東京都議会予算特別委員会速記録第四号

○新藤副委員長 野上ゆきえ委員の発言を許します。
   〔新藤副委員長退席、大塚副委員長着席〕

○野上委員 近年、我が国では、知の地域づくり、知的立国という考え方が主張されております。これは、日本には資源が少ないため、日本の資源である人材を育て、一人一人が才能を伸ばす、そして、科学技術、文化芸術などが大事にされる、才能を伸ばした人々が地域社会や地域の人々に貢献し、国を引っ張っていく、知を結集できるようなシステムをつくり、地域づくりや国づくりを目指そうという考え方です。
 そこで、知の創造の基盤をなす教育について伺います。
 一人一人の子どもたちの個性や能力を伸ばし、生涯にわたってたくましく生きていく基盤を養うとともに、国家、社会の形成者として、また、ひいてはこの国際都市東京に住む一市民としても必要な資質能力を養うことが今は求められている中、教員もまた、これからは十分な知識を持って、ともに学び、そしてともに考え、ともに行う、そういった三つのバランスを備えている人材が強く求められています。
 未来を担う児童生徒に対する学校教育の充実のためには、学校教育の直接の担い手である教員の質、あるいは指導力の向上が不可欠です。
 そこで、教員採用について、中でも社会経験の豊富な人材の確保について伺います。
 いわゆる団塊の世代の教員の退職者数は、〇八年度をピークに、〇七年度から一七年度にかけて二千人を超える見込みであります。大量退職時代を迎えて、採用見込み数の大幅な増加が見込まれる中で優秀な人材を確保していくためには、年齢にとらわれることなく、多様な層から幅広く人材を確保していくことが重要であると考えます。
 今回発表した教員任用制度のあり方検討委員会報告では、受験年齢の緩和を提言していますが、どのような背景から出されているのか、伺います。

○中村教育長 現在の東京都の教員の年齢構成は、校種によって相違はございますけれども、全体では、団塊の世代である五十歳代が多うございまして、児童生徒数の減少から採用が抑えられた三十歳代が極端に少ないという不均衡な状況になっております。
 今後、採用数の大幅増加が見込まれる中、均衡のとれた年齢構成を図っていくためには、谷間となっております年齢層を埋めながら、採用年齢を分散化させていく必要があるというふうに考えておりまして、現在、一般選考におきまして、三十五歳の年齢制限を五歳程度引き上げることを検討しております。

○野上委員 人事管理や、あるいは学校の運営への悪影響を防ぐため、年齢構成の均衡を図りたいとのことで、教員採用試験の年齢制限を五歳引き上げるという旨はよくわかりました。
 しかし、一方で、既に平成十八年度選考試験において、宮城県、山形県、富山県を初めとする四県一市では、受験資格とされる年齢制限なし、また、長野県では六十歳未満、青森県、埼玉県、さいたま市では五十一歳と、全国的に受験資格年齢制限引き上げ、ないし年齢制限撤廃の傾向にあります。
 今、学校は、生徒、保護者、地域等から信頼をかち取り、そして、地域のコーディネーターとしての役割が非常に強く求められています。しかしながら、民間企業に比べ、どちらかというと教育現場はまだまだ閉鎖的です。また、組織体として教員同士の連携、協調、つまりは、どんな民間企業でもあるラインとスタッフの関係、あるいは上司と部下という、そういった信頼関係が生まれやすい組織体にはなかなかなっていない現状があります。
 このように、教育を取り巻く環境が厳しくなっている中では、新規学卒者確保の一方、都も年齢制限を緩和し、もっと豊かな人間性や幅広い視野を持った社会人に目を向け、採用し、活用していくことも有効な方策だと考えます。
 今までも社会経験の豊富な人材の確保ということで、社会人特別選考を実施していますが、今後、より一層こうした人材の確保に努めるべきだと思いますが、見解を伺います。

○中村教育長 教育を取り巻く環境は、児童生徒の規範意識の低下、いじめや不登校など、複雑多様化しておりまして、課題に対処していくためには、学校全体が組織的に取り組むことや、保護者や地域との連携が強く求められております。
 企業での活動など、豊かな社会経験に基づく実践力は、このような学校現場におきます課題の解決に向けて期待できるものというふうに認識しておりまして、今後とも優秀な社会人の確保を積極的に進めてまいります。

○野上委員 より積極的に確保していくというご答弁でございますが、そのためには、やはり、より受験しやすい環境を整備していくことが重要であると考えます。
 社会人の中には、教員になることを志しながら、何らかの理由で民間企業に就職している人や、あるいはまた、子育てを終えた層の中にも、もう一度教員を目指したい、あるいは大学に入り直して、もう一度勉強してから教員になりたい、そういった意欲を持っている方は多くいると思います。
 そうした意欲に十分にこたえていくためにも、私が前々から主張しております年齢制限や在職年数の緩和などにより、優秀な人材を確保しやすい方策を検討すべきと思いますが、いかがでしょうか。

○中村教育長 社会経験を持ち、教育に対する熱意や意欲のある人材を幅広く発掘していくためには、社会人が受験しやすい選考方法を工夫しまして、また、説明会などで積極的に働きかけていくことが重要でございます。
 受験年齢や在職年数の緩和につきましては、人材を確保する上で有効な方策と考えておりまして、具体的には、社会人特別選考の年齢制限を四十歳から五歳程度引き上げることなどを検討しております。

○野上委員 教員の職務というのは、やはり児童生徒の人格形成に大きく影響を与えるものです。今の時代、本当に大きく時代が変化している中で、やはり今までのモデルが通用しなくなってきています。教員みずから新しいことに挑戦し続ける、そういった生き方、あるいは姿勢、人生経験を生徒に示していくことが、本当に今、必要になってきていると思います。
 教員免許を持つ人々に対して広く東京都が門戸を広げ、そして、魅力ある、また優秀な人材を確保していただけるよう、改めて教員採用候補者選考年齢制限撤廃も含めて、強く要望いたします。
 次に、私ども都議会民主党の東京マニフェストにもありました民間人校長の活用について伺います。
 この季節になると、議員は地域の高校を初め、数多くの卒業式、入学式に出席いたします。私も、工業高校、商業高校、普通都立高校と、出席する機会を得ました。そこで、PTAの方々や多くの校長、副校長と話をしてまいりました。例えば校舎の使い方、使用状況、きちんと整理されているか、あるいは古い校舎でも掃除や修理がなされているか、式典の運営方法や、生徒や教員たちの言動等にも触れてまいりました。
 出席しましたある高校の校長は、式典に向けモーニングを着用していながら、すそを気にせず、生徒たちと掃除を一緒に行っていました。また、ある校長は、来客者を案内する際、廊下を、生徒たちが集まってその行く手をふさいでいるにもかかわらず、生徒に何も声をかけず、来客者を端に寄せて進むように誘導していました。この判断がよいか悪いかはこの場では申し上げられませんが、一ついえることは、やはり校長と学校の運営、そして生徒の質には、深い相関関係があるということです。
 校長には教育に関する理解や見識を有するのはもちろん、地域や学校の状況、今本当に何が求められているのか、時代を見据えて課題を的確に把握しなくてはならないと思います。リーダーシップを発揮し、職員の意欲を引き出すこと、そして、関係機関との連絡、折衝を適切に行い、学校運営を行うことができる資質を持つすぐれた人材を確保することが重要です。
 学校教育法施行規則が改正されたことによって、平成十二年四月一日より校長の資格要件が緩和され、教員出身でない者も、公立学校の校長への任用が可能となりました。平成十七年四月一日現在、教員出身でない者の公立学校長の任用実績の総数は、四十一都道府県市で百十六名となっており、うち三十八都道府県市で百名が民間人等となっています。
 民間人校長導入から五年が経過いたしました。都立学校における民間人校長の導入の成果について伺います。

○中村教育長 都教育委員会は、これまで四名の民間人を都立高校の校長に登用したところでございます。
 その成果でございますが、学校の現状をきめ細かく分析し、明確な数値目標を掲げた学校経営の確立、企業人として培った幅広い人脈を活用したキャリア教育の推進、新たなビジネス教育への生徒、保護者等のニーズにこたえるための教育活動の展開など、民間で培った経営手腕と従来にない発想によりまして学校経営を推進してきております。
 これらの成果につきましては、他の都立学校にも大きな影響を与えておりまして、都立学校全体の活性化に寄与したと考えております。

○野上委員 都立学校全体の活性化に寄与したというふうにご答弁いただきましたが、やはり私が聞いたところでは、尾道市立小学校校長の百ます計算で有名な陰山英男氏の活躍が、本当に全国的にも有名です。この民間人校長を登用することによって、その学校自体が注目され、それまでいた教員や生徒はもちろん、ひいては地域社会、教育関係機関、一見対立関係にあるように見えた民間の塾にまで活性化がされたなど、多くのよい相乗効果をもたらしたと報告されています。
 経営手腕に着目した校長公募・任用は、今や全国四十一都道府県市で延べ百十六人、そのうち都内の小中学校の校長はたった二人です。
 そこで、小中学校への民間人校長登用について伺います。

○中村教育長 小中学校への民間人校長の登用につきましては、義務教育を担う小中学校の設置者であります区市町村教育委員会が、まず配置の必要性や効果、配置予定校や採用候補者等を判断しまして、その上で、任命権者である東京都教育委員会に申請することとしております。
 都教育委員会は、区市町村教育委員会の申請内容及び採用候補者の公立学校長としての資質、能力等を総合的に判断した上で、採用の可否を決定しております。
 今後とも、区市町村教育委員会から申請がございました場合は、適切に対応してまいります。

○野上委員 区市町村委員会から申請があった場合というふうにご答弁いただきましたが、教育界の内外から、経営手腕を持った意欲と能力のある人をやはり登用すれば、学校現場はがらっと変わるはずです。民間人校長について、今後も継続して採用する計画があるのかどうか、ご答弁をお願いいたします。

○中村教育長 都教育委員会は、平成十二年度からの民間人校長導入後、学校におけるマネジメントサイクルの仕組みや主幹制度の導入、教員の異動要綱の改正等、さまざまな改革を進め、校長のリーダーシップの確立や組織的な学校経営の定着を図ってまいりました。
 こうした関連施策との整合性を踏まえつつ、民間人校長の導入効果につきましてさらに検証を行い、その結果を踏まえて、今後の民間人校長の登用について検討してまいります。

○野上委員 文科省は既に、さまざまな経験を持つ民間人を学校教育の現場に登用するため、校長職に認めていた資格要件の緩和を、教頭についても適用することを決めました。この三月に学校教育法の施行規則を改正し、この春から導入する方針です。
 また、既に埼玉県の教育局では、二〇〇四年に、県内の公立小学校に副校長職を設け、民間人を登用する方針を固めています。校長以外の学校幹部で民間人を任用する制度の導入を決めています。
 校長を補佐し、地域との連絡役になっている教頭は、どうしても教師経験が長いため、学校寄りの立場になる傾向が強いといいます。民間人の目で校長を補佐し、そして学校と家庭、地域とのパイプ役を務めていただく。教職員としがらみのない民間人を学校幹部とすることで、学校の閉鎖的な体質を改善し、学校を地域の拠点と位置づけ、地域との一体感を強めることで、学校の再生や地域再生につなげる大きな試みであると思います。
 今後、都においても、こうした点を踏まえて、まずは都における民間人校長登用の総括を行い、今後に向けて、校長及び副校長への民間人の登用を積極的に進めていかれるよう要望いたします。
 また、民間人の力を人手が足りない学校現場に活用するという点で、現状、学校の教員にはなっていないが、教員免許を保有している人たちの力をもっと活用する必要があると思います。人材活用という点で、課題の一つであるといえます。
 教員免許を取得しているということは、教育に関して一定の資質、能力を持っていることであり、このような人たちを学校の教育活動に活用すれば、学校の教育活動の活性化に有効であると考えます。ボランティアとして学校にかかわっていただきたい、そして協力したいという人も少なくありません。
 現在、学校でのボランティア、補助教員は、各市区町村、各教育委員会でばらばらに情報を発信しています。東京都として、各学校や区市町村教育委員会と連携して、ボランティアを必要としている学校等に関する情報を一元的にする必要があると考えます。都教委のホームページ等に掲載するなどにより、ボランティアの人たちへの情報提供システムや、そして、既にイギリスで行われているような登録制度の教員の人材バンクを構築していただくよう要望いたしまして、次の質問に移ります。
 次に、防犯対策について、中でも子どもの安全を確保するまちづくりについて伺います。
 一昨日の我が会派の柿沢理事の総括質疑でも述べましたとおり、子どもの安全を守るには、防犯カメラや非常通報装置の設置などのハード面だけでは不十分で、むしろ教職員の意識向上を含めた学校の管理運営、学校と保護者、地域の関係機関・団体との協力体制など、ソフトの面からの取り組みが重要であると考えます。
 都は、子どもの安全を守る上で、ソフト面の施策としてどのような取り組みをしているのか、伺います。

○舟本青少年・治安対策本部長 昨年十二月、都は、子どもの安全確保のための緊急対策を取りまとめました。
 この中で、ソフト面の施策としては、地域全体で子どもを犯罪から守るという観点から、住民が保護者とともに通学路などをパトロールする子ども安全ボランティア事業の実施、子どもみずからが犯罪から身を守る力を高めるために、地域安全マップの作成を学校などで行うこと、警察官などによるセーフティー教室をさらに充実することなどであります。

○野上委員 地域安全マップづくりについては、かなり力を入れて取り組んでいることがわかりました。
 しかし、実際に現場の教員によれば、現状、一校に一教員が講習を受けて、それをまた同僚の教員に普及しつつ、実際に生徒たちと町を歩き、改善策を考えながら地域安全マップをつくっていくのは、かなり根気の要る仕事だと聞いています。教員だけでできるものではなく、地域の方々との連携も必要です。日々の仕事の片手間では、子どもたちにとって本当に効果的なものになるかどうかは疑問です。
 平成十六年度、東京都における教員免許授与件数は三万五千七百九十二人、都内で教育学を専修している学生は、単純に計算しても十万人以上はいると考えられます。
 そこで、ぜひ教員志望者などの大学生を地域安全マップづくりの指導者として活用できないでしょうか。また、こうした人材確保のための広報の必要性をどう認識しているか伺います。

○舟本青少年・治安対策本部長 地域安全マップづくりは、子どもたちが幾つかのグループに分かれて町を歩きますので、学校の先生を初め多くの指導者が必要となります。
 このため、人材を確保するため、臨時的任用教員を希望する人にも指導者養成講座への参加を呼びかけ、学校、児童館等への指導者として派遣をしていただいております。これからも指導者の数をふやす必要がありますので、大学生も含め、養成講座の拡大に努めていきます。
 また、インターネットも活用した人材確保の広報を幅広く実施してまいります。

○野上委員 非常に前向きなご答弁いただきまして、ありがとうございます。新しい取り組みに本当に期待しております。
 さて、一九九八年、イギリスでは、ブレア政権にて、犯罪及び秩序違反法が制定されました。これは、割れ窓理論を法律化したものといわれています。この中では、地方自治体があらゆる施策を行うに当たって、治安上の配慮がなされなければならないと規定したものです。
 学校や公園を設置する際にも、フェンス、防犯灯、警報器を備えて、被害を受けそうな対象物の防備を強化して、決してそこにアクセスさせないようにする。あるいは、建物や町並みの設計を工夫して、住民が意識しなくても不審な者が自然と目に入ってしまうような構造をつくり出す。あるいは領域性を確保する。学校があっても、ここは外来者が歩く場所、ここは子どもたちが遊ぶ場所ときちんとすみ分けを促すことです。物理的、心理的なバリアによって領域性が高められた場所では、標的への接近をちゅうちょする、断念する可能性が犯罪者にとっては高いといえます。犯罪者を締め出す、あきらめさせるということができる構造です。
 建物や町並みの設計により犯罪を予防する点では、日本の伝統的な市街地、例えば明治より前の江戸の町などでは、非常にすぐれた設計によってつくられた町であったと考えられます。犯罪予防という点では、個々の家の防備は本当に弱いですが、コミュニティは小さく区画されていて住民同士の交流が深まり、そのため、不審な者の行動は自然と住民の目につき、さらには、その深い交流のあるコミュニティが自身で犯罪予防の活動をも組織してきました。これこそが防犯環境設計です。
 今後、既存施設について改修や新規施設整備に当たって、このような防犯設計の視点を盛り込むことが必要と考えますが、その具体化に当たって区市町村に働きかけるべきだと思います。都はどのような努力をしているのか伺います。

○舟本青少年・治安対策本部長 都は、条例に基づきまして、道路、公園、駐車場などについて、防犯性の高い環境整備を促進するため、防犯に配慮した構造、設備等に関する指針を定めています。
 また、都は平成十五年に、安全・安心まちづくりを推進するため、区市町村、町会、自治会など、さまざまな地域団体等で構成する安全・安心まちづくり協議会を設置しております。この協議会の場で区市町村に働きかけることを初め、さまざまな形で区市町村とも連携をし、安全・安心まちづくりの具体化を推進しております。

○野上委員 区市町村とともに安全・安心のまちづくりを推進していくことというふうにご答弁いただきましたが、区市町村にある公園の防犯対策、あるいは公共施設である公園の防犯の対策について具体的に伺わせていただきたいと思います。
 特に幼児や高齢者などが日常的に利用し、強く防犯対策が求められるものとして、公園が真っ先に挙げられると思います。都市に潤いを与え、利用者が快適に憩い休息できるよう、多くの樹木が植えられています。しかし、一方で、樹木は成長に従い、物理的に周囲からの視線が遮られたり、園内灯の明かりが遮られるなど、防犯への配慮という点ではきめ細やかな対策が必要となります。
 都立公園においては、管理責任者である都建設局が適切な対応をとってきたことは承知しています。
 都は平成十五年十月一日、東京都安全・安心まちづくり条例を施行し、公園等に対する指針も定めておりますが、都立公園での具体的な対応を伺います。

○岩永建設局長 東京都安全・安心まちづくり条例の施行に当たり、平成十五年、都立公園におきまして、公園内の見通しや照明の明るさなど八項目について防犯上の安全点検を行いました。
 その結果を踏まえまして、四十六公園で直ちに樹木の剪定などを行い、公園内の死角を解消するとともに、園路灯の改修やトイレの改築に着手し、順次整備してまいりました。点検結果に基づくこれら防犯対策は、平成十八年度には完了する予定でございます。
 今後とも、日々の巡回や三カ月ごとの夜間点検などを行い、防犯に配慮した安全で安心な公園づくりに努めてまいります。

○野上委員 しかし、子どもや高齢者などが日常的に利用しているのは、やはり区市町村が整備、管理する身近な公園が多いです。公園は犯罪に遭う危険性が高い場所なので、その領域性と監視性というものを高めることが望まれます。
 イギリスやアメリカに行かれた方でしたらすぐにわかると思いますが、イギリスやアメリカの公園と東京の公園とでは大きな違いがあります。
 例えば、ニューヨーク・ブルックリン及びマンハッタンの公園では、そのほとんどが鉄さくによって公園を囲まれています。地域住民の集会所や、サッカーやバスケットボールができる青少年向けの施設を配置することによって、多くの人の目が公園に注がれるようになっている公園も少なくありません。公園と外周部との境界を明確にし、かつ外からの見通しがよい、周囲からの監視性の高い公園を実現しています。
 一方、都の公園は、東京の中の公園はどうでしょうか。外からは見えにくく、どこからでも入ることができる、どこへでも逃げられる構造になっている公園も多く見られます。
 これからは、区市町村がこの条例や指針を踏まえた身近な公園づくりを進めていることに、都として連携し、援助することが必要であると考えます。区市町村と都が連携して取り組んでいただきたいと思いますが、建設局は個別具体的にどのように取り組むのか伺います。

○岩永建設局長 都は、区市町村の公園整備につきまして、国庫補助申請など、あらゆる機会をとらえ、技術的な指導や助言を行っております。
 平成十七年度には、二十二区市の三十八公園で、植裁、遊具、照明及びトイレの配置などについて、防犯に配慮した公園づくりの観点から助言を行ってまいりました。
 今後とも、各種の公園事業説明会などの場を活用いたしまして、安全で安心な公園づくりについて区市町村を支援してまいります。

○野上委員 現実的に、国庫補助事業の申請時の機会をとらえての防犯上の指導ということになるかと思います。条例が施行される前の平成十四年度以前につくられた六千五百カ所余りの既存の公園についても、防犯上あるいは構造上、問題があるか否か現状把握をされ、都が率先して改善を促す働きをしていただきたいと思います。
 治安対策と犯罪防止は、都が青少年・治安対策本部までつくって取り組んでいる課題であります。小中学校や地域の公園の設置者は区市町村であるから、都区の役割分担はある、基本的にはその施設の安全は区市町村にゆだねていればよい、そんなものではないはずです。先ほど述べたブレア政権の犯罪及び秩序違反法のように、学校や公共施設や、地方自治体のあらゆる施策に、犯罪防止への配慮をビルトインすることが重要と考えます。
 子どもたちの安全は、地域安全マップだけで保たれるものではありません。かといって、治安に配慮した施設をつくれば、それで事足りるわけでもありません。都のあらゆる施策にかかわる総合的な取り組みが、今、必要であると考えます。その観点で、子どもたちの安全に取り組む都のトップリーダー、石原知事の決意を伺わせてください。

○石原知事 昨今、子どもに関する痛ましい事件が頻発しておりまして、極めて憂慮すべき状況であると思います。
 子どもを犯罪から守るためには、保護者はもとより、学校、警察、行政の取り組みとともに、地域の人たちの力が不可欠であります。
 子どもは、人間社会の未来であり、希望の象徴であります。
 今後とも、都は、子どもの安全を断固確保するため、地域全体が協調して子どもを守る取り組みを強力に支援してまいります。

○野上委員 続きまして、スポーツ施設の有効活用について伺います。
 都民が多様なスポーツ活動を行っていくには、公立のスポーツ施設を初めとする活動施設の確保が重要と考えます。
 現在、全日本軟式野球連盟に登録されている野球チームは都内に三千チーム、少年部、学童部を合わせると四千五百チームにも上ります。特に利用者が集中する土曜日、日曜日のグラウンドの確保が非常に困難な状況であるという話を伺っています。
 教育庁が所管する土日のスポーツ施設の利用状況はどうなっているのか伺います。

○中村教育長 教育庁所管の都立の体育施設四館は、全国大会などの大規模な試合会場として利用されておりまして、土曜日、日曜日の稼働率はほぼ一〇〇%でございます。
 また、教育庁が所管します野球場は駒沢オリンピック公園総合運動場だけでありまして、軟式、硬式の両球場の稼働率もほぼ一〇〇%でございます。

○野上委員 都の施設はほとんど一〇〇%、満杯ですね。
 ところで、都内には、大学や企業が保有しているグラウンドや体育館等が多数あります。例えば平成十一年、東京都では、練馬区の石神井公園計画内にあった企業所有の野球場を買い取り、公園を拡張しています。このように、企業が保有するものでも十分な管理もなされておらず、余り活用されていない施設も見受けられます。都区の役割分担もあるかとは思いますが、こうしたスポーツ施設についてはぜひ積極的に買い取り、公園やスポーツ施設の充実をしてほしいと思っています。
 しかし、都財政の状況を考えると、やはりスポーツ施設、グラウンド等の新規設置、あるいは購入は困難であることは認識しております。ついては、都民や競技者のために、都が企業や大学に協力を要請し、都民が施設を利用できるように働きかけると同時に、地域で活躍できる指導者の確保を進めて、一層のスポーツの振興を図ることが必要だと考えますが、所見を伺います。

○中村教育長 平成十六年度に実施しました都教育委員会の調査によりますと、都内にある企業のスポーツ施設の都民への開放は約三割、大学では約五割で行われております。こうした施設開放は、地域住民のために、地元区市町村の働きかけによりまして実現しているところでございます。
 このような区市町村を支援するため、都教育委員会はこれまでも、企業や大学に対する体育施設の開放と同時に、指導者の派遣についても協力要請を行ってきたところでございます。今後も引き続き、こうした協力要請を行ってまいります。

○野上委員 都民が利用したいスポーツ施設を手軽に探すには、教育庁所管分だけではなく、他局分を含めた都立スポーツ施設のほかに、区市町村の施設をも対象にした公立スポーツ施設に関する情報を一元的に管理すべきであると考えます。
 それによって、一元化した情報提供を行い、都民のニーズに応じて、どのようなスポーツ施設が利用可能か、ワンストップでわかる仕組みづくりが必要だと思いますが、いかがでしょうか。

○中村教育長 都民サービスの向上という観点から、体育施設の情報を一元化して提供することは有意義であると考えております。
 現在、国公立の体育施設の所在や問い合わせ先、施設種目などの一覧表を都教育委員会のホームページで掲載しているところでございます。平成十八年度中には、この一覧表に区市町村別や種目別などの検索機能を付加させるなど、都民の利便性の向上に努めてまいります。

○野上委員 本当に前向きなご答弁いただきまして、ありがとうございます。
 スポーツ活動は、都民の生涯にわたる心身の健全な発達を促し、日常生活を豊かにするとともに、子どもたちの健全育成にも重要な役割を担っています。そのための環境づくりは、成熟都市東京としての重要な課題の一つではないでしょうか。
 オリンピックに向けて、都民がより自由にスポーツに親しめる環境づくりに都が率先して役割を果たすべきと考えますが、見解を伺います。

○中村教育長 スポーツは、健康や体力づくりだけでなく、青少年の健全育成や都民の生きがいづくり、さらにはフェアプレーの精神を身につけるなど、豊かな人間性の涵養に資するものでございます。
 このため、都教育委員会は、平成十四年に東京都スポーツ振興基本計画を策定し、都民のだれもがスポーツに親しむことができるよう、地域スポーツクラブの育成や競技レベルに応じましたスポーツ大会の開催などの事業を実施しております。
 今後は、東京マラソンや国体の開催、オリンピック招致など、都民のスポーツへの関心が高まるこの機会をとらえまして、区市町村や地区体育協会とも連携いたしまして、ジュニア期を含めたスポーツ人口の拡大に取り組んでまいります。

○大塚副委員長 野上ゆきえ委員の発言は終わりました。(拍手)
 この際、議事の都合により、おおむね三十分間休憩いたします。
   午後六時十二分休憩

   午後六時四十六分開議

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