東京都議会予算特別委員会速記録第五号

   午後三時四十三分開議

○前島副委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 藤井一委員の発言を許します。

○藤井委員 私は、都議会公明党を代表いたしまして、締めくくり総括質疑を行います。どうぞよろしくお願い申し上げます。
 まず初めに、震災対策について何点か伺います。
 昨年は、スマトラ沖地震によりまして大きな津波被害が世間を震撼させました。約三十万人にも及ぶ犠牲者が出た大変な津波被害でございました。あの津波が押し寄せて人や物を飲み込んでいくあのテレビを見て、大変皆さんも不安になったかと思います。
 東京も海に面しております。決して他人事ではないということでございます。私も地元大田区でございますが、海に面している地域がありますので、そこで、東京港の津波、高潮対策についてお伺いいたします。
 まず、中央防災会議などで、首都直下地震がいつ起きてもおかしくないという切迫性が指摘されております。地震によって津波が発生した場合、果たして現在の東京港は大丈夫なのかどうか、まずその点をお伺いいたします。

○成田港湾局長 東京湾は房総半島と三浦半島に囲まれた閉鎖型の海域でございまして、津波の影響を受けにくい地形となっております。このため、東京港での津波の高さは、関東大震災のような湾外を震源とする地震の場合、最大でも一・二メートル程度と予測されておりまして、台風などの高潮よりも低く、現在の防潮堤で十分に守ることができます。
 なお、今般、中央防災会議で切迫性が高いとされました首都直下地震による津波の高さは、五十センチメートル未満と想定されております。

○藤井委員 高潮の防潮堤によって、東京港は津波から守られるというご答弁でございました。
 それでは、この東京港では、これまでの高潮で一番高かった潮位としてどのぐらいの記録があるのか、また、それに対する東京港の対応はどうなっているのか、お伺いいたします。

○成田港湾局長 これまでの最高潮位は、大正六年十月の台風時に四・二一メートルを記録したところでございます。
 東京港では、国内最大級の伊勢湾台風と同規模の台風を想定いたしまして防潮堤を整備してきたところでございます。こうした防潮堤の高さは、これまでの最高の潮位を上回る四・六メートルから八メートルとなっておりまして、高潮から東京の市街地を守っているところでございます。

○藤井委員 東京港は防潮堤によって津波や高潮から守られているということで、安心いたしました。
 しかし、こうした防潮堤などの防災施設は、昭和三十四年のあの伊勢湾台風を契機に整備されたものというふうに聞いております。そのため、ほとんどの施設が四十年近くたって老朽化しているということだと思います。
 そこで、こうした施設の老朽化や耐震性を強化することが重要になってまいります。そういった意味で、今後の取り組みについてお伺いいたします。

○成田港湾局長 ただいまご指摘いただきました防潮堤などの老朽化対策でございますが、経年劣化の著しい護岸の改修を進めるとともに、液状化防止など、耐震性の強化もあわせ実施しているところでございます。
 これらの対策は、事業費も大きく長期にわたるため、老朽度のほかに地盤の高さあるいは背後の市街地の状況などを勘案いたしまして、順次改修を進めているところでございます。
 今後とも、都民を高潮から守るために、来年度の都の重点事業である高潮対策事業につきましては、国費の確保に努めるとともに、効率的、効果的な事業執行を図り、東京港の防災機能を強化してまいります。

○藤井委員 ただいま答弁にありましたように、来年度、都の重点事業として、防潮堤の整備を進め、自然災害対策に力を入れていくということに対しまして、評価したいと思います。
 ぜひとも、今後とも引き続いて事業費を確保し、重点的にこういった東京港の防潮堤対策を進めていただくよう要望したいと思います。
 次に、帰宅困難者対策について伺います。
 大都市の東京は、通勤通学者や買い物客など多くの人が集まり、昼間人口が夜間人口よりもはるかに多いのが現状でございます。そのため、もし万一、日中や夕方に大地震が発生した場合、交通機関が麻痺するなどによって、多くの人が帰宅困難者となるというふうにいわれております。
 昨年十二月、国の中央防災会議首都直下地震対策専門調査会から発表されました首都直下地震に対する被害想定では、マグニチュード七・三の東京湾北部地震が昼の十二時に発生した場合、一都三県全体で約六百五十万人、都内では約三百九十万人の帰宅困難者が発生するとされています。
 また、平成九年、都が発表しました東京における直下地震の被害想定に関する調査報告書というのがあるんだそうですが、これにおいては、約三百七十一万人の帰宅困難者が想定されております。
 そこで、この帰宅困難者が、地震が発生した後、徒歩で帰宅しなければなりませんが、帰宅が可能な距離というのはどのぐらいなのか、伺います。

○赤星総務局長 平成九年の都の想定及び今回の国の想定では、自宅までの距離が十キロメートル以内であれば全員帰宅可能としております。また、それを超えます一キロメートルごとに帰宅可能者が一〇%ずつ逓減し、二十キロメートル以上の人は全員帰宅困難としているところでございます。

○藤井委員 二十キロ以上の方は帰宅困難ということでございますので、都庁のお役人さんはほとんど困難な方が多いんじゃないかと思います。そういった意味では、大変深刻な問題になるかと思います。
 また、帰宅困難者が歩いて自宅に帰るには、途中でトイレとか、あるいはけがに対する応急手当てなど、帰宅困難者への支援が必要となってまいります。地震発災時には主要幹線道路における帰宅支援拠点として、帰宅支援ステーションというのを設置するというふうに聞いております。
 そこで、都の帰宅困難者対策の現状と今後の整備目標について伺います。

○赤星総務局長 都は、徒歩による安全な帰宅のため、都道、国道のうち主要な十六の路線を定めまして、水、トイレ、情報を提供する帰宅支援ステーションといたしまして、都立学校等二百五十一施設を平成十二年に指定しております。また、東京都石油商業組合と協定を締結いたしまして、ガソリンスタンド約千六百カ所及び日本郵政公社東京支社と覚書を結び、集配郵便局百四カ所において同様の支援を行うこととしております。
 今後とも、鉄道事業者やターミナル駅が存在する区に対しまして、帰宅困難者対策の強化について働きかけを行いますとともに、十六路線沿道において支援施設の拡充に努めてまいります。

○藤井委員 先ほど申しましたように、大地震が発生した直後は、交通機関が麻痺し停止したり、建物崩壊によって道路がふさがれ、交通規制が行われます。また、路上では、建物の上からガラスなどのそういった危険物が落下してまいりますので、歩いていくということは、大変危険が予想されます。
 しかも、帰宅困難者の中には、子どもやあるいはお年寄り、けがをした人もおるわけでございますので、そういった意味で、帰宅困難者同士が支え合ったり、また地域での連携というのも大変必要になってくると思います。そのため、帰宅困難者は、地震の直後、帰宅を急ぐのではなくて、会社や学校あるいはデパートなどにとどまって、落ちついて行動することが大変重要と考えます。
 今後、東京都は、これらの帰宅困難者を単に避難者としてとらえるよりも、貴重な戦力としてとらえる発想の転換をすべきと考えますが、いかがでしょうか。

○赤星総務局長 大規模な地震が発生した直後は、何よりも被災者の安全確保が重要なのはいうまでもありません。このため、都は、東京都震災対策条例に基づきまして、帰宅困難者に対する支援を事業者の責務といたしますとともに、自助、共助の考え方を基本に、帰宅困難者を安全に帰宅させるための取り組みを進めてまいりました。
 今後は、これらの帰宅困難者を、お話のように、健常で強い人もいっぱいおりますので、災害時の貴重な戦力としてとらえ、来年度には企業、関係機関による検討会を立ち上げ、防災訓練の実施、企業間の連携を通じました地域の助け合いや、帰宅困難者相互が助け合う共助の仕組みづくりにも努めてまいります。

○藤井委員 検討会をぜひ早急に立ち上げていただきまして、こういった帰宅困難者対策に全力で取り組んでいただきますよう要望したいと思います。
 次に、住宅の耐震補強対策について伺います。
 我が国の住宅の耐震化については、住宅総数が約四千七百万戸で、そのうち四分の一に当たる千百五十万戸の家屋が耐震性不十分であると推計されております。また、先月公表されました中央防災会議の首都直下地震対策専門調査会の被害想定では、東京都周辺、首都圏周辺の昭和五十五年以前の木造建築物、その木造建築物の七一%が倒壊する、また、非木造の建築物でも一五%が倒壊するという大変厳しい被害想定が出されております。また、全壊家屋は八十五万戸という被害想定もあります。
 そこで、国は、平成十七年度予算案で地域住宅交付金制度というのを設けました。予算五百八十億円と聞いております。この制度は、従来は公営住宅の耐震化に使われておりましたが、今回、地方公共団体の判断で、従来の補助対象外の民間住宅にも耐震補助が自由にできるようになったわけでございます。そのため、地方公共団体でそうした制度をつくっているところが、国の補助制度を使えるというふうになったわけでございます。
 しかし、国の耐震補助制度ができても、東京都がそういった制度をつくらなければ何にもなりません。地震が起きれば一番被害が大きいと想定される東京都が国の助成制度を活用できなければ、あの十年前の阪神大震災の教訓が生かされないわけでございます。
 そこで、地震から都民の生命を守るために、国の制度を活用し、東京都が住宅の耐震補強を行うべきと考えますが、いかがでしょうか。

○梶山都市整備局長 地域住宅交付金制度は、地域の住宅政策の課題に対応するため、従来の国庫補助制度にかえまして、国から交付金が交付されるものでございます。
 この交付金は、住宅の耐震化など、自治体が独自に提案する事業も対象とすることができますが、一方で、公営住宅などの既存事業につきましては、従来よりも国費の割合が引き下げられ、都の負担が大きくなってまいります。
 このように、地域住宅交付金につきましては、既存事業も含めた財政負担のあり方などの課題がございまして、今後、その効果的な活用方法を検討してまいります。

○藤井委員 我が党は、石井幹事長の代表質問でも、あるいは予算委員会での中嶋政調会長の質問でも、この耐震改修への補助制度を創設するよう強く強く訴えてまいりました。国と各区に耐震の補助制度がありながら、東京都に制度がないのはおかしいというふうに訴えてまいりました。住宅の耐震化を進めなければ、東京に地震が来たときに多くの建物が崩壊し、多数の死者が出るわけでございます。また、建物の崩壊によって道路が閉鎖され、多くの交通困難等がパニックになるわけでございまして、そうはさせてはならないということで、私どもは再三訴えさせていただいております。
 震災後に莫大な費用がかかることは、阪神大震災の例でわかります。事前に震災対策に公費を投入することは公共性があるというふうに訴えたいと思っております。そのため、国と都が連携し、区市町村や民間事業者と連携しながら、東京都は震災対策に全力で取り組んでいくべきだというふうに強く訴えたいと思います。
 そこで、最後に知事にお伺いいたします。
 知事がリーダーシップを発揮して、住宅の耐震化を含め、災害に強い東京づくりを強力に進めるべきであるというふうに考えますが、知事のご決意をお伺いいたします。

○石原知事 全く世の中は命あっての物種というのは当たり前のことでありますが、しかし、地震も間違いなく--間違いといいましょうかね、当然いつかは来るでしょう。しかも、これだけ集中、集積の続いた東京で直下型が起これば、大変な被害がもたらされることも自明でありますが、しかし、非常に危険な住宅の戸数も膨大ですし、これを一つの制度だけで財政的に補てんするというのは、都の財政の要するに限界からいってもなかなか難しい問題だと思います。
 ただ、自助、共助、公助とよくいいますが、災害時の、その自助の一つとして、そういう危険な住宅に住んでいらっしゃる方々の意識というものを、やっぱりもうちょっと持ち直してもらいませんと、新潟の災害、特に玄界島のような、非常に無理なところに無理な建て方をしている建物は本当にあえなくついえているという事例を見ましても、ああいうふうにオーディオビジュアルに物を繰り返し見てくると、やっぱりこれはまずいかなという意識が高じていくはずですが、しかし、そういう個々の方々にいろいろな話を聞いてみますと、ルーレットのように、ここへ必ず来ると思いながら、多分ここには来ないだろうというような、そういう安易な、楽観というんでしょうか、来てからでは遅いわけでありまして、そこら辺のところが私はやっぱり非常に難しい問題で、阪神大震災の事例を見ましても、木造の住宅がいかにもろくいくかということはもうわかっていることなんです。その意識というものを、まず自分自身のこととして、そういう住宅に住んでいる人たちに持っていただくということが私はまず大事ですし、まずその徹底を図りたいと思います。
 制度としてのこういったような補助というものは、財政の基盤からいろいろ問題はありますけれども、いずれにしろ、物心両面でそういう補強の改修事業というのが進んでいくような促しを行政でもしなくてはならぬと思っております。

○藤井委員 ぜひよろしくお願いします。
 知事は心情的にはやってもいいというふうに思っているんじゃないかなと思っておりますが、どこかにそれを妨げるものがあるのかなと感じている一人でございます。
 次に、ヒートアイランド対策について伺います。
 昨年は、異常に強い高気圧の影響もあって、ヒートアイランド現象で記録ずくめの猛暑となり、九百名近い方が熱中症で運ばれるなど、都民生活にこれまでにない大きな影響が出ました。のど元過ぎれば熱さ忘れるという言葉がありますが、今の時期こそ、この夏に向け、ヒートアイランド対策を練り上げていくことが重要であると考えます。
 都は、人工排熱や地表面の被覆状況等を取りまとめ、ヒートアイランド現象の地域的な要因を類型化した熱環境マップを作成するとしておりますが、これを活用して、ヒートアイランド対策の必要な地域をゾーニングして、地区計画などのまちづくり計画にヒートアイランド対策を組み込んでいくという活用をすべきと思いますが、この点についていかがでしょうか。

○平井環境局長 熱環境マップですが、この熱環境マップは、区部のヒートアイランド現象の発生に影響を与えております人工排熱や地表面の被覆状況等の分布を地図上に示すものでございます。
 都は、これに基づいて、重点的に対策を実施すべき地域をヒートアイランド対策推進エリアとして設定し、このエリアでは、地元区やまちづくり協議会などと連携しながら、保水性舗装や壁面緑化など、地域特性に応じた効果的な対策を実施してまいります。

○藤井委員 次に、まちづくりと連動したヒートアイランド対策を推進していくとともに、個々の建築物においてヒートアイランド対策を進めていく必要があります。
 今回の条例改正では、建築物環境計画書制度にヒートアイランド対策に関する評価項目を新設するというふうになっておりますが、これによって民間建築物のヒートアイランド対策をどのように誘導していくのか、伺います。

○平井環境局長 建築物がヒートアイランド現象に影響を与えている要因といたしましては、人工排熱のほか、建物の材質や敷地の被覆状況などがございます。
 今回の制度強化では、人工排熱量や屋上緑化面積などとともに、建築物が風通しに与える影響についても評価を行います。これらの評価結果を公表することによりまして、新築建築物におけるヒートアイランド対策を誘導してまいることと考えております。

○藤井委員 次に、大規模な新築建築物が与えるヒートアイランド現象への影響というものは、これは見過ごすことができないものがあります。多くを占めます中小の新築建築物や、あるいは既存の建築物のヒートアイランド対策を誘導していくことが重要であると考えます。
 そのため、建てかえや補修、改修のときにヒートアイランド対策をあわせて行っていくことが必要というふうに考えますが、こうした民間の建築物に対する施策についてどうでしょうか。

○平井環境局長 建築物のヒートアイランド対策につきましては、大規模なものだけでなく、中小規模や既存の建築物についても対策を普及していく必要があると考えております。
 そこで、都は、人工排熱や地表面の被覆状況等の地域特性に応じた対策と、その効果などを示しますヒートアイランド対策ガイドラインを早急に作成いたします。また、壁面緑化の先進事例や技術情報等を紹介する壁面緑化ガイドラインを来年度作成いたしまして、これらにより、広くヒートアイランド対策の普及を図ってまいります。

○藤井委員 ぜひ、こういったガイドラインの作成を積極的に早急に進めて取り組んでいただきたいと思います。
 次に、ヒートアイランド現象、これはまさに大都市特有の問題であります。この百年間に中小都市の年平均気温というのは約一度上昇しているそうですが、東京の年平均気温は約三度上昇しているそうでございます。東京のような大都市の居住環境を改善していくことは都市再生の重要な役割であり、ヒートアイランド対策を都市再生事業の中に位置づけ、環境に配慮した都市の再生を推進すべきと考えますが、いかがでしょうか。

○平井環境局長 ヒートアイランド現象は、ご指摘のとおり大都市特有の問題であり、都は国に対して、都市再生の一環といたしまして対策に取り組むよう申し入れを行ってまいりました。
 これを受けて、国は、ヒートアイランド対策を都市再生の取り組みとして位置づけまして、モデル地域を設定して対策を推進していくこととしております。
 今後、都としては、こうした国の施策と連携をとりながら、重点的にヒートアイランド対策を推進してまいります。

○藤井委員 ぜひよろしくお願いいたします。
 ヒートアイランドの最後に、都心部においては、面積の約四分の一を占める道路があるわけですが、この道路が、真夏日の日照時に表面温度が五十度以上にもなるそうでございます。そういった意味で、アスファルトで覆われました道路のヒートアイランド対策というのも大変重要でございます。
 都では平成十三年度から、都道上で約六・四ヘクタールの保水性舗装の試験施工を実施し、路面温度上昇を最大約十度抑制する効果や、あるいは、ひび割れなどに対する耐久性を確認していると伺っております。
 そこで、この道路における効果的なヒートアイランド対策として、保水性舗装の導入をさらに強力に進めるべきと考えますが、ご所見を伺います。

○岩永建設局長 都は、平成十三年度から行ってまいりました保水性舗装の試験施工結果を踏まえまして、本格実施に必要な標準構造や施工方法につきまして、今年度、都独自の基準を定めました。
 平成十七年度は、この基準に基づく保水性舗装をヒートアイランド対策推進エリアにおきまして集中的に実施してまいります。その規模は、東京ドームの広さにほぼ匹敵する約四ヘクタールを予定しております。
 今後とも、国や地元自治体と緊密に連携いたしまして、保水性舗装の拡大に積極的に取り組んでまいります。

○藤井委員 どうぞよろしくお願いいたします。
 次に、羽田空港へのアクセス対策について伺います。
 東京都の推進により、羽田空港の国際化が進められております。二〇〇九年度に第四番目の滑走路が完成するということで今進んでおるわけでございますが、羽田空港の国際化に伴いまして、羽田空港へのアクセスというのが大変重要になってまいります。
 空港へのアクセスは、今までは東京モノレールと、また京浜急行が担ってまいりました。第四番目の滑走路ができますと、年間で約一千四百万人の利用客がふえるという予定でありまして、今以上に羽田空港が混雑をいたします。また、それに伴いアクセスの整備が必要となってまいります。
 二〇〇〇年一月の運輸政策審議会で、二〇一五年を目標とした東京圏鉄道網整備計画の答申が出されました。その中に、羽田空港へのアクセス鉄道として三本の鉄道新線が明記をされたわけでございます。
 そこで、まず、そのうちの一つであります都営浅草線の東京駅乗り入れについて伺います。
 この都営地下鉄浅草線は、京成電鉄と京浜急行と相互乗り入れを行っているため、成田空港と羽田空港を直通で結んでおります。しかし、都心に近づくにつれて、中心から東に離れていくのが都営地下鉄浅草線であります。そのため、都営浅草線から都心の鉄道網を利用するには、新橋か東銀座で東京メトロに乗りかえなければなりません。また、東京駅から羽田空港へ行く場合、JR浜松町駅でモノレールに乗りかえて行きますけれども、乗りかえを含めて三十分以上かかるわけでございます。
 そこで、この都営浅草線の東京駅乗り入れに対するこれまでの都の検討状況について伺います。

○梶山都市整備局長 お答えいたします。
 都営浅草線の東京駅接着につきましては、国、中央区、鉄道事業者などとともに検討会を平成十三年に設置し、議論を重ねてまいりました。平成十五年五月には、周辺の再開発と一体的に整備する案、八重洲通りに乗り入れる案、簡易な方式で乗り入れる案の三案を抽出し、中でも、再開発一体整備案の実現可能性を検討することとしております。これまで、この案について、中央区が取り組んでおります再開発構想などとも調整を図りつつ検討を行ってきております。

○藤井委員 検討されているということですけれども、この都営浅草線を東京駅に乗り入れすることによって大変便利になるわけでございまして、そういった意味で、これが実現できるよう、今後都として取り組むべきと考えますが、この点についていかがでしょうか。

○梶山都市整備局長 現在、中央区におきまして、東京駅前南地区再開発構想の実現に向け、地元地権者などと勉強会を継続的に行っております。
 この再開発と鉄道を一体的に整備する案につきましては、それぞれに整備主体、事業資金、地権者の合意などの課題がございます。都といたしましては、再開発の動向を踏まえるとともに、中央区を初め国、鉄道事業者など関係者と連携し、今後とも、再開発一体整備案について、その可能性を検討してまいります。

○藤井委員 次に、蒲蒲線について伺います。
 蒲蒲線というのは、東急多摩川線の蒲田駅と京急蒲田駅の八百メートルを線路でつなぎ、羽田空港まで東急線を経由して直通電車を走らせるという、こういう計画でございます。これも運輸政策審議会の中に盛り込まれているわけですが、この蒲蒲線ができますと、渋谷から三十分程度で羽田空港ターミナルに行くことができるというふうにいわれております。しかも、東急東横線には、池袋、新宿、渋谷を結ぶ東京メトロ十三号線が渋谷で接続される予定がありまして、これによって東武東上線と西武池袋線が直通運転されることになるわけでして、そういった意味では、この羽田空港から都心に行く、こういったアクセスが飛躍的に向上するわけでございます。
 そこで、この蒲蒲線について都はどのように取り組んでいるのか、まずお伺いいたします。

○梶山都市整備局長 本路線は、運輸政策審議会答申第十八号におきまして、鉄道整備にかかわる熟度、投資能力等の解決すべき基本的な課題があり、開業時期は特定できないが、平成二十七年までに整備着手することが適当である路線、いわゆるA2路線として位置づけられております。しかしながら、本路線には、事業採算性や投資効果のほか、空港アクセス機能としての必要性、東急と京急線の線路幅が異なることなど、解決すべき課題がございます。
 こうしたことから、都といたしましては、これらの課題も踏まえ、必要な対応を図ってまいります。

○藤井委員 この蒲蒲線につきましては、現在国におきまして、都市鉄道等利便増進法が今、国会で審議をされ、間もなく通過するというふうに聞いております。また、国の関東運輸局も、この蒲蒲線の予算化をしたというふうにも聞いております。そういった意味で、国は積極的にやろうとしている。そしてまた、地元大田区でも、この蒲蒲線についてはぜひ推進すべきだということで、昨年、ことしと、約五千万円の調査費をつけて積極的に計画等を進めているわけでございまして、そういった意味では、国と大田区が積極的にやっている中で、東京都が非常に消極的であるというふうに、私も地元からいわれております。いろいろと予算の面等々、先ほど局長から答弁がありましたように課題があると思いますけれども、東京全体の交通アクセス向上のために、ぜひ蒲蒲線の整備について前向きな検討をお願いしたいと思っております。
 次に、東武伊勢崎線の事故対策についてお伺いいたします。
 今月十五日に、足立区の東武伊勢崎線竹ノ塚駅近くの踏切で、電車に四人の歩行者がはねられ、そのうち二人の女性が亡くなるという悲惨な事故がありました。この踏切の遮断機は手動式で、亡くなられた二人は、遮断機が上がったため踏切を渡ろうとしたところ、はねられたものでございます。
 我が党は、事故のあった翌日に、太田昭宏衆議院議員を中心に、地元の土持都議、ともとし都議らが現地を調査するとともに、竹ノ塚の駅長に会い、二度と同じ事故を起こさないよう万全の措置をとるように強く要望したところでございます。何よりも命を守ることが重要でございます。
 都は、昨年六月にまとめた踏切対策基本方針の中で、この踏切を、渋滞解消をするために立体交差などを検討する重点踏切の一つに挙げております。そこで、この危険な踏切を早期に解決するため、都は国と地元足立区と連携を図り、踏切対策を積極的に進めるべきと考えますが、この点はいかがでしょうか。

○梶山都市整備局長 この箇所の道路と鉄道の立体化につきましては、足立区が設置している検討会におきましてさまざまな検討を行ってきております。この中で、鉄道立体化案につきましては、引き上げ線も含め線路が最大で七本あることや、連続立体交差事業の採択要件を満たしていないことなど物理的な面のほか、制度面、財政面などの課題があり、引き続き中長期的視点から検討が必要であるとしております。
 また、踏切の緊急対策につきましては、都は事故後直ちに、足立区及び東武鉄道から成る竹ノ塚踏切事故対策会議を設置し、歩行者、自転車の安全確保を図る方策の検討を開始いたしました。
 今後、足立区など関係者と連携しながら、具体的な対策について早期に実施できるよう努めてまいります。

○藤井委員 昨日、足立の区議会で、国や都に対する、この立体化への意見書が決まったというふうに聞いております。そういった意味で、都も積極的に足立区の支援をされますよう要望したいと思います。
 次に、子育て支援について伺います。
 我が党は、子育て支援対策や児童虐待対策の強化に向け、数々の具体的な提言をしてまいりました。区市町村における子育て支援の中核として、子ども家庭支援センターの設置の重要性を主張するとともに、その機能をさらに充実させ、児童相談所と連携をし、児童虐待防止の機能を持つ、先駆型子ども家庭支援センターの設置拡充を求めてまいりました。この我が党の提言を受けまして、十七年度には、先駆型子ども家庭支援センターが現在の八カ所から二十一カ所に拡充されることを大いに評価するものでございます。今後は、そのセンターの実施事業の充実が大変重要であります。
 実施事業の一つに、在宅で子どもを育てている家庭を支援するためのサービスとして、産後支援ヘルパー制度というのがあります。これは虐待の未然防止のためにも、安心して子育てができる環境を整備することが重要であるというふうに考えます。
 現在の産後支援ヘルパー制度は、出産後間もない核家族家庭をヘルパーさんが訪問して、身の回りの世話や育児を行うというものでございます。しかし、現在は、産院等から退院後一カ月以内で十日間が利用限度とされているなど、利用者の方々からは大変使いづらいという、こういう声が上がってきております。また、産後に限らず、若い人たちの子育て家庭など、支援が必要な家庭が利用できるようにすべきというふうに考えます。
 そこで、すべての先駆型子ども家庭支援センターで産後支援ヘルパー事業を実施すべきと考えますが、この点いかがでしょうか。

○幸田福祉保健局長 お話のように、現在の産後支援ヘルパー制度は対象世帯や利用範囲が限定されているため、区市町村の取り組みが必ずしも進んでいない状況にございます。このため、本制度の利用事由を出産後に限定せず、かつ対象範囲も子育てに悩むすべての家庭に拡大いたしますとともに、お話の児童虐待の未然防止にも資するよう、本事業を先駆型子ども家庭支援センターの必須事業として位置づけ、区市町村が取り組むよう、都として積極的に働きかけてまいります。

○藤井委員 ぜひよろしくお願いいたします。
 子育てに関連しまして、次に、養育家庭制度について伺います。
 世の中には、親がいても親と一緒に暮らせない子どもさんたちがたくさんおります。その理由は、親の虐待や病気、失業などの経済的な問題など、さまざまであります。そのため、そのお子さんは養護施設などで暮らしているわけですが、年々ふえているというふうに聞いております。こういった施設の子どもさんを里親が預かって、実の親にかわって、心身ともに成長期にある子どもさんたちを家庭で育てるのが養育家庭制度でございます。
 そこでまず、東京の養育家庭制度の現状についてお伺いいたします。

○幸田福祉保健局長 都におきまして、養育家庭を初め児童養護施設や乳児院という、いわゆる社会的養護のもとに暮らしている子どもは、平成十七年一月末現在で三千六百五十二人でございます。このうち養育家庭における子どもの数は三百十八人で、五年前と比較して一・六倍に増加しておりますが、社会的養護全体に占める割合は八・六%となっております。

○藤井委員 八・六%、大変少ないですよね。ちなみに、外国と比べるとどうかといいますと、日本の養育家庭制度は大変におくれております。欧米諸国では、こういったケアが必要なお子さんたちを養護施設から家庭に預ける、いわゆる脱施設化が進んでおります。例えばオーストラリアでは、こういったケアが必要なお子さんの約九割を里親家庭で育てております。同じくアメリカでは約八割であります。少ないところのドイツでは二八%となっておりますが、それに比べて日本は〇・六%と、一番おくれているといっても過言ではありません。
 我が国では依然として施設中心で、里親の割合が低いのが現状であります。一体その原因は何なんでしょうか、お伺いいたします。

○幸田福祉保健局長 欧米諸国とは歴史的、宗教的背景が異なることから、一概に比較することはできませんが、お話のとおり、我が国においては施設中心で施策を実施してきた経緯もあり、これが里親の割合が低くなっている一因と思われます。また、社会的養護を必要としている現在の対象児童の多くは実親がおり、預けることについての実親の同意が得られにくいことなどの問題もございます。加えて、里親制度自体を知らない、あるいは関心が薄い都民がいらっしゃることも影響していると考えております。

○藤井委員 本来、子どもというのは、家庭的な環境の中で愛情に包まれて暮らすことが何よりでございます。すべての子どもは愛される権利がある。また、すべての子どもは幸せになる権利があるということで、親の事情や都合で親に育てられない子どもさんたちの重たい荷物を少しでも軽くしてあげられるのが里親制度でございます。里親と里子は仮の親子といえますけれども、里親となってくれる方々をふやしていく施策が重要であるというふうに考えます。そのためには都民の協力と理解が不可欠であります。
 そこで、養育家庭やグループホームなど、家庭的養護の今後の目標はどうなっているのか。特に、そのうち養育家庭を伸ばしていくための具体的な取り組みについてお伺いいたします。

○幸田福祉保健局長 都におきましては、養育家庭や児童養護施設のグループホームという家庭的環境のもとで養育する子どもの数を、平成十九年度までに全対象児童の三割まで高める目標を設定しております。その中でも養育家庭の登録数を伸ばしていくためには、都民などの理解と協力が大変重要と認識しております。このため、毎年十月からの二カ月間を里親強化月間と位置づけ、養育家庭による子育て体験発表会や交通機関への啓発ポスターの掲示、都広報紙による制度の周知などの取り組みを集中的に実施してまいりました。
 来年度は、これらの取り組みに加えまして、新たに啓発用ビデオの作成や、新聞各紙、インターネットを活用した制度周知を行うなど、積極的な啓発活動に取り組んでまいります。

○藤井委員 ただいま局長の前向きなご答弁をいただきまして、約三割のお子さんを里親にしたいという目標に向かって、全力で取り組んでいただきたいと思います。約三割といいますと、約三千七百名の三割、約千名でございますので、現在三百弱でございますので、三倍に数をふやしていく、こういった施策をどうぞ進めていただきたいと思います。
 最後に、私は最近、「ぶどうの木」という本を読ませていただきました。著者は坂本洋子さんという方でございまして、この里親を経験された体験記を書かれたわけでございます。
 知事は、坂本洋子さんという、この養育家庭で預かったお子さんのことを書かれた「ぶどうの木」という本の最後に、神にかわってくれている人々というタイトルで解説を書かれております。私も読みまして、本当に大変感銘いたしました。何回も泣いたわけでございますが、鬼の目にも涙ということでございますけれども。また、映画にもなったそうで、映画も見せていただきました。ちょっと内容は変わっていましたけれども、趣旨は同じでございました。本当にこの里親についてのいろんな勉強をさせていただきましたけれども、改めてこの本の内容についての知事の感想と、今後の養育家庭制度に対するお考えをお伺いしたいと思います。

○石原知事 最近、自分の願望達成だけを目的とした、非常に自己中心的な若い世代がふえてきておりますけれども、人の親になったような方々でもそういう人が多くなりまして、結局、子どもを虐待したり、平気で捨てるという傾向が強いわけです。
 本来、子育てはあくまで親の責任でありますけれども、そういった形で養育の放棄を平気でする、非常に未熟な、人間としてもどこか欠陥のある親がふえていると思いますけれども、「ぶどうの木」は、こうした家庭の子どもたちを坂本さんご夫婦が本当に心血込めて育てられた労苦の記録だと思います。これを読めば、同じ人間としての共感や感謝を超えて、だれもが人間を信じ直す気になれるのじゃないかと思います。
 これはテレビで最初、フジテレビでしたか、劇化したときも、私も試写会に行きましたが、見ましたその役員が全部、涙を流して、非常に印象的でございましたけれども、しかし、こういう方々も幾ばく、本当にとても足りない補助金のようなものを差し上げていますけれども、それが目当てだろうというような、そういうけしからぬ風評が立ったりして、非常に世間の誤解を受け、理解を得られずに誤解を受けたままやられる方が多うございます。
 養育家庭では、そうした子どもたちを、また本当にそういう誤解を顧みずに、我が子同様に育てていただいておりますが、まず、とにかく多くの都民にそういう本も読んでいただいて、やっぱり養育家庭制度というものがあるんだという認識、それから理解を深めていただきたい。そして、養育家庭の担い手が何とか増加しないかなと切望しております。

○藤井委員 まさに知事がおっしゃったとおりで、本の中にも、養育家庭でお子さんを預かったときに、その里子が迷子になって警察に保護された。里親が引き取りに行ったら、名前が違う、あなたは何なんだということで犯人扱いで扱われたとか、あるいは学校の先生、子どもが学校に通うようになって、学校の先生がその里親制度について余り知らないために、施設にいた子ということの、そういう認識で、ほかの生徒と違う扱いをして、その里子が大変ひねくれたというようなことも書かれておりました。
 そういった意味では、こういった公的機関にかかわっている方たちが、やはり里親制度についての認識をまず持っていただきまして、それをまた広めていく、そういう中心となって働いていただくよう要望したいと思います。
 次に、ものづくり支援についてお伺いいたします。
 最初に、デュアルシステムについて伺います。
 デュアルシステムとはドイツのシステムでございまして、私もこの委員会でも取り上げてまいりました。いわゆる学校の授業だけではなく、中小企業のすぐれた技術を持った熟練工のもとで生徒が学び、それを単位として認めるという、こういったシステムでございますが、昨年四月に全国で初めて、東京都は大田区の都立六郷工科高校でこのデュアルシステム科を導入いたしました。産業界と学校が連携をした新しい教育制度に取り組んでいらっしゃるわけでございます。また、この教育制度を発展させることが、ものづくり人材を育成することであり、また、都内の製造業の方たちが大きな期待をされているところでございます。
 しかし、日本で初めての制度であるために、さまざまな課題を抱えております。その第一番目は、このデュアルシステム科というのは、協力企業、いわゆる受け入れてくれる協力企業がなければ成立をいたしません。この協力企業の開拓については、いわゆる都教育委員会が産業労働局や商工会議所などと連携をとって協力企業を開拓するということになっておりますが、教育委員会の現在の取り組み状況、あるいは成果はどうなっているか、お伺いいたします。

○横山教育長 都教育委員会としましては、都立六郷工科高校におきますデュアルシステムを推進するため、お話のように産業労働局や商工会議所など地元企業団体と連携しながら、積極的に協力企業の開拓を行ってまいりました。
 具体的には、地元企業団体を通じました企業への周知や、企業団体の研修会、産業労働局の支援によります企業展示会など、さまざまな機会を活用した説明会、また個別企業訪問等によりまして、デュアルシステムの趣旨を説明しますとともに、協力依頼を行ってまいりました。
 この結果、多数の企業の理解と協力を得ることができまして、現在、協力企業数は百社に達しております。

○藤井委員 現状はそうだと思いますが、ただ、お聞きしますと、この工科高校の先生方が、授業の合間、企業等、あるいは関係団体に行って一生懸命やっていらっしゃるという姿を見ておりますので、ぜひそういった企業開拓については、今後、学校任せということではないと思いますけれども、ぜひ全般的に取り組んでいただきたいと思います。
 そこで提案をさせていただきますが、都の教育委員会の中に、産業界と教育界が一体となって高校産業教育の振興を図る、東京都産業教育振興会という組織があると聞いております。この産業教育振興会は、会長ほか役員に企業団体の関係者が就任しております。また、事務局は校長などの退職者を受け入れているそうでございます。そこで、このデュアルシステムの協力企業を開拓するために、こういった機関を積極的に活用したらどうかと考えますが、いかがでしょうか。

○横山教育長 ご指摘の東京都産業教育振興会は、産業界、教育界及び行政が一体となりまして、都内の中学校、高等学校等の産業教育の改善、進歩を図りまして、経済の自立発展に寄与することを目的といたしております。企業会員数は、平成十七年一月現在、百二社でございます。
 このデュアルシステムは、産業界と学校とのパートナーシップを深めまして、共同して人材育成を行います職業教育システムでございます。産業教育振興会の設置目的にもかないますことから、産業教育振興会の広報誌や企業団体のネットワークを活用した周知活動、または個別企業訪問等によりまして協力依頼を行うなどについて、今後積極的に取り組んでまいります。

○藤井委員 第三番目に、協力企業への表彰制度についてでございます。
 昨年の第三回定例会において、私は、このデュアルシステムで生徒を受け入れた企業に対して表彰制度をやったらどうかと提案をいたしました。これに対し教育長は、企業側にさまざまな負担が生じることを配慮して、都教育委員会による感謝状の贈呈や、顕著な実績を上げた企業に対する表彰について積極的に検討し、実施していくという答弁がございました。
 いよいよことしの五月からデュアルシステムが本格的に始まります。そういった意味で、この表彰制度を早急に実施すべきと思いますが、この点はいかがでしょうか。

○横山教育長 デュアルシステムは、その企業の多大なる理解と協力があって初めて成り立つものでございます。デュアルシステム科の生徒は、受け入れ企業の協力によりまして、在学中に最大七カ月にわたります就業訓練を行いまして、実践的な技術、技能を身につけますとともに、卒業に必要な単位を得ることができます。
 都教育委員会としましては、こうした協力企業に対しまして、一定期間の実績を踏まえた上で、感謝状の贈呈を行うこととしまして、表彰にかかわる要綱の作成など具体案については既に着手しておりまして、速やかに実施できるよう準備を進めてまいります。

○藤井委員 ぜひよろしくお願いいたします。
 次に、ナノテクセンターについて伺います。
 ナノテクとは、十億分の一メートルの超微小技術のことだそうでございまして、ナノテクによって物質の性格が変わったり、新しい機能が生まれる最先端技術であります。例えば、ナノテクによって、鋼鉄よりも十倍強くて軽い材料ができる、あるいは雨にぬれない服ができる、コンピューターの計算速度を現在の百万倍進めることができるというふうにいわれております。
 そういった意味で産業の米といわれておりますが、このナノテクノロジーセンターが二月に開設されました。私も式典に参加をいたしまして、見学をさせていただきました。ナノメートルサイズの微細加工ができる、すぐれた機器が導入をされておりました。
 このナノテクは、地域産業に寄与できるよう、積極的な事業展開が期待されております。技術相談への対応はもちろんですけれども、高度な超微細加工技術をさらに磨いていくためには、とりわけ大学や試験研究機関との産学公連携が大事でございます。それによって、新製品、新技術開発につなげていくことが重要であります。そういった意味で、今後のナノテクセンターの取り組みについてはいかがでしょうか。

○関谷産業労働局長 東京都ナノテクノロジーセンターでは、技術相談や機器の使用指導を行うとともに、大学や試験研究機関との産学公連携によります、新製品、新技術の開発を促進してまいります。
 具体的には、センターを拠点といたしました共同研究の実施、大学のナノテク研究に関連いたします情報提供、さらにはマッチング交流会の開催など、さまざまな形で積極的に取り組んでまいります。

○藤井委員 このナノテクについては、昨年度お聞きしたところでは、国の補助金を使えるように申請したけれども、だめだったというふうに聞いております。ナノテクノロジーの研究をする大学では、国の制度をうまく活用して財源確保に努めているというふうに聞いております。例えば東京工科大学という学校があるそうですが、ここでは国の独立行政法人産業技術総合研究所というのが入っておりまして、国の補助事業を積極的に活用、利用しております。
 そういった意味で、東京都のナノテクセンターも、都において財源措置を行うことはもちろんでありますけれども、あわせて国の補助事業をうまく活用して、共同研究をさらに積極的に展開、拡充したらどうかと思いますが、いかがでしょうか。

○関谷産業労働局長 ナノテクノロジー分野におきましては、中小企業と大学等との産学公連携を促進することが特に重要であると認識しております。そのため、既にセンターでは、医療用センサー分野におきます大学との共同研究を開始しております。
 今後、中小企業と大学等との共同研究を促進するための国の助成事業等の活用につきましても、先ほどご指摘もございましたが、積極的に活用する方向で努力いたしまして、ナノテクノロジーの事業化を積極的に推進してまいります。

○藤井委員 次に、会計情報メニューについて伺います。
 十七年度の新たな融資制度として、クイック融資に会計情報メニューが設けられました。税理士連合会が作成したチェックリストにより中小企業の会計処理をチェックして、そのチェックリストを提出した企業を融資条件面で優遇するものと理解しております。
 しかし、中小企業の中には、財務諸表が十分整備されていない企業が数多くあるというふうに聞いております。会計情報の適正化をねらいとした今回の融資メニューは、行政レベルでは初めてのものでありまして、意欲的な取り組みとして評価をしたいと思います。しかし、実施する以上、余りハードルを高くして、一部の中小企業しか利用できないということがないよう、運用に当たっての配慮も必要であります。
 こうした観点から、まず今回、会計情報メニューを創設した趣旨と、中小企業側の具体的なメリットはどういうものか、伺います。

○関谷産業労働局長 一般的に中小企業の会計処理に対する信頼性は十分ではございませんで、このことが、中小企業に対する金融機関の貸出姿勢を慎重にする一つの要因となっております。
 今回創設する、税理士連合会のチェックリストを活用いたしましたクイック融資は、会計処理について一定の信頼性が認められる企業を優遇することで、中小企業の会計処理の適正化を促すことを目的としております。
 具体的には、チェックリスト提出企業につきましては、従来より審査期間を大幅に短縮いたしまして、三営業日で保証承諾の回答を行います。さらに、都が信用保証料の補助を行い、利用の促進を図ってまいります。

○藤井委員 大変すばらしい内容だと思います。しかし、税理士連合会作成のチェックリストというのを見ますと、チェック項目だけで五十二項目があるんですね。かなり細かくなっております。これを厳格に適用すると、ほとんどの中小企業はこのチェックリストをクリアできないんじゃないかというふうに考えますけれども、この提出されたチェックリストは保証協会の審査の中でどのように活用されるのか、伺います。

○関谷産業労働局長 会計情報メニューでは、中小企業の基礎的な財務諸表の状況をチェックリストで確認することにより、迅速な審査を実現するものでございます。しかし、お話のとおり、チェックリストには、例えば税効果会計の採用やキャッシュフロー計算書の作成など、多くの企業がいまだ取り組んでいない項目や、外貨建て資産など、海外取引がない中小企業には該当しない項目なども含まれております。
 したがいまして、具体的審査におきましては、チェックされた項目をもとに、当該中小企業の会計処理の信頼度を判定し、さらに業績や返済能力などを総合的に判断して、保証の諾否を決定してまいります。

○藤井委員 中小企業の中には、公認会計士の監査を受けている企業もあります。その監査報告書は、チェックリスト以上に企業の財務内容を正確に分析しているのが普通なんだそうですが--そうですか、東村さん。この監査報告書を提出した企業もこの融資対象に加えるべきと考えますが、いかがでしょうか。

○関谷産業労働局長 ご指摘のとおり、中小企業におきましても、数としてはそんなに多くはございませんけれども、公認会計士による監査報告書によって財務内容を明らかにしている企業がございます。その点では、財務内容の把握としては十分でございますので、実施段階におきましては、監査報告書提出企業も対象に含めることといたしまして、その点については十分周知を図ってまいります。

○藤井委員 次に、事業承継融資について伺います。
 この四月から実施されます新たなメニューとして、中小企業の事業承継に対する融資が設けられました。東京の中小企業が持つ技術や人材、生産設備など貴重な経営資源を生かしていくためには、円滑な事業承継への支援が必要であります。
 このことは、昨年の第三回定例会の代表質問において我が党が強く求めたところでございますが、今回の制度化を評価するとともに、十分に活用されるよう期待をするものでございます。
 そこで、この事業承継のメニューの対象について伺います。また、利用者にとって、今までの制度と比べてメリットは何か、このことについて伺います。

○関谷産業労働局長 事業承継メニューでは、経営能力があり、事業内容に精通している従業員が経営を引き継ぐ場合など、第三者による事業承継を対象としてまいります。
 これらのケースは、従来は創業融資ということで扱ってまいりましたため、創業前でございますと二千五百万円が融資限度額となり、かつ同額の自己資金を必要とするなどの制約がございました。今回、事業承継メニューの創設により、限度額が一億円となり、自己資金要件も不要となりますので、利用者にとって大幅に使いやすい制度となります。
 この制度を活用いたしまして、中小企業の円滑な事業承継を支援してまいります。

○藤井委員 ぜひよろしくお願いいたします。
 東京の農業についてやりたかったんですが、ちょっと時間がなくなりましたので、三宅支援についてお伺いいたします。
 三宅島が二月から帰島が開始をされまして、徐々に皆さんが帰られております。しかし、帰った後一番大事なのは何かといったら、やはり仕事があるかどうかということでございます。
 残念ながら、まだ火山ガスが噴出をしておりまして、農業におきましては、火山灰が堆積をしており、火山ガスの影響によって土が酸性化しております。そういった意味では、すぐに農業ができません。また、漁業におきましても、漁港等の修理や、あるいはまた、火山灰が海に流れ込んだために、テングサ漁場が大変荒廃をしているというふうに聞いております。
 また、三宅島の特産物であったレザーファンなども、火山ガスに弱いため、なかなか生えないという現状の中で、今後、東京都としまして、三宅島の農業あるいは水産業の復興に向けた支援というのが大変重要になってまいります。今後の取り組みについてお伺いいたします。

○関谷産業労働局長 農業につきましては、国の農地災害復旧事業の査定が終了いたしまして、現在、来年度に向けて、農地の降灰等の除去の準備を行っているところでございます。
 今後は、村と協力いたしまして、育苗用パイプハウスや農業用機械などの共同利用施設整備を支援していくとともに、火山ガスに強い作物の選定や栽培指導を行ってまいります。
 漁業につきましては、これまでに、阿古漁港の荷さばき場や冷蔵庫などの漁業施設を復旧いたしました。既に操業が開始されておりますが、今後も、テングサ倉庫などの復旧を行ってまいります。
 また、魚介類や漁場の回復状況を把握するため、産学公連携による調査研究を進めますとともに、新たな漁礁の設置による漁場の整備と、トコブシやハタ類の放流による漁業資源の回復を図ってまいります。

○藤井委員 三宅島はまだガスが噴出しておりまして、厳しい条件でありますけれども、逆にこれを逆手にとって、立ち枯れをした樹木など、被災した自然や施設を観光資源に活用するということも考えられます。
 この五月から観光客を受け入れるというふうになっておりますけれども、くれぐれも観光客の安全に十分配慮した上で、観光振興に積極的に取り組むべきと考えますけれども、今後、観光振興に対する都の支援策はいかがでしょうか。

○関谷産業労働局長 三宅島の観光復興に当たりましては、火山性ガスに対する観光客の安全性を確保する仕組みなど、一定のルールのもと、観光客を受け入れることが重要と考えております。
 都といたしましては、立入禁止区域を明示した観光案内板等の設置、避難方法などを記載したパンフレットの作成等、村が当面実施いたします観光復興の事業に対して支援をしてまいります。
 また、これらに加えまして、島しょ観光のウェブサイトを活用いたしまして、釣り、自然景観等の観光スポットの情報提供や、それらを安全に楽しむためのルールの周知などを図ってまいります。
 さらに、三宅村が行う島の特色を生かした観光振興プランの作成に対しても支援を進めまして、島の観光振興を推進してまいります。

○藤井委員 それでは最後に、百条委員会について一言意見を述べさせていただきます。
 東京都社会福祉事業団による社会福祉総合学院の運営等に関する調査特別委員会設置の問題について、一言述べさせていただきます。
 この問題は、民主党の中村委員の質問に対して、濱渦副知事が、都の東京都社会福祉事業団に対する助成金が、包括外部監査人によって、正当でないかもしれないという疑念を発せられました、そして、その土地であり建物等々を含めて、財産が正当な形で、不法でない形で処理されないといけないと思いますと発言したことに端を発しております。
 我が党は、予算案を提出する理事者側が、当該予算案に疑義を持っていながら、この疑義を解消するという努力もせず、議会に予算審議を求めること自体、議会を冒涜するものであり、到底看過できないところから、東京都社会福祉事業団による社会福祉総合学院の運営等に関する調査特別委員会を設置し、問題の真相を明らかにすることを求めたものであります。
 そもそも濱渦副知事が指摘する包括外部監査報告書においては、東京都社会福祉事業団への補助金が正当でないかもしれないとか、東京都社会福祉事業団に無償で貸し付けている土地及びその土地の上に建設をされた建物が不法な形で処理されているとは一切言及しておらず、経済性、効率性の観点から経営改善を強く求めているにすぎません。
 今回の社会福祉総合学院の運営方式を社会福祉事業団直営から民間委託方式へ転換したことは、福祉改革の一環として行われたものであります。このことによって空き教室を有効活用することができ、賃借料収入を確保し、単年度で二億円の補助金が不要となるなど、都の財政負担は大幅に軽減されました。このことは包括外部監査の報告書においても明らかにされております。
 我が党は、血のにじむような献身的な努力でともに福祉改革を進めてきた多くの関係者の努力を無にしないためにも、調査特別委員会に付与された権限を最大限に行使し、問題の真相を明らかにしていくことを明言し、意見とさせていただきます。
 以上で私の質問を終わります。ありがとうございました。(拍手)

○前島副委員長 藤井一委員の発言は終わりました。

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