東京都議会予算特別委員会速記録第四号

   午後三時十七分開議

○野田副委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 吉野利明委員の発言を許します。

○吉野委員 ことしの新年会における来賓の皆さんのあいさつは、どなたも昨年の異常気象、震災被害などに話が及び、自然の前での人間の無力さを認識させられたという趣旨の話が大半でした。自然との共生は、我が党もかなり前から主張してきたところではありますが、改めてその大切さと対応の難しさを認識させられた年であったと思います。
 そうした中、私は、もう一つ大きな出来事としてとらえていた、社会環境の悪化に重点を置いたあいさつをし続けました。親が子を、子が親を殺したり、わけのわからない殺人事件が起きたり、愉快犯の放火があったり、学校の安全が脅かされたりで、いわゆる外国人による凶悪犯罪とは別の形で、日本の社会は混乱のきわみにあると。
 戦後の日本社会は、かつて持っていた、伝統や文化の積み重ねによってつくられ受け継がれてきた日本人としての誇りや美徳、家族のあり方などがすべて否定され、自己主義を中心として、おかしな社会になってしまった。
 石原知事の発言がよく右寄りだといわれるけれども、実は社会全体がずれてしまって、かつては日本人として当たり前であったような知事の考え方が右寄りと見られるようになってしまったのではないか。
 今もう一度、社会全体のあり方をもとに戻す必要があり、ことしはもうぎりぎりの年だと思う。現状のままでは、次代を担う子どもたちを安心して社会に送り出すことができないし、胸を張って社会を手渡していくことはできない。少し大げさないい方をすれば、我々親の世代が自分の命を削ってでも、現代社会における新しい規範を確立し、落ちつきのある社会の創造に向けた取り組みを始めなければならないときであるというふうなあいさつをいたしました。
 式典が終わってすぐ、ある政党の執行委員長という方が異論を唱えてきましたが、多くの方から賛意をいただきました。
 では、どういう取り組みをしていけばいいのか。いろいろな書物を読み、人の話を聞いたりしましたが、これだという解決策はいまだに見当たりません。男女の関係、親子の関係、教師と生徒の関係、それぞれの中で見直すこともあるでしょうし、教育基本法の見直しの中で取り組むべき事柄もあると思います。
 いわれて久しい話ですが、経済成長に反比例して、道徳的な荒廃が目立ってきました。衣食足りて礼節を知るという言葉がありますが、日本人はまさに、衣食足りて礼節を失ってしまったのであります。人間の社会が動物へと戻りつつあるのではないか、いや、むしろ動物の方が本能に基づいた親子の情愛はしっかりしているのかもしれない。人間が誤った認識によって自己主張が強くなって、和をもってたっとしとした日本人の美徳を否定し、破壊をしてしまったがゆえに、動物以下の行動に走る人たちが増加してしまっていると思います。
 先般の学校への侵入者による先生の刺殺事件の際、ある学校の校長が、安全はただではなくなったということですといっていたのが印象的でありました。水と空気がただであった時代は終わり、学校の安全までもがコストを要する時代になってしまったのです。
 いずれにいたしましても、私がこのような危機感を持っている日本社会の現状に対して、知事はどうお思いでしょうか。

○石原知事 いろいろなご指摘は、まさにすべて正鵠を射たものだと思います。私は全く同感でございました。
 私たちの生きているこの時代に、一体何が本当の価値であるかということを、私たちはもう一回考え直す時期に来ていると思います。
 今までの歴史の中では、宗教というものは、いろいろな大きな意味を果たしてきたと思いますが、今の中近東、パレスチナ、イラクなどで行われている同じイスラム同士の、要するに派閥同士の殺し合いというのを見ますと、宗教というものが、人間を本当に救済する可能性を失ってしまったんじゃないか。まさに、ニーチェじゃありませんけど、神は死んだという感じが否めません。
 私は、いささかセンチメンタルになるかもしれませんけど、昨年の暮れに、暮れには定番の、どこかの局が必ずやる忠臣蔵を見まして、松平健の内蔵助でしたけれども、あれを見て、まさに定番の番組で定番の涙を流しましたが、ああいう時代に、しかも、将軍が生類哀れみの令などという非常に偽善的なものを発布したけども、市民、国民はそれを鼻で笑って見てて、しかし、四十七士の義挙というものを見て、そこの中に、時代や立場を超えた、いつの時代でもどんな立場でも貫いてあり得る本当の価値というものを、江戸の人たち、日本じゅうの人たちが感じとって、それを、幕府は禁じたようですけれども、仮名手本忠臣蔵という偽名を使っての芝居に仕立て、しかも、後から後からそれに付随する、いろいろなおもしろいエピソードが芝居になりました。これは全部作り物ですけども。
 しかし、それだけあの歴史的な出来事が、人間の責任であるとか相互の信頼であるとか、あるいは名誉であるとか、そういう垂直な価値というものをとにかくとらえ直そうというよすがに、あの忠臣蔵というものを礼賛したと。
 そういう意味で、私たち、そういう絶対的な価値というものを見定めて、さらに、それをいかに今の若い人たちに伝達していくかということを真剣に考えなくちゃいけないと思っております。

○吉野委員 社会の混乱の要因というのはいろいろあると思いますけれども、例えば卒業式の時期になると、国旗・国歌に対して立たない、歌わないというようなビラが、こういうのがありますけれども、一部のグループによって配られます。内容を見ますと、日の丸が平和の象徴となることを恐れるかのように、あえて戦争のイメージへとつなげようとする記述があり、社会の崩壊を目指して、生徒を混乱させる以外の何物でもないと思います。
 折しも、ことしは戦後六十年に当たります。もとより、戦争の悲惨さを次代に伝えていくことは大切であり、二度と戦争を起こさないための取り組みを否定するものではありませんが、いたずらに日の丸に戦争のイメージを重ねようとする行動は認めることはできません。
 私は、日本国憲法は思想、信条の自由を保障しておりますが、日本国民が国旗・国歌を否定するなどということは想定していなかったのではないかというふうに思います。
 石原・ファシストに--これは私がいうんじゃなくて、ここに書いてあるんですが、石原・ファシストに教育現場をじゅうりんさせるなという、こういうグループとこそ、我々は今きっちりと対峙し、子どもたちの混乱を取り去り、社会の安定をつくり出していく強い決意が必要と考えますが、知事、もう一度お考えを伺います。

○石原知事 世の中にはいろいろな考え方があるでしょう。また、あってしかるべきだとは思います。
 例えば、非常に現実性が濃くなっている直下型の地震というものに備えて、私が就任してから、自衛隊を使っての大演習をやりました。銀座を災害対策用の車両が、これはもちろん機関砲は積んでおりましたけど、走る写真を、朝日新聞などは、銀座に戦車という誇大被害感というんでしょうか、そういうキャプションで掲載していましたけど、さすが二年目からは、都民の動向、意向というのを反映して、そういうばかなセンセーショナルなアジテーションはなくなりましたが、いずれにしろ、ご指摘の国歌・国旗の問題ですけれども、私は、都の教育委員会が卒業式、入学式において行っている指導は、国旗・国歌の意義を児童生徒に理解させて、国際社会に生きる日本人としてのアイデンティティーというものを育てていく一つのよすがとして行っているものだと思っております。
 これに対して一部の人たちが、ご指摘のように、国歌・国旗に戦争のイメージを殊さら結びつけて、非常に自虐的な歴史観で、要するに教育の現場を混乱させていることは、これは非常にためにする、むしろ卑劣な行為だといわざるを得ないと思います。また、こういった行為が横溢するのも、それぞれ理由があるでしょうが、しかし私たちは、こういうものに抗しながら、やはり正当な、先ほど申しましたけれども、国歌に対する愛着であるとか同胞の意識とか、そういう、私たちが国家として、国家社会として、民族として自立を保ちながら栄えていくための最低必要条件というものを培っていく必要が絶対にあると思います。

○吉野委員 今般の代表質問、一般質問の中でも、学力低下に関する質問の中で、知事は、小中学校で知識の詰め込みを、高校では感性を養うような体制をという認識を示されました。今回の私の質問は、学力の問題は別として、社会の構成員として育っていく子どもたちにどういう社会規範を教えていくべきかという点に限りたいと思っています。
 道徳教育をしっかりすればそれでいいのか、自分が生活する地域や社会への帰属意識を醸成し、日本国民としての自覚を高める取り組みをどう進めていくのか、あるいはまた、社会の基本単位としての家族生活の充実をどう図っていくのか、課題は山積しています。
 電通顧問の福川伸次氏は、人間力こそが二十一世紀の国力を左右するといいます。また、最近、日本では教育水準の低下や倫理と秩序の乱れが危惧されているが、社会の健全性と持続性の維持は人間力培養の基礎であるとし、政治も、教育機関も、企業も、家庭も、人間力こそが国力の源泉であることも認識し、その創造と発揮を目指すべきであると述べています。
 このままの社会の混乱を放置すれば、国力の低下、国際社会における競争力の低下へとつながる危機的状況であるといえます。
 そこで、教育長に伺います。かつて日本の子どもたちは、他人に迷惑をかけてはいけないということを社会への第一歩として教えられました。中国が、他人にだまされるなということから教え始めるのとは大違いで、まさに日本人の美徳の大切な一つでありました。しかし、それがいつの間にか死語になってしまった感があります。
 今、子どもたちが社会の形成者として、学校で学んだ社会規範に基づいた行動をとることができるようにするために、小中学校ではどのような指導が行われているのか。また、あわせて成果と課題、今後の充実方法を伺います。

○横山教育長 これまでも各学校では、総合的な学習の時間や学校行事における社会奉仕体験活動、あるいは家庭や地域と連携した道徳授業地区公開講座、さらに地域社会や企業等の協力を得て行う職場体験などを実施しまして、次代を担う子どもたちに対し、社会生活を送る上で当然必要とされる正義感や倫理観、思いやりの心の育成に努めてまいりました。
 しかし、依然として、ご指摘のとおり、青少年の問題行動が頻発していますことから、都の教育委員会としましては、今後とも、青少年育成総合対策推進本部と連携をしまして、道徳教育や社会奉仕体験活動等の一層の充実を図りますとともに、新たに規範意識を高めるための道徳教育用の教材作成を行いまして、社会の一員としての自覚を持った児童生徒の育成に努めてまいります。

○吉野委員 ぜひしっかりとした取り組みを今後もお願いをしておきます。
 次の質問に移ります。
 昨年を振り返りますと、先ほども申しましたけれども、世相をあらわす漢字に「災」という文字が選ばれましたように、集中豪雨や相次ぐ台風の上陸、新潟県中越地震など、大規模な自然災害が頻発しました。とうとい命が奪われ、人々の生活基盤が破壊され、避難生活が長期化するなどの惨状を目の当たりにし、私は、災害に対する日ごろからの備えという基本的なことの大切さを改めて痛感した次第であります。
 中でも、十月二十三日に発生しました新潟県中越地震における下水道施設等のライフラインの甚大な被害と復旧の困難さを伝え聞きますと、区部と異なり、都の管理する流域下水道と市町村が管理する公共下水道に分かれている多摩地域の下水道施設の震災対策が十分な水準にあるのか、危惧しているところであります。
 そこで、多摩地域における下水道施設の震災対策の課題と取り組み内容について、何点かお伺いします。
 新潟県中越地震では、地盤の液状化による下水道管渠の破損やマンホールの浮上、流域下水道処理場の損傷など、大きな被害が生じたことが報道されていましたが、その後の復旧状況はどのようになっているのでしょうか。お伺いをいたします。

○二村下水道局長 新潟県中越地震の復旧活動におきましては、都を初め、多くの自治体や民間事業者の支援活動が行われてきました。下水道台帳の整備などが十分でない中、被災状況の確認や管渠内の土砂の排出、処理施設の補修などの応急復旧作業、それから、国庫補助金を受けるために必要な災害査定の設計書の作成が進められてきました。
 その結果、下水道の機能が一定程度確保されるとともに、雪解け後の本復旧の見通しが立ったものというふうに考えております。

○吉野委員 復旧の見通しが立ったという点では、これまでの精力的な支援活動の大きな成果として私は高く評価するものでありますが、改めて被災状況を振り返りますと、被害を最小限にするための下水道施設の耐震化といったハード面と、復旧に向けた支援体制の整備などソフト面の対策が重要であると思います。
 下水道局の支援活動を通じて得られたさまざまな教訓を踏まえたとき、多摩地域の下水道施設の震災対策の課題が浮かび上がると思いますが、まず、都の管理する基幹施設について、ハード面の課題とその取り組み状況についてお伺いをします。

○二村下水道局長 都の基幹施設の耐震化についてでございますが、兵庫県南部地震後に設定されました耐震基準に基づきまして、処理機能の確保という観点から施設の補強工事等を進めてきております。
 また、災害時におきます水再生センターの機能を相互にバックアップするため、多摩川を挟みまして対岸に位置する立地条件を生かして、八王子と多摩川上流の二つの水再生センターを結ぶ連絡管を整備中でありまして、十七年度末までに完成する予定でございます。

○吉野委員 多摩の市町村においては、一部の市を除き、全体としては下水道管渠の耐震化がほとんど進んでいないと聞いています。下水道局の持つ豊富なノウハウを提供することが有効な施策であると思いますが、いかがでしょうか。

○二村下水道局長 大規模地震の際には、下水道施設の損傷により、し尿の受け入れが困難になることから、被災市民の生活を確保するため、避難場所周辺の下水道管渠の耐震化を優先的に進めるなど、重点的、計画的な取り組みが効果的であると考えております。
 局といたしましては、仮設トイレ整備計画など、区部の震災対策について情報を提供しますとともに、マンホールと下水道管渠との接続部を柔軟な構造に取りかえるなどの耐震化に関する技術の支援についても積極的に行ってまいります。

○吉野委員 市町村からすれば、技術者の不足など、さまざまな制約もあり、耐震化対策が進んでこなかったという事情もあろうかと思います。しかし、東京直下型地震の危機が叫ばれている今日、耐震化への取り組みが滞ることは、到底容認されることではありません。市町村の耐震化対策が少しでも進むよう、ただいま答弁にありました技術支援などを今まで以上に積極的に行っていただくことを要望いたします。
 次に、復旧に向けた支援体制の整備など、ソフト面の取り組み状況についてお伺いいたします。

○二村下水道局長 兵庫県南部地震の教訓から、大都市間や都道府県間の支援体制は整備されてまいりましたが、新潟県中越地震のような広範囲にわたる市町村が被災をした場合の体制は十分ではなかったというふうに考えております。このため、多摩地域の市町村と協議を重ねまして、今年度末には震災時における相互支援連絡体制の構築が図れる見通しでございまして、今後、これに基づく訓練も実施してまいります。
 また、復旧作業に不可欠な下水道台帳につきましても、その整備を促進するため、市町村と協同して電子データ化に着手しておりまして、今後二年間をかけて七割程度の市町村に広げていく予定であり、さらに残る市町村へ参加を働きかけてまいります。

○吉野委員 多摩地域における下水道施設の震災対策、特に市町村のそれは、決して十分な水準にあるとはいえません。各市町村が主体的に取り組まなければならないのはもちろんですが、新潟県中越地震の被災を貴重な教訓として、都においても、関係局相互の連携を一層密にするとともに、市町村と協同して、多摩地域の下水道施設の震災対策の充実に向けて、さらなる努力を重ねていただくことを強く要望して、次の質問に移ります。
 都市計画審議会答申、東京らしいみどりをつくる新戦略が出されてから一年が経過しておりますが、これに関連しまして幾つか質問させていただきます。
 都民にとって快適な生活環境を形成するとともに、ヒートアイランド対策や防災対策などといった視点からも、都市における緑の役割はますます重要になってきております。かつて、多摩地域は武蔵野の面影が残る緑豊かな地域であり、子どもたちは自然の中でさまざまな遊びを考え出し、日の暮れるまで遊び続けたものでしたが、近年、屋敷林や雑木林が相続で失われたりするなど、身の回りの緑は依然として減少しているように思います。
 例えば、三鷹市では、平成九年から十四年の五年間で緑被率は約二四%から約二一%へと減少し、既存の緑の一割以上が失われたことになります。
 一方、公共空間の緑を見ましても、東京の一人当たりの公園面積は現在五・四平方メートルであり、ニューヨークの一人当たり約三十平方メートルや、ロンドンの約二十七平方メートルなどといまだに大きな隔たりがあります。
 都では、これまでも、公園の整備はもとより、街路樹の整備など公共の緑づくりに長年努めてこられたものと思います。民間に対して、例えば六本木ヒルズの毛利庭園のような緑豊かなオープンスペースの創出を誘導したり、条例により屋上緑化の基準を強化したり、各種の緑地保全制度により既存の樹林地保護などにも努めてこられました。それにもかかわらず、東京の緑は、さきに述べたような状況に置かれております。
 このような東京の緑を取り巻く状況を踏まえ、東京の緑づくりの現状についてお伺いをいたします。

○梶山都市整備局長 お答えいたします。
 東京の緑は、お話のように、多摩部において民間の開発などにより農地や樹林地が失われるなど、依然として減少しております。公共がつくる緑につきましても、これまで公園、緑地や街路樹などの整備に努めてまいりましたが、未整備の都市計画公園、緑地が多く残っており、供用率は四一%にとどまっております。
 また、緑の持つ多様な機能を最大限に発揮させるためには、緑の連続性が重要でございますが、拠点となる公園、軸となる道路や河川、民間開発により創出される緑、これらの連携が希薄であるため、ネットワークの形成が不十分でございます。

○吉野委員 私もそのとおりだと思います。いわゆる質、量はいうに及ばず、ネットワークなどの面でもまだまだ不十分なのではないかと思います。
 水と緑のネットワークづくりを効率的、効果的に誘導するために、ぜひとも総合的、横断的な取り組みが必要であると考えます。さきの答申では、都が先行すべき五つの取り組みが提言されております。これを受け、都が取り組むべき新たな施策の一つとして、緑の新戦略ガイドラインを策定中と聞いておりますが、このガイドラインのねらいについてお伺いします。

○梶山都市整備局長 緑の新戦略ガイドラインは、公共はもとより、都民や民間事業者などの緑づくりを誘導していく指針となるものでございます。このガイドラインの中で、東京が目指すべき緑の将来像や今後確保していく緑の量、さらに具体的な緑づくりの手法などを示し、行政と民間とが適切な役割分担のもと、多様な緑づくりを推進してまいります。これによりまして、公共が連携してつくる骨格的な緑と民間開発の誘導などによって生み出される緑が相まって、水と緑がネットワークされた風格都市東京の実現を目指してまいります。

○吉野委員 次に、ガイドラインの検討内容についてお聞きします。
 緑の減少が続いている中、緑の確保は重要な課題であります。都市づくりビジョンや東京らしいみどりをつくる新戦略では、二〇二五年までに、みどり率にして、区部では現状値二九%の二割増しを、多摩部では八〇%の現状維持を緑の確保目標に掲げています。
 そこで、ガイドラインでは、この目標に向けてどのように緑づくりを誘導していくのか、お伺いします。

○梶山都市整備局長 ガイドラインでは、緑が持つ多様な機能を最大限に発揮させるため、公共が計画的に緑の確保に努めるとともに、民間の開発に際しましては、緑の連続性や配置に着目し、適切に誘導することを目指しております。例えば、都市計画道路を軸とした道路内の緑と公園などとの緑のネットワーク化や、地区計画の活用による沿道建物のスカイラインへの配慮など、良好な町並み景観の広がりを環境軸として位置づけ、良質な緑の形成を誘導してまいります。

○吉野委員 ぜひ街路空間のみならず、沿道においても緑が生み出され、緑の空間が広がることを期待しております。
 私自身、十数年前に、東八道路に面しまして、五メートルほどセットバックさせてビルを建てたことがございました。その前面に緑を植えました。ほかの方々もそれに続いてくれることを期待したんですが、ただ、残念ながら、その期待は外れてしまいました。道路の端から奥行き三十メートルが六〇の二〇〇、その裏は四〇、八〇。ここで五メートル下がると二十五メートルしか使えない。大方の道路というのは、道路の縁から奥行き二十メートルが六〇の二〇〇。ここで五メートルセットバックさせたら、十五メートルしか使えない。この状況をどうにかしていかないとならないというのが課題だと思います。セットバックしても、その分の容積が十分に使え、建物を建てやすくなるような手法があれば、少しずつ連続していくのではないかと考えます。そのようなインセンティブを得られる仕組みについても、今後、ぜひ検討をお願いしたいと思っております。
 さて、ガイドラインのねらいでもある水と緑のネットワークづくりには、公共によって揺るぎない緑の拠点となる空間を計画的につくり出すことが重要であると考えます。
 そこで、次に、都市計画公園、緑地の整備方針を策定中と聞いておりますが、整備方針とはどのようなものか、その内容についてお伺いします。

○梶山都市整備局長 都市計画公園、緑地の計画的かつ効率的な整備促進を図るため、整備方針の策定に取り組んでおります。整備方針では、レクリエーション、防災、環境保全、景観などといった公園、緑地に求められる機能の評価を行うとともに、事業の重要性、効率性の観点から、重点的に整備する公園、緑地を選定することといたしております。
 現在、区市町とともに整備方針の内容について検討を進めており、平成十七年度の早い時期にその中間のまとめを公表し、広く都民の意見を聞く予定でございます。

○吉野委員 整備方針の策定により、一層着実に公園整備が進むことを期待しております。
 私の地元には多くの企業グラウンドがあります。例えば朝日生命グラウンドとか、いろいろなグラウンドがあるんですけれども、貴重な緑として残されている企業グラウンドについては、十七年度末から上場企業に対して減損会計の強制導入などの動きがあり、売りに出されている事例もあるように思います。この状況を放置しておくと、これら貴重な緑や空間は、住宅開発等により土地の細分化が進み、失われてしまいかねないように思います。
 公共によって着実に公園整備を進めることは重要でありますが、それを待たずに、民間による公園づくり、緑づくりを誘導することも効果的であるように考えます。
 さきの答申では、都が先行して取り組むべき施策として、民間による新しいタイプの公園づくりが提言されていますが、どのようなことを検討されているのか、お伺いします。

○梶山都市整備局長 現在、民間事業者が公園を設置し、管理していく、いわゆる民設公園制度の構築を進めております。この民設公園は、民有地の一部を公園として公開するものであり、制度設計に際しましては、公園利用者のみならず、地主や事業者にとってもメリットのある制度とする必要がございます。今後、広く都民に開放できることや、緑を永続的に保全すること、また、税制上の問題など、総合的な観点で検討を進め、都民の理解と協力が得られる制度を構築してまいります。

○吉野委員 私の地元三鷹市の北野というところがありまして、これは先ほどお話しした朝日生命グラウンドのすぐそばなんですが、北野という地域、中央道と外環のジャンクションができたりする地域ですけれども、この中の一つの字、北野四丁目というところに、昨年のオリンピックの金メダリストが三人住んでいます。大変金メダル密度の濃い地域でありまして、これは実は、グラウンドがあったりして、塚原直也さんなんかは、近々、グラウンドがあるから越してくるというふうな状況がありますけれども、こういうものは、そういう意味でも私は大事なものだというふうに思っております。
 冒頭に申し上げましたように、温暖化への対応が大きな課題となっております。都市環境の改善や災害に強い都市づくりに、都市の緑はこれまでにも増して重要になってきております。また、東京の緑や公園は、道路、河川の都市基盤と同様に都市の環境インフラを形成する重要な都市施設であります。
 財政状況の厳しい折ではありますが、都においては公園、緑地の着実な整備をお願いするとともに、局長の答弁にありましたように、多様な緑の方策のもと、公共と民間とが連携して東京の緑づくりを推進すべきであると考えます。今後の緑の新戦略により、東京の新たな緑づくりが進展することを期待しまして、この質問を終わります。
 次の質問に移ります。
 沖ノ鳥島につきましては、我が党の比留間幹事長が、さきの代表質問で、国家とは、国土とはという観点から、知事の所見を伺いました。また、昨日、同僚の臼井議員も知事の思いを伺ったところであります。私も、沖ノ鳥島に対する知事の姿勢を全面的に支持する者の一人として質問をさせていただきます。
 沖ノ鳥島を起点とする二百海里水域は、日本の国土面積を上回る約四十万平方キロメートルにも及び、我が国の海洋権益を守る上で極めて重要な海域であります。この沖ノ鳥島をめぐって、昨年来、中国が、国連海洋法条約上、島ではなく、岩にすぎない、したがって日本は同島周辺海域を排他的経済水域に設定できないと一方的な主張をし、違法な海洋調査を繰り返し行っております。この違法な調査活動は昨年一年間で三十回以上にも及ぶといわれております。
 また、つい先日、新聞にも、アメリカの学者が、沖ノ鳥島を島ではなく、岩だみたいな見解を載せておりましたけれども、知事は、この中国の理不尽な主張や行動に対し、日ごろから国に毅然とした対応を求めるとともに、この海域が我が国の排他的経済水域であることを事実として広く周知するため、来年度から、東京都がみずから率先して同島周辺で漁業活動を開始するとしています。この知事の力強い姿勢に、私も敬意を表するものであります。
 沖ノ鳥島における経済活動の一つとして行うこの漁業活動を継続していくためには、これまで未知の漁場であったこの海域を新たに漁場として開拓し、小笠原の漁業者が希望を持って漁業に取り組めるようにしていくことが重要と考えます。
 そこで、都は、来年度、この漁業活動に対してどのような支援を行っていかれるのか、お伺いをします。

○関谷産業労働局長 お話のとおり、都は、漁業活動を将来にわたり継続して行えますように、沖ノ鳥島周辺海域を新たな漁場として整備していくことを考えております。このため、この四月から、小笠原島漁業協同組合が用船して行う漁業操業への支援や、大水深浮き魚礁の設置に向けた海底地形等の調査、さらには水産資源増殖用のシマアジ十万尾の放流に取り組むことを予定しております。
 また、リーフ内や周辺海域の実態を把握するため、生物の生息状況、漁業資源、海流の状況等の調査を行うとともに、排他的経済水域内で操業している外国の密漁船の監視活動もこの調査活動に合わせて実施することとしております。

○吉野委員 こうした都の取り組みが国を動かし、結果として沖ノ鳥島が世界じゅうから日本の領土として揺るぎない地位を確立できることを期待して、質問を終わります。(拍手)

○野田副委員長 吉野利明委員の発言は終わりました。

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