されていたときに、負の遺産のある既存の銀行では中小企業に対して融資をなかなかしにくい状況にあるんだ、だから、負の遺産のない新しい銀行をつくることで中小企業に融資ができる、そういうことになるんだ、こういうお話をされていましたですね。さて、本当にそうなんですかということを、私は申し上げていたんですよ。
 実はその当時、負の遺産、バブル崩壊の負の遺産で銀行が苦しんでいたという時期は既に峠を越えて、実はこのときに銀行が苦しんでいたというか、日本経済全体が苦しんでいたのは長引くデフレ不況。デフレ不況が長引くことによって、普通の債権が要注意になり、そして、しばらくしたらこれが不良債権になる、これがデフレ不況の怖さだと。
 だから、そういう意味では、バブル崩壊の負の遺産が果たして銀行が中小企業にお金を貸さないとか、当時の金融をめぐる問題の本当の理由なのか、違うのではないかと。だから、そういう理念で銀行を設立することは非常に危ないのではないか、こういうふうに私は申し上げたと思うんですよ、ご記憶があるかどうか、あれですがね。
 今振り返ってみて、いかがですか。

○大塚副知事 今、手元に数字は持ち合わせていないんですけれども、あのときに私が申し上げた話は、まさにあのとおりであったというふうに思います。
 田中良理事が、もし事前にきちっと経済的な数字を検証していただければ、あの時点では間違いなく、バブル崩壊等による負の遺産によって、メガバンクを初め、その桎梏にあえいでリスクをとり切れなかった、それは事実であります。
 じゃあ、その後どうなったか。公的資金を導入し、今ああいうふうな状況になりましたけれども、それによって金融界が劇的に立ち直った最大の原因は、もちろん銀行自身の努力も若干はあるかもしれませんけれども、この前、大手銀行の役員と話をしたときも同じ話が出たんですけれども、あれは銀行の努力じゃない、環境だと。環境によって、銀行が立ち直った一番大きな原因だと。決算の数字をチェックしていただければわかるんですけれども、引き当ての戻し益が物すごく大きい。それによってリスクをしょえるような体質になって、その上で、いいところが中心になるわけですけれども、無担保を含めた新たな融資にメガバンクを含めて乗り出した。
 ですから、時間はそれほど多くはないんですけれども、その短い時間の中で金融環境が劇的に変化をした、それは間違いのない事実だというふうに思っています。

○田中委員 と同時に、私はそのとき、無担保・無保証というのを目玉でいくということをおっしゃられていた中で、無担保・無保証という非常にリスクの高い商品を目玉でやっていくということになれば、もし失敗したら、これは都民の税金をつぎ込むことになるのではないか、仮にもし成功したら、既存の銀行がもっと大きな力で、そういう顧客層を開拓して、市場を広げていくことになるのではないか、どちらにしても、民業である銀行に東京都が進出していくということには無理があるのではないかということを、再三、私、申し上げた記憶があるんです。
 今振り返って、いかがですか。

○大塚副知事 予算特別委員会等含めて、当時、設立前の話になると思うんですけれども、田中理事といろいろなやりとりをしたという記憶は残っています。
 田中理事のお考えはそういうお考えであったという記憶も、今、おぼろげながら思い出しておりますけれども、やはりあの当時やりとりをした田中理事のお考えが合っていたというふうには思っていないわけです。具体的に申し上げますと、今現在行われている無担保融資の実態を、できればもう少し数字的に整理をして調べていただきたい。
 過日の一定の本会議で産労局長の方からもご答弁申し上げておりますけれども、今、新銀行が融資をしている三割を超える数字というのは、無担保の三割を超える数字というのは、赤字あるいは債務超過の企業に対する無担保であります。ここの世界についての融資というのは、今、この新銀行を除いて、残念ながら資金供給は行われておりません。
 ですから、新銀行、今いろいろ数字を精査中だと思いますけれども、要は、ほかの金融機関がしょわない世界を、リスクをしょって新銀行が入った。それが全体のリスクコントロールの中で、最終的に今数字は整理中でありますけれども、全体のリスクコントロールの中で、あのときも議論あったと思うんですけれども、要は、トータルのリスクをそのキャパシティーの中でどういうふうにしょっていくかだと。体力の許す限り、ほかの金融機関がしょわないリスクをこの銀行はしょっていくというふうに思うと申し上げましたけれども、まさにそれを新銀行はやっているわけです。
 ただ問題は、キャパシティーとのバランス、そのバランスが若干思惑違いがあったということだろうと私は考えています。

○田中委員 そういうふうにご答弁をされるお気持ちはよく、お気持ちはですよ、理解したいと思いますが、ここで、私も金融の専門家ではありませんが、このお話も、実は大塚さんにも、私は、銀行が設立された後だったかなと思いますけれども、させていただいたんですね。
 どういうお話かというと、いわゆる銀行と資本家との違いというのは、過去、昭和恐慌のときに、それを収束したことで著名な高橋是清さん、この高橋是清さんの自伝を読んでいたら、おもしろいことが書いてあったよということで、私、お話ししたことがあると思うんですね。
 それをちょっとかいつまんで読んでみますけれども、余が実地経験して一番閉口しているのは、対人信用をもって抵当なしで、その人物を信用して金を貸すこととなし、銀行の貸し付けの一端は、この対人信用をもって営業すべきであると心得ておるようであるが、これは大なる誤解である。余をもって見るに、現今の我が社会は一般に銀行家をもって資本家と混同しているから、かくのごとき誤解を生ずるのではあるまいかと思うと。こういろいろいっていて、銀行家と資本家との別ということで、今さら改めていうまでもなく、元来、銀行というものは、人の技量や経験を信じてその人の計画に金を貸し出すものではなく、これをやるのは、すなわち資本家に限っておるのである。
 そもそも銀行家と資本家との区別はこういう点に存するのである。今もしその人の計画が失敗したらどうするか。貸し金回収の道はあるまい。人の金を預かって営業しているところの銀行が、これで立っていく道理がないではないか。相手の知識、経験、人格を信じ、まずあれならひとつ仕事をやらせてみようというので、おのれの金を貸し、その人の仕事と、あるいは組合になり、あるいは利益の幾分なり配分し、その事業の危険を分かつのが資本家のなす仕事である。すなわち対人信用ということは資本家のやることで、銀行家のすることではないのだ。要するに、前述のとおり、資本家と銀行家を混同しているから、こういう誤解を生ずるのである。
 くどいようであるが、かかる場合には、銀行家は、その事業が失敗しても、その元金が確かに返るという見込みが確立せざる以上は、決して金を貸し出すべきものではないのであると、こういうふうにいっているんですね。
 さらにいいますと、とにかく、いかに財産があり、評判がよくても、確固たる回収の見込みがなければ、銀行家は決して金を貸し出すべきものではない。殊に、その人間が評判がよいとか、財産が多くあるなどという世評で金を貸すのは、決して商業銀行の本来の性質ではないと、まあ、こういっているんですね。
 これがすべて今の時代に当てはまるかどうかということについては、私は、そういう意味では確信を持つような知識は持っていませんけれども、一つの考え方、理念として、なるほどなというふうに思います。
 今の時代でいうと、間接金融だ、直接金融だということであれば、例えば東京都も、石原知事はさまざまな証券市場の開発をやってこられた。こういうことは、いわゆるここでいう投資というか、まさに事業に対して資金を調達する方法ということで有益であると、高橋是清さんの説によれば、そういうことなんだろうと思います。
 しかし、預かったお金を間違いなく運用しなきゃならないという意味での商業銀行は、そういう投資ということを第一に考えて経営をしていくものではないんだ、こういうことをいっているのだろうというふうに思うんですね。
 こういう説に対しては、いかがお考えですか。

○大塚副知事 これはご質問をいただいているわけですけれども、逆に私は田中理事に質問をさせていただきたいんですけれども、質問に答えて質問でということを含めてご答弁させていただきますけれども、田中理事がおっしゃった高橋さんの銀行についての概念というのは、確かにそれは、あのときそういうふうなことであったと思います。
 しかし、それは一つの金融業というか、銀行業の概念でありまして、例えば東京都が、信用保証協会があります。信用保証協会、ご存じのとおり、信用保証協会もまた金融の仕組みの一つでありますけれども、間違いなく回収できるもの、その見通しのあるものについてだけ、がちがちで保証をかけているわけじゃありません。それは高橋さん以降の時代の変化、それから金融業に対する社会のニーズ、経済環境の変化も含めた環境の変化、そういうことを含めて、やはり金融に対するデマンドというのは相当さま変わりしている。そういう中に、根っことして、業としては、確実に回収できるものに貸すのはいいに決まっているわけですけれども、しかし、それだけでは済まない。これは全体のために、リスクをしょっても、例えば保証もそうですけれども、そういうふうな感じで入ったわけであります。
 新銀行東京もまた、そういう理念と政策金融とまではいいませんけれども、民間銀行とはいいながら、東京都が資本を供出することによりまして、そこでマージンを大きく上げなくても、その上がるであろう利益、通常の金融機関の利益を、むしろ金融に苦しむ零細な中小企業者に、そこのところをしょって供給をしていくというだけで、これはですから普通の、マーケットにたくさんあります民間の金融機関とは設立の概念が違うわけであります。
 私はこの前も、こういう銀行は必要なんだということを国の関係の、公の、これは公式ではありませんけれども、やりとりの中で、そういうふうなご支援というか、お褒めをいただきました。
 ただ、残念ながら、もう一度、もう何回も出ていますから、繰り返さないようにはっきりいいますけれども、環境が変わったということは間違いない。その環境の変化というのは、短期間で劇的に変わった。そこのところで、組織体としてのキャパシティーを超えて、数字は今精査中でありますけれども、詳細は聞いておりませんけれども、キャパシティーを超えてリスクをしょったということであります。
 自己資本を含めて、まだまだ立て直すキャパ、容量、能力、それはこれからの手当ての仕方もありますけれども、それから新銀行自体の努力もありますけれども、まだまだ残っている。この新銀行が、中小企業融資、恵まれない中小企業融資、それを新銀行の基本理念として、引き続きしっかりとそれを踏まえて、それを掲げて健全な経営体になるということを、まだ確信しております。まだ途中であります。

○田中委員 私は、誤解のないように申し上げておきますけど、中小企業対策が必要ないなどという意味で質問しているのではなくて、中小企業の支援であるならば、さまざまな方法があるだろうと。
 おっしゃいました信用保証協会というのは、これは別に銀行の商品ということではなくて、これは公的な政策として、中小企業に対する政策として行っていることではないんでしょうか。
 ですから、銀行というのは民業である、民業であるから経営は経営者だと、そういうふうに先ほどからご答弁いただいているわけですよね。だから、民業である銀行がきちっと成り立って利益を出していくためには、環境の変化に応じてさまざまなことをやらなければならないのは当たり前なんですよね。だから、そのことを別に否定はしない。
 私は、もっと前段で、民業である銀行を設立するときの、設立の理念そのものに矛盾とか問題があるのではなかったかということを提起して、お話をさせていただいたんです。
 さて、もう少し、ただ、日本では銀行家と資本家の区別があいまいになる、誤解をされやすい環境があるんだということも、この高橋是清さんという方は語っているんですね。
 いま一つ注意しておきたいのは、日本人が銀行家と資本家を混同し、銀行家に望むに資本家に望むべきことをもってするのは、要するに資本家で銀行を兼ねているもの、すなわち三井とか三菱とかいうものと普通の商業銀行を同一視するの過ちに座しているのではあるまいかと思う、こういっているんですね。
 それは、なるほど三井とか三菱とかいうものは、一面、大資本家で銀行を兼ねているのであるから、対人信用をもってして、ある人の計画に投資しても差し支えないと。しかし、普通の商業銀行ではそうはいかぬ。単に対人信用をもって金を貸してくれと迫る者あれば、おまえに経験、技量があっても、その経験、技量がうまくいくや否や、神ならぬ身の知るよしもなしだ、銀行の立場としても、うまくいったところが利息だけしか取れない、悪くいくと全損になる、組合の仕事より悪い、そういう立場に立つことは銀行はできないというほかないのである、こういっているんですね。
 だから、日本の銀行の中には、大資本家の銀行、系列の銀行というのは、確かにそういう一般の商業銀行と、投資ということを念頭に置いた、投資事業というのですかね、そこのあいまいな部分は確かにあるんだけれども、そこのところはきっちり見きわめが必要だということの警鐘を鳴らしている言葉だというふうに思います。
 ここで私、大塚さんと議論をするだけに来ているわけじゃないので、まだ知事にいっぱい聞きたいことがあるので、これもかつて聞いたことですね。
 二〇〇三年七月一日の本会議、代表質問ですが、新銀行創設の目的が中小企業への資金供給であるならば、あえて決済業務を行う必要はなく、また資金調達についても、コストのかかる調達手段である預金業務よりも、債券や借り入れでの資金調達の方が現実的だと……(「さっきいった」と呼ぶ者あり)、そうか、これ質問したかな。そうだね。
 それで、私が聞きたいのは、その後、ATM。済みません、失礼しました。ATMね。
 私が次に聞きたいことは、この新しい銀行の業務展開についてなんですけれども、知事は、ATMは撤収して、かわりにほかの業務を展開する、こう発言をしたわけですけれども、さきの代表質問で、新銀行東京の新たな事業、これ、いつごろ、どのような形で発表するのかということを私は伺いました。
 しかし、知事はこれには答えないで、かわって産労局長が、ATM事業を含めた具体的な事業展開については、新銀行東京がみずからの経営判断により行うものと認識していると答えました。(発言する者あり)当たり前のことですよ。そうです。当然のことですね。
 知事は、マスコミの前では、再三、新銀行の関係で会議をしたとか、てこ入れをしたとか、ご自身が計画を発表するというようなことをいい続けているわけなんですね。二月十一日のテレビでも、接待をしてタイトに民間の意見を聞いた、こういうふうにおっしゃったわけですけれども、だれとどこで会って、どんな話をされたのか。つまり、石原知事の意思はどういう形で新銀行東京の経営陣に対して伝えられていくのでしょうか。

○石原知事 この銀行の立て直しについては、私たち、八方手を尽くして努力している最中でありまして、都の政策を形成、実現するために、当然、必要な人物とも会い、専門的な知見を得たり、情報を収集したり、依頼を行ったりしております。中には、新銀行東京に関することも十分含まれております。
 しかし、今、そのプロセスの段階で、この段階で相手方やその内容について、あるいは相手とのやりとりについてお答えはできるものではございません、結果がわかるまで。

○島田産業労働局長 ただいま田中理事から、知事の意思がどのような形で新銀行に伝わっているかというご質問がございましたが、都は、株主総会の出席等を通じました意見表明、取締役会に対する申し入れ等により、新銀行東京が設立目的に沿った経営を行うよう、出資者としての意向を伝えているところでございます。

○田中委員 新銀行の設立に先立つ人事あるいは中小企業融資をめぐる情勢の読み違いといったような責任はもとより、銀行が設立した後も株主として大きな影響力を持っている知事が、いろいろなところでいろいろお話しになる。議会の答弁では、経営者の責任というふうに先ほどからお話しになっている。こういうようなことで、新銀行の経営というものが本当にうまくいくのかなというふうに思うんですけれども、私どもは、中小企業対策という当初の設立の目的でこの事業が立ち行かないのであれば、民間への売却ということも含めて、新銀行東京のあり方を早急に検討すべきだということを以前から主張してまいりました。このことを申し上げて、次の質問に移らせていただきたいというふうに思います。
 次は、いわゆるTWS、ワンダーサイトですね、これにちょっと関連してお話を伺いたいと思うんですが、本件については、都民の六割以上、六四%が、朝日新聞の世論調査では適切でないという評価をし、我々も議会で問題点を指摘してまいりましたが、知事は、反省をして改めるというよりかは、むしろ館長を昇格させるというようなことを含めて、ますますみずからのやってきたことを正当化するというような印象が非常に強く残るわけなんです。
 ワンダーサイト事業の施設、クリエーターレジデンス、これが入居しているコスモス青山についてお尋ねしますけれども、そもそもこの事業は、知事の言葉によりますと、廃物利用で行うということで、都の遊休施設を使うということだったと思うんですけれども、このトーキョーワンダーサイトの三施設の中でなぜかここだけ、家賃を払わなくてはならない土地信託ビルを利用しているわけなんですね。
 昨年の九月二十一日に開催された東京都の文化施策を語る会、これの第六回の会議で、知事は、町の真ん中にある方が若い人も喜んでくれると思うといっていたから、高井が見つけてきて、きのうそれを見に行ったけど、すぐ決めました、こう発言をされて、これは議事録も残っているんですね。
 まず、この事実関係を確認しますが、この高井なる人物は、特別秘書の高井さんのことですよね。それから、この物件を見に行ったというのは、知事自身が見に行った、これは事実でいらっしゃいますか。

○山口知事本局長 予算特別委員会の要求資料、第34号でお示ししたとおり、コスモス青山を視察したのは、知事と高井政務担当特別秘書でございます。

○田中委員 そのときに随行したのはどなたですか。

○山口知事本局長 これも同資料の34号でお示ししてございますが、高井政務担当特別秘書と当時の知事秘書の山下副参事が随行したほか、コスモス青山を信託財産として所管する財務局財産運用部の職員四名が立ち会ったものでございます。

○田中委員 不思議なんですよね。これ、確かに資料で要求したことで、今のご答弁はあるわけですけれども、大変奇異に感じるのは、所管である生活文化局の職員がどなたも随行していないんですよね。これは何でですか。

○山口知事本局長 このトーキョーワンダーサイト事業は知事の発案の事業でございますから、トーキョーワンダーサイト青山クリエーター・イン・レジデンスは、国内外の新進若手アーチストが集い、創造活動に取り組むことができる滞在交流拠点として新たに整備されるものでございます。
 この整備を進めるに当たりましては、滞在交流施設等の立地条件、それから規模などが重要なポイントになることから、まず知事みずからが現地を確認することが必要であると考え、視察が行われたものでございます。

○田中委員 知事が見にいらっしゃることを悪いといっているんじゃなくて、生文の、担当の、所管の職員がどうして随行されていないのかというのは、不思議な印象を受けるんで、それがなぜかということをお答えいただきたいんですよね。

○山口知事本局長 先ほどお答えしましたように、知事のトップダウンでの事業でございますから、まずその立地条件をみずから確かめに視察したものでありますから、所管を連れていく必然性はありません。

○田中委員 そのときに、知事の四男の延啓さん、それから今村館長さん、家村副館長さんも同行されたというようなことも聞いているんですが、そういう事実はあるんですか。

○山口知事本局長 私は、先ほどご答弁したほかに、今のお話については承知しておりません。

○田中委員 ということは、否定をされないということですわね。(発言する者あり)
 さて、最近の景気の状況はとてもよく、特に都心の地価は上がってきていますし、それに伴い、当然、家賃も値上がりをしている状況にあるわけです。当然、オフィスの需要も上がっていますから、入居する企業を探すのは、いい場所であればそう難しくないかもしれませんね。
 このビルの契約先である中央三井信託銀行では、民間企業に貸す方向で実は検討していたそうなんですね。企業に貸せば、当然、その家賃が入ってくる。それが、このトーキョーワンダーサイトが入居することになって、当然、東京都がその家賃を払うということになるんですね。
 仮に、ある企業が同じ契約内容で入居したとすると、約年間で七千万円の家賃が入るということになるんですね。これ、十年間で考えれば七億円。十年後の東京でいえば、七億円家賃が入るわけでしょう。
 さて、この信託ビルの収益面というところから考えても、ワンダーサイトの事業からいっても、維持管理費だとかかかってくる、過大な負担ではないかなと。廃物利用というような域を到底超えてしまっているんじゃないかというふうに私たちは考えざるを得ないんですね。
 知事は、この文化施策を語る会で、こっちも値切り倒すつもりでいるけれど、一年間で一億かからないで、数十室があいていてと、こういっていますけど、何かよくわからないんですね。
 知事のトップダウンで、ここがいいといって決めたこの場所、そうやって決めたこの場所の事業実績というのは一体どうなっているんですか。

○渡辺生活文化局長 都は、才能あふれる国内外の新進若手アーチストが集い、旺盛な創造活動に取り組む場として、旧国連大学高等研究所に滞在交流拠点であるトーキョーワンダーサイト青山を整備し、昨年の十一月七日にグランドオープンをいたしました。
 本年一月までに、韓国及びオーストラリアとの二国間交流で、日本からの派遣が二名、海外からの受け入れが五名、それから、アーチストトークやレクチャー、公開制作等を合計七回、さらに、レジデンス施設の宿泊者数は延べ四十一名という実績を上げております。
 クリエーターが多く集まる東京の中心地である青山に位置するとともに、トーキョーワンダーサイトの渋谷とも近接するなど、地理的にも恵まれた条件にございます。
 オープンしてまだ間もない状況ではございますが、数多くの新進若手アーチストが集う滞在交流の場として、今後の成果を大いに期待しているところでございます。

○田中委員 今後、どういう成果が上がるかわかりませんけれども、私がお尋ねしているのは、当然、ここにおいてこれをやるということについての事業の見通しというのがありますよね。道路をつくれば、一日何万台通るというようなことを想定して有料道路というのはつくる。ところが、一日五万台通るという見込みでつくった道路に一日二万台しか車が通らなければ、その分、赤字になる。さあ、これをどうしようかというのが、公共事業のいつも大きな問題なんですね。そういう観点からいったときに、現状どういう状況にあるんですか。

○渡辺生活文化局長 若手芸術家及び新進芸術家の発掘、育成ということにつきましては、特に現代芸術ということになりますと、新しい分野でございます。ただ、東京都といたしましては、文化振興指針にそれを位置づけて、進めていこうということでございます。
 これまでも、芸術の分野では、ゴッホにいたしましても、皆さんご存じのピカソにいたしましても、最初は物になるかどうかわからないという状況でございましたけれども、それが長い目で見て大いな成果を上げていくと。しかも、経済的効果も極めて大きいということをご理解いただければと思います。

○田中委員 何か訴えるような目で必死でご答弁をされているのを目の当たりにすると、これ以上は聞きづらいなというふうに私も思いますが、さて、先日の本会議で、立ち上がり時期の組織的な混乱がございましたと、こう答弁をされました。しかし、この件を調査すればするほど、知事ご自身が大変深くかかわって、ワンダーサイトの当事者の話を一方的に聞いてこの事業を進めている。あるいは世間では、私物化をしているのではないか、こういう批判も出てくるわけなんですね。そういうことがいわれているわけです。
 さて、二月十一日に放映をされた、これもテレビ朝日の「サンデープロジェクト」ですか、その中で知事は、下にいる役人たちが、合法的な手段か何か知らぬが、みんな一週間休暇とっていなくなっちゃったというんだから、サボタージュをね、と、さも都庁の内部にこのような問題があるかのような発言をされた。本当にこういうような事実があったんですか。

○渡辺生活文化局長 お尋ねの、平成十七年七月二十二日のワンダーサイト渋谷の開設前後における都の職員、それから、ワンダーサイトのスタッフの勤務状況についてでございますが、いずれも長期にわたる休暇を取得したという事実はございません。
 なお、当時のワンダーサイトにおきましては、渋谷の開設に合わせたイベントの開催が重なったことなどにより、本郷及び渋谷への十分な人員の配置に非常に苦労しているという状況にございました。
 知事が、職員が意図的にサボタージュしたという発言をしたことにつきましては、事実関係に関する情報が知事に正確に伝わらなかったことによるものと思われます。

○田中委員 いや、何も知らなければ、こういう発言をされるわけがないと思うんですよね。だけど、何かこの発言の根拠になる情報があったから、この発言になったわけでしょう。
 知事にお尋ねをしますけれども、こういう発言の根拠になる情報というのは、一体どういう話だったんですか。

○石原知事 事実関係についての認識は、局長が述べたとおりでございます。
 このワンダーサイトにおける運営の基本となるべき人員配置についてそごがあったことについて、最高責任者として、テレビの放送のときの対談ということで、若干強い表現を用いて関係者を鼓舞したのでありますが、とにかく立ち上がりの段階で、やっぱり組織的にいろいろ混乱がありまして、いずれにしろ、ワンダーサイトを三つ構え--二つ目のときでしたけれども、配置されている人間が全員動員されずに、担当の今村夫妻と、本当に限られた一、二のスタッフが重点的に働いて、そのオープニングに備えた。その苦情を私聞きましたので。とにかく延べ一週間、実はその間、そこに行くべき所員も、ほかの事業があったり、そこでどんな仕事があったのか知りませんが、ほかの生文が抱えている部署に行って、少なくともその現場にはいなかったということで、今村館長と関係者との間に気持ちのそごが来したというか、完全なコミュニケーションがなかったことは事実なようです。
 そのついでに、私、申しましたのは、これは実際そうですけれども、現実にいろいろ理由もありましたが、発注したカメラが、要するに、頼んでも胴体だけ来て、レンズがついていない。レンズがついていないのをどうやってやるんですかと。四カ月たってからレンズが来たって。これはいろいろ理由があるでしょうけれども、やっぱり、いろんな催しが行われるときに、現場でその記録をとろうとしても、カメラがないということの痛痒というのは、本当に大変なものだと思いますし、こういうことも、振り返ってみますと、組織の中でのこの館そのものの立場がぐるぐる変わりまして、一時期は協同組合みたいなのがなったり、そんな混乱があって、結局、担当の関谷副知事に頼みまして、これをきちっと整理してほしい、そうすると、もっとスムーズに物がいくだろうということで、一月にきちっと組織化いたしました。
 その前、例えばどういうことがあったかというと、ああいうちっぽけな建物の常駐の館長というのは、役所の通念でいくと課長なんだそうですな。この課長なる館長が参与でいる。私のアドバイザーということですね。そうすると、彼は彼なりに、その自負で、担当の局長とか部長に、ああしてくれ、こうしてくれと注文すると、お役人からすると、課長の分際で局長に向かって一方的に物をいうなとか、部長に向かっていうなとか、そういう感情のそごがあったようで、その混乱はやっと是正いたしました。

○田中委員 要は、その発言の根拠は確たる情報ではなかった。また、同じ番組では、いうことを聞かない役人なんて殴っちゃえと。すべて言葉狩りを私はするつもりはないですよ。しかし、浅薄、不確実きわまりない情報をただ仄聞として引用され、全く吟味もせずにテレビで公言されるのは、知事としての品格としてもいささかなものでありましょうかと、私からもいわざるを得ないじゃないですか、こういうことでは。
 さて、次にお尋ねをいたしておきます。マスコミでも議会でもさまざまな問題が既に指摘をされているわけですが、特に指摘をしたいのは、なぜ知事のご子息がこの事業にかかわったのかということなんですね。
 知事は、余人をもってかえがたいとか、立派な芸術家ということをおっしゃった。いろんな思いがそこには込められていらっしゃるんだろうと思うんですけれども、先日、資料要求で、トーキョーワンダーサイトの就任時の人選、稟議等の手続に際して添付された履歴書を要求いたしましたところ、該当書類なしということだったんですね。
 庁内のほかの審議会など、委員などを選任するときは、例えば関係団体から候補が挙げられるとか、さらにその人の履歴を都庁として調べる、あるいは実際に面接をした上で就任の依頼をするというのが普通のやり方だというふうに伺いましたが、当然、トーキョーワンダーサイトでも、起案するときには、履歴書を添付するというふうにあるべきであったと思うんですけれども、これは何の公的な文書も残っていないんで、説明ができないんですが、どのような過程でこの延啓さんが事業にかかわったのかということを、知事ご自身の言葉でご説明いただけませんか。

○石原知事 コンテンポラリーアートというのは、ほとんどどこの行政体も手がけたことのない分野のことなんです。一部、京都なんかでやっているところもありますけれども、本当に限られたもので、国はもちろんゼロ、東京もゼロでありました。
 町の様式が変わり、住宅の様式が変わってきたときに、このコンテンポラリーアートというのは、これから非常に大きなニーズのある分野でして、現に、例えば、ごらんになったかどうか知りませんが、丸の内のオフィス街に、かつて、いろんな形で牛を置いて、コンテンポラリーアーチストにペインティングしてもらいました。その中にはワンダーサイトから二人ほどの人間が選ばれていきましたけれども、いずれにしろ、履歴書を出して云々というような、そんな役所にかかわるような世界じゃないんですよ。だから、身近で、ある見識を持って、人脈を持っている人間を使わざるを得ないんで、私はそういう意味で息子のことを余人をもってかえがたいと。これはさんざんたたかれて、反省していますけれども、これは息子の能力のことをいったわけじゃないんです。ある能力を持って、それを活用して、とにかくこちらがただで使う。ほとんど無料で、しかも、要するに、ほかの仕事を持っていて、その方のコストがはるかに高いのに、それはさておいて、とにかくスイスに日帰りで飛んで行って、向こうの、要するに、舞台装置をつくってくれる、こんなものをやる人はいませんよ。
 ということで、余人をもってかえがたいと申しましたが、息子はもう懲り懲りだそうで、都の仕事は一切しないといっておりますから。今後、こういうことになりますので。

○田中委員 この問題は、引き続き別の議員から追って質問させていただきますが、いろいろ私物化の批判の象徴としていわれていることに、全く原因がないとはいえない状況だと私たちは考えているんですね。そういう意味で、この後、また引き続いてお話をさせて……(石原知事「ちょっと一つ」と呼ぶ)いや、時間が限られているので、続けさせてください。(石原知事発言を求む)
 次に……(「やらせてくれといっているんだから」と呼ぶ者あり)いいじゃないですか、求めていないんだもの、答弁を。何をいっているんですか。(発言する者あり)
 次に、海外出張に関連してお尋ねをしたいと思うんですね。浜渦参与の海外出張について伺います。
 この出張の目的である--これは九月の出張ですね--ベネチアで開かれる国際建築展のシンポジウムにパネリストとして参加することとなった経過について伺いたいと思います。

○山口知事本局長 ベネチア・ビエンナーレでございますけれども、これはラ・ビエンナーレ財団が主催するものでございまして、国際的な有名なイベントとして広く知られており、ベネチア国際映画祭や国際美術展、またお尋ねの国際建築展が、その主要なイベントとして位置づけられております。
 国際建築展は、今回初の試みといたしまして、約三百メートルの回廊に、ロンドン、ニューヨーク、東京初め世界を代表する十六都市のデータや都市開発、建築プロジェクトを視覚的に体験できるような大規模な展示を企画して、さらに、その開催イベントとして、各都市の代表を集めたシンポジウムを行いますところから、知事が招聘を受けたものでございます。
 また、今回のシンポジウムのテーマは、今後十から二十年間に都市が取り組むべき課題、都市開発としての水辺空間の活性化であり、東京都が作成いたしました「十年後の東京」の主要施策課題にも合致するものでございまして、また、パネリストとしても参加することで、世界に向けて東京の情報を発信できるとともに、シンポジウムの開催地であるベネチアを含め、東京の都市景観及び水辺空間の魅力の向上に資する視察が可能なため、出張を計画したものでございます。

○田中委員 当初は、知事自身が出席を予定していたというふうに聞いていますけれども、その場合の日程と、実際の知事が行かれなくなって浜渦さんが行かれたときの日程が、随分違うんですね、これ。相当違うということは、いただいた資料でもはっきりしているわけですね。
 これ自体、果たして都民の理解を得られるような内容なのかということを私どもは考えておりますけれども、私は、それ以上にちょっと重要なことは、八月二十四日になって、急遽、知事がいらっしゃることがキャンセルとなったと。そこで、浜渦参与が名代として出張することになったということなんですけれども、普通、知事の名代というのは副知事なんじゃないんですか。副知事が無理なら関係の局長、それが無理ならラインの部長さんなり課長さんなりというのが、組織としての当然の私は対応だと思うんですけれども、何ゆえ名代に浜渦さんがなるのか、どういう理屈でなるのか、その点についてお答えいただけますか。

○山口知事本局長 まず、参与の仕事ですけれども、参与は、知事の策定する重要施策につきまして、知事に進言または助言する職でございまして、知事の指示を受け、重要な施策の実現のために知事を支えるとともに、国の内外を問わず、相手方との交渉や必要な情報収集に当たることが役割として期待されております。
 浜渦参与は、今回出張のテーマであります都市景観や水辺空間の形成など都市づくりの分野で、国及び関係機関に幅広い人脈を有しておりまして、東京都のみならず、首都圏全体を見据えた施策の具体化のための調整や交渉に役立つものと期待できることから、知事が適任として判断したものでございます。

○田中委員 忘れもしませんが、前回の都議会の選挙の直前、議会で問責決議を受けていますよね。知事みずからが更迭をされた、この方を名代として行かせる。これは、形式的に見れば相手に対して非常に礼を欠く、こういうことになるというふうに思うんですね。都民に対して、あるいは議会軽視という意味でも、我々に対して一体これはどういう説明をされるのか、知事自身、どうですか。

○山口知事本局長 先ほどいいましたように、浜渦参与につきましては、委嘱分野として、国及び関係機関との交渉のために参与として任命したものでございまして、その役割として行っていただいたものでございます。

○田中委員 その役割とか、それでというのは、先ほどのご答弁でわかっているんですけれども、要するに、今申し上げたように議会で問責決議を受けて、みずからが更迭をしたという事実は厳然としてあるわけでしょう。それを名代だといって送り出すということは、これは理解できない。組織人として理解できない。これはどんな組織なんだと、普通どこでもこう思うんじゃないですか。そのことについて全くご説明がないというのはいかがなものかと思いますが、再度伺います。

○山口知事本局長 先ほどお話ししましたように、参与の任命権は知事でございますから、参与を出張させることは、東京のみならず、首都圏全体を見据えた施策の具体化のための調整や交渉に役立つものと期待できることから、知事のかわりに、知事みずからが指名したものでございます。

○田中委員 幾ら聞いても知事自身がお答えにならない。知事の側近政治体質というか、議会軽視というのがよく見てとれるわけであります。
 さて、政治資金の関連でお話をお伺いしたいんですが、先ほど、次回の都知事選挙については、政党の推薦は受けないんだということをお話しされたんですけれども、選挙の際に、実は知事は業界団体からは推薦を受けていらっしゃいますね。推薦料も、例えば医師会は三千万、推薦料をもらっていますよね。一体何で政党の推薦はノーで業界団体の推薦はイエスなのか、この点についての知事のお考えをお聞かせいただけますか。

○石原知事 各業界はそれぞれ政党に部分的にかかわりあるかもしれませんが、業界は政党ではございません。

○田中委員 いや、だから政党でないのはわかるんですが、政党の推薦は受けないけれども業界団体の推薦は受けるというのは、どういう意味があるのかなということをお尋ねしたんですよね。よくわかりませんが、何か知事の頭の中では、業界団体は政党ではない--それはわかりますよ。だけど最初、要するに知事は、先ほどの核の問題でも、私は一貫しているんだというけれども、今回の選挙に臨む政党推薦をめぐる発言というのは、当初は、いやあ、立派な政党があるんだから、いろんな政党が自分を推薦してくれることは大変結構なことじゃないですかと、こうお話しされていたと思いますが、今度は、特定の政党である自民党さんの推薦は辞退する、こう報道されたり、二転三転しているような印象があるわけですよね。ですから、そういうことに対して伺ったわけなんですが。
 本会議では、私は知事の政治資金についてお尋ねをした、何に使うのか。要するにこれは政治活動に使うわけですよと答弁をされた。その知事のいう政治活動というのはどういうことなのかということは、またつまらない質問をするかというふうにお話しになるでしょう。それぐらいのことは私もわかっていますよ。
 そこで、通常の政治活動なら私はわかる。しかし、よく収支報告書というのを私どものスタッフで精査したところ、実は知事のご子息、宏高さんですね、この政治団体の収支報告書を見ますと、平成十五年には二千万円、十六年には七百万円、十七年にも数百万円、知事からご子息の団体に政治献金が行っている。十五、十六、十七年、この三年間で三千万円以上も寄附が行っているんですね。年度ごとで見ますと、十五年度とか十六年度については、実はご子息の団体の年度収入の六割以上が、お父さんである知事の団体から寄附がされているということなんです。私は別にこれを違法だということをいっているわけじゃないですよ。
 ただ、ここから見てとれることは、ご子息の政治活動というのは、資金的には、ほとんどすべてとはいいませんが、知事の寄附がなければ事実上成り立っていないような状況にあったというのは、この収支報告上は見てとれるわけなんですね。
 そういう意味でいうと、いかがなんでしょうか。知事は、何のためにお金を集めているのかということでお尋ねをして、政治活動だというふうにお答えをしましたけれども、実際には、知事の政治団体からご子息の政治団体に資金が移動している、こういう実態が明らかになってくるわけなんですね。
 さて、そのお金の原資になる収益というのは、知事は昼食会、これを年に四回ほど開いていらっしゃるということが記載をされています。この昼食会にいらっしゃる方というのは、どういう方が対象になっているんですか。

○石原知事 私の支援者です。
 ついでに申しますと、ワンダーサイトは世界のサーキットに載りました。(資料を示す)ワンダー……(発言する者あり)念のために、よく見なさい。日本でコンテンポラリーアートのサーキットに載ったのは、ワンダーサイトだけですよ。

○田中委員 知事の支援者の方にこれを広く呼びかけていらっしゃると。それは当然そうお答えするかもしれませんがね。
 さて、知事は、いろんな人に会ったり話したり、いろんな相談も受けるし、いろいろな知恵もいただきますよと、本会議ではこういうふうに答弁をしていますよね。同時に東京都の広報予算というのを知事は、知事個人が持っているわけじゃないけれども、東京都には広報予算があり、知事が都政についてあまねく都民に語る機会というのは、紙媒体もあれば電波媒体もあれば、さまざまな機会を通じて、あるいはタウンミーティング、こういうものもあるわけですよね。そういうことを踏まえて申し上げるならば、私は、政治家である限り、政治活動に必要な資金を集めるということは、認められた政治活動の自由だというふうに思いますし、それについて私は異論を申し上げるつもりはありません。
 しかし、知事という立場、行政のトップである強大な公権力を背景にした行政府のトップである知事という立場ということを踏まえるならば、合法か非合法かということとは別に、私は、一つの政治的、道義的な倫理というものが求められるんじゃないかなというふうに思うんですね。
 そういう意味からいうと(発言する者あり)そういう意味からいうと、この三年間で三千万もの資金をご子息の政治団体に寄附をしているということが、果たして都民の皆さんがどう受けとめるかなということは、私はあるのではないかなというふうに思うんです。
 よく知事はいろんな方の言葉を引用されますが、その中の一つで、福沢諭吉の言葉で独立自尊ということをおっしゃったことがありますが、この独立自尊ということを意味するのは、国の独立は自立した個人個人の独立、自立があってこそ国家の独立があるんだと、平たくいえばそういうことなのかなと、私なりに理解をしています。こういう独立自尊の精神というのは大事な精神だとおっしゃる知事が、果たしてこういう態度で一貫されているのか。
 これはワンダーサイトの問題でも本会議でご指摘をさせていただきました。結果の平等より機会の平等なんだということをおっしゃりながら、しかし、実際に知事がファミリーに対して、あるいは側近に対して同様の理念で接しられているのか、同様の理念が貫かれているかというふうに見えるかどうかということでいうならば、果たして、例えばこの政治資金の問題についても、完全に知事の庇護のもとでこれは成り立っているという活動と見えてしまう。それが私は都民の感性ではないかなと、こう思うわけであります。これは別に答弁を求めませんよ。
 さて、時間がありませんので先に進みますけれども、この間、さまざまなことがいわれてまいりましたね。いろんなメディアでいろいろ疑惑とされた報道がなされてきた。その点について、私は引き続きお話ししますけれども、いわゆる吉兆会談、吉兆会合というものは、これは私は事実がどうであったかということは知りませんよ。そんなわかる立場ではありません。しかし、私が聞きたいのは、私がお尋ねしたいのは、この会合があったこと自体は、知事はもう既にお認めになっているし、事実だというふうに認めておられるわけですが、改めて伺いますけれども、これは同席された方はどなただったんですか。

○石原知事 同席した人の一人は、かの問題がある水谷何がしということは後で知りました。同席した人間は、そこで初めて糸山君に紹介されただけであります。
 ついでに申し上げますと、あなた、政治資金の問題で、うちの息子だけにターゲットを絞るのはひきょうじゃないですか、これは。私は、もっとほかの人に、もっとほかの人材育てるのに使っていますよ。あなたに何か特定の人間だけいわれて、人の財布の底をつついて、何かそういう卑劣な物のいわれ方をする筋合いは私はない。

○田中委員 お尋ねをしたことに対してお答えをいただければいいわけなんですよね。
 さて、今余り明確にお答えになられてないんですが、何人だったんですか、会合されたのは。

○石原知事 よく覚えていませんが、あなたがお得意な週刊誌に写っている写真の数じゃないでしょうか。

○田中委員 週刊誌によれば--週刊誌ではないですよ。私、週刊誌で見たわけじゃなくて、写真自体は拝見をさせていただいたことはありますけれども、七人写っているんですね。私は水谷さんから伺いましたけれども、知事と糸山さんと宏高さんと水谷さんと、もう一人、霊園の開発業者さんがいらっしゃったということを私は聞いているんですが(「さっき七人といったじゃない」と呼ぶ者あり)五人、会食をされたのは。写真はもうあと二人写っています。同日その場にいた方がいらっしゃるんですね。ただ会食をされたのはその五人だというふうに伺いましたけれども、事実はそうですか。

○石原知事 あなたがそうおっしゃるならそう--私、一々人間の数まで覚えておりませんから。

○田中委員 さて、事実として申し上げ、事実として確認をさせていただきたいんですが、当日、知事は、その会食の場に行かれて、それで会食をしてお帰りになった。その会食の代金はお支払いになってないというふうに私は聞いているんですね、同席した方から。それは事実ですか。

○石原知事 それは糸山君が主催の、私の息子の当選祝いの会ですから、彼が要するにホストとして賄ったんだと思いますよ。

○田中委員 知事はそういうご認識なのかもしれませんが、実はそれについても、同席をされた方から私は証言を得ているんですけれども、実は、その支払いは、後で糸山さんは水谷さんに払ってくれというふうに、請求書が来てからいったそうなんです。
 つまり私は何を指摘したいかというと、その当日そこに知事がいらっしゃって、かなり高額な接待、一人十万円以上の支払いを糸山さんがされたというのは事実のようでありますけれども、高額な接待だというふうに私は認識をいたしますけれども、要するにだれが支払うかわからないという状態のところに知事が出向いていって、それで帰ってくるということは、私は、知事の日程管理上極めて問題があるのではなかろうかというふうに思っているんですね。そう思いませんか。

○石原知事 あなた、常識で考えて、糸山英太郎というのは、いろいろ人によって評価は違うが、大財閥ですよ。四十年来、私、知己でありますけれども、彼が私を招いてくれた。当然、私は彼が払うと思いますよ。

○田中委員 それは知事の認識はそうかもしれない。事実は、それは糸山さんには我々は確認してないけれども、会合の同席者によれば、要するにそれは、あなたが払ってくれというふうに後からなった。その間の経過は知事はご存じないかもしれませんが、私が申し上げているのは、知事は、例えば契約の締結の代表者ですよね。要するに公共事業の発注者でもある、あるいは許認可権限を持っている立場でもある。我々同じ政治家といっても、議員とは立場が違う。行政の責任者という立場にいらっしゃるわけですね。
 ですから、ある意味で法律的な制約というのは、我々議員の場合よりも極めて厳しい制約のもとに置かれていらっしゃるわけです。これは刑法上、明確にそういう位置づけになっているのであって、したがって、知事の日程は、私は、そういうことも勘案した上できちんと管理されるべきものだというふうに申し上げたいんですね。つまり、あらぬ疑惑を招かれるような状態でそこに知事が出向くというようなことが決してあってはならないというふうに私は思います。
 だれが払うかわからないようなところに行ってしまう--それから、もう一つ私が不思議なのは、お礼をしに行ったというふうにお話をされていらっしゃるわけですが、普通お礼をするというのは、感謝の意を相手に伝えるということだと思うんですね。感謝の意を相手に伝える、ありがとうございましたということだと思うんですが、このケースで見てみますと(「終わり、終わり」と呼ぶ者あり)お礼をしに行くというふうに知事はおっしゃっているけれども、まあいってみれば、そこで接待を受けるということが前提になっているわけなんですよね。

○山下副委員長 田中理事、時間でございます。発言を終了してください。

○田中委員 だから、お礼をするというふうにいっていることと、接待を受けるということが、どうしてそこが……
   〔発言する者多し〕

○山下副委員長 田中理事、発言を終了してください。

○田中委員 どういう意味なのかということについて、私は非常に不思議なんです。その点については、接待を受けるということとお礼に行くということがどうして同じなんですか。

○石原知事 あなた、それじゃ、立場が知事だったらだれにも会うなというんですか。息子が援助されて、要するにみんなでお祝いしようというときに、私がどうして出ていけないんですか。ましてそのときだれが来るかというのは知りませんよ。それは私と糸山の信頼関係の問題でしょう。やっぱりあなた、ちょっと卑劣というか下賤だね、君の質問は。

○山下副委員長 田中良理事の発言は終わりました。

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