東京都議会予算特別委員会速記録第四号

○樺山委員長 矢島千秋委員の発言を許します。

○矢島委員 かつてよく読んだ本に高坂正堯さんの著作がありました。内容もさることながら、その中で、「海洋国家日本の構想」の題名が非常に新鮮に響いたのを覚えております。
 日本は海に囲まれ、人の住む島、住まない島合わせて数千といわれております。しかし印象は、狭い急峻な国土の農業国であり、一方、海への深い憧憬が心の奥底に静かにとどまっているにもかかわらず、広い世界へ雄飛する海を忘れてしまったかのようであります。
 今は時代が変わっておりますが、かつて倭寇が小舟を繰って中国の沿海地方に達し、東南アジアには日本人町まで建設されるほど、海は時代の舞台でありました。鎖国により外国との交流を限った時代でも、日本沿海の商船が物資の輸送に当たり、江戸も縦横にめぐらされた運河が水辺を身近にしておりました。
 石原都政下の東京都は、東南アジア海外諸都市との都市間交流があり、海洋を介した東アジアと東京都の積極的交流はまさに重要で、経済的三極の一つに位置づけられる東アジアと日本は、政治的にも文化的にも連携を強めていかねばならない、国として、日本として今後目指すべき方向を示しているように思います。
 また、ディーゼル排ガス規制対策には、日本文化の遺伝子である自然との共生に強い関連を感じますし、東京のそこかしこで営まれております家族の生活と仕事が、その地域の興隆と一体である中小零細企業群への多くの施策もあります。外国文化理解にしても、まず日本への素養を基本として、家庭・学校教育でもその重要性を認識されておるなど、単に厳しくあらわれてくる東京の問題への対応だけではない見識を感じます。
 かような日本を「文明の衝突」の中で世界七文明の一つに挙げ、同種同文との意見もある中国とは違う、独自のものとしております。
 私は、石原知事の施策に日本文化への重い決意を感じるだけに、知事の都政運営の基礎ともいえる日本文化観、文明観について、また、日本はいかなる国か、その行く末をどのように考えるか、お伺いいたします。

○石原知事 日本は周囲を海に囲まれた、俗にいえば海洋国家だと思いますが、私は、日本人は海洋国民ではないと思います。これはイギリスと違いまして、我々の周囲の海というのは、私も世界じゅうの海でヨットのレースを若いころしてきたり、ダイバーとしても世界じゅうで潜った、そういう体験を踏まえてみますと、日本の海ほど危険で厄介なところはございません。大体、日に平均で二つの低気圧が通過する海域というのは、世界にはほとんど例がないでしょう。強いて挙げるとすると、マダガスカルのようなところです。
 ただ日本の場合には、とにかく大陸で発生した低気圧が海へ出て突然発達しながら、すぐに日本列島にぶち当たる。しかも、そこには三千メートル級の山が連なってある。しかもその東岸には、親潮、黒潮という世界最大の海流が二つ流れてぶつかっている。これは非常に予測しにくい危険な水域でありまして、日本のベテランの、要するに北航船、オホーツク海、アリューシャンで操業する漁船、したたかな日本の漁民、漁船が遭難するのはどこかというと、ああいう海ではなくて、全部日本の近海です。
 ゆえに、私たち先祖の日本人にとってみると、海は非常に渡るに困難な、つまり、いつも水際で外側からの政治を待ち受ける以外にない、非常に受動的な民族のDNAが培われた。ですから、日本は外圧に弱い。しかも外に向かって自己主張ができない。いつもおずおずおずおず外側のいうことに従っていく。これがこういう時間的、空間的に狭くなった世界で通用するかというと、通用するわけがありませんが、私たちはそういう基本的な反省に立って、自分自身というものをアイデンティファイして、自分自身というものの特質を確認して、国家として、民族としてこれから基本的にどういうふうにあるべきかということを考える時期に来ているんじゃないでしょうか。
 ちなみに申しますと、日本人というのは、オリジナルな日本人はどこにもおりません。強いていえば沖縄の方々と北海道にいるアイヌの方々、あとは全部四方八方から、いってみると渡ってきて吹きだまった、そういう人たちが混血して、大脳生理学的に民族の混交というのは非常に優秀な人材を生みますから、特に徳川時代がそれをあかしていると私は思います。

○矢島委員 そういう日本でありましても、いろんな時代があったようであります。戦国時代には大変小さい体で何十キロに及ぶよろいをしょいながら、命をかけて自分の一族と、それから自分の地域のために頑張った時代もありますし、いろいろな可能性を日本人は秘めて持っていると思いますので、新しい日本を、その持っているものを大切にしながら生きていけるような日本をつくっていければと、このように思っております。いわば石原知事はその一つの形を施策あるいは行政に対してあらわしておりますので、大きく期待をしております。
 次に、小さい記事でしたが、先日の新聞報道によりますと、国の地方制度調査会で、道州制における東京都は、組み合わせは幾つかあるようですけれども、単独の特別地域としての認識で一致とありました。
 詳細はまだわかりませんけれども、想像するところ、東京都は、そのボリュームと道州制に期待される地域の活性化への取り組み、海外との連携を含む多様な施策の展開など、見識と実績で日本の活力を先導している、その実力によるところと思います。しかし、私は、ポテンシャルの高さだけではなくて、東京以上の面的広がりも必要と考えます。
 少ない情報の中でありますけれども、知事のお考えをお示しいただければありがたいと思います。

○石原知事 実は、その会議に私呼ばれておりまして、都知事として発言するはずだったんですけれども、非常に厄介な風邪を引きまして、いまだにちょっとぐずぐずしているんですが、残念ながら出席できませんでした。
 そこでそういう話も出たと聞いておりますけれども、私はやっぱり東京は東京だけで独自というわけにはいかないと思いますね。隣の神奈川県、埼玉県、千葉県から昼間人口三百万以上の人が出てきて、首都の機能というものを運用してくださっている。そういう実態を眺めましても、私は、やっぱり首都圏という、一都三県というものをあわせた形でのコンセプトでこれからの広域行政を考えませんと、とても東京は、限られたこれだけで首都の機能というのは賄えるものではありませんし、それは非常に安易な、実態を知らない人たちの意見だと私は思います。

○矢島委員 都知事の認識と行動に期待しております。議会としても、私自身は全く同様に思いますので、その立場で取り組んでまいりたいと思います。
 次に、財政問題について伺いますが、東京都の財政運営は、石原知事が就任するまでの間、方向性を示さないまま、いかに苦しんできた時期があったか、基金の残高を通して見えるようであります。
 資料によりますと、この二十年間で一番基金残高の多かったのが平成十一年度の一兆五千六十億円、少なかったのが平成九年度の五千五百九十億円、この年には財政調整基金がわずか九億円。財政運営の苦しいどこかの市と思われるほどの水準でありましたけれども、また減債基金が千九百六十二億円、一般会計規模が六兆六千五百五十億円のときであります。
 この数字を見るだけで、薄氷を踏む思いが伝わってまいります。一度膨らました予算の縮小がいかに難しいか、後年度負担がいかに重いか、行政組織の宿命が透けて見えるようであります。
 そこで、後年度負担には、中心である都債のほか、債務負担行為等がありますが、それらの額はどの程度か、またその水準は都道府県レベルでどの位置にいるか、お伺いいたします。

○松澤財務局長 都の後年度負担の状況について、平成十五年度の普通会計決算で見ますと、都債残高が七兆六千百五十八億円、債務負担行為に基づく翌年度以降支出予定額が一兆一千四百九十三億円で、その合計は八兆七千六百五十二億円でございます。
 また、地方公共団体の将来にわたる実質的な財政負担がどの程度の水準かの客観的な数値につきましては、総務省発行の「地方財政の状況」で毎年度分析されておりまして、そこでは、ただいま申し上げました地方債残高と債務負担行為の合計額から、基金など積立金現在高を差し引いた額が標準財政規模の何倍に当たるかという比率で示されております。
 この比率が低いほど、後年度負担が少ないということになるわけでございますが、この率を十五年度決算で見ますと、都は二・九九倍で、四十七都道府県の中では九番目に低い状況になっております。

○矢島委員 石原知事の就任以来、破綻のふちに瀕しておりました東京都財政再建の取り組みは、まさに知事のガバナンスと、そして財務当局のマネジメントがしっかりかみ合い、財政再建の道を進んでまいりました。
 これを投資的経費で見ますと、東京都は、一般会計規模が一兆円拡大の昭和六十三年度から、投資的経費も一兆円の大台に乗り、平成十年度までこの水準で推移し、石原知事の予算編成である平成十二年度が七千億円、平成十四年度からは六千億円規模となっております。
 一方、投資的経費の財源の中心であります都債は、平成十三年度からは、これに伴い四千億円前後となりました。このことは、財政再建の中で投資的経費のガイドラインは六千億円、その財源である都債は四千億円ということになります。
 このうち、都債については、実償還額は、平成十七年度予算の六千億円から、十八年から二十年度までの推計では、年度五千億円から四千億円へと減少し、減債基金残高も、十六年度、十七年度と同様に所要額全額を積み立てると、積み立て不足は残りますけれども、年間七百億円程度の規模で増加してまいります。
 お金のないときは、まず入るを図り、そして使わないことが第一でありますが、東京都は前へ走りながら財政再建に取り組み、営々たる努力でむだを省き、政策を見直し、いわゆるプライマリーバランスを回復しつつあるように思います。
 ここで、いっときの安心となったのが、平成十六年度、十七年度の増収でありますが、まだまだ今後を慎重に見て財政再建を進める必要があるとしても、少しく状況の変化を感じさせます。
 答弁は、大体想像がつきますけれども、あえてお伺いいたしますと、財政運営は不断の見直しが必要なことは当然でありますが、きょうはあすへの通過点でありますから、将来のための必要な社会資本の充実、特に、現在は延命工事でしのいでおります、大きなボリュームで迫ってまいります社会資本の更新などを考えると、財政再建の中で維持してきた投資的経費の水準の適正な水準への見直しなど、その検討に入るべきと思いますが、ご所見をお伺いいたします。

○松澤財務局長 東京の都市基盤整備は、依然として立ちおくれた状況にありまして、お話のとおり、厳しい財政状況にあっても、将来に向けて必要な社会資本の充実に努めていく必要があると考えております。
 このため、今回の予算では、投資的経費を八・九%と、高い伸びの確保を図りながら、首都高速道路品川線や骨格幹線道路の整備、羽田空港の再拡張など、投資効果の高い事業を積極的に推進しております。
 一方、今お話ございましたように、既存ストックについても、今後老朽化に伴い、膨大な更新需要が発生すると見込まれておりまして、これに対しても適切に対処していかなければならない状況がございます。
 このため、今後とも施策の見直しを図りながら、財政構造改革を一層推進し、財源を重点的、効率的に配分して、東京の社会資本の充実、維持更新といった投資的経費の投入に適切に取り組んでまいります。

○矢島委員 財政運営は、やはり活用を図るということが一番のポイントだろうと思いますので、ぜひその立場から、知事のガバナンスを体して、しっかりマネジメントをお願いいたしたいと思います。
 東京都内には無論、近辺にも大変スリリングでおもしろいところが多くございます。東京港、横浜、川崎、千葉港などに行き交う船が、そのメーンゲートともいえる大変狭い東京湾の入り口にひしめき合って通過する浦賀水道の久里浜-金谷間を小型のフェリーが縫うようにして横断しております。幅、わずか六・五キロしかございません。
 その混雑ぶりに、よく事故が起きないものだと思いながら、船の行き交う様子が大好きでありますから、時々フェリーに乗ります。
 東京港の活性化と取扱量の拡大にクリティカルパスとなるのが、首都圏の物流を支える海の大動脈、ここから海堡までの間の通行容量、キャパシティーであると思います。
 今後、東京湾でより多くの船舶を安全に受け入れていくためには、航路の容量をふやし、安全性を高めていく必要があります。これは、基本的に国の取り組みということになりましょうが、その状況はどうであるか。そして、東京港の航路対策についてもお伺いいたします。

○成田港湾局長 ご指摘のとおり、東京湾口の浦賀水道周辺は、船舶の航行が非常にふくそうする海域となっております。
 このため、現在国では、平成十九年の完了を目標に海上交通の安全性の向上を図るために、中の瀬航路のしゅんせつと第三海堡の撤去を進めているところでございます。
 一方、東京港におきましては、航路や泊地のしゅんせつを行い、メーン航路である東京西航路の航路幅員を三百メートルから四百五十メートルに拡幅するなど、航路の容量の大幅な拡大を実現したところでございます。

○矢島委員 航路の十分な確保と安全対策は重要な課題であります。今後ともぜひしっかり進めていただきたいと思います。
 そこで、東京港の役割について、何点かお伺いいたします。
 東京港は、昨年七月、横浜港とともに、京浜港としてスーパー中枢港湾の指定を受け、現在都は、国際競争力確保のため、強化のため、港湾コストの低減やサービスの向上に努めております。
 しかし、近年の世界的な企業連携や製造業の水平分業など、日本を取り巻く経済のグローバル化は、東京の経済活動に大きな影響を与えるように思えます。
 家電や自動車、衣類等の日本を代表する製造業が中国に組み立て工場を移転し、貿易依存度が年々上昇、完成品の輸入が増加しておる一方、部品の輸出も着実に伸びております。
 戦後六十年、日本の経済成長を支えてきたのは、ものづくりの力であり、この工業製品輸出が最近十年間の不景気を下支えしてまいりました。
 特に、東京のものづくりの分野では、高い技術を持つ小さな世界一企業が、多数、大田を初め、八王子にも立地しております。こうした世界的市場で競争する企業を、国際物流の観点から支援していくことが必要ではないか。東京都は、東京港の管理者であり、貿易そのものを所管しているわけではありませんが、港湾管理者の立場から、貿易促進、殊に輸出につながる施策を考えられないか、お伺いいたします。

○成田港湾局長 近年、輸出企業におきましては、物流コストの低減が大きな課題となってきております。
 東京港におきましては、港湾施設の共同利用や貨物取扱量の増加を促すインセンティブ制度を導入し、コストの三割低減に取り組んでいるところでございます。
 さらに、今回、荷主企業を対象に展開するポートパートナーシップ作戦の一環といたしまして、輸入貨物を取り出して、空になったコンテナを輸出の際にも利用する、いわゆるマッチングを促進するなど、首都圏の荷主の皆様とも連携しまして、さらなる物流コストの低減を図ってまいります。

○矢島委員 輸出促進に向けまして、できる限りのことを今後も積極的に続けて、努力を続けていただきたい、このように思います。
 東京港などの港湾は、装置産業でありますから、大変な膨大な資金が投入されておりますけれども、大変重要な社会資本であります。それだけに、それをいかに効率的に使用していくかという視点も重要であります。
 現実に、港湾間の国際競争は熾烈を極めております。ライバルであるアジアの諸港との競争を考えると、首都圏玄関口、大消費地に近く位置するといっても、東京港、横浜港ともに安閑としてはおられません。
 東京港と横浜港は、スーパー中枢港湾に指定され、隣接港湾同士で切磋琢磨すると同時に、連携して--ここが重要でありますが、首都圏の物流拠点として機能を向上させ、京浜港として世界のトップテンと伍していけるよう、国際競争力のある港づくりを目指していくべきであります。
 そこで、日本を代表する港湾である東京港と横浜港は、全国港湾の手本となるよう、連携のあり方を大胆に示していただいて、日本の広域連携を先導していくべきだと考えますが、ご意見を伺います。

○成田港湾局長 隣接港湾間の連携といたしまして、全国で初めて、トラックに加えまして、はしけを用いての京浜三港間のコンテナ輸送効率化の実証実験に現在取り組んでいるところでございます。
 また、入港手続の簡素化を図る国際条約--FAL条約と申しますが--に適切に対応していくとともに、この三港では港湾施設使用手続の統一化を図るなど、他港に先駆けた取り組みも推進しているところでございます。
 さらに、京浜三港の利用を促進する共通した入港料インセンティブ制度の導入に向けた検討を行うなど、広域連携において全国港湾をリードしてまいりたいと考えております。

○矢島委員 なお一層の努力をしていただいて、物流拠点として港湾の効率化になお努めていただきたい、このように思います。
 次に、東京のまちづくりについてお伺いいたします。
 日本のまちづくりは、奈良、平安時代の都の条里制、城下町の町割り、そして都市計画へと変遷してまいりました。
 関東大震災に伴う下町と都心の都市改造である帝都復興計画が終了し、東京市が成立。そして、ともに、いよいよ東京の都市計画がスタートしたわけでありますが、ここでの課題は、駅前雑踏と交通処理を対象とした交通結節点の整備、そして郊外へ向かう道路の新設であります。
 これは、駅前広場と関係街路整備を目的に、新宿、渋谷、大塚、池袋を対象としたもので、戦前に事業着手されたのは新宿だけであります。そして、渋谷、池袋等の事業着手は、戦前の駅前計画を引き継いだ戦災復興事業に待つことになります。
 同様に、東京の都市計画街路も、戦前に環状八号線まで幹線道路の設置が計画されました。つまり、現在の東京の都市計画の大宗は、戦前東京五百万人時代の計画ということになります。
 特に、戦後の経済優先とモータリゼーションの進展は、大きくなり過ぎた東京にとりまして、緑と通りの美しさを欠いたままのバランスのとれないまちをもたらしました。東京を再構築する実効ある都市計画が求められていると考えますが、ご所見をお伺いいたします。

○梶山都市整備局長 東京の都市計画は、戦後の市街地の拡大やモータリゼーションの進展に対応するため、例えば首都高速道路や鉄道新線などの計画を加えながら、適宜見直しを行い、今日に至っております。
 現在都は、首都東京の活力や魅力を高めるため、広域的な交通インフラを強化するとともに、多様な機能を地域や拠点が分担し合う環状メガロポリス構造の構築を目指しております。
 その実現のためには、三環状道路などの整備を初め、都心や副都心、さらには核都市などの拠点整備を推進していくことが重要でございます。

○矢島委員 戦前の計画で抜け落ちているのが緑の計画であります。今の答弁の後半部分が何よりも重要と思いますので、できるだけの取り組みをされたい、このように思います。
 従来の街路づくりは、狭い歩道に人が追いやられ、それでも車は大混雑。特に、ターミナル周辺はひどく、東京都が業務地域の整備を課題とすることはよくわかります。
 そこでお伺いしたいのでありますが、東京都の都市計画の根幹であります鉄道のターミナルに幹線道路が通過するなど、集中と処理のターミナルと化している渋谷、新宿、池袋の駅前の整備についてであります。
 同ターミナル地域は、環状五号線・明治通りが通過し、交通混雑も常態化しており、駅は日本一、日本二位の乗降客が利用しております。
 ここに、地下鉄十三号線の導入空間として、環五の一の道路整備が進められております。この都市計画道路は、池袋、新宿駅周辺を避ける、いわばバイパスであります。駅前のあり方を考える際の幸運な材料ということもできます。
 今求められているのは、多様な人の集う場所こそ、人を中心に、自転車交通、それから自動車交通と共存するまちづくりを実現することにあります。
 そこでお伺いいたしますが、環五の一の整備を好機として、新宿、池袋駅前のあり方を、人中心の広場に再構築すべきではないでしょうか。
 ここで問題となるのが、都電荒川線が地上を走る雑司が谷から南池袋の部分であり、この路面電車は、環境負荷の少ない公共交通として見直されておりますから、この廃止には当然ながら賛成できません。
 しかし、現在の計画の都電と共存の道路だけでは、駅前通過車両のバイパスとして能力に欠けるのではないでしょうか。この部分の地下化を実現し、駅前の人間空間への開放を果たすべきではないか、この点についてお伺いいたします。

○梶山都市整備局長 今ご質問、二つございますので、最初の方は私、都市整備局長の方からお答えします。
 それと、先ほどの都市計画のあり方で、ちょっと後半、答弁漏れがございますので、あわせて述べさせていただきたいと思います。
 最初の方ですが、前段の方で、三環状などの整備を初め、都心や副都心、核都市などの拠点整備を推進していくことが重要でございます。
 また、これらの整備に当たりましては、環境や景観への配慮、潤いやゆとりの確保など、新たな価値観へも対応していく必要がございます。
 今後の都市計画は、こうした都市づくりの方向を踏まえ、積極的に進めてまいります。
 二番目の新しいご質問でございますが、新宿、池袋などの副都心は、その交通結節点機能の充実と相まって、商業、文化、娯楽など、多様な機能が集積されてきております。
 今後も副都心が時代の要請にこたえ、より一層、その役割を果たしていくためには、これらの集積のメリットとターミナル機能を生かし、人々が集い、憩い、そして楽しめる場としての魅力の向上を図る必要がございます。
 そのため、中核となる新宿駅、池袋駅周辺については、人と車の分離や回遊性の高い歩行者空間の充実など、だれもが安心して快適に活動できるまちづくりが重要と考えております。

○岩永建設局長 環状第五の一号線の件でございますが、池袋、新宿など副都心の連携強化や、池袋東口周辺の渋滞緩和に寄与する重要な幹線道路でございます。
 雑司が谷地区は、地下鉄十三号線の導入空間として整備が急がれることから、平成十年度に二車線で事業化し、用地取得を進めるとともに、十五年度から地下鉄工事を行っております。
 本路線の幹線道路としての機能を確保するため、地域のまちづくりや都電荒川線に配慮して、グリーン大通りや明治通りとの接続方法、幅員構成などにつきまして、現在複数案の検討を行っております。
 今後、この検討結果を踏まえまして、地元区など関係機関と調整を進めてまいります。

○矢島委員 今の言葉を私なりにいいかえると、地下化はするというふうに聞こえましたので、ぜひ努力していただきたい、このように思います。
 道路交通を面で考えることは当然であります。一つの道路の整備が次の課題を呼ぶからです。
 現在、鋭意建設の進められております首都高速中央環状新宿線と、これも事業進捗中の都市計画道路一七二号線の関係は、まさにそこにあるように思います。
 新宿線のランプが予定されている椎名町と池袋を結ぶのがこの一七二号線で、この用地買収率は九〇%に達しております。しかし、その完成は当初の計画に大きくおくれ、新宿線の供用開始に間に合いません。道路ネットワークとして考えるとき、このおくれは、混雑している現在の道路にさらに負荷をかけることになります。
 東京都は、かような路線の進捗は特に強く進めるべきではないかと思います。もし完成がおくれる場合には、一車線でも先行使用させるべきと考えますが、お考えを伺います。

○岩永建設局長 豊島区内の補助第一七二号線は、明治通りと、平成十八年度に開通予定であります中央環状新宿線の山手通りを結びまして、池袋駅周辺の交通の円滑化を図る重要な路線でございます。
 現在未整備となっている山手通りから東八百八十メートルの区間で事業を進めております。今年度から埋蔵文化財調査を実施しており、来年度には、調査を終えた箇所から排水管工事やガス、水道などの企業者工事に着手してまいります。
 引き続き、共同住宅など、残る用地の取得を精力的に進めるとともに、一部区間では暫定整備で対応するなど、早期交通開放に向け、積極的に取り組んでまいります。

○矢島委員 有効な活用を、どんな場合でも、少しずつでも図れるように努力をぜひお願いいたします。
 次に、震災対策について幾つかお伺いいたします。
 私も平成七年の阪神大震災の折には、二週間後でありますが、現地に入っております。現在もその悲惨な状況が目に浮かぶようであります。
 このときの自治体の職員の初動態勢はどうだったか。神戸市のある区では、震災日当日は一二%、五日後までで七〇%の出勤だったそうであります。
 しかし、消防職員は二時間で五〇%、五時間で九〇%の出動であったと聞いております。多くの職員が被災者であったようですが、頭の下がる思いであります。
 その士気の高い消防職員は、最前線で懸命に働くことになります。東京消防庁職員一万八千のうち、日勤を除き三交代として、現在詰めている四千人の職員が、家族の状況も知らないまま、あるいは家族を残して緊急参集してきた消防職員が、何をもって後顧の憂いなく消火、救難に取り組めるのか。
 消防庁では、既にこの点について取り組みがないことはありません。家族カードによる安否確認であります。そこには、住所、電話番号、家族構成、被災状況等の記載欄があり、所管の消防署に家族から安否の報告をすることになっております。
 しかし、広域、大規模震災時には、現実に電話はつながらず、消防署も家族もともに余裕はない、こういう状態だろうと思います。
 それも、東京消防庁の管内だけの扱いであります。その中でも、職員は必死に使命を果たしているということになります。
 その献身に報いるために、有効な家族の安否確認の方法を講じるべきであります。例えば、メールはどうでしょうか。メールも殺到時には時間がかかるなど、決して万能ではありませんが、都民のため、震災の渦中に活動している消防職員の家族の安否を何らかの方法で把握することが必要であります。ご所見をお伺いいたします。

○白谷消防総監 職員家族の安否情報につきましては、お話のとおり、重要であると認識しております。
 このことから、現在は、各消防署が収集する職員家族の安否情報を庁内ネットワークシステムを活用いたしまして伝達することとしております。
 今後、より一層、迅速、的確に処理できるようにするため、職員家族からのメールなどを活用する安否情報の収集伝達システムにつきまして検討を行ってまいります。

○矢島委員 システムは、民間会社が安否確認のシステムは販売している時代でありますので、形ではなくて、実効ある形のものにぜひ取り組んでいただきたい、このように思います。
 次に、さきの一般質問で我が党の川井しげお議員がお尋ねいたしました惨事ストレスについてお伺いいたします。
 大規模震災時、広域にわたる被災地での消火活動、救援活動が続いております。そこでは、多数に上るだろう被災者の救援に消防隊員がトリアージ、被災者の選別、そこらじゅうに被災者がいるわけですから、その心の悩みを抱えながら取り組むということになろうかと思います。
 このことは、出動している消防団員も同様であります。東京消防庁職員に対する惨事ストレス対策の対象を、二十三区、一万六千人の消防団員にも広げるべきであります。お考えをお伺いいたします。

○白谷消防総監 特別区の消防団員の惨事ストレス対策につきましては、過去に多数の死者が発生したビル火災に出場しました消防団員に対しまして、惨事ストレス対策を実施した例がございました。
 今後、震災時や災害現場などにおけまする惨事ストレスへの対策を、速やかに職員と同様の体制に整備してまいります。

○矢島委員 二十三区の消防団員と多摩とは、流れが違うようでありますので、そちらの方にも有効な対応ができるように、東京消防庁としても必要な援助をしていただきたい、このように思います。
 次に、組織の維持、業務継続計画についてお伺いいたします。
 震災発生時、全庁挙げての震災対策に取り組むこととなります。十七万二千人という規模になります。しかし、他方では、必要な通常業務も継続しているのであります。都庁組織が震災対策に取り組む一方、重要業務を継続し、あるいは再開する業務継続計画について、どのような状況であるか、また今後の取り組みについてお伺いいたします。

○赤星総務局長 震災時には、まず被災者の救出、救助に全力を挙げて取り組まなければなりません。このため、都は、被災状況の収集・分析、防災関係機関との連絡調整、応援支援など、応急活動に必要な人員をまず確保し、取り組んでまいります。
 また、平常業務につきましては、復旧復興状況に応じまして、順次再開いたしますが、都民に欠くことのできないサービスにつきましては、可能な限り応急活動に並行して実施してまいります。
 平常業務の復旧につきましては、今後各局にガイドラインを示し、統一的なマニュアルの整備を促進してまいります。

○矢島委員 あと、防災に関して二点ほど意見を申し上げさせていただきます。
 都庁業務は、通常であろうと、震災時であろうと、コンピューターを活用することには、何らかの形で使っておりますので、変わりはありません。
 震災対策のコンピューターには、バックアップシステムがあると聞いておりますが、通常業務のバックアップデータは別途保存がなされていても、ホストコンピューター自身の代替には、震災直後の混乱の中で、メーカーの協力の上、一、二週間の時間がかかるようであります。
 コンピューター時代の業務再開には、この点に関する検討が必要と思います。今後、分散処理となれば、ある程度この点の心配も軽減されるかもしれませんが、現況で都は、別途幾つかの情報処理システムがあるのでありますから、ホストコンピューターとシステムを合わせ、その電算機の使用を業務再開当初のバックアップシステムとすべきだろうと考えます。この点をご検討をお願いいたします。
 もう一点、美術館、博物館の防災対策であります。
 既に、一部を除いて耐震対策は終了しているようであります。
 私は、建物はさることながら、問題は、貴重な文化財、美術品と考えます。震災時、停電による空調の停止などの影響も含め、検討されていると思いますが、特に無防備な展示品に、さらに十分な対策を講じられたい、このように思います。
 それでは、あと五分、もう一、二点ご質問させていただきます。
 日本の近代行政組織のもとである国の組織は、明治の初め、自由民権の高まりの中で設定された民に対する権力温存システムといわれております。自治体の組織も下位構造で、国の組織に倣い、これも縦割りとなっております。
 この行政組織は、公的目的の達成上、本質的にコスト意識を持ちにくい非効率、没個性的な組織文化となりがちであり、この宿命の縦割り組織の性格など、みずから業務改革につながる組織設計をしたことのない組織ともいわれております。その職員は、優秀にもかかわらずであります。
 法などで規定されている行政組織は、組織のデザインになじみにくいのは確かでありますが、しかし組織体である以上、都庁組織の設計は十分検討されなければなりません。特殊事情は所与の条件として、行政組織の本質論から見直す、効率的、公平な組織設計を民間の知恵をかりて行うべきではないでありましょうか。
 また、このときには、いずれ将来分権が進み、国の組織にとらわれることのない、必要がない場合を念頭に置くべきであります。ご所見をお伺いいたします。

○赤星総務局長 都の事務でございますけれども、政策の企画・調整から都市外交、治安対策、福祉サービスの提供まで、極めて広範にわたりますとともに、その内容も、民間にはない食品、医薬品の監視指導、児童虐待対策などまで多岐にわたっておりまして、さらに地方分権により、質的にも拡充するものと見込まれます。
 都は、これまでも過去にとらわれず、時代の要請に応じ、柔軟な組織の見直しを実施してきております。例えば、平成十六年度の組織統合といたしまして、実効性のあるまちづくりを推進するため都市整備局を、また少子高齢社会に的確に対応するため福祉保健局を設置いたしました。
 したがいまして、直ちに組織設計に民間を活用することは考えておりませんが、今後も引き続き包括外部監査や機能するバランスシートなど、民間の知恵や外部の客観的な評価をそれぞれの事業ごとにできる限り導入し、事業展開の改善を図りますとともに、横断的な連携を強化し、効率的なものとなるよう努めてまいります。

○矢島委員 効率、効率といいましても、見えたところの、むだなところを排除していくという意味では、それでそういういい方になるんでしょうけれども、しかし、組織自身が効率的な運用、仕事ができるような、業務ができるような体制でなければ、当然ながらできないわけでありますから、できない理由はよくわかります。立場上、そういわざるを得ないんでしょうけれども、できる方法をぜひ考えていただきまして、取り組んでいただきたい、このように思います。
 東京都は、日本をリードする自治体でありますから、まして知事のガバナンスがあります。皆さんの方が知事の壁になることのないように、ぜひよろしくお願いいたします。
 最後に、現在東京の採用は、十八歳から二十七歳までの三分類に分かれた新卒採用を中心にしたもの、二十九歳から三十六歳の二分類で経験者中途採用があります。
 しかし、採用を行政系の種別で見ますと、この十年間、新卒で毎年百二十人から八百人、中途採用は平成五年より実施で十人から七十人であります。組織継続とバランスを考えるとき、この人員構成のゆがみをできるだけ修正していく必要があります。
 人員構成は、五十六歳で見ますと三千人、四十六歳で千百人、三十六歳で二千人、二十六歳で九百八十人。特に、二つ目の山は三十二歳の二千二百人ということになります。
 今後効率的な組織運営のために、適正職員数を念頭に、中途採用を幅広く、かつ強化すべきでありますし、また管理職、幹部ポストについても、ポストに合わせた民間経営幹部の活用等、多様な中途採用を考えるべきであります。いわばピークハントということになるかもしれませんが、それも含めましてお考えを伺います。

○赤星総務局長 これまでも都におきましては、職員の年齢構成の不均衡是正、組織のさらなる活性化、専門性の高い人材の確保に努めてまいりました。
 具体的には、平成五年度から、民間企業での職務経験に着目いたしました経験者採用制度を導入し、平成十四年度には主任級にまで拡大しております。また、平成十四年度から、専門性に着目した任期付採用制度を導入いたしました。
 管理職につきましても、任期付採用制度に加え、公募などによります外部人材の登用を行い、専門性や実践力を有する人材の確保に努めております。
 今後も組織上の必要性を見きわめながら、有為な外部人材の活用につきましては、積極的に取り組んでまいります。

○樺山委員長 矢島千秋委員の発言は終わりました。(拍手)
 以上をもちまして付託議案に対する総括質疑は終了いたしました。

○樺山委員長 次に、部局別質疑について申し上げます。
 部局別質疑は、本委員会設置要綱の定めるところによりまして、各常任委員会の調査をもってこれにかえることとなっておりますので、所定の手続を議長に申し入れます。ご了承願います。
 各常任委員長に申し上げます。
 部局別質疑に関する調査報告書は、三月二十二日の午後五時までに提出されますよう、特段のご配慮をお願いいたします。
 なお、来る三月二十五日については、締めくくり総括質疑を行っていただきます。
 また、三月二十八日に予定しております討論などの委員会運営につきましては、理事会にご一任願いたいと思います。ご了承願います。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後八時三十六分散会

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