東京都議会予算特別委員会速記録第三号

○大塚副委員長 田代ひろし委員の発言を許します。
   〔大塚副委員長退席、新藤副委員長着席〕

○田代委員 ただいま、北朝鮮における拉致のお話をいただきましたが、実は、私がきょう並んでおります古賀委員、そして、本日は一緒に出席できませんでしたが、土屋たかゆき議員、足かけもう十一年になりますか、この問題に取り組んで。当時は全く、先ほど知事がおっしゃったように相手にされない問題でありました。大変長い間、知事のお力をいただいて、北朝鮮拉致問題に取り組んできたわけでありますけれども、やはりこの一番根本は、何といっても日本の教育にあると考えております。ですから、人権であることはもうかなり前から我々申し上げておりましたし、また、経済制裁はしなくちゃいけないということはかなり早くいっていたわけですけれども、やはり基本は子どもたちの教育、これを知事を中心に行政の皆様方がしっかりと取り組んでいただきたい。そして、この予算特別委員会、この委員会室初め各委員会室に、せめて日の丸、国旗が掲揚されることを切望いたしまして、質疑を始めたいと思います。
 地域住民のために実施される広場あるいは公園などの造園工事に対して、専門的技術や知識を持った熟練技能者を十分に活用すべきとの観点から質問いたします。
 公共事業は、この工事は原則として単年度完結の事業でありまして、入札を経て安い価格の事業者が落札するのは、不正防止の観点からもごく一般的なことではございます。しかし、行政が発注する通常の造園工事では、造園の専門知識のない、ブルドーザーなどの機械による作業専門の事業者が安価に仕事をとることが多く、十分な造園施工が行われず、そのために、二、三年で広場の樹木が枯れてしまった例もあると聞いております。
 一方、すぐれた造園技能者は、土地全体の景観を第一に考え、その土地の質に合った樹木を選んで、木々が生育する様子を見守りながら慎重に工事を進めてまいります。工事の際に、少しでも造園の熟練技能が活用されていれば、短期間で樹木が枯れるというような事態は起こらなかったはずでありまして、安価なものが、逆に手直しに毎年予算がかかり、長い目で見ると、予算のむだ遣いと指摘されかねない状況が見受けられるのは問題でございます。
 そこで、私は、平成八年度から、行政による制約や関与を極力減らして、民間団体が自律的に資格認定を行う制度として開始されました基幹技能者制度の活用を提案いたします。
 本来は、基幹技能者を工事現場において登用する仕組みがあればよいのですが、民間主体の資格ということでありまして、徹底されていないのが現状です。国にはこうした熟練技能者を評価するさまざまな制度があるため、かえってその内容が重複していたり、基準が統一されていないなど、制度が利用しにくいという側面はあります。しかしながら、この基幹技能者などの熟練技能者集団のノウハウを、活力のある東京を築くために十分に活用することは、都民のニーズに柔軟に対応するためにも有効と考えますが、ご所見を伺います。

○成田産業労働局長 ご指摘のとおり、東京の活力を維持するためには、熟練技能者のすぐれた技能を、行政も含めさまざまな現場で活用することが有効であると認識しております。
 都は、熟練技能者の活用を図るため、技能検定による個々の技能水準の明確化を促進するとともに、特にすぐれた熟練技能者につきましては、東京マイスターとして表彰することにより、技能尊重の機運の醸成や技能者の社会的地位の向上に努めております。
 熟練技能者の活用に当たりましては、基幹技能者を初めさまざまな資格がある中で、国の活用方針との整合性を踏まえながら積極的に取り組んでまいります。

○田代委員 活用を強く要望して、次に移ります。
 消防団員の健康管理について伺いたいと思います。
 実は先日、消防団の行事に私、参加したときのことなんですが、整列していた消防団の方が急に倒れまして、その場で私が必要な救急処置は行ったんですが、その後収容された大学病院で、心疾患の治療のために約三週間の入院を余儀なくされました。これは実は初めての経験ではなく、過去にも何度かそういうことに遭遇したわけですが、実はそのとき私は、消防団の方々が第一線で活躍していただくためには、日ごろの健康管理と効果的な定期健診が不可欠であると思ったわけであります。
 そこで、まず、現在団員の方々に対してどのような健診が行われているのかをお伺いしたいと思います。

○関口消防総監 当庁では、特別区消防団員の健康管理を図るため、三十五歳以上の団員を対象に定期健康診断を実施しております。検査は、高血圧症、心臓疾患等の循環器系疾患に係るものを中心に、血圧測定、尿検査、心電図検査等も行っております。

○田代委員 ご答弁にございましたように、身長、体重、尿検査、また、一部で行われている心電図検査、これだけでは、昨今大変問題になっている高血圧、糖尿病、脳血管障害、心臓病などの早期発見というのはなかなか難しいと思うんですね。
 そこで、私は、団員に対する定期健診の際に、区とか市で行われている健診とは重複しない範囲で生化学的血液検査を実施することによって確実な健康管理を行い、献身的な活動を続ける団員の皆様の熱意にこたえるべきと考えておりますが、ご所見を伺いたいと思います。

○関口消防総監 消防団員の健康管理は極めて重要であることから、現在当庁が行っております健康診断に加え、三十五歳以上の消防団員には、各区や勤務先で実施している血液検査を全員受診するよう督励していくとともに、このような機会のない三十五歳以上の消防団員に対しましては、今後、血液検査の実施に向けて検討してまいります。

○田代委員 ぜひともその血液検査、実施をお願いいたします。
 さて、いわゆるバリアフリーという言葉がありますが、バリアフリーのまちづくり、これが叫ばれて久しいわけでありますが、実際に生活する人々や利用する人たちの立場に立った計画づくり、あるいは整備が行われているのかどうか、また、特に障害を持った方々から寄せられている要望をいかにまちづくりに生かすかという観点から、幾つか質問をさせていただきたいと思います。
 車いす利用の方や、あるいは高齢者の方々のために、よく段差をなくすということを聞きますが、実際に歩道と車道の段差を全くなくしてしまう、こういう事例があったんですが、目の見えない方々にとっては、歩道と車道の区別がつかなくて、怖くてまちを歩けなくなる、こういう相反する現実があるわけです。
 都のまちづくりマニュアルは、福祉保健局主導のもとに作成されているわけでありますが、そこで、まちづくり、建設現場の主役である建設局の持つノウハウがどのように生かされているのでしょうか。住みよいまち、安全な道路の設計には、縦割りではなく、それぞれの局の所管する事務所が持ち得る英知を結集して、定期的に意見や情報を交換し、常に新しい的確な方向性を模索する必要があると考えますが、建設局長のご所見を伺いたいと思います。

○岩永建設局長 都道のバリアフリー化につきましては、高齢者や障害者の方々が安全かつ快適に道路を利用できるようにするため、福祉保健局などと連携し、歩道の段差解消の整備基準を作成するなど、積極的に取り組んでまいりました。しかしながら、高齢化の進展は著しく、どのような体格や身体機能の人にも利用しやすいものにするには、きめ細かい歩道の整備や改善が求められていると考えております。
 これまでも関係機関や団体と協議を行いながら事業を進めてまいりましたけれども、ご提案のように、こうした協議に加えまして、福祉施設の担当者などと意見交換をするなど新たな取り組みも試みながら、より利用者の視点に立った施策を実施してまいります。今後とも、だれもが利用しやすい歩行空間の確保に向けた歩道整備を推進してまいります。

○田代委員 現場同士の話というのは今まではなかったわけですけれども、建設局長、今ご英断いただいて、画期的な試みでありますが、これは、各局それぞれ現場同士での横のつながりというものが、やはりこれからの二十一世紀の東京は大変必要だと思いますので、取り組んでいただきたいと思います。
 次に、ハード面の整備による安心・安全なまちづくりも大変大切なんですが、そこに生活する弱者を支えるネットワークづくり、これもまた重要なわけです。そこで、災害時、ひとり暮らしの高齢者の方あるいは障害者の方など、自力で避難が困難な要援助者の誘導について質問をいたします。
 板橋区では、災害時の支援を希望する人たちの登録システムというものを開始いたしました。もちろん個人情報保護などに十分配慮するという条件はついておりますが、いざというときに、警察、消防、消防団、ボランティア組織などが情報を共有して、協力して支援に当たれるという点で評価できると思っております。
 ぜひとも都が中心となって、このような体制を各区市町村が広く確立するよう働きかける必要があると思いますが、ご所見を伺いたいと思います。

○平井福祉保健局長 災害発生時に、高齢者や障害者などの要援護者が迅速かつ円滑に避難できるようにするためには、日ごろから要援護者の住居などの情報の共有、情報伝達体制の整備、具体的な避難支援計画の策定などを行っておくことが重要でございます。
 都はこれまでも、災害時における要援護者の避難支援につきまして、区市町村のほか、障害者団体や民生委員などを通じて周知を図るなど、安全対策の徹底に努めてまいりました。
 今後、区市町村に対しまして、お話の板橋区の取り組みも含め、委員からご提案いただきましたように、先進的な取り組み事例に関する情報提供を行うなど、要援護者支援のための体制づくりを支援してまいります。

○田代委員 ぜひとも取り組みのこと、よろしくお願い申し上げたいと思います。
 そして、行政におけるホームページのバリアフリー化と使いやすいシステムについて、次に質問したいと思うんですが、高齢社会に伴って、ホームページの文字の大きさや色、こういうものに配慮が必要なことはいうまでもないわけですが、特に視覚障害者に対して、ロービジョンケアあるいは音声読み上げシステムへの対応が必要だと思います。そのために今、福祉、災害などの情報を発信するページでは、特に、PDF方式だけではなく、文字のみで構成されるテキスト形式への対応が必要不可欠と考えておりますが、都の現状と今後の対応について伺いたいと思います。

○高橋総務局長 これまで都では、ホームページにおきまして、高齢者や障害者などを含め、だれもが必要な情報を取得できることを目指し、東京都公式ホームページ・ウエブデザインの手引を定め、文字を拡大して見る機能や読み上げソフトなどに対応できるよう配慮してまいりました。
 しかし、ご指摘のとおり、福祉、災害などの情報を発信するホームページが、視覚障害者に必要な読み上げソフトに必ずしも対応していないなど課題がございます。
 今後は、こうした読み上げソフトに対応できるよう、各局のホームページにテキスト形式も併記するなど、手引の周知徹底を図り、都のホームページのバリアフリー化に積極的に取り組んでまいります。

○田代委員 ぜひとも積極的にお願いしたいと思うんですけれども、続いて、やはり視覚障害者のための話なんですが、都内に今、音声の信号機、これは努力してつけていただいているんですが、まだまだ全然足りないんですが、そういう場所があります。視覚障害者の方は、外出の際に、事前に目的地周辺の情報を収集するなど、個人的にも自分の安全を確保するための努力をしているわけですが、そこで、音声信号機の設置場所やバリアフリー情報などが、例えば警視庁や市区町村のホームページに公開されれば、有効な情報として活用できると思っているわけです。ぜひ実現していただきたいと思いますので、強く要望しておきます。
 そして、ハードとソフト両方が相まって初めてだれにとってもこの東京が安心・安全なまちとなるはずです。全庁的に統一性のある取り組みがなされることを強く要望して、次の質問に移らせていただきます。
 次は、救急医療について伺います。
 三百六十五日二十四時間安心できる医療体制の整備を望んでいる都民にとって、特に不安なのは、対応が手薄になる休日や、あるいは深夜帯、これが心配になるわけですね。都民の方から、救急病院と看板のある病院に行ったが、診察をしてもらえなかった、あるいは適切な処置をしてもらえなかったなどといった声も私のところに届いておりますが、これは、指定を受けている救急病院に必ずしも全診療科目の医師が何人も当直しているというわけではないために、全く専門外の患者さんが運び込まれたときには、申し上げたような、いわゆる、嫌な言葉ですけれども、たらい回し状態が起きることもあるわけで、特に専門医の減少が顕著であります小児救急では、深刻な問題となっているわけであります。
 現在は、小児科の保険点数を上げることによって、医師の数を確保するという大変安易な対応がとられておりますけれども、重篤な小児を、いつでもどこでも安心して送ることができる、いわゆる後方支援病院があって、即座に紹介、転送が可能なシステムが構築されていけば、小児科医は十分に自分の責務を果たすことができるわけでありまして、よく小児科医が転科していく、ほかの科に移っていくもととなるバックアップシステムが不備であるために大変歯がゆい思いを何回もして、そういう思いの中で挫折して小児科をやめていく、こういう医師不足が起こらないわけです。小児科医というのは、生活のためだけにその道を求めたわけではありませんで、医師としての信念を貫くためにそれを選んだから、当然そういうものに対して最後まで戦いを挑むのですが、残念ながら戦い敗れる小児科医もいるわけです。
 都の救急医療充実のためには、言葉だけではない、病診連携というのが必要なわけですが、現在、それぞれの救急病院に、何科の医師が当直に当たっているかという情報だけは公開されているわけです。ところが、時としてそういうときには、当直医の専門分野が重なってしまって、逆に必要な専門医が確保できないで治療が受けられない、こういうときもあるわけですね。
 そこで、広範囲にわたって救急医の配置のバランスを、もっと予測を前から立てて、バランスをとることができる専門家によって、計画性を持った当直医の勤務体制をつくり上げていく、こういうことが必要なんじゃないかと思います。
 また、問題となっているたらい回しを解消するためには、救急病院の当直医の質と量を確保することが大変必要だと考えております。そのためには、例えば開業医師の協力を得る、こういうことを可能にするなど、思い切った施策も選択肢の一つだと考えております。具体的にどのような施策をおとりになるつもりか、その際には、都立病院、また公社病院がどのような役割を果たすのか、お考えを伺いたいと思います。

○平井福祉保健局長 委員ご指摘のとおり、救急医療を担う医師の育成、確保は極めて重要でございます。医師の育成は本来国の役割であると考えておりますが、都ではこれまで、救急病院等の医師を対象として、救急医の専門研修事業を実施してまいりました。
 今後、お話の貴重な資源である都立病院や公社病院を活用し、スキルアップを目指す地域の開業医の先生方への総合的な研修の充実も課題となると受けとめているところでございます。さらに、大学病院や医師会など関係団体との密接な連携に努め、地域の実情など十分に把握の上、こうした医師の研修や教育のあり方について鋭意検討してまいります。

○田代委員 先ほどちょっと申し上げましたが、たらい回し、嫌な言葉なんですけれども、救急時の対応に問題のあった救急病院、これに対して、現在都はどのように対処しているのか、また、今後は当然、事実の公表というのは当然のことながら行われなくちゃならないと思うんですが、都はどのような措置を講じていくおつもりなのか、伺いたいと思います。

○平井福祉保健局長 問題のあった病院につきましては、事実関係を調査し、必要な改善を指導しているところでございます。改善が認められない場合におきましては、救急病院等の申し出の撤回を指導し、「東京都公報」において撤回を告示しているところでございます。
 救急病院等の認定は三年ごとの更新制で、その際に、人員体制などについて改めて審査を行っているものでございます。今後も適切な対応について指導してまいります。

○田代委員 救急病院に指導なされているということですけれども、今現在、医療の質を見ないで、金額だけで判断する健康保険制度のもとで、大変努力して都民に貢献している病院がある一方、やはり問題を幾ら指摘されても一向に改善の兆しが見られない、向上心のない病院もあるという声が聞こえているわけであります。さらなる指導の徹底を都民のために強く要望しておきたいと思います。
 救急医療体制を支えているのは現場の医師たちなわけですけれども、救急医療には、一般の診療体制に比べ、最低でも五倍から六倍の人員と費用が必要であるにもかかわらず、不採算などの問題で、十分な数の医師を確保できないまま必死で頑張っている、これが実情なんですね。墨東病院なんか大変だと思います。何といったって人数がないとどうにもならないわけで、救急医療というのは特に医師の数が左右するわけですから。
 こうした非効率で過酷な状況の中で満足な救急医療を提供するということは極めて困難なわけですが、そんな中の一つに、問題にもなっております、現実に救急現場の当直医、これにアルバイトの医師も含まれていて、そういう医師の対応に、都民から不信感を招く一因にもなっているのではないかと思うんです。
 そこで、今義務化されました新臨床研修医制度、これが義務化することになった理由は、当然救急医療などを含む基本的な技能を今度は現場でしっかり身につけて、例えば救急医療であればそれを充実したものにするよう制度が改められたわけですけれども、しかしながら、公的病院でも、今まで教育経験がない医師というのも多いわけですね。現場では働いてきたけれども、学生を教えたことがない。指導体制が必ずしもどこでも十分であるとはいえないわけです。実際の問題として、医師免許取得後につけ焼き刃で臨床教育を行っても、なかなか身につくものではないわけです。救急医学に関する基礎的な教育を受けた医師が、実際にその後現場で活躍するためには、良質な研修医の教育指導システムの確立と、従来の旧態依然とした医学界の因習にとらわれない、斬新な指導者による臨床教育が必要だと考えています。
 小児救急を含めて、都民すべてが納得のいく救急ネットワークを早急に確立するためには、東京都みずからが、医科大学を初めその附属病院あるいは都立病院、公社病院、公立病院を活用して広く協力を求めるとともに、いつも何回もお願いしていますように、医師の双方向、この移動がないと、この双方向交流がないと、ただただかけ声で終わってしまうわけですから。
 それから、これはなかなか大変だと思いますけれども、患者さんが一番、どこでも血液をとられたり、話が違ったり、嫌なことがある。この医療情報の共有というものをイントラネットで構築していかなくちゃならないと思っております。さらに、先ほど申し上げましたように、保険者による経済効率のみの医療費の査定というものを正すために、専門医による科学的根拠に基づいた救急医療費などの算定を通じて、実効性のあるシステムを構築することが必要と考えておりますが、ご意見を伺いたいと思います。

○平井福祉保健局長 救急医療を担っている病院間の人的交流あるいは医療情報の共有化、また、医学的根拠に基づいた安定的な救急医療制度の構築など、非常に多くの貴重なご提言をいただいたところでございます。
 都では、これまで、熱傷患者や心臓循環器病患者に対しまして、特殊かつ専門的医療を提供するため、診療体制の整った病院間でのネットワーク化を図っているところでございます。
 今後、委員のご提言をしっかりと受けとめさせていただきまして、救急医療対策協議会などさまざまな場での検討を通じ、救急医療の質の向上やネットワーク化の推進に努めてまいります。

○田代委員 言葉だけの医療連携ということではなくて、医師の顔がお互いに見える、こういう地域の救急医療が必要であるわけでありまして、都民の安全と安心を守るのは、まさしく福祉保健局と病院経営本部の役割なわけでございますから、ぜひとも日本の医師教育を背負って立つ、そういう気概を持って取り組んでいただきたいと強く要望して、次の質問に移らせていただきます。
 高齢社会が本格化する中、在宅介護を支え得る環境づくりや介護施設の整備が進まないために、高齢者が、ともすると、嫌な言葉ですが、お荷物として扱われ、一部大変劣悪な公教育と相まって、言葉とは裏腹に家族間で各世代が反発し合って、さまざまな問題を引き起こしているわけであります。入院している高齢者の住宅が狭くて、自宅に帰っても居場所がないため、病状の改善が見られたとしても、家族や本人の強い希望のもと、仕方なく入院を続けさせるという社会的入院が、よくいわれる言葉ですが、現在も都市部における深刻な課題の一つであるわけです。
 万人が過度の、どうも最近そういう風潮があるかもしれませんけど、過度の権利意識を持って、日照権などを過度に求めて、高層建築物をすべて悪いものだとする個人主義を貫いたのでは、社会的入院の解消に不可欠の住環境の整備というものは全く進まないわけであります。当然、歴史的建造物が建ち並ぶ家並みなどは十分に生かして、大都市の実情に合った建ぺい率、容積率などの見直しが今絶対に必要だと考えております。
 現在、社会的入院の対策として、入院医療費を入院後四カ月目から、経営が成り立たないまでに激減させるという政策がとられております。そのために、リハビリが途中であったり、病院が変われば病状が悪化するような場合でも、また、転院先が決まらないまま、三カ月すると退院を強いられたり、無理やり退院させられたり、そういう結果、自宅に帰っても全く病状の軽快が見られない、そのまま放置される、そして大変重篤な変化が起きてくる、こういうことが大きな問題になっているわけです。
 当然三カ月たてばどのような病気でも自然に改善される、こういうことであればいいわけですけれども、当然そんなことはないわけですね。ここでも科学的な検証が行われないまま、医療費というお金だけ、金銭だけで判断する力が働いているわけであります。
 当然、最近、皆様よくご存じのとおり、日本の一般医療の質は世界で最高位です。そして、それにかかる費用は、少なくとも先進国の中では突出して低いことが知られているわけです。にもかかわらず、国は、税金のむだ遣いに対する対処はそのままにして、一番切り詰めやすい医療費に安易に飛びついて、政策転換を行い続けてきております。
 近年、紙面を騒がすいわゆる医療事故あるいは不正請求など、当然医師側にも改めるべき点はあるのは事実であります。それにしても、現在の医療保険制度は、患者さんにとって不利益なことが多過ぎるように思います。
 今回見直された介護保険制度の中でも、施設介護から在宅介護へと施策の転換が図られておりますが、家庭内に、安心して在宅介護を受けて、医師や看護師の往診や介護を受けることができる高齢者の居場所を確保する、それとともに、二世帯、三世帯の同居を可能にするように住宅の施策を見直さなくては、在宅介護などは夢のまた夢だと思っております。
 近年では、建築技術の革新により、ユニット工法などを活用し、工事費を低く抑えつつ高層化することも可能になる一方で、光ファイバーや空調設備の進歩で、地下室でも良好な環境を保つことができるようになりました。このように、技術的には、中高層の住宅も容易に建築可能になりましたが、現実は、容積率、建ぺい率の見直しが遅々として進まないため、一部を除き、東京は一種住専が多く、低層住宅が並び、在宅介護に必要なスペースの確保が困難になっております。
 スペースの不足はまた、違法駐車を原因とする交通事故を引き起こし、医療費圧迫の一因ともなっているわけです。また、この整合性のない建ぺい率、容積率による障害は、セットバックを十分に確保できない状況を生じさせ、狭くて見通しの悪い道路がまだまだ数多く残る原因ともなっております。これらの狭隘道路は、福祉車両や救急車の通行を妨げ、在宅介護上、重大な支障となっているわけであります。
 申し上げてまいりましたように、大都市の諸問題に何ら対処することなく、国は、施設介護から、都の現状では不可能に近い在宅介護へと、その政策を大転換しようとしてきているわけです。東京から国を変えるという信念の知事が、今この国の、都市政策に大変配慮のないこの現実をどのように受けとめられていらっしゃるのか、ご意見を伺いたいと思います。

○石原知事 いずれにしろ、東京も含めて日本というのは非常に国土が狭小で、かつ可住面積が極めて少ない。可住面積というのは、可住の土地というのは傾斜度十二度以下の土地をいうそうですけれども、全体の面積が日本より小さなイギリスでも、可住面積は日本の八倍です。ドイツは十二、三倍、フランスに至っては二十倍ですね。そういう中で、特に東京にいろんな集中、集積があるために人口も集中しまして、住宅事情というのは非常に劣悪なものになっていますし、生活に関係ある道路も一向に広がらない。だから、例えていえば、自転車がどこを走っていいかよくわからぬわけですね。歩道を走ったり、車道を走ったりしていますけれども。そういった状況がありまして、しかも、介護の問題で、家庭で年寄りを受け持てということになれば、住宅の問題が必然クローズアップされてくるわけですけれども。
 先般も、他の質問で、青山一丁目のPFIによる都営住宅の建てかえの問題をちょっと言及しましたが、ああいう大型の開発について文句をいいますと、国交省も苦笑いしながら、どうぞということになるんですが、個々の住宅については依然として、要するに北斜線であるとか、その他この他、非常にいろんな制約がありますけれども、これはやっぱり時代に沿って、特に老人社会になってきて、かつまたお年寄りの介護という問題が本当に喫緊の問題でありますから、そういうものを踏まえて、やはり福祉政策というものを踏まえながら、かつまた都市の政策、都市の造形というもの等との関連でこれから積極的に考えていく必要があると思いますし、また、いうべき主張は国にして、向かっていきたいと思っております。
 大規模の開発に関しては、特区ですか、そういった制度もできましたけれども、これはやっぱり住宅には及んでこないといううらみがございまして、ご指摘の点、都としても考えながら、国にいうべきことをいっていきたいと思います。

○田代委員 知事のお力でもって、不可能に近いこの建ぺい率、容積率、どうにか風穴をあけていただきたい。これが東京の本当に安心・安全のまちづくりの基本になると考えております。
 この大都市の住環境を全く無視して、抜本的な解決策を打ち出さないまま、国は全国画一的に医療介護政策の安易な見直しをどんどん行っている、これに大変私は強い憤りを感じるわけですが、容積率、建ぺい率の緩和に時間がかかるといっても、今、待ったなしの高齢化が進んでいるわけでありまして、これに対応する施策を積極的に展開していくことが都の責務であろうと考えております。
 そこで、具体的かつ緊急的な施策として、かなりの数があるといわれている都の遊休地を活用した、三から十ベッドの小規模特別養護老人ホームの整備、これはなかなか国は許さないと思いますが、ただ、今は、国は、要介護の高齢者が生まれ育った町で生活をし続けることができる小規模かつ地域密着型特養の配置を提案する法整備を進めてきております。しかし、逆に、この東京のように地価が大変高くて、適当な空き地も簡単に見つけることができない大都市では、小規模特養、特養は特にそうですが、そういう制度だけをつくっても、都市に即応した規模を認める法令の改正を行っていかなくては、現実にはそういう特養の設置が簡単に進むわけではないわけです。
 そこで、提案したいのは、都の所有する一定期間利用目的がない土地の活用、先ほど鮫洲のお話もございましたが、都は既に認知症グループホームに対して、その用地の貸し付けを実施してきた経験があるわけですから、ぜひとも、特養の場合には、法的な整備が大変たくさんある、困難であるということは十分承知はしておりますが、土地の高騰により都市部において遅々として進まない特養の建設、そして、小規模であれば各町にできるわけですから、自転車でおじいちゃん、おばあちゃんの顔を見に行くこともできる、また、窓から見る景色も変わらないわけでありまして、こういう、都における一つの光明を見出す画期的な施策として、都民のためにぜひとも英断をもって、この一定期間利用目的のない土地の活用に取り組んでいただきたいと思いますが、ご所見をいただきたいと思います。

○平井福祉保健局長 高齢者の地域での生活を支えていくためには、国が新たに創設いたしました地域密着型介護老人福祉施設の整備を促進していくことが重要であると考えております。
 しかしながら、地価が高く、土地の取得が困難な東京におきましては、制度の創設だけで設置が進むものでないことは、ご指摘のとおりでございます。
 このため、都は、これまで、認知症高齢者グループホームなどの整備促進策の一環として、都有地を低廉な価格で事業者に貸し付ける事業を実施してきたところでございますが、ご提案の趣旨も踏まえまして、都有地の利用を地域密着型介護老人福祉施設につきましても適用できるよう、今後、その実施に向けた具体策について関係局と協議してまいります。

○田代委員 それでは、もう時間でございますので、最後に、介護予防事業、今問題になっています予防介護というやつですけれども、この事業について、細かい数字は担当局長さんにお答えいただいて、最後に知事にお話を伺いたいと思うんですが、まずこの介護予防事業はどういうものであるか、お答えいただきたいと思います。

○平井福祉保健局長 財団が実施いたします介護予防人材養成事業は、高齢者が生き生きと自立した生活を続けることができますように、日常生活を支援することを目的とした事業でございます。
 この事業では、主任運動指導員養成と運動指導員養成の二つの講習を実施しております。主任運動指導員は、財団が直接養成いたしまして、財団の指定を受けた事業者は、この主任運動指導員を講師として、介護予防を必要とする高齢者を直接指導することとなる運動指導員を養成するという形になってございます。
 この事業は、老人総合研究所がこれまで培ってきた研究成果を活用いたしまして、民間事業者を通じて、広く介護予防人材の育成を図るものでございます。

○田代委員 今お話しいただいた研修の受講料というのは、東京都だけでどのぐらいの収入があるんでしょうか。

○平井福祉保健局長 財団が直接実施しております介護予防主任運動指導員養成研修の受講料は一人当たり三十万円でございまして、また、平成十七年度の研修受講者見込みは百六十九名であり、これによる収入は五千百万円程度でございます。

○田代委員 それでは、介護予防運動指導員養成講習会がどれだけの収入があるのか、そして、このうち財団に納付される金額がどのぐらいか、これは東京にまず限定して、どのぐらいであるのか教えていただきたいと思います。東京です。

○平井福祉保健局長 指定事業者が実施する介護予防運動指導員養成講習の受講料につきましては、各事業者が独自に設定することとなってございます。事業者は、受講料の額にかかわらず、受講者一人当たり二万円を、教材費、試験問題作成費、名簿管理料として財団に納付いたします。
 指定事業者の養成計画によれば、平成十七年度は全体で約一万三千人を養成することとしておりまして、仮に受講料を十万円と想定した場合、受講料総額は十三億円程度と見込まれます。そのうち、財団に納付されるのは二億六千万円程度となると聞いております。

○田代委員 改めてお伺いしますが、これは東京都だけでよろしいんでしょうか。

○平井福祉保健局長 全国を対象としております。(田代委員「今の金額です」と呼ぶ)ちょっと失礼します。
 今の金額は全国だそうでございます。

○田代委員 先ほど東京ということでお伺いしたつもりなんですが、時間の関係もありますから、いいんです。
 ちょっと知事にお話をさせていただきたいんですが、今この事業は何で起きたかというと、実は厚生労働省が予防介護をしようと、お年寄りが介護にならないようにしようということで始まったわけですね。そして、さきおととしは、予防介護士なる名前が世の中を泳いでいたわけです。こういうものに新しい資格ができるんだと、みんなそれを聞いていたわけですね。予防介護士というものになれば、当然新しい認定資格ですから、それをなりわいとしようという人たちが、一回にちょっと行って三十万というのは、これは普通の値段ではないわけですから、そして、そのお免状をもらうだけで二万円かかるわけですね。
 確かに都老研はそういうノウハウがあることは僕もよく知っています。大変高度なそういう資格というか、教えるノウハウを持っているわけですけれども、一般的に、当時のリーフレットを見ますとそうなんですけど、みんな東京都のマークが押してあるんですね。で、あたかも東京都がやっているように見えるんですけれども、ニチイ学館というところを初め幾つかの、いろいろ週刊誌なんかで問題になっている、これはもうお読みになったことはあると思いますけれども、それは僕はにわかに信じているわけではありません。機械によって大量のお金が、一カ所につき四百万から七百万ぐらいの機械を買わされるわけですね。その機械の開発も都老研が当然指導しなくちゃできないわけですから、膨大なお金、一説によると二十億とか三十億とかというお金が動いたといわれている。
 それがきちっとしたお金であれば全然構わないんですが、一番問題になっているのは、どこの地方に行っても、学会のとき、あるいは東京に学会があって我々の仲間が来たときにも、東京都というのは随分汚い商売するなという話をされるんですね。
 何かというと、実はこのいわゆる予防介護士という制度は、国はつくらないといっているんです。つくらないと三回も国の中の厚生委員会の中で答弁されて、文書になっているわけですね。ところが、ひとり歩きして、この授業、この講義を受ければ、三十万とか二十万とか、八万とか二万円、いろんな差があるわけですけど、これを受けると、あたかも何か後で商売になるような錯覚になってしまっている人がたくさんいるということです。東京都がやったやらないじゃないんです。ただ、マークはついています。堂々とついています。でかでかとついています。だれが見ても、ぱっと見れば東京都の仕事だと思う。青森の私の仲間、やっぱり介護保険のサービスをやっている医者の仲間も、それを見たときは、東京がやるんだから青森もやらなきゃいけないと思ったという話でした。
 ですから、李下に冠という言葉がありますけれども、ぜひとも東京都の方で、そういうものに保証するということはできないでしょうけれども、先ほど何かお話ありましたが、消防署の方から来ましたみたいな話になっちゃいますと、大変東京都自身の信頼関係というものが揺るぎますし、また、嫌なうわさになる。ですから、早急に、確かに最近のものは非常に見えない。薄い字で、これは法的根拠がありませんと最近は書くようになりました。さすがにお役人というのはすばらしい知恵を持っているなと僕は思うんですけど、僕が最初に見せていただいた幾つかのものは、そういうものが全く入っていない。どこでそれがすり抜けちゃったのか。
 東京都が走ったときには、途中の業者には、そんなことはいっちゃだめだよと多分指導したんだと思います。ただ、その先で、その三十万取ってくる業者は、これは東京のお墨つきで、東京都がやっていることで、国が東京都に任せたことなんだから、君たちこれを取らなきゃだめなんだという説明を受けたという話を聞いているわけです。
 これが直接東京都に関係するとは僕は思いませんが、やはりほかから東京都の商売が汚いといわれるのは非常に私は心外ですので、ぜひともこういうところをしっかり見ていただいて、この問題、きちっと審査するべきところは審査して、返すものは返して、方向性を東京都としては示していただくことをぜひとも知事に強く要望して、何かご意見があれば伺って、質疑を終わりたいと思います。

○石原知事 初めて聞きました話でして、私も驚きましたが、そういうことで東京の名前に傷がついちゃいけないと思います。
 それはだれでも介護されずに人生を終えたいわけでありまして、今出納長をしている幸田さんから、彼が福祉局長のときに、理想的な生き方はぴんぴんころりということだそうでありますけれども、それを成就するための専門家のノウハウというのもあるのかもしれません、ないのかもしれません、心がければ自分でできることかもしれませんが、しかし、それを商売にし、食い物にするやからがいるということは、これはけしからぬ話で、やっぱりそういうものは、むしろ委員のような専門家に聞きまして、医師会とも相談しまして、そういう制度なり、そういうクオリフィケーションが要るならば、やはり条例などをつくって、きちっと都が監督して、そういうノウハウを望む年配の方々が安心して受講していただけるような、そういうシステムをぜひとらなくちゃいけないなと思いました。ありがとうございました。

○新藤副委員長 田代ひろし委員の発言は終わりました。(拍手)
 この際、議事の都合により、おおむね三十分間休憩いたします。
   午後六時十三分休憩

ページ先頭に戻る