東京都議会予算特別委員会速記録第四号

○松原委員長 松下玲子委員の発言を許します。
   〔委員長退席、大塚副委員長着席〕

○松下委員 移動方法を間違えてしまいまして、申しわけございませんでした。
 自転車の安全対策についてお伺いいたします。
 私自身、毎日自転車に乗っていますが、自転車は身近で便利な交通手段です。燃料を消費せず、二酸化炭素の排出削減にも有効で、環境にも配慮した乗り物です。季節の移り変わりを肌で感じることもでき、健康増進にもつながり、大いにその利用を促進していくべきとは考えますが、一方で、自転車に関しては、よい面ばかりではなく、さまざまな問題点もございます。
 歩道上を猛スピードで走る、夜ライトをつけずに無灯火で走る、携帯電話で話しながら、またメールを打ちながら走るなど、走行中のマナーの悪さ、ルール違反が目立ちます。
 猛スピードで走る場合も、自動車と違って、自転車は音を立てずに歩行者の横を走り抜けるため、事故には遭わないまでも、非常に怖い思いをしたという声も多数聞いております。
 こうした走行中のマナーの悪さ、ルール違反は交通事故につながるものと考えますが、都内の交通事故全体及び自転車の交通事故の発生状況についてお伺いいたします。

○舟本青少年・治安対策本部長 平成十七年の交通事故全体の発生件数は八万六百三十三件で、この五年間に約一〇%減少はしておりますが、十年前と比較しますと約一・四倍に増加をしております。
 また、平成十七年の自転車の交通事故の発生件数は二万七千七百五十九件で、交通事故全体の約三分の一を占めております。
 この五年間の発生件数は横ばいで推移していますが、十年前と比較しますと約一・八倍に増加をしております。

○松下委員 ここ五年間で交通事故全体が減少している中で、自転車の事故はほぼ同数ということは、交通事故全体に占める自転車の割合がふえているということかと思います。
 都内の自転車事故は交通事故全体の三分の一というお答えでしたが、ちなみに私の地元の武蔵野市では、自転車事故の発生状況が、交通事故全体八百四十四件のうちの四百十八件、約半分も占め、非常に問題となっています。
 答弁のデータについては警察のデータかと思いますが、私は、自転車の安全対策について考える上で、自転車事故の数を把握したい、現状を正確にとらえたいと思い、いろいろ調べてみましたが、自転車の交通事故については警察で把握されていない事故もたくさんあるようです。軽微な事故から、救急車で搬送された事故など、ちなみに自転車で走行中の交通事故により救急車で搬送された人員を調べましたところ、平成十六年で約二万八千人、このデータは、警察データに含まれるものもあれば、ないものもあり、つかめている数は氷山の一角の可能性もあります。
 十年前と比較すると、これ私調べてみたんですけれども、約一・八倍という、一・八倍という今お答えになった数は、ほとんど二倍に近く、自転車による交通事故が増加していると考えられますが、自転車の交通事故を防ぐために、都はどのような対策をとっているのか、お伺いします。

○舟本青少年・治安対策本部長 平成十七年の自転車乗車中の死者数は四十五人に上っておりまして、自転車の交通事故防止は重要な課題であります。
 都では、これまでも、地域の交通安全ふれあいフェアで、参加体験型の自転車の安全教室を実施するなどの取り組みを行ってまいりました。
 また、今年度は、自転車の転倒事故から幼児を守るハートフルメットTOKYOキャンペーンを行うとともに、自転車通学が多い高校生を対象としまして、社会的責任と命の大切さを重点とした交通安全教室を実施するなど、対策の強化に努めております。

○松下委員 自転車の交通事故を防ぐことは大きな課題との認識はうれしく思います。
 これまでも安全教室を実施しているとのことですが、そもそも自転車が道路交通法上の車両としての位置づけがあることや、例えば、無灯火運転は交通違反となり、警察の取り締まりのもとでは罪となるんだということを認識した上で自転車に乗っている人はまだまだ少ないのではないかと思います。ぜひ引き続き、交通ルールが学べる安全教室を開催していただきたく思います。
 今年度から実施しました自転車の転倒事故から幼児を守るハートフルメットTOKYOキャンペーンは、我が会派の初鹿議員が取り上げ実現した自転車の安全対策と伺っております。
 転倒時の衝撃を防ぐという意味で非常に有効であろうかと思いますが、自転車に乗っている幼児の安全対策のみならず、歩行者の安全対策についてお伺いしたいと思います。
 最近は、自転車が被害者となるというよりは、加害者となる自転車対歩行者という事故がふえていると聞いておりますが、自転車対歩行者の事故の状況についてお伺いします。

○舟本青少年・治安対策本部長 平成十七年の自転車対歩行者の事故は九百九十三件でありまして、五年前の平成十三年と比較して約一二%の増であります。

○松下委員 九百九十三件の発生は、自転車の交通事故全体の発生件数から見ると少ない件数のようです。しかし、歩行者にとって、猛スピードで横を走り抜ける自転車は、時に走る凶器にもなり、大変危険です。
 自転車対歩行者の事故では、歩行者が圧倒的に大きな損害をこうむります。
 これまで自転車対歩行者の事故でお亡くなりになった方が、調べてみましたら、都内にここ五年で三名いらっしゃいます。自動車と異なり、自賠責保険制度のない自転車事故で、どうやってお亡くなりになられた方に償いをするのか、賠償責任はどうなるのか、非常に心配です。
 ここ五年で比較すると約一二%増とのことですが、私調べましたところ、十年前と比較すると、実に二十倍という数字になっております。これだけ数字が、二十倍という莫大になるのは少し考えにくいので、何か統計のとり方が年度によって変わったのか、統計的なことについては今後もっと調べていきたいと思いますが、自転車事故をなくすためにも、自転車対歩行者の事故対策として、東京都はどのような取り組みを行っていくのか、お伺いいたします。

○舟本青少年・治安対策本部長 自転車対歩行者の事故防止のため、都はこれまでも自転車利用者の交通ルールやマナーの啓発に努めてまいりました。
 近年、歩行者を死亡させるなど重大な事故も現に発生をしております。
 このため、都は、本年五月、東京交通安全協会などと連携をし、小学生やその保護者に自転車の交通ルールや安全利用に関するキャンペーンを実施することとしております。
 また、この中で、自転車の点検整備に賠償責任保険がついているTSマークの周知等、万一事故が起きた場合の備えについても啓発を進めていきます。

○松下委員 本年五月に、賠償責任に対する備えとして普及啓発を行う予定とのこと、万が一事故が起きたときの備えとして大変評価できるキャンペーンだと思います。
 賠償責任保険が付されたTSマークという制度は、私も調べてみましたが、このパンフレットに詳細が書いてございます。このマークが添付された自転車に乗った人が、第三者に死亡または重度後遺障害を負わせたことにより、法律上の損害賠償責任を負担した場合は、最高限度額二千万円が支払われるというものです。ぜひ、このキャンペーンによってTSマークが認知されることを私も望みます。
 同時に、キャンペーンの中で、交通ルールや自転車安全利用の徹底、またTSマークには一体幾らで入れるのかといったことをわかりやすく普及していただきたく思います。
 キャンペーン自体、新たな試みであり、評価させてはいただきますが、一方では、それ以上の補償が求められる事故が起きたときの対策もとる必要があるのではないかと思います。
 昨年十一月、横浜市では、自転車に追突されて歩行困難になり、職を失った被害者に対して、五千万円の支払いを命じるという訴訟の判決があったと新聞報道で知りました。これはTSマークの最高限度額を超える金額です。
 TSマークは任意の制度であるので、まずはこの任意の制度を普及していただくのはもとより、今後は、被害者保護の観点から、義務としての自賠責保険の制度も必要ではないかと思います。免許もなく乗れる自転車に自賠責保険というと突拍子もなく思えるかもしれませんが、被害者保護の観点から、ぜひ今後ご検討いただきたいと思います。
 またあわせて、安全な移動空間をつくる上で、歩行者と自転車の通る空間を分ける、自転車専用道の設置についてもご検討いただきたいと思います。
 今後、自転車にも自賠責保険制度を整備し、例えばICタグを活用して自転車をしっかりと管理、把握することが、きょうは時間の関係でお話しできませんが、放置自転車対策にもつながると思います。
 自転車の安全対策に関して、マナーに訴えるだけではなく、より強制力の働く方策を関係機関と連携して検討いただき、自転車事故をなくしていくこと、万が一に備えた補償制度を普及していくことを強く要望して、次に移りたいと思います。
 自殺防止対策についてお伺いいたします。
 自殺防止という言葉をこの質疑で用いるに当たって、予防を用いるか、防止を用いるか非常に悩みました。あらかじめ防ぐ予防というより、防ぎとめる防止の方が、より強く自殺をとめるんだという気持ちが入るのではないかと思い、自殺というみずから命を絶つことを防ぎ、とめるという強い思いを持って質問に臨みたいと思います。
 まず、自殺防止のためには、自殺の現状把握をできるだけ正確に行いたいと思います。
 全国の自殺死亡数は、平成十年に初めて三万人を超えて以来、七年連続で毎年三万人を超える数となっております。人口動態統計の年間概数が六月に公表になるとともに、自殺死亡数について、新聞でも大きく取り上げられています。
 交通事故による死亡者数が年々減少し、平成八年以来全国で一万人を下回っており、昨年には四十九年ぶりに七千人を下回っている現状と比べると、自殺者数が七年連続三万人も超えているという事態は非常に深刻な状態であると思います。
 自殺防止対策は、東京都としても早急に取り組む課題であると考えます。
 そこでまず、都内の自殺死亡者数はどうなっているのかお伺いします。

○平井福祉保健局長 東京都における自殺死亡者数は、人口動態統計によりますと、平成七年までは二千人以下で推移してまいりましたが、平成八年に二千人を上回り、平成十五年は二千七百四十三人、直近の平成十六年では二千六百七十九人となっているところでございます。

○松下委員 直近は二千六百七十九人とのこと、全国の一割とはいかないまでも、それに近い数が東京都の自殺者という数は、決して少ないとはいえません。
 平成十年以降、自殺者数は毎年二千五百人を超えています。この現状から、都としてどういった自殺防止対策をこれまで行ってきたのか、また今後はどう取り組んでいくのか、自殺の理由の多くを占める心の問題、心の健康づくりという観点からもお伺いしたいところではありますが、心の健康づくりに関しては、我が会派の酒井議員が昨年取り上げておりますし、この総括質疑の中でも、心の健康づくりについて重点プランとするというお答えもありましたので、今回はソフト面の対策については言及いたしません。
 私は、特にハード面からの自殺防止対策についてお伺いしたいと思います。
 私の地元の武蔵野市を東西に走るJR中央線では、飛び込み自殺やホームへの転落等がたびたび発生しています。鉄道のホームや踏切から身を投げ出し、貴重な命をみずから失ってしまうということは、社会的な損失である同時に、深い悲しみを覚えます。
 間近で自殺に遭遇してしまった者にとっても、精神的な影響ははかり知れませんが、精神的な影響のみならず、先月は走行中の私鉄の特急に飛び込むという事故により、特急に乗車していた九人の乗客が巻き添えで負傷するという大変痛ましい事故もありました。
 一たび事故が発生すると、鉄道は運転を見合わせ、ダイヤが大きく乱れ、公共交通を利用する多くの都民の移動に影響が生じます。乗車中の車内に閉じ込められたままだったり、ホームで立ち往生、場合によっては駅構内に入ることすらできず、行方をはばまれて本当に困ってしまう状況がしばしばです。
 また、実際に自殺で亡くなられた方のご遺族は、家族や愛する人を失った悲しみや、場合によっては鉄道会社から損害賠償を求められるという二重の苦しみにさいなまれます。
 鉄道事業者にとっても、遅延に伴う振りかえ乗車券の発行や車両の損傷、事後処理の対応など、大きな損失をこうむることになるのではないでしょうか。
 鉄道自殺は社会全体にとって大きな損失です。そこで、都内で鉄道など飛び込みによる自殺死亡者はどの程度の数になるのかをお伺いいたします。

○平井福祉保健局長 人口動態統計特殊報告によりますと、東京都における、いわゆる飛び込みによる自殺死亡者数は、平成十五年で百三十七人でございます。

○松下委員 百三十七人とのことですが、都内の自殺者全体から見ると、鉄道などの飛び込みは割合としては少ないようです。
 手段だけで見ると、私、自殺の統計を調べましたら、全国的に圧倒的に多いのは縊首、首をくくることなのですが、飛び込みの比率自体を全国で比べてみると、東京都が全国の中では最も高い数字となっております。
 また、鉄道交通網が発達している東京で、一たび事故が起きたときのダイヤの乱れや周辺接続列車への影響、鉄道利用者自体も圧倒的に多いので、時間帯にもよりますが、与える影響の大きさははかり知れません。
 この鉄道自殺をハード面から防止するものとして期待されるのがホームさくです。これは線路とホームの間に設置する可動式のもので、ホームドアやホームゲートなど幾つかの呼び名がございます。
 都営三田線や昨年八月に開業したつくばエクスプレスにはホームさくが設置されています。そこで、都内の駅におけるホームドアやホームさくの設置状況についてお伺いいたします。

○梶山都市整備局長 ホームドアまたはホームさくは、ホームからの転落や列車との接触などの事故防止のため設置される施設でございます。
 都の調査では、現在、新幹線を除く都内の鉄道駅七百二十六駅のうち、ホームドアまたはホームさくは、十三路線百二十九駅で設置されております。

○松下委員 百二十九駅、都内の数全体はもっとたくさんあると思いますので、既存路線の駅で実態としてもホームドアの設置が余り進んでいないように見受けられますが、ホームドアの設置に向けてはどのような課題があるのかお伺いいたします。

○梶山都市整備局長 ホームさくは事故防止に有効な施設でありますが、既存駅への設置には、さまざまな課題があります。
 設備面からは、車両扉の位置の異なる列車ヘの対応、ホーム幅の減少、また輸送面からは、停車時間の増大による輸送力の低下や、混雑時におけるさくの開閉に対する安全確保などが課題となっております。

○松下委員 設置が進んでいない背景には、解決しなければならない課題があるということかと思います。
 国土交通省のホーム柵設置促進に関する検討会報告書において、ホームさく設置の課題についても局長が今おっしゃったような内容が言及されており、課題解決のため、今後の技術開発に取り組んでいく必要があると、この報告書にも書かれております。
 報告書には、さまざまな課題が残されているものの、ホームにおける事故防止に対し有効であり、バリアフリー化、また人身障害事故による列車遅延の防止等、鉄道サービスの向上方策としても設置促進のための検討を進めていく必要があると書かれております。
 平成十三年一月二十六日、JR新大久保駅で、酔ってホームから転落した男性と、それを助けようとした留学生ら合計三名のとうとい命が失われるという、まだ記憶に新しい事故がありました。この事故を契機として、国交省は事故防止の検討を進め、平成十五年には、各鉄道事業者に対して、ホームさく設置可能性を検討し、報告するよう通達が出ております。
 鉄道の安全確保については、鉄道事業法により国が監督することとされていることは承知しておりますが、この通達に対し、都内の各鉄道事業者はどのように回答したのか、都が把握していることをお伺いいたします。

○梶山都市整備局長 都が把握しているところでは、都が出資もしくは運営している鉄道事業者のうち、「ゆりかもめ」、多摩都市モノレールにおいては、ホームドアまたはホームさくが全駅に設置済みでございます。
 首都圏新都市鉄道では、設置予定と回答しているとのことでございます。
 また、都交通局、東京地下鉄、それから東京臨海高速鉄道では、先ほど申し上げたような設備面、輸送面からの課題があり、現時点では設置は困難であると回答しているとのことでございます。
 その他の鉄道事業者が国に対して回答した内容については、都としては情報提供を受けてございません。

○松下委員 都交通局など、現時点では設置は困難とは残念です。
 その他の事業者からの回答について、情報提供を受けていないということですが、都は鉄道事業者の監督者ではないので仕方ないのかもしれませんが、鉄道自殺の防止策としてホームさくは有効であり、これは都営三田線の事例でも明らかでありますが、鉄道事業者は、設置を積極的に進めていくべきと考えます。こうしたホームさくの設置に向けて、都は鉄道事業者に対してどのように関与していくのか、お伺いいたします。

○梶山都市整備局長 駅施設の安全対策は、鉄道の運行管理に関することであり、国の適切な関与のもと、各鉄道事業者がみずから実施することとなっております。
 都は、これまでも地下鉄事業者がホームさくを設置する場合に、国とあわせて整備費の補助を実施してまいりました。
 今後とも、国と連携し、地下鉄駅へのホームさく整備費の補助を実施するなど、都民の安全確保に努めてまいります。

○松下委員 都が地下鉄駅への補助の実施ということかと、今のお答えは思いますが、他の鉄道事業者に対しても、自殺防止対策、公共交通の安全対策という意味で積極的に関与していただきたいと思います。
 都は、昨年四月に発生したJR福知山線列車事故を踏まえ、本年二月末に、鉄道事故など大規模事故が発生した場合における各防災機関の対応などを定めたマニュアルを策定しております。
 これは大規模事故を想定したものでありますが、こうした事故発生後の対応はもちろん大切ではありますが、事故発生後にかかわるだけでなく、未然に事故を防ぐような仕組みをつくり、かかわっていくことはもっと大切ではないかと私は思います。
 このマニュアルの策定に当たっては、東京都が管轄外であるはずの鉄道事業者に対しても、主体的に音頭を取って、都と鉄道事業者との間で連絡会議を持ったと聞いております。
 鉄道自殺防止についても、都と自治体、鉄道事業者による検討会や協議会などの組織を設置し、関係者が連携して、多様な鉄道自殺防止対策について、ソフト、ハード両面から検討されることを強く要望いたします。
 鉄道自殺に伴う問題は、まさに大都市東京特有の現象であります。国に監督権があるから都には権限がないといって決して逃げることなく、鉄道自殺による痛ましい犠牲者を減らし、なくしていくために、安心・安全を標榜する東京都ができることはきっとあるはずです。
 私は今回、自殺防止対策についてハード面から、特に鉄道自殺を中心に取り上げました。また、実態を把握するという点から、自殺者数や割合を取り上げ、人数という数字で把握しましたが、この数字の裏には、失われたとうとい命があるのだということをしっかり踏まえたいと思います。
 私たちは、自殺を、その数の多さのみならず、一人一人の命の問題としてとらえ、社会のあらゆる場面で、そして東京都で、自殺を防ぎ、とめるということに取り組んでいく必要があると思います。
 そこで最後に、自殺防止に向けての石原知事の見解をお伺いいたします。

○石原知事 人間は、生まれた限り必ず死ぬものでありまして、幾ら長生きしたいと思っても、死は避けられないものでありますが、しかし同時に、フランスのジャンケレヴィッチという哲学者の言葉によりますと、死は人間にとって最後の未来だと。この未来を自分でとにかく踏み込んで侵してしまうというのは、やっぱりこれは本当に人生に対する冒?だと私は思います。
 自殺は本人だけじゃなしに、残された家族や周辺にとっても悲劇でありますし、社会的、経済的な損失でもありますが、その要因は非常に複雑でありまして、なかなか解決は容易でないと思います。
 ここに、岩手大学の教授で大沢さんという方ですけれども、この人は十一年以上、鑑別所の技官としても活躍された方ですが、この人の書いた論文によりますと、少年のこういう非行とか自殺も含めて突発的行為というのは、教育やその精神面からだけ論じられるべきものではなくて、彼らの神経生理学的局面にも大きな原因があると。そのまた大きな原因は食べ物だと。大体こういう連中の食生活は非常に偏っていて、ほとんどが清涼飲料水をがぶ飲みしたり、甘いお菓子やチップを好んだり、朝食もとらずに間食が多く、食パンや菓子パンやインスタントラーメンを多食して云々といいますが、こういった食生活の影響も、私は現代の一つの大きな兆候だと思いますね。それをだれが規制するかということになると、これは結局家庭の問題でしょうが、いずれにしろ、だれもが生きる力を持ち、互いに支え合って、避けられるべき自殺を防ぐために、社会全体が努力していくべきだと思います。
 しかし、私にとってみて、知らない人間がインターネットで呼び合って、名前も名乗らずに一つのワゴン車の中で練炭をたいて一緒に死ぬというのは、こんなものは防ぎようがないですな、これは。

○松下委員 ご答弁ありがとうございます。
 食生活、食育の面からも、自殺防止に取り組んでいくという前向きなご答弁であったかと思います。
 私はこれからも鉄道自殺防止、特に中央線の安全対策に取り組んでいきたいと思います。都としても、積極的に取り組んでいただきたいと要望して、次の質問に移ります。
 最後に、都立公園についてお伺いいたします。
 都立公園は、都民の憩いの場であり、都市の貴重な自然環境としても重要です。私は、都立公園の魅力をより高めていきたいという観点から、幾つか質問をさせていただきます。
 市街地の拡大により、かつてあった東京の緑は減少し、都立公園のような大きな空間は、潤いのある質の高い都市生活を実現するためには重要な要素です。
 緑の減少は、ヒートアイランド現象の原因ともなり、都市活動や都民生活にさまざまな影響を及ぼし、早急な対応が求められております。平成十八年度予算では温暖化対策として五十二億円が予算化されており、新たにヒートアイランド現象の緩和に配慮した公園づくりも取り上げられています。
 さらに、かつてはどこにでもあった身近な緑の代表である雑木林が次々と消えていき、子どもたちにとって貴重な自然資源がなくなってきているという現状、先ほど、緑地保全に関しては西岡議員が質問をさせていただいておりますが、都立公園、緑が本当にたくさんある、百三十年の歴史の中で培われた千八百ヘクタールにも及ぶ貴重なストックを持つ都立公園には、活力ある福祉社会や文化の形成、自然との触れ合いなどさまざまな役割を担っていると考えますが、都立公園の主な役割は何か、改めてお伺いいたします。

○岩永建設局長 都立公園は、都民に安らぎやレクリエーションの場を提供する重要な都市施設でございます。とりわけ、公園の豊かな緑は、風格ある都市景観を形成するとともに、ヒートアイランド現象を和らげ、都市環境の改善に寄与いたします。
 また、広々とした空間は、震災時における避難場所や救援、復興活動の拠点となるなど、都立公園は、快適で安全な都民生活に欠かすのことできない役割を果たすものと、このように考えております。

○松下委員 今ご答弁のあった役割を踏まえた上で、続いて都立公園のより一層の利用促進についてお伺いしたいと思います。
 社会経済の変化に伴って、都立公園を取り巻く環境は大きく変わってきております。
 平成十八年度からは、公の施設で指定管理者制度が本格導入されます。この制度は、民間事業者でも管理ができるようになったもので、都立公園でも、それぞれの指定管理者がノウハウや知恵を絞って、競争してサービス向上に努めるようになってきます。
 また、都は平成十六年、パークマネジメントマスタープランを作成し、公園を管理するという視点のみではなく、経営するという観点に視点を変えていく、非常に今の社会経済の状況にも合ったプランであると理解しております。
 このマスタープランでは、公園の魅力発掘事業の実施がうたわれていて、これまで都立公園では禁止事項であった大道芸、ヘブンアーチストという制度によって都立公園でも披露できるようになり、市民との交流も生まれ、芸術文化の振興に貢献していると思います。
 私も地元の井の頭公園で、日曜日のお昼に、小さな子どもも参加して、公園の池や木々を探索しながらお話が進む、とてもおもしろいヘブンアーチストの芸というか、わざを見ましたが、公園という広々とした空間を生かし、アーチストのわざが訪れる人たちの心を潤わせ、すばらしい試みだなと思いました。
 公園を利用する人は、いろいろな人がいます。多様な価値観に合わせて、公園利用の目的というもの、憩いや散歩などの従来のレクリエーションだけじゃなくて、新しいスポーツを楽しみたい、芸術文化に親しみたい、ごみ拾いなどボランティアを体験して社会貢献がしたいなど、従来には余りなかったニーズも高まってきているかと思います。
 そこで、これからの都立公園では、新しい都民ニーズにこたえ、一層の利用促進を図っていくべきと考えますが、所見をお伺いいたします。

○岩永建設局長 都立公園におきましては、都民の公園づくりへの参加意識など、都民ニーズを的確にとらえながら、より一層公園利用を促進することが重要でございます。
 都はこれまでも、都民と協働して思い出ベンチ事業や桜の森づくり事業、また、ボランティアを育成する大自然塾の開催など、新たな取り組みも実施してまいりました。
 今後とも、公園利用者へのさらなるサービス提供を図るため、ボランティア、NPO、企業などとの協働や連携によりまして、都立公園の活性化に努めてまいります。

○松下委員 公園の活性化を進めていくとご答弁いただきましたが、ぜひ、都立公園には個性豊かな公園が多く、その個性を大切にした利用促進を図っていただきたいと思います。
 都立公園は貴重な東京都の財産、これを有効に活用して都民サービスの向上に努めるという思いで利用促進に取り組んでいただきたいと思います。
 次に、井の頭恩賜公園における魅力ある公園づくりについてお伺いいたします。
 井の頭恩賜公園は、繁華街である吉祥寺駅からも近く、商店街も発達して、多くの人々が集まります。この立地特性を生かして、訪れる人がより魅力を感じる公園づくりが必要と考えますが、所見をお伺いいたします。

○岩永建設局長 井の頭恩賜公園は、大正六年に開園いたしまして、武蔵野の豊かな緑と、井の頭池の湧水を生かした公園づくりを進めてまいりました。
 現在は、桜の名所として、また、ジブリ美術館などの魅力を求めて、都内全域から多くの利用者が集まる公園として親しまれております。
 お話のように、吉祥寺駅に近い立地特性や、多くの若者などでにぎわう街並みを生かしていくことは、井の頭公園の活性化にとって大変重要でございます。
 このため、地元市や商店街、近隣住民などの意見をお聞きしながら、井の頭公園の個性を生かした魅力ある公園づくりに取り組んでまいります。

○大塚副委員長 松下玲子委員の発言は終わりました。(拍手)

ページ先頭に戻る