東京都議会予算特別委員会速記録第五号

○前島副委員長 相川博理事の発言を許します。
   〔前島副委員長退席、委員長着席〕

○相川委員 花粉症の相川でございます。
 質問に入ります前に、社会福祉総合学院をめぐる問題についての私ども都議会民主党の見解を述べさせていただきたいと思います。
 過日の本委員会における我が会派の中村委員の質問に端を発して、東京都社会福祉総合学院をめぐる問題について、真相究明のための百条委員会が設置をされました。二十九日の委員会では、監理団体改革担当の濱渦副知事を初め、総務局長、財務局長、福祉保健局長の関係三局長を、地方自治法百条に基づく証人として証人喚問することが決まっております。
 そもそも社会福祉総合学院の運営のあり方をめぐっては、今定例会に報告された包括外部監査人の報告書でも、さまざまな問題点を指摘されているところでございます。さらに、一部の新聞では、専門学校への不適切便宜と一面記事で取り上げたところもあり、また石原知事も記者会見において、大変に大きな問題だと思っているという認識を示していたところでございます。
 そうした中で、都民からの負託を受けた都議会が、この問題について全く何も触れない状況はおかしい、むしろ議会こそが率先して事実の究明に踏み出さなければならない、それが議会の責任ではないか、そのような問題意識から、我が会派の中村委員がみずからの質問においてこの問題を取り上げる意向を示し、我が会派としてもそれを是としたものであります。
 中村委員の問題提起を受けて、真相究明のための百条委員会が三十五年ぶりに都議会に立ち上がった、そのこと自体は歓迎したいと思いますが、これだけ外部からさまざまな問題を指摘され、都政をめぐる重大な関心事となっていたにもかかわらず、だれもこの問題を積極的に取り上げようとしなかった議会のあり方そのものに、今の都議会の問題点があるように思います。
 都政運営全般に関して、問題点はないか、不適切な執行状況はないかというチェック機能を果たすのが議会の役割であろうと思います。役所のやることに問題はないはずだという前提に立って議論を進めていくというのは、チェック機関としての議会の役割をみずから放棄するものであり、本末転倒であるといわざるを得ません。
 都議会民主党は、そうした認識を踏まえて、また、この問題を率先して取り上げた者として、今後の百条委員会の質疑の中において、問題の真相究明のために全力で当たっていくことをここに表明いたします。
 それでは、質疑に移らせていただきます。
 去る三月十四日の当委員会、といいますと、また空気がぴりぴりしますけれども、三月十四日のこの予算委員会の質疑の中で、私の尊敬します先輩であります自民党の臼井委員が、青梅はチベットのようなものだというような知事の発言について取り上げられました。
 青梅はチベットみたいなものだ、正直申し上げまして、私もそう思います。まあ、青梅と西多摩は同じようなものですけれども、青梅と西多摩がチベットであるといえば、滝山丘陵などを挟んでその隣に位置します我が八王子は、さしずめブータンとかネパールといえるのかもしれません。
 どこをとってみましても、いずれにしても今、花粉を最大限発生させている花粉のメッカであるということに変わりはないと思います。ということで、この花粉症の問題は、三月十一日に私どもの富田副委員長が具体的な質問をしておりますけれども、私はあえて、二十年来の花粉症患者の一人としまして、今、花粉に悩まされている全都民の代表、勝手に代表としまして、無策の国に対して恨みつらみの一言をいわせていただきたいと思います。
 きょうは、臨場感を高めようと思いまして、けさ、朝どりの野菜ならぬ朝どりの花粉を決死の覚悟で持ってまいりました。(実物を示す)これは本当に小さい枝ですけれども、ここに、昨年の猛暑の影響で花粉を一生懸命ためた雄花がこういうふうになっていまして、今、杉の木そのものもそうですけれども、高尾とか陣馬の方の杉山が、紅葉でもないのに赤茶けています。そこから今の雄花がはじけるというか、開いて、黄色い粉末を空に飛散させるわけでございます。
 知事はきのうの記者会見で、ご自分が花粉症になられたと、これから真剣に取り組むというようなことをおっしゃられておりましたので、謹んでお悔やみを申し上げますと同時に、ひそかに、今後どういう手を打たれるのか、期待を申し上げておきたいと思います。
 実は私、今、二十年来花粉症で悩まされているというふうに申し上げましたけれども、自衛手段としまして、もう二十年前から鼻の下にフィルターをつけております。ところが、このフィルターは性能が大変悪くて、頻繁に目詰まりを起こしまして、たびたび洗浄しませんと逆効果を生んでしまう。大変な難点がございます。
 そのほかに、(実物を示す)こういった右のポケットには点鼻薬、どこかの歌にありましたけれども、左のポケットには点眼薬を入れている。あと、こういうマスクも常に持っております。しております。
 この花粉症用、つまりアレルギー用の薬というものが、かなり前に出た薬でも、実は薬価基準が下がらないんです。これはリザベン点眼液というんですけれども、五ccで、この間、調剤薬局で調べましたら、九百七十円です。眼科で出します、あの物もらいなんかに差します点眼薬、あれが同じ量で六百七十円ぐらいなんですね。そのぐらい薬が高い。
 これだけ医療費も上がっている--この間の局長答弁にもありましたけれども、平成十年で二千八百六十億ですか、あれは人口の一割を想定しての額ですから、恐らく私が八王子市内で通勤通学客を見ていますと、十人のうち四人ぐらいの方がマスクをされています。ということは、もう、あれよりもはるかに高い医療費が使われているんだと思います。
 それだけ医療費がかかったり、あるいは花粉症になると外出をしなくなって、一説によると、GDPが〇・六%ぐらい下がるというような説まであるわけですから、これは大変な国民的な課題だと実は私は思うんです。それでも国が本腰を上げない。勘ぐっていえば、医師会との癒着があるとか、あるいは製薬業界との何か癒着があるんじゃないかと思えてくるような実は問題であろうかと思います。
 ただ、一番の問題は、何といっても、この花粉症が生死にかかわらない病気だと。生活環境病という人もいますけれども、例えば、地下鉄サリン事件が起きて十年たちますけれども、私がこの場でサリンをまけば、私を含めて大勢の方が命を落とされると思います。だけれども、例えばこの花粉をここでまいても、せいぜい、後ろにいらっしゃる樺山委員長がくしゃみを連発するぐらいのものだと。ということで、国は恐らく、生かさず殺さずというような対応をしているんじゃないかなという気がいたします。とにかく、これはもう国民的な課題だと。
 国もようやく重い腰を上げて、ことしの二月に、関係省庁を集めまして、「今期における花粉症に関する政府の取組」というものをまとめられました。ところが、この中で、例えば、食べると花粉症の症状を緩和できる米を農林水産省が開発したそうですけれども、これを医薬品認可の権限を握っている厚生労働省が、医薬品として扱うべきだとかみついたと、こんなことまで、つまり、花粉症に悩む国民不在の議論が始まっているんだというようなことまで新聞で書かれているありさまであります。
 とにかく私は、花粉症に悩む患者の一人としまして、国の取り組みの不十分さを極めて歯がゆく思いますし、国民的な課題である花粉症対策に国がもっと本腰を入れることを、東京都も腹の底から突き上げていただきたい、このことをまず強くお願いを申し上げておきたいと思います。
 それでは、本当の質問に移らせていただきます。
 まず、東京における自然の利用マネジメントを目指してにつきましてご質問させていただきます。
 東京には、多摩地域や小笠原までの島しょなど、非常にあらゆる層の貴重な自然が残っているわけであります。そして、その貴重な自然が、二酸化炭素を吸収して酸素を放出する都市の肺としての役割を担っておりますし、また、大都市近郊の観光レクリエーションの場などの、つまり多面的な機能を果たしているわけであります。こうした自然の多くは、人が入り込めないような大自然ではなくて、植林された森でありますとか里山でありますとか、今日まで人の適切な管理によって築かれてきた自然だということだと思います。
 しかし、そうして築かれてきた人と自然との適切な関係が失われましたし、また、自然が本来持っている回復力を超えた過度の利用や生態系の乱れが見られるようになってきています。そうした課題に対して、今後は、自然の利用をマネジメントしていくという基本的な考え方に立ち、施策を進めていくことが重要であると考えるわけでありますが、自然の保護と利用の両立は、実際には非常に難しい課題であります。
 多摩地域の大部分は自然公園に指定されており、都は、利用者指導などのために、東京都レンジャーを今年度から創設して、保護と適正な利用の両立に向けた取り組みを既に始めています。自然を保護すると同時に適正に利用していくために、東京都レンジャーの役割は大きいと思われますが、東京都レンジャーは、現在七名しか配置されておりません。十七年度には奥多摩に二名増員をしていくと聞いていますが、現在、都レンジャーが活動している明治の森高尾国定公園、つまり高尾山では年間二百万人を超える利用者があるわけでありまして、現在のレンジャー数では非常に限界があると思われます。
 都民の中には、レンジャーの活動に協力しようとする希望者もおるといわれておりまして、こうした都民の協力を得ながら活動を進めるべきだと考えますが、この点について所見を伺いたいと思います。

○平井環境局長 自然の適正な利用を推進していくためには、都民の協力を求めるなど、レンジャー活動の広がりをつくっていくことが重要でございます。
 このため、平成十七年度に、首都大学東京と連携いたしまして、東京都レンジャーを補佐するボランティアの養成講座を開講いたします。受講者数は百名を予定しておりまして、この受講修了者が、平成十八年度以降、週末を中心に現地活動ができるような条件整備を図ってまいります。

○相川委員 ぜひ真剣に取り組んでいただきたいと思います。
 また、自然利用のためのマネジメントを進めるために、こうした都民の協力によりますレンジャー制度の充実にあわせて、レンジャーそのものの権限をより強化していくということも必要であると考えるわけですが、この点についても見解を伺いたいと思います。

○平井環境局長 自然公園などの利用者に対する的確な指導、監視を行っていくためにも、東京都レンジャーの権限の強化は重要でございます。
 自然公園法など現行の法制度では、樹木の伐採など開発行為への規制が主な内容となっておりまして、自然に接する上での必要なルール、それを守らせるための規定が不十分でございます。
 このため、都は、土地所有者と協定を結びまして、その権限を東京都レンジャーに付与することによって指導の強化を図ることを検討してまいります。

○相川委員 今、平井局長からお話がありましたように、こうした新しい取り組みとともに、都民や企業の力を生かしていく。自然の利用をマネジメントしていくという面で重要であると思います。
 現在、自然を舞台に都民や企業の力を利用した取り組みの一つとしまして、東京グリーンシップ・アクションが挙げられていますが、都民やNPO法人あるいは企業などが保全地域で活動を行っており、さまざまな人々がかかわるこうした試みは、単に企業の協力という枠を超えていく可能性があると感じております。
 そこで、一年間の取り組みを通して得られた結果をどのようにとらえているか、ご所見を伺いたいと思います。

○平井環境局長 東京グリーンシップ・アクションを実施することによりまして、一般都民に加え、企業の社員ボランティア、NPOなどといった幅広い層に連携が生まれまして、保全活動が活性化するようになったというふうに理解しております。
 また、参加した企業は、社員が実際に環境保全活動を体験することで、社員全体の環境に対する意識の向上につながったものとして、この活動を高く評価しております。
 都といたしましては、環境保全に対し、さまざまな主体がかかわるこの取り組みは、これからの自然環境保全の新しいあり方として非常に有効なものと考えております。

○相川委員 欧米ではもう既に、企業メセナというような形で、当たり前のようなことになっているわけでありますけれども、ぜひ有効にお使いをいただきたいと思います。
 次に、新たな自然の価値の発見というか、この事業を通してそういう意味があると思うんですけれども、意識の啓発面でも非常に効果のある施策であると思いますので、これからも積極的に取り組みの拡大を図るべきであると考えますが、今後の取り組みについて伺いたいと思います。

○平井環境局長 平成十七年度は、現在実施している地域のほかに、新たに数カ所の保全地域で活動を開始する予定でございます。
 また、この活動のさらなる周知、定着を図るため、現在の参加企業やNPO等の活動状況を、都民、企業に向けPRしていくことを考えております。
 今後、より多くの都民、企業の参加を得て、都民が緑に触れる機会を広く提供しながら、自然環境の保全に取り組んでまいります。

○相川委員 次に、温暖化対策について伺います。
 今議会に提案されています環境確保条例の建築物環境計画書制度では、二つの制度の強化がありました。一つは、ヒートアイランド対策の強化であり、もう一つは、マンション環境性能表示の追加でございます。
 そこで、私は、二つの制度強化のうち、まず、ヒートアイランド対策についてご質問したいと思います。
 私たち都議会民主党は、都市づくりの中に風の道、水の道、緑の道を位置づけるとともに、民間を含む都市開発事業についても、計画のできるだけ早い段階でさまざまな対策を導入するなど、環境政策のウエートを高めていくべきだという主張をこれまでしてまいりました。
 昨年九月の代表質問では、大塚隆朗委員が、建築物環境計画書制度でも風の道を配慮項目に加えるべきだと主張して、平井環境局長は、隣接敷地を考慮した風通しについて評価することを検討すると答弁をされています。
 今回提案をされています環境確保条例の建築物環境計画書制度では、私たちが主張してきた風の道についてどのように配慮をされているのか、確認をさせていただきたいと思います。

○平井環境局長 風の道は、市街地における通風を確保することで放熱を促進するものでございまして、ヒートアイランド対策として有効な対策の一つと考えております。
 今回改正する制度では、ヒートアイランド対策に関する評価項目を新設し、その中で風通しについて評価を行うこととしております。

○相川委員 今のお答えですが、これはまだ第一歩にすぎないと私たちは思います。引き続き、環境アセスメントでの風の道の評価や、あるいは街区単位、都市計画の中で風の道などの環境配慮を行っていくことをここで求めておきたいと思います。
 次に、マンション環境性能表示についてでございます。
 今回、都は、環境確保条例の改正に当たりまして、一定規模以上のマンションについて、省エネ性などの環境性能をチラシや広告に表示することを義務づける、全国でも初めての制度を盛り込みました。今後、このマンションのチラシや新聞広告に、建物の断熱性能や設備の省エネ性あるいは建物の長寿命化、緑化度、これらにつきまして、星が三つで三つ星でありますとか、あるいは二つ星、星一つというような形で表示されることになるわけでありますが、これは画期的な取り組みであると高く評価をさせていただきたいと思います。
 そこで、住宅部門の省エネルギー、温暖化対策を進めていく上で、今回の制度がどのような形で役に立つと考えているのか、伺いたいと思います。

○平井環境局長 本制度は、マンションの環境性能を販売広告に表示し、一般の方々の購入時の選択肢として情報提供することによりまして、省エネ性能の高いマンションが市場で評価され、普及拡大していく、こういうことを目指すものでございます。

○相川委員 ぜひ、定着するまで大変でしょうけれども、頑張っていただきたいと思います。
 さて、私たちは、日本におけます住宅部門の省エネルギー、温暖化対策を進めていく上で、マンションにおける外断熱工法の採用が有効であると実は考えております。
 外断熱工法というのは、建物の躯体の外側に断熱材を張りつける工法でございます。建物の躯体がすっぽりと断熱材で覆われるわけでありますから、蓄熱性にすぐれる、また、冷暖房効率が上がることで省エネルギーにつながるといわれています。外断熱工法を採用することで、冷暖房コストが従来の半分から三分の一ぐらいになる、このようにいわれています。
 実は、私を含みます私ども都議会民主党の三人の議員が、昨年十一月に、ドイツに、外断熱工法の現場をこの目で確かめてまいりました。ドイツでは外断熱工法というのは当たり前のようになっていまして、例えば日本におきます建築確認申請、建物を建てるときに図面を提出するわけですが、そのときに、例えば熱貫流率ですとか、あるいはつくり上げたマンションの部屋が、二十度に保つためにどのぐらいエネルギーを消費するかというような予測値までつけて申請をする、これがもう当たり前のように実はなっておりました。
 ドイツでは、一九七〇年代の石油ショックの経験から、建築物の省エネルギーに実は力を入れていまして、厳しい断熱基準をつくり上げたわけであります。そのために、外断熱工法へのシフトが進んできました。それによって、民生部門の省エネルギー、つまりCO2削減の成果を、実は大きな成果として上げております。そういうものが、もう既にロシアや中国あるいは韓国など、世界じゅうの国々に広がっているわけであります。内断熱工法という日本の常識というものは、今や世界の非常識になっているともいえるかもしれません。
 我が国政府も、住宅、建築物の省エネ性能の向上によって、二〇一〇年までに三千六百五十万トンのCO2を削減することを目標として掲げております。これは民生部門全体のCO2削減目標の四割を占めているわけであります。そのためには、断熱性能のすぐれた外断熱工法への転換、シフトを図る必要があろうかと思います。
 今回のマンション環境性能表示では、建物の断熱性に関する評価項目を設定するということでありますが、外断熱工法についてはどのように評価をされているのか、伺いたいと思います。

○平井環境局長 マンション環境性能表示制度におきましては、建物の外側に断熱材を装着する外断熱工法等による断熱性能の評価は、住宅の品質確保の促進等に関する法律に定めております、熱の伝わりにくさなどをランクづけした省エネルギー対策等級による評価を用いて行ってまいります。

○相川委員 日本では、外断熱工法のマンションというのは今ほとんどないわけでありますが、九九%が内断熱工法といってもいいかもしれません。内断熱工法では、コンクリートの躯体が直接外気にさらされるわけでありまして、温度変化が激しくて、その分、室温も上下をするわけであります。室内を暖めたり冷やしたりするのに、それだけ、内断熱工法でつくったマンションというものは空調を運転しなければならない。当然エネルギー消費量も多くなります。
 そこで、これまでの建築物環境計画書制度の中で、断熱性能がいわゆる三つ星に当たるマンションが全体でどの程度あるのか、おわかりになりましたら伺いたいと思います。

○平井環境局長 これまでの建築物環境計画書制度におきまして、昨年末までに提出されたマンションの計画書は約二百六十件ございますが、このうち、今回のマンション環境性能表示制度によって、断熱性能が最高であることを示します三つ星に該当するものは、一割弱でございます。

○相川委員 一割しかない。つまり、内断熱が省エネルギーという面においては非常に心もとないということを、その数字というものがあらわしているんだと思います。私は、そういう意味からも、今後、外断熱というものが大いに普及をしていくものだと考えます。
 私たちは、このマンション環境性能表示を含めて、建築物環境計画書制度の対象面積が一万平米以上に限定されているところから、この対象をさらに拡大すべきだと述べてきたところでありますが、今後、第三者機関による評価を活用するなどして、制度の対象規模の引き下げを行うなど、こうした制度の適用範囲の拡大を再度要望しておきたいと思います。
 次に、建築物環境計画書制度の対象にならない建築物の省エネ対策について伺いたいと思います。
 省エネ法では、二千平米を超える建物を新築、増改築する場合には届け出を必要としており、今国会では、これを住宅の建設にも適用することなどが提案をされています。しかし、既に報告が義務づけられている非住宅系の建築物の十五年度新規着工の届け出状況では、提出率は六七%と極めて低い状態になっています。また、省エネ基準の達成率も低いことから、国土交通省は、新築住宅は二十年度までに五割、非住宅建築物については十八年度までに八割とする目標を掲げています。
 私は、こうした目標さえ、実は低いものだと考えているところでありまして、都としても、建築確認の機会などを通じて積極的な施策を展開していくべきだと考えますが、見解を伺います。

○梶山都市整備局長 お答えいたします。
 都は、いわゆる省エネ法に基づきまして、床面積が二千平方メートル以上の建築物につきましては、省エネルギー計画書の提出を求めております。この計画書では、外壁、窓などからの熱損失の防止装置、及び空調やエレベーターなどに関するエネルギーの効率的利用の措置などを届け出ることとなっております。
 これまで都は、建築確認の機会などを通じ、省エネルギー計画書の提出を指導してまいりました。今後は、計画書の提出率の向上を図るため、民間の確認検査機関との協議の場などを通じまして法制度への協力を要請するなど、より一層建築物の省エネルギー対策の推進に取り組んでまいります。

○相川委員 次に、屋外広告物行政について伺いたいと思います。
 私ども民主党の富田副委員長、大塚委員がこれまでにも、景観上のルールづくりを通じた商店街振興や、あるいはレインボーブリッジなど都が管理する公共施設のライトアップといった観光振興、そしてバリアフリー施設整備などに対して、街路灯や公共物の壁面を民間に開放して、企業広告を認めてその広告収入を充ててはどうかなど、景観行政、屋外広告物行政、商店街振興あるいは観光振興などをまちづくりとして複合させるような提案を行ってきました。その一部はもう既に実現をしているわけでありますが、そうした経緯を踏まえても、なお残る屋外広告物行政の課題につきまして伺いたいと思います。
 まず、建築物の壁面を利用する広告物の大きさの規制についてでございます。
 これは、昭和二十四年に制定をされた条例に、昭和三十二年に規定されたものでありますが、日本初の超高層ビルであります霞が関ビルの竣工が昭和四十三年であることを考えると、現在のように大規模な建物が数多く建てられる状況を恐らく想定していなかったであろうことは、容易に想像がつくものであります。
 そこで、まず、壁面利用の広告物の大きさに関する規制は、現在どのようなものがあるか、伺いたいと思います。

○梶山都市整備局長 屋外広告物条例では、第三者の商業広告につきまして、用途地域の区分に基づき表示可能な面積の上限を定めており、広告物一カ所につき、商業地域は百平方メートルまで、準住居、近隣商業及び工業系地域は五十平方メートルまでとなっております。
 なお、住居系の地域では、これより厳しい基準となってございます。

○相川委員 ただいまの面積制限でありますけれども、もしその面積制限の根拠があるようでしたら、お答えをいただきたいと思います。

○梶山都市整備局長 屋外広告物は、案内誘導や情報提供などの都市活動に必要な機能を担うものでございますが、一方で、適切に管理されず、無秩序、大量に出される場合には、景観を損ねるばかりでなく、落下により生命や財産に危害を与えるおそれもございます。
 屋外広告物条例では、こうした観点から、都市活動の基本となる用途地域の区分に応じ、広告物の表示可能な面積などについて必要な基準を定めております。

○相川委員 先ほどの答弁では、壁面利用の広告物は、商業地域ですが、現状では最大で百平米以内となっているということでございました。しかしながら、良好なビジュアル構成が--昔と違いまして、今、広告物そのものの構成が可能になったことや、広告物を掲出する建築物がさらに巨大化している、あるいは広告技術、建築技術が発達した今の状況、現状にそぐわないと私どもは実は考えているわけでありまして、もちろん、住宅地なんかで大きな広告物を掲出するということは問題があろうとは思いますけれども、商業地域については、大きな例えば広告物によって、特色ある景観形成とかあるいは商業活性化などに役立つ、そういった複合的効果も期待できる可能性も実はあるわけであります。
 こうした商業地域に限定しての広告物の大きさ規制の緩和について、どのようにお考えになっているか、お伺いをしたいと思います。

○梶山都市整備局長 屋外広告物は、景観を構成する重要な要素であり、近年、景観に対する都民の関心が高まる中で、広告物についても、街並みとの調和が強く求められているところであります。
 お尋ねの商業地域におきましても、良好な景観形成を図る観点から、今後とも広告物の適切な規制が必要であると考えます。

○相川委員 広告物ということに関していえば、広告板と広告幕という、そういう解釈があるというふうに聞いているわけですが、先ほど取り上げました建築物の壁面を利用する広告物というのは、通常は広告板という扱いになるそうでございます。
 もう一つ、建物の壁面を利用するものとして、今申し上げた広告幕があるわけであります。この広告幕につきましては、大きさ規定はないということですが、その構造によっては、広告幕ではなくて広告板扱いというふうになって、大きさ規定が適用される場合があるというふうにお聞きしております。
 ところが、広告幕を広告板扱いとする場合の解釈が、各区や市によって違っている現状があるというふうに聞いておりまして、そこで、広告物のうち、広告板と広告幕の違いがどのようなものなのか、お答えをいただきたいと思います。

○梶山都市整備局長 広告板は、表示面が板状の広告物でございまして、建築物の壁面に取りつけた文字、突き出し看板などを含むものでございます。
 一方、広告幕は、百貨店の壁面に見られるように、布、ビニールなどに広告を表示し、建築物の壁面に簡易に取りつけたものでございます。
 したがいまして、広告幕の周囲を枠で囲い、壁面に取りつける場合などは、表示面が固定された広告板として扱うこととしております。

○相川委員 屋外広告物を設置する場合には、今のお話のような設置許可申請というものが必要であるわけでありますが、その申請手数料が、広告板の場合は、二年以内で五平方メートルまでごとに三千二百二十円、そして広告幕の場合は、一月以内で一張りが一律九百九十円というふうになっているそうであります。
 つまり、先ほど述べたように、広告幕が広告板扱いになりますと、本来、一月だけで、一月掲出すればいいはずの広告幕が、広告板扱いとなることによって、九百九十円から三千二百二十円になってしまう、こういう申請手数料が上がってしまうという不合理があるわけであります。
 そこで、提案でございます。広告幕について幕構造の強度規定を定めて、広告板の大きさ制限の適用を撤廃して、現状の一律の申請費用ではなく、強度別の平方メートル当たり単価の申請手数料にすることが合理的ではないかと考えますが、これに対する所見を伺いたいと思います。

○梶山都市整備局長 屋外広告物の許可申請手数料は、審査、実査などに要する事務費、時間などを積算し、条例で定めております。
 広告板は、建築物の壁面や屋上、突き出し、地上など設置方法が多様であり、各方法に応じて、高さ、窓や開口部との位置関係、建築物からの突き出しの長さなどを審査の上、許可しております。
 一方、広告幕は、その形状から、一時的かつ限定的な規模での表示を前提に許可しており、広告板に比べて審査事項が少なく、許可期間も一カ月単位となっております。
 したがいまして、広告板と広告幕の許可申請手数料は異なっており、適切に設定されていると考えております。

○相川委員 わかりました。
 次に、都市整備局関係の手数料条例の改正に関連して、何点かお伺いをしたいと思います。
 この条例改正につきましては、もう既に過日の都市整備委員会において、私ども民主党も賛成しているわけでありますが、審議の中で幾つか、将来の運用上、私にとりまして不安な点がございましたので、念押しのために質問させていただきます。
 今回の手数料条例の改正というのは、特例容積率制度の適用区域を拡大することに伴うものであるわけでありますけれども、現状では、東京駅舎、東京駅の駅舎を保全するために適用した、丸の内の一カ所だけに指定をされているわけであると思います。というよりは、東京駅の駅舎を保全するためにつくった制度である、こういった方が正しいといえるかもしれません。
 そうした特別な制度の適用範囲を今回拡大する、そのねらいというものは何なのでしょうか、伺いたいと思います。

○梶山都市整備局長 特例容積率適用地区制度は、特定の土地の未利用容積を他の土地に移転して活用する制度でございます。
 特例容積率適用地区は、道路などの公共施設が整備されていること、土地の高度利用を図るべき区域であること、さらには、地区内に歴史的に残された貴重な建築物や緑の保全のため、容積率を低く抑える土地が存在することなどの条件を満たす区域について、都市計画で定めることができるとされております。
 今回の法改正では、この制度の適用地区を商業地域以外の用途地域にも拡大し、住宅市街地の更新などにも活用できるようにしたものでございます。

○相川委員 今のご答弁の中に、緑の保全を図る土地というのがありましたが、公共施設が整備されて緑の保全を図る土地ということに限定しますと、例えば寺社林とか屋敷林ということにその緑がなると思いますけれども、例えば屋敷林を保全するためにこの制度を適用するとします。その土地の容積率は、ほかの土地に移転をされてしまうわけですから、その屋敷林のある土地には上屋は建たないわけですよね。
 ところが、ほかにその容積率を持っていって建ててしまって、その後、樹木を伐採して、上屋は建てないけれども、駐車場に使うとか、そういう可能性も実は考えられるわけでして、こうした樹木を伐採して駐車場に使うというようなことを防止する、逆にいいますと、屋敷林をそのまま保全するための担保の方法とかは考えていらっしゃるのでしょうか。

○梶山都市整備局長 都としては、屋敷林の保全などを目的とした特例容積率適用地区を指定する場合には、あらかじめその旨を地区計画などに定めておく必要があると考えております。
 地区計画の中では、屋敷林を地区施設の緑地に位置づけること、敷地内の緑化率を設定すること、樹林地の保全や樹木の伐採を制限することなどの規定を設けることで、屋敷林などの将来にわたる保全を担保することができると考えております。

○相川委員 よく地区計画が出てまいりますけれども、地区計画というのは、私は個人的に考えれば、別に万能な制度ではないというふうに実は思っていまして、これからのまちづくりは、もちろん規制緩和も必要だと思いますけれども、景観をよくするというようなことで考えれば、規制強化というものも実は必要だと思いますし、規制緩和と規制強化をうまく使い分けて、都としていいまちをおつくりいただきたいということをあわせて要望しておきたいと思います。
 それでは次に、クレジットカードによる公金の支払いについてお伺いをしたいと思います。
 IT化の進展の中で、社会全般でペーパーレス、キャッシュレスが進んでいます。インターネットの普及に伴って、インターネットバンキングやモバイルバンキングなど、電子決済の社会的基盤が整いつつあります。
 そこで、都における公金の支払いについて、こうしたインターネットバンキングなどの新しい仕組みの導入はどうなっているのでしょうか、伺いたいと思います。

○櫻井出納長 公金の支払いについてでございますが、都では、平成十六年一月から、使用料や手数料などにつきまして、これまでの金融機関窓口のほか、インターネットバンキング、モバイルバンキング、ATM等を利用して、二十四時間いつでも都民の方々が公金をお支払いしていただける、いわゆるマルチペイメントネットワークを導入いたしました。
 都民の方々がこのネットワークを利用して支払うことができる収納金は、都所有の土地建物の賃貸料や売却代金、都立大学の授業料等でありますけれども、十七年度以降は、都立高校等の授業料や都税等の支払いにつきましても、順次利用できる予定でございます。

○相川委員 今のご答弁でわかりましたけれども、インターネットバンキングを利用して、二十四時間、公共料金や都税を支払えるマルチペイメントネットワークが、もう既に昨年一月から始動しているということでございます。
 ですが、インターネットバンキングはわかりましたけれども、ネットショッピングとか、例えばヤフーオークションだとか、インターネットで決済をする場合の主流は、ほとんどがクレジットカードによる決済なわけですよね。ほとんどがクレジットカードで行われている。
 しかしながら、都が参加をしているマルチペイメントネットワークは、クレジットカードを使った支払いが可能になるようなシステムにはなっていません。民間の電子決済の主流になっているクレジットカードによる支払いができないというのは、ここでいえば不自然な感じがいたします。
 民間の消費者調査では、クレジットカードを利用したい業種のトップは病院だったそうです。最近では、病院でも何々カードが使えますとテレビコマーシャルが流れているように、民間病院では、もう既に診療費のクレジットカード払いができるようになっています。
 そこで、都立病院でもクレジットカードで診療費の支払いができるようにすべきと考えますが、見解を伺います。

○押元病院経営本部長 クレジットカードの導入によりまして、病気やけがなど急な出費に対する不安や、入院費など多額の現金を事前に用意しなければならない不便さを解消することができるだけではなく、収納業務の省力化や未収金の発生防止など、事務の効率化を図ることができると考えております。
 このため、都立病院におきましても、来年度から試行的に、府中病院など三病院でクレジットカードを導入してまいります。

○相川委員 それから、都民情報ルームにおける有償刊行物の購入代金についてでありますが、四月からクレジットカードによる支払いができるようになるということでございます。自治体の財布に入る全くの公金としては、クレジットカードによる支払いが可能になる全国初めてのケースになると思います。十七年度からクレジットカードの利用を開始して、可能な限り広げていくということで、大変結構なことだと思います。
 そこで、さらに伺いますけれども、今後、使用料や手数料等の公金について、支払い方法のさらなる多様化にどのように取り組んでいくのか、伺いたいと思います。

○櫻井出納長 クレジットカード利用の件でございますけれども、今先生からお話がありましたように、この四月から、都庁三階の都民情報ルームにおける有償刊行物の購入代金について取り扱いを開始することといたします。
 また、東京体育館や有明テニスの森公園など、多くの都民の方が利用される施設におきましても、この四月から、施設利用料などの支払いにカードを利用できることになります。
 さらに、同じく四月でございますけれども、開業予定の新銀行東京の発行するICカードも、これらの都立施設等において利用できるので、都民サービスの向上に寄与するものと考えております。
 引き続き、利用者サービスの観点から、都民ニーズを把握した上で取り組んでまいるわけでございますけれども、先生お話しのクレジットカードの利用を全国に先駆けて導入したわけでございますけれども、今後さらに電子政府や電子自治体の取り組みが進みつつある中で、経済や金融の分野でもIT化が進んでおります。キャッシュレス決済の基盤づくりも、続々と新たな展開を見せております。そういうことで、今後ともこのような動向に十分着目しました、電子マネー等を利用した、より都民が支払いやすい方法などをさらに検討してまいります。

○相川委員 大変結構なことだと思います。大いに評価をさせていただきたいと思いますが、この問題につきましては、私が今質問をします何時間前になるんですか、きょうの午後二時に既にプレス発表されたということで、私は、顔は笑っておりますけれども、はらわたは煮えくり返っているということを--まあ顔も笑っていませんけれども、一言申し上げておきます。
 次に、時間の関係もあります。多摩の産業振興について質問をしたいんですが、要望だけ申し上げておきたいと思います。
 東京都は、産学公連携センターを首都大学東京に設置することとしております。首都大学東京がみずからの研究成果を社会に還元し、そのことにより産業振興に貢献していくことはもちろん重要であり、センター開設後における当面の施策として積極的に進めるべきであると考えます。
 しかしながら、将来にわたって産学公連携をさらに充実していくためには、首都大学東京が企業と連携するだけでは不足であると思います。本当の意味で産と学が連携していくためには、首都大学東京がみずから学のリーダーとなり、近隣の大学を初め、都内の多くの大学と企業間との連携を積極的に図っていくべきであろうと思います。
 産学公連携センターにおける施策を展開していくに当たりまして、今後の課題として強く要望をしておきたいと思います。
 最後に、東京都交響楽団につきましてご質問させていただきたいと思います。
 昨年の予算特別委員会で、この件に関して、私たち民主党、また各会派からも質疑がございました。これを受けて、十六年度予算に、東京都教育委員会は、財団法人東京都交響楽団の改革に当たっては、楽員の理解と協力を得ながら進め、より一層都民に愛される交響楽団を目指し、拙速を避け、誠意を持って労使協議を進めていくよう指導することとの付帯決議がつきました。
 そこで、どのように労使協議などを進めてきたのか、教育長に伺いたいと思います。

○横山教育長 お話のように、昨年、第一回定例都議会におきまして付帯決議が付され、都響の労働組合でございますユニオン都響と誠実な協議を行うよう、都教育委員会としましては楽団を指導してまいりました。
 都響では、付帯決議以降、ユニオンと協議を進めておりましたが、昨年十一月にユニオンから改革に関して意見が出されました。十二月には、都響とユニオンによります制度改革検討委員会を設置しまして、契約楽員制度、能力・業績評価制度、給与制度につきまして検討を行うこととしました。
 都響では、人事給与制度の改革だけではなくて、都響の将来を見据えた経営改善を行うべく、本年一月に中期ビジョンを策定しまして、ユニオンにも提示したところでございます。
 さらに二月には、ユニオンに対しまして、契約楽員制度について再提案を行いまして、現在、年度内の合意に向けまして鋭意協議を行っていると報告を受けております。

○相川委員 具体的には、私どもの富田副委員長がかかわってきておりますので、そちらに譲らせていただきたいと思いますが、最後に、私、降壇する前に、大変な思いで持ってまいりましたこのスギ花粉でありますが、実はきのう、議会棟のトイレで自民党の秋田一郎議員と一緒になりまして、彼は花粉症対策としまして、対策というか減感作療法の一つとしまして、この花芽を食べているそうでございます。私は同業者としての友情のあかしとしまして、この新鮮な花粉を彼に無料で進呈させていただきたいということを申し上げまして、私から富田にかわりたいと思います。

○樺山委員長 計測をとめてください。
 ただいま、富田俊正副委員長より関連質疑の申し出がありました。
 本件は、予算特別委員会実施要領第七項の規定に基づき、質疑委員の持ち時間の範囲内で認めることになっております。
 富田俊正副委員長の関連質疑を認めます。
 なお、富田副委員長に申し上げます。発言は、相川理事の質疑の持ち時間の範囲内となっておりますので、あらかじめご了承ください。
 どうぞ計測を始めてください。

○富田委員 それでは、相川理事に引き続き、関連質疑を行わせていただきます。
 この東京都交響楽団の経営改善の問題については、今、最終局面になっているということでございますので、確認の意味で何点か質問させていただきます。
 また、この質問をするに当たりまして、この一年間、ずっと都響の問題について注目をしてまいりました。これは我が会派だけではなくて、きょうこの委員長席に座っております樺山たかし議員あるいは公明党の中嶋義雄議員などについても一緒になって検討してきた課題でございまして、その意味で、私の方できょうは整理をさせていただいてということで、取り上げさせていただくということを冒頭申し上げておきたいというふうに思います。
 当初、楽員は、契約楽員制度の導入に反対をしてまいりました。しかし、話し合いを進める中で、楽員が改革の真意にこたえ得るということで対案を提示するというところに至りました。財団は、現行の一般楽員は、終身雇用と契約楽員の選択制や、評価の結果に問題がなければ更新されることなどを具体的な再提案として示すことが行われました。前向きな論議が行われ、対案にある財団事務局改革も中期ビジョンで明確にうたわれるところとなりました。
 楽員は、財団が事務局改革を約束したこと、そして、楽員の雇用更新の考え方を示したことを大前提といたしまして、契約楽員制度導入について踏み込んだと聞いております。
 こうした経過を踏まえました上で、都響経営改善の基本目標、そして目指すべきものは何だったのか、改めて、教育長と監理団体改革を所管する総務局長にお伺いをいたします。

○横山教育長 今回の都響改革の目指しますものは、単に契約楽員制度の導入など人事給与制度の改革のみならず、都響が独立した経営体として自主的、自立的な運営を確立することや、都民サービスのより一層の向上を図り、都民の期待にこたえる都響を目指すという都響の将来展望を踏まえたものでございます。
 このため、東京都交響楽団が策定しました中期ビジョンでは、都民サービスの向上に向けて、それから独立した経営体として、年功序列から能力・業績評価の時代への三つを柱としまして、演奏会の充実、収入の確保、都民に還元する演奏活動など、都民の期待にこたえ、質の高い演奏活動によりまして都響の発展を目指し、幅広く都響の活動について策定しているところでございます。
 今後、都教育委員会としましては、都響と一丸となって改革に取り組み、都響がさらに発展するよう支援をしてまいります。

○赤星総務局長 第二次都庁改革アクションプランでは、監理団体改革の基本的方向といたしまして、各団体がみずから経営改革を積極的に進め、自立した経営を確立していくことを目指しております。
 今回の都響改革は、この基本的方向に基づきまして、演奏水準の向上とともに、経営体制の見直しや人事給与制度の改革等を通じ、楽団経営の安定化を図るものでございます。
 今後、都響が一層質の高い、そして都民から愛され、親しまれるオーケストラとなるよう、所管局とともに支援してまいります。

○富田委員 ただいまの答弁にありました内容は、昨年この場でも議論をされた、いわゆる補助金体質からの脱却ということをまず目指すということだろうと思います。真の意味で、都民のためのオーケストラを目指すということになろうかというふうにも思います。
 そのことに加え、都響は、公共のオーケストラとして何をしなければならないかを考える必要があると思います。この点は後ほど少し触れさせていただきたいと思いますが、ところで、楽員は、契約制度導入に懸念がなくなったといっているわけではありません。その懸念の一つということでございますけれども、契約制度の根幹をなす評価制度についてであります。
 運用によっては契約更新が行われないこともあり得ますし、双方納得できる評価制度としていかなければならないというふうに思います。引き続き真摯な討論を要望しておきたいと思います。都議会としても注目する課題でもありますので、しかるべき場での報告を求めておきたいと思います。
 もう一つの懸念は、事務局改革であります。都民のためのオーケストラとして、企画、運営が経営的にも成り立つようにするためには、事務局改革は必要不可欠です。楽員に負担を要請するならば、事務局も同一の負担を負うべきであります。東京都は、この点についても十分に認識し、財団の指導に当たるように要望しておきたいと思います。
 この点は、昨年の夏のボーナスの関係で、その削減率が、楽員と財団事務局との削減率が大きく違うというような結果があって、この問題が大きく惹起してきたという問題もございましたので、その点、ぜひとも留意をしていただきたいと思います。
 ここで、この課題に一定の決着をつける意味で、最後に石原知事にお伺いいたします。
 都民のためのオーケストラをつくり上げていくとの考え方で、東京都そして都議会ともに一致しているわけですが、最高責任者の都知事として、都民のためのオーケストラを育てるという決意をお伺いしたいと思います。よろしくお願いします。

○石原知事 都民のためのオーケストラなるものの要件というのは、いろいろあるでしょう。しかし、オーケストラがオーケストラである限り、オーケストラが価値あるもの、それゆえに都民にも評価され、報いられるという最大の要件は、これはやっぱりいい音を出さなきゃだめなんです、いい音。それから、個々の団員がいい音を出し、それがハーモニーを持つ、それからきちっとしたアンサンブル、それは主に指揮者の責任でしょうけれども、そういう点でいいますと、私も、ジャンルは違いますが、芸術家の一人ですが、競争のないところにすぐれた芸術家というのは絶対出てきませんですな。年功序列で機械的に給料が上がっていくシステムの中で、それはそのシステムに安住して、要するにろくな芸術家は出てきませんよ。
 ですから、やっぱりこれは、切磋琢磨する意味でも契約制度というふうにして、それでその評価をどうするか。例えば新日フィルですか、これは新しい団員を迎え入れる、あるいはその人間の評価について無記名でとにかく投票するというのか、団員全部が聞いて、その評価を投票でするというふうなことをやっているみたいですけれども、私はやっぱり、そういう点ではちょっと甘えていたんじゃないかと思いますね、都フィルというのは。
 やっぱりこれはきちっと直しませんと、結局、今はよくても、次のステージ、次のステージと時間がたっていけば、結果として、ほかの要するにフィルハーモニーに比べて、ろくな音が出ないオーケストラになりかねない。その危惧があったから、要するにシステムを変えたわけです。

○富田委員 今知事から考え方を伺ったわけでございますが、これから、いずれにしても都響を育てていかなければならないというふうに思っております。
 最後になりましたが、東京都交響楽団の楽員の代表であります松岡陽平さんから、お礼の言葉ということで預かってきておりますので、ご紹介いたします。
 東京都と都議会には、ここまで都響を育ててくださったことを感謝いたしております。これからも都民のオーケストラとしての役割を果たせるよう、楽員一同、演奏に励んでいきたいと存じます。それを支えてくださるのは都民の皆さんだと考えております。都響が都民のためのオーケストラとして成長していくために、文化政策の一環として、都響育成を改めてお願いいたしますということでございます。
 この問題にかかわってきた者として、最後に一言申し上げておきたいと思います。
 この議論には、都響が公共のオーケストラとして何をしなければならないかという点が欠落していたのではないかなと思います。そうでなければ、オーケストラなんか、自主運営に任せておけばいいということになりかねません。
 都響は、他のオーケストラと違った、公共のオーケストラとしてのポリシーを必要とします。それがなければ、オーケストラは金持ちの娯楽になっていくでしょう。その使命を遂行していくためには、どのような音楽を提供するかといったポリシーを明確にする意味において、補助金を積極的に必要といたします。そして、このポリシーの確立には、事務局体制の強化が必要不可欠であります。
 今後、この点に留意され、公共オーケストラのポリシーを持った都民のためのオーケストラ、都民に愛されるオーケストラになるよう、東京都の積極的なバックアップを改めてお願いし、質問を終わります。ありがとうございました。

○樺山委員長 相川博理事及び富田俊正副委員長の発言は終わりました。
 この際、議事の都合により、おおむね三十分間休憩いたします。
   午後五時五十七分休憩

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