東京都議会予算特別委員会速記録第二号

   午後一時一分開議

○松原委員長 それでは、休憩前に引き続き委員会を開会いたします。
 委員会の要求資料について申し上げます。
 先ほど委員会として要求いたしました資料は、お手元に配布してあります。
 これより総括質疑を行います。
 この際、一言申し上げます。
 質疑に当たりましては、さきにご了承いただいております委員会実施要領等に従いまして運営してまいります。委員の皆様方には、円滑かつ充実した審議が行われますよう、ご協力をお願いいたします。
 なお、持ち時間につきましては、電光表示盤に残り時間を表示いたします。さらに、振鈴で五分前に一点、時間満了時に二点を打ち、お知らせをいたします。質疑持ち時間はお守り願いたいと思います。
 次に、理事者に申し上げます。
 答弁に際しましては、委員の質疑時間も限られておりますので、短時間で明快に答弁されるようお願いいたします。
 なお、各局長に申し上げます。
 発言の際には、必ず職名を告げ、委員長の許可を得た上で発言されますようお願いをいたします。
 これより順次発言を許します。
 吉野利明理事の発言を許します。

○吉野委員 昨年のちょうど今ごろも、私は、この予算委員会の場で質問をさせていただいておりましたけれども、本日は、都議会自由民主党を代表いたしまして、予算特別委員会総括質疑を行います。
 平成十八年度予算は、都税収入の増加を反映し、五年ぶりに一般会計の予算規模が六兆円を超えるなど、久しぶりに明るさのうかがえる予算となっております。また、第二次財政再建推進プランの最終年度に当たり、これまでの取り組みの総仕上げとしても重要な意義を持っております。
 いうまでもなく、安定した財政運営なくして充実した施策の展開はあり得ません。石原知事が就任した平成十一年当時の都財政は、まさに危機的状況にありました。その後知事は、職員定数削減などのいわば思い切った外科手術によって財政の健全化に道筋をつけ、体力の回復を図ってまいりました。
 そこで今回は、これまでの財政再建に向けた取り組みを総括するという観点から質疑をいたします。
 二次にわたる財政再建推進プランの取り組みも、実に足かけ七年に及びます。そこで、この間の取り組みにより、歳出削減及び歳入確保の両面において、具体的にどのような成果があったのか伺います。

○谷川財務局長 平成十二年度から十八年度にかけての七年間にわたる財政再建推進プランの成果といたしましては、歳出面では、職員定数の一万一千人以上の削減など、内部努力の徹底や施策の見直しを行い、約六千三百億円の削減を図っております。
 また、歳入面では、十一年度と比べ十八年度の都税徴収率を三・七ポイント向上させて九七・四%にするなど、徴税努力や受益者負担の適正化などで約一千三百億円を確保してございます。
 こうした取り組みによりまして、プランで掲げた巨額の財源不足を解消することができ、十八年度予算は特別な財源対策を講ずることなく編成したところでございます。

○吉野委員 知事は、財政再建に一つの区切りをつけることができたと述べておられますが、ようやくここまで到達したのは、今の答弁にあった血のにじむような努力があったからであります。我が党としても、これまでの努力は決してむだではなかったと感じております。こうした成果を上げるためには、都民の皆様のご理解とご協力が大きな力となったことを忘れてはなりません。
 さて、財源不足や財政の硬直化とともに都財政の足を引っ張ってきたのが、巨額の隠れ借金と基金残高の不足であります。そこで、隠れ借金と基金残高は、現在どのような状況にあるのか伺います。

○谷川財務局長 まず、隠れ借金について申し上げますと、平成十七年度当初予算編成時においては約九千億であったものが、十八年度当初予算におきましては約五千九百億円となり、十七年度最終補正と合わせて約三千百億円を圧縮しております。
 また、財政調整基金などの基金残高につきましては、平成十八年度当初予算においては六千二百九十億円と、平成十七年度当初予算編成時に比べ二千八百六十五億円の増となってございます。
 こうした取り組みによりまして、基金残高は隠れ借金を上回る水準にまで回復したところでございます。

○吉野委員 いずれも、財政再建に当たっての重い足かせとなってきたものです。将来にわたって安定した都財政を運営していくには、景気回復期にある今こそ十分な対応が求められます。
 今までの答弁でも明らかなように、都財政の構造改革は着実に進展しています。一方、国政では、国債発行額の抑制などの行財政改革に取り組んでいますが、まだ実効性あるものとはなっていません。また、三位一体改革の結果、地方負担は逆に増加することが見込まれるなど、景気回復による税収増を活用できず、地方自治体の台所事情はいまだに厳しいと聞いております。
 そこで伺いますが、都と、国や他の自治体の財政状況を具体的な数値で比較すると、どうなるのでしょうか。

○谷川財務局長 国や他の自治体との比較について、幾つかの財政指標を用い、具体的にお示しいたしますと、まず、政策的経費である一般歳出につきましては、都税収入が十八年度と同程度であった昭和六十三年度を一〇〇とした場合、都は、十八年度予算では九九と税収に見合った歳出規模となっているのに対しまして、国及び地方財政計画においては、それぞれ一四一、一三五と、この間一向に歳出削減が進んでいない状況にございます。
 また、起債依存度は、都の場合五・八%と極めて低いのに対し、国及び地方財政計画においてはそれぞれ三七・六%、一三・〇%と高率になっております。
 さらに、起債残高と税収の割合を比べると、都の起債残高は税収の一・五倍であるのに対しまして、国は十一・八倍、地方財政計画では五・八倍と、どちらも都を大きく上回っております。
 このように、都は、財政再建に積極的に取り組んでおり、国や他の自治体と比べて着実に成果を上げているところでございます。

○吉野委員 都財政と比較すると、国や地方の財政にはまだまだ明るい兆しが見えていないようです。
 これからの人口減少、少子高齢社会を見据えると、さらに財政構造改革を進めることは、我々に課された使命であります。都議会自由民主党は、これまで同様、都民にも広範な協力を求めながら、石原知事とともに困難に立ち向かっていくことを改めて表明いたします。
 そこで、今後の財政構造改革に向けた知事の決意をお伺いいたします。

○石原知事 十八年度予算は、巨額の財源不足を解消するとともに、いわゆる隠れ借金を圧縮し、さらに基金を大幅に積み増すなど、財政再建に一つの区切りをつけた大きな節目となる予算になったと考えております。
 しかし、この先決して順風満帆というわけではございません。ご存じのように、全く道理のないまま、このIT文明に逆行したといいましょうか、それを逆手にとったようなあの法人事業税の分割基準の見直しに加えまして、国には何と、法人住民税の分割基準にまで手をつけようとする動きが依然根強く残っております。さらに、少子高齢、人口減少社会の到来がもたらすさまざまな影響を考えますと、将来の備えが肝要だと思います。
 これまでの成果に決して安住することなく、今後とも、都議会のご協力をいただきながら、やはり石橋をたたき、たたきしながら渡って、財政構造改革に取り組んでいきたいと思っております。

○吉野委員 次に、国の財源調整について伺います。
 不合理な財源調整の中でも、その最たるものは、今、知事のお話にもございましたような過去四回にわたって見直されてきた法人事業税の分割基準でございます。直近の平成十七年度の見直しでは、一昨年来、これまでの影響額を上回る六百億円もの巨額の影響額を及ぼすとされてきました。
 ところが、本定例会の我が党の代表質問では、平成十八年度の初年度で一千三百億円程度の大幅な減収になるとの答弁でしたが、このように減収額が膨れ上がった理由を伺います。

○菅原主税局長 法人事業税の税収規模は、分割基準の影響額を国が試算いたしました十四年度実績と、同じ条件で試算いたしました十八年度ベースとを比較いたしますと、おおむね一・四倍に伸びております。また、今回の分割基準の見直しの影響が及ぶサービス業等の法人事業税が大幅な増収となっておりまして、そのため分割基準の見直しによる影響額も大きなものとなっております。

○吉野委員 平成十八年度の税制改正をめぐっては、我が党は、都との緊密な連携のもと、都選出の国会議員とともに法人住民税の見直しに対する反対活動を行い、何とか阻止しましたが、不合理な財源調整を強化しようとする根強い動きがあります。
 例えば、国の一部の省庁は、地方の法人所得課税を撤廃する議論を展開しており、地方からも、これと軌を一にするかのように、地方法人課税を国税に移管する一方、振替として消費税を地方消費税に移管するとの議論もあると聞いています。
 このような地方の法人課税を廃止あるいは移譲すべきとの主張について、都の所見を伺います。

○菅原主税局長 地方における法人課税は、地域社会の費用につきまして、個人と同様に構成員でございます法人にも広く負担を求めるものであると同時に、地方自治体から受ける行政サービスの対価といたしまして、応分の負担をすべきものでございます。
 地方法人課税は、地方財政とりわけ大都市の財政を支える極めて重要な基幹税としての地位を占めております。ご指摘の地方法人課税を廃止または国に移譲すべきとの議論は、大都市特有の財政需要を無視して大都市への財源調整をさらに強化しようとする動きにほかなりません。
 したがいまして、こうした動きに断固反論すべく、都税制調査会を積極的に活用するなどいたしまして、地方法人課税や地方税制のあり方についてさらに研究を深めてまいります。

○吉野委員 我が党は、責任政党として、地方法人課税の不合理な見直し案には今後とも都の立場を強く主張してまいります。
 次に、日銀の量的緩和解除の影響について伺います。
 日銀は、去る九日、約五年間続いた量的金融緩和政策の解除に踏み切りました。小泉内閣による構造改革の推進が着実に実を結び、今、我が国経済は回復基調を示しております。我々は、今回の日銀の決定を尊重するとともに、今後も好調な企業業績や個人消費などを背景とした日本復活の足取りをより確かなものにしなければなりません。
 しかし、一方で、今回の日銀の決定は、本来の金融政策に戻るものとはいえ、これまで続けてきた政策を一大転換するものであり、企業や都民生活のみならず、都の施策全般にもさまざまな影響が及ぶのではないかと考えられます。
 そこで、今回の政策変更が都の行財政運営に及ぼす影響について、公会計制度改革を全国に先駆けて取り組まれ、都の会計責任者である出納長の認識と所見を伺います。

○幸田出納長 今回の量的緩和の解除は、市中金利を調整する日本銀行本来の金融政策へ回帰する第一歩でありますが、日銀総裁が示唆しておりますように、しばらくはゼロ金利が続くものと認識しております。
 仮に、金利が変動した場合には、都の行財政運営や都民生活におきまして、例えば中小企業の資金調達コスト、住宅ローン金利また公金の運用益や都債の調達コストなどに影響が出る可能性がございます。
 今後、景気の先行きや金利動向などに一層注視するとともに、関係各局と緊密に連携を図りまして、的確な行財政運営に力を尽くしてまいります。

○吉野委員 次に、金融機関の不祥事について伺います。
 個人情報保護法が昨年四月に施行され、個人情報の適正な取り扱いが従来以上に求められております。金融機関は大量の顧客情報を保有するなど、一層厳重な管理が要請されますが、昨今では顧客情報の大量漏えいなどの不祥事が相次いでいます。中には、預金横領にまで発展する事件も発生しております。
 こうした不祥事の発生は、個人情報の保護はもとより、金融機関への信頼を根本から揺るがす大問題であります。都は、指定金融機関などの金融機関に公金の取り扱いを担わせており、不祥事の発生によっては、都財政ひいては都民サービスに重大な影響を及ぼすことにもなりかねません。
 そこで、こうした事件を踏まえ、より適正な公金管理に向けた取り組みと決意を、都の会計全般をつかさどる出納長に伺います。

○幸田出納長 金融機関におけます不祥事は、預金者等の信頼を裏切るもので、大変遺憾でございます。また、重大な問題と認識しております。
 指定金融機関を初めとする金融機関は、都税等の収納や支払い事務を行うほか、預金先ともなっておりまして、都民の財産である公金の安全性を確保することは当然の責務でございます。
 こうしたことから、都では、公金の収納、支払い、預金の受け払い並びに帳簿の管理等につきまして、毎年、二百五十余の金融機関店舗に直接出向きまして、検査、指導を実施しております。
 今後とも、法令遵守の確立と内部管理体制の充実強化を図り、適正な公金の管理に取り組むよう、指定金融機関等を強力に指導してまいります。

○吉野委員 次に、オリンピック招致について伺います。
 石原知事のオリンピック招致に向けた決意を受け、都議会としても、東京、日本の、そして次世代を担う青少年の未来を切り開くべく、東京招致を決議いたしました。半世紀を経て、再び東京オリンピックの実現に向かって歴史的な第一歩を踏み出したのであります。これからは、一九六四年の東京オリンピック招致に成功した諸先輩に倣い、厳しい都市間の競争に打ち勝ち、幾多の困難を乗り越え、招致を実現しなければなりません。
 そこで、本日は、招致に勝ち抜くための取り組みについて伺います。
 二〇一六年の招致を目指すオリンピックには、欧米ではマドリード、ミラノ、ニューヨーク、シカゴ、アジアではバンコク、ニューデリー、そしてオリンピック開催の実績がないアフリカのケープタウン、南米のリオデジャネイロなどの都市が立候補すると報道されています。
 これらの都市に勝つための指標となるのが、昨年決定された二〇一二年の大会の選考過程であります。
 二〇一二年の第三十回大会は、世界に名立たる大都市の争いとなりました。ロンドン、パリ、ニューヨーク、マドリード、モスクワ、いずれも歴史ある国の首都級であり、公共施設などのインフラは相当整備されています。
 開催に当たっては、既存施設を活用し、競技会場をコンパクトにまとめ、選手や観客本位の視点から計画されたと聞いています。大都市間の招致争いに勝ち抜くには、会場配置だけではなく、さまざまな側面から緻密な招致戦略を練ることが不可欠であります。
 二〇一二年の立候補都市は、いずれも高水準の開催計画であった中で、開催都市に決定したロンドンは、招致委員会会長のセバスチャン・コー氏によるIOC総会での演説が好印象であったこと、オリンピックを契機にローワー・リー・バレーと呼ばれる地区の低所得者層の生活向上を進めることなどがIOC委員から高い評価を得たといわれています。
 招致成功のためには、開催計画だけではなく、さまざまな取り組みが必要です。そこで、国際的な都市間競争に打ち勝ち、オリンピック招致を成功させるためには何が必要か、ロンドンの事例を参考に伺います。

○山口知事本局長 オリンピック招致を成功させるためには、オリンピック憲章の精神にのっとった平和、人権、環境への取り組み、コンパクトな会場配置、適切な資金計画などの綿密な大会計画の策定、都民、国民の十分な理解を得るとともに、都議会のご協力を得ながらの招致機運の盛り上げ活動、世界に冠たる日本のIT技術や東京の優位性を生かした都市の魅力の向上など、さまざまな活動が必要であります。
 昨年招致に成功したロンドンにおきましては、ロンドン全体の長期計画が進行中でありまして、都市の勢いがある中で、メーン会場などの関連施設の整備を都市再生に積極的に活用した点などが大きなポイントになったといわれております。

○吉野委員 答弁を聞きますと、今後の課題がまだまだ山積しております。まず、オリンピックに対する都の基本的な考え方を早急にまとめ、多くの都民にメリットをアピールし、機運を盛り上げていくべきです。
 さらに、ITなどの日本の先端技術、優位性を生かした特徴ある大会を打ち出すことや、オリンピック後に東京がどのような都市に変わっていくのかを都民にわかりやすく示していくことが必要です。力を合わせ、それらを推進するための強力な体制整備も不可欠であります。今必要と考えられるすべてに果敢に取り組まなければ、招致実現はあり得ません。
 そこで、これから困難な戦いが予想される中で、オリンピック招致を成功させるための知事の決意をお伺いいたします。

○石原知事 これは、私一人、二人の決意で事の成就が成るものではないと思います。やっぱりこの間のように議会で決議をいただき、その後ろに都民の声があり、それからまた、ステージ、ステージ、ステップ・バイ・ステップでいろんな問題についての衆知を集めることが肝要だと思います。
 候補地としての東京の利点については、本会議でるる申し上げましたから割愛いたしますが、先般、知事と論説の方々の懇談会がありましたときに、向こうから申し出がありまして、NHKのスポーツ担当の山本論説主幹、申し出がありまして、場所を改めて懇談いたしましたが、これは表に出ていない話が実にたくさんございまして、陰に陽にこれから越えなくてはならないバリアはもうたくさんあるということを痛感いたしました。
 そういう点でも非常に参考になりまして、また、山本さんに人選をお願いして、こういった問題に対する消息通にもグループをつくっていただき、会議を持ちながらいろんな対策というものを着実に、見えない部分も見える部分もございますけれども、積み上げていかなくちゃならぬなと痛感した次第でございます。
 福岡という手ごわいコンピターもあるわけでありますが、一部からは東京はデザイナー云々ということをまだ決めてないじゃないかといわれましたが、これは、そういうものを要さないような形で、リニューアルで済む部分がたくさんございますけれども、当然新規のものもございますが、これは、福岡の場合は、福岡そのものの都市開発、改造に磯崎さんという非常にすぐれたデザイナーが関与されていまして、その延長で磯崎さんは選ばれたんでしょうけれども、東京の場合にはもっと広く衆知を集めて、場合によったら世界全体に呼びかけてコンぺティションを行って、メーンスタジアムにしろ何にしろ、そういったものを、ご指摘のように、オリンピックが終わった後も大きな財産として残るような、そういう施設も含めた都市の修正、改造というものを行っていきたいと思っております。

○吉野委員 オリンピックは、全国民に感動を与える世界最大の祭典です。知事とともに招致を成功させる決意を申し述べまして、次の質問に移ります。
 構造計算書偽装問題について伺います。
 一級建築士であった者が構造計算書を偽装するという、モラルのみじんも感じられない許しがたい行為に端を発した今回の事件は、昨年十一月の発覚後、偽装建物が次々と判明し、重大な社会問題を引き起こしました。マンションの居住者や近隣住民の皆さんが不安な毎日を過ごしておられることはもちろんのこと、今回の事件を契機にさまざまな建築確認制度上の問題点も指摘されており、都民全体に不安が広がっております。
 今回の問題については、居住者への支援や再発防止策の実施といった喫緊の課題への取り組みが求められます。まず、知事は、これらについてどのように認識し、またどのように対応していかれるのか、所見をお伺いいたします。

○石原知事 今回の事件は、国の建築確認の制度や仕組みそのものに起因して発生したものでありまして、国の責任は極めて重大だと思います。
 しかし、その前に、つまり専門家と称する人たちに、その専門性に預けて事を依頼すれば、偽装などということは私たちは毛頭想像もせずに、その専門性において的確な判断をしてくれると思っておりましたが、今回の場合には、小金に目がくらんで、自分の利欲のためにこういうことを行った。つまり我々が、建築士に限らず、専門家というものに信頼を寄せているその根拠というものは、同じ日本人で、要するに日本人はさすがにそこまでのことはしまい、性善説というものが残念ながらこの日本においても覆ってしまったということでありまして、これはやはり、国だけじゃなしに、私たち全体の責任としてとらえるべきでありましょうが、しかし、やっぱり何といっても大きな波及力を持つ国政そのものが日本全体にこういう風潮を醸成してきたということは否めないと思いますし、それに気づかずに、こういった専門家の管理というものに非常にずさんな手落ちがあったということがそもそもの原因だと思います。
 都としても、非常にいろんな不満がございますが、やはり繰り返して申しますけれども、いつ地震が来るかわからない、この地政学的な条件の中で、人間の命がてんびんにかかっているわけでありますから、国の申し出を渋々のみ込んで幾分の協力はいたしますけれども、繰り返して、この間も次官が来ましたので申しましたが、我々は国を告訴する留保というものをちゃんとしておるから、時間がかかるかどうかしらぬけれども、この問題に限らず、地方分権という美名のもとで地方自治体に自治事務として押しつけた仕事の、要するに責任というものの所在をきちんと手続も含めてはっきりしてもらいたいということを繰り返して申しました。
 いずれにしろ、それがいつになって実現するかわかりませんが、ともかく今後も、特定行政庁、民間確認検査機関、それぞれの役割と責任を国の責任で明確にして、実効性のある再発防止策を講じるよう、引き続き国に強く申し込んでまいります。

○吉野委員 都民の命がかかっている問題を放置することなく、都が速やかに公的支援の実施を決めたことを評価するものであります。
 使用禁止命令等のなされた分譲マンション居住者への公的支援について、都は、昨年の十二月、移転費補助や家賃補助など、緊急対応としての支援策を発表しました。
 移転費や家賃の補助については、既に実際の支出も始まっているようですが、今後早急に進めていく必要があるマンションの解体や建てかえに対する支援も含め、公的支援についてどのように取り組んでいくのか、伺います。

○梶山都市整備局長 耐震性に著しく問題のあるマンションにおきましては、既に居住者の退去が進んでおり、これからは、建物の解体、再建に向け、所有者である住民が力を合わせていくことが大切でございます。
 今後都といたしましては、国や関係自治体と連携し、個々のマンションの置かれた状況に配慮したさまざまな工夫をしながら、早急な建物の解体と建てかえに向け、居住者の支援に取り組んでまいります。

○吉野委員 また、再発防止に向けた取り組みについては、国の社会資本整備審議会が先ごろ中間報告をまとめ、近々に建築基準法の改正案が今国会に上程される予定と聞いております。
 今回のような問題の再発防止を図り、建築行政への信頼を回復していくためには、こうした国の制度見直しの動きと並んで、都みずからが行える対策は積極的かつ早期に実施していくことも重要であります。
 そこで、問題の再発防止に向けて、都独自にどのような取り組みを行っているのか、伺います。

○梶山都市整備局長 都は、国の制度改正に先立ちまして、大臣認定プログラムを使用し、図書の一部が省略される場合でも、すべての構造計算書の提出を義務づけたり、精査が必要と判断される物件につきましても、構造計算ソフトを活用して入念な審査を行うなど、独自の取り組みを既に実施しております。
 また、新年度からの活用に向け、構造計算審査マニュアルの作成にも鋭意取り組んでいるところでございます。さらに、建築士事務所に対する厳正な処分を行うなど、行政処分の観点からも再発防止を図っております。
 今後とも、このような再発防止に向けた多角的な取り組みを全力で行い、都民の安全及び居住の安定の確保に努めるとともに、信頼される建築行政の確立を図ってまいります。

○吉野委員 次に、木造住宅密集地域の整備促進についてお聞きします。
 ことし二月に東京都防災会議地震部会が発表した被害想定では、東京湾北部を震源とするマグニチュード七・三の地震が起きた場合、都全体で約三十一万棟の建物が火災により焼失するとのことで、焼失面積は私が住む三鷹市の六倍にもなります。また、火災による死者は、総死者数の六割に当たる約二千七百人とも述べられており、火災による二次災害は都民の生命と財産に甚大な被害を与え、首都東京が受ける痛手ははかり知れません。
 今回想定した火災による被害では、どのような結果が明らかになり、その結果を踏まえて、今後どのような考えで地域防災計画を見直そうとしているのか、伺います。

○高橋総務局長 火災による被害は、主に山手線と環状七号線に挟まれた区部の木造住宅密集地域に発生し、最悪の場合には道路等延焼遮断帯まで延焼することが予測されております。
 都はこれまでも、延焼防止対策として、消火、救助活動で重要な役割を担う防災市民組織や消防団など地域防災力を強化し、また、建物の不燃化促進、道路、公園等の整備に努めてまいりました。
 来年度の地域防災計画の見直しに当たりましては、これらが改めて重要な検討課題になると考えております。

○吉野委員 都内に広がる木造住宅密集地域は、延焼の危険性が高い地域が広く存在し、被害想定を見ても木密地域の火災による被害を何としてもとめなければなりません。
 都はこれまで、不燃化事業を七十七地区千四百ヘクタールで、木密事業を六十八地区二千八百ヘクタールで実施しています。防災性向上のため木造住宅密集地域の整備に取り組んできたところですけれども、木密地域が改善されたという実感がありません。
 木密地域の整備が進みにくい理由は何か、お伺いをいたします。

○梶山都市整備局長 お答えいたします。
 都はこれまで、木密地域の防災性の向上のため、まちを全面的に改造するのではなく、部分的な改善を積み重ねる修復型の不燃化促進事業や木密事業を実施してまいりました。
 不燃化促進事業では約四千四百棟の建物に助成を行い、木密事業では約十二ヘクタールの道路、公園を整備するとともに、約七千戸の不燃化建てかえなどを行ってきております。
 このように事業を着実に進めてまいりましたが、対象となる地域が余りにも広いことや住民の建てかえ意向に合わせて事業を進めてきたことから、整備に時間を要しております。
 また、木密地域では、権利関係がふくそうしていること、加えて狭小敷地や道路に接していない建物が多いことなどから、建てかえが困難となっていることも整備が進みにくい理由でございます。

○吉野委員 今、大地震の発生の切迫性が指摘される中、都民は、一刻も早く燃えないまち、安心して住めるまちが実現することを願っています。
 そこで、木密地域を早期に整備するため、都は今後どのような取り組みを行っていくのか、伺います。

○梶山都市整備局長 都は、いつ起こるかもしれない大地震に備えまして、早期かつ効果的に整備を進める観点から、震災時の甚大な被害が想定される地域に対しまして集中的かつ重層的に事業を展開しております。
 具体的には、延焼を防止する幹線道路や避難、救援活動を円滑にする主要生活道路などの公共施設の整備を、まず公共が主体となって進めてまいります。
 それを契機といたしまして、新たな防火規制や地区計画などの規制誘導策を活用するとともに、これまで都が培ってまいりましたまちづくりのノウハウを生かし、区とも連携して建物の不燃化、共同化を促進するなど、木密地域の早期改善に努めてまいります。

○吉野委員 都民の安全・安心を確保するため、一刻も早く整備促進を要望します。
 次に、子どもの安全確保について伺います。
 私は、地方自治体にとって住民の生命と財産の確保が最も重要な課題と考え、石原知事の治安の維持こそ最大の都民福祉という発言に共鳴するものです。
 現在の都内の治安状況については、警視総監から報告がありましたが、刑法犯は三年連続減少し、特に都民の実感的な治安に直接影響を与える侵入窃盗件数は約二五%減少するなど、顕著に減少しているといいます。
 これは、警察、行政の取り組みだけでなく、町会、自治会など、多くの地域の方々の懸命の努力の成果と考えています。
 しかしながら、昨年は、広島や栃木などでも子どもの痛ましい事件が相次ぎ、幼い子どもの命と未来を奪った卑劣な犯行に、学校、保護者、地域が大きな衝撃を受け、これを契機として各地でさまざまな取り組みが行われています。
 そこでまず、都は子どもの安全確保についてどのように取り組んでいるのか、伺います。
 大阪の池田小学校などの事件を見るまでもなく、現在、小中学校への不審者の侵入事例が多いと聞きます。私は、今まで安全と考えられていた学校内の安全が危険にさらされている状況を危惧しています。
 子どもたちが安心して勉学に励むべき場所で、万が一のことを考えると、暗たんたる思いがします。
 そこで、都内の小中学校の学校内での防犯設備の状況と今後の対策について伺います。

○舟本青少年・治安対策本部長 昨年十二月、都は警視庁とともに、重層的、総合的な取り組みといたしまして、子どもの安全確保のための緊急対策を取りまとめました。
 その主なものは、保護者や地域の人たちが通学路などをパトロールしたり見守り活動を行う子ども安全ボランティアの事業の実施や、子どもみずからが犯罪から身を守る力を高めるために地域安全マップの作成を授業に取り入れることであります。
 また、警察官などによるセーフティー教室をさらに充実強化すること等もいたしました。
 また、地域に密着した車による防犯パトロール「動く防犯の眼」の取り組みや、都民への不審者情報の発信を従来の電子メールに加えて警視庁ホームページで行う取り組みなどであります。
 また、大阪の池田小学校の事件を受けまして、不審者が侵入した場合に備えて、都は平成十三年度に全小中学校に緊急通報装置、学校一一〇番を設置いたしました。
 他方で、小中学校への侵入事案が散見される中で、侵入自体を抑止する対策として、また不審者を早期に発見するための対策としてその効果が大きい防犯カメラなどの防犯設備がいまだ不十分な学校が多数見受けられるところであります。
 そこで、都内の小中学校の防犯設備の充実強化を図るため、都はモニターつき防犯カメラの設置費用の一部を区市町村に補助し、十八年度中にすべての公立小中学校での設置を目指してまいります。

○吉野委員 我が党の要請により都内の全公立小中学校に防犯カメラが整備されますが、安全確保に万全を尽くされるようお願いいたします。
 次に、登下校時の安全確保ですが、子どもたちの通学路は地域全体に広がっています。通学路の安全を確保するためには、学校や保護者だけではなく、町会、自治会などの協力が欠かせません。地域住民の力を結集して、地域で子どもの安全を守るという視点が重要と考えます。
 子どもの安全確保の対策として、学校を中心とした町会、自治会などの地域力を活用したボランティア活動に都はどのような支援を行うのか、伺います。

○舟本青少年・治安対策本部長 現在多くの小学校区で、町会、自治会などの協力を得ましてパトロールなどの活動が動き出してはおりますが、そうした活動を支援することは都の責務と考えておりまして、子ども安全ボランティア事業を展開しているところでございます。
 具体的には、ボランティア組織の立ち上げ、継続を支援するため、学校、PTA、警察、区市町村等で構成する推進体制を確立させること、また、ボランティアの中核となるリーダーの養成、ボランティア活動のための実践的なマニュアルの作成、配布などの支援策を積極的に進めてまいります。

○吉野委員 子どもを地域で守るためには、コミュニティや親と子どもの関係など、現在の日本社会が抱える課題が浮かび上がってきます。
 そこで、子どもを犯罪から守るための地域の役割について知事の所見をお伺いします。

○石原知事 昨今、子どもに関する非常に痛ましい事件が頻発しておりまして、極めて憂慮すべき状況に日本の社会全体がなってきたなという感じがいたします。
 現代の日本の社会というのは、親子の関係や地域における連帯感が非常に希薄になりまして、地域で子どもを守る力が低下しております。昔は、横町で遊んでいますと、そこで遊ぶなとか、その木に登ったら危ないとかという、非常にうるさいおじさん、おばさんがいましたが、このごろそういう人もいなくなりまして、加えて、幼い子どもを預かる親、つまり若い世代の親が、私から見ると本当に親として幼稚になりまして、本当に看過できないような気がいたしますが、ご指摘のように、まさに子どもを守るためには、町会、自治会などを含めた地域の方々のご協力が本当に必要な時期になってきたと思います。
 アーサー・ミラーの有名な芝居に「みんな我が子」というのがありましたけれども、まさに社会にとって幼い子どもは私たちの財産でありまして、そういう点で、ご指摘のように、今後とも都は、子どもの安全を確保するために、地域全体がうまく協調して、子どもを守るそういう取り組みを強力に進めていきたいと思っております。

○吉野委員 ぜひ、地域の力を生かして子どもの安全確保に努めていただきたいと思います。
 次に、悪質事業者対策について伺います。
 中でも、急増した架空請求については、我が党の強い要望を受けて、昨年三月から架空請求緊急対策班を発足させて、専用電話による相談を開始し、違法なサイトの閉鎖や悪質事業者を公表するなどの取り締まりを強化し、件数的にも被害が減少するなどの成果が上がったと聞いております。
 しかし、高齢社会を反映して、最近特に目立つのが、ひとり暮らしや認知症などのお年寄りをねらった悪質商法です。親切を装いながらお年寄り宅を訪問し、住宅リフォームや高額な商品を次々と販売する悪質事業者が後を絶たないと聞いています。
 そこで、最近の高齢者の被害はどのような状況か、伺います。

○山内生活文化局長 東京都及び区市町村の消費生活センターに寄せられた六十歳以上の方の相談件数でございますが、平成十六年度、約三万二千件で、この四年間で二倍以上に増加しております。
 高齢者の相談のうち、家庭への訪問販売に関係する相談が約五千件と多く、これは家にいることの多い高齢者をねらった悪質商法による被害がふえている、そういう理由であると考えられます。
 こうした訪問販売による相談の特徴は、悪質住宅リフォーム等の工事関係が最も多く、次いで布団、それから浄水器の販売と続いております。
 また、高齢者の訪問販売に関する相談の平均契約金額でございますが、百五十万円を超え、三百万円以上の高額な契約の割合も年々上昇しているという状況でございます。

○吉野委員 被害額は高額である上、お年寄りはふえてきますから、これは大問題です。
 また、ひとり暮らしや認知症のお年寄りの被害は、なかなか発見されにくく、場合によっては泣き寝入りになる危険性もあります。
 こうした状況の中で、地元の区市町村や地域の人たちとの連携を密にしていく必要があると考えますが、今後どのような対策を実施していくのか、伺います。

○山内生活文化局長 ご指摘のとおり、潜在化しやすい悪質商法による高齢者被害の早期発見と救済を図るためには、区市町村や高齢者の周りの地域の方々との連携が不可欠でございます。
 このため、高齢者の身近にいるホームヘルパーや民生委員の方から高齢者被害に関する通報を受けるホットラインを消費生活総合センターに新設するとともに、こうした高齢者の身近にいる方々と行政の消費生活部門、福祉部門が連携して被害を防止する仕組みを構築してまいります。
 また、来年度からは、消費生活総合センターに相談員四名を増員いたしまして、高齢者被害専用の相談電話を常設し、高齢者の悪質商法による被害防止対策を強化してまいります。

○吉野委員 今後も、相談体制や通報制度の強化や都民への普及啓発事業も着実に行っていただきたいと思います。
 しかし、問題の解決には悪質な事業者を排除していくことが必要です。都はこれまでも、現行の消費生活条例に基づき、悪質事業者を指導したり処分してきましたが、まだまだ手ぬるいような気がします。
 新手の悪質な手口や、処分しても社名や販売商品を変えて取引を繰り返す悪質事業者に対しては、現行条例では対応できない部分もあるのではないでしょうか。悪質事業者の取り締まりを実効性のあるものにするためにも、ぜひ消費生活条例を改正して規制を強化するべきだと考えますが、見解を伺います。

○山内生活文化局長 これまでも、東京都は消費生活条例等に基づきまして積極的に悪質事業者に対する処分を行ってまいりました。
 今後、社名や取扱商品を変えて営業を継続する悪質事業者に対しましては、捜査や分析のノウハウを持つ警視庁併任職員を増員いたしまして、抜き打ちによる立入調査を行うなど、処分の徹底と迅速化を図ってまいります。
 また、消費生活条例については、平成元年に初めて不適正取引の禁止を規定して以来、二度の改正によりその範囲を拡大し、事業者処分を行ってまいりました。しかし、ご指摘のように、現行の条例では次々生まれる新たな悪質商法に対応し切れない面もございます。こういったことから、消費生活条例の改正等も念頭に置きまして、さらなる規制強化について検討してまいります。

○吉野委員 条例改正も含め、全力で消費者被害の防止に取り組んでいただくことをお願いいたします。
 次に、道路整備について伺います。
 我が党は、首都東京を再生し、日本の国際競争力を高め、成熟した都市社会の形成に向け、首都圏三環状道路の整備促進に石原知事とともに全力で取り組んでまいりました。
 中央環状品川線は、来年度からは有料道路事業者と共同で整備することになり、また圏央道については、今後十年で全線完成させるとの目標宣言が発表されました。
 残る外環は、東京から日本を再生するため、最も優先度が高いにもかかわらず、いまだに国土開発幹線自動車道建設法の建設を開始すべき路線として位置づけられておりません。
 大深度地下や三カ所のインターチェンジなどを内容とする、外環に関する考え方を昨年九月に公表したとき、石原知事は力強く、断固つくると宣言をされました。
 知事、改めて外環の早期整備に向けた決意をお伺いいたします。

○石原知事 三環状道路は、日本の社会全体のダイナミズムを高め、我が国の国際競争力の向上、国家の繁栄、東京の発展に不可欠な道路であると思っております。
 かつて、共産党、社会党が熱烈に支持した美濃部知事時代に、美濃部知事は大型の公共事業を全部ストップしました。ストップ・ザ・佐藤という名目で、全然関係ないのですが知事選に打って出られましたけれども、佐藤さんは長期政権を果たしましたが、とまっちゃったのは自動車でありまして、二十三区でいまだにラッシュ時の平均時速、自動車の時速が十五キロちょっとということでは、これは本当に世界にとってのシェームでありまして、ちなみに、同じような先進国の首都であるパリもロンドンもほとんど一〇〇%環状線ができているわけでありまして、もしこれが完成しましたら、東京の場合もやはり、市中に紛れ込んでいく自動車の四〇%以上はバイパスできるわけでありますから、これはオリンピックその他に関係なしに、首都の機能のためにも必須の事業だと思っております。
 ゆえにも、中央環状品川線は、都がみずから街路事業として着手しまして、圏央道は一刻も早い完成のために収用に入りました。
 残るは外環道でありまして、私も就任以来一貫して外環道の意義を主張してまいりましたが、外環道の事業着手に向け、国を動かし、総力を挙げて一日も早い完成を目指すつもりでおります。

○吉野委員 外環など首都圏三環状道路に加え、これらと有機的なネットワークを構成する都市計画道路の整備を推進することが不可欠です。都では、これまでも都市計画道路の整備を進めてきましたが、多摩地域では、その整備率がようやく計画の半分を超えた状況です。
 先月、多摩地域における都市計画道路の整備方針案が公表され、現在、都民の意見を募っているとのことです。その整備方針では、多摩地域における都市計画道路について、今後十年間で優先的に整備すべき路線を選定した第三次事業化計画を柱として取りまとめていくと聞いております。
 そこで、整備方針のねらいについて伺います。

○梶山都市整備局長 多摩地域は、今後、圏央道と中央道との接続や、それらを生かした物流機能の強化、さらには横田基地の軍民共用化への取り組みなどにより、さらなる発展の可能性を秘めた地域でございます。
 整備方針では、優先的に整備すべき路線を選定し、道路ネットワークの体系的な構築を進めてまいります。これにより、多摩地域における主要な幹線道路の整備に一定のめどをつけるとともに、これらの路線が完成しますと、区部と同様、七割以上の整備率となります。
 加えまして、多摩の地域特性を踏まえた新たな施策として、一つは、都県境を越えた広域的な道路ネットワークの拡充を進めてまいります。
 二つ目は、幹線道路などを軸に、その沿道を含め、良好な景観や広がりと厚みを持った緑を創出いたします環境軸の実現に向け、その仕組みを充実してまいります。
 これらの施策を展開することにより、多摩地域が持つ可能性を最大限発揮させるとともに、魅力あふれる成熟した多摩の実現を目指してまいります。

○吉野委員 多摩地域では、東西方向に比べて南北方向の道路整備が立ちおくれており、幹線道路は慢性的に交通渋滞が発生しています。また、生活道路に通過交通が流入し、生活環境が悪化するなどの問題も生じています。
 このため、多摩地域では、多摩南北道路五路線の整備が急務であり、中でも調布保谷線の早期完成が待ち望まれております。
 そこで、調布保谷線の整備状況について伺います。

○岩永建設局長 調布保谷線は、交通の円滑化を図るとともに、多摩の自立性の向上や地域の活性化に不可欠な幹線道路でありまして、計画延長十四・二キロのうち三・八キロが完成し、残る十・四キロが事業中でございます。
 川崎街道から甲州街道までの区間は、本年四月、多摩川原橋が完成し、四車線で開通いたします。
 また、甲州街道から埼玉県境までの区間のうち九・二キロで、現在、用地取得を進めております。
 本年二月までに、調布-三鷹区間二・二キロで九割、三鷹-武蔵野区間三・一キロで三割、西東京区間三・九キロで八割の用地を取得しております。
 このうち調布-三鷹区間では、平成十六年度から工事に着手しておりまして、今年度も引き続き八百四十メートルの区間で車道や環境施設帯の整備を進めております。

○吉野委員 また、調布保谷線の甲州街道から北側区間では、住宅地に新たな道路ができることから、地域の方々の中には生活環境の変化を心配する声もあり、騒音対策や緑の保全など地域の特性に応じた道路整備が求められます。
 そこで、調布保谷線の甲州街道以北の事業中の区間では、どのように沿道環境へ配慮していくのか、伺います。

○岩永建設局長 調布保谷線の甲州街道から埼玉県境に至る事業中区間では、幅員三十六メートルの道路空間を確保し、車道の両側に歩道や植樹帯など幅員十メートルの環境施設帯を設け、質の高い道路づくりを目指しております。
 これまで、それぞれの区間で、沿道住民や地元市の意見を聞きながら、具体的な構造の検討を行っております。
 整備に当たり、環境施設帯では、緑豊かな植栽や電線類の地中化、自転車通行帯の設置などによりまして、快適な歩行空間を創出してまいります。
 また、車道部では、低騒音舗装による騒音の低減や中央分離帯の緑化に取り組むなど、沿道環境に配慮してまいります。

○吉野委員 次に、交差点すいすいプランについて伺います。
 都では、地域のより円滑な交通を実現するため、交差点すいすいプラン一〇〇など局所的な対策にも重点的に取り組んでいます。このプランに基づく整備は、都民や地元自治体などから大変高い評価を得ています。
 しかしながら、いまだに渋滞が生じている箇所があり、現行の第二次交差点すいすいプランを、より効率的、効果的に推進する必要があります。
 そこで、これまでの成果を踏まえ、第二次交差点すいすいプランにおける基本的な考え方と今後の取り組みについて伺います。

○岩永建設局長 交差点すいすいプラン一〇〇は、比較的短期間に少額の投資で交通渋滞の緩和に大きな効果がありまして、都は、第二次交差点すいすいプランを策定し、平成十七年度から新規の箇所に着手しております。
 第二次のプランでは、個々の交差点の改善に加え、周辺の立体交差など他事業との連携を図り、路線全体の効果を重視する事業内容としておりまして、平成十八年度は十五カ所で新規に着手いたします。
 また、実施に当たりましては、地元市、町との緊密な連携などにより効率的な執行体制を築き、事業効果の早期発現に努めております。
 今後とも、財源を確保し、関係住民の理解と協力を得ながら、事業の積極的な推進に取り組んでまいります。

○吉野委員 次に、物流改革について伺います。
 我が国の経済は、国内企業の懸命の努力などにより、回復基調が続いております。これを確かなものとし、国際競争力を維持強化するためには、とりわけ経済活動の基盤である物流の改革が不可欠です。また、都民の快適な生活や良好な環境面からも物流の改善が重要となっています。
 このような状況のもと、都は、本年二月に総合物流ビジョンを公表しましたが、この総合物流ビジョンのねらいについて伺います。

○梶山都市整備局長 東京はさまざまな都市機能が高度に集積しておりまして、その活動は、東京を含めた首都圏における広域的な物流によって支えられていると思います。物流を取り巻く状況が大きく変化する中、都といたしましても、首都圏を見据えて物流改革に取り組むことが必要でございます。
 このたび発表いたしました総合物流ビジョンでは、国際競争力の強化や暮らしと環境の向上を実現するため、首都圏を視野に入れて物流の効率化を推進することをねらいとしております。中でも、物流コストについては、民間と公共で連携いたしまして二割削減することを目指しております。

○吉野委員 物流を取り巻く状況が激しく変化する中、いずれの物流事業者も厳しい経営環境の中でコストダウンやサービスの向上に必死に取り組んでいます。こうした中、都としても物流効率化に向けて全庁的に取り組んでいくことは当然であると考えます。
 物流を効率化し、我が国の競争力強化などを実現していくためには、物の生産から消費までの流れを見据えた上での広範な取り組みが不可欠と考えます。
 物流効率化に向けて、具体的にどのように取り組むのか、伺います。

○梶山都市整備局長 物流を効率化するためには、物の流れの実態を踏まえ、ハード、ソフト両面にわたる総合的な取り組みを行っていくことが重要でございます。
 ハード面では、物流の面からも、三環状道路や都市計画道路の整備を推進し、港湾、空港の機能拡充に合わせて内陸部との接続を強化するなど、陸海空が連携した広域物流ネットワークを形成してまいります。
 また、ソフト面では、大型貨物車の高速道路への誘導や、地域でのスムーズな荷さばきに向けた支援など、効率的な物流を支える仕組みづくりに取り組んでまいります。
 今後、国や関係自治体はもとより、民間の事業者団体などとも連携し、物流の効率化を推進してまいります。

○吉野委員 次に、東京港埠頭公社の経営改革について伺います。
 東京港は、我が国を代表する国際貿易港であり、コンテナ取扱個数も八年連続で日本一となることは間違いないと思われます。この地位を支えてきたのが、欧米からのコンテナ船が多数就航する公社ふ頭であります。しかし、船舶の大型化に伴い、世界の船会社は寄港地を絞り込む傾向にあり、公社ふ頭を取り巻く状況は厳しさを増しています。
 我が国港湾の国際的地位の低下が叫ばれる中、東京港が引き続き首都圏経済を支えていくためには、主力ふ頭である公社ふ頭の国際競争力を強化することが不可欠であります。
 そこでまず、公社ふ頭を経営する東京港埠頭公社が、東京港の発展にこれまでどのような役割を果たしてきたのか伺います。

○津島港湾局長 財団法人東京港埠頭公社は、これまで都と一体となって船舶の大型化に対応した先進的なふ頭の再編整備事業にいち早く取り組むなど、東京港の外貿機能の中核をなす大井、青海ふ頭の整備、運営を着実に進めてまいりました。
 こうした取り組みによりまして、現在、公社ふ頭は、肉、魚介類から電化製品に至るまで、東京港における生活関連物資の約七割を扱っております。都民生活に欠かせない機能を担っております。
 また、東京のみならず、首都圏四千万人の生活を支える輸入貨物の約四割を取り扱うなど、首都圏における重要な物流拠点としての役割を果たしております。

○吉野委員 これまで果たしてきた役割につきましては評価しますが、現状に安住してはなりません。
 埠頭公社は、法律により、約四十年前に設立された国の京浜外貿埠頭公団の業務と仕組みを引き継いでいます。このためターミナルの施設と土地を丸抱えで所有するとともに、貸付料金の設定も国の基準に制約されるなど、高い港湾コストの一因ともなっています。厳しい国際競争の中、コスト低減に柔軟に対応できないようでは、埠頭公社は制度疲労を起こしているといわざるを得ません。
 こうした中、都は、行財政改革の新たな指針で、公社などについて民営化を含めた検討を行う方向を打ち出しています。国もまた、埠頭公社の民営化を推進する法改正案を国会に提出しています。
 都は、国の動きを絶好の機会ととらえ、都としての埠頭公社民営化を積極的に進めていくべきと考えますが、所見を伺います。

○津島港湾局長 公社制度には、現在、国の認可制等、幅広く規制が存在しておりまして、弾力的な事業運営ができないという問題もございます。
 国の法改正案は、民営化する場合には、貸付料の事前届け出制の廃止や事業計画等の認可制から提出制への変更など一定の規制緩和を定めておりまして、こうした面では大きな前進と評価しております。
 しかし、形を変えるだけの民営化にとどまっていては、真の国際競争力の強化につながらないと考えておりまして、公社改革に当たりましては、規制緩和のみならず、徹底した効率化を進めるとともに公社の経営基盤を強化し、東京港の物流改革に貢献するための事業展開を図るという視点が特に重要であると考えております。
 今後、国の法改正の状況等を踏まえながら、民営化という選択肢を含め、東京港の国際競争力の強化に向けた公社改革に積極的に取り組んでまいります。

○吉野委員 次に、商店街振興について伺います。
 都は、今年度から地域連携型モデル商店街事業を開始し、商店街を中心とした地域おこし、まちづくりを支援しております。
 今回初めてモデルに指定された二つの商店街の取り組みは、マスコミにも大きく取り上げられました。その一つは、台東区の伝法院通りで、江戸町風の町並みが東京浅草の新名所となり、大変なにぎわいを見せております。もう一つは、ウルトラマンを統一シンボルにした世田谷区の祖師ヶ谷大蔵周辺の商店街によるまちづくりで、既に地域と連携した取り組みも始まっていると聞いております。
 地域活力の低下が指摘される中、このモデル事業は時宜を得たものであり、今後さらに拡充すべきと考えますが、所見を伺います。

○成田産業労働局長 お話しの伝法院通り商店街の景観整備の取り組みは、つくばエキスプレスの開業と連動いたしまして、浅草全体の回遊性を向上させ、観光のまちづくりに大きく寄与しております。
 また、祖師ヶ谷大蔵周辺の三つの商店街では、地元の企業、大学、NPOと連携し、正義のヒーローをシンボルに安心・安全で活力あるまちづくりに取り組んでいるところでございます。
 どちらもユニークなまちづくりとして話題となり、各地から視察が相次ぐなど高い評価を受けているところでございます。
 このため、都は来年度、地域連携型モデル商店街事業を四カ所に拡大いたしまして実施することにより、モデルとなるすぐれた取り組みを促進し、他の商店街への波及効果を高めてまいります。

○吉野委員 まちを活気づかせるには、商店街の活動がかぎを握っており、コミュニティ機能を高めていく上でも商店街の役割は欠かせません。
 商店街は、防犯や防災、高齢者や子どもの見守りなど、地域に根づいたさまざまな役割を果たしております。我が党は、商店街のこうした公共的な機能をもっと評価し、総合的な施策を推進すべきと提案してきました。
 そこで都は、来年度、喫緊の行政課題を商店街と協力して解決する特定施策推進型商店街事業を開始するとしていますが、この事業の意義と内容について伺います。

○成田産業労働局長 本事業は、商店街が地域における行政のパートナーとして都の施策に協力して行う取り組みを支援することにより、行政施策の推進と商店街活性化の双方の実現を目指すものでございます。
 具体的には、防災、治安、環境、福祉など、都の抱える重要な課題の解決に資する商店街の取り組みの中で、民間交番の設置やアーケードの耐震補強、高齢者や障害者向けトイレや案内誘導システムの整備など、特に公共性の高い事業を選定し、都が直接商店街に補助することにより、これらの施策を推進してまいります。
 事業の実施に当たりましては、関係局等との連携推進体制を構築して、重点的に支援してまいります。

○吉野委員 次に、中小企業の新製品、新技術の事業化支援について伺います。
 最近の各種の経済指標でも、景気は着実に回復し、資金繰りが改善していることがうかがえ、大手企業は、新たな製品開発や新技術への設備投資を活発化させる状況となってきています。
 しかし、担保力の弱い中小企業にとっては、資金を金融機関から調達するのはいまだに困難を伴います。地道で着実に研究開発の努力を続けていても、株式公開を予定していない中小企業はベンチャーキャピタルからの資金供給も望めない実情にあります。
 こうした状況をとらえ、都はこれらの中小企業に対する新たなファンドを創設するとのことであります。
 そこで、この新たなファンドの特徴と今後の取り組みについて伺います。

○成田産業労働局長 産業労働局が昨年度に行った調査によりますと、技術開発に取り組んでいる企業のうち株式公開を考えない企業が四割を超えておりますが、このような企業に対しましては、ご指摘のように民間投資家の資金が供給されにくい状況がございます。
 このため、都は、公的資金を中核としたファンドを創設し、こうした中小企業の事業化資金ニーズにこたえる新たな仕組みを構築することといたしました。
 また、資金供給に合わせまして販路開拓支援や技術支援等を手厚く実施することにより、事業を成功に導いてまいります。
 今後、ファンド運用者を公募により選定し、早ければ年内に創設する予定でございます。

○吉野委員 次に、中小企業のデザイン活用支援について伺います。
 東京のものづくり産業が、中国などアジア諸国との厳しい国際競争を勝ち抜いていくためには、製品の付加価値を高めることが何よりも必要です。中でも、製品のデザインに注目すべきであります。欧米諸国や我が国の大企業では、既にデザインを経営戦略に位置づけています。
 しかしながら、中小企業では、製品開発におけるデザインの活用は十分に進んでいないのが実情であり、国際競争にも立ちおくれている現状です。
 そこで、中小企業のデザイン力を向上させるため、都は今後どのような取り組みをしていくのか、所見を伺います。

○成田産業労働局長 ご指摘のようにデザインは、製品の魅力や性能を向上させ、ユーザーの満足度を高めるなど、付加価値の高いものづくりを行うための経営戦略として極めて重要であると考えております。
 都は、これまでも、デザイナーと中小企業の商談の機会を提供する東京デザインマーケットや、デザイン開発の実践力を強化するセミナーなど、さまざまな支援策を実施してまいりました。
 さらに、来年度は、産業技術研究所にデザインセンターを設置し、製品の企画から試作、評価、売り方までの総合的な支援を行うほか、中小企業振興公社のホームページを活用してデザイナーとのマッチング支援に取り組むなど、中小企業へのデザイン活用支援を一層拡充してまいります。

○吉野委員 デザイン力を向上させるにしても、中小企業の七割は自社内にデザイナーがいません。そのため、中小企業のパートナーとして製品開発に当たるデザイナーを養成することも必要であります。
 都としてもデザイナーの人材育成に積極的に取り組んでいくべきですが、所見を伺います。

○成田産業労働局長 都内には、全国の約四割の工業系デザイナーがおられまして、その集積を中小企業の製品開発に生かすためには、中小企業の実情を理解し、適切に対応できるデザイナーの育成が重要でございます。
 このため、デザイン系学部の大学生が、現場での実践力の向上を目指し、中小企業と協働して製品開発に取り組むネクストデザインプロジェクトを新たに開始いたします。
 さらに、製品開発のマネジメント能力の習得など、デザイナーを対象としたより高いレベルの実践的なカリキュラムを、産業技術大学院大学とタイアップして実施してまいります。

○吉野委員 次に、中小企業金融について伺います。
 国は、四月以降、信用保証協会の保証料率の弾力化を予定しています。都の制度融資における基本保証料率は、現在、一律一・二五%ですが、今後、経営状況によっては、最大で二・二%と一%近くもはね上がることになり、中小企業経営に与える影響が懸念されます。
 まず、今回の料率弾力化により、実際の保証料負担がどのようになるのか、伺います。

○成田産業労働局長 今回の保証料率の弾力化により、中小企業の経営状況に応じて料率が九段階に区分されることになります。
 都の制度融資メニューにおける、一件当たりの平均融資金額及び期間であります八百九十万円と五十四・五カ月をもとに試算いたしますと、最も保証料が増加する層では二・二%の料率が適用され、約二十一万円の負担増となります。一方、最も保証料が低減される層では〇・五%の料率が適用されまして、約十七万円の負担軽減となるところでございます。

○吉野委員 保証料負担が増加するのはいずれも経営状況が厳しい中小企業であり、一義的には信用補完制度を所管する国が配慮すべきものであります。
 いずれにしても、経営基盤が脆弱な中小企業の円滑な資金調達を確保するためには、一歩踏み込んだ都の対応が必要であり、さきの代表質問でも我が党はこれら中小企業への適切な配慮を求めました。
 そこで、この負担緩和についての都の措置の内容等について伺います。

○成田産業労働局長 都は、国に対しまして、これまでも資金調達力が脆弱な中小企業への配慮を強く求めてまいりました。これを受け、創業関係などの一部につきましては、保証料率弾力化の対象外とされることとなりましたが、これは都の制度融資メニュー利用者の五%程度でありまして、約四二%は今回の弾力化により保証料率が増加するものと見込まれております。
 この保証料率が増加する層の中小企業の多くは、ご指摘のように厳しい経営状況にございます。このため、この層を対象に都独自の対応といたしまして、信用保証協会と連携し、負担増を二分の一以下に抑えるよう負担緩和措置を講じます。この結果、例えば最も保証料率が増加する層では、二・二%の料率を一・七二%に抑制いたします。

○吉野委員 国の対応では、保証料率弾力化の対象外が、全利用者の五%程度にすぎないけれども、都独自の負担緩和措置でカバーできるのが約四二%に上るとのことであります。これは都内中小企業の育成と振興という面で大きな意義があります。さらに現在も、都独自に実施している小口利用者への料率割引を今後も堅持すべきと考えますが、対応を伺います。

○成田産業労働局長 負担緩和措置とともに、九段階の料率区分の全階層で保証利用金額が一千万円以下である小口利用の中小企業に対しまして、保証料率の割引を実施いたします。また、保証利用金額が五百万円以下の中小企業に対しましては、さらに手厚い割引を行う予定でございます。
 これによりまして、引き続き小規模企業等に十分配慮し、中小企業の実態に即した円滑な資金調達を積極的に支援してまいります。

○吉野委員 中小企業は我が国製造業の強みです。日本経済の本格的回復のためにも支援を強く要望します。
 次に、多摩産材の利用促進について伺います。
 都は、本格的にスギ花粉の発生源対策に取り組むとのことですが、そのためには多摩産材の利用拡大が欠かせません。多摩地域の森林では、昭和四十三年には年間八十四万本あった木材の取引量が、平成十五年には十分の一にまで落ち込んでいるとのことです。こうした背景には、木材価格が下落し、林業が長期の不振に陥っていることがその原因といわれてきました。しかし、木材を供給する森林所有者や製材業者などの山側事業者も、都民のニーズにこたえる木材を供給していく努力が不足してきたのではないでしょうか。
 多摩産材の利用を拡大していく上での課題をどのように認識し、どのような方策が必要と考えているか、伺います。

○成田産業労働局長 多摩産材の利用拡大のためには、さまざまな課題がございます。まず、木材の搬出コストが割高であること、次に、品質面では木材の安定性を確保するために必要な製材過程での乾燥が不十分であること、また、生産量が少ないため需要に十分こたえられないことが挙げられます。
 これらに対応するため、作業道の設置など、林業の機械化による木材搬出コストの低減や、乾燥機の設置による品質向上を支援してまいります。さらに、花粉発生源対策により、杉林を計画的に伐採し、生産量を確保することにより、内装材を初めとする住宅建材へ安定供給を図り、ユーザーのニーズにこたえてまいります。

○吉野委員 どの産業界でも、コスト削減と品質向上に生き残りをかけて努力を行っています。山側事業者の奮起も期待するところです。
 ところで、多摩産材住宅に対するローンの優遇が行われていますが、今後の多摩産材の利用拡大を考えた場合、多摩産材であることの認定がスムーズにできる仕組みが不可欠です。多摩産材の産地証明制度については一刻も早い実施が待たれますが、その検討状況について伺います。

○成田産業労働局長 お話のように、多摩産材を用いた住宅のローンの優遇制度が始まっておりますが、これに限らず、公共事業や公共施設への利用促進に当たりまして、多摩産材の産地証明は不可欠でございます。
 このたび、花粉症対策を契機といたしまして、森林所有者や製材業者など、関係者間で制度創設に向けた合意が調い、本年四月から多摩産材認証制度を開始する運びとなりました。具体的には、製材出荷の段階で、材木に認証シールを貼付して出荷することとしております。
 都は、関係団体と協力いたしまして、認証制度を広く都民に普及していくことで多摩産材の利用拡大を図ってまいります。

○吉野委員 多摩産材の認証制度の創設で、供給面での整備が進むことがわかりましたが、やはり問題は需要面での利用拡大です。これまで我が党が主張してきたように、多摩産材の需要そのものを拡大していく取り組みが今後は重要となるのではないでしょうか。
 そこで、教育長に伺います。
 都教育委員会は、これまでも都立学校の増改築工事等に合わせて、多摩産材の活用を図ってきた実績がありますが、さらにこれを一歩進めて、木材需要の拡大を検討できないでしょうか。例えば、都教育委員会が先導役となって多摩産材を活用した学校什器の導入を図ることは考えられないか、教育長の所見を伺います。

○中村教育長 都教育委員会は、木材がいやし効果にすぐれ、精神的なゆとりをもたらすなど、さまざまな効果があるとされていることから、都立学校の増改築工事等に合わせまして、試行的に教室の内装の一部などに多摩産材をこれまで活用してまいりました。
 また、区市町村教育委員会に対しましても、学校施設におきます木材の利用に関する情報提供を行っているところでございます。
 ご指摘のように、都立学校におきましては、机、いす、げた箱、実験台、多くの什器を使っておりますけれども、このうち木材を原材料とした数多くの什器が使用されていることも事実でございます。
 多摩産材を活用した学校什器の導入につきましては、都立学校什器に関する標準規格、これを策定することによりまして、十分に実現可能というふうに考えております。多摩産材の認証制度が創設されることもありまして、十八年度から多摩産材を活用した都立学校什器の導入を図ってまいります。

○吉野委員 都立学校に導入された場合、都内の小中学校などへの波及も期待できると考えます。ぜひこうした観点も視野に入れて、多摩産材の需要拡大に取り組むよう要望いたします。
 次に、福祉保健局の平成十八年度予算について伺います。
 平成十二年度以来、都は、我が党とともに日本の福祉のあり方を根本から変革する福祉改革を推進してきました。福祉改革は、だれもが必要なサービスを選択し、利用しながら、地域で自立した生活を送ることができる新しい福祉の実現を目指すものです。この改革を進めるため、見直すべき事業は見直した上で、新たに必要な施策に財源を集中的に投入してきました。
 その結果、高齢者や障害者のグループホームは飛躍的に増加し、都独自の認証保育所も三百カ所を突破するなど、東京の福祉の水準は着実に向上してきました。
 先般、都は、より広い視点から、福祉保健医療施策を一体的に展開していくため、福祉・健康都市東京ビジョンを策定しました。平成十八年度の福祉保健関連予算も、このビジョンの内容を具体化し編成されたものと考えます。
 ちなみに、平成十八年度の福祉保健局の予算の増加額は、約二百九十億円となっています。この額は全局の中でも最大であり、これまで以上に内容の充実した予算であると考えます。これは、福祉保健を重視する我が党の要望にこたえたものとして、高く評価するものです。
 今定例会の我が党の代表質問に対し、知事から、このビジョンに基づき、これまで先導的に取り組んできた改革を一層推進し、将来世代にわたって揺るぎない安心を実現していくとの答弁がありました。
 新年度は、この二十の重点プロジェクトを中心に事業展開されると考えますが、個々の事業について伺う前に、まず平成十八年度の福祉保健施策にかける知事の決意を伺います。

○石原知事 本格的な少子高齢社会を迎える中で、福祉保健施策の展開に当たっては、限られた資源を有効に活用し、多様な都民のニーズに的確にこたえることが必要であると考えております。
 そのためには、民間、地域、行政、それぞれの持つ特性を最大限に生かしまして、これまで以上に効率と効果を追求することが必要であると思っております。
 こうした観点から、福祉・健康都市東京ビジョンを策定し、総合的な子育て支援体制の整備や、障害者の地域生活を支えるサービス基盤の充実など、平成十八年度の重点的な施策を盛り込みました。
 これらを着実に実行し、今後、都が先導的に進めてきた福祉改革、医療改革をさらに前進させ、確かな安心を次の世代に引き継いでいきたいと思っております。

○吉野委員 次に、具体的な事業について伺います。
 まず、高齢者福祉、特に認知症高齢者対策ですが、現在、都内の高齢者全体の約一割、要介護高齢者の約半数は認知症の症状を有しているといわれています。今後、こうした認知症高齢者を支えるためには、家族だけでなく、地域のさまざまな資源を活用した新たなサービスの仕組み、つまりグループホームやデイサービスなどの地域密着型サービスが重要になると思います。
 その中で、特に注目するのはグループホームであります。都は、平成十六年度からグループホーム緊急整備三カ年事業を進め、既に三千人分の整備目標を達成しつつあるとのことですが、認知症高齢者は、今後一層の増加が見込まれています。
 この際、新たな整備目標を設定し、工夫を凝らした補助制度を設けるなど、より積極的な取り組みが必要だと考えます。
 そこで、今後の整備促進に向けた取り組みについて所見を伺います。

○平井福祉保健局長 認知症高齢者のさらなる増加が見込まれる中にありまして、都は認知症高齢者グループホーム緊急整備三カ年事業を改定いたしまして、来年度から新たな整備目標に基づく新三カ年事業を実施することとしております。
 この中で、認知症対応型デイサービスセンターを併設いたしますグループホームに対し、新たに整備費補助の加算を行うなどにより、平成二十年度までに累計で五千六百人分の整備を目指してまいります。
 こうした取り組みを通じまして、地域における認知症ケアの拠点となるグループホームの一層の整備促進を図ってまいります。

○吉野委員 認知症高齢者対策を推進する上で、認知症高齢者やその家族が暮らす区市町村が果たす役割は極めて重要です。都としても、意欲ある区市町村を積極的に支援するよう求めるものですが、所見を伺います。

○平井福祉保健局長 高齢者が認知症になっても地域で安心して暮らしていくためには、予防、早期発見、適切なケアの提供など、認知症の進行度合いに応じた一連の対応や、地域住民への認知症についての普及啓発など、さまざまな施策を身近な区市町村が総合的に実施することが重要でございます。
 都は、こうした観点から、来年度、区市町村に対しまして、地域の実情に応じた認知症対策の計画策定に要する費用を補助いたしますとともに、他の参考となるような先駆的な取り組みにつきましては、包括補助金により実施経費を支援することとしております。これらにより、区市町村における認知症対策の積極的な取り組みを促進してまいります。

○吉野委員 次に、都民の健康について伺います。
 都は、平成十三年に東京都健康推進プラン21を策定し、現在、このプランに定めた目標と取り組み方針をもとに、自治体などが健康推進施策を進めています。
 策定から五年を経過した本年、都民の健康状況の中間評価が行われ、今後五年間の施策の方向性について、先月、東京都健康推進プラン21評価改定委員会の報告書が発表されました。その報告書を見ますと、健康状況の指標で、改善している項目がある一方で、改善が見られない項目も見受けられます。
 そこで、まず、都民の健康の状況をどのように認識しているのか、所見を伺います。

○平井福祉保健局長 今回の中間評価では、脳血管疾患、虚血性心疾患による死亡率や、八十歳において二十本以上自分の歯を持つ人の割合など、歯と口腔の健康状況などにつきましては、一部の指標は改善の傾向にございます。
 しかしながら、働き盛りの世代を中心に、男性の肥満者の割合あるいは乳がんによる女性の死亡率、ストレスを感じている人の割合などが増加しておりまして、都民の健康づくりを進めていく上で重要な課題と考えているところでございます。

○吉野委員 こうした状況は、働き盛りの都民に危機信号が出ているといわざるを得ません。今後の高齢社会を支える世代の健康を守ることは、緊急に対応すべき重要課題であります。
 そこで、都は、この喫緊の課題に具体的にどのように取り組み、都民の健康を守っていくのか、伺います。

○平井福祉保健局長 中間評価によりまして悪化が指摘された糖尿病、がんの予防、こころの健康づくりにつきまして、東京都健康推進プラン21の後期五カ年戦略における重点課題として位置づけまして、今後、積極的に取り組む予定でございます。
 糖尿病予防についてでございますが、肥満度の自己計測などによる生活習慣改善への意識の醸成や、健康診断受診後の保健指導の充実などに努めてまいります。
 また、がん予防につきましては、特に乳がんにつきまして、早期発見、早期治療のためのマンモグラフィー検診の受診促進への取り組みなどを行ってまいります。
 また、こころの健康づくりにつきましては、新たに中小企業におけるメンタルヘルスの取り組みを促すためのモデル事業に取り組むほか、うつに対する理解を深めるための普及啓発を図ってまいります。

○吉野委員 健康づくりは、都民一人一人の自覚と取り組みをもとに、社会全体で支えていくことが必要です。昨年発足した東京都健康づくり応援団は、民間企業やNPOなどとともに、都民の健康づくりを支援するという今までの行政の枠を超えた新しい有効な取り組みとして評価するものです。
 加えて、特に働き盛り世代の健康づくりを進めていくためには、企業などと連携した取り組みが極めて重要となります。
 そこで、先ほど答弁のあった後期五カ年戦略をどのように推進していくのか、所見を伺います。

○平井福祉保健局長 東京都健康推進プラン21の後期五カ年戦略を推進していくためには、民間、地域及び行政の三つの力を結集いたしまして、社会全体で都民の健康な長寿の実現を目指していく必要がございます。
 このため、企業内で保健活動を担う方々や医療保険関係者などで構成いたします戦略会議を新たに設置いたしまして、地域と職域が密接に連携を図り、相互に連携協力しながら健康づくりを進めてまいります。
 また、お話の健康づくり応援団も活用し、都民が自主的に健康づくりに取り組むことができますように、環境整備に努めてまいります。

○吉野委員 次に、新型インフルエンザ対策について伺います。
 近年、高病原性鳥インフルエンザは、アジアからロシア、ヨーロッパ、アフリカへと拡大するとともに、鳥から人への感染や死亡例も、これまでの東南アジアの一部以外にも拡大しています。
 世界保健機関は、この高病原性鳥インフルエンザが、人から人に感染する新型インフルエンザに変異する可能性が高まっていると警告を発しています。
 都は、昨年十二月、東京都新型インフルエンザ対策行動計画を策定しましたが、ふだんから発生を監視し、いち早く発生をとらえ、素早い対応を図ることが最も重要であります。
 そのために、都は海外での発生情報やその他関連情報の収集、分析をどのように進めていくのか、所見を伺います。

○平井福祉保健局長 新型インフルエンザなどの国内外の感染症情報を迅速に収集、分析するため、来年度、健康安全研究センターに新たに疫学情報室を設置することといたしたところでございます。
 この疫学情報室におきましては、世界保健機関や諸外国の研究機関からの専門情報を初め、国の内外からの医療機関から患者情報を幅広く収集いたしまして、分析、評価を行います。
 こうしたことで得られた知見を都内の医療機関に迅速に提供することによりまして、適切な診断、治療などに役立てるとともに、感染防止対策の徹底を図るため、発生動向の都民への情報発信に努めてまいります。

○吉野委員 海外で新型インフルエンザが発生した場合、交通機関が発達した今日、日本に持ち込まれることは必至であります。
 そこで、海外での発生をとらえた場合、次に重要なことは、都内での発生を監視し、早期に発見することでありますが、都はどのような体制を構築していくのか、所見を伺います。

○平井福祉保健局長 新型インフルエンザの感染拡大を防止するためには、迅速な患者の発見と的確な対応が必要でございます。海外で発生した場合には、都内での発生に備えまして、医療機関からの疑われる患者の報告と、それに基づく保健所の調査、さらに健康安全研究センターでの検査までの一連の対応を行うための仕組みでございます東京・新型インフルエンザアラートを直ちに発動いたします。
 健康安全研究センターでは、ウイルスを二十四時間以内に確定診断するため、夜間、休日も含めまして、常時実施できるよう検査体制を整備しているところでございます。
 今後とも、医療機関及び保健所などと密接に連携いたしまして、監視体制を強化してまいります。

○吉野委員 新型インフルエンザ発生の対応では、健康安全研究センターが果たす役割が大変重要です。ぜひ一層、体制の充実強化を図ってもらいたいと思います。
 次に、教育問題について伺います。
 今、各国が教育改革に取り組んでいますが、資源の限られた我が国では、国際間の競争に対抗していく上でも、優秀な人材を育成していくことが極めて重要であります。
 しかしながら、我が国の子どもたちは、学習意欲の低下や生活習慣の乱れ、多様な問題行動など、大変憂慮される現状があります。今日の教育に求められているのは、子どもたち一人一人、知、徳、体の調和がとれた全人的な育成と、生きる力を着実に身につけさせることであります。
 生活習慣の乱れている私がいうと説得力がありませんが(笑声)子どもたちのためには、早寝、早起き、しっかりと朝食をとるなど、家庭での基本的な生活習慣を身につけることが喫緊の課題であります。
 国内外の調査結果からは、基本的な生活習慣と学力調査の結果に一定の関係があることが指摘されています。
 そこで、都教育委員会が実施している児童生徒の学力向上を図るための調査では、子どもたちの生活習慣と学力調査結果にはどのような関係があったのか、また、学校教育では基本的な生活習慣についてどのような場面で指導が行われているのか、伺います。

○中村教育長 都教育委員会で実施しました調査では、毎朝朝食をとる、登校の前に学習に必要な持ち物を確かめるといった生活習慣が身についていると思われる子どもほど、学力調査の正答率が高い傾向にあるということが明らかになっております。
 食事や身の回りの整理整とんなど日常生活におきます習慣は、本来家庭でしつけるべきでありますが、各学校でも学級活動や道徳の時間を中心に、学校生活のあらゆる場面におきまして、規則正しい生活や礼儀作法など基本的な生活習慣の確立に向けまして指導しております。

○吉野委員 子どもたちに基本的な生活習慣を確立させるためには、家庭教育に負うところが極めて大きく、学校、家庭、地域の連携が重要であると思います。
 我が党の代表質問に対する答弁にあったように、家庭を初め都民全体に子どもの生活習慣の大切さを働きかける大きな運動を展開していただきたいと思います。
 また、学力の向上を図るためには、同時に、教育に直接携わる教員の資質、能力、中でも授業力の向上が欠かせません。人間は教育によってつくられるといわれるとおり、教育の成否は教員にかかっているといっても過言ではありません。子どもたちや保護者はもとより、広く社会から尊敬され、信頼される質の高い教師を確保することが不可欠であります。
 そこで、教員の資質向上について伺います。
 都教委では、新たに東京教師道場を開設し、リーダーの育成に取り組むと聞いていますが、この教師道場においては、どのような研修によりリーダー養成を進めるのか、伺います。

○中村教育長 東京教師道場では、豊かな経験と高い指導力を持つ教員約百人の助言者の指導のもとに、おおむね教職経験五年から十年の教員約四百人の部員が継続して研修してまいります。
 この研修では、二年間にわたりまして授業研究を行ったり、新しい教材を開発したり、指導技術を高めたりすることなどを通しまして、他の教員を指導する力を身につけたリーダーを育成してまいります。

○吉野委員 また、今後四十歳代から五十歳代の教員が次々に退職していくことに伴い、これらの教員が持っていた豊かな経験や知識が、次世代の教員に十分継承されることなく失われてしまうことが懸念されます。
 東京教師道場では、豊富な指導経験や人材育成の手腕を有する教員OB等を活用し、すぐれた指導実践等の継承に努めることが必要であると考えますが、見解を伺います。

○中村教育長 都教育委員会は、教科等に関する高い専門性や人材育成の豊かな経験を有する退職校長等を東京教師道場の学習指導専門員として活用し、それぞれの専門員が部員や助言者に対しまして授業のモデルを示したり、授業改善のための具体的な方策につきまして指導助言をすることによりまして、すぐれた指導実践の継承や発展に努めてまいります。

○吉野委員 すぐれた教師の条件には、さまざまな考え方がありますが、教師として最も大切なのは、自分の仕事に対する使命感や誇りであります。広く地域社会から尊敬と信頼を獲得するためには、強い使命感を持った教員の確保こそ最も重要な要素であります。
 都教委では、このような使命感を持ち、授業力のある教員を育成するため、今後どのように取り組んでいくのか、伺います。

○中村教育長 都教育委員会では、すべての教員を対象に、初任者から四年次までの必修研修を初め経験に応じた研修体系を構築しまして、教育に対します使命感を養うとともに、実践的な指導力の向上を図るなど、教員の資質向上に努めてまいりました。
 また、平成十六年度に、東京都の教員になることを志望する大学生を対象に、東京教師養成塾を開設しまして、高い志を持った教員の確保に努めております。
 今後、教員全体の授業の質を高めることが一層求められておりますことから、東京教師道場で育てたリーダーを各学校の人材育成に活用することなどによりまして、使命感を持ち、授業力のある教員を育成してまいります。

○吉野委員 使命感ある教員でなければ、将来ある生徒の教育を託すことはできません。都教育委員会は、これからも優秀な教員確保に最大の努力を払われることを強く要望して、教育関係の質問を終わります。
 次に、産業廃棄物の不法投棄対策について伺います。
 昨年の第一回定例会では、東京都廃棄物条例を改正し、排出事業者、処理業者に産業廃棄物処理に係る報告・公表制度を全国で初めて導入しました。
 また、知事は、昨年の首都圏サミットで、建設廃棄物の流れを総合的に管理する電子システムによる新たな仕組みを提案しました。
 さらに今年度は、感染性廃棄物をICタグによって追跡する新たなシステムを構築するなど、不法投棄防止のための対策を実施しています。
 しかし、東京から排出された産業廃棄物が他県で不法投棄されるという状況が依然として後を絶ちません。産業廃棄物を大量に排出する東京の責任を果たしていく上でも、都は、さらに不法投棄を防止する新たな仕組みを構築し、これを全国に発信していくべきであると思いますが、知事の見解をお伺いします。

○石原知事 国は、罰則の強化など法改正を繰り返しておりますけれども、不法投棄問題は一向に解決しておりません。この問題の解決には、現場の実態を踏まえた新しい発想--つまり現場の実態というのはいろいろあるでしょうが、一番問題は、この産業廃棄物投棄に関する所管が国交省と環境省に分かれておりまして、この壁があるものですから、非常に情報の流れが悪くて、結果、摘発も後手後手になっているといううらみがございます。
 でありますから、東京都から提案しまして、昨年の秋の首都圏サミットでも提案したんですが、この建設廃棄物管理の情報というものを電子化して、非常に機能化し、急速化して事態を把握すると。八都県市と連携して、とにかく押さえるものは押さえていくと。それをまたさらに踏まえて、国に法改正を求めていくつもりでございます。
 今後とも、産業廃棄物問題の解決に向け、排出事業者や処理業者による報告を公表する制度などの充実を図りながら、国に先駆けた取り組みを東京から全国に発信していきたいと思っております。

○吉野委員 不法投棄を撲滅するための知事の強い決意を伺いましたが、ぜひとも都が先導的に取り組んでいただきたいと思います。
 都は、これまで、関東甲信越などの周辺自治体と連携して、広域的な規制監視を強めてきました。しかし、最近は、小口で悪質、巧妙な不法投棄がふえており、都内の産業廃棄物が他県にある複数の施設を経由して不法投棄されるケースもあり、自治体間の情報交換に手間取っている間に実行者が不明になってしまう事案も少なくないと聞いています。
 そこで、こうした事案に対してどのように対応していくのか、見解を伺います。

○大橋環境局長 不法投棄の実行者を速やかに発見し、特定するためには、近隣の自治体との情報共有や広域監視体制の構築が何よりも重要でございます。
 都は、これまでも、八都県市などと協力して、産業廃棄物車両の検問や不法投棄現場の調査、硫酸ピッチの合同摘発などを行うとともに、不法投棄対策に努めてまいりました。
 今後は、各自治体が不適正処理に係る情報を相互に利用できるシステムを導入するなどにより、不法投棄実行者の早期発見に努めてまいります。

○吉野委員 悪質、巧妙な不法投棄については、行政処分も含めて厳しい姿勢で臨んでいただきたいと思います。
 また、不法投棄を撲滅するために規制を厳しくすることも必要ですが、それとあわせて、信頼性の高い処理業者を育成していくことも重要です。信頼性の高い処理業者のビジネスが発展し、悪質な処理業者が市場から排除されれば、不法投棄は格段に減少していくと考えます。
 今後、すぐれた取り組みを行う処理業者が市場で評価を受け発展できるよう、都も積極的に取り組むべきですが、見解を伺います。

○大橋環境局長 産業廃棄物の不法投棄を防止し、適正処理を推進していくためには、規制の強化に加えて、廃棄物処理業界を健全に発展させていくことが重要であると考えております。
 都は、これまでも、産業廃棄物の適正処理と資源化に取り組む処理業者とエコトライ協定を結ぶなど、自主的な取り組みを支援してまいりました。今後とも、信頼性の高いビジネスの発展を促すため、処理業者による環境配慮や法令遵守の取り組みを第三者が審査し、評価する仕組みづくりなどに取り組んでまいります。

○吉野委員 ぜひ全国のモデルとなるような廃棄物処理対策を進めていただきたいと思います。
 次に、下水再生水の活用について伺います。
 下水道局は、今回新たに永田町・霞が関地区での再生水供給事業を実施するとのことですが、このことに関連して、何点か伺います。
 この事業の供給地区の中に我が自民党本部もありますが、水資源の有効活用の観点から、都の要請を受け、率先して再生水の利用を決定いたしました。都民生活や産業活動など東京の豊かな都市活動は、水に支えられているといっても過言ではありません。水道局は、おいしい水づくりに努力していますが、この水がトイレ用水や散水に使われてしまったり、水再生センターで処理された下水が、ただ河川などに放流されるだけというのも、まことにもったいないことです。
 これまで下水道局は、下水処理水を再生水としてよみがえらせ、都庁を含むこの周辺にトイレ用水として供給してきました。
 そこで、まず、現在どのようなところに、どれだけの再生水を供給しているのか、伺います。

○前田下水道局長 下水再生水は、都市における貴重な水資源でございます。この貴重な水資源を有効に活用するために、大規模な都市開発が行われました西新宿地区、臨海部副都心や汐留、これらの五地区におきまして、現在百三十棟のビルなどに水洗トイレや散水などの雑用水として、年間約三百万立方メートルを供給しております。
 また、このほか、潤いのある水辺環境を創出するため、清流を復活する用水としても活用しております。

○吉野委員 新しく建設されたビルに再生水が供給されてきたということですが、今後、再生水の利用を一層広げていくためには、既存のビルなどにも機会をとらえて供給していくべきと考えます。
 また、水の有効利用には、再生水のほかにも方法があると聞いていますが、今後、再生水利用を一層拡大するに当たっては、利用者のメリットを明確にすることが肝要ではないかと思います。
 そこで、再生水を利用することのメリットについて伺います。

○前田下水道局長 水の有効利用には、再生水を利用するほかにも、ビルごとに排水を処理して再利用する個別循環方式などがございます。
 個別循環方式と比較しました主なメリットといたしましては、一日当たり百立方メートルの再生水を利用する場合で試算いたしますと、一年間で約五百八十万円のコストの削減が可能となります。
 また、このほか、環境への貢献といたしまして、二酸化炭素に換算いたしますと、一年間で六十九トンの温室効果ガスの削減が可能となります。
 これは、日比谷公園の面積の約一・二倍に当たります十九ヘクタールの森林が吸収する量に相当いたします。

○吉野委員 大きなメリットがあることが理解できましたが、このメリットを都民や事業者に発信していくことが重要です。永田町・霞が関地区は、国家機能が集積している日本の象徴的な場所であり、ここに再生水を供給するPR効果は非常に大きいと考えます。
 そこで、改めて永田町・霞が関地区の事業内容と取り組みについて伺います。

○前田下水道局長 本事業は、国会議事堂周辺の約百四十ヘクタールを対象に、ビルの水洗トイレや道路、植栽への散水などの雑用水として再生水を供給するものでございます。
 既に供給を開始しております汐留地区を起点といたしまして、再生水管及び配水池を整備いたしまして、平成十九年夏季に供給を開始する予定でございます。その後、区域内のビルの改修に合わせまして、順次供給先を拡大していく予定でございます。
 お話のとおり、当局といたしまして、国家機能が集積し、多くの方々が訪れます永田町・霞が関地区にこの再生水を供給する意義は非常に大きいと考えております。この地区を拠点といたしまして、再生水の利用をステッカーにより明示いたしましたり、さまざまな広報媒体を積極的に活用して情報発信を行うなど、重点的なPR活動を展開いたしまして、再生水のさらなる利用拡大を図ってまいります。

○吉野委員 この事業に対する局長の強い意気込みを感じました。
 永田町地区には民主党さんの本部もありますが、再生水の利用にご理解賜らんことを切に願うものであります。
 次に、民設公園について伺います。
 知事は、本定例会の中で、東京を緑の首都としていくために、これまでの公園整備の手法に加え、新たに民設公園制度を創設することを表明されました。都のこの動きを国も高く評価し、昨年末に開かれた都市再生本部会合において、第三次都市再生プロジェクト事業の一環と位置づけられたと聞いております。
 我が党は、昨年の予算特別委員会でも、緑の保全と創出をするため、緑政策を推進すべきと主張してきました。民設公園制度は、市街地における緑の領域拡大に貢献し、都市再生の観点やヒートアイランドなど環境対策にも有効な新しい施策であります。
 まず、民設公園制度を創設する意義について伺います。

○梶山都市整備局長 首都にふさわしい緑を確保するためには、都市計画公園・緑地の整備が必要であります。今後、事業化を必要といたします都市計画公園・緑地は約二千六百ヘクタールにも及び、これまでの公共が主体となった公園整備の手法に加え、企業グラウンド等の民有地を活用いたしました民設公園制度を創設し、公園の整備促進を図ることといたしました。
 この制度は、民間が民有地を公園として整備し管理するものであり、財政支出を伴わず、早期の公園整備を可能とするものでございます。

○吉野委員 従来の公共が主体となって進めてきた公園の整備に加え、早期の整備、公開を図るため、民間活力の参入を促す都独自の工夫を行うということは大変意義深く、この制度の早期活用を期待します。
 そこで、民間を積極的に参入させる民設公園制度の仕組みと今後のスケジュールについて伺います。

○梶山都市整備局長 民設公園制度の円滑な導入に向け、民間事業者の協力を得て、事業者の事情等を把握し、地元区市と連携しながら、仕組みづくりを進めてまいります。
 その中で、民間を積極的に参入させるため、東京都独自の工夫として、都市計画公園区域内における都市計画制限の緩和等を行い、これを受けて事業者が一定規模の公園を整備し、管理することとしております。
 今後、制度の目的、対象や規制の緩和、管理の手法等についての基本方針を定め、平成十八年度からの制度導入が可能となるよう、早期に要綱等を整備してまいります。
 今後とも、公民が連携し、東京を緑豊かな首都とするよう努めてまいります。

○吉野委員 以上で総括質疑は終わりますが、知事は、施政方針表明で、就任時の都財政は徳俵に足がかかり土俵を割る寸前であったと述べていらっしゃいます。この間、七年間、我が党が知事とともに進めてきた財政健全化への取り組みがようやく芽を出したといえる十八年度予算であり、関係各位の努力を高く評価するものです。
 重要なのは、これをさらに進め、低成長下でも持続できる揺るぎない財政を確立していくことです。我が党は、引き続き石原知事とともに改革続行を約束いたしまして、総括質疑を終わります。(拍手)

○松原委員長 吉野利明理事の発言は終わりました。
 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩いたします。
   午後三時十一分休憩

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