東京都議会予算特別委員会速記録第四号

○野田副委員長 東村邦浩委員の発言を許します。
   〔野田副委員長退席、前島副委員長着席〕

○東村委員 私は、三年前の予算特別委員会で、東京都に、公会計改革を行うべきだ、そして複式簿記と発生主義会計を導入すべきだ、こういう質問をいたしました。
 私は、都議会議員になる前、十七年ほど公認会計士をやっておりましたけれども、明治以来続いた東京都の会計制度が変わることは恐らく無理だろうと、こういった意見をした人がたくさんおりました。しかしながら、私は、今、東京都の財政の問題で、ここに手をつけなければ東京都の財政改革はできない、そういう思いでこの問題を取り上げさせていただきました。
 ありがたいことに、石原知事が、何よりもこの公会計改革の問題を真剣に考えられていて、私の質問に対して、これを変えていくことは急務である、こういった答弁をされました。そして、早くもその五月に、平成十八年度から東京都の公会計改革を行ってまいります、複式簿記と発生主義会計を導入してまいります、こういった記者会見をしていただきました。
 当時の、今は財務局長をされています松澤主計部長でございましたが、一生懸命松澤主計部長にも後押しいただきまして、この問題がかなりのスピードで進んでまいりました。
 ただ、今、知事も、機能するバランスシートを出されて、幹部職員にいろんな徹底をされたと思うんですが、この公会計改革をやることによって--今、隠れ借金、一兆円近くあるといわれています。この中で、多摩ニュータウン事業会計が約一千億の欠損金がある、こういった発表をされております。「約」といういい方をしています。
 この欠損金というのは、企業でいうと損益計算書をつくってなければ出てこない数字なんです。そこで、私は、多摩ニュータウン事業会計に、この一千億の欠損金の根拠を出してくださいという話をしましたけれども、出てまいりませんでした。さらには、土地を毎年毎年処分している、売却しているけれども、その原価は幾らですかという質問をしたら、これも出てまいりませんでした。単純なんです。過去に買った用地代金に造成費足して、金利足して、そして取得した面積で割って、売却した面積を出せば、コストなんか出てくるんですけど、それをやろうとしてこなかった。
 やはり、仏像つくって魂入れずでありまして、本当にいい制度ができても、こういうことができなければ何の意味もない。そういう意味で、私は、十八年度からという話がありますけれども、多摩ニュータウン事業会計約一千億出てます、本当にそれが正確かどうかもわからない。さらには、もっといえば、十八年度、資金ショートする可能性がある、こういう懸念もある中にもかかわらず、まだやろうとしていない。やはり、マニュアルでもいいから、別にシステムに乗らなくてもいいから、マニュアルでもいいから、ぜひともこの多摩ニュータウン事業会計においては、複式簿記・発生主義会計を導入して、ぜひともこの財務諸表をつくって、これからの改革のやはり大きなツールにしていただきたい、このように思うわけでございますが、いかがでしょうか。

○梶山都市整備局長 多摩ニュータウン事業会計における財務状況をより正確に把握するには、ご指摘のとおり、複式簿記・発生主義会計による貸借対照表、行政コスト計算書などの財務諸表を作成することが必要であると認識いたしております。
 今後、多摩ニュータウン事業における財務上の諸課題に対処するため、平成十六年度までの決算に基づき、できるだけ早期に財務諸表を作成するよう努めてまいります。

○東村委員 この公会計制度改革は、何といっても一般会計、特別会計だけでなくて、何よりも今、都が進めている監理団体の改革、この監理団体や報告団体においても適用していくべきだ、私はこのように思います。また、これを適用することによって仕事の進め方も見直されていく、このように感じるわけでございます。特に、事業全体での評価をしようと思ったならば、監理団体や報告団体と財務諸表の連結をする必要があると思っております。
 例えば、本年十月一日に首都高速道路公団は民営化されます。で、九月三十日現在の見込みでございますが、都の占める出資金の割合は何と二六・七%でございます。民間の企業では、二〇%を超えると、関連会社として連結の対象となり、持ち分法の適用が行われるわけでございます。
 都は、この平成十七年度に首都高速道路公団に対して百三十六億円の出資金、さらには百十六億円の貸付金、また、中央環状品川線には二十六億円の街路整備事業費を投入します。まさに都の道路事業にも多大な影響を与えるわけでございます。
 そこで、都の行政コスト計算書や貸借対照表にこれらの事業実態を反映させる、そして効果を測定する、これがまさに、この公会計制度改革にあわせて行うべきではないのか、私はこのように考えるわけでございますが、いかがでしょうか。

○櫻井出納長 平成十八年度から実施を予定しております公会計制度改革におきましては、一般会計及び十八の特別会計に複式簿記・発生主義会計を導入し、十一の公営企業会計も含めまして、東京都全体の財務諸表を作成してまいります。
 ご提案のような、監理団体や報告団体などとの連結財務諸表の作成につきましても、東京都の財務状況をより総合的に把握する上で重要であると考えますが、連結をする団体の範囲や、連結をする場合の会計処理方法など、さまざまな課題があります。
 今後、慎重に検討してまいります。

○東村委員 順次で結構です。特別会計、一般会計やって、それから監理団体、それがきちっとできた上で、今度は報告団体も入れる。手順を踏んでやっていただければいいと思います。
 その上で、関連して、私はかねてから、この多摩地域の都心に向かう高速道路を使っていくのに二重料金が取られている、割高であるということを一貫して主張してまいりました。
 現在、国において、対距離の料金制の導入に向け検討が行われていると聞いております。多摩地域から新宿に来る際、今でも割高感がある中で、この現行料金を、対距離制になっても上回ることがあってはならない、このように私は思うわけでございます。
 この民営化に際して、先ほどもいいました、東京都は二六・七%という大株主になるわけでございます。まさに、テレビでも今問題になっていますけれども、あの三十そこそこの若者が一生懸命大きな巨象に対して物をいっているわけでございます。都もまさに二六・七%という大株主でありますから、国に対してそれなりの発言権があるし、ぜひともいうべきであると、私は思うわけでございます。
 そこで、この対距離料金制の導入に当たっては、国に対して積極的に働きかけをしていくべきだと思いますが、都市整備局長、いかがでしょうか。

○梶山都市整備局長 首都高速道路は、大量の交通を効率よく処理する観点などから、均一料金制を採用しております。しかし、高速道路網の拡充に伴い、利用距離にばらつきが生じ、負担の公平性が課題となっております。
 このため、国では、対距離料金制の導入に向け、学識経験者による研究会において、料金施策の検討を進めているところでございます。
 都といたしましては、今後とも、首都高速道路の料金体系について、利用者などの視点に立った適切な見直しが行われるよう、引き続き積極的に国に働きかけてまいります。

○東村委員 ぜひとも積極的に働きかけていただきたいと思います。
 そして、公会計制度の最後の質問として、私は、この複式簿記・発生主義会計が導入されても、これで終わりだとは思いません。先ほどもいいましたように、制度が幾らいいものができても、それを利用する職員の意識改革、組織の意識改革が行われなければ、何の意味もないわけでございまして、ぜひとも、十八年度に向けて石原知事の強いリーダーシップで職員の意識改革を行っていただき、そして、この十八年度から行われる公会計制度改革が、都にとっても本当に有意義な財政改革の大きなツールになるように進めていただきたいと思いますが、知事、いかがでしょうか。

○石原知事 私も、議員の折から、国そのものの会計年度制度はおかしいということを絶えずいってきました。しかし、蟷螂の斧に近くて、全然いい分も、反響もございませんでした。
 まあ、都知事になりまして、大きな所帯ではありますけれども、国に比べればはるかに小さいし、ここならやはり歴史的に必然性のある新しい会計年度方式を取り入れられると思って、中地、当時の公認会計士協会の会長などにもいろいろ頼みました。
 そもそも、とにかく国にも、この東京にもバランスシートがないんですから。大概の家庭にみんな家計簿があるのに、それなしでやっている国、やっている地方自治体というのは、世界でも余りないのじゃないかと思います。
 いずれにしろ、そういうことで、この新しい会計制度を導入しましたが、ご指摘のとおりで、今すぐというわけにいきませんけれども、財政そのものが非常に複合的、重層的なものである限り、東京都の関連の深い監理団体、報告団体は当然、近い将来連結していかなければ、これは健全な会計の運営にはなり得ないと思います。
 民間企業では至極当然の経営感覚を職員一人一人が持ってもらって、一朝一夕にできることではないかもしれませんが、来年の四月からは都の会計に複式簿記をきちっと導入していきたいと思っております。
 あなたご自身が公認会計士でいらっしゃるので、これから、今のご指摘のように具体的にまた注文を出していただきたい、この新しい方式の運営について。

○東村委員 今、知事からもございました。さらに遠慮しないで、どしどしと物を申してまいりたいと思いますし、これ、知事から、監理団体、報告団体もやるというお話がありましたので、私はぜひともこれも積極的に応援をしてまいりたいと思います。
 次に、東京都の通信システム、IP化についてご質問したいと思います。
 平成十三年度からスタートいたしました電子都庁の推進によって、パソコンが職員一人一台に、さらに、スーパーバックボーンという光回線によって、情報通信網が都庁からさらに島しょ、出先事業所まで張りめぐらされるようになりました。これは非常にすばらしいことだと思いますし、私は高い評価をいたしております。
 ただ、平成三年度から都庁舎ができ上がりまして、十四年間たちました。この議会の放送設備や一万台を超える電話設備、そして電話機等、すべて含めて老朽化していると思います。そろそろ設備更新の時期を迎えているのではないか。
 そこで、この電話設備にもし重大な障害が発生した場合に、電話機能が停止をし、業務が大混乱するおそれがあります。都の、この都庁電話システムが抱えている課題について、また認識についてお伺いしたいと思います。

○赤星総務局長 現行の電話設備でございますけれども、平成三年三月に設置いたしましたもので、非常に老朽化が進み、更新の時期に来ております。
 早急に設備を更新する必要があると認識しております。

○東村委員 早急に更新する必要があると認識しているということです。
 そこで、私は、ぜひともその更新に当たっては電話システムをIP化する、この必要があるのじゃないかと思っております。
 総務省では既に固定電話、これを二〇一〇年代前半にIP化する方針を出しておりますし、また、最近の日本経済新聞の調査によりましても、調査企業の九割が既にIP電話システムを導入したか、または導入する計画を持っている、また、導入した企業の約六割が通信コストを一〇%以上削減をしている、こういった報道がありました。
 私も、実は、最もセキュリティーを必要とする銀行、新生銀行のIPシステムについて、いろいろお話を伺ってまいりました。非常に勉強になりました。初期費用だけではなく、ランニングコストまで考えると、六年間で、従来の方式の約七割まで減らすことができる、こういったところまで試算をされておりましたし、電話やファクス、メールを統合した大規模なユニファイド・コミュニケーション・システム、こういった環境をつくり上げておりました。
 さらに、自動車製造販売会社のマツダにおいては、本社にIP電話に対応できる交換機を設置して、全国の七百六十の販売拠点を情報通信網で結ぶことによって、いわゆる外線を内線化する、これで通信費の大幅削減、年間四億五千五百万円を削減した、こういった報道もございました。
 まさに、コスト面で絶大なる導入効果があるわけでございます。さらに、職員の利便性や業務の効率化も期待されるわけでございます。これまで推進をしてきた電子都庁をさらにステップアップする、そういったことも考えられるわけでございます。
 そこで、ぜひとも都庁においてこのIP電話システムを導入すべきではないか、私はこのように考えるわけでございますが、いかがでしょうか。

○赤星総務局長 私も、IP電話システムにつきましては二カ所ばかり現場を見てまいりました。
 今、先生ご指摘のように、全国に多くの拠点を持つ大企業などにおいては、通信費などのコスト削減や業務の効率化を目的として導入されておりまして、成果を上げていると聞いております。
 ただ、IP電話システムには、セキュリティー対策や非常時の対応策など、なお検討すべき若干の課題が残されております。
 今後、技術動向とともに、こうした点を見きわめまして、ご提案のIP電話システムを含め、最適な方式を早急に検討してまいります。

○東村委員 まさに今、IP電話システムを含め最適な方法を早急に検討していく、こういったご答弁をいただきました。
 さまざま課題があるのもわかります。ただ、先ほどいいました、セキュリティーを最も必要とする銀行が既にもう行っているわけでございます。都庁がやってやれないわけはないと思いますので、積極的に取り組んでいただきたいと思います。
 次に、八王子を含む多摩地域の小児医療について質問したいと思います。
 私は一貫して、三年前の予算特別委員会から、そして厚生委員会においても、さらには一般質問においても、一貫してこの八王子の小児病院を含む多摩地域の小児医療の問題について質問してまいりました。
 そして、都立八王子小児病院を何とか存続させたいという思いで、署名運動もやりました。ただ、ただ反対するだけでは能がない。ただ反対だけして、いざ、この五年後に小児病院がなくなったときに、八王子に何も機能がなくなってしまえば、はっきりいって、議員は何やっていたんだといわれかねない。そのために、私は、八王子市にも働きかけました。知事が、八王子もしっかり考えるべきだとおっしゃったので、八王子市にも働きかけました。
 その間、八王子市も一生懸命、平成十五年十月一日からでございますが、三百六十五日二十四時間、小児の初期と二次の救急医療を受け入れる体制を、東海大学八王子病院、それから東京医大の八王子医療センターで受け入れる体制を、偶数日、奇数日に分けて整えてくれたわけでございます。
 じゃあ、あと何が、小児病院が万々が一統廃合されたときに、八王子の地域に残さなければならないかといえば、それはとりもなおさず新生児ドクターカーと、そして新生児のNICU、集中治療室でございます。これを残さなければならない。
 そこで私は、平成十五年九月三十日の厚生委員会で、まずは、この八王子を含む多摩地域の広範な地域で、ぜひとも新生児ドクターカーを、広範な新生児搬送を行うために、新たに新生児ドクターカーを配置すべきだ、こういう質問をしたわけでございます。これに対して、厚生委員会において、当時の健康局が、新生児ドクターカーを新たに配備をいたします、こういった答弁をしてくれました。
 さらに私は、NICU病床、出生千人に対して、区部は二・四床、多摩は〇・八床、さらに、小児総合医療センターが仮に設置されたとしても、区部は二・四床、多摩は一・一床にしかならない、これだけ差があるんだ、平均で差があるんだ、こういった問題をぜひとも東京都は積極的に支援をすべきだ、こういった話をして、平成十六年三月四日の第一回定例会の一般質問におきまして、小児総合医療センターの問題も含めて、この八王子を含む多摩の地域、市とかそれぞれの自治体が、また大学の民間病院等がNICUを設置するならば、そこにドクター等の派遣の人的支援や、さらに、年間六床、NICUを設置するだけで二億円かかるといわれている、赤字が出るといわれている、この赤字部分に対する東京都の財政的な支援もやるべきだという話をしましたし、質問いたしました。
 そのときに、東京都は、八王子市内を初めとする多摩地域における民間医療機関でのNICU整備に向けまして、人的、財政的支援の具体策を検討するなど、周産期医療の充実を図ってまいりますと、こういった前向きな答弁をしてくれたわけでございます。
 そこで、あと五年後という一つの計画の流れの中になっております。私は、ぜひとも八王子市民の皆様に、こういった形で八王子にきちっとした周産期医療が残りましたよ、新生児ドクターカーが配置されましたよということを見せてあげて、安心を与えることが何よりも都の責務だと思っております。
 そこで、ぜひともこのさまざまな諸課題に対して、八王子市との間で早急に具体的な協議に入るべきだと、私はこのように思いますが、都の見解を伺いたいと思います。

○押元病院経営本部長 都はこれまで、八王子市との間で、八王子地域の保健医療に関する検討会を設置いたしまして、地域における小児医療の実態を明らかにしてまいりました。
 今後は、この検討結果を踏まえまして、関係局とともに、今、先生お話のありました、周産期医療を初めとする八王子地域に不足する小児医療の確保策につきまして、八王子市と早急に具体的な協議に入ってまいりたいと考えております。

○東村委員 前向きなご答弁、ありがとうございます。
 そこで、先ほど新生児ドクターカーの話をしましたけれども、また新生児集中治療室の話をしました。何よりも大事なのは医師なんです。五百グラム、七百グラムの赤ちゃんにカテーテルを入れるわけですから、NICUのドクターというのは、普通の小児科医でいいわけありません。何よりも専門的な小児の医療を研修してなきゃいけないし、力を持っていなきゃいけないわけでございます。
 そこで、私は、こういったNICUを担当する小児専門医の確保、育成策をぜひとも積極的に東京都が行っていくべきだし、何よりも都立病院で行っていくべきだと思いますが、病院経営本部長、いかがでございましょうか。

○押元病院経営本部長 都立病院では、医師の体系的な人材育成の一環といたしまして、それぞれの専門分野において、専門医の資格を取得できる水準まで修練を積む、サブスペシャリティレジデント制度を平成十七年度に新たに創設することとしております。
 今後は、この制度を活用いたしまして、NICUなど新生児医療を担当する小児専門医の育成に取り組みますとともに、その確保にも努めてまいります。

○東村委員 今、サブスペシャリティレジデント制度を活用して、NICUの小児専門医の育成に取り組んでいく、ここまでいってくれました。
 ただ、知事も本会議でおっしゃっていましたけれども、なかなかこの小児科医の確保策というのが難しいんだという話をされていました。私も、この点については本当に悩みました。金がないなら知恵を出せとよくいわれましたので、いろんなところを歩いて、いろんな人に当たって、話を聞いてまいりました。
 その中で、防衛医大の先生が非常にいい話をしてくれました。それは、いわゆる防衛医大というのは、(パネルを示す)ここにありますように、卒業後九年間の勤務義務期間があるわけでございます。仮に、この勤務義務期間を経ないで離職してしまえば、最高で五千百十八万円の損害金を払わなきゃいけない。だから皆さん、なかなかそれがなくて、防衛医大にずっと残っているわけです。
 私がお話をした先生は、それはそれなんだけれども、九年間いた場合、防衛医大というのは、行くところが、最初の二年間は臨床研修、そして次の二年間で診療に従事。これはどこへ行くかといいますと、自衛隊病院や駐屯地の診療所に行くわけでございます。自衛隊病院や駐屯地というと、自衛隊員はみんな元気ですから、やれることというのは、骨折だとか、けがとか、そういうことなんです。さらに今度、専門研修で、附属病院や、また自衛隊病院に行く。そして最後の三年間で、また自衛隊病院に行くか、今度は昇官して部長になって行くか、また大学院に行くか。最後、残されたすばらしいのが、国内の病院へ留学派遣できるということなんです。ところが、やはりああいうところは閉鎖的なところですから、自分から行かしてくれるわけないんです。やはりこちらから話をしてあげなければ、こっちに来ないわけなんです。
 今、医師が不足をしている。防衛医大の先生も、実は防衛医大というのは日本で一番優秀な、入るときは大学です。そして、出ていくときには、こういうことばかりやっているから、医療技術が、やはり臨床研修ができないので、出ていくときは最低になってしまうわけなんです。
 駐屯地というのは、もう本当に聴診器を当てるだけで、本当にもっともっと医療をやりたい、こういった話を聞きました。防衛医大のこの義務期間を経ている人たちも、こういうお医者さんも、どんどんどんどん医療をやりたいんだ。東京都も医師が足りないんだ。相思相愛でございます。
 まさに私は、こういった防衛医大の附属病院や自衛隊病院からの都立病院への医師の派遣を積極的にやるべきなんじゃないか、このように思うわけでございますが、いかがでございましょうか。

○押元病院経営本部長 都立病院は、すぐれた指導医のもとで豊富な症例を経験することができるなど、医師が研さんを積むには最適の病院であると考えております。
 このように、都立病院で診療を行うことは、今お話のございました防衛医科大学校病院などの医師にとっても有用であり、また都立病院の側といたしましても、医療サービスの充実を図ることができるなど、双方に利益がありますことから、今後、その受け入れについては関係機関と協議してまいります。

○東村委員 ぜひとも積極的に協議をして、これは都にとっても願ったりかなったりだと思いますし、その分をしっかり足りない小児医療のところに医師を派遣して、先ほどいったNICU研修をしていけば、足りない、本当にまさに地域医療の穴を埋めることができるわけなんで、ぜひともお願いをしたいと思います。
 その上で、今いったさまざまな議論を踏まえて、これから多摩地域における周産期医療の充実に向けた、知事の決意をお伺いしたいと思います。

○石原知事 次代を担う子どもたちの生命と健康を守り、健全に成長できる環境を整備するのは、親はもとより、社会の責任だと思います。
 その中でも、妊娠、出産から新生児までの一貫した医療を提供する周産期医療体制の整備は、重要な課題と認識しております。
 都民が安心して子どもを産み育てることのできる東京を実現するため、多摩地域の周産期医療の充実に積極的に取り組み、都全体の医療水準の向上を図っていきたいと思っております。
 ついでにお聞きしますけれども、何人ぐらい、自衛隊の病院から拉致してこれますかな。(笑声)

○東村委員 それは、これから知事の働きかけいかんによると思いますので……

○石原知事 何人ぐらい、いるんです。

○東村委員 二千人ぐらいいるっていうんです。

○石原知事 そんなにいるの。

○東村委員 いろんなところにたくさんまだまだ。要するに九年間ですから、一年ごとですから、九年分、人がいるわけですから、まだまだたくさんおりますので。

○石原知事 わかりました。

○東村委員 知事が、この多摩の周産期医療の充実に踏み込んでくれたというのは初めてでございますので、ぜひとも積極的にこれから期待をしてまいりたいと思います。
 それから、ものづくりについてご質問したいと思います。
 実は、知事もよくいわれていますけれども、多摩地域、これは、区部が約五兆五千億という製造品出荷額を持っておりますが、多摩地域は六兆円でございまして、非常に、区部というと大田区なんかがクローズアップされるんですけれども、多摩地域もかなりの中小企業がものづくりをやっております。
 その中で、東京都はこの平成十七年度の予算で、企業ニーズの把握や地域特性の分析等の調査を実施して、そして、ワンストップでものづくり産業を支援する産業創造拠点をこの多摩地域にも一つつくっていく、こういった予算措置をし、発表もしてくださっております。
 そこで、私は、この八王子という地域、くまなくいろんな意味で見てまいりました。実は、八王子市も本当に努力をしているんです。産業活性化委員会というものをつくりまして、幹部職員が企業をみずから訪問しております。平成十七年一月から行っておりまして、現在、三十一社行っています。
 その中で、宇宙航空研究開発機構のもと、小型衛星のテレメーター装置、(パネルを示す)遠くの情報を送信して受信をする。これは送信側なんですけど、これは大きくしましたけど、これ、十二センチなんです。こういうものをつくっているのが、実は八王子の会社なんです。
 さらには、千葉工大が打ち上げたクジラの観測用衛星「観太君」あの通信部門も支えたのが、八王子のこの会社だったんです。
 さらには、よく皆さん、今、テレビや映像で見られます字幕スーパー、テロップ、映像機器の文字スーパー装置、これを変換してつくっている、機械をつくっているのが八王子にあります。これは実は今、NHKや、きょうは民放も入っていますけれども、民放各社で採用されていますし、海外では、韓国、台湾で採用されています。さらに、最近ではハイビジョン対応の画期的なスイッチャーの開発に成功しまして、これが韓国の二十二局で利用されております。こういったすばらしいものづくりの会社が、今、八王子にどんどんふえているわけでございます。
 先ほどいいました、多摩は六兆円。この中で、八王子の製造品出荷額は六千百四十四億円でございます。多摩地域で四位なんです。ところが、一位、二位、三位の日野、府中、羽村というのは、ほとんどの出荷額が大手なんです。ところが四位の八王子というのは、支えているのが全部中小なんです。中小の会社が頑張って、これだけの出荷額を出している。一位から五位までの出荷額で、多摩地域の約六割の出荷額を占めるわけでございます。こういった八王子のものづくりがどんどん進んできている。
 私は、この人たちに、なぜ今八王子でこれをやろうと思ったんですかという話を聞きました。そうしたら、一つは、研究開発機関が近くに集積しているし、何よりも中小のものづくりの会社がたくさんあるので、外注先に事欠かないという話がありました。さらには、物流も非常に便利だ。これから圏央道ができます。さらに便利になってくるわけでございます。また、八王子市自体が、いきいき企業支援条例をつくって企業の誘致をし、固定資産税、都市計画税、事業所税相当額を三年間にわたり奨励金として逆に交付する。ここまでやって企業を誘致しております。
 そのような中、八王子市には、東京都の産業技術研究所以外にも、八王子市独自の先端技術センター、さらには、経済産業省が支援をしている通称TAMA協、首都圏産業活性化協会、さらには、八王子市のボランティア組織が立ち上げているような「首都圏情報産業特区・八王子」構想推進協議会、通称サイバーシルクロード、こういった協議会がたくさん産業支援を行っているんですが、残念なことに、みんな目指しているところは同じなんですけれども、取り組みがばらばらに行われているというのが現状でございます。
 何よりも、経営者の人に聞くと、販路の開拓や情報提供、そして試験施設、電波や振動の試験のできる施設が欲しい、これがあれば、もっともっと自分たちのものづくりは進んでいくんだという話をされておりました。
 そこで、私は、今後、都がこの産業創造拠点、ワンストップサービスの拠点を整備していく上に当たって、国や市、これらと具体的な提携をとれるような拠点とすることが最善であると思いますが、産業労働局長、いかがでございましょうか。

○関谷産業労働局長 ただいま、委員からるるお話がございましたけれども、多摩地域は製品開発型企業の割合が高く、企業の研究機関や大学も多数立地しております。都のものづくり産業の振興を図る上で高いポテンシャルを有しておるのは、委員のご指摘のとおりでございます。
 昨年行われました東京都中小企業振興対策審議会の答申では、区部と多摩のそれぞれの地域の強みを生かしまして、ものづくり産業を支援すべきであるとされております。
 都は、答申の趣旨を踏まえまして、重点事業といたしまして産業支援システムの再整備に取り組み、多摩地域につきましても、経営、技術の支援機能を再検討し、時代に合った専門性の高い支援体制を構築してまいりたいと考えております。
 企業ニーズの把握ですとか地域特性の分析等の調査を十七年度に行いまして、拠点の立地等についても多面的に検討してまいりたいと思っております。
 また、連携についてでございますけれども、都はこれまでも、産学連携プラザですとか、たま工業交流展などを通じまして、市町村等と相互に協力しておりますが、多摩地域のものづくり産業を発展させるためには、ご指摘のとおり、国や市、支援機関等との連携をますます強め、深めていくことが重要であると認識しております。
 先ほど申し上げました産業支援システムの再整備の検討を進める中で、関係機関とのより効果的な連携のあり方も検討を行いまして、企業にとって実効性が高く、利用しやすい支援体制を整備してまいります。

○東村委員 ぜひとも、ものづくりの拠点を八王子に私は持ってまいりたいと思うわけでございます。よく知事がおっしゃいますように、それぞれの特性を生かせばいいんだと、別に八王子が立川のようになる必要はないわけでございまして、八王子はまさに、ものづくりでこれからどんどん伸びていけばいいと私は思っておりますので、そういった拠点を整備していきたい、このように--区部の大田に匹敵する、これがまさに私は八王子だと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 その上で、今、産学公連携とよくいわれるんですけれども、産学公連携は実は余り進んでいないんです。なぜかといいますと、大学側がまず最初にお金を要求するからなんです。そこで、どうしても中小企業はお金がありません。企業にとって、製品が売れて何ぼの世界ですから、それをやらないで、最初からお金があってから研究をする--なかなか産学公連携は進みません。
 そこで、首都大学東京は、開学と同時に、産学公連携センターを八王子の隣の日野に設置するわけでございますが、ぜひとも、この新たに設置をしていく多摩のものづくりの拠点と、この首都大学東京の産学公連携センターの強化を、そして提携を強く進めてバックアップしていただきたい、このように思うわけでございますが、いかがでしょうか。

○村山大学管理本部長 首都大学東京は、地場優先の大学ということで、大学の成果を社会に還元いたしまして、東京の産業振興に資するということを目指しております。
 これから、今、先生のご指摘のありましたように、産学公連携センターを中心といたしまして、産学公連携を強力に推進してまいりますけれども、具体的な成果を上げる上では、都が実施する各種の産業施策との連携が重要でございます。
 こうした観点から、お話しのものづくり産業を支援する拠点との連携につきましても、関係局と十分調整しながら、適切に対応してまいります。

○東村委員 ぜひとも積極的にお願いしたいと思います。首都大学東京の産学公連携センターが成功すれば、恐らくこの産学連携というのは進んでいくと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。
 次に、地球温暖化対策の一つとして、地中熱利用のヒートポンプシステムについてお聞きしたいと思います。
 昨日から、温泉の掘削で相当問題になっておりましたけれども、これは、千メートル掘るとか二千メートル掘るという世界ではございませんで、百メートル以内の世界でございますので、どうかご理解いただきたいと思います。
 この地中熱利用ヒートポンプというのは、一年じゅう十度から十五度と安定しておりまして、こういうところに着目をして、地上との温度差を利用し、地中に熱交換くい、地上にヒートポンプを設置して、地中熱と熱交換をすることによって、冷暖房や、そして給湯を行うシステムでございます。省エネ対策の一つでございます。
 そこで、この地中熱ヒートポンプシステムに対して、国の補助制度もあると聞いておりますし、さらに、具体的な省エネ効果、また設備投資回収年数、さらには東京都内でどれだけの導入実績があるのか、環境局長に聞きたいと思います。

○平井環境局長 国の補助制度は二つございます。一つは、環境省の石油特別会計の補助でございまして、自治体が率先導入する場合に、事業費の二分の一が補助されるものでございます。
 もう一つは、新エネルギー・産業技術総合開発機構、いわゆるNEDOの地熱エネルギー導入促進に係る補助事業でございまして、こちらは自治体だけでなく、民間が設置する場合にも三分の一または二分の一の補助が受けられます。
 省エネ効果などについてですが、NEDOの資料によりますと、地中熱利用ヒートポンプは、通常のエアコン等に比べ、電力使用量が一五から三〇%以上削減されるということでございます。
 また、初期投資のコストがかかるものの、省エネ効果によりまして光熱費が削減され、投資回収年数は十三年程度で、補助金によりさらに短縮されるとのことでございます。
 都内では、現在、業務用ビル、大学、病院、住宅の計五件に設置され、給湯や冷暖房に使用されております。

○東村委員 非常に有効性がある、補助金制度も使うことができる、特に地方公共団体は使うことができるという話でございました。
 そこで、この京都議定書の目標値を達成するためには、まず隗より始めよでございます。地方自治体も率先して取り組むべきと考えます。どういうところがいいかと、私もいろいろ考えたんですけれども、何といっても、環境学習施設としての意味合いもある動物園、こういうところがいいんじゃないかと。今、上野動物園でも、新象舎の建設に対して、太陽光という省エネの取り組みをされております。私は、今後、このレクリエーションの場、自然保護の場、さらには環境学習の場、そして、これらを推進していく調査研究の場として、楽しみながら自然保護や環境問題についても関心を持ってもらえるような、この動物園において、地中熱ヒートポンプシステムを利用してはどうかと、このように考えるわけでございます。
 動物園は、これを積極的に行って--今、欧米でも、二酸化炭素の少ない地中熱利用が冷暖房設備に普及していると聞いております。温風式の冷暖房に比べ、室内温度差ができにくく、健康にもいい。最近では国内でも、特別養護老人ホームや幼稚園など、そして省エネルギーの観点から、さまざまな施設にも導入されていると聞いております。
 (パネルを示す)例えば、先ほどいいました動物園では、今、コアラ舎、この空調設備の改修工事を行っています。太陽光という設備を導入しようとしておりますが、仮に、五十平米のコアラ舎において、この太陽光と地中熱を比較した場合、この初期投資が太陽光は二千万ぐらいかかります。地中熱もかかるんですけれども、先ほどいいました、国から補助金が出るんです。二分の一も出ます。したがって、六百五十万で済みます。電気代はというと、太陽光は三十一万五千八百八十八円、年間、試算でかかります。さらには、この地中熱の場合は十四万三千五百八十六円です。ライフサイクルコストを考えても、太陽光は十年で更新をしなければいけない。さらに高い電気料がかかるわけでございます。そういった意味で、ぜひとも私は、この省エネルギーの観点からも、動物園において、動物の健康を守るという観点からも、上野動物園もしくは多摩動物園において地中熱利用を行っていくべきだと、このように考えるわけでございます。
 幸いにも、多摩動物園には今、四本の水井戸があります。したがって、専門家の話ですと、多摩動物園では新たに掘削をしなくてもいいという話でございます。大幅に初期コストが削減されるわけでございます。
 最後に、この問題について、積極的に動物園において導入すべきだということを建設局長に質問いたしまして、私の質問を終わりたいと思います。

○岩永建設局長 お話のように、都立動物園は環境学習の場でもあり、また、二酸化炭素の排出量が少ない冷暖房設備の導入は、地球温暖化を抑制する観点から意義のあることと考えております。
 地中熱利用の冷暖房装置につきましては、ご指摘のような技術的な課題や費用対効果などを検証する必要がございます。
 今後、新規施設整備の機会に、省エネルギー対策の一つとして検討してまいります。

○前島副委員長 東村邦浩委員の発言は終わりました。(拍手)
 この際、議事の都合により、おおむね三十分間休憩をいたします。
   午後六時五分休憩

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