東京都議会予算特別委員会速記録第四号

○野田副委員長 柿沢未途委員の発言を許します。
   〔野田副委員長退席、富田副委員長着席〕

○柿沢委員 まず、障害者の支援について伺います。
 二月二十六日から三月五日まで、スペシャルオリンピックス長野冬季世界大会が開かれました。アジアで初めてとなる知的障害者のスポーツの祭典です。知的障害を持つ選手たち、スペシャルオリンピックスではこれをアスリートと呼びますけれども、世界八十四カ国から、二千六百人ものアスリートたちが長野に集い、レッツ・セレブレート・ツギャザー、皆で集い、ともに楽しもうをテーマに、アルペンスキーやフィギュアスケート、さらにスペシャルオリンピックス独自の競技であるスノーシューイング、フロアホッケーなど、さまざまな競技を楽しみました。大会の様子はテレビや新聞で大きく取り上げられましたので、皆さんもごらんになった方も多いんじゃないかというふうに思います。
 スペシャルオリンピックス長野冬季世界大会は、大きな成功をおさめたといっていいと思います。八日間の大会期間中、アスリートを応援しようと集まった観客は実に二十万人を数え、また、八千五百人ものボランティアが大会を支えました。スペシャルオリンピックスの創始者であるユニス・ケネディ・シュライバーさん、ケネディ大統領の妹さんだそうですけれども、彼女も閉会式で、スペシャルオリンピックス史上最高の冬季世界大会が開かれたと、長野大会に最大級の賛辞を贈っております。
 実は、私も二日目の二月二十七日に長野に行って見てまいりました。志賀高原のアルペンスキーの会場、スピードスケート会場のエムウエーブを見て回りました。印象的だったのは、出場しているアスリートたちが競技を終えたときの、やり遂げたという何ともいえない喜びの表情です。たとえ転んでも、たとえびりだったとしても、ゴールしたときには満面の笑みで、ウィーと、ガッツポーズで、自分が世界で一番だという顔をしているわけですよ。それをまた見ているファミリーやボランティア、観客もみんなで拍手して、声援して、敢闘をたたえていたわけでした。
 スペシャルオリンピックスでは、全力を出して頑張ったアスリートはすべて勝利者という考え方をしています。成績上位の選手だけがメダルを与えられるわけではなくて、メダルを逃した四位以下の選手にも、みんなが表彰台に上がって、勝利のあかしであるリボンが贈られます。他の人に勝つのではなくて、きのうまでの自分に勝つ。それが勝利なんだ。スペシャルオリンピックスはこの考え方に貫かれています。それがオリンピックやパラリンピックとの大きな違いです。そして、そのことがスペシャルオリンピックスにオリンピックやパラリンピックとは全く違う大きな意味を持たせているというふうに私は感じています。
 真っすぐに競技に打ち込むアスリートの姿、そして、やり抜いたときのはじけるような喜びの姿は感動的です。彼らスペシャルオリンピックスのアスリートたちは、スポーツを通じて、挑戦する勇気を身につけ、みずからを高め、そして、自分にもできるんだという達成感を味わうことができます。そして、私たちは彼らのそういう姿を見ていることによって、彼らからさまざまなことを感じ取ることができます。決して一方通行な障害者に対する同情や哀れみではないのです。
 スペシャルオリンピックス日本の細川佳代子理事長、この方は日本でのスペシャルオリンピックスのムーブメントを最初の最初から引っ張ってきた方ですけれども、彼女は、スペシャルオリンピックスは、スポーツを通じた意識革命運動であるといっています。障害者は気の毒な人たちだという間違った常識をひっくり返したい。知的障害者は本当に純粋で、素直で、自己表現をし、人を受け入れる。それに対して、私たちは、平気でうそをつき、自分のことしか頭にない、心の障害者になっていないだろうか。アスリートと直接触れ合うことで、そうした大切なことに気づいてほしい。そんなふうにおっしゃっておられます。
 スペシャルオリンピックスのスという、S、最後にスがつくわけですけれども、この複数形は、スペシャルオリンピックスが単なる大会の名称ではなくて、知的障害のある人たちが日常的にスポーツを楽しみ、練習する機会を提供し、競技会への参加を通じて彼らの社会参加、自立を支援する国際スポーツ組織とその活動全体をこのスペシャルオリンピックスという名前が指しているから、複数形のSがついているというわけなんです。
 その意味で、スペシャルオリンピックスは、長野冬季世界大会が成功したことをもって終わるのではなく、むしろそれを契機として、日本の各地で、そして東京で、日常的にたくさんの知的障害者がスポーツと触れ合い、私たちがコーチやボランティアとしてそれを支えるという日常的な活動の基盤を広げていく。それを目指していかなければならないというふうに思っております。
 しかし、目の前には大変厳しい現実もあります。彼らにスポーツを指導するコーチは、全国で数えても千二百人しかいない。一県当たり三十人ぐらいしかいないわけですね。活動する場所も限られています。これまで障害者スポーツの世界において中心的な役割を果たしてきた日本障害者スポーツ協会、あるいは東京都障害者スポーツ協会とも、スペシャルオリンピックス日本はコミュニケーションが十分にとれているというふうにはいえない状況にあります。
 こうした状況の中で、東京都は、障害者が身近な地域でスポーツに親しみ、それを通じてみずからを高めていくということに対して、今後どのような支援を行っていくかということを伺わせていただきます。

○幸田福祉保健局長 長野冬季世界大会については、都内でも、知的障害のあるランナーと消防士、警察官などの法執行者と呼ばれる方々や多くのボランティアが参加してトーチランが行われるとともに、都民広場におきまして聖火到着式が開催され、都民の障害者スポーツへの理解が大いに深められたと考えております。
 ご指摘のように、障害者がスポーツを行うことは、障害者本人の健康増進と社会参加を図る上で有意義であり、都はこれまでも、スポーツ大会の開催やスポーツセンターの運営などに努めてまいりました。
 今後とも、区市町村や東京都障害者スポーツ協会など、さまざまな民間団体と十分に連携しながら指導者やボランティアの育成を進め、一人でも多くの障害者が身近な地域でスポーツ活動に取り組めるよう支援してまいります。

○柿沢委員 今、幸田局長のご答弁にもありましたとおり、本当に今回の大会に当たっては、東京都の多大なご支援をいただきました。
 昨年六月の都議会第二回定例会の我が会派の中村議員の代表質問にスペシャルオリンピックスのことを盛り込ませていただいて、それに対して幸田局長から、都民、区市町村や関係機関に対し、積極的に大会の周知に努めてまいりますと、そういうご答弁をいただいてからすべてが動き始めたわけですけれども、それから今まで、今お話がありましたトーチランですとか、あるいは十二月の障害者週間に、啓発ポスターとしてスペシャルオリンピックスの公式ポスターの図案を採用していただいたり、あるいは、これもお話になりましたけれども、先月十八日、残念ながら石原知事は風邪でご欠席になってしまいましたけれども、東京都庁の都民広場でアテネからの聖火の到着式が開催されて、これはもう警視庁さんにも、また消防庁さんにも大変なご協力をいただきました。
 これ、考えてみると、去年の六月の代表質問の前の打ち合わせで、最初に福祉局の担当者の方に、スペシャルオリンピックスというのが来年長野であるんですけれども、これについて何とか東京都も協力してもらいたいんだけれども、そういう話をしたときに、きょとんとした顔をして、先生、これはパラリンピックとどう違うんですかと、こういうお話をいただいて、ああ、やっぱりだれも知らないんだなと。
 東京都の福祉の担当者ですら、このイベント、あるいはスペシャルオリンピックスの団体、活動、一切ご存じないんだなということを感じたことが忘れられないんですけれども、それから半年余りでこれだけのご協力をいただいたということについては、石原知事、また幸田局長を初め皆さんには本当に感謝をしております。
 繰り返しになりますけれども、スペシャルオリンピックスは一過性の大会ではありませんから、継続的、日常的な運動体ですので、今後とも継続的なバックアップをお願いしたいというふうに思っております。
 実は、私がスペシャルオリンピックスとかかわるきっかけとなりましたのは、NHKの記者として、長野局でオリンピックとパラリンピックの取材にかかわったからなんです。
 特にパラリンピックについては、中心的なメンバーの一人としてやらせていただきました。いろいろな経過があって、今はパラリンピックは知的障害の競技はないんですけれども、当時はパラリンピックにも、身体だけではなくて、知的障害の部、IDクラスというのがありまして、私も、野沢温泉村の施設に暮らしている荻原君というクロスカントリーの選手を追いかけて放送したりということをさせていただきました。
 そのとき、長野のパラリンピックにあわせてアートパラリンピックというイベントが開催をされまして、これは、障害者のアートで長野の町じゅうを飾ろうというイベントで、アートパラリンピック大賞という賞もありまして、戸隠村に住む倉石太次郎君というダウン症の少年がかいた一枚の絵がアートパラリンピック大賞に選ばれました。きょう、その作品と太次郎君が写っている絵をパネルにして持ってきましたけれども、こういう作品です。(パネルを示す)私、これを見て、非常に強い印象を受けたんです。ああ、これはすごいな、自分にはつくれない世界だなということを感じました。
 その後、倉石君は非常に成長しまして、立派な画家として成長して、これはニコライ堂という名前の、タイトルの作品ですけれども、ニコライ堂に見えるかというとあれですけれども、この色彩感覚は、私は非常にインプレッシブだというふうに思っています。
 そう考えると、アートパラリンピックというのは、パラリンピックを凌駕している。健常者と障害者が百メートル走をやって、障害者が勝つということは、残念ながら考えられないけれども、事アートに関してはそうではない。彼らは、私たちにつくれないものをつくれる。色彩感覚にしても何にしても、私たちには--よほど鋭敏な感性を彼らは持っていたりする。そういうことに気づかされました。その感覚は、私が障害者のことをとらえる上での、今でも一つの原点のようなものになっています。
 今回のスペシャルオリンピックスでも、開会式に出席した小泉総理が、知的障害者の作品を展示してあるスペシャルアートギャラリーに立ち寄り、いたく感動されたということが報道されておりましたけれども、やはりこれを見ても、知的障害者というのは、一方的に同情して、哀れんで手を差し伸べるような対象ではなくて、さまざまな可能性を持っている。彼らの内に秘めている力を引き出すお手伝いをするのが私たちの役割なんじゃないかなというふうに思うんです。
 芸術の面でいえば、仮に、彼らのつくる絵画や陶芸が私たちから見てすばらしいものであるとすれば、それは商品としても堂々と通用していくことが可能性としてはあり得るわけです。彼らがつくったものが売れれば、彼らの自信にもつながるし、経済的な自立にもつながる。これは一種の理想論ですけれども、今は、残念ながら、いいものでも正当な評価を受けられない。それが現実になっているわけです。
 だとすれば、より多くの人々が障害者のこういった作品に触れて、彼らの持っている力や可能性に気づいて、それを正当に評価する、そうしたきっかけをつくっていくことも必要なのではないでしょうか。そうした機会をつくっていくべく、都としても支援を行っていくことが必要と考えますけれども、いかがでしょうか。

○幸田福祉保健局長 文化芸術活動に取り組むことは、障害者の皆さんにとりましても、より豊かで潤いのある人生を送る上で大きな意義があると認識しております。
 一方、都民が障害者の個性豊かで感性あふれる作品に触れることは、障害者への理解が進む契機になると考えております。
 このため、都は、障害者の絵画、陶芸、書道、コンピューターグラフィックなどの作品を公募し、多くの都民が鑑賞できるよう、東京都障害者総合美術展を昭和六十一年以来、毎年開催してまいりました。
 この美術展にも、例年、すぐれた作品が数多く出展されており、障害者の文化芸術活動をより一層振興するため、鑑賞の機会をより多くの都民の皆さんに提供できるよう努めてまいります。

○柿沢委員 今ありました障害者美術展は、来年がたしか二十回目ということになるんだそうでございますので、この機会をとらえてぜひ、例えば、多くの人の目に触れるという意味では、この都庁の展望台であるとか、そうしたところにすぐれた作品を飾ってみる、そんなことも考えていいのではないかなというふうに思っております。
 アートパラリンピックやスペシャルオリンピックスにかかわることを通じて、私は、知的障害者の持つ非凡な感性や可能性を感じることができました。彼らを単にれんびんや庇護の対象として見るのではなくて、障害者が持っている可能性を引き出して、障害者が彼らの力で自己実現をしていく、そういうお手伝いをするのも、私は行政の役割の一つなのではないかというふうに考えます。
 この倉石太次郎君の絵を見て、知事も感じるところがあったのではないかというふうに勝手に思っています。石原知事のご所見を伺って、この項目の質問の最後とします。

○石原知事 人間は、どんなハンディキャップを負っていようと、やっぱりそれぞれ異なる個性、能力を持っておりまして、それを支援し、また、みずから努めることで、それが大きく開花して光り輝くものだと思います。
 その方もそうですけれども、私、昨年、名誉都民になった宮城まり子さんのねむの木学園の子どもたちがかいた画集を見せてもらって、彼女も、これをぜひ東京でやりたいと。これは非常に現代的、コンテンポラリーなアートに似ていて、そのうち現代美術館でやりましょうと約束しましたが、いずれにしろ、そういう支援というのはすべきであるし、また可能だと思います。
 まして、身体のハンディを、知能も含めて、強靭な精神力で克服してアスリートとしても活躍する姿というのは、見る者に大きな感動を与えることは間違いないと思います。
 都は現在、だれもが地域の中で人間として尊厳を持って自立した生活を送ることのできる、利用者本位の新しい福祉の実現を目指して改革を進めておりますが、今後とも、一人一人が持つ可能性を引き出せるように、障害者の自立に向けた取り組みを多角的に支援していきたいと思います。

○柿沢委員 今回は、障害者のスポーツ、また芸術活動について伺いましたけれども、もちろんこうした活動は、あくまで障害者が地域で自立した生活を営める基盤があった上でこそ可能になることだとも思います。その意味で、これからも知的障害者の生活の場であるグループホームの整備などに積極的に取り組んでいただくようご要望を申し添えて、次に移ります。
 次に、雨水対策について伺います。
 近年、都市型洪水が頻発しています。ヒートアイランド現象の影響などもあって、局地的な集中豪雨がたびたび発生するようになり、そうした雨水が、今はほとんどが地面が舗装されていますから、すべて下水道に流れ込んで、下水道の処理能力をオーバーして市街地にあふれる、こういうパターンであります。
 集中豪雨のときに浸水被害に遭うのは、地形的にちょっと低くなっているところと大体決まっていますから、そういうところの家は、大雨が降るたび毎回毎回浸水してしまうので、大変な苦労をしております。こういう被害を出さないためにも、雨水対策を早急に進めなければなりません。
 そこでまず、下水道局が進めている浸水対策の取り組み内容と進捗状況について伺います。

○二村下水道局長 一時間五〇ミリの降雨に対応する幹線やポンプ所などの整備を行いまして、平成十五年度末の進捗率は約五六%であります。
 繰り返し浸水被害を受けている地区につきましては、雨水整備クイックプランを進めておりまして、平成十五年度末までに、重点三十地区すべてで工事に着手し、そのうち十二地区が完了しております。
 また、小規模対応八十二カ所のうち八十一カ所、ポンプ対策九地区のうち三地区がそれぞれ完了しております。

○柿沢委員 昨年は、台風二十二号、二十三号が立て続けに東京を直撃して、私の地元、江東区でも、深川や亀戸などで大きな浸水被害が出ました。特に台風二十二号のときには、夕方、一時間雨量が七九ミリを記録した時間帯があって、広い範囲で浸水や道路冠水が起きました。
 深川地区では、このところ、集中豪雨による水害が多発しています。平成十二年の七月四日には、一時間八四ミリという猛烈な雨が降って、永代通りとその周辺の市街地がひざの上まで浸水したこともありました。頻繁に浸水被害が出ることもあって、私にも、住民の皆さんから、深川地区の雨水対策についてのお尋ねが大変ふえております。
 そういう意味で、現在、深川地区など、被害を軽減するため浸水対策事業を実施しているということですけれども、どのようなことをしているのか、また今後の見通しはどうなっているのか、伺います。

○二村下水道局長 深川地区などの浸水対策として、雨水の排水能力を増強するため整備を進めております永代幹線につきましては、既に本体部分の工事が完成し、暫定貯留管として活用しております。その貯留容量は、二十五メートルプール約八十個分に相当する二万四千立方メートルでございます。
 この永代幹線本体に雨水を取り込むための工事を現在、順次実施しておりまして、平成十八年度末に完了する予定でございます。
 これによりまして、浸水被害の軽減が図られるものというふうに考えております。

○柿沢委員 平成十八年末で、応急処置的な工事はこれで一応終了ということになるんだそうです。確かに、台風二十二号のときでも、水は出たんですけれども、水が引くのは早くなったという声を多く聞いておりますので、一定の効果は出ているのかなと私も思っております。
 ただ、地元に住んでいる身としては、それだけではだめで、やはり根本的に水が出ないようにしてほしい、そう思うのはやっぱり当然だと思うんですね。今お話のあったクイックプラン的な工事を着実に実施することはもちろんですけれども、浸水被害を完全になくすためには、将来的に計画をされている江東幹線ですとか江東ポンプ所、こういうところの整備もぜひ必要だというふうに考えております。
 財政事情が非常に厳しいことは承知をしておりますけれども、東京のまちを大雨から守り、だれもが安心して暮らしていけるようにするため、浸水対策の一層の推進を求めまして、次の質問に移ります。
 次に、公共事業のコスト縮減についての質問をいたします。
 先月十七日、中部国際空港がオープンしました。日本では三番目の国際空港であり、愛知万博の玄関口ともなる空港です。
 地元の愛知県では、中部国際空港、セントレアフィーバーみたいなものが起きていまして、オープン初日の来訪者は、想定の倍の十万人。レストランや展望ふろなどがある旅客ターミナルの四階のスカイタウンでは入場制限を行わなければならないほどだと、大変なにぎわいだそうでございます。
 この中部国際空港は、実は、公共事業のコスト縮減のモデルケースともなっております。当初の計画では、総事業費七千六百八十億円と見積もられていたのですけれども、最終的にかかった総事業は六千四百三十一億円。計画より千二百五十億円も安く、一六%も安く完成させることができました。日本の巨大プロジェクトで、予算を一千億円も余して完成をさせるということは、恐らく史上初めての出来事だというふうに思います。
 今までの公共事業は、予算を大幅にオーバーするということはあったとしても、大幅に余して完成をさせるなどということはあり得ない。というより、あってはならないということだったんじゃないかというふうに思います。その常識が今回覆ったということだと思います。
 中部国際空港は、民間が五割を出資した、国内初の本格的な民営空港です。中部国際空港会社の社長もトヨタから来ています。それだけに、これまでの公共事業の意識を徹底して排除して、事業の企画段階から第三者の専門家によるコスト管理チームを立ち上げて、徹底したコスト管理と削減努力を行いました。
 例えば予定価格--というか、中部国際空港会社の場合、制限価格ですけれども--の積算ですけれども、従来の公共事業なら、財団法人経済調査会や建設物価調査会が発行する物価本、これです、前にもお見せしたことがあると思いますけれども、これに載っている資材の単価、これを参考に積算をするわけですけれども、中部国際空港の場合、この物価本、全く使わないで、民間のコンサルタントが独自の資材価格調査を行って、より市場の実勢に近い単価を使って積算を進めたと。そうした努力の結果、財務省のヒアリングでは、国の資材調達価格よりも二割から四割も安く資材を調達していたということです。
 こうした中部国際空港の実績を踏まえて、総事業費七千億円とされる羽田空港の再拡張事業でも、今月二十二日の入札を前に、民間の企業経営者や会計士から成るコスト縮減検討委員会というものが設置されて、その提言の中でも、独自の資材単価調査による予定価格の適正化がうたわれています。
 さて、都では、平成十五年の第一回定例会における私の指摘も受けて、これまで先ほどの二つの財団が事実上独占をしてきた資材単価調査について、他の自治体に先駆けて、民間調査会社の新規参入を促してまいりました。先ほど来見てきた中部国際空港などの事例は、こうした都の取り組みが、基本的に間違っていなかった、方向性として間違っていなかったということを私は示しているというふうに思っております。
 それでは今後、都は、より適正な資材単価の設定に当たり、どのように取り組んでいくのか、伺います。

○松澤財務局長 公共工事の予定価格を適正に設定するためには、建設資材単価の的確な把握が必要でございます。こうした観点から、都としましては、引き続き、民間調査会社の参入を促進することによりまして、さらに精度の高い建設資材単価の調査を実施していく考えでございます。
 また、工事費を積算するための標準単価につきましては、建設資材の市場動向が早期に公共工事に反映できるよう、これまで一年ごとに全面改正してきていたものを、平成十七年度から、四半期ごとに改正することとしております。

○柿沢委員 さて今回、私は、一つ新しい提案をしたいと思っております。
 都の発注する公共工事にコンストラクションマネジメントを導入するということです。コンストラクションマネジメント、頭文字をとってCMといったりもしますけれども、建築工事に当たって、発注者の立場に立つ代理人、第三者を介在させて、業者の選定から価格交渉、資材調達、施工管理など、工事、コスト、工程をまとめて管理をさせるという手法です。
 この代理人、第三者は、コンストラクションマネジャー、頭文字をとってCMrというふうに呼ばれます。これまでの日本の建築工事というのは、大体ゼネコンが一括請負方式で受注するのがほとんどだったわけですね。ゼネコンに幾ら幾らでもう任せたら、その先はどの下請を使って、どれだけのコストで工事をしているのか、ゼネコンにはどれだけのもうけがあって、下請にはどれだけもうけがいっているのか、発注者には、その先はうかがい知ることができなかったわけです。
 また、工事費もどんぶり勘定で、その工事費が妥当なのか高いのか--大体高いんですけれども、発注者にはわかることがほとんどできなかったわけです。
 今回ご提案をしたいと思っているCM方式では、今いった第三者、代理人、CMrが発注者の代理人として、工事に関する詳細な内訳明細書をまずつくります。その建物を完成させるのに、どのような工種があるか、どのような工事が必要か、そして資材でいえば鉄筋はどれだけ必要で、コンクリートはどれだけ必要で、そうしたことを内訳明細書に詳細に盛り込んでいく。受注を希望する建設会社は、それをもとに工事費を積算して、CMrは提出された見積書を検討して、工事の発注先を決めていく、そうした流れであります。
 CMrは、元請のゼネコンだけではなくて、下請となる専門工事会社、サブコンにも幅広く、直接見積参加を求めていきます。元請のゼネコンより安い見積もりを出してきた専門工事会社があった場合、CMrが元請のゼネコンと交渉して、専門工事会社を入れかえる、要するにゼネコンが連れてきた系列の協力会社じゃなくて、もっと安い提案をしてきた系列外の業者とゼネコンを組ませて、専門工事の費用を安くする、そうしたことを専門工事会社の入れかえをCMrによって行っていくわけです。
 これによって、工事費の七割から八割を占める専門工事で、価格競争による入れかえを行っていくことで、ゼネコンとその系列の下請会社という一つのまとまりによる、ある種の閉じた世界による工事費のつり上げみたいなものを許さない仕組みになっています。
 工事に当たっても、CMrは発注者の立場に立って、設計や施工方法の見直しを提案し、コスト削減につなげるバリューエンジニアリング、VEを行います。VEによるコスト削減の利益は、その提案をした、例えばCMrだったり、ゼネコンだったり、下請だったり、いろいろあるわけですけれども、提案をしたところに、それだけ浮いたコストの半分をバックするという形で、VE提案をした、バリューエンジニアリングを提案した業者にインセンティブが受けられるような仕組みになっています。
 こうしたCM方式、民間の建築工事では大変急速に広まりつつあります。建設経済研究所の調査によると、今いったCMの方式を実際に採用したか、検討している、あるいは情報収集している民間の大手の発注者は七割に上っているそうです。CM方式を採用することで、建築コストを安く上げることができる、建築工事の内容によっても違いますけれども、会社によっては、大体二〇%安くなるとか、三〇%安くなるといっているところもあります。
 そんなこともあって、民間では急速にこのCM、コンストラクションマネジメントの方式というのが広がりつつあるわけでございます。民間では広まりつつあるCM方式ですけれども、今のところ公共事業の分野では採用例は少ないのが現状です。
 しかし、公共事業こそ、それこそどんぶり勘定の工事総額で落札業者が決められて、しかも落札価格はいつも予定価格ぎりぎりで、談合を疑わせるような高い落札率ばかり、そういう今の公共工事こそ、CMによって、さっき内訳を詳細に出すといいましたけれども、コスト構成を透明化して、幅広い競争によって適正な価格にしていく、そういう必要があるのではないかというふうに思います。
 最近では、公共工事にCMを取り入れる自治体も出てきています。例えば、佐賀市では、小学校の改築に、先ほど紹介したような形のCM方式が採用されて、希望社というCMrが、エレベーターなどの業界の談合体質と非常に格闘しながら、実に七割の工種について、ゼネコンが指定した専門会社から、もっと安い提案をしてきた専門工事会社に入れかえをして、その結果、当初の設計金額、七億千五百八十一万円に対して六億九百七十三万円で工事が完成した。およそ一五%、一億円ものコストの低減が図られたという事例が出てきてございます。
 こうした事例を踏まえて、コスト削減の観点からも、東京都もCM方式を採用してみたらどうかというふうに考えますけれども、都がCM方式を、コンストラクションマネジメントを採用するに当たって、どのような課題、問題があることを考えていますか、伺います。

○松澤財務局長 ただいま委員の方からお話のありましたコンストラクションマネジメント、いわゆるCMと呼ばれるものは、一般的には、通常の元請企業に一括発注するものと違いまして、専門工事ごとに、それぞれの企業に発注し、CM会社がマネジメントを行う、そうした方式でございます。この方式は、工程管理、品質管理、コスト管理など、マネジメントの手法によりまして、さまざまな形態がございます。
 先生からご紹介の佐賀市の例では、このうちコスト管理を中心とした手法を採用しているものでございます。この例でのCM方式の課題や問題を検証しますと、コスト縮減が図られるメリットがございますが、一方で、特定のCM会社を特命随意契約で選定しており、選定に当たっての基準が必ずしも明確でないこと、また、発注者である市と直接の契約関係にない下請専門会社とCM会社とが価格交渉を行っていることなど、実施に当たっての課題があるように思われます。

○柿沢委員 課題はあるんです。あるけれども、何としても、コストの問題で考えれば、やっぱり私はやっていくべきじゃないかなと思っております。
 都は多種多様な公共工事を発注していますので、民間建築では相当な実績を上げている、このCM方式ですから、都の発注する公共工事に試験的に採用してみて、例えば従来の方式と同種の工事で、どれだけコストが変わったか、どれだけ違いが出たか、そうしたことを比較考量してみたらいかがかというふうに考えますけれども、都でCM方式を今後検討することはできないか、伺います。

○松澤財務局長 CM方式につきましては、ただいま申し上げたとおり、さまざまな形態がございますが、コスト構成の透明性が高まることについては、共通の利点となっております。
 しかし、コスト縮減の面から見ますと、それぞれ自治体の採用するマネジメントの手法によりまして、その効果も異なり、場合によってはコスト上昇につながった自治体もあるやに聞いております。
 このため、この方式を採用して実施していくには、都とCM会社とのリスクをどのように分担するのか、あるいはCM会社を選ぶ基準をどうするのか、また、公共工事の採用事例が極めて少ない中で、CM方式に適する工事の種類の選択など、さまざまな課題を解決する必要がございます。
 今後、都としましては、それらの課題について幅広く研究をしてまいります。

○柿沢委員 佐賀市のケースは、公共工事を建築の専門家に第三者として見てもらいたいという、木下敏之佐賀市長の強い意思とリーダーシップによって実現をしました。その結果、各社が業界の秩序に従って、談合を疑わせるような高い落札率で受注機会を順々に分け合ってきた、そういう公共事業の世界で、ゼネコンの系列にとらわれないで、幅広い価格競争を行って、いいものを安くつくるということが、しかも一億円も安くですよ、実現したわけです。
 そういう意味では、こうした新しい先駆的な案件も出てきている中で、いろいろな課題はあるでしょうけれども、トップの意思で、CM方式に限らず、さまざまなコスト削減の取り組みを試行してみる。それでうまくいったものをどんどんどんどん広げていって、結果として、公共工事をもっと適切なコストで--適切なコストだったら、もっと、余った部分、事業の発注量をふやすこともできるわけですから、そうした取り組みを試行してみることは必要ではないかと思います。
 そういう意味で、公共工事のコスト縮減に向けた石原知事の決意を伺って、次の質問に移りたいと思います。

○石原知事 私、まだCM方式の実態、実績というのをつまびらかにしませんが、いずれにしろ日本の流通の機構というのは奇奇怪怪でありまして、いろんな問題があると思います。
 ただ、この間、近藤委員からも指摘がありましたが、非常にマンネリ化している随意契約というのは論外でありますけれども、例えば、そういうものの試算というのを民間に任せて、果たして民間が信頼できるかとなると、この間の三井物産みたいにろくなことしない。実際にこの間、何年前でしたか、二十三区の東の方で、駅前の工事で崩落を起こした熊谷組なんというのは、あれで結局社運傾いて、今どうなのか知りませんけれども、あれだってかなりの手抜きをやっているわけですね。要するに落札した値段が安いために、その穴埋めをするために。これはもうどこのゼネコンでもやっている常識だそうでありますが、そういったものを見破る能力というのはなかなか都庁が備えにくいし、また、それをだれに任せるかということも、この選択も非常にいろんな問題があると思います。
 いずれにしろ、そのため、公共事業の計画から施工、維持管理までの各段階で、民間の技術力の活用、民間コストとの比較など、創意工夫を凝らして、全力を挙げてとにかくコスト削減に努めていきたいと思いますが、小さな例ですけど、東村山でやっている戸建ての住宅なんかは、東京都がとにかく工務店になったからあれだけでできるわけです。銀行もつくりましたので、そのうち、業を煮やしたらゼネコンでもつくりますよ。

○柿沢委員 大変な発言が出てまいりましたけれども、東村山の話は実は今しようと思っていたんです。とにかく建築費はリーズナブルに、もっと二割、三割安くできるんです。そういう意味で、ぜひ今後もお取り組みをしていただきたい。
 また、さっきの、民間をどう、手抜きをしていないか監視をするか、そういう技術と経験とを持っている人をどうやって、皆さんの身内にもいらっしゃるでしょうけれども、経験を持った第三者的な立場の民間をどう使っていくか、そういうことも仕組みとして考えてみる必要があると思います。
 時間がないので次に行きます。次は、後発医薬品の使用促進です。
 後発医薬品は、新薬の特許が切れた二十年から二十五年後に、安全性など再審査を終了した上で、他のメーカーから発売される類似医薬品。有効成分は、新薬として開発された先発品と全く同じなんですけれども、効能や効果は変わらないんですけれども、一方で開発コストが抑えられることから、新薬と比べて薬価が二割から八割安い。例えばコレステロールを下げるお薬で、成分名でいうとプラバスタチンナトリウムというのがありますけれども、先発医薬品のメバロチン、三共製薬がつくっているものですけれども、一錠百四十五円。それが後発品になると、プラバチンという沢井製薬がつくっているものがありますけれども、一錠八十八円。四割も安くなる。同じ効き目でですよ。そういうものがあるわけです。これが後発医薬品というものです。
 日本の総医療費の約三十兆円のうち、薬剤費が六兆円を占めているわけで、医療費に占める薬剤費の割合は二〇%にもなって、世界的に見ても、こんなに薬剤費の高い国は日本以外見当たらないといわれています。そういう意味で、医療費の中でこれだけ大きな割合を占める薬剤費の低減というものが、医療費全体の抑制につながることは間違いないと思います。
 残念ながら、日本における後発医薬品のシェアは、金額ベースで四・八%。ドイツの二九%、イギリスの一八%、アメリカの九%と比べると、いまだ低い水準にとどまっております。これは、日本でも仮に後発医薬品の使用を促進して、欧米並みのシェアに高めていったら、計算上は、六兆円の薬剤費が一兆円も節減できるということになるわけです。ところが、日本の医療機関では、先発医薬品への志向が非常に強くて、使用量は非常に少ないというのが現状です。
 私は三年前の厚生委員会において、いち早く後発医薬品を取り上げて、都立病院での使用促進を求めました。当時の櫻井病院経営本部長から、患者中心の医療の観点からも、使用促進について積極的に検討していくという答弁をいただいておりますけれども、都立病院における後発医薬品の使用促進の状況はどうなっていますか。

○押元病院経営本部長 都立病院ではこれまでも後発医薬品の使用促進に努めてまいりましたが、平成十五年度の後発医薬品の採用実績は、購入金額ベースでは約四億六千万円でございまして、処方薬の三・四%を占めております。これを前年度と比較いたしますと、二割近い大幅な伸びとなっております。

○柿沢委員 都立病院での後発医薬品のシェアが金額ベースで三・四%というご答弁ですけれども、確かにふえているんですけれども、世界的に見ておくれている日本の全体の数字が四・八%ですから、三・四%の都立病院の数字というのは、日本のおくれている数字よりもさらに低いわけで、もう少し頑張ってもらいたいというふうに思います。
 後発医薬品が日本でなかなか使われない理由の一つとして、日本では薬剤処方は銘柄名でするのが一般的だという問題があります。要するにお医者さんは、この薬はこの名前というのは、一番ポピュラーな名前で、製品名で覚えていて、その薬の一般名はなかなか知らない。先ほどのメバロチンでいえば、先発医薬品のメバロチンの名前は知っていても、その一般名のプラバスタチンナトリウムというのは知らない。後発品の製品名のプラバチンなんというのはなおのこと知らない。だから、処方せんにメバロチンと書いちゃうわけですよね。医師が書いた処方せんというのは絶対ですから、それだと、結局、先発医薬品のメバロチンが処方されることになってしまう。そうしたことから、後発医薬品の使用促進が進まないというのが日本の現状なわけです。
 そこで、私は、二年前の厚生委員会で、都立病院に導入される病院情報システム、電子カルテのシステムですね、ここで薬剤の処方をオーダリングをするときに、例えば今一番ポピュラーな、さっきのメバロチンを選んだ場合に、それが即座に一般名に置きかわって処方されるとか、あるいは、同じ効果を持つ後発医薬品も含めて、リストがばあっと出てきて、その中から選べるようになる、そうしたシステムをつくれば、後発医薬品の使用促進につながるんじゃないかという提案をしました。病院経営本部からは、そうした対比が可能となるシステムを検討しているというご答弁をいただきました。これが実現すれば、全国の公立病院でも初めての画期的な試みになるというふうに期待しておりましたけれども、現在、この後発医薬品の使用促進を図るためのどのようなツールを構築しようとしているのでしょうか、伺います。

○押元病院経営本部長 現在、後発医薬品の処方が容易に行えるよう、後発医薬品をあらかじめコンピューターに登録をしておきまして、先発医薬品を入力いたしますと、該当する後発医薬品のリストが同時に画面に表示され、選択が可能となるシステムを構築中でございます。

○柿沢委員 ということだそうでありまして、これは全国の公立病院でも初めての非常に画期的なあれだと思います。この後発医薬品の使用促進ツールはいつ導入するのか、また、今後どのように展開をするのかということを伺います。

○押元病院経営本部長 ただいまお話しのシステムは、平成十七年度の早い時期に稼働させたいと考えております。
 今後、このシステムを、電子カルテを含みます新たな病院情報システムを導入しております都立病院に順次導入し、後発医薬品の使用促進をより一層拡大をしてまいります。

○柿沢委員 こうしたことをやっていくことによって、電子カルテシステムは患者さんの前で見せることもできるわけですから、患者さんに、同じ効き目で安い薬もありますけれども、どっちを選びますかということを問いかけることもできる。そういう意味では、患者中心の医療という東京都の病院改革の目的にもつながっていくというふうに思います。
 今回の後発医薬品の使用促進ツールは、薬剤費の縮減、ひいては膨張する国民医療費の抑制に大いに役立つものと期待をしております。
 ちょっと時間がなくなりまして、一つ項目ができませんけれども、非常に残念ですけれども、若干時間を余して、私の質問は終了とさせていただきたいというふうに思います。
 ありがとうございました。(拍手)

○富田副委員長 柿沢未途委員の発言は終わりました。

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