東京都議会予算特別委員会速記録第五号

○松原委員長 ただいまから予算特別委員会を開会いたします。
 これより付託議案の審査を行います。
 第一号議案から第二十九号議案までを一括して議題といたします。
 この際、部局別質疑について申し上げます。
 去る三月十六日に議長を通じ各常任委員長に依頼してありました部局別質疑につきましては、お手元配布のとおり報告がありました。ご了承願います。
 これより締めくくり総括質疑を行います。
 順次発言を許します。
 川井しげお理事の発言を許します。

○川井委員 先月二十二日に開会いたしました第一回定例会も、いよいよ最後の議論の場になりました。私は、東京都議会自由民主党を代表して、予算特別委員会の締めくくり総括質疑を行います。
 初めに、財政運営についてお伺いします。
 本会議から予算特別委員会までの質疑を通じて、石原知事就任後七年間に及ぶ財政再建を振り返りつつ、その取り組みを検証してきました。石原知事と我々都議会が一緒になった真摯で前向きな努力があったからこそ、青島都政末期の暗たんたる財政状況から、ようやく財政再建に一区切りがつくまでに持ち直すことができたのであります。
 これまでの議論を通じ、将来に向けて都財政が内包する課題も明らかになりました。職員の退職手当や大規模施設の更新経費増大など、いずれも避けて通ることができません。さらに、人口減少や少子高齢化により、社会構造の変化は確実であり、都財政に非常に大きな影響を及ぼします。
 二〇一六年の東京オリンピック招致を目指し、東京の新たな再生に歩み出すときに来ているのであります。今後とも、強固で弾力的な財政基盤の確立が必要であることは明らかであります。
 二次にわたる財政再建推進プランをやり遂げてきた我々は、これまでにも増して財政構造改革を進めていきますが、その際に、新たな視点や手法を意欲的に取り入れていくことが不可欠であります。
 そこで、今後の財政構造改革をどのような視点を持って進めていくのか、まず、知事の決意をご確認させていただきたいと思います。

○石原知事 都財政は、バブルの後遺症に大分長い間苦しみましたが、その間、毎年度のやりくりに追われて、構造的な課題を抱えていても、対症療法的な対応を余儀なくされる危機的状況が続いておりました。
 今、ようやく財政再建の取り組みが功を奏し、都財政は、瀕死の状態から、本格的な体質改善にも取り組める状態にまで何とか回復することができたと思っております。
 この機会を逃すことなく、今後は、大規模施設の維持更新の問題など、負の遺産と呼ぶべき残された懸案課題の処理に精力的に取り組んでいく覚悟でございます。たとえ一時的に財政負担の増加を伴う案件であったとしても、先送りすることなく抜本的な対策を講じ、都財政の構造改革を確実に進めていきたいと考えております。

○川井委員 財政構造改革に終わりはありません。新鮮な視点に立ち、財政運営の効率化と都民サービスの充実が今ほど求められるときはないということを改めて指摘をしておきます。
 いうまでもなく、財政運営に当たっては、安定した財源の確保が前提であります。そこで、税収確保についてお伺いをします。
 主税局では、区市町村への個人住民税の徴収支援や自動車税の徴収強化、インターネット公売の導入など、創意工夫を凝らしたさまざまな徴税努力の結果、平成十六年度決算で九六・八%という過去最高の徴収率を記録しました。
 中でも自動車税は、平成十二年度以降取り組みを強化し、去る二月には、タイヤロックによる差し押さえ手法も新たに導入しています。自動車税の徴収率はどのように推移し、増収効果はどれくらいあったのか、お伺いをいたします。

○菅原主税局長 お答え申し上げます。
 この間の徴収の強化に伴いまして、自動車税の徴収率は年々上昇いたしまして、平成十六年度決算におきましては九六・七%と、徴収強化着手前の平成十一年度決算九二・六%と比べまして、四・一ポイントの大幅な向上となっております。
 また、徴収率の全国順位におきましても、平成十一年度の四十五位から八位へと大幅に上昇するなど、大きな成果を上げることができました。
 なお、この間の増収額は、平成十一年度の徴収率と平成十二年度以降各年度の徴収率との差をもとに試算いたしますと、五年間の合計で約二百三十四億円に上るものと考えております。

○川井委員 自動車税に限らず、今後、税の公平性を担保しつつ、都税収入の確保に向け、さらなる徴税努力が求められていますが、どのように取り組んでいくのか、お伺いをいたします。

○菅原主税局長 お答え申し上げます。
 所得税から住民税への三兆円の税源移譲を間近に控えまして、地方団体における租税債権の確保は、以前にも増しまして重要な課題となっております。
 主税局は、全国自治体へのノウハウの提供など、他団体との連携を強化する一方で、適正、公平な課税に努めるとともに、創意工夫を凝らしたさらなる徴税努力を重ねまして、歳入所管局に課されました責務を全力で果たしていく決意でございます。

○川井委員 次に、大量退職期の到来に向けた都職員の人材育成についてお伺いをいたします。
 最近、新聞等で、労働力確保の観点から、二〇〇七年問題への民間企業の取り組みが紙面をにぎわしております。
 都も、二〇〇七年度以降、いわゆる団塊の世代による大量退職が問題となりますが、象徴的な二〇〇七年だけを論じるべきものではありません。都では、再任用、再雇用制度といった定年後も六十五歳まで活躍できる制度があるため、本当に問題が顕在化するのは二〇一二年以降であります。それまでの五年間で、知識、技術、志、心をどのように伝え、新たな人材力をつくるかが一番の課題であります。
 例えば、地下鉄ダイヤの作成や複雑な構造となっている下水道の地下配管の設計など、長年にわたって第一線の経験で培われ熟練していく業務は、まさに職人芸であります。こうした職人芸は、事務も含めてあらゆる職場にあるはずです。
 最近になって、水道局や東京消防庁などで技術を継承させる取り組みに着手したようですが、十年も前から二〇〇七年問題が叫ばれているにもかかわらず、都庁全体の対応策はいまだ見えてきておりません。
 今後、組織運営や行政サービスの質の低下を招かないよう、どのように知識、技術、そしてその志を継承、発展させ、人材力を高めていくのか、具体的な取り組みの方向をお伺いいたします。

○高橋総務局長 ご指摘のように、知識、技術、志の継承、発展は、時代の変化が先鋭的にあらわれる都政におきましては、現場の仕事を通じて培っていくことが必要でございます。
 このため、大量退職期以降を見据えまして、職員に対して、各職場で求められる知識、能力、技術等の人材要件を具体的に示しますとともに、新規採用時からの計画的な配置を進めるなど、職員が腰を据えて仕事に取り組める体制を整備してまいります。
 こうした諸施策の基本的方向を示すものとして、東京都職員人材育成基本方針を今年度内には公表する予定でございます。今後は、この方針に基づきまして、人材育成を基軸に据えた人事管理を着実に推進してまいります。

○川井委員 ぜひ全庁挙げてのご努力を期待いたします。
 次に、学校教育現場を支える教員の人材育成と処遇についてお伺いします。
 今後十年以上にわたり、二千人以上の退職者が見込まれる大量退職期を迎えます。そこで、採用者数の大幅な増加が見込まれる中、優秀な人材を確保するには、現在学校で産休、育休代替教員や非常勤講師として活躍している優秀な人材を活用していくことが重要ですが、見解をお伺いいたします。

○中村教育長 今後の教員の大量退職期に当たりまして、ご指摘の学校現場で活躍しております産休、育休代替教員などの臨時的任用教員や非常勤講師の実践力の活用は、優秀な教員の確保や教員の年齢構成の不均衡を是正していく上で、極めて確実で有効な方策の一つであるというふうに考えております。
 その具体化に当たりましては、臨時的任用教員などの業績評価制度を整備いたしまして、それを採用に結びつける仕組みづくりが必要でございます。今後、実現に向けて検討してまいります。

○川井委員 次に、教員の処遇についてですが、教職員の多数を占める二級職教員が担う職務には、学校に対するニーズの多様化などにより、困難度や責任度に差が出てきているのではないでしょうか。
 都教委は、二級職教員の職の分化など教員全体の職のあり方を検討し、職層、職責に応じたきめ細かな処遇を行うことにより、教員全体の資質のレベルアップを図るべきですが、見解をお伺いします。

○中村教育長 都教育委員会が区市の教育委員会教育長を交えて設置いたしました第二次教員の給与制度検討委員会によります昨年八月の報告では、二級職を含む教員全般について、職のあり方の検討が必要であるというふうにされております。
 都教育委員会では、今後新たに検討組織をつくりまして、二級職など職の分化につきまして、職務の困難度や責任の度合い等の実態、求められる能力等の分析を進めるとともに、めり張りのある処遇のあり方についても検討してまいります。

○川井委員 団塊の世代の大量退職は、中小企業の現場においても重要な課題であります。東京の産業を振興するためには、企業の人材育成、確保の取り組みへの支援を充実強化すべきですが、中小企業は人材確保に苦慮しており、みずから従業員教育を実施することも容易ではありません。
 産業を支える人材の育成に関する我が党の代表質問に対し、企業への積極的な支援とともに、関係機関による人材育成ネットワークを構築すると答弁がありました。
 そこで、この人材育成ネットワークの目的と機能についてお伺いをいたします。

○成田産業労働局長 人材育成ネットワークは、基盤技術から高度専門分野に至る中小企業の幅広い人材の確保、育成と、技術、技能の継承及び若年者の就業の推進を目的としております。
 このため、平成十八年度には、技術専門校を各地域の拠点といたしまして、中小企業振興センターやハローワーク、区市町村等関係機関と連携したネットワークを構築いたします。また、技能継承等に関する情報提供や助言を行う窓口を整備し、人材育成のための団塊世代の講師の登録を開始いたします。
 今後、さらに本格的な稼働を目指し、ネットワークを通じて把握した企業の人材ニーズを踏まえ、産業界と提携した職業訓練の実施や民間教育訓練講座の認証、中小企業への人材アドバイザーの派遣などについても検討してまいります。

○川井委員 人材育成ネットワークの構築に当たっては、ノウハウや実績のある民間教育機関をいかに取り込むかが成功のかぎを握ります。民間教育機関の中でも、特に専門学校は、社会のニーズに対応したさまざまなカリキュラムを組んでおり、社会では即戦力として活躍できる人材育成を行っております。
 その結果、専門学校の就職率は、平成十年以降、大学、短大等の就職率が大きく低迷する中にあって、常に八〇%近い実績を上げています。東京の産業を支える人材を育成するには、今後も専門学校を抜きに考えられません。
 こうした即戦力を目指す実践的教育などで人材育成に成果を上げている専門学校を支援していくべきですが、そのご所見をお伺いします。

○山内生活文化局長 専修学校専門課程、いわゆる専門学校は、都民の多様なニーズにこたえ、社会の変化に即した教育を行い、多くの人材を育成するなど、職業人養成の場として大きな役割を果たしております。
 また、大学への編入や大学院への進学が国において制度的に認められるなど、高等教育機関として位置づけられておりまして、公教育における専門学校の重要性は高まっております。
 さらに、東京においては、専門学校みずからが第三者評価制度の導入を進めるなど、信頼性や社会的評価を高める取り組みをみずから行っております。
 東京都では、専門学校に対する新たな助成制度の創設を国に提案するとともに、私立専修学校第三者評価促進事業など、また、私立専修学校教育設備等整備費補助などを実施しておりまして、今後、国との役割分担を踏まえつつ、関係局と連携を図りまして、支援のあり方を鋭意検討してまいります。

○川井委員 私どもは、この専門学校を、東京におけるマンパワーをまさに育てる位置づけとしておりますので、今後ともよろしくお願いします。
 次に、包括外部監査で指摘された若洲ゴルフリンクスの経営についてお伺いをします。
 若洲ゴルフリンクスは、都営唯一のゴルフ場であり、都心に近く身近にプレーできることで、年間五万七千人もの利用がある上、コース水準などグレードアップも進んでいると聞いております。
 大変喜ばしい限りですが、先般公表された包括外部監査では、管理者の収入増大努力の促進についてと題し、年間三百二十九日の営業日数をさらに拡大し、一層の収入増大に取り組むべきという指摘がありました。
 しかしながら、このゴルフ場は、利用頻度が大変高く、潮風やごみ地盤の影響で、ただでさえメンテナンスが難しいと聞いております。休業日三十六日間は、週一回の休日をはるかに超えた営業日であります。コース水準を維持向上させるための時間として必要なのではないでしょうか。これ以上営業日を拡大すれば、コースの水準が下がってしまう懸念があります。外部監査人は、このゴルフ場の特徴を十分踏まえた上での指摘なのか、甚だ疑問であります。
 都は、若洲ゴルフリンクスの経営についてどのように考えているのか、お伺いをいたします。

○津島港湾局長 若洲ゴルフリンクスは、自然回復を図り、多様なレクリエーションを楽しむ場を都民に提供する海上公園の一つの拠点として、平成二年に開設した施設でございます。
 この管理運営に当たりましては、効率的な経営を目指し、収入増を図る努力を行う一方、コース等の水準を維持向上させていくことが極めて重要であると認識しております。品質管理の努力を怠れば、かえって利用者の信頼を失い、経営そのものが立ち行かなくなることは、民間のゴルフ場でも多く見られるところでございます。
 特に、若洲ゴルフリンクスは、ごみ埋立地という立地条件のもとで、地盤沈下による排水不良や潮風の影響に対するきめ細かなメンテナンスを必要とすることから、営業日数や営業時間の拡大は、品質と魅力維持の観点に立って、極めて慎重に判断する必要があると考えております。
 今後の経営に当たりましては、ご指摘の点も踏まえ、専門的知識を持つ指定管理者のノウハウを十分生かしながら、より都民に親しまれるゴルフ場を目指して運営してまいります。

○川井委員 包括外部監査のご努力は評価するものの、すべてを理解しているわけではないのだろう、こう思うわけであります。ゴルフ場が収入増を図るため営業日数をふやしたことにより、コースのメンテが十分にできず、質の低下を来し、逆に客が減って経営難に陥ったコースが幾らでもあると聞いております。
 私は、若洲ゴルフリンクスは、できれば外国人が来ても誇れる名門コースとして育て上げたいのであります。ぜひ慎重な対応を願っております。
 次に、都民生活の安全・安心対策についてお伺いします。
 地域力の向上についてですが、これまで日本では、治安、介護、子育て、災害の回避など、個人や家庭だけでは解決ができない問題を地域で対応してきました。地域の連帯が社会を支える仕組みは、個人主義の国々にはない、日本が誇れる社会システムでもあったはずです。
 しかし、地域への帰属意識の低下、近隣の人間関係の希薄化が地域の力を弱め、治安や防災など身近な問題にさまざまな不安を生じさせています。
 また、地域と連携した都の多くの取り組みも、施策の基礎となる地域自体が弱体化してしまっては、施策効果の低下が懸念されます。平成十八年度重点事業では、地域力の向上に向けた取り組みを展開しますが、時宜にかなったものと考えます。
 そこで、地域力の向上について、都の基本的な考え方をお伺いします。

○山口知事本局長 防犯、防災、教育、高齢化など、地域が抱える課題を解決していくためには、それぞれの地域における住民の自主的、主体的な取り組みが不可欠でありますが、そのような取り組みはさまざまな要因で必ずしも十分な現状でありません。
 一方、町会、自治会といった地縁組織の取り組みが活発な地域も存在するとともに、民間企業やNPO、ボランティアなどの積極的な活動も見受けられるようになってきました。さらには、今後、団塊の世代の大量退職により、地域活動に参加する人々が増加すると考えられます。
 このような状況を踏まえ、これからの地域活動の担い手、身近な行政主体である区市町村及び都の三者が相互に連携、補完し合うことにより、地域力の向上を図るべきと考えております。

○川井委員 地域の中核は、何といっても二十三区の町会であり三多摩の自治会であります。都において、情報の提供や行政施策への協力の呼びかけなど、町会などと連携して施策を推進してきました。
 本委員会で、我が党の吉野理事の質問に青少年・治安対策本部長が答弁されたように、子どもたちの安全確保には、町会等の協力が欠かせないという現実があります。
 こうした二十三区の町会、多摩の自治会等への支援は区市町村が主体ですが、都としても連携協力していくべきであると考えます。都内には、東京都町会連合会や多摩の自治会組織がありますが、都は広域自治体として、このような広域的な連合組織との連携協力を積極的に進め、地域力の向上に努めていくべきと考えますが、所見をお伺いします。

○山内生活文化局長 ご指摘のとおり、町会、自治会は地域コミュニティのかなめでございます。行政と住民のパイプ役として重要な役割を果たしていると認識しております。
 東京都としても、広域的な町会、自治会の連合組織との連携協力を進めるため、平成八年度から東京都町会連合会との連絡会をつくりまして、治安対策や防災対策などさまざまなテーマで意見交換を行っております。
 また、連合会がこの三月に、従来の二十三区から、都内全域を対象とした連合組織へと規約を改正いたしまして、多摩地区に対する加入の働きかけを強めていることを踏まえまして、都として連合会の対外的な連絡窓口を設けることを検討しております。
 今後とも、連絡会等を活用しまして、地域の力を生かせるよう連合会との連携を進めてまいります。

○川井委員 特に三多摩の自治会、二十三区の町会連合会、この大連合を組むということになりますと、市区町村の対応ではなくて、やはり東京都が一つの行司役として参加するべきなのかな、こんなふうにも思っておりますので、よろしくお願いをいたします。
 地域力の向上のために、町会、自治会の活性化とNPOやボランティアなど新たな地域の担い手との連携、都政の各分野の施策や区市町村との連携など、さまざまな角度から検討することが必要です。有効な方策を構築するためには、各局横断的に検討を進め、全庁の知恵を結集すべきであると考えます。今後の取り組みについてお伺いをします。

○山口知事本局長 地域力の向上を図るためには、町会、自治会を初め、企業、NPO、ボランティアといった地域の担い手、身近な行政主体である区市町村、広域的な自治体としての都が有機的に連携する仕組みづくりが必要であります。
 こうした仕組みを構築するためには、地域の現状を把握して、区市町村と都の施策の横断的な連携方策を検討する必要があります。このため、本年二月に、全庁的な取り組みとして地域力向上方策検討委員会を設置し、多面的な検討に着手したところであります。

○川井委員 地域力の向上は、これまでにない新しい施策の切り口です。ぜひ実効ある方策の構築、とりわけ地域の中核である二十三区の町会、三多摩の自治会の活性化を強く要望しておきます。
 また、青少年の健全育成のために地域力は重要であります。本定例会で、かつてのニューヨークで実践された割れ窓理論に関する議論がありましたが、この考えをそのまま日本に持ち込むことは危険ではないかと思うのであります。
 ニューヨークには潜在的に人種差別問題があり、犯罪を起こす者は徹底的に取り締まり、罰を与えること以外の解決策がないとの結論が先にあっての選択だったのです。
 落書きを犯罪としてとらえ、徹底的に取り締まるだけでは、青少年の健全育成にはつながらない。落書きをする青少年の悩みは何なのか、苦しみは、彼らの叫び声は。
 NPO団体のコンポジションの寺井代表によれば、彼らには家庭の理由などで美大や芸大に行けなかった連中もいるんです、悪いやつらではないんです、彼らにキャンバスを与え、まちづくりの一翼を担わせたい、こんな思いで、宮下公園や渋谷川の護岸、町の落書きを六カ月以上消して歩きました。書かれる、また消す、また書かれる、また消すを繰り返すうちに、彼らとの人間関係も深まり、そして行政も理解を示し、キャンバスの提供があったのです。彼らが持っているエネルギーの発散とまちづくりの一翼を担わせるために落書きのスペースを開放するという、逆転の発想も大事ではないかと思います。
 実は、知事、ちょっとパネルを見ていただきたいと思って、きょうお持ちしました。(パネルを示す)町にはこういう落書きがあります。そして、その落書きを、これも落書きなんでございますけれども、一生懸命若い青年たちが消して歩いている。一生懸命消して歩き、そしてご理解をいただく中で、キャンバスをいただいて、こういう作品をかいております。
 実は、このビルは、何遍消してもここに落書きがされる。そういうことで、彼らが消してくれる心意気に感じ入って、オーナーがこのビルそのものをキャンバスとしてかいてくれということで、その下がこれでございます。ここにオーナーも写っております。
 なお、実は、このビルの持ち主、ラーメン屋のおやじが彼らの努力に心打たれて、このビルそのものをキャンバスにしてくれ。こういう絵をかきました。今、町から愛され、このラーメン屋は大変はやっている。
 創造性や芸術性を発揮させるキャンバスとして若者に開放したところ、すばらしい作品ができ上がり、その後、落書きがされなくなったと聞いております。
 落書きは犯罪だとしてただ取り締まるのではなく、ストリートアートとして評価し地域で活用することは、治安対策にとどまらず、地域の活性化を招くとともに、青少年の健全育成にも効果的だと思いますが、知事の所見をお伺いいたします。

○石原知事 理事が最初に示された、ただ要するにわけのわからぬ、スプレーを使っている落書き、あれは青少年期の特徴、一種の欲求不満、それに根差した自己表現というんでしょうか、自己主張というんでしょうか、その形になっていないものだと思いますけれども、おっしゃるように、そういう衝動をもうちょっときちっと造形化して、かきたいものをかかせるという試みは、実は私が知る限り、私がよく行きます鍼灸院の通り道に仙寿院というお寺がありまして、ビクターの本社のすぐ前ですけれども、その墓地の下を、トンネルをあけたわけですね。
 そこに落書きが絶えないので、結局住職が決心して、絵心のある人たちに絵をかかせるようになりまして、私から見ると、かなり稚拙ですけれども、まあまあの絵が並んでおりますが、以来、その上にさらに落書きをする者はいなくなったようでありますけれども、都としましても、やっておりますワンダーサイトに主催させまして、そこのワンダーウオールもそうですけれども、既に六本木のトンネルとか駒沢公園に、これは非常に効果が私はあると思います。
 単にそれを一方的に取り締まるんじゃなしに、彼らの持っているそういう表現に対する衝動というものを造形に結んで、表現させるということは、私は非常に効果があると思いますし、自分がかき切れないものを同じ仲間がかくということの共感などもありまして、ご指摘のように、これは地域というものの活性化、それから青少年の健全育成のためにも非常に効果のある方法だと思っております。

○川井委員 実は昨日、私、アニメフェアを見にいってきまして、これもまた大変すばらしい、また、中国や韓国からも作品が出ておりました。
 実は、ただいま知事からご答弁いただきましたが、三年前にギリシャで行われた世界大会に参加した子どもたちがこの中にいるのであります。千客万来、東京で世界じゅうのストリートアーチストやグラフィティライターの集うフェスティバルやジャンボリーを開催してはいかがでしょうか。例えば東京大マラソンに合わせて、よりお祭りムードを盛り上げるには最適と考えております。その検討を強く要望し、この質問を終わらせていただきます。
 次に、振り込め詐欺対策の質問に移ります。
 全体的に改善傾向にある東京の治安状況ですが、振り込め詐欺の被害は依然として多いと聞きます。都内の昨年の被害は約二千九百件、約五十二億に上り、一昨年の件数及び額を大きく上回っております。
 振り込め詐欺の被害が拡大した背景には、ATMの急速な普及により、容易に振り込み、引き出しがしやすい環境ができたこと、プリペイド式携帯電話の普及、不正口座の増加、さらに都民への注意喚起が十分な効果を上げていなかったことなどがあると思います。
 このような深刻な状況を改善するために、都と警視庁は、振り込め詐欺抑止総合対策会議において、金融機関や関係団体と協議してきたとのことですが、どのような取り組みを行っていこうとしているのか、お伺いをします。

○舟本青少年・治安対策本部長 振り込め詐欺抑止総合対策会議におきましては、被害を最小限にとどめるため、金融機関がATM取扱限度額のさらなる引き下げを検討すること、また、預貯金口座や携帯電話の不正利用を防ぐため、金融機関や電気通信事業者が本人確認を徹底すること、また、都では、納税通知書の封筒などに注意喚起文言の記載や都営バスなどにおける車内放送など、新たな注意喚起の方策を実施していくこと、さらに被害者救済について、警視庁、金融機関及び弁護士会の連携体制を構築することなど、振り込め詐欺抑止に向けたさまざまな方策を展開することとしたところでございます。

○川井委員 次に、三宅島復興についてお伺いします。
 去る三月七日、天皇皇后両陛下が帰島後一年を経過した三宅島をご訪問されました。今回のご訪問は、ともすれば関心が薄れがちになっていた三宅島に再びスポットライトを当てていただくことになり、火山ガスの放出が引き続いている状況であっても、安全性のアピールになったと思います。
 復興の柱になるのは観光でありますが、観光客数は避難前に比べていまだ半分以下と聞いております。観光客をふやすために、例えば村が期間を決めて船賃や宿泊代金の値下げに取り組むことも必要であり、行政としてどう支えていくかが重要であります。まず村と都が連携を図り努力していくことを強く要望しておきます。
 多くの観光客が訪れ、宿泊し、地元の農産物や水産物を食し、お土産を買っていく、そうした循環ができれば、島の産業も元気になり、明るさを取り戻し、次代を担うべき若い世代の帰島も進むはずであります。
 こうした取り組みにより、三宅島を訪れる観光客数の増加を図るなど、観光復興についての所見をお伺いします。

○成田産業労働局長 生活基盤や産業基盤が整いつつある中、今後の三宅島の産業活性化には、観光振興が不可欠でございます。しかし、依然として火山ガスの放出が続き、飛行機が就航できない等、今なおさまざまな制約条件があります。
 こうした状況の中でも、釣りやダイビングに加えまして、自然の猛威をありのままに知ってもらうガイドツアーなど、火山島の特徴を生かした観光資源づくりや宿泊施設の魅力向上など、受け入れ態勢の充実に村が主体的に取り組むことが必要でございます。
 これらの村の取り組みを支援するために、都は、観光の専門家を一定期間派遣するとともに、事業者の実施する宿泊施設等の改善に対しまして引き続き都としての金融支援を実施するなど、観光復興に積極的に取り組んでまいります。

○川井委員 次に、三宅島災害被災者の自立に向けた生活再建支援策についてお伺いをいたします。
 三宅島災害は、四年半以上の長期間避難生活を余儀なくされた、過去に例のない災害であり、特に住宅など生活基盤に大きな被害を受けました。このため、都は、時限的措置として、東京都三宅島災害被災者帰島生活再建支援条例を制定し、住宅の新改築等及び住宅附帯設備の購入費などを支給する、独自の支援制度を創設しました。申請実績は二月末現在で八百二十三件で、住宅の再建が思うように進んでいないように推測されます。諸事情から帰島できない村民もいまだ残っており、三宅島の復興はまだまだこれからであると考えております。
 このような状況の中で、今回都が、我が党の要望を受け、支援金条例の有効期限を一年間延長するとしたことを評価いたしておきます。
 そこで、我が党は、国制度及び都制度の災害援護資金の申請期限を、平成十九年三月末まで延長することをあわせて要望していましたが、実現の見通しについてお伺いをいたします。

○平井福祉保健局長 三宅島の復興対策につきまして、国制度の災害援護資金の申請期限についてでございますが、国に重ねて要請を行った結果、ご要望のとおり、平成十九年三月末まで延長することが認められました。
 なお、都制度につきましても、同様に、平成十九年三月末まで延長いたします。

○川井委員 三宅の方々にとっては明るいご答弁をいただきました。ありがとうございます。これらの制度を引き続き活用し、村民の生活再建支援に全力で取り組まれるよう、強く要望をしておきます。
 次に、豊洲新市場建設についてお伺いします。
 中央区や場外市場団体などで構成する築地市場移転に断固反対する会が、先月、反対の旗をおろし、方針を転換しました。
 しかし、築地市場の水産物部仲卸団体がまだ移転について賛成の機関決定をしていないと聞いております。新市場建設を円滑に進めていくには、市場で働く業者が安心して移転できる環境づくりに取り組むことが急務であります。
 そこで、お伺いします。仲卸団体はどのような理由で反対しているのか、また、それに対し都はどう対応しているのか、お伺いします。

○森澤中央卸売市場長 築地市場業界六団体のうち、五団体は移転賛成の機関決定をしておりますが、水産仲卸団体が唯一、現在地再整備を機関決定し、今日に至っております。
 移転に反対する理由は正式には表明されておりませんが、現在、新市場の予定地の土壌汚染について不安を持っていると聞いております。
 しかし、水産仲卸団体はこれまでも新市場建設の検討会や協議会に参加しておりまして、また本年二月には、内部組織である築地市場再開発特別委員会と新市場対策特別委員会を統合し、新たに市場建設検討特別委員会を発足させております。新市場の建設計画の進捗状況や土壌汚染処理につきましては、市場関係団体に対し詳細に説明を行ってきておりまして、今後とも、市場業者の不安を解消できるよう十分な情報提供を行い、理解を求めてまいります。

○川井委員 生鮮食料品を扱う卸売市場にとって、土壌汚染はしっかり対応しなければならない問題だと思います。土壌汚染の処理内容について、具体的にお伺いをしたいと思います。

○森澤中央卸売市場長 新市場予定地の土壌汚染については、東京ガス株式会社が、汚染原因者の責任において、東京都環境確保条例に基づく汚染拡散防止計画書に沿って確実に処理することとなっております。
 具体的には、東京ガスは、環境確保条例に定める汚染土壌処理基準の十倍を超える汚染土壌については、すべて処理基準以下となるよう処理する、また十倍以下の汚染土壌については、条例で定める土壌汚染対策指針に基づき、用地全体を覆土し、飛散を防止することといたしております。
 さらに、生鮮食料品を取り扱う市場用地の安全を一層確実なものとするため、最低でも地盤面から四・五メートルの深さまでは、すべて環境処理基準以下といたします。
 これらの処理結果につきましては、環境大臣の指定する指定機関が調査を行い、都は安全性を確認した後、土地を購入することとなりますので、安全性に問題はないと考えております。

○川井委員 土壌汚染の問題は都民にとっても大きな関心事であります。関係局と連携して、確実に土壌汚染処理が行われるよう、汚染原因者への指導徹底を要望しておきます。
 また、築地市場とともに発展してきた場外市場業者の中にも、移転に不安を抱えている方々がおります。市場の円滑な移転には、これらの方々の理解と協力も不可欠であります。こうした不安を解消できるよう、中央卸売市場には最大限の努力を重ねてもらうこともあわせて、要望としておきます。
 次に、中小企業金融についてお伺いします。
 日銀は、我が国経済がデフレを脱却して成長過程に移りつつあると判断し、量的緩和を解除しました。しかしながら、都内中小企業は依然として厳しい経営環境に置かれているものが少なくありません。行政としてしっかりとした金融支援を行い、中小企業の経営を下支えすることが重要であり、都の制度融資は今までにも増して重要なものになっています。
 そこで、十八年度の制度融資はどのように充実を図るのか、お伺いをいたします。

○成田産業労働局長 平成十八年度の制度融資では、小規模企業など経営基盤が脆弱な中小企業の資金調達の円滑化を図るとともに、より利用しやすいものとすることを基本に、制度改善を行ってまいります。
 このため、小規模企業融資の従業員数要件の緩和を継続するとともに、政策金利による融資対象を大幅に拡大いたします。さらに、基本的要件である同一場所における一年以上の業歴要件を廃止し、個々の状況に応じた柔軟な対応に努めるとともに、個人事業者の連帯保証人を原則不要とするなど、中小企業にとって一層利用しやすい制度としてまいります。
 平成十八年度の融資目標額は、過去最高の一兆七千五百億円を堅持するとともに、利用者ニーズに的確にこたえるこれらの取り組みにより、金融支援を一層充実してまいります。

○川井委員 中小企業を金融面から支える上で、この制度融資とともに、新銀行東京の役割が一層期待されます。
 新銀行東京の開業から間もなく一年になります。この間、大手銀行などが体力を回復したこともあり、一部にはその使命はもう終わったなどという意見もあるようです。しかし、これはまさにのど元過ぎれば熱さを忘れるの例えのとおり、これまで中小企業の皆さんがどれほど貸し渋り、貸しはがしに痛めつけられてきたか、そして、今も資金繰りに苦労されているか、思いをいたさぬ発言といわざるを得ません。
 しかも、刻々変転する金融事情の中で、再び冬の時代が来ないとも限らないのであります。新銀行東京が期待にこたえていくためには、中小企業のニーズをよりきめ細かく酌み取ったサービスの提供が求められていると思います。
 現在の店舗は都内に六つしかなく、中小企業の皆様にとってはいささか不便であることは否めません。新銀行東京の利便性を高めるため、次の店舗開設を早く行うべきと考えますが、今後の見通しについてお伺いをいたします。

○成田産業労働局長 新銀行東京では、開業当初から、平成十八年度末までに十店舗の開設を予定し、現在、六店舗で営業しております。本年五月下旬には、残り四店舗のうちまず二店舗を、中小企業の数や利用者の利便性等を十分に考慮し、アクセスのよい池袋と渋谷に開設することとしております。
 また、残り二店舗の設置場所、開設時期につきましては、営業戦略や既存店舗の状況等を踏まえて決定していく予定であると聞いております。
 なお、ATMにつきましても、昨日からみずほ銀行との相互利用を開始し、利便性の向上が図られております。
 都といたしましては、今後とも、新銀行東京が真に都民、中小企業に役立つ銀行として発展していくよう、株主として働きかけてまいります。

○川井委員 渋谷、新宿など交通の便のいいところに設けていただくと、中小企業の方々も非常に利用しやすくなるんだろう、こう期待しております。
 高度な技術力やすぐれたノウハウを持つ中小企業がその本領を発揮し、発展を遂げていくためには、今こそそれを確固として支える金融施策が不可欠です。新銀行東京が不断の努力を重ねていくことを要望して、次の質問に移ります。
 スポーツ人口の底辺拡大と有望若手選手の発掘についてであります。
 まず、ジュニア育成地域推進事業の取り組みですが、ワールド・ベースボール・クラシック、WBCで、王ジャパンが日本国民に感激、喜び、興奮、そして日本人としての誇りや勇気などを与えました。同様に、東京大マラソン、東京国体やオリンピックなどのビッグスポーツイベントの開催は多くの都民に夢と希望を与えるとともに、スポーツの振興全体に大きく寄与することから、ぜひとも成功させなければなりません。
 今月発表された都教育庁の調査結果にもあるように、近年、東京の児童生徒の体力低下は深刻な状況にあるといえます。東京国体の開催や東京オリンピックの招致は、子どもたちにとって、スポーツへの関心を高めるまたとない機会であります。ジュニア期にある青少年が広くスポーツを楽しむことによって、東京の子どもたちの体力低下に歯どめをかけ、さらに回復させていくきっかけになるものと考えます。
 また、スポーツに真剣に取り組むことにより、フェアプレーの精神や思いやりの心、さらに規律や礼儀など、将来の健全な社会人として基礎を培うといった教育的な効果が期待できると思いますが、所見をお伺いします。

○中村教育長 都教育委員会が都内の公立学校を対象として行いました平成十七年度の体力調査によりますと、全体として、体力は全国平均を下回っております。
 この要因として、社会環境の変化による影響や外遊び、スポーツ機会の減少などが考えられます。このため、都教育委員会は、教員等を対象とした指導者講習会、生徒を対象とした実技指導、スポーツ大会での子ども種目の設定、地域スポーツクラブの育成などを行ってまいりました。
 スポーツは、フェアプレーの精神や他人に対する思いやり、さらには規律、礼儀をはぐくむなど、ご指摘のとおり、青少年の健全育成を図る上でも大きな役割を果たすものと考えております。都教育委員会は、こうしたスポーツの役割を踏まえまして、今後もスポーツの振興に一層努めてまいります。

○川井委員 今後、東京大マラソン、東京国体やオリンピックなど、東京都出身の選手が活躍するためには、これまでの都レベルの強化に加え、今から、地域におけるジュニア選手を発掘、育成することが必要であります。平成十八年度から都が展開するジュニアを対象とした事業の具体的な取り組みについてお伺いをいたします。

○中村教育長 ご指摘のように、東京マラソンや東京国体の開催、オリンピック招致などを見据えますと、これらの大会で東京の青少年が活躍し、都民が夢と希望を抱くことができるよう、今から地域と都が一体となって、スポーツの普及や選手強化等に取り組む必要がございます。
 このため、都教育委員会は、地域スポーツクラブによります指導者の派遣や合同練習の実施など、学校運動部活動への支援を行うとともに、平成十八年度より、新たに、東京都体育協会や各区市町村、地区体育協会と連携いたしまして、ジュニア層に重点を置いたスポーツ教室やスポーツ大会の開催、強化練習等を行ってまいります。

○川井委員 次に、都立の中高一貫教育校についてお伺いします。
 都立中高一貫教育校は、昨年開校した白鴎高校附属中学校に続き、ことしの四月に、小石川、両国、桜修館の三校が開校します。昨年度は、白鴎高校附属中学校が都立初ということで、高い人気でしたが、ことしの適性検査も、四校で五百八十人の募集に対し五千六百人の応募があり、約十倍という高い倍率だったと聞いています。この高い倍率は、都民の都立中高一貫教育校への期待のあらわれであります。教育方針を都民が高く評価している結果だと考えます。
 中高一貫教育校が多くの都民に受け入れられた理由を都教委はどのようにとらえているか、お伺いをいたします。

○中村教育長 都立中高一貫教育校四校の学校説明会には、今年度、延べ三万一千人の児童、保護者が参加いたしまして、適性検査も高倍率であったことなど、都立中高一貫教育校がスタートしたばかりにもかかわらず、都民の関心は非常に高いと認識しております。
 都立中高一貫教育校におきましては、六年間の一貫教育の中で、教養教育を行い、社会のさまざまな分野におきましてリーダーとなり得る人材を育成することとしておりまして、この点が多くの都民に受け入れられた理由ではないかというふうに考えております。
 今後とも、さらに教育内容の充実に努め、都民の期待にこたえてまいります。

○川井委員 都民に期待されている都立中高一貫教育校ですが、今回の入学者決定に際しては、会場の狭さから、書類審査で不合格となり、適性検査さえ受検できない小学生が大勢出たと聞いております。これだけの都民の支持を受けているのですから、広く受検の機会を確保していくべきではないでしょうか。
 今年度の適性検査は母体校の都立高校が会場でしたが、今後は、一人でも多くの小学生が適性検査を受けられるよう、都教委が検査会場を確保するなど、各学校を支援すべきと考えますが、いかがでしょうか。

○中村教育長 今年度は、都立の中高一貫教育校四校で募集を行いました。各校において想定を超える応募があったため、書類審査によりまして、約一千百人が適性検査を受けることができませんでした。
 今後は、校長の意向を踏まえまして、希望する小学生が一人でも多く適性検査を受けられるよう、検査会場の確保などに努めてまいります。

○川井委員 ぜひ子どもの夢を少しでもかなえる方向での努力をお願いします。
 次に、首都大学東京の現状と産業技術大学院大学の展開についてお伺いします。
 都は、日本の教育再建の集大成として、教育のターミナルである大学をつくり変えるという知事の強い姿勢のもとに、都立四大学を再編し、昨年四月に首都大学東京を開学しました。これからの大学は、特色を生かした教育を行い、学生一人一人の個性と才能を伸ばし、社会が求める有能な人材を育成することが強く求められております。将来、首都大学東京を卒業した学生が、次代の東京、ひいては世界をリードする人材となるよう、大いに期待しております。
 そこで、首都大学東京ならではの教育にどう取り組んでいるのか、お伺いをいたします。

○高橋総務局長 首都大学東京は、実社会に根差した実践的教育を重視し、新たな取り組みといたしまして、新入生に対し、現場体験型インターンシップをいち早く導入いたしました。これは都庁各局及び関係団体の協力を得まして、大都市東京のさまざまな課題を現場で体験学習することにより、問題意識や勤労観を養うものでございまして、学生からは、有意義な体験として評価を得ております。
 来年度、さらに区市や民間企業の協力もいただきまして、学生の派遣規模を約三倍の千二百人以上に拡大し、東京全体をキャンパスとする特色ある教育を展開してまいります。
 また、人間教育にも重点を置き、共同生活を通じて人間形成を促すための学生寮を創設いたしました。
 このような首都大学東京の特色を生かした教育により、次代の東京を築く有用な人材を養成してまいります。

○川井委員 大学に在籍する間に一定の時期、仲間と寝食をともにしながら人生論などを語り、刺激し合いながら人間形成を行うことは、非常に大切なことだと思います。
 先日、私に、担当者の方々が見えられました。そこで私は、デカンショ節って、おい知っているか、こう聞きました。デカンショ、デカンショで半年暮らし、その語源はといいましたら、来る人、来る人、わからないと、こういいました。まさにデカルト、カント、ショーペンハウエル、この友と語り、涙する。こういう寮生活の中で、次代を担う人間としての責任、そういうものを身につけていったんだろう。かつての学生は、あるいは知事もそうだったのかもしれません。私は、そういうところにぜひ力点を置いてほしい、こう思うわけであります。
 現在、首都大学東京の寮は、一部の希望する学生が対象となっているようですが、今後、より多くの学生が寮生活を経験できるように、工夫と検討を要望しておきますが、知事のご感想をお聞かせください。

○石原知事 私も実は大学の一年生から三年生まで、大学の寮におりました。神奈川県に住んでおりましたので、とても国立まで通い切れませんので寮に入りましたが、あのころ、最後の蛮カラが残っておりました。同時に、消費時代の幕あけでもありまして、私は寮で蛮カラ、弟の方は慶応ボーイで銀座で遊んでおりましたが、そういう端境期でありましたけれども、私にとっては非常にかえがたい、いい体験だったと思います。
 実は、この首都大学東京発足に当たりまして、学長にお願いした西澤先生とも話しましたが、できたら一年生、二年生の間は、とにかく全学寮生活というふうにできないだろうかと提案もし、西澤先生も、それは非常にいい案だといわれましたが、やっぱりこのごろの学生の気質というものは大分違いまして、それでは生徒が集まらないよなんていうような危惧もございました。集まらなきゃ集まらないで、物好きな人間がとにかく集まればいいじゃないかと私はいったんですけれども、結局まだ一部の有志が寮にいるということであります。
 その限りでは、今の寮の実態を聞きますと、大分昔の旧制高校のようなのとは違いまして、ある意味での経済性というんでしょうか、ある意味のまた便宜性というんでしょうか、そういうことだけがメリットになっているようですけれども、ただ懐旧趣味、回顧趣味、ノスタルジーをいうわけじゃありませんけれども、やはり私たち、これからこの日本の社会をいい意味で変質させていくためにも、日本人がつくり直させていかなくちゃいけない、またその一つの大きなよすがに、青年時代、青少年時代を寮で過ごすというのは有効な手だてだと思っております。
 今後の寮の拡大については、設備や現在の学生のかたぎなどを勘案しながら、できるだけ積極的に検討していきたいと思っております。

○川井委員 ありがとうございます。
 実は私は、当初、文章を書いたとき、全員が寮に入るように、こう書いたんですけれども、余りにもそれでは困るというお話もあったもんですから、できるだけ多くの学生と、こう書かせていただきました。
 さて、文部科学省によると、来年には大学全入時代が到来するとのことです。学生にとって魅力のない大学は淘汰され、生き残ることはできません。また、時代の変化とともに、社会が求める人材や教育研究も変化していくことから、既存の学問体系の見直しも重要になります。
 そこで、首都大学東京では、今後、時代の要請にこたえ、社会や学生ニーズを反映した大学づくりをどのように考えているのか、お伺いいたします。

○高橋総務局長 首都大学東京は、象牙の塔に陥ることのないよう、常に社会や時代の要請に目を向けた大学づくりに取り組んでおります。
 その取り組みの一つといたしまして、本年四月、東京の多様な産業を支える人材の育成のため、技術とデザインの能力をあわせ持ち、製品の付加価値を高めるなど、創造的活動に従事する専門家の養成を目指しまして、インダストリアルアートコースを開設いたします。
 本コースは、かつてドイツで芸術やデザインなど多方面に影響を与えましたバウハウスの理念も取り入れた教育を目指しておりまして、受験生の関心も高く、入試の志願倍率は十一倍を超えております。
 今後とも、社会の要請や学生ニーズを迅速に反映することのできる大学づくりに努めてまいります。

○川井委員 本年四月に開学する産業技術大学院大学は、いわゆる専門職大学院として、産業界から要望の強い、IT分野における高度専門技術者の養成が目的と聞いております。
 そこで、同大学では、産業界と連携して、そのニーズに対応した教育をどのように展開しようとしているのか、お伺いします。

○高橋総務局長 産業技術大学院大学は、企業などで卓越した業務遂行能力を発揮する高度専門技術者や、IT分野で起業家を目指す人材の育成を目的に開設をいたします。
 本大学院では、産業界からの意見を教育に反映する仕組みをつくりますとともに、IT企業の第一線でシステム開発や設計などに責任ある立場で活躍する実務家を教授に迎え、最先端の実践的な教育を展開いたします。
 さらに、産業界と連携を密にしまして、技術開発や製品開発を共同して進めるなど、東京の産業の活性化に寄与してまいります。

○川井委員 両大学とも、これまでの大学ではなし得なかった斬新な教育を実践し、世界からも評価される大学として、都民のためにかけがえのない大学を目指していただきたいと思います。
 次に、都市再生、都市機能の拡充についてお伺いします。
 本定例会は、オリンピック招致議員連盟の設立、本会議での招致決議の議決、本会議や予算特別委員会での議論など、オリンピック招致推進が重要な論点となりました。これまでの審議で、オリンピックを開催する意義や評価を得るための会場の配置などについては、議論が深まったと感じています。
 そこで、まず、オリンピック招致を契機とした東京の将来像についてお伺いします。
 知事が、オリンピックは都市の姿を一変させるというように、オリンピックは都市再生の最大のチャンスであります。私は、今度のオリンピックは、日本における四回目の都市再生のチャンスととらえています。一度目は関東大震災、二度目は第二次世界大戦後の復興、三度目は一九六四年の東京オリンピックであります。今回招致を目指すオリンピックも、前回のオリンピック同様、東京再生の起爆剤にするとともに、交通渋滞、景観悪化、そして環境問題などの都市問題を打破する契機とすべきであります。
 ロンドンが招致に成功した一つの要因として、ロンドン全体の長期計画が進行している中、オリンピック関連施設の整備を都市再生に積極的に活用した点などが大きなポイントになったことは明らかであります。
 そこで、オリンピック招致に向け、都として速やかに、東京の将来像ともいうべき二〇一六年の東京の姿を提示すべきと考えますが、知事のご所見をお伺いします。

○石原知事 十年先というと、遠いようで、また近い未来、将来でありますけれども、一部の政党は勘違いしているようでありますが、もともと政府に、文明工学的に、大都市、特にこの首都というものをどう認識、とらえるかという正確な把握がなかったために、都市にとって致命的なインフラであります環状線が、恥ずかしいことに棚上げになって凍結されたまま数十年過ぎたわけであります。
 これは扇さんが国交大臣しているときに引き出しまして、凍結解除をしてもらったわけでありますが、こういったものが、やはりオリンピックの招致が決まりましたら、一層アクセレートされて確かなものになっていくと思いますし、また国は、これを間に合わせてやらざるを得ない。そういう点でも、非常に政治的な効用もあると思います。
 きのう、実は「ゆりかもめ」の豊洲までの延伸の記念行事がありまして、出席しました。ついでに、くまなくあのあたりを眺めてまいりましたが、一つ、今まさに工事中でありますけれども、埋め立ても含めて、推進議員連盟の議員の方々に、バスを仕立てて、ぜひ同じところを見ていただきたいんですが、これは、ここに確定したわけじゃありませんけれども、ここに今、選手村、一応ここにメーンスタジアムという一つの候補地がございますが、今までああいう条件に恵まれた、例えば、メーンスタジアムなどは三方を海に囲まれている中にあるわけでして、こういう条件で行われたオリンピックはないと思います。
 そういう点で、そういうものも含めまして、十年後に東京が非常にすばらしい形で変貌する。しかも、唯一の欠点であります渋滞が除去されましたら、東京は、これは本当に非常に機能的な、今ある非常に集中、集積というものが存分に生かされた、非常に合理的で効率的な大都市になると思っております。

○川井委員 知事の説明が上手なのか、私の頭の中に絵が描かれるようで、ありがとうございます。ぜひとも早期に東京の将来像を明らかにしていただき、都議会と一体となった招致活動を盛り上げていくべきです。
 そこで、二〇一六年の東京の姿を、今後、招致活動にどのように生かしていく考えなのか、所見をお伺いします。

○山口知事本局長 お話のありましたように、ロンドンの例によりましても、IOCによるオリンピックの開催都市の選考に当たりましては、オリンピック大会の構想が都市の長期的な戦略に即していることが重要であります。
 このため、オリンピックの舞台となる二〇一六年の東京の都市像を明らかにさせることによりまして、招致機運を一層盛り上げるとともに、今後IOCに提出する大会開催計画であります立候補ファイルなどにも反映させ、招致を確実なものとしてまいります。

○川井委員 次に、道路と鉄道計画についてお伺いします。
 交通ネットワークは、都市の動脈として重要な役割を担っており、中でも道路と鉄道は根幹的な都市基盤施設であります。
 一方、東京の道路は、環状道路を初め、いまだ都市計画道路の半分程度しか整備されていません。また、鉄道は、中央線の朝のラッシュ時に見られるように、十分なサービス水準が確保されているとはいいがたい状況にあります。
 過去、道路計画は、平成三年に区部、平成八年に多摩地域について、おおむね十カ年の第二次事業化計画が策定されました。現在、二〇一五年をめどとした第三次事業化計画が区部では策定され、多摩では策定中となっております。
 また、鉄道についても、二〇一五年をめどとした鉄道計画が、平成十二年の運輸政策審議会答申第十八号で出されています。
 過去、これらの計画に位置づけられた道路、鉄道には、事業の必要性は高いものの、長引く景気低迷の影響もあり、事業化できずに残されている路線も多くあります。新たなインフラ整備も必要ですが、これまでの事業化できなかった道路、鉄道路線をしっかりとフォローした上で検討されるべきであります。
 根幹的な都市基盤である道路、鉄道計画を積極的に推進し、東京の国際競争力強化に一層努めていくことが重要であります。
 道路計画では、区部及び多摩地域の第二次事業化計画終了までの計画路線、また鉄道計画では、運輸政策審議会答申第十八号での都内答申路線について、これまでの進捗状況と今後の推進に向けた決意をお伺いします。

○梶山都市整備局長 都市計画道路につきましては、第二次事業化計画が区部では平成十五年度に終了し、その時点での整備率は約五八%でございます。多摩地域では平成十七年度に終了いたしますが、整備率は五二%となる見込みでございます。
 また、運輸政策審議会答申第十八号に位置づけられました都内の鉄道路線につきましては、平成二十七年までに開業することが適当とされた十六路線のうち、つくばエクスプレスなど十五路線は、既に開業もしくは事業化の段階にあります。
 平成二十七年までに整備着手することが適当、及び今後整備について検討すべきとされた十七路線は、事業化に至っておりません。
 道路及び鉄道は、人や物の流れを支える根幹的な都市基盤であり、こうした基盤の強化は、東京の国際競争力をさらに高めていく上で重要でございます。
 今後、将来の輸送需要の動向等を見定めるとともに、国費の一層の確保を国に働きかけるなど、財源確保に努めながら、都市基盤整備の効率的な促進に努めてまいります。

○川井委員 ぜひ国や鉄道事業者にも強く働きかけていただくことをお願い申し上げます。
 次に、都有地の有効活用についてお伺いします。
 少子高齢化、人口減少が急速に進行する中で、都が保有する施設についても、今後、統廃合が進み、大規模未利用の都有地がふえるものと考えられます。都は、オリンピック開催に向けた計画的な基盤整備とあわせて、都有地の計画的な活用、処分を行う必要があると考えます。
 また、道路の事業残地など狭小不整形地は、思い切った処分を実施していくことが重要だと考えますが、見解をお伺いします。

○谷川財務局長 都有地の有効活用につきましては、局横断的な視点から、施設の効率的な統廃合、他の施策への転用などを推進しております。
 今後は、新たな行政需要、都民ニーズの変化に着実に対応するため、事業用借地権契約など、活用手法の多様化や施策間の連携を進めるとともに、オリンピックなど東京の将来を展望する取り組みに対しましても、計画的な都有地の有効活用を図ってまいります。
 また、事業残地等の狭小不整形地につきましては、五月全線開通の環状八号線などにおきまして、隣接地主などへの売却を進めるとともに、隅切り、歩道拡幅など、有効活用に取り組んでおります。
 今後も、立地条件、規模などを精査し、速やかに処分を進めるなど、的確な財産運用を図ってまいります。

○川井委員 次に、東京外かく環状道路の整備推進についてお伺いします。
 外環は、本委員会の議論にもあったように、オリンピック招致にかかわらず、首都圏にとって不可欠な道路です。さらに、オリンピックの国内招致が決まれば、外環の重要性が一層増すことはいうまでもありません。
 しかしながら、都民ひいては国家にとって必要性を理解しない政党が見受けられます。これまで都は、外環の事業化に向け三百回を超える地元調整などを進めてきました。また、都市計画やアセス手続に先立ち、さまざまな情報を提供するなど、前例にとらわれることなく丁寧な取り組みに対し、我が党は高く評価するものであります。
 オリンピック招致を実現し成功させるためにも、一日も早く外環の事業に着手するよう国に対して働きかける、あるいは必要があると考えますが、都の見解をお伺いします。

○梶山都市整備局長 外環は、首都圏の交通の円滑化、環境改善、そして都市再生に必要でありまして、オリンピック招致にかかわりなく不可欠な路線でございます。
 これまで都は、外環の早期整備に向け、大深度地下の活用などを示した計画図や環境への影響について説明し、幅広く都民の意見を聞きながら計画の具体化を図ってまいりました。
 理事ご指摘のとおり、外環は国家にとって必要な路線であり、オリンピックの国内招致が東京に決まれば、国家的プロジェクトであるがゆえに、国においても当然、外環の整備を加速するものと考えられますし、都としても、整備の促進に向け、国に強く働きかけてまいります。
 今後とも、一日も早い事業化を目指し、全力で取り組んでまいります。

○川井委員 次に、外環アクセス道路の整備状況と今後の取り組みについてお伺いします。
 昨年九月、国と都は、東八道路や目白通りなど三カ所にインターチェンジを設置するという、外環に関する考え方を公表しました。しかし、そのアクセス道路となる放射第五号線及び放射第七号線では、一部が未整備であります。外環の機能を十分に発揮させ、周辺の道路交通の円滑化を図るために、外環の整備に合わせ、インターチェンジへのアクセス道路の整備が欠かせません。両路線とも、区部、多摩地域を結ぶ骨格幹線道路であり、環状第八号線や調布保谷線と道路ネットワークを形成する重要な路線であります。
 そこで、放射第五号線と放射第七号線の現在の取り組み状況と今後の見通しについて、お伺いいたします。

○岩永建設局長 放射第五号線及び放射第七号線は、区部と多摩地域の連携強化を図るとともに、外環のアクセス道路としても重要な骨格幹線道路でございます。
 そのうち放射第五号線は、杉並区久我山から三鷹市境までの一・三キロが未整備でございます。本区間につきましては、昨年十二月に事業認可を得まして、一部、用地を取得いたしました。平成十八年度はさらに用地取得を進め、二十四年度の開通を目指してまいります。
 また、放射第七号線は、練馬区内の北園交差点から西東京市境までの二キロが未整備でございます。本区間につきましては、現在、用地測量を実施しておりまして、平成十八年度には事業認可を得て、用地取得に着手してまいります。
 今後とも、地域住民の理解と協力を得ながら、外環の整備も見据え、着実に事業を進めてまいります。

○川井委員 次に、区市道における電線類地中化事業の推進についてお伺いします。
 二年前の本委員会で、私の質問に対して知事は、アメリカの俳優ロバート・ミッチャムやドイツの元首相ブラントの言葉をかりながら、面的な広がりを配慮して電線類地中化を進めなければ、魅力ある東京にはほど遠いと思うと答弁されました。
 面的な整備を推進するには、幹線道路だけではなく、二十三区内の公道の約九割を占める区道の地中化を推進しなければなりません。区市道の多くは歩道がなく、現在都道で進めている、トランスなどの地上機器を歩道に設置する地中化方式では事業化が困難であり、区市道に適した技術の開発が必要であります。
 また、民地内に地上機器を設置するため、例えば固定資産税の減免や建ぺい率の緩和など優遇措置を検討すべきであり、建設局がリーダーシップを発揮し、横断的な調整を行い、国などに働きかける必要があると考えます。
 そこで、区市道における電線類地中化事業の推進について所見をお伺いします。

○岩永建設局長 電線類の地中化事業は、防災機能の強化や、良好な都市景観の創出などを図る上で大変重要でございます。
 お話の区市道の地中化を進めるに当たりましては、電線管理者及び道路管理者の負担が大きいこと、区市の経験やノウハウの蓄積が少ないこと、狭い道路では技術的に地中化が困難なことなどの課題がございます。
 このため、都として支援制度の創設を国へ要望してまいりました。その結果、電線等設置費用の補助制度及び再開発事業者等の民間活力を導入する補助制度が創設されまして、電線管理者と区市の負担軽減につながる道が開かれました。
 また、都は区市に対して、東京都道路整備保全公社と連携し、技術支援を行っていくとともに、狭い道路における地中化技術の開発に取り組んでまいりました。
 今後とも、区市が行う地中化事業を積極的に支援してまいります。

○川井委員 東京都としての努力が、最大限国に対して働きかける、そういうことによって、今回初めて事業者に対する補助も認められたと、こう聞いております。今後ともご努力いただきますことをお願い申し上げておきます。
 次に、集中豪雨対策についてお伺いします。
 昨年九月の大規模な水害では、中野、杉並両区を中心に、五千棟を超える浸水被害が発生しました。一時間当たり最大百一一二ミリ、総雨量が二六四ミリと、一〇〇ミリ前後の雨が二時間以上も集中的に降ったことになります。
 近年、都内では、局所的な集中豪雨が頻発しています。ヒートアイランド現象の影響もあるようですが、過去十二年間で一〇〇ミリを超える雨が七回も観測され、昨年だけでも、中野、杉並両区などでは二回も観測されています。
 都では、現在、五〇ミリ対策を進めていますが、これだけ一〇〇ミリを超える雨が降っている以上、今後、こうした雨が降ることを想定して、具体的な対応を検討していく必要があると考えます。都も、十八年度に、重点事業として豪雨対策の推進を図るとしています。
 そこで、都としてどのように対応していくのか、基本的な考え方をお伺いいたします。

○梶山都市整備局長 近年、都内では、時間五〇ミリを超える集中豪雨が一部地域で頻発しておりまして、地域的な被害の状況や降雨の特性などを踏まえ、河川、下水道の整備や流域対策などの総合的な治水対策を推進することが必要であると認識しております。
 このため、平成十八年度は、集中豪雨の頻発地域や浸水被害が多い流域を選定し、治水施設や雨水流出抑制施設の整備及び建築物の地下利用の適切な誘導など、ハード、ソフト両面から重点的に取り組むための方針を策定いたします。
 これらの取り組みにより、浸水被害を軽減し、都民が安全に安心して暮らせる東京を実現してまいります。

○川井委員 水害に対する確実な備えという点では、やはり河川改修の促進が効果的です。昨年九月の水害でも、五〇ミリ改修の完了区間では被害が軽減されておりました。未改修区間の早期解消が急務であることを示されました。
 昨年九月の中野、杉並両区の大規模水害に対して、十一月には、都は国から河川激甚災害対策特別緊急事業の採択を受けました。このいわゆる激特事業により、妙正寺川、善福寺川の河川改修は急ピッチに進むことになりますが、妙正寺川の対象区間は四キロメートルもあり、しかも両側は家屋が連なる住宅地であります。加えて、事業期間は二十一年度までの五年間と聞いております。あと四年間しか残されていません。工法の検討などさまざまな配慮が求められています。
 このような厳しい条件のもと、短期間で大きな成果を得るため、激特事業にどのように取り組んでいくのか、見解をお伺いします。

○岩永建設局長 激特事業は、甚大な被害があった河川について緊急に整備を行い、治水安全度を向上させるものでございます。
 都は、昨年十一月の事業採択後、妙正寺川の北原橋付近の護岸工事に着手し、また善福寺川におきましても、測量や護岸の設計などを進めております。両河川とも、川沿いに家屋が連なり、工事用の搬入路が限られるなど多くの制約条件があり、現場の状況を十分考慮して整備を進める必要がございます。
 このため、地元区を含めた検討会におきまして、効率的な施工方法や施工手順などについて早急に調整を行い、本年秋には、妙正寺川の新井橋から新橋までの区間で工事に着手いたします。
 引き続き、地元の理解と協力を得ながら、工事を着実に進め、事業期間内の完成に向け万全を期してまいります。

○川井委員 ぜひ万全な努力を、強く強く要望させていただきます。
 ぜひ、果敢かつ着実な取り組みを期待しますが、河川の整備率はいまだ六〇%です。未改修区間をすべて解消するには、多大な時間と費用を要し、その間に再び昨年のような豪雨がたびたび発生することもあり得ます。
 このため、河川の上流部での緊急的な対策として、洪水を一時的に貯留する調節池を新たに検討することが必要であります。その際には、地震など災害時の避難広場や緑の回復、水辺に親しめる親水性など、多くの機能を有する合理的な施設にすべきです。現在、河川は三面コンクリートですが、都市の中に川本来の姿を再現し、東京に水辺や川辺を取り戻すために、一つの流域沿いに三カ所程度の一定規模を持つ親水拠点を整備すべきと考えます。
 このような観点から、親水機能をあわせ持った洪水調節池の整備について新たに検討すべきと考えますが、所見をお伺いします。

○岩永建設局長 都は、水害の早期軽減を図るため、下流から順次、川幅を広げる護岸改修を行うとともに、分水路や調節池の設置を進めてまいりました。
 護岸改修には長期間を要することや、最近の水害の発生状況を考えますと、上流の未改修部で新たに調節池の設置も検討する必要がございます。しかしながら、その用地の確保には多くの時間と費用を要し、早期に治水機能の向上を図るには、川沿いの公共用地を活用することが効果的であると考えております。
 また、その際、調節池の検討に当たりましては、水辺に親しめる潤いのある空間とすることも、可能な限り考慮してまいります。

○川井委員 公共用地を活用する上では、都営住宅用地も重要であります。都営住宅の建てかえに際しては、敷地の高度利用を図る中で用地を生み出し、治水対策に貢献することが重要であると考えます。
 妙正寺川の未改修区間に沿って都営鷺の宮団地がありますが、現在、建てかえ計画を検討していると聞いております。この団地を一つのモデルケースとして、親水機能を有する調節池の整備とあわせた建てかえを進めるべきだと考えますが、これまでの取り組み状況についてお伺いをいたします。

○梶山都市整備局長 都営鷺の宮団地の建てかえに当たりましては、敷地の高度利用により用地を創出し、地域の防災性の向上など、まちづくりに活用していく方向で検討を行っております。
 この団地の建てかえを推進するためには、都市計画の一団地の住宅施設に指定されていることから、都市計画の見直しが必要でございまして、現在、地元区と調整を行っているところでございます。
 今後、ご提案の親水機能を有する調節池の整備も含め、関係機関と調整を図り、建てかえ事業の中で幅広く検討してまいります。

○川井委員 地元区も大いに協力をしたいと、こういっておりますので、ぜひよろしくお願いします。
 都市の水害には、河川からの溢水や、下水道の能力を超えて水があふれるものがあります。
 そこで、特に甚大な被害を受けた中野、杉並両区において、下水道局ではどのような都市水害対策を実施しているのか、改めてお伺いをいたします。

○前田下水道局長 中野区や杉並区などの浸水被害を軽減するために、和田弥生幹線及び第二妙正寺川幹線の下水道幹線整備を進めております。
 これらの幹線は、効果を早期に発現させるため、既に和田弥生幹線で約五万五千立方メートル、第二妙正寺川幹線で約九千立方メートルの一部貯留を開始しております。現在、完成を目指し、鋭意、整備を推進しているところでございます。
 特に和田弥生幹線におきましては、本年の雨季前までに、杉並区堀ノ内二丁目、三丁目地区などから雨水の取り込みが可能となりますように、事業の前倒しをし、整備を進めているところでございます。
 今後とも、全力を挙げて浸水対策事業を推進してまいります。

○川井委員 少し読み方が速くなろうかと思います、お許しをいただきたいと思います。
 次に、民間活用型都民住宅についてお伺いします。
 都民住宅は、バブル期に中堅所得者の賃貸住宅を確保するために、民間オーナーの協力を得て供給されたものであります。
 我が党は、さきの第四回定例会の代表質問で、オーナーは空き家解消のために血のにじむ思いで家賃を引き下げているが、このままでは、いずれ経営が行き詰まることを指摘しました。その際、オーナーの経営安定策を引き続き検討するとの答弁がありました。
 そこで、都として、こうしたオーナーの状況をどのように認識しているのか、また、その後の検討状況をお伺いいたします。

○梶山都市整備局長 都民住宅は、バブル期の地価、家賃の高騰などによる厳しい住宅事情に対処するために創設された制度でございまして、都民の居住の安定にこれまで貢献してまいりました。しかし、現在では、社会経済状況の変化の中で、一部事業者は、空き家の発生や家賃の引き下げにより、厳しい経営状況にあると認識しております。
 このため、都では、昨年十月、空き家の解消に向けて、長期間あいている場合には入居資格を緩和できる制度を導入し、これを活用した住宅の三分の一で空き家が解消されました。
 また、春先の転居が多い時期に合わせ、電車内広告、新聞折り込み、不動産業者の活用など、空き家募集のPR強化に取り組んでいるところでございます。
 さらに、オーナーの借入金の返済に対する柔軟な対応については、国や住宅金融公庫に対し、引き続き要望してまいります。

○川井委員 都は、国に対し、引き続き公庫融資の償還期間の延長を強く要望するとともに、都みずからも、新たな融資制度の創設をも視野に入れた検討を行うよう、強く要望します。
 また、オーナーの中には、住宅の経営にふなれな方が多く、経営が苦しくてもだれにも相談できない状況が続いています。
 そこで、今後の都において、経営相談の対応を充実すべきと考えますが、所見をお伺いします。

○梶山都市整備局長 事業者からの相談に対しましては、これまでも、都民住宅制度の運用について説明を行うことや、事業者の個別事情を踏まえた地位の承継や空き家対策などの相談に対応してまいりました。
 今後とも、引き続き適切な情報提供に努めるとともに、経営に関する相談への対応についても検討してまいります。

○川井委員 次に、景観、自然の確保についてお伺いをします。
 都市の緑には、環境保全や景観形成の機能など、さまざまな機能があります。この多様な機能を持つ緑をはぐくむのに欠かせないものが土であります。しかも、現在我々は、緑を伐採し、土にアスファルトでふたをして都市を形成してきた結果、近年、都市型水害やヒートアイランド現象などが深刻化しております。
 この問題を解決するには、都市に土を戻すことであると考えます。市街地ではオープンスペースに限りがあるため、まず、身近な駐車場や歩道に工夫して緑を生み出したらどうかと考えます。私がこれまで、駐車場や歩道で古タイヤなどを活用した芝生舗装を要望してきたのも、緑の確保だけではなく、資源リサイクルや都市型水害の抑制、ヒートアイランド対策にも効果があると考えるからであります。
 そこで、私が提案してきた、緑の確保やヒートアイランド対策等に効果のある芝生舗装について、都の取り組みをお伺いいたします。

○岩永建設局長 都はこれまで、ヒートアイランド現象の緩和などを目的といたしまして、保水性舗装など環境に配慮した舗装に取り組んでおります。
 お話の歩道での芝生舗装につきましては、平成十四年度から土木技術研究所内に模擬歩道を設置し、技術的な検討を重ねておりますが、歩きやすさ、耐久性、コストなど、維持管理面で解決すべき課題もございます。
 今後、模擬歩道での結果を踏まえ、植樹帯の間のスペースなどを活用した試験施工を検討してまいります。
 また、駐車場につきましては、東京都道路整備保全公社が、平成十七年度から中野駐車場の一部の区画で、さまざまなタイプの芝生舗装を試行しております。平成十八年度は、引き続き同駐車場で試行を実施し、検証を行ってまいります。

○川井委員 (パネルを示す)これが、今局長のいわれた土木研究所の歩道芝生舗装の実験であります。興味がありましたら、後ほど見ていただければと思っております。
 都心の一戸建てや屋敷林がなくなると、アスファルト舗装がされ、百円駐車場ができる。東京じゅう至るところにふえ続ける百円パーキングと、狭いところに連なる建て売り住宅。今まで庭に降った雨は、土に浸透し、地下水として蓄えられ、自然蒸発するときに、地球から気化熱を奪っていたのです。その雨量のすべてが一気に下水に流れるのです。
 知事、アスファルトは、夏場、六十度を超すのであります。夏場一月以上も続くようになった都市の熱帯夜にも強く影響しているのがアスファルト舗装であります。芝生や土ですと、日没後二時間もすれば、ひんやりとするのです。
 現在、私が提案している、建設局と土木技術研究所の協力をいただき、都営駐車場において、今お見せしているパネルのような実験をいたしております。一面すべてを芝生舗装にする場合や、タイヤが乗るであろうところを想定して芝生舗装にするなど、実験をしていただいております。
 そこで、例えば、三台以上経営されている駐車場に新しい税を設け、六割以上が土に戻されれば課税しないという方法があるのではないでしょうか。「博士の愛した数式」という映画が今評判でありますが、課税額がだんだん減ってくれば、東京の緑や土がふえるという数式はいかがでしょうか。環境問題にも生かせるのではないかと思います。
 知事、後ほど、答弁のところで感想をお聞かせくださればありがたいと思います。
 都市部に緑を生み出すためには、やはり都市公園として緑を担保していくことが有効であります。都市公園は、ヒートアイランド現象の緩和だけでなく、避難場所や延焼防止など防災上の役割が非常に大きいため、密集した市街地では特に不可欠な都市施設といえます。
 木密地域がある豊島区や中野区では、防災都市づくり推進計画の重点整備地域などに指定されておりますが、大規模な都市公園がなく、区立公園も少ないため、一人当たりの公園保有面積は二十三区の中で下位になっています。木密地域における緑の確保は、行政にとっても喫緊の問題であります。
 知事は先日、施政方針で、従来の公共が主体となった公園の整備に加え、民間活力を活用して緑やオープンスペースを確保する民設公園制度を創設すると表明されました。このような都独自の取り組みは大変意義深く、ぜひ早期に活用していただきたいと考えます。
 しかし、豊島区や中野区では、都の都市計画公園がないため、この制度の活用も望めません。都は、都民一人当たりの公園保有面積の目標を七平米としておりますが、豊島区は〇・七平米、中野区は一・一六平米。このままでは、二十年、三十年変わりようがないわけです。
 公園面積の少ない木密地域において、都が一人当たり最低公園保有面積を定めるなど、目標値を設け、目標値を掲げ、都の緑環境を所管する各局が連携して、その実現を目指すべきであります。
 先月、都が公表した持続可能な東京の実現をめざす新戦略プログラムによると、東京の緑は依然として減少しております。
 この危機的状況を受けとめ、東京の緑をよみがえらせるためには、各局がそれぞれ施策をばらばらに展開するだけでは不十分であります。知事の強力なリーダーシップが必要であります。知事の所見をお伺いいたします。

○石原知事 いうまでもなく、緑は人間にとって非常に重要な、貴重な資産であります。
 都はこれまで、開発規制や緑化指導などによりまして、緑の保全と回復に努めてきましたが、しかし残念ながら、依然として緑は減少を続けております。
 東京の緑をよみがえらせるため、開発時における緑化の推進、都立公園や民間の活力を活用した民設公園の整備など、幅広い緑の施策に積極的に取り組んでいく必要があると思っております。
 聞き及びと思いますけど、これは前のサッカーの川淵キャプテン、今は会長になられたんですが、彼は非常に感謝し評価しておりましたが、東京都は、小学校の校庭の緑化、芝生化に助成の制度を決めました。ただ、これは後のメンテナンスがなかなか大変で、これはやっぱり父兄の方々がその気になってくれませんと難しいし、子どもたちも、自分たちの遊び場でありますから、メンテナンスも含めて、やっぱり協力をすべきだと思っておりますが。
 数年前に、都立大学のころ、視察をしましたときに、研究室で、余り雨が降らなくても育つ植物のDNAの改良による実験をやっておりました。何か樹木をいじっていましたから、樹木なんかいじったってしようがないだろう、芝生の方がもうかるぞ、芝生をやれといったんですが、その後どうなったかわかりませんが、もしそういうものが改良されましたら、比較的--そんなすばらしいウインブルドンのコートのような緑は要らないんで、多少雑草も生えても、でこぼこあっても、やっぱり緑とコンクリートじゃ大分違いますから、そういうものを今後も徹底していきたいと思っております。

○川井委員 まさにそのとおりでございまして、私も、この芝生は、雑草が多少入ったようなやつの方が丈夫だから、それにしなさいというんですけれども、東京都の土木研究所は、もう上質な上質な、本当に弱い芝生をやっていただいております。それでももちますから、ご理解をいただければと思っております。
 次に、少子化の横断的、総合的な対策についてお伺いします。
 先日、厚生労働省が人口動態統計の速報値を発表し、いよいよ日本が人口減少に転じたことが、統計上も明らかになりました。
 都も、子どもたちが健やかに生まれ、育成される社会の形成を目指し、昨年四月に次世代育成支援東京都行動計画を策定しました。この計画に基づいて、都は、就労や住宅など、分野を超えた総合的な取り組みを推進していくとしていますが、実際、どのような取り組みを進めているのか、これまでの各局の取り組みについてお伺いをいたします。
 まず、税制面からですが、少子化対策は、女性の就労支援や子どもを有する世帯への手当の支給など各種施策に加え、税制面でも、たとえそれが補完的な役割でしかないとしても、何らかの措置を講じることによって、それらが相乗して効果が上がっていくものと考えます。
 国も、所得税をもって検討を始めたと聞きます。都も、少子化対策への税制面からの支援について、さらに積極的に検討していくべきと考えますが、所見をお伺いします。

○菅原主税局長 お答え申し上げます。
 少子化対策への税制面からの支援についてでございますが、都はこれまで、児童福祉の増進に資するため、独自に認証保育所への固定資産税等の減免措置を創設いたしました。
 また、企業における育児休業の取得促進を図るため、事業所税等の税制上の措置を講じるよう、国に提案、要求もしております。
 さらに、平成十六年度の都税制調査会答申におきましては、少子化対策を個人所得課税に組み込む場合には、税額控除の創設や納税額のない者への現金給付との適切な組み合わせを含めまして検討すべきであると提言しているところであります。
 個人所得課税におきます少子化対策は、基本的に国が税制改正によって対応すべきでございますが、都としましては、今後とも、都税制調査会を活用するなどいたしまして、総合的な少子化対策の中で、他の施策を支援ないし補完するものとして税制上の措置を引き続き検討してまいります。

○川井委員 子育て支援で欠かせないのは、生活の基盤である住宅への支援であります。特に所得の低い都民への子育て支援では、都営住宅の果たす役割は大であります。都営住宅は、都民共通の貴重な財産であるがゆえに、少子化対策に有効活用し、時代の要請に的確にこたえる必要があります。
 そこで、都はこれまで、子育て支援にどのように都営住宅を活用してきたのか、また、今後どのように活用していくのか、お考えをお聞かせ願います。

○梶山都市整備局長 安心して子どもを産み、育てられる環境を整える上で、生活の基盤である住宅の果たす役割は極めて重要であると認識しております。
 このため、都営住宅では、多子世帯やひとり親世帯に向けた、当せんの確率が高くなる優遇抽せんや特別枠による優先入居を実施するとともに、特に利便性の高い都心及びその周辺区に限定いたしまして、若年ファミリー世帯向け期限つき入居制度を実施してまいりました。
 さらに今年度からは、若年ファミリー世帯向け期限つき入居制度の対象地域を都内全域に拡大するとともに、新たに多子世帯向けに期限つき入居制度を導入いたしました。
 今後とも、多子世帯などが入居しやすい募集方式の工夫や、都営住宅における子育て支援策のPRを充実し、少子化対策への一層の活用に努めてまいります。

○川井委員 ぜひ多子家庭の方々が、すべてとはいいませんが、入れるような工夫と努力を、これから引き続きお願いを申し上げます。
 育児休暇があると出産三倍、これは最近の新聞記事の見出しです。社内制度として育児休業がある職場とない職場では、女性の出産割合に三倍もの差があるというのです。このことは、総合的な少子化対策を推進する上で、企業において、子どもを産み、育てやすい雇用環境を整備することがいかに大きなプラス効果をもたらすか、如実に示しています。
 少子化の危機が叫ばれて久しいが、厳しい経営環境の中で、中小企業では少子化への取り組みが遅々として進んでいません。都内従業者の八割が働く中小企業において、取り組みのおくれを放置すれば、ひいては東京の活力低下にもつながります。このため、都がさまざまな角度から、中小企業における一歩進んだ取り組みを促進し、積極的に支援すべきです。
 そこで、都は、少子化対策として、子どもを産み、育てやすい雇用環境整備に向け、中小企業に対する総合的かつ実効性のある支援策を展開すべきと考えますが、所見をお伺いします。

○成田産業労働局長 大企業に比べまして中小企業では、厳しい経営環境を背景に、育児休業制度の整備など少子化対策への取り組みがおくれております。こうした中、国は、育児休業制度を整備、実施する企業への現行の助成制度に加えまして、百人以下の企業を対象に、新たな助成制度を平成十八年度から開始する予定でございます。
 都は、こうした制度の活用など、育児休業制度の普及を図るため、新たに社会保険労務士等を活用し、企業経営者に働きかけるとともに、運用実態を把握し、実効性の確保に努めてまいります。
 さらに、都といたしましては、子育て支援に熱心な中小企業を広く紹介する制度を創設し、これら企業向けに、金融機関と連携した優遇融資の導入を早急に検討するなど、新たな仕組みをさらに発展させ、雇用環境面からの少子化対策に重点的に取り組んでまいります。

○川井委員 ぜひよろしくお願いします。
 幾ら行政や学者が議論を重ね、行政がさまざまな対策を打ち出したとしても、それだけでは、若い世代の人々が子どもをもうけると思いません。最終的には、結婚や出産に対する個人の価値観、つまりは気持ちの問題であります。
 そもそも、生涯の伴侶を得、その人との間に子どもを持ち、家庭を築きたいという気持ちは、人間に本来備わっているものであります。若い世代に、自分優先、金もうけ優先を是とする風潮が蔓延しているのは、家族の大切さや子育ての喜びを十分に認識していないためであろうと思います。
 子を持つ親として、知事も子育ての喜びを十分実感されているはずです。少子化の流れを変えるには、何よりも若い世代に対して、結婚のすばらしさや家族を持つことで得られる幸福感、子どもを持つ充実感、喜び、満足感、人生における子育ての意義を知ってもらうことが重要だと考えます。
 以前であれば、こうしたことは成長過程において自然と身につくものでありましたが、人間関係が極端に希薄化した今日は、人としてのあり方を十分に学ぶこともないまま成人する人がふえております。家庭や地域社会において、子どもを持つすばらしさを若者に教える者がいない現在、人がいかに生きるべきかを若い世代に伝え、将来の世代をはぐくんでいくことは、私たち責任ある大人の役割であると思います。
 多くの若い世代にこのメッセージを伝えるには、ポスター等が有効だと考えます。電車の中やバスの車中、公衆浴場などにポスター掲示はいかがでしょうか。かつて、知事が就任後すぐに手をつけた首都機能移転反対の運動のときに都民に送った熱く燃えた知事のメッセージを、もう一度都民に送ってはいかがでしょうか。
 また、若者にとっては、テレビコマーシャルなどの活用も有効だと考えます。ぜひ多様な取り組みをご検討いただきたいと思います。知事のご所見をお伺いいたします。

○石原知事 社会の後継者、また、親自身の人生の後継者であります子どもを育てることは、これは本当に人間として大きな喜びであると思います。人は、子どもを持ち、育てることで初めて、その人生をより一層豊かで意義あるものとすることができると思います。
 最近、私、息子と私のかかわりを書いた本を出しました。私は、子どもあっての親という題にしようと思ったんですが、本屋が反対しましてつまらぬ題にしましたので、思ったほど売れませんでしたが、やっぱり子どもを眺めておりますと、親として自分自身というのをもう一回見直したり、自分の欠陥がわかってきたし、それは本当に子どもを持つことで、その人の人生というのは増幅されてくると思います。
 現在の日本では、こうした当たり前の価値観が崩壊しておりまして、これを含めたさまざまな要因により、少子化という現象が起こってしまいました。しかしながら、人生に向き合う姿勢、個人の価値観は、社会が開かれることになればなるほど、つかみどころがなく、非常に多様で、また、勝手なものになりまして、行政の関与にも限界があると思います。
 おっしゃったように、テレビ云々でキャンペーンということですが、果たしてそれにスポンサーがどれだけ金を出してくれるかも、また問題だと思いますけど、東京も株主をやっておりますMXテレビなどでは、一つ、そんなものを積極的に考えてみたいと思っております。

○川井委員 ぜひよろしくお願いします。ここで数十億かけたとしても、将来の納税者を育てる、こういう思いでよろしくお願いします。
 また、子どもと家庭を支援する具体的な施策も不可欠であります。その際、子育ての支援策を実効性のあるものとするには、都民に最も身近な区市町村が、住民のニーズやサービス事業者の状況など、それぞれの地域の実情を踏まえ、適切に対応することが重要です。
 そこで、区市町村の主体的な取り組みを促進するために、都は、来年度から、子育て支援基盤整備包括補助及び子育て推進交付金を創設することとしましたが、これらの新たな財政支援の意義と期待される効果について、改めてお伺いをいたします。

○平井福祉保健局長 子育て支援基盤整備包括補助は、区市町村が行う子育て支援施設などの整備を柔軟かつ広範に財政支援することにより、地域の実情に合わせた取り組みを促進し、子育て環境の整備を図るものでございます。
 また、子育て推進交付金は、対象や使途が細かく規定されている現行の子育て支援に関する都の補助制度を包括化し、市町村の自主的な判断で多様な事業実施が可能となる仕組みに転換していくものでございます。
 新たな制度では、子育て支援の中核を担う区市町村が、地域のニーズを敏感にとらえ、ハード、ソフトの両面で柔軟な取り組みを行うことが可能となり、すべての子育て家庭を対象とした効果的、効率的な施策展開につながるものと考えているところでございます。

○川井委員 新たな仕組みを活用し、区市町村が創意工夫を凝らした施策を展開することを期待しますが、区市町村にとって使いやすい制度となっているかどうかが最も重要なことだと思います。
 そこで、区市町村ではどのような取り組みが可能なのか、できるだけわかりやすい例で説明していただきたいと思います。

○平井福祉保健局長 子育て支援基盤整備包括補助では、例えば、NPOなどによる子育てサークルを実施する場所の整備や、外出中の親子が授乳や休憩に使えるコーナーの公共施設内での設置など、区市町村が独自に行う施設整備を支援することが可能となります。
 子育て推進交付金におきましては、市町村の創意工夫により、例えば、これまで取り組みが進まなかった病後児保育や学童クラブ事業などを重点的に推進したり、地域の高齢者や子育て経験豊富な方の協力による独自の子育て支援策を創出するなど、幅広い施策展開が可能となるものと考えております。

○川井委員 さて、社会全体で、一人でも多くの子どもが生まれ、成長することを切望する一方、現実の社会では虐待や非行などの問題が深刻化しています。せっかくこの世に生をうけたのに、家庭や社会の都合で、子どもたちが不幸な人生を送るようなことがあってはなりません。東京で生まれ、生活する子どもたちが健やかに育つことができるよう、子どもと家庭を一体的、総合的に支援する体制整備が必要です。
 都において、その中核を担うのが仮称子ども家庭総合センターと理解していますが、どのような機能を備え、どのような役割を果たしていくのか、お伺いをいたします。

○平井福祉保健局長 仮称子ども家庭総合センターは、福祉保健、教育、警察の各相談機関を集約化いたしまして、整備するものでございます。
 主な機能といたしましては、子どものあらゆる相談にワンストップで対応する総合相談機能、また、悩みで傷ついた子どもの心のケアや、児童虐待等で分離した家族の再統合などを行う専門支援機能などを予定してございます。
 このように、子どもと家庭を一体的に支援する拠点としての役割のほか、地域の相談体制をバックアップする役割なども担うこととしております。

○川井委員 子どもと家庭の総合的な相談窓口として、警察や教育などの機関も取り入れた象徴的な存在になると理解をいたしました。平成二十一年度の開設に向け、具体的な検討に早急に着手するよう切望いたします。
 次に、高齢者施策について、さきの予算特別委員会の一般質疑において、我が党の田代議員が、高齢者研究・福祉振興財団が行っている介護予防人材養成事業について質問を行いました。
 これに対して知事から、事業実施については都が監督し、ノウハウを望む人が安心して受講できるシステムとしなくてはならないという内容の答弁がありましたが、今後、都としてどのように対応していくのか、お伺いをいたします。

○平井福祉保健局長 東京都高齢者研究・福祉振興財団が実施いたします介護予防人材養成事業は、高齢者が生き生きと自立した生活を続けることができますように、日常生活を支援することを目的としております。都民が幾つになっても健康で自分らしく暮らしていくためには、介護予防を普及、定着することが極めて重要でございまして、財団の事業もその一翼を担うものでございます。
 先日のご質問を受け、直ちに財団の自主事業の実施状況について調査いたしましたが、財団の事業執行につきましては特に指摘すべき問題はないものの、民間事業者に対する指導におきまして、必ずしも徹底されていない面が見られました。
 都は、今後、事業が適正に実施されますように、財団に対し指導監督してまいります。

○川井委員 次に、施行が目の前に迫った障害者自立支援法についてお伺いします。
 我が党は、障害者自立支援法の制定に当たり、利用者負担に関する障害者の方々の不安の声を受け、都に対して、低所得者に対する独自の負担軽減策をとるよう要望してきました。こうした我が党の要望を踏まえて、都がホームヘルプサービスや精神通院医療などに独自の負担軽減策を導入することとしたことは高く評価しています。
 一方で、法律の公布から施行までの準備期間が極めて短いという事情はありますが、障害者の方からは、自分たちの生活はこれからどうなるのかなどとの声が多数寄せられていることも事実であります。
 そこで、都は、これまで障害者やその家族、あるいはサービス提供事業者に対して、新しい制度の考え方や都独自の取り組みについてどのように周知してきたのか、また、今後どのように周知し、理解を求めていこうとしているのか、お伺いをいたします。

○平井福祉保健局長 福祉保健局におきましては、障害者自立支援法施行準備本部を設置いたしまして、極めて準備期間が短く、政省令の公布などもおくれる中で、国からの情報収集に努め、局を挙げて法の円滑な施行に取り組んでまいりました。
 この四月からは利用者負担の見直しが行われるため、広報誌やホームページ、パンフレット等を通じて、新制度や、負担軽減策など都独自の取り組みにつきましても周知に努めるとともに、精神通院医療の対象者約十二万人の方々には案内書等を個別に送付しているところでもございます。また、制度の運営主体である区市町村や事業者等に対しましても、説明会を延べ三十回以上開催してきたところでございます。
 また、十月からは、新たな事業体系に基づくサービスが提供されるとともに、障害児施設が契約制度へ移行するため、引き続き、本人向けのわかりやすいリーフレット等の配布、障害児施設や保護者へのきめ細かな説明会等を行い、障害者が安心して新制度を利用できるよう全力で取り組んでまいります。

○川井委員 次に、公社病院についてお伺いをいたします。
 昨年十二月に発表された都の重点事業の中で、財団法人東京都保健医療公社の所管を福祉保健局から病院経営本部に移管するとの方針が示され、本定例会の厚生委員会でも報告がされました。
 公社には、既に大久保病院、多摩老人医療センターが都から移管され、さらに本年四月に荏原病院が移管されることになっておりますが、まず、移管された公社病院のその後の状況を確認したいと思います。
 例えば、大久保病院は平成十六年四月に移管されましたが、移管当初は医師の欠員や病床利用率の低下もあったと聞いております。
 改めて、公社に移管された二病院の現在の運営状況はどうなっているのか、お伺いをいたします。

○平井福祉保健局長 大久保病院では、移管当初の状況に影響を与えました医師の欠員補充が進みまして、診療体制が確保できたことにより、今年度下半期の病床利用率は、移管前年度でございます平成十五年度の同期を上回るまでに回復いたしました。
 また、多摩北部医療センターにおきましては、移管前年度に比べ病床利用率を伸ばすとともに、新たに診療を開始した小児科の診療実績も着実に増加しているところでございます。

○川井委員 それでは、移管の目的である地域医療の充実に関し、どのように取り組んできたのか、お伺いをいたします。

○平井福祉保健局長 大久保病院及び多摩北部医療センターでは、移管に当たりまして、地区医師会や地元自治体との協議を踏まえ、救急医療を初めとした地域の医療ニーズに対応できる診療体制を整備してまいりました。
 また、かかりつけ医と病院の医師が協力して診療を行うため、地元医師会と協定を締結して、登録医の確保や患者の紹介、逆紹介に積極的に取り組んでまいりました。
 移管二年目となる大久保病院では、本年度、協定を結んだ地区を五地区から九地区に拡大するなど、地域医療に対する支援の充実に努めているところでございます。

○川井委員 今回の所管局の変更は、サービスの向上や人材育成という病院共通の課題に、都立病院と公社病院がともに取り組んでいくためのものと理解しています。
 そこで、四月以降の公社病院の運営について、どのような方針のもとに取り組んでいくのか、病院経営本部長にお伺いをいたします。

○大塚病院経営本部長 まず、公社病院は、地域医療の拠点となる病院として、引き続き東京都保健医療公社が運営してまいります。
 病院経営本部といたしましては、公社の経営責任を明確化した上で、これまで以上に自主性を高め、財団法人としてのメリットを最大限に生かして、効率的な運営が実現するよう支援していくつもりでございます。
 また、医療連携はもとよりといたしまして、患者サービスや医療安全活動、人材育成など、病院運営に関する課題で共通化できるものにつきましては、都立病院と公社病院との協力関係を密にして取り組み、双方の病院経営や医療サービスのさらなる向上を目指してまいります。

○川井委員 非常に厳しい医療環境の中で都民に適切な医療を提供していくためには、公社病院、都立病院、それぞれの病院の特色を生かしながら連携していくことが重要です。公社病院で自由な発想に基づいてさまざまなことにチャレンジをし、その成果を都立病院に取り入れていくことを強く希望します。
 次に、ウイルス肝炎総合対策の充実強化についてお伺いします。
 ウイルス肝炎総合対策は、実施後四年が経過しようとしています。今後の対策は、これまでの事業実績を踏まえた上で、より効果的かつ継続的なものが求められます。
 肝炎対策では、まず、肝炎ウイルス検診で早期に感染者を発見することが重要ですが、自営業者や主婦なども対象とする老人保健法基本健康診査における肝炎ウイルス検診では、平成十四年度から平成十六年度までの三カ年の受診率が五四・四%と聞きます。国の計画では、平成十八年度で検診事業を終了することになっていますが、これまでの実績を見ても、来年度だけでは対象者に対して十分な受診機会を提供することは難しいと思います。また、働き盛りの四十代、五十代の方々は職域における検診が主になりますが、肝炎検診は十分に進んでいないとも聞いています。
 そこで、お伺いします。都は、感染に気づかない人がいまだ多くいると推察される現状を踏まえ、今後とも検診機会を確保していくことが必要でありますが、どのように肝炎検診を推進していくのか、お伺いをいたします。

○平井福祉保健局長 都は、基本健康診査におきます肝炎ウイルス検診について、これまでの未受診者を含め、できるだけ多くの対象者が受診するよう、実施主体である区市町村に強く働きかけているところでございます。
 今後は、国に対し、基本健康診査における肝炎ウイルス検診を平成十九年度以降も継続することにつきまして、強く要望してまいります。
 さらに、職域における肝炎ウイルス検診の促進を図るため、産業医や事業者などに対しまして受診勧奨の協力を求めるなど、肝炎ウイルス検診の受診機会の確保を図ってまいります。

○川井委員 次に、検診によって発見された感染者が、早期に適切な治療を受ける環境を整備していくことも重要であります。
 先日、厚生委員会の質疑において、都は、C型肝炎治療が外来中心へと変化していることを踏まえ、今後、医療費助成制度のあり方を検討するとの答弁がありました。
 現在、C型肝炎の最新の治療法としていわれるペグインターフェロンとリバビリンの併用療法は、一人当たりの治療費の自己負担額が年間七十万程度と聞きます。医療費助成を行う場合、対象者の推計が難しいのですが、平成十六年度までの過去三年間の老人保健事業において感染が見つかった方は約一万人と聞きます。仮に、この方々に対し治療費自己負担分を助成したとしても、七十億円の予算が必要になります。
 制度拡充に当たっては、他の医療費助成制度との均衡もありますので、所得制限や対象者の範囲など、さまざまな課題を整理することも必要であることを理解しています。しかし、C型肝炎は早期発見、早期治療で治ることが期待でき、結果として総医療費の抑制効果にもつながるものと考えています。そして何よりも、患者さんにとってはとうとい命が守られ、希望を持って病気と闘うことができることになります。
 このことから、速やかに課題を解決した上で、通院医療費助成を含む制度の拡充を早急に実施すべきと考えますが、見解をお伺いします。

○平井福祉保健局長 ご指摘のとおり、通院患者を含む効果的なウイルス肝炎対策の構築に当たりましては、今後、検診のあり方やウイルス肝炎の治療の実態、さらには他の医療費助成制度との均衡など、多面的な検討を行うことが必要であると考えております。
 このため、現在、学識経験者などから幅広く意見をいただくための検討会を四月中に開催することといたしまして、準備を進めているところでございます。

○川井委員 学識経験者等をもって検討する会を持ったということは、実施していただける、こう私はとらえておきます。
 次に、糖尿病対策についてお伺いします。
 都民の健康づくりの基本方針については、我が党が本委員会で取り上げました。都は、糖尿病の予防、がんの予防、心の健康づくりを東京都健康推進プラン21後期五カ年戦略における重点課題に位置づけていますが、特に糖尿病に絞って伺います。
 都では、なぜ後期五カ年戦略の中で糖尿病対策を重点的に取り上げたのか、改めて所見をお伺いします。

○平井福祉保健局長 都におきましては、基本健康診査の結果、糖尿病及びそのおそれがあるとされた人の割合が増加しておりまして、平成十五年度では約五人に一人となっております。また、近年、糖尿病につながることが多い肥満が成人男性に増加しており、今後さらに糖尿病有病者数の増加が懸念されるものでございます。
 糖尿病は自覚症状のないことが多いことから、検査で異常を指摘されても治療につながらない場合があり、気づかないうちに重症化し、腎臓や目などに合併症を引き起こしたり、心筋梗塞や脳梗塞などの重篤な疾患に進展するおそれがございます。
 このような状況から、東京都健康推進プラン21後期五カ年戦略の中で重要な課題と位置づけ、重点的に取り組むこととしたものでございます。

○川井委員 肥満とか予備軍といわれると、どうもつらいですな。頑張ってください。
 今の答弁にもありましたが、糖尿病はいつの間にか重症化し、大変な合併症をもたらします。例えば糖尿病性腎症で人工透析となっている人が全国で七万人以上いることからも、糖尿病の合併症は決して他人事ではないのです。
 糖尿病にかかる医療費も侮れません。現在、糖尿病による医療費は一兆円を超えており、医療費適正化の観点からも糖尿病の予防は重要であります。
 糖尿病の早期発見のためには、きちんと健康検査を受診することはもちろん大切ですが、糖尿病の合併症などの恐ろしさを都民に的確に伝え、予防や早期発見に努めるなどの対策を推進すべきと考えます。また、あわせて、都民一人一人が日常的に、身近な場所やくつろげる場所、例えば公衆浴場などで健康チェックができるようにすることが大変重要だと思います。
 そこで、都は今後、これらの点を踏まえ、どのように取り組むのか、所見をお伺いいたします。

○平井福祉保健局長 都民一人一人が糖尿病の深刻さを認識した上で、肥満の予防や糖尿病の早期発見、早期治療に努めることは、健康な長寿の実現のために極めて重要であると考えております。
 今後、ご指摘の点を踏まえ、区市町村や関係機関と十分に連携いたしまして、都民が身近な地域の中で日常的に健康チェックが行えるよう支援するとともに、正しい食生活に関する普及啓発や、健診、治療を受けやすい体制づくりを進めるなど、総合的な糖尿病予防対策に積極的に取り組んでまいります。

○川井委員 三月十七日の産経新聞で、実は「駅員、自動体外式除細動器で迅速手当て」、「駅で尊い命が救われた」、「『心肺停止』男性救う」、こういう記事を見ました。産経新聞だったと思います。これ見て、何か、大変な事件ではあるんですけれども、よくやったぞという喜びというか、うれしさというか、そういうものも実は込み上げてまいりました。
 この新聞報道によりますと、三月十六日、都営大江戸線の都庁前構内で、駅員の自動体外式除細動器、AEDを使った迅速な対応によりとうとい命が救われた、こう記事があります。
 このAEDは、東京都医師会から強く強く要望を受け、我が党が実現に向けて取り組んだ仕事であります。その結果として、都は、十七年度重点事業として、人がたくさん集まる場所を最優先に機器の設置を進めたと聞いております。今回、まさにこの取り組みの成果が発揮され、とうとい命が救われたんだ、こういう思いであります。
 しかしながら、どうもちょっと聞きますと、各局がそれぞれの公共施設に設置する努力をしている、こういうことでありますけれども、やはりこれは全庁を挙げて、連絡をとりながらやることも必要なのかな、そんな思いをしております。
 現在、各局が機器の配置と訓練について鋭意努力しているのはわかるわけでございますけれども、やはりどこかが責任を持って、それを全庁的な中で確認をしていく、こういう制度がないということについて若干不安を感じております。そういうことについてぜひご努力をいただきたい。
 そして、民間企業への取り組み、これをいかに誘導していくのか、これをさらに全庁を挙げて責任を持って取り組んでいくことと、民間に対しての誘導、PR、呼びかけ、そういうものを強く要望しておきます。
 以上で締めくくりの質疑は終わりますが、都政は今、新たな舞台を築き上げるときに来ていると思います。この舞台づくりこそ、大都市東京の四度目の再生なのです。そして、この舞台で演じられるにふさわしい魅力的なプログラムこそオリンピックであると思います。先人たちが時代時代の重く厳しい課題に立ち向かっていったことを思えば、私たちも漫然とした取り組みを続けるだけではいけません。新たな時代にふさわしい豊かな発想と機敏な行動力で、この先の東京をつくり上げていく必要があります。
 このことを、同僚議員、そして多くの都民、そして理事者の方々に申し上げ、私の締めくくりすべてを終了させていただきます。
 ありがとうございました。(拍手)

○松原委員長 川井しげお理事の発言は終わりました。
 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後三時十二分休憩

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