東京都議会予算特別委員会速記録第四号

○松原委員長 村上英子委員の発言を許します。
   〔委員長退席、新藤副委員長着席〕

○村上委員 最初に、財政運営について伺います。
 平成十八年度予算は、都税収入が前年度比五・九%の大幅な伸びを見込んでおり、一般会計の予算規模は五年ぶりに六兆円台を回復するとのことでございます。しかしその一方、都の政策的経費である一般歳出は、五年ぶりに増加に転じたものの二・〇%の増加に抑制し、あわせて隠れ借金の圧縮に努めるなど、財政再建に軸足を残した手がたい予算となっております。
 私が今回、財政再建の進展に関して特に印象的だと感じたのは、十八年度末には基金残高が隠れ借金の残高を上回る見込みであるということです。まさに都財政の立ち直りを象徴する画期的な出来事ではないでしょうか。
 平成元年のピーク時には一兆円を超えた基金残高が、石原知事が就任をした十一年度末には一千億円を割り込むなど、底をついた状況まで落ち込んでおりました。それが十八年度末には六千億円を超える水準にまで回復する見込みであるとのことであり、ようやく一息つけるところまで来たのではないかと思います。
 我が都議会自由民主党としても、これまでの財政再建に向けた努力が報われ、非常に喜ばしいことだと感じております。
 確かに、税収の増を基金残高の確保や隠れ借金の返済に充てた堅実さは評価できます。しかし一方では、せっかくの増収分がすぐに都民サービスの形で施策としてあらわれてこないことに対して、不満を主張する者がいるのも事実です。今回の増収分を活用して、都政が直面する課題に着実に対応しながらも、財政再建に力を尽くした点については、都民に十分な理解を得ておくことが必要です。特に、基金積み立てのような財政運営上の重要なポイントについては、都民にわかりやすく説明しておかなければならないと思います。
 そこで、基金残高を確保することが都の財政運営においてどのような重要性を持っているのか、改めてお伺いいたします。

○谷川財務局長 都民に対しまして安定的な行政サービスを提供するには、その基盤となる財源も安定的に確保する必要がございます。しかしながら、歳入の中心的存在であります都税収入は、企業収益の影響を受けやすい法人二税の割合が高く、過去にも単年度で四千億円規模の増減が生じるなど、極めて不安定な動きを繰り返してまいりました。
 地方交付税の不交付団体である東京都が安定した財政運営を行うためには、都税の増収時には積極的に基金への積み立てを行い、都税の減収時や突発的な財政需要が生じた場合には基金を取り崩して財源に充てるなど、基金を有効に活用することが不可欠でございます。
 今後、長期的には税収の大幅な増加が期待できない中で、大規模施設の更新経費など財政需要が増加することを勘案いたしますと、基金の重要性は今後ますます高まっていくものと考えております。

○村上委員 答弁にあったように、税収の不安定性をカバーするためにも基金に蓄えるということはわかりました。しかし、確保するべきものは確保するというしっかりとした考え方で対応していきませんと、納税者である都民に十分な納得はいただけないのではないでしょうか。
 そこで、このように貴重な財源である都税を安定的に確保していくための取り組みについて伺います。
 平成十八年度、都税の当初予算は四兆五千億円、十七年度当初予算と比較してみますと、二千五百億円も伸びているようです。最近の都税収入は好調に推移しており、好調の原因は、都税収入の大宗を占める法人二税が企業収益の回復から増収になっているのではないでしょうか。
 都税の過去十年間の滞納額や徴収率を見てみますと、バブル崩壊後、徴収率が九〇・二%まで落ち込み、滞納額も平成七年当時、二千五百億円近くにまで膨らんでいたことが記載されております。それが十六年度決算では、徴収率は九六・八%まで向上して、滞納額は四分の一以下の五百六十九億円に圧縮しております。
 確かに十七年度、十八年度予算では、企業収益の回復によるものも大きいと思います。しかし私は、課税や徴収に至るこれまでの主税局職員の地道で並々ならぬ努力があってこそ税収が確保されてきた側面もあることを忘れてはならない、このように思います。
 そこで、お伺いいたしますが、この間、課税、徴収の両面にわたってどのような努力をされたのか、お伺いをいたします。

○菅原主税局長 お答え申し上げます。
 歳入の約七割を占めます都税収入の確保は、唯一の歳入所管局でございます主税局の大事な使命であります。このため、目標による管理手法を導入するなど、全力を挙げまして取り組んでまいりました。
 課税部門におきましては、不正軽油の脱税防止に向けまして、全国自治体の先頭に立ち、その根絶に力を入れてまいりました。
 徴収部門におきましても、自動車税や個人都民税につきまして専担組織を設置、あるいは区市町村に対する支援も実施してまいりました。また、全国に先駆けましてインターネット公売も導入をいたしました。これらの取り組みをもちまして、徴収率の向上と滞納額圧縮が図られてきたものと考えております。
 さらに、このような取り組みに加えまして、納期内納税を呼びかける駅頭などでのキャンペーンもまた積極的に展開をしてまいりました。

○村上委員 都税収入が四兆五千億円でありますから、ワンポイントアップをいたしますと四百五十億円に相当することになり、徴収率六・六%の伸びは実に約三千億円もの税収に相当することになります。主税局の地道な努力に敬意を表するものであります。こうした努力、下支えがあって初めて四兆五千億円もの税収が確保でき、安心・安全な都民生活の実現など、切実な都民ニーズにこたえられる予算づくりにつながってきているものと存じます。
 税というものは社会のインフラです。納税秩序の維持、正直者がばかを見ない社会の実現は、政治や行政の責務であります。悪質な納税者、脱税者に対する厳しい対応をすると同時に、一人一人の納税者の生活実態に十分気を配ったきめ細かな対応が求められます。
 また、円滑な税務行政につきましては、都民の皆さんのご理解、ご協力のもとで、納期内に納税していただくことが大事であり、税に関する情報提供やPRなどの取り組みもまた必要であります。
 ただいま納税キャンペーンの話もありましたが、このキャンペーンに対しては今後どのように取り組んでいくのか、お伺いをいたします。

○菅原主税局長 お答え申し上げます。
 納期内納税を呼びかけますキャンペーンは、平成十三年度から、自動車税滞納一掃作戦の中で実施してまいりました。
 今年度は、職員に税の重みをしっかりと受けとめてもらうため、研修の一環といたしまして、六百名を超える新規採用職員全員を初めて参加させまして、実施したところであります。
 来年度は、これを全税目に拡大すると同時に、都内区市町村とも連携をいたしまして実施するべく、現在、関係部署と調整中でございます。

○村上委員 税を知る週間に、我が渋谷では、納税貯蓄組合の連合会が、作文やポスターを小中学校にお願いをして表彰などを実施しております。子どものころから税の大切さを教えていくということは、大変必要なことと思いますので、ぜひ今後は都も応援をしてくださるように、要望をさせていただきます。
 次に、二〇一六年に開催をするオリンピック並びにパラリンピックの招致を成功させたいという立場から、意見を述べさせていただきます。
 我が党の山加委員から、さきの一般質問で、二〇一六年の東京オリンピック招致に伴うパラリンピックの位置づけについて質問されました。知事からは、東京パラリンピックの招致に当たっては、競技会場や選手村などのバリアフリーを徹底するとともに、大会を契機に、障害者スポーツの振興を図る旨の力強いご答弁をいただきました。バリアフリーを徹底し、ノーマライゼーション社会を実現するためには、パラリンピックの招致が契機になると期待するものです。
 現在、トリノでパラリンピックが開催されておりますが、日本選手団の活躍が伝えられ、大変うれしく思っております。障害がある方はもとより、健常者にも夢と感動を与えてくれるものと確信いたします。
 生涯スポーツの推進は、私の政策方針の一つでもありますが、パラリンピックを契機に、世代交流はもとより、スポーツを通じて、障害のある方と健常者との交流の実現をぜひ目指していただきたいと思います。
 私は現在、東京都知的障害者サッカー協会の会長をしておりますが、練習にしても、試合にあっても、障害者は真剣に取り組んでおり、効果は抜群です。
 本予算には、国体及びオリンピックに向けてといってもよい、ジュニア選手の育成強化対策としての予算が計上されております。ぜひ障害者スポーツ振興にも力を入れていっていただきたいと強く要望をするものです。
 先般、東京オリンピック主要関係施設検討候補地図について説明を受けましたが、都内にも多くの施設があり、知事のおっしゃるコンパクトの意味がよくわかりました。
 しかし、候補となる都内の施設を拝見いたしますと、老朽化が懸念される施設も見受けられます。整備をする必要があるのではないかと思います。過去のオリンピックにあっては、大会後の施設の管理運営には苦慮していると伺っております。
 そこで、オリンピック施設の整備に当たりましては、大会後の利用をも十分に考慮するべきと考えますが、ご所見を伺います。

○山口知事本局長 オリンピック終了後における関係施設の利用を考慮することは、開催都市選考の大きな要素にもなっているばかりでなく、過大投資を避ける上でも極めて重要であります。
 そこで、施設の整備に当たりましては、大会終了後における利用の方法や維持管理等を十分に勘案して、規模や設備等を検討してまいります。

○村上委員 オリンピック競技会場の施設整備につきましては、国際オリンピック委員会や国際競技連盟の求める条件があると聞いております。競技によっては、一万人以上もの観客席が必要となるようでありますが、候補となっている既存施設では対応できないのでしょうか、お伺いいたします。

○山口知事本局長 二〇一六年大会の競技施設の条件は、現在、国際競技連盟から提示されておりませんが、アテネ大会では、バスケットボール、体操、水泳などの競技会場において、一万人以上もの観客席を用意したと聞いております。
 候補として説明しました既存施設には、競技によって観客席が不足する場合が生じますので、施設の後利用等を考慮して、仮設スタンドの併設も含めて検討してまいります。

○村上委員 また、観客席の仮設化というお話ですけれども、仮設での対応は観客席に限ってのことなのかどうか、お伺いいたします。

○山口知事本局長 施設の整備に当たりましては、観客席に限らず、費用対効果などの観点から、後利用の予定の立たない施設や原状回復が求められる会場につきまして、撤去を前提とした競技場自体の仮設も検討してまいります。
 なお、アテネ大会におきましては、野球や射撃の会場は仮設で設営されまして、大会終了後は撤去されたと聞いております。

○村上委員 仮設スタンドや仮設施設での有効利用以外にありましても、負の遺産を残さない方策はないのでしょうか、お伺いいたします。

○山口知事本局長 後年度負担が過大とならないような--施設等を残さないためには、仮設での対応のほかに、本来目的とは異なる施設の使い方も必要と考えております。
 現在、大規模空間を有する東京ビッグサイトや舞台効果が期待できる東京国際フォーラムなどの活用について検討しているところであります。

○村上委員 オリンピックを招致するためには、都民の賛同を得ることが何よりも重要であり、必要であります。まして当該地域の住民の協力、支援が欠かせないと思います。
 渋谷区にありましては、三月八日の都議会での東京オリンピック招致決議を受けて、町会や商店街、NPOなどの組織が、実現のため協議会の立ち上げが進められております。
 そこで、区長会、市長会、そして議長会などを通じて、あらゆる団体への結集が大切だと思います。オリンピック招致機運の盛り上がりについて、今後の呼びかけも含めて、知事の思いをお伺いさせていただきます。

○石原知事 オリンピック招致機運の盛り上げに関しましては、継続的かつ幅の広い取り組みが必要であると思います。商店街を初めとする地域からの取り組みは、都民、国民に招致に向けた大きな輪を広げるきっかけとなるものでありまして、大変ありがたいと思います。
 来年二月から毎年開催する東京大マラソン祭りは、多くの方にスポーツのすばらしさを実感してもらうとともに、沿道の地域色豊かな応援などがお祭り気分を高揚させ、招致機運の盛り上げに大きな役割を果たしていくものと期待しております。
 今後とも、さまざまな機会をとらえて、多くの都民、国民の参加を得まして機運を盛り上げ、オリンピックの招致を実現していきたいと思っております。

○村上委員 知事の大変心強いご答弁を聞いて安心をいたしました。ぜひ一緒に頑張りたいと思います。
 次に、危機管理対策についてお伺いいたします。
 昨年八月、アメリカ南部を襲った大型のハリケーン・カトリーナは、死者一千三百人、被害総額約十四兆円という、アメリカ史上最悪の自然災害となりました。
 私は先月、東京都議会より、田代団長、ともとし副団長を中心に、都議会自民党、公明党の調査団の一員として、また、警視庁、消防庁の災害対策担当者、さらには都の危機管理担当者とご一緒にアメリカを訪れ、ハリケーンによる被害状況を中心に、アメリカの災害対応や危機管理対策の現状を調査してまいりました。
 この調査の結果、今回のハリケーンでは、高潮による堤防決壊に加え、避難命令のおくれや救出救助体制のおくれ、情報連絡体制の不備など、人的要因によっても被害が拡大したことが明らかとなりました。
 しかも、災害発生から既に六カ月がたちますが、いまだに行方不明者が多数のままであり、被害が大きかったニューオーリンズ市では、つい先日、屋根裏から、亡くなられた方が発見されたとの報道がありました。いまだに復興の見通しが立たず、六割近くの住民が自宅に戻れない状況となっております。
 今回のハリケーンは、地球温暖化による気象変動によるものといわれておりますが、想定外の水害発生のリスクは、この東京においても例外ではありません。事実、昨年九月、東京都心でも、これまでの想定をはるかに超える集中豪雨によりまして、広範囲に浸水被害が発生しております。
 このハリケーンによる被害を教訓として真剣に受けとめ、アメリカという遠く離れた国の問題としてとらえるのではなく、都においてもあらゆる角度から、風水害の防止策、対応策を検証すべきという観点からお伺いをいたします。
 最初に、河川についてお伺いいたします。
 ハリケーン・カトリーナの規模は、昭和三十四年の伊勢湾台風と同程度といわれておりますが、これくらいの台風が東京を襲わないとは限りません。東京にも地盤の低い東部低地帯があります。高潮災害のすさまじさを目の当たりにした私といたしましては、不安を感じざるを得ないのであります。
 東京の河川における高潮防御施設は、カトリーナのような台風に対しても安全なのでしょうか、お伺いいたします。

○岩永建設局長 都は、伊勢湾台風と同規模の台風が東京を襲った場合の高潮に対処できるよう、防潮堤や水門などの整備を進めてきておりまして、東部低地帯の河川では、ほぼ完成しております。高潮に対する安全性は確保されていると考えております。
 これまでの事例で申し上げますと、昭和二十四年のキティ台風では、東京で浸水家屋約十四万戸と、戦後最大の高潮被害を引き起こしておりますが、これと同規模の高潮が平成十三年、台風十五号により発生しておりますけれども、被害は生じておりません。
 なお、カトリーナとの比較で申し上げますと、この伊勢湾台風は、お話にもありましたように、最低気圧、風速等ほぼ似通った状況でございまして、先ほどの伊勢湾台風と同規模ということで、安全性は確保されている、このように考えております。

○村上委員 これまで進めてきた高潮対策事業によって安全であるということがよくわかりました。安心をいたしました。
 しかし、災害は思いがけないときに起こります。一昨年の新潟中越地震は、台風の直後に起こりました。また、逆も考えられるわけです。
 そこで、河川における高潮防御施設の耐震対策について、今後のお取り組みをお伺いいたします。

○岩永建設局長 都は、都民が安心して暮らせるよう、隅田川や江東内部河川など延長約百二十キロを対象に、堤防や水門の耐震補強を進めてまいりました。特に阪神・淡路大震災を契機といたしまして、整備が急がれる区間を平成九年度から計画的に進めておりまして、旧江戸川につきましては十八年度までに、また、荒川と並行する中川の下流部につきましては平成二十年度までに完成させます。
 今後とも、都民の生命と財産を守るため、耐震対策を着実に進めてまいります。

○村上委員 次に、海岸における高潮や津波対策についてお伺いをいたします。
 東京は、ニューオーリンズと異なり、直接海に面しております。一昨年のインド洋での津波被害の教訓も踏まえると、高潮対策とあわせて、津波に対する安全性の確保も重要なことです。このため、海岸や運河沿いの護岸や水門などを盤石なものにしておく必要があると思います。
 そこでまず、東京港における護岸や水門などの施設についても安全策をとっているのかどうか、お伺いをいたします。

○津島港湾局長 東京港におきましても、伊勢湾台風級の高潮に対処できますよう、昭和三十六年から、風向きや地形等を考慮いたしまして、高さ四・六メートルから八メートルの防潮堤を、総延長約四十三キロにわたりまして整備してまいりました。あわせて十九カ所の水門や四カ所の排水ポンプ場なども整備し、高潮に対する安全性を確保しております。
 一方、東京港で想定される津波の高さは最大一・二メートルとされておりまして、防潮堤の高さは津波の想定高さを上回っておりまして、十分な安全性が確保されていると考えております。
 しかし、整備後四十年以上経過している施設や地盤の液状化のおそれのある箇所も少なからず存在することから、さらなる安全性向上のためには、適切な老朽化対策や耐震対策の一層の推進が必要であると認識しております。

○村上委員 東京港では、これまで防潮堤や水門などの高潮対策施設を鋭意整備してきていることはわかりましたが、ただいまのご答弁にありましたように、昭和三十六年の整備開始から既に四十年以上が経過し、施設の老朽化対策や地震に対する安全性の確保も重要であると思います。
 昨年の各会計決算特別委員会において、我が党の串田委員は、高潮対策に積極的に取り組むべきとの質問をいたし、これに対して、今後十年間程度の具体的な目標を定めた事業実施計画の検討を始めたとのご答弁がありましたが、安全は待ったなしです。
 ニューオーリンズの被災を教訓として、早急に事業計画を策定して、東京港における高潮などに対する安全性をより盤石なものにすべきと考えますが、ご所見をお願いいたします。

○津島港湾局長 高潮等に対する安全性をより盤石にするためには、水門などの経年劣化の著しい施設の改修や防潮堤などの耐震性の強化、さらには緊急時の危機管理体制の強化が急務となっております。
 このため、施設の老朽化対策や耐震対策のほか、水門監視システムの再構築などを盛り込んだ向こう十年間程度の緊急整備計画を策定し、早期整備に向け、重点的な取り組みを検討してまいります。
 国におきましても、今回のニューオーリンズの被災を教訓といたしまして、学識経験者等による高潮対策検討会が設置され、去る一月に、「ゼロメートル地帯の今後の高潮対策のあり方について」が提言されました。この機会をとらえまして、国に対して、予算の重点配分と補助制度の拡充などを積極的に働きかけてまいります。

○村上委員 ぜひ、我々の報告書も参考にしていただけたらありがたいと思います。
 東京港の高潮及び津波対策は非常に重要であり、計画的な更新や耐震対策を進めるため、緊急整備計画を一日も早く策定し、災害に対しても世界一安全な都市となることをご期待申し上げます。
 治水対策などのハード対策に加えて、災害時のソフト対策についてもお伺いをいたします。
 まず、被災者の救出手段についてです。
 今回のハリケーンでは、住宅などに取り残された多数の住民が、屋根から救助を求めるケースが多発いたしました。こうした場合の救出、救助には、ヘリコプターやボートによる救出が有効であると聞きました。
 そこで、区部にゼロメートル地帯を抱える都として、万が一の浸水被害に備え、救出手段となる資器材や装備などの確保や運用体制はどのようになっているのか、お伺いいたします。

○高橋総務局長 お話しの区部東部のゼロメートル地帯におきましては、浸水による被災者を救出、救助するために、警視庁及び東京消防庁は、救助用ボートを合計百八十三艇、重点的に配備をしております。また、ヘリコプターにつきましても、合計二十一機を保有し、日ごろから救出訓練等を行い、迅速な救助に備えております。
 さらに、水害発生時には、都の要請に基づきまして、自衛隊も資器材や装備を携行の上、出動する体制を整えております。
 これらの運用に当たりましては、都による警戒情報などの伝達と区市町村による住民の避難誘導、警察、消防、自衛隊による救助活動等を緊密に連携して行うことが重要でございます。
 今後とも、関係機関と連携を強化して、浸水による被害から迅速に救出、救助が行えるよう、体制を充実してまいります。

○村上委員 東京における水害のリスクにありましては、ゼロメートル地帯だけではありません。昨年九月四日の集中豪雨では、山の手地区において、河川や下水の逆流による都市型水害が発生しています。この水害では、大雨洪水警報が出てから短時間で河川の水位が一気に上昇して、住宅や建物などが浸水をいたしました。
 このような事態には、初動期における住民の自助、共助体制が重要となります。とりわけ地域の防災市民組織の取り組みが大きな力となります。
 しかし、取り組みが進んでいる自治体もあれば、おくれている自治体もあり、また、リーダー不足などの課題も抱えています。防災市民組織の弱体化は、地域のみならず東京の防災力に多大な影響を与えることになります。
 そこで、区市町村が行う防災市民組織の育成に対しどのような支援ができるのか、都のご見解を伺います。

○高橋総務局長 災害発生時の救出、救助やその後の復旧には、地域の防災市民組織の役割が欠かせません。しかし、ご指摘のように取り組みのおくれている区市町村もあり、こうした区市町村では、訓練やリーダー養成研修などが不足をしております。
 そのため都は、区市町村の成功事例を取りまとめ、関係部長会などを通じて紹介し、活用するよう働きかけてまいります。
 また、都がこれまで行ってきましたリーダー養成研修につきましても、より実践力を強化するため、研修カリキュラムを見直し、知識の付与にとどまらず、救急救命技術や資器材の使用方法などに加えまして、防災訓練におきましても、指揮命令のノウハウが学べるよう工夫をしてまいります。

○村上委員 次に、消防庁にお伺いをいたします。
 特別区の消防団の設置等に関する条例によりまして、知事の諮問機関として、各区に消防団運営委員会が設置されております。この運営委員会に対して、平成十六年七月に、震災などの大規模な災害時において、特殊技能を有する消防団員が効果的に活動するための方策はいかにあるべきかについて諮問が行われました。平成十七年六月末に答申をいただきました。
 そこで、この答申の概要についてお伺いいたします。

○関口消防総監 平成十七年六月末にいただきました答申の概要につきましては、重機操作資格、自動車運転資格、医療関係資格、その他消防活動の支援に活用できる資格等の特殊技能を有する消防団員を、団本部の指揮のもと、自己消防団区域はもとより、隣接消防団区域へ出場させるなど、広域的な活動を行わせるというものであります。

○村上委員 また、この答申を受けられて、東京消防庁では今後どのように取り組んでいくのか、お伺いいたします。

○関口消防総監 答申を受けまして、当庁では、各消防団における特殊技能を有する団員の把握を進めるとともに、団員の参集態勢を初め、現場への出場及び活動要領等について検討を行っております。
 なお、特殊技能を有する団員の出場に当たりましては、受け持ち区域内に被害がない分団、あるいは被害の極めて軽微な分団から出場させるよう考慮してまいります。

○村上委員 特別区の消防団員の数は、自営業者の減少や住民意識の変化などから、平成十三年をピークに、ここ数年団員数が減少し、平均年齢は上昇しております。災害は時、所を選びません。そこに住んでいる人が中心で、働いている人、あるいは大学生など学んでいる人も最近入団を認める方向になってきており、さらには、江戸川区の消防団では、元気なシニアの方が住民指導や広報活動に所属され、大変評価を受けているようです。
 そこで、特別区消防団の団員を確保するため、さらに入団促進を図っていただきますようお願い申し上げます。
 次に、地下鉄の安全対策について伺います。
 先月、アメリカを訪れた際に、ニューヨークの地下鉄の危機管理対策についても調査をいたしました。ニューヨークでは、九・一一のテロ以来、地下鉄に非常口をふやすなど、危機管理対策を一段と強化しておりました。
 また、日本国内においても十一年前に地下鉄サリン事件が起き、韓国の大邱市においては三年前に地下鉄車内でガソリンがまかれ、放火されるといった事件も起きております。
 地下鉄の駅でテロや火災などが発生した場合に備え、都営地下鉄では、お客様を安全に避難誘導するために、これまでどのような対策を行ってきているのか、お伺いいたします。

○松澤交通局長 都営地下鉄の運営に当たりまして、安全の確保は何よりも優先するものであり、ご指摘のテロや火災などの発生に備えてのお客様の避難誘導対策は、極めて重要であると認識しております。
 このため、現在、各駅の避難経路の安全性を高めるため、排煙設備の整備や二方向避難路の確保など、防災設備の整備を積極的に進めているところでございます。
 また、誘導灯の拡充や改札口付近に大型の避難経路図を設置するなど、お客様が迅速に避難できるよう、案内表示を充実してきております。
 さらに、避難誘導マニュアルを見直しまして、これに基づき、各駅での実践的訓練や警察、消防と連携した合同訓練を繰り返すなど、ハード、ソフト両面からの対策に、職員一丸となって取り組んできているところでございます。

○村上委員 交通局でも、これまでいろいろと対策を行ってきていることはわかりました。
 実は、ペンタゴンやニューヨークのビルやあるいは地下鉄では、暗やみになっても避難方向を示す、光る標識を見てまいりました。これは、床面か床面からすぐ上の壁につけられ、たとえ煙が充満しても、避難誘導に大変役立つものであると説明を受けました。
 日本では蓄光式避難方向明示物というそうですが、東京都でも、韓国の地下鉄火災を踏まえて火災予防条例を改正し、新たに義務づけたと聞いております。閉鎖的な空間である地下鉄においては、特に重要なものであると考えます。
 そこで、都営地下鉄でも蓄光式避難方向明示物を早期に整備するべきと思いますが、ご所見をお伺いいたします。

○松澤交通局長 ただいまお話のありました蓄光式避難方向明示物は、火災時に大量の煙が天井に滞留するなどにより誘導灯が見えなくなった場合に、暗やみに発光することで、お客様がホームから地上まで迅速に避難することに効果を発揮するものでございます。
 都内の地下駅については、改正された東京都火災予防条例によりまして、この設置が平成二十二年三月までに義務づけられております。
 交通局といたしましては、公営の地下鉄としての役割を十分踏まえまして、委員ご提案のように、お客様のさらなる安全の確保を目指しまして、いち早く設置に取り組むこととし、平成十八年度から計画的に整備を進めてまいります。

○村上委員 いいご答弁ありがとうございました。お答えを聞いて安心いたしました。今後ともお客様の安全のため、危機管理対策に努力していただきたいと思います。
 そこで、一点、強く要望をいたしておきたいのですが、地下鉄からの地上出入り口は基準があると思いますが、乗車利用者の利便と緊急避難時の安全・安心のためには、できるだけ多くの設置が必要と考えます。どうぞよろしくお願いいたします。
 これから新設する路線の駅出入り口については、その確保が大変困難となっておりますので、都有地の提供などを含めて、安全策を旨としたご尽力を賜りますようお願いを申し上げておきます。
 次に、首都高速道路の安全対策について何点かお伺いいたします。
 阪神・淡路大震災で高速道路がもろくも倒れたことは、震災後十一年経過した今でも鮮明に記憶に残っております。
 その後、東京都を初めとして、道路を管理する自治体や高速道路事業者が橋梁などの耐震対策を精力的に行ってきていることは十分承知をしております。
 しかし、先般公表された首都直下型地震による東京の被害想定の中間報告では、東京湾北部を震源としたマグニチュード七・三の地震が発生した場合、実に四千七百人もの死者が出るなど、甚大な被害が発生することを想定しています。
 この中で、首都高速道路、そして歩道橋などの高架道路の被害がどのくらい見込まれているのかは明らかになっておりません。万が一、高架道路が、そして歩道橋が崩れることになれば、道路利用者はもとより、沿道の住民にどれだけの被害が及ぶかは、阪神・淡路大震災の例を見れば想像にかたくないのであります。
 さらに、首都高の下の道路は、いずれも東京の幹線道路であり、避難や救助活動にも重大な支障が及ぶことになります。
 そこでお伺いいたしますが、阪神・淡路大震災以来、首都高速道路、そして歩道橋については、どのような耐震対策を進めているのか、お伺いいたします。

○岩永建設局長 首都高速道路株式会社では、平成七年、阪神・淡路大震災で高架橋が被害を受けたことを踏まえまして、直ちに耐震補強に着手いたしました。
 このうち、橋脚の耐震性向上のための緊急補強につきましては、平成十年度に完了いたしております。さらに、橋げたの落下を防止するための補強につきましては、現在約九九%終えておりまして、平成十八年度には完了する予定となっております。
 これらの補強の有効性は、新潟県中越地震における類似した橋梁の被災状況からも確認されておりまして、橋脚の倒壊や橋げたの落下などの重大な被害を防止できるものと考えております。
 また、歩道橋につきましては、阪神・淡路大震災の結果を見てみますと、けたが落下したという報告はありませんので、側面の階段等の一部ずれ等の被害は想定されますけれども、歩道橋そのものが落下するということは我々としては想定しておりません。

○村上委員 現在建設が急ピッチで進められております中央環状新宿線では、地上にできる高架道路の工事も同時に行われております。
 地震は、何も完成後に起きるとは限りません。工事中の今も発生する可能性がありますが、工事中の高架道路の安全対策がどうなっているのか、お伺いをいたします。

○岩永建設局長 一般に、高架道路の工事中における安全対策につきましては、国土交通省の通達によります橋、高架の道路等の技術基準などに基づきまして、事業者が地震の影響等に対して必要な検討を行い、施工時の安全性を確保することになっております。
 中央環状新宿線の工事中の安全対策におきましても、首都高速道路株式会社が、この基準に基づきまして、個々の区間の施工方法や工事期間に応じまして適切に対応していると承知しております。

○村上委員 次に、営業中の高速道路についてでありますけれども、高架道路では震災時にどうやって避難することになっているのでしょうか。

○岩永建設局長 首都高速道路では、高架橋から地上に避難できるようにするため、標準として一キロに一カ所の割合で非常口と階段を設けるとともに、百メートルに一カ所の割合で、これを案内する標示板を設置しております。
 さらに、利用者の避難誘導につきまして、首都高速道路株式会社では、震度五以上の大地震が発生した場合の対応マニュアルを策定しているほか、大地震発生時における高速道路利用者の対応について、ホームページやチラシなどを通じて広報を行っております。

○村上委員 首都高速道路は、前回の東京オリンピックに合わせてつくられたものであります。既に四十年以上経過した構造物があります。引き続き、耐震対策などの安全対策には万全を期していただきたいと考えます。
 次に、新宿線の開通時期の公表についてでありますけれども、昨年十二月に、開通時期が当初よりも半年から三年おくれることが都の方から示されました。しかし、当の事業者である首都高速道路株式会社からは何の説明もなく、ようやく先日、地元にチラシが配られました。一番迷惑をかけている地元の住民に対する説明が余りにも遅過ぎ、不誠実そのものです。
 この点については、都の方からもしっかりと首都高速道路株式会社に指導することをお願いを申し上げます。
 最後に、都の危機管理体制についてお伺いいたします。
 今回のハリケーンでは、連邦政府、州、市の対応の悪さが浮き彫りとなりました。とりわけ連邦緊急事態管理庁、FEMAの初動態勢のおくれによって多くの住民が混乱に巻き込まれ、被害が拡大しました。
 FEMAの対応がうまくいかなかった原因としては、九・一一同時テロ以来、アメリカの危機管理政策や予算がテロ対策にシフトし、自然災害に対する対応力が後退したためだといわれております。テロ対策も重要ですが、今回のハリケーンのような自然災害に対しても、常に万全の備えをしておくべきことを痛感いたしました。
 ところで、現在の東京を見ますと、首都直下型地震、集中豪雨、テロなどの災害や事件がいつ起きてもおかしくない状況にあります。
 地下鉄大江戸線の名づけ親は石原知事であり、都庁においでになる方や都職員は大いに愛着を持って利用しているところです。しかし、このところ、都庁への直結する出入り口が閉鎖されており、大変不便を感じているようです。
 テロ問題などを考えてのことだと思いますが、チェック体制を厳しく強化したりして、せっかくの連絡通路が無用の構造物でないようにしていただきたいと思います。
 自然災害や人的災害など、あらゆる危機に備えていくことが重要と考えますが、今後の都の危機管理体制の強化について知事のご見解をお伺いいたします。

○石原知事 答弁の前に申し上げておきますけれども、大江戸線は私は名づけ親ではございません。あれは、公募した中の二番目でしてね。一番目が第二環状線で、環状線じゃないんですよ。ですから、そんなのおかしいじゃないかというので二番目にしたんで、私はもっといい名前を考えていたんですけれども……。
 東京は、自然災害からテロ災害に至るまで、あらゆる危機の可能性を抱えていると思います。
 万一災害が発生した場合、他の先進国の首都に比べて非常に集中、集積が進んでおりますために、被害もかなりのものになると思います。こうした被害を人知を尽くして最小限に抑えることが重要だと思っております。
 そのため、都は、地震、風水害はもとより、国に先駆け、NBCテロや新興感染症対策など、さまざまな危機への対応力を強化してまいりました。
 たまたま私、九・一一のときワシントンにおりまして、前日、副長官に会い、次はラムズフェルドに会うつもりでした、ペンタゴンが目の前で燃えているのを見て仰天いたしましたが、あのときにニュースを眺めておりまして、FEMA、フェデラル・エマージェンシー・マネジメント・エージェンシーですか、これが見事に機能しまして、たしか四千機ほど飛んでいる、アメリカの上空を飛んでいる飛行機を一時間以内に強制着陸させて、そういう措置も見事に行っておりましたが、帰国しまして、政府にそういう組織をつくったらどうだと建言いたしましたけれども、聞く耳持たないでありまして、首都圏だけで首都圏FEMAなるものをつくりましたが、これは非常に機能しまして、今まで東京なら東京で災害が起こっても、官邸の管理室には直通の電話がありますけれども、隣の神奈川県や埼玉県と要するに助け合うときのネットワークがなかったものですから、そういったものも、非常に単純なようで、それを講じ直すことで非常に緻密な連絡網ができました。
 今後は、地域防災計画を抜本的に見直しまして、震災対策や風水害対策を強化するとともに、今般作成する国民保護計画に基づく実践的なテロ対策訓練などを行いまして、危機管理体制を強化してまいります。
 なお、東京が主唱しまして先般行われましたビッグサイトでの危機管理に関する万博で、非常に日本ならではのすばらしい機械が幾つか披露されておりました。先般のジュリアーニが来ましたとき、その話をしましたら、相手もびっくりしておりましたけれども、ああいうものもこれから大いに活用して万全の対策を講じていきたいと思っております。

○新藤副委員長 村上英子委員の発言は終わりました。(拍手)

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