東京都議会予算特別委員会速記録第四号

○松原委員長 ただいまから予算特別委員会を開会いたします。
 この際、柿沢理事から発言を求められておりますので、これを許します。

○柿沢委員 過日の私の質疑の中で不適切な発言がありましたことを陳謝をし、その部分を取り消させていただきます。
 以上です。

○松原委員長 発言は終わりました。
 これより付託議案の審査を行います。
 第一号議案から第二十九号議案までを一括して議題といたします。
 昨日に引き続き総括質疑を行います。
 秋田一郎委員の発言を許します。

○秋田委員 初めに、財政再建について伺います。
 石原知事は就任当時、えらいところへ嫁に来たもんだと、独特のいい回しで都財政の窮状を訴えておられました。
 まず、当時の都財政は一体どのような状況であったのか、簡潔にお答え願います。

○谷川財務局長 平成十一年当時の都財政は未曾有の財政危機に陥っておりました。十年度決算では過去最悪となる一千六十八億円の赤字額を計上し、また十一年度予算では四千二百十六億円もの財源不足が生じ、他会計からの借り入れなど臨時的な財源対策を行うことを余儀なくされました。さらに、平成元年度には一兆円を超えていた基金残高も、十一年度末には八百六十九億円にまで減少しております。
 まさに財政再建団体転落の危機にあり、地方自治体としての自主、自立性が損なわれるばかりか、都民生活に深刻な影響を与えることが懸念されており、民間企業に例えれば、まさに倒産寸前だったという状況でございました。

○秋田委員 いかに危機的な状況であったのかが今のお話でよくわかるとともに、今さらながら驚く次第でございます。
 知事は、即座に財政再建推進プランを策定し、都財政に抜本的にメスを入れ、その後、一貫して財政の立て直しに取り組んでいらっしゃいました。新たな都民ニーズに柔軟に対応していくためにも、巨額の財源不足の解消とあわせて、弾力的な財政基盤を構築する必要があったからだと思います。
 そこで、財政再建に当たって重要なポイントである財政硬直化の改善はどの程度進んだのでしょうか。

○谷川財務局長 財政の硬直性を判断する代表的な指標といたしまして、経常収支比率がございます。これは人件費、扶助費、公債費等容易に縮減することが困難な経常的経費に、都税を中心とする経常一般財源がどの程度充当されているかを示すものでございまして、その数値が大きいほど財政が硬直化しているということになります。
 平成十一年度決算では、経常収支比率は四十七都道府県中四十六番目のワーストツーとなる一〇四・一%に達しておりました。この間の取り組みによりまして、平成十六年度決算では九二・六%にまで低下し、都道府県中、最も良好な状況にあります。
 さらに、平成十七年度決算では、プランの目標である九〇%以下の水準にまで改善する見込みでございます。

○秋田委員 経常収支比率が一〇〇%を超える状態というのは、家計に例えれば、月々の給料だけでは日常生活を賄うことができず、とらの子の財産までも切り崩してどうにかやってきたという、大変な状態であったわけです。それが現在では、経常収支比率が九〇%を下回る水準だということでございますが、これも家計に例えれば、どうにか生活にゆとりができて、新たな貯蓄に回したり、電化製品の買いかえなどもできるかな、そんな状況だったと思います。都財政も、ようやく将来に目を向けて、将来の施策に振り向けるようなことができるような状態にまで回復したといえるのではないのでしょうか。
 ところで、財政再建の目的として、かねてより強固で弾力的な財政体質の確立ということがいわれてまいりました。そこで改めて、強固で弾力的な財政体質とは、具体的にどのような状態であるのかを教えてください。

○谷川財務局長 都は、他の道府県とは異なり、地方交付税の不交付団体でございまして、みずからの財源で都民サービスを賄っていかなければなりません。歳入の根幹である都税収入は、景気変動の影響を受けやすく、大きな増減を繰り返しております。
 強固で弾力的な財政体質とは、このような不安定な状況に置かれておりましても揺らぐことなく変化を柔軟に受けとめ、安定的に行政サービスを提供することができる財政体質のことでございまして、都は、このような財政体質を確立するために財政構造改革に努めているところでございます。

○秋田委員 強固で弾力的な財政体質の確立は、財政運営にとっていわば永遠のテーマだと思います。そのテーマを常に明確に意識しながら創意工夫を日々積み重ねることによって、プランに基づく取り組みもその目標に向かって大きく前進することができるのかな、そう思っております。
 このほかにも、十八年度予算においては、隠れ借金の圧縮、基金残高の確保が図られるなど、財政の健全性は随分と、知事の就任当時に比べれば回復しております。財政再建と口でいうのは本当に簡単でございますが、実際の取り組みは極めて地道な日々の積み重ねだと思います。その成果に対して我が党としても大いに評価をさせていただきたいと思います。
 このように、一見順調に推移している財政再建ですが、今後を展望すると決して楽観視はできない状態だと思います。現在の好景気がどの程度続くのかはわかりませんし、また、大幅に圧縮したとはいえ隠れ借金は依然として約六千億円、高齢化社会の到来などによって社会保障費の増大も避けて通ることはできません。
 そこで伺いますが、今後の歳出面での負担増加要因としてどのような課題が挙げられるのでしょうか。

○谷川財務局長 委員ご指摘のとおり、高齢化の進展などにより、今後、社会保障費の増加が避けられず、現状のまま推移いたしますと、社会保障費の増加額は今後五年間で一千億円、今後十年間では二千億円を超えることが見込まれております。
 また、都庁舎を初めバブル期に建設した大規模施設が一斉に設備の更新や大規模修繕の時期を迎えるなど、社会資本ストックの更新経費の増加が懸念されております。
 さらに、団塊の世代の大量退職などにより職員の退職手当は急増することが確実でございまして、平成十八年度の一千六百五十八億円から、平成十九年度、二十年度には二千億円を超える見込みでございます。

○秋田委員 今の答弁でも明らかなとおり、今後も多くの本当に大変な課題が待ち構えていることがよくわかりました。将来需要を考慮すると、現在の基金残高では決して十分とはいえません。都財政は体力を回復しつつあるとはいえ、いまだ油断はできない状況でございます。
 一方、歳入の面では、昨年末に決着した三位一体改革の結果、基幹税である所得税から住民税へ三兆円規模の税源移譲が実現します。しかし、真の地方自治の確立のためにはまだまだ不十分であって、今後、なお一層の地方の自主税源の拡充が必要です。その際、義務教育費や生活保護費のような義務的な経費の補助率引き下げではなく、地方の自由度が高まる国庫補助負担金の改善などを行いつつ、さらなる税源移譲を国に求めていく必要があります。
 そこで、地方分権の時代にふさわしい地方税体系を構築するために、都として積極的に提言していくべきだと思いますが、所見を伺います。

○菅原主税局長 お答え申し上げます。
 地方自治体がみずからの権限と責任において自主的かつ自立的な行財政運営を行っていくためには、自主財源であります地方税の充実確保が不可欠でございます。
 このため、都は、これまで、都税制調査会を設置し、その答申に基づき、国から地方への七兆円規模の税源移譲につきまして、全国の自治体に先駆けましてその提言を行ってまいりました。
 このたびの税源移譲はそうした提言が実を結んだものでございまして、画期的なことと考えておりますけれども、三兆円規模の税源移譲では地方の財政分権を確立するためには決して十分ではございません。
 したがいまして、都といたしましては、今後とも、都税制調査会を活用するなどいたしまして、地方消費税等へのさらなる税源移譲につきまして積極的に検討し、提言してまいります。
 また、あわせまして、地方法人所得課税を撤廃しようとする動きも見受けられますので、こうした動きに対しましても断固反論すべく、地方法人課税や地方税制のあり方につきましてさらに研究を深めてまいります。

○秋田委員 このように、歳入歳出の両面で課題を抱えつつも都財政は立ち直りを見せつつあるのかなと思います。こうした現状を十分に踏まえて、知事は、五・九%という大幅な都税収入の増加にも浮かれないで一般歳出の伸びを二・〇%まで抑えるなど、堅実な予算をされました。
 しかしながら、皮肉なことに、東京が頑張れば頑張るほど、東京ひとり勝ち論や東京富裕論が再燃するというジレンマが生じております。昨年末の地方特例交付金の廃止決定、法人住民税の分割基準見直しの検討など、東京から財源を奪い取ろうとする国の動きは依然として強く残っております。
 このような国の姿勢は、都にも地方にも何の解決にもなりません。財政再建に懸命に取り組み、その成果として生み出した東京の貴重な財源を、みずからの改革努力の不足により財政難となっている自治体に対し分け与える結果となっているばかりでございます。これでは都民の納得は到底得られませんし、日本の将来にとっても決していいことではないと思います。
 財政の問題は、どちらかというとちょっと小難しいせいか、わかりにくいといいますか、そのせいか都民や国民が現実から逃避しているような部分があると思っております。わかりやすい説明をしていくのも私たちの責任でございますし、そのことが都民、国民の広範な理解と協力に結びつくのではないかと思っております。
 そこで、国の不合理な財政措置に対抗するためには、これまで以上に都民を巻き込んだ運動を展開していくことが必要だと考えますが、知事のご所見を伺います。

○石原知事 昨年の三位一体改革なるものの決着のありさまを見ておりますと明らかなように、国のまことに場当たり、ご都合主義には非常に強い憤りを感じざるを得ません。結局そのツケを払わされるのは結局は都民でありまして、いわれなき負担をこれ以上都民に負わせるわけにはいかないと思います。
 根拠のないまま、理の通らない、理屈にならない理屈で財源を奪い取ろうとする国の動きに対して、その非を広く明らかにし、都民、都議会、さらには都選出の国会議員の理解とご協力を得ながら、まさに都全体で一丸となって、断固として阻止に努める覚悟であります。
 ただ、声高に反対を唱えてもしようがないので、何か効果的なストライキを国に対して行えないかなと思っていろいろ策を考えているのですが、なかなかこれは難しくて、もろ刃の剣でありまして、そういう点で、その前段として、木内さんが財務局長のとき、私、彼に依頼しまして、ぎりぎりのところまで来た財政が土俵を割って東京が再建団体に転落したときに、結局ナショナルミニマムを強いられざるを得ない。そのときに、例えば東京の福祉行政なり教育行政というのはどういう形で転落するかというわかりやすい指標をつくってもらいました。
 そこまでいかなくても、こういう不当な税源の収奪が行われたときに東京がどれだけ損害をこうむるかと、もう少しわかりやすく議員並びに都民の皆さんに説明する手だても講じていきたいと思っております。

○秋田委員 今、石原知事から、効果的な方法を模索していくというようなお話がございましたが、折しもこの四月から、東京都は、我が国初めての複式簿記・発生主義会計を導入します。私は、この公会計制度がその効果的な方法に十分これからなっていくのではないかな、そんなふうに思っております。
 最初に基本的な点を伺います。
 複式簿記・発生主義会計を導入することにより、財務諸表が作成されます。この財表によって何が明らかになるのか、また、これまで作成されてきた機能するバランスシートと今回の新たな財表は、具体的にどこが違うんでしょう。

○幸田出納長 現行の官庁会計の決算書は、一年間の現金の収入や支出の状況のみをあらわしておりますが、複式簿記・発生主義会計の導入により作成されます財務諸表では、土地、建物などの資産や、都債などの負債といったストックの金額が明らかになり、加えて、資産の老朽化に伴う減価償却費を含む正確なコストも明確に相なります。
 また、機能するバランスシートとの違いでございますが、機能するバランスシートは、現行官庁会計の決算数値などを事後的に組みかえまして作成しておりますが、新たな財務諸表は、日々の会計処理の一つ一つを複式簿記により記録し、そのデータに基づいて作成をいたします。
 したがいまして、機能するバランスシートと比べ、新たな財務諸表は、会計別や事業別などさまざまな種類のものを、より迅速かつ正確に作成することができるようになります。

○秋田委員 従来の官庁会計は預金通帳のようなものであって、一年間の現金の出し入れしか記録しない家計簿みたいなレベルだと思います。そのため、官庁会計の決算では資産や負債がどのくらいあるのかもとらえることができません。しかし、これは大変おかしな話だと思います。一般の家庭でさえ、家計の状況を把握しようとすれば、預金通帳だけを見るだけではなくて、土地や建物などの資産がどれくらいあるのか、住宅ローンのような負債がどれくらいあるのかといったことをあわせて考えるわけですから。
 ところで、複式簿記・発生主義会計が導入されることにより、このような会計情報が財務諸表で明らかになる点で、今回の財表は従来のものとは一線を画するものといえます。民間企業では、財務諸表を作成するだけではなく、それを内外においてさまざまに活用しています。東京都においても会計情報を十分に活用すべきだと思います。
 まず、内部的な活用方法として、財務諸表を用いて都財政全体を新たな角度で総合的に分析をし、一層の健全化を図る必要があります。個別の事業分野についても、財務諸表を駆使してコスト構造などを明らかにし、その評価を行うべきです。
 民間企業には、事業部制を採用しているところが多くあります。最近では、世界的な企業であるキャノンなんかは、事業部制と予算管理をうまく機能させて高収益を実現させております。
 民間企業の事業部は東京都では局に相当すると思いますが、局ごとの財務諸表は作成するのでしょうか。

○幸田出納長 会計別の財務諸表のほかに、局別の財務諸表も作成してまいります。

○秋田委員 局別の財務諸表も作成するというのは、大変私は画期的な話だと思います。ぜひとも民間企業のように局ごとの事業を評価するとともに、局間の内部競争ができるような、そんな環境づくりをしていただければ幸いだと思っております。
 次に、財務諸表の外部的利用、今までは内部的な利用についてお話し申し上げましたので、外部的な利用について伺います。
 東京都はベルギーやスウェーデンに比する財政規模を有しており、このような巨大な組織に複式簿記・発生主義会計を導入するのは大変なことだったと私は思っております。
 そこで、伺いますが、日本以外の先進国における複式簿記・発生主義会計の導入状況について教えてください。

○幸田出納長 アメリカ、カナダ、イギリス、オーストラリアなどにおきましては、既に一九九〇年代に複式簿記・発生主義会計を導入しておりまして、フランスはことしから導入いたしました。また、これらの国々におきましては、地方自治体にも導入されていると聞いております。

○秋田委員 私は余りグローバルスタンダードという言葉は好きではないんですが、国がよくグローバルスタンダード、グローバルスタンダードとおっしゃっておりますが、東京都はまさに国に先駆けてグローバルスタンダードとなっている公会計制度をいち早く取り入れたといえるんじゃないかと思います。
 複式簿記・発生主義会計を採用するメリットの一つというのは、私は、財務諸表を利用して、規模にかかわらず比較ができるということだと思います。例えば、企業では経常利益を総資本で割った総資本経常利益率、あるいはPER、PBRといったさまざまな指標を用いてその収益性を比較し、企業を峻別しているわけでございます。
 しかし、国も他の自治体もいまだ複式簿記・発生主義会計を導入しておらず、官庁会計の決算を事後的に組みかえて財務諸表を作成しています。このような財務諸表によって自治体間の比較を行うことは可能なのでしょうか。

○幸田出納長 全国の自治体の多くは、いわゆる総務省方式によりまして財務諸表を作成しております。これは決算統計のデータから集計するものでございまして、全国の地方自治体が統一的に計算、作成できるため、自治体間での比較を容易にするといわれております。
 しかしながら、この方式には、事務事業の移管に伴う無償譲渡など一部の資産の情報が計上されないため、資産の実態と必ずしも一致しないこと、また、日々の会計処理におきましてデータを整理、蓄積するのではなくて、当該自治体全体の決算数値を事後的に組みかえるため、部門別、事業別の財務諸表を作成しづらいことなどの問題点が指摘されております。
 こうしたことから、総務省方式によります財務諸表では、財政状況に関する自治体間の比較を正確かつ有効に行うことは難しいと考えております。

○秋田委員 このような状況では、東京都だけが複式簿記・発生主義会計を導入しても、国や他の自治体の財政状態を東京都と比較することはできません。ぜひとも彼らも公会計制度を採用するように私は努力するべきだと思います。この項の冒頭で、東京ひとり勝ち論に対する有効なツールになるのではないかと申し上げたのは、実はそういった点でございます。ぜひとも同じ土俵に上げて、自治体間の財政状況を正確に比較することができるようになれば、真っ当な財政運営を行っている自治体とそうでない自治体とが明らかになり、いわゆる東京ひとり勝ち論も根拠のないものであることが私は自然に明らかになっていくものだと思います。
 そこで、東京ひとり勝ち論を打ち砕くためにも、東京都が国を突き動かし、他の自治体を牽引することにより、日本の公会計制度を根本から改革するべきであると考えますが、知事のご所見を伺います。

○石原知事 今回、都は国に先駆けて新しい公会計制度の導入に踏み切ったわけでありますが、私、最初に福田内閣で閣僚を務めましたとき、ちょうどあの本四架橋を三本かけるという閣議決定をされまして、私一人が反対しました。その説明は、いわゆる国のお役人の得意な、鉛筆をなめた、なめた数字が公表されて、それを政治家が丸のみしたわけでありますけれども、結果はあのていたらくで、典型的な不良債権になっちゃった。この間、公金をつぎ込んで水増しして民営化しましたけれども。
 今回の公会計制度の改革は、都全体の財政状況を都民にわかりやすく示すとともに、民間企業で至極当然の経営感覚を根づかせて、より効果的な行政運営の実現をするなどの効果が期待できると思っております。
 今のご指摘のように、東京ひとりがやってもしようがないので、国そのものも踏み切ってもらいたいんですが、たまたま財政通とされている竹中君が今総務大臣になりましたので、これはやっぱり国会で自民党なりどこの政党なり、こういう問題に精通した政治家が、一体この問題について総務省はどうとらえるかというような質問をぜひして、的確な答弁というものを引き出したい。それによってまた東京都はいろんな働きかけ等を講じていきたいと思っておりますが、今ちょっとその工作をひそかにしております。

○秋田委員 今度の公会計制度は、石原知事が行ってきたさまざまな斬新な施策の中でも、私は永続的という意味で本当に革命的な施策であったのではないかと思っております。大いに我が党も協力をし、その実現に努力をさせていただきたいと思います。
 次に、観光インフラについてお伺いします。
 現在、訪日外国人旅行者数は約六百七十三万人に対して、日本人の海外旅行者数はその約三倍の千七百四十万人です。一方、前回の東京オリンピックが開催された昭和三十九年当時は、日本人の海外旅行者数が約十三万人に対して、訪日した外国人旅行者数は約三十五万人。現在とは逆に、日本に来る外国人の数が海外へ行く日本人の三倍もいたのです。
 オリンピックの機会をとらえて東京を国際観光都市として一層アピールしていくためには、インフラ整備は不可欠だと思います。それでは、観光におけるインフラ整備とは何か。私は、まさに情報提供のことだと思います。
 ヨーロッパでは、小さな駅にもインフォメーションセンターがあり、観光案内に加えて、ホテルや交通手段の問い合わせや手続、コンサートやミュージカルのチケット購入など、旅行者にとっては不可欠な存在です。例えばイギリス国内では五百六十カ所、ロンドン市だけでも十四カ所のインフォメーションセンターがあります。
 一方、広い都内には観光情報センターが三カ所しかないのは余りにも少ないと感じます。外国人旅行者にとって便利でわかりやすい場所にも整備していくべきです。空港、駅、デパート、さらにはコンビニなどでも観光情報を提供できることが必要です。知事もご存じだと思いますが、今やコンビニで各種コンサートチケットも購入できるわけですから、観光案内もあわせて行えるようにすることは、私はそう難しいことだとは思いません。
 また、観光案内については、世界共通の「i」マーク、インフォメーションをあらわした「i」マークがあります。駅などにこのマークをわかりやすく提示することも、不案内な外国人にとっては必要不可欠なものだと思います。
 観光案内は観光の基本的なインフラだと思います。オリンピックの開催をにらみ、東京のインフォメーション機能を充実していくべきだと思いますが、所見を伺います。

○成田産業労働局長 都は、上野、羽田、そして都庁の三カ所の観光情報センターに加えまして、区市町村、交通事業者等の協力により、平成十七年末現在、百四十五カ所の東京観光案内窓口を設置しております。
 窓口の利用者は、平成十六年十一月の開設以来約百万人となっておりますが、観光案内窓口として目立たないことや、必ずしも十分な周知が図られていないことなどの課題がございます。
 今後、観光案内機能を十分に発揮させるために、窓口を主要ターミナル駅など、一層便利な場所へ設置するとともに、利用者にとってわかりやすいものとなるよう、表示についても改善してまいります。
 今後とも、東京全体の観光案内機能の充実に創意工夫を凝らしてまいります。

○秋田委員 先日産業労働局が発表した、東京の水辺空間の魅力向上に関する全体構想という資料を見ておりました。その中で地図がございまして、その地図を眺めてみますと、東京というのは、多様で魅力に富んだ水辺空間が存在することが改めて本当によくわかりました。
 隅田川には、中世以来の門前町である浅草を初め、江戸の芸能を現代に伝える向島、松尾芭蕉ゆかりの地である千住や深川、相撲で知られる両国が川沿いに位置しております。途中、ちょっと離れたところには、いまやオタクの聖地となった秋葉原もございますし、川を下り海へと至れば、外国人がよく行きたがる、東京の食文化を支えている築地市場やお台場、さらには、もっと広げれば、ディズニーランドや横浜なども現代の新しい観光スポットとして視野が広がってまいります。
 隅田川に沿って旅をすることで、まさに歴史の流れを体験することができるとともに、古きよき江戸文化と近未来的都市空間が混在する魅力を味わうことができます。水辺のにぎわいを創出するために、隅田川のテラス整備などにおいてどのような取り組みを行うのか伺います。

○岩永建設局長 隅田川のにぎわいを創出するためには、多くの人々が川沿いの名所旧跡などを楽しめるよう、回遊性に富んだ水辺空間にする必要がございます。
 都はこれまで、言問橋や駒形橋などでテラスの連続化やスロープの設置を進めるとともに、携帯電話でも容易に散策ルートなどの情報が得られる観光案内サインを設置してまいりました。平成十八年度には、吾妻橋におきましても、だれもが利用しやすいスロープを設置するとともに、吾妻橋から永代橋にかけてサインを八カ所増設する予定でございます。引き続き隅田川の魅力向上に努めてまいります。

○秋田委員 隅田川を下り東京港に入ると、臨海副都心地区など近未来的な都市空間とともに、運河が形成する独自の町並みが広がっています。都では、先般二月に、天王洲に水上レストランをオープンするなど、これまで認められなかった画期的な試みに取り組んでおります。
 そこで、水辺の魅力を高め、にぎわいを生み出す運河ルネッサンスを今後どのように推進していくのか、伺います。

○津島港湾局長 都では、水辺の魅力向上を図るため、地元におきまして運河を利用したまちづくり機運の高い芝浦と天王洲地区を、昨年六月、初めて運河ルネッサンス推進地区に指定いたしまして、運河周辺のにぎわいづくりを進めてきております。この推進地区では、水面利用の規制を緩和し、水上レストランや観光桟橋の設置を可能とするほか、運河まつりなど地元のイベント等を支援するとともに、緑豊かな遊歩道を備えた護岸を優先的に整備することとしております。
 引き続き、三月末には、新たに晴海地区を推進地区に指定することとしておりまして、豊洲地区におきましても、指定に向け地元区と検討を始めたところでございます。
 今後、他地区への展開を一層推進し、地区間相互のネットワーク化を進めますとともに、都の支援内容の充実強化について検討してまいります。

○秋田委員 水辺の観光スポットを船で移動することができれば、本当に旅行の楽しみは広がっていくと思います。
 知事は、東京をベニスとよく比較されますが、ベニスに行けば大抵の人はいわゆるゴンドラに乗って、最終的には名物のイカ墨のパスタなんかを多分食うと思うんですが、東京でも船に乗って、先ほどのエリアを揺られて、それで最後は天丼とかおそばを食べられたら、私は、外国人は大いに喜んでくれるんじゃないかと思います。
 東京の水辺に広がる観光拠点を船で結ぶためには、新たな航路の開設に加え、利便性の高い交通手段として多くの観光客に水上交通を利用してもらうのが必要だと思います。
 隅田川や運河でのにぎわい創出に向けた施策にあわせ、鉄道などの陸上交通との連携や情報の効果的な提供などにより、観光客が利用しやすい魅力ある舟運ネットワークを目指すべきと考えますが、今後の取り組みを伺います。

○成田産業労働局長 都は、お話がございました東京の水の都としての魅力を回復し、訪れる旅行者がその魅力を満喫できるように、水上交通と鉄道やバスなど陸上交通との連携による舟運ネットワークを形成し、利用の促進に取り組むことといたしました。
 このため、平成十七年度には、都営地下鉄乗車券で水上バス料金の割引が受けられるサービスを開始いたしましたし、新たに水上バスに関する情報をハンディーガイドにも掲載したところでございます。
 来年度は、新たな航路開設に向けた動きもいろいろございます。これらを踏まえまして、水辺の広域観光マップの作成などを通じまして、水辺の観光ルートの利用を一層促進してまいります。

○秋田委員 私は、観光というのは遊びだと思います。日本の観光行政に欠けているのは、この遊びの視点なんではないかと思っております。知事のたぐいまれなる感性も、若い時代に大いに、著作を拝見する限り遊んだからこそ今に生きているものだと思います。冗談ではなく、職員の皆さんも大いに遊んでいただいて、観光行政に役立てていただきたいと思います。
 さて、政治家の仕事とは何でしょうか。生命、財産を守ること、暮らしを豊かにすること、いろいろとあると思いますが、私は、夢を与えることも政治家の重要な仕事だと思っております。
 オリンピックの招致は、多くの子どもや若者に大きな夢を与えてくれると思います。私自身にとっても、前回の東京オリンピックの際には生まれておりませんでしたし、初めてのオリンピック招致ということになります。そのことは、オリンピックを招致して、そして成功させるという政治家としての大きな夢ができたように思えます。今からわくわくしているところでございます。
 しかし、オリンピックというビッグプロジェクトの成功は、一朝一夕にはなし得ないものです。機運盛り上げには継続的、段階的な取り組みが不可欠です。
 そこで、来年度から毎年開催される東京大マラソン、七年後に予定される東京国体を、それぞれ単発のイベントとして完結せず、会場の利活用、スポーツイベントの盛り上げのノウハウ、ホスピタリティーの発揮など、さまざまな分野で各イベントを連動させていくことが、いろいろな方が心配されているコストの削減と、そして何よりオリンピックの成功につながると思います。
 東京大マラソン、東京国体、オリンピックという一連のスポーツイベントを一体としてどのように位置づけ、そして成功に導いていくのか、知事の意気込みを伺います。

○石原知事 来年二月から毎年開催いたします東京大マラソンは、沿道の地域色豊かな応援などがお祭りの気分を高揚させ、都市の一体感を醸成するとともに、東京の魅力を内外にアピールする絶好の機会であると思っております。
 また、二〇一三年に開催されます東京国体は、四十に近い競技があちこちで行われまして、多くの選手、観客を動員する国内最大の総合スポーツ大会でありまして、都民、国民がスポーツに親しむ一大イベントであると思います。
 ただ、従来の国体を見ていますと、どこかの県で何か関係者がやっているだけなんですね。これは東京の国体ならではの、やっぱりスポーツの競技だけじゃなしに、それに付随した周りの行事、お祭りなども少し醸成して盛り上げていきたいと思っております。
 東京大マラソン、あるいは東京国体と続く一連のスポーツイベントによりまして、スポーツの感動や華やかさを多くの方に肌で感じていただき、オリンピック招致機運を一層盛り上げていきたいと思っております。
 さらに、ここで得られた経験やノウハウを生かして、これまでにない東京ならではのオリンピックを実現していきたいと思っております。
 それからもう一つ、付言しますと、この質問の前の東京の水路の活用についてですけれども、いろいろ、局長がしたり顔でいろいろな答弁をしましたが、要するに、川から上がれないんですよ。だから、どこかここかにたくさん、川に階段をつくったらいいんです。階段一つもないんですから。こんなばかな川は世界中にないですよ。

○秋田委員 次に、都区制度について伺います。大分時間がなくなってまいりましたので、ご協力をお願いします。
 先般、懸案だった都区財政調整にかかわる五項目の課題について、都区が合意に至りました。このうち、清掃関連経費、小中学校改築経費、都市計画交付金の具体的な三課題については今回の協議をもって終了し、三位一体改革への対応については来年度に改めて協議するとの道筋が立ちました。そして、都区の役割分担を踏まえた財源配分については、今後の都区のあり方という大きな議論の場で協議されることとなりました。
 今回、都区共同でこの大きな議論を開始することは、大変重要なことです。さきの代表質問において、知事も、「東京の将来にとって大きな意義がある」と述べられましたが、私も、今こそ首都東京の将来を見据え、今後の都区のあり方について都区双方で大いに議論すべきだと思います。
 そこで、まず、都区の役割分担については、基本的な問題でありながら、これまでの議論で結論が得られなかったのはどこに理由があると考えているのか、伺います。

○高橋総務局長 これまでの協議におきましては、都区それぞれの事務事業のあり方に触れることなく、財源の帰属だけを議論する面がございました。事務事業と財源配分は切り離せないものであるにもかかわらず、こうした議論に陥ったことが都区の認識を一致させることができなかった大きな要因と考えております。
 役割分担に係る今後の検討につきましては、事務事業そのものについて、東京の発展のために都が何を担い、区が何を担うのか、こういう原点に立ち返って議論をしていきたいと考えております。

○秋田委員 ぜひとも、できるだけ早期に区と共同して検討組織を設置し、踏み込んだ議論を行っていただきたいと思います。
 ところで、今回の合意で目を引くのは、都区共同で検討する内容として、再編を含めた特別区の区域のあり方が挙げられていることです。そこで、都は、特別区の区域についてどのように考えているのか、伺います。

○高橋総務局長 特別区の区域は、昭和七年に旧東京市の三十五区として現在の区域となりまして、その後、昭和二十二年に二十三区に再編されましたが、それ以来、今日に至るまで変わっておりません。
 しかしこの間、住民の生活圏、通勤圏や企業の活動圏は大きく広がっており、社会実態と各特別区の区域が乖離してございます。また、基礎的自治体である特別区の役割を強化する観点から、現在都が担っている事務を特別区に移譲するとした場合、二十三区に分かれた現行体制のままで効率性が担保できるのかといった問題、さらに、二十三区間の税源の偏在も著しく、各区が一般の市と同様な財政自主権を持ち得るかといった問題もございます。
 都といたしましては、このような点を踏まえまして、区と議論していく必要があると考えております。

○秋田委員 道州制の議論など、地方自治制度全般にわたって変革が求められている今日、今後の都区のあり方について都区で議論を始めることは、将来の東京の自治に向けて新たな扉を開くことになると考えます。
 そこで、最後に、この検討に臨む知事の所見を伺います。

○石原知事 東京に限りませんが、東京を初めとする大都市が国全体を引っ張っていく時代にありまして、大都市がその潜在力を最大限に発揮できる自治の仕組みが必要だと思います。
 都区制度は六十年に及ぶ歴史がありまして、これまで東京の発展に貢献はしてきましたが、今日では、東京、ひいては日本の将来を展望した抜本的な改革が求められていると思います。
 今なすべきは、大胆な新しい都と区のデザインを描くことでありまして、東京の自治を担う都と区が将来を見据えて、それぞれのエゴも捨てて、都と区の新しい関係の構築、さらには、行政区分の再編などについて根本的かつ発展的な議論を行っていく時期に来ていると思います。

○秋田委員 最後に、水道事業について伺います。
 最近、公共施設の管理において、アセットマネジメント手法が注目されております。これは、事前に施設の状態を客観的に把握、評価し、適切な補修を行い、更新時期の平準化と費用の最小化を図るという予防保全型の施設管理手法のことです。
 水道局では、これまでも管路診断を実施し、計画的に管路を更新するなど、予防保全型の考え方を先行して取り入れていますが、こうした考え方を水道施設全体に拡大し、アセットマネジメント手法を導入してみてはどうかと思いますが、見解を伺います。
 あわせて、新たな施設整備構想においては、具体的な目標として業務指標を活用し、都民にわかりやすく示したらどうかと思います。
 以上二点伺って、私の質問を終わらせていただきたいと思います。

○御園水道局長 水道局では、地球の半周を超える二万五千キロに及ぶ管路につきまして、腐食などの劣化状況を診断し、計画的な維持補修や更新を全国の水道事業に先駆けて行ってきております。
 しかしながら、浄水場等の大規模施設の約七割につきましては、昭和三十年代から四十年代の高度経済成長期の需要急増に対応するために建設されたものでございまして、今後、平成三十年代に集中して更新時期を迎える見込みでございます。このため、これらの施設更新に当たりましては、更新時期の平準化と費用の最小化を図る必要がございます。
 こうしたことから、管路の維持管理で培ってまいりましたノウハウも生かしつつ、ご提案のように、水道施設全体へのアセットマネジメント手法の導入を検討してまいります。
 また、施設整備や更新を着実に実施していくためには、ご指摘のように水道事業ガイドラインの業務指標を活用して整備目標を設定するなど、都民にわかりやすい新たな長期構想を策定し、首都東京にふさわしい水道システムを構築してまいります。

○松原委員長 秋田一郎委員の発言は終わりました。(拍手)

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