東京都議会予算特別委員会速記録第三号

○鈴木(貫)副委員長 引き続き、村松みえ子委員の発言を許します。
   〔鈴木(貫)副委員長退席、委員長着席〕

○村松委員 先ほど、公明党委員から、土木関係費と福祉関係費に関する言及がありました。委員は、決算で土木関係費が福祉関係費を上回った事実を打ち消すことができないために、住宅費を福祉関係費に加えれば土木関係費を上回るといいましたが、住宅費として計上されている経費は、福祉関係費の要素も土木関係費の要素も含まれているもので、どちらに含まれることもふさわしくありません。だから、我が党は住宅費を除いて示しているのです。公明党の委員の議論は、公平さを欠く乱暴なものといわざるを得ません。
 また、来年度予算案についていえば、投資的経費と経常経費に含まれる投資型経費を合わせた投資に係る経費は一兆円近い規模で、福祉関係費を大きく上回ることを改めて指摘しておきます。(発言する者多し)
 それでは、多摩の振興について伺います。
 東京では、本格的な少子高齢化社会を迎えるとともに、さまざまな行政課題の解決に迫られています。しかし、多摩市町村の多くは、二十三区と比べて財政力に乏しく、対応に苦慮しているのが現状です。加えて、国の三位一体改革による歳入減や長期的な税収減など、多摩の自治体にとってさらなる打撃になっております。
 多摩市町村と二十三区との体力差はさらに増しています。それは、歳入の大宗を占める税収の違いに原因しております。来年度予算を見ても、二十三区が千二百億円規模の税収増となっているのに、多摩ではその五分の一の税収にとどまっております。(パネルを示す)
 このグラフを見てください。これは、市町村税などの住民一人当たりの実質的な税収を比較したものです。二十三区と多摩の税収の格差は歴然としております。この一番高いところが千代田区です。一人当たり、何と税収が五百六十八万円です。隣は港区で、百七十二万円もあります。これに対して多摩地域では、一番税収が高いところで武蔵野市の二十六万円という水準、次いで立川市が二十万円、あきる野市は十三万円という断然の差があるんです。
 こうした結果、二十三区の税収と多摩市町村の税収の差は、二対一の程度からさらに広がりを見せようとしております。
 このため、二十三区では区単独の子育てのための支援事業などが相次いで予算化されているのに対して、財政の厳しい多摩の市町村では、新規の事業を始めるところは限られております。
 これだけでも大変なのに、多摩の自治体にとってはさらなる困難が待ち受けていることを指摘しなければなりません。それは、これまで都内に通勤し、東京の経済を支えるとともに、それぞれの住居地で税負担をしてきた団塊の世代が一斉に定年を迎えることです。このため、数年後には、自治体によっては大幅な税収減に見舞われなくてはなりません。二十三区と多摩市町村との税の偏在はますます拡大していくわけです。市町村によっては、高齢者介護などの新たな行政需要が増大し、赤字団体へ転落する危険に直面することも予想されます。
 私は、こうした財政力の格差が住民サービスの格差につながることのないように、東京都が手だてを尽くすことが今ほど求められているときはないと考えております。こうした市町村の住民が高齢化する中での市町村の税収や、歳出構造の質的な変化にかかわる現状認識について、初めに伺います。

○高橋総務局長 少子高齢化の進展によりまして、社会福祉を初め行政需要が増加する一方、長期的に見ますと、生産年齢人口の減少によりまして税収の伸びが期待できないと考えられておりますが、これは、多摩の市町村のみならず、全国共通の問題でございます。
 こうした社会変化に伴う行財政上の課題につきましては、市町村がみずからの対応を図っていくことが基本と考えております。多摩の市町村におきましても、それぞれが責任を持って行財政改革や地域振興に懸命に取り組んでいると認識をしております。
 また、都といたしましても、都市基盤の整備や産業振興などを着実に推進しまして、将来にわたる多摩の経済力の強化に積極的に努めているところでございます。

○村松委員 今、団塊の世代の定年など、社会的変化に伴う行政上の課題についての認識が示されました。これは重要な答弁です。それだからこそ、私は、そのことに対応するために財政的な支援に踏み出すことが東京都の役割だと考えます。
 市町村からは、厳しい財政状況の中、都の財政補完に対して、ふやしてほしいという要望があります。都税収入も伸びているのであるから、その一部を多摩振興のために振り向けて、市町村に対する総合交付金の総額をふやすことを考えられないでしょうか。

○高橋総務局長 都は、市町村の厳しい財政状況を踏まえまして、これまでも市町村振興交付金、調整交付金などを通じまして財政補完に努めてまいりました。
 平成十八年度からは、先ほど倉林議員のご質問にもご答弁申し上げましたとおり、都議会のご支援をいただきまして市町村総合交付金を創設し、さらに財政支援の充実を図ったところでございます。

○村松委員 私は、現状の延長線上では不十分だ、こういうふうにいっているんですよ。ぜひ多摩振興のために財政支援を拡充していただくことを強く要望いたします。
 次に、多摩地域の消防力強化について伺います。
 多摩地域は、今、急激な都市化や住民の高齢化が進み、火災や緊急事故の発生がふえております。また、都の多摩西部直下型地震の被害想定では、マグニチュード七・三の場合、多摩地域で家屋の倒壊が一万三千四百四十一件、人的被害は死者が三百八十八人、負傷者は一万三千三百七人に及ぶと想定しております。消防力の強化が差し迫った課題となっております。
 東京都市長会は、東京都に提出した予算要望書の中で、多摩地域は、宅地開発や建築物の高層化に伴い昼夜間人口も増加し、また、都市構造が大きく変化してきていることから、地域の状況変化に的確に対応できる消防力が急務となっている、このことを指摘した上で、区部に比べると消防力の配備は十分とはいえないので、防災対策上、ぜひとも消防力配備基準の充足に努めることを求めております。これは多摩都民の共通の要望です。
 そこで、東京都市長会が要望しております消防力の充実強化についてどう受けとめ、どう対応するおつもりなのか、お伺いいたします。

○関口消防総監 当庁といたしましても、東京都市長会からの要望であります多摩地域の消防力の充実強化につきましては、重要な課題と考えております。今後も、市街地状況の進展や消防行政需要の変化を勘案しながら、計画的な消防力の充実強化に努めてまいります。

○村松委員 ぜひその立場で尽力をお願いいたしたいと思います。
 具体的に何点か伺います。
 まず、救急車ですけれども、多摩地域には救急車が配備されていない消防出張所が十五カ所残されていて、改善が急がれております。
 私の住む日野市では、こんなことがありました。地元消防署の署長も出席した自治会の防災訓練の最中に、ぐあいの悪くなった住民が出て、救急車を呼んだところ、到着まで十二分もかかったんです。消防出張所は防災訓練の場所から車で二、三分のところだったので、参加者が署長に、なぜこんなに時間がかかるのかと聞いたところ、この出張所には救急車が配置されていないので、本署から出動したというわけです。人命に関する救急車の増強は切実な要望となっております。
 そこで伺いますが、救急車が現場に到着する時間はどのくらいかかっていますか。また、第一方面から第十方面本部がありますが、現場到着時間が一番かかる方面はどこで、時間はどれくらいかかるのか、それぞれ答弁をお願いいたします。

○関口消防総監 東京消防庁管内における平成十六年中の出場から現場到着までの平均時間は六分十八秒でありました。最も時間を要しますのは、広大な山間部を抱えますことから、第九消防方面本部管内で、平成十六年中の出場から現場到着までの平均時間は六分四十二秒でございました。

○村松委員 今、日野市や八王子市、多摩市、町田市及び西多摩地域の全域という広大な地域を管轄する第九方面本部は、平均六分四十二秒といわれました。東京都の到着時間の基準は五分ですから、一分四十二秒も多くかかっているわけです。
 そこで、五分以内を目指して、救急車の配備を全体として引き上げることが重要だと考えます。ぜひ広大な地域を抱えている第九方面本部の増強に努めていただきたいと思いますが、所見を伺います。

○関口消防総監 当庁では、救急車等の配備につきまして、区市町村単位ではなく、連続した市街地を一つの地域としてとらえ、現場への到着時間や出場件数を勘案いたしまして、計画的に配置しております。
 今後も、救急件数等の動向を十分に考慮し、配備してまいります。

○村松委員 人命にかかわる問題ですから、予算も確保して、ぜひ救急車を増強されるよう求めておきます。
 次に、少子化対策について伺います。
 乳幼児医療費の助成の拡充は、都民の一致した切実な要求です。多摩市町村も、住民の願いにこたえるために努力を重ねており、二〇〇〇年度に比べて、所得制限撤廃がゼロから五市に、一部の年齢などについて撤廃しているのが十四市から十七市に広がりました。奥多摩町は、中学生まで広げることを決めております。
 ところが、この間、二十三区はすべての区が所得制限を撤廃し、十区では小学生や中学生にまで対象を拡大しております。多摩市町村も努力しておりますが、二十三区はもっと充実していく。格差は広がる一方です。その原因が財政力の格差にあることはいうまでもありません。
 多摩地域で乳幼児医療費助成を本格的に拡充し、二十三区との格差をなくすためには、都制度の拡充がどうしても必要です。都として、対象年齢を小中学生まで広げると同時に、所得制限をなくすことに何としても踏み出していただきたい。切実な課題だと思いますが、いかがでしょうか。

○平井福祉保健局長 乳幼児医療費助成制度の対象年齢につきましては、これまで、義務教育就学前まで段階的に拡大してきておりまして、さらなる拡大は考えておりません。
 また、本制度の所得制限の基準は、国における児童手当に準拠しておりまして、一定の所得制限を設けることは必要と考えております。

○村松委員 現行の所得基準が適切だというわけですけれども、国が児童手当の所得制限を緩和すると、そのたびに東京都の乳幼児医療費の助成の基準も緩和するわけなんですよ。国が決めた基準だから適切だという、そういうだけじゃないでしょうか。
 ことしも、国の児童手当拡充によって、東京都の乳幼児医療費助成の所得制限が十月から緩和されます。その後、なお対象外として残されるのは何人ですか。また、乳幼児人口に対する割合はどうでしょうか。(発言する者多し)
 質問が聞こえないといっているでしょう。

○平井福祉保健局長 乳幼児医療費助成制度についてのお尋ねでございますが、所得制限緩和後、制度の対象外となる人数は、平成十八年一月一日時点の推計人口をもとに算定いたしますと、約十五万三千人でございます。これは、乳幼児人口の約二三%に当たるものと考えております。

○村松委員 今回緩和されても、二割以上の乳幼児がなお対象外になってしまうということです。私は納得できません。なぜならば、今回緩和された国の児童手当の所得制限、どういう基準で設定されたかご存じでしょうか。厚生労働省に確かめてみました。できるだけ多くの人を対象にできるように、おおむね九割の児童がカバーできるように設定したという話なんです。
 ところが、同じ基準を準用している都の乳幼児医療費助成は、今答弁されたように七七%、八割弱の児童しか対象にならないんです。東京は物価も高く、所得も高いわけですから、全国一律の国の所得基準では、東京の実態に照らしたら厳し過ぎるんです。要するに、児童手当の所得基準が適切だという都のいい分には道理がありません。
 今回の所得制限緩和を前提として、所得制限を撤廃するために必要な東京都の経費は幾らですか。

○平井福祉保健局長 仮に乳幼児医療費助成制度の所得制限を撤廃するとした場合、平年度ベースで算定いたしますと、約三十二億円が必要となるものと考えております。

○村松委員 所得制限の撤廃は、財政的に見ても十分に可能なんですよね。しかも、国の方が現在、三歳未満児の医療費負担を二割に軽減しておりますが、これを就学前まで広げる予定です。その場合、現行制度を維持する都の経費はどのくらい軽減されますか。また、所得制限撤廃に必要な経費は幾らになりますか。

○平井福祉保健局長 医療保険の自己負担割合の軽減は、平成二十年四月に予定されておりまして、現時点でその影響を積算することは非常に困難でございます。
 こうした前提のもとで、あくまでも仮定の話でございますが、制度実施の時期とは無関係に、平成十八年度予算規模を基準に、あえて影響額を算定した場合には、平年度ベースで約二十三億円と見込まれます。
 また、これもあくまで仮定の話になるんでございますが、二年後の平成二十年度に自己負担割合が軽減された後に所得制限を撤廃することとした場合、都の負担分だけで約二十五億円が必要となりまして、さらに市町村においても負担増となるということでございます。

○村松委員 就学前まで二割負担に改善された場合は、都の財政負担は二十三億円軽くなるんですね。それを充当すれば、所得制限をなくすことが十分できるんですよ。
 私は、今こそ、都民の切実な願いである乳幼児医療費助成の所得制限をなくすとともに、さらに小中学生まで対象を広げることを改めて強く求めます。
 乳幼児医療費助成だけではありません。特別区では、少子化対策、子育て支援の新規事業が来年度予算にたくさん盛り込まれております。例えば、練馬区では第三子以降に祝い金、中央区は妊娠したら三万円の出産支援タクシー券を助成、渋谷区は、妊娠期間中の経済負担を軽減するハッピーマザー助成なんです。台東区はファミリー世帯に家賃助成、文京区は、育児休業手当や代替要員確保に取り組む中小企業に対する支援事業を計画しております。
 これは、ほんの一例にすぎません。ここでも、多摩と二十三区の財政力の違いによる格差が明確に出ております。多摩の市町村では、やりたくてもできない、これが実情なんです。
 第三子以降の祝い金、出産支援タクシー券助成など、区市町村で独自に実施している少子化対策事業に、都の福祉改革推進事業や、来年度創設予定の子育て交付金を充実、改善し、使えるようにすべきだと考えますが、いかがでしょうか。

○平井福祉保健局長 ただいまお尋ねの経済的給付を目的とする事業につきましては、福祉改革推進事業実施要綱では対象外としております。
 子育て推進交付金につきましても、同様に対象外とする考えでございます。

○村松委員 都の包括補助制度である福祉改革推進事業は、三年限りの立ち上げ支援や調査費のようなものが中心で、経常的事業には基本的に使えないなど、多くの問題があります。その上、経済的給付が目的の事業は対象にしないというのは、本当におかしな話なんです。
 知事は、フランスの少子化対策の経済的支援をサジェスティブだ、つまり示唆に富んでいると評価し、調査したいといったではありませんか。子育て支援交付金については、繰り返し指摘してきたように、認可保育所や学童保育の都加算補助を廃止して子育て支援に回すというこのやり方は、そもそも大きな間違いです。子育て支援の交付金というなら、都加算補助は現行どおり存続し、その上で経済給付的事業も対象にした交付金にすべきです。
 知事、少子化対策を本気で進めるためには、経済的支援の充実がどうしても必要です。区市町村の努力を推進するために、都の補助制度を初めとした新たな財政支援、それこそサジェスティブといえる制度をぜひつくっていただきたい。強く要望しておきます。
 これ以外にも、課題は山積みしております。いわゆる三多摩格差といわれる課題の中には一定改善されたものもありますが、新たな格差を生み出しているものも少なくありません。(パネルを示す)
 このグラフを見てください。この上が、二十三区を一〇〇とした場合のそれぞれの施策なんですね。この七年間の石原都政の中で、一定前進しているものもあるんです。この赤いのが前回より進んでいる。しかし、いまだに二十三区から比べたら後退しているんですよ。大きくおくれている。そのことをぜひわかっていただきたい、理解していただきたいと。
 知事に伺いますが、多摩都民が受ける行政サービスと、区部都民が受けるサービスとの間に大きな格差が広がることは好ましくないと思いますが、いかがでしょうか。

○石原知事 地方分権の考え方から申しますと、それぞれの区市町村により行政サービスの質が異なることは、当然あってしかるべきだと思います。個々に見れば差がございますが、いわゆる三多摩格差については、かなりの部分で解消してきていると思います。
 また、多摩には最先端技術が集積し、製造品出荷額では区部を上回るとともに、豊かな自然環境にも恵まれるなど、むしろすぐれている面もございます。
 もし、この地域に、共産党が強烈に反対している環状線が二つ完備しますと、これは都市工学の原理からいって……(村松委員「答弁を短くしてください」と呼ぶ)黙って聞け、大事なことをいっているんだから。都市工学の原理からいって、これはシリコンバレーにまさる、大きな大きな工業地帯になりますね。
 例えば、つくば新線にあなたが乗ってごらんなさい。十年後、秋葉原から……(村松委員「時間がないんです」と呼ぶ)要するに、もっと大事なことをいっているんだ。筑波までの間、これは十年もたったら大都市圏になりますよ。それが都市の原理というものなんだ。そういうものを換算して、あなたはもうちょっと冷静に物を考えた方がいいと思いますな。

○松原委員長 村松みえ子委員の発言は終わりました。

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