東京都議会予算特別委員会速記録第四号

○樺山委員長 野上じゅん子委員の発言を許します。
   〔委員長退席、前島副委員長着席〕

○野上委員 私は、二十五年間、議員になる前は教育現場で生きてまいりました。私の教育の信条は、希望の登校、満足の下校でした。つまり、子どもたちが学校に行くのが楽しくて仕方がない、早く学校に行きたいという希望を持って登校し、また、学校での授業や、先生や友達との触れ合いで充実した学校生活を送り、満足をして下校していく。それが実現できないのであれば、そもそも学校などは必要がないとまで思っておりました。
 そこで、まず最初に、教育問題についてお聞きいたします。
 まず最初に、都教育委員会が進めている少人数指導についてお伺いいたします。
 共産党の方が、三十分にわたって三十人学級について質疑をされておりました。その中の議論で、少人数学級と三十人学級がごちゃごちゃになっているのかなと思っているところがありましたので、最初に整理をいたします。
 現在は、四十人学級編制、つまり四十人を上限とする学級編制を行っているわけです。ですから、一つのクラスが四十一人になると、二十人と二十一人の二クラスになります。三十人学級というのは、一クラスの上限が三十人ですので、三十一人になると、十五人と十六人の二クラスに分かれる、そういう仕組みを三十人学級と呼んでおります。
 それに対して、少人数学級というのは、一クラスの人数の規定はございません。ですから、現在、四十人学級編制よりも少ない人数ということで、三十五人であったり、三十人であったり、さまざまですけれども、いずれにしても、四十人よりも少ない学級を指します。ですから、少人数学級と三十人学級は明確に違います。
 東京都は、四十人を上限としている小中学校の学級編制を行っていますけれども、実際の一学級当たりの平均児童生徒数は、何と小学校で三十・七九人です。三十・七九人。中学校では三十六・六三人ですが、また、三十人以下の学級数も、小学校では、全体の四四・五%はもう既に三十人以下の学級になっているということです。
 また、共産党は、全国で数多く三十人学級が実施されていると盛んにいっておりますけれども、そこには、三十人学級を導入している県とかもあるのでしょうけれども、少人数クラスを実施している例が多く含まれております。すべての県全体で少人数クラスを行っているのではなくて、ほんの一部の学校とか、地域とか、あるいは学年も低学年だけとか、実施もまちまちです。ですから、まるで全国どこでも三十人学級をやっていて、東京都だけが取り残されているように表現するのは間違いです。
 少子化、核家族化が進む中で、子どもたちが豊かな人間関係を結び合う場として、学校に対する期待は大変大きいものがあります。子どもたちが、基本的な生活習慣や社会性を身につけていくには、ある程度の学級規模が必要です。一クラス十五人だと、サッカーの試合もできません。また、グループが固定化し、その中に入れない子どもは孤立をしていきます。
 都教育委員会は、四十人を上限とする現行の学級規模を維持しつつも、個人差のあらわれやすい教科では、少人数指導を進めております。例えば小学校でいえば算数などです。日々の学習をきちんと積み重ねていかなければいけない教科は差がつきやすいので、少人数指導が非常に効果的です。
 教師にとって授業を進めていく上で難しいなと感じることは、授業のレベルをどこに定めていくかということです。例えば五年生を受け持った場合、掛け算、九九や足し算、引き算もできないまま行き詰まって、できないまま進級してきている子どももいます。また、有名中学を受験するために、先の先まで進んで内容を理解している子もいるわけです。ですから、その一つのクラスの中でどこを基準に授業を進めていくかというのが、非常に教師にとって大きな課題なんです。
 一人一人の状況に応じてきめ細かく指導していければいいのですけれども、個人差が大きく、困難な面も多々あります。ですから、少人数指導の場合は、複数の教員で、例えばゾウさんコースとか、ウサギさんコース、カメさんコース、あるいは、じっくりコース、しっかりコース、チャレンジコースとか分けて指導するので、よりきめ細かな指導ができると思います。
 現行の学級制度に加えて、少人数指導を導入することは、子どもたちにクラスでの豊かな人間関係を経験させることと、個々に応じたきめ細かい学習指導を行うという二つの要請にこたえることが可能な、すぐれた施策であるといえます。
 ほとんどの教師が三十人学級を希望しているという共産党のデータがございましたが、それについてもちょっと申し述べます。先ほどもいいましたが、三十人学級というのは、一クラスが三十一人になると、十五人と十六人という二学級に分かれます。学級規模が小さくなるので、教師の実務は大変楽になります。
 テストの採点、通知表の記入や指導要録の記録など、今まで三十人つけていたのが十五人になれば、労力は半分で済むわけです。人数が少なければ少ないほど実務量が減ってまいります。したがって、学校現場の先生方は、三十人学級には大賛成です。その方が楽だからです。
 その点、少人数指導の場合は、複数の教員が協力をして指導する体制をとります。教師である以上、授業で勝負をするのが当たり前ですが、私が長い経験から思うに、自分の授業を人に見られるのが嫌な先生はたくさんおります。ところが、この三十人学級だと一人の先生が授業しますので、授業をほかの人から見られるという機会が非常に少ないわけです。
 ところが、その少人数学級にすると、お互いの授業の様子がよくわかると。ですから、少人数指導の場合、授業が成立しにくくなった学級が出ても、お互いに教員同士が持ち味を生かして対応し、解決を図ることができるので、極めてすぐれた指導法ではないかと強く主張しておきます。
 少人数指導の教員にとってのメリットについて、今まで論議をしてきましたけれども、もっと大きな問題は、子どもたち自身にとってどれだけプラス効果が上がるかなんですね。
 そこで、質問いたします。国立教育政策研究所の調査研究や、学力向上フロンティア実践校での意識調査結果などから、少人数指導が少人数学級より学力向上に大きな効果があることは明らかにされておりますが、子どもたちの人間形成や生活指導の面でも効果が高いと思いますが、都の所見をお伺いいたします。

○横山教育長 少人数指導が学力向上の面で有効であることは、ご指摘のとおりでございます。
 一方で、学校では、生活集団として一定の規模を持つ学級におきまして、児童生徒の社会性の育成を図っております。これに加えて、習熟の程度など個人差に応じて学習集団を編成して行います、今お話の少人数指導を実施しますことは、単にこれは学力向上の面だけではなくて、児童生徒がより多くの教員や児童生徒とかかわることで、学級における教育効果と相まって、向上心や協調性など、社会生活に必要な資質や能力を身につけることにもつながる、こう考えております。

○野上委員 実際に少人数指導の授業を何校か見学させていただきましたけれども、本当に指導力のあるすぐれた教師の存在が、少人数指導を成功させるキーポイントだと感じております。教師の指導力向上のために、都教育委員会は、より一層研修制度の充実を図るなど、効果的な対策を講じていただきたいと思っております。
 次に、育英資金事業についてお伺いいたします。
 都は、これまで独自に実施してきた東京都育英資金事業に加え、平成十七年度からは国の高校奨学金制度の移管を受け入れる予定となっております。移管後の高校奨学金制度は、都民へのサービスアップにつながるよう、双方のすぐれた面を生かす制度にすべきであると、これまで第三回定例会や文教委員会等で質問や要望を行ってまいりました。十七年度予算案が提出された現在、新たな制度の検討はどこまで進んでいるのか、明らかにしていただきたいと思います。
 まず、第一の質問は、国の奨学金制度の成績要件の取り扱いです。既に都はこの成績要件を撤廃して、やる気のある生徒はだれでも奨学金の対象にしております。今回、国から移管される制度についても、成績要件のない都の制度に合わせて、都民が借りやすいようにすべきだと考えますが、所見を伺います。

○山内生活文化局長 東京都育英資金は、平成十四年の条例改正におきまして、貸付対象を学業成績が良好な者から勉学意欲のある者に改め、より広く門戸を開いたところでございます。今回、国から移管を受ける高校奨学金には一定の成績要件が付されておりましたが、さきの条例改正の趣旨に合わせまして、ご指摘のとおり、成績要件のない現行都制度に一本化することといたしました。

○野上委員 成績要件だけでなく、都と国では扱いが異なっている部分については、あくまでも都民、奨学生本位の制度として一本化することが大事です。これまでは、東京都内に住んでいても、他の県の高校に通う生徒は都の制度の対象とならず、国の制度を使うしかなかったわけですが、これを機に都の制度を変えて、国制度並みにしていただきたいと思いますが、所見を伺います。

○山内生活文化局長 国の制度と都の制度とを比較いたしまして、奨学生にとってより借り受けしやすい方向で、利用者本位の制度づくりを進めております。国からの移管対象である高校、専修学校高等課程については、他県の高校に通う生徒も対象となるよう、都の制度にある学校所在地要件を外すことといたしました。

○野上委員 次に、貸付単価について質問いたします。
 東京の授業料負担は全国平均より高いと聞いておりますので、当然奨学金の貸付単価は、国より低いということがあってはならないと思いますが、いかがでしょうか。

○山内生活文化局長 貸付単価につきましては、今回移管される高等学校及び専修学校高等課程では国と同額となっておりますが、専修学校専門課程については、これまで国より低額となっておりました。このため、今回、国に合わせて月額三千円、年額にして三万六千円を増額いたしまして、専修学校専門課程についてもその充実を図ったところでございます。

○野上委員 今回の国からの移管を機に、奨学金事業を都から公益法人に移す予定と聞いております。これまでは、都が直営で実施してきたため、事業の継続性については不安がなかったわけですが、これが公益法人に移るとなりますと、財政的に大丈夫なのか、サービス水準が引き下げられてしまうのではないかとの不安を覚える都民も少なくないと思われます。
 実施主体の変更に伴って、今後、サービスが低下していくようなことがあってはならないと考えますが、所見を伺います。

○山内生活文化局長 奨学金事業を東京都私学財団に移管することとした理由でございますけれども、現在、同財団が、本事業と非常に関連の深い高等学校授業料軽減助成事業、また入学支度金貸付事業などを実施しておりまして、これらとの一元的な取り組みを通じて、申請手続の簡素化、広報効果の拡大にも寄与するというふうに考えたからでございます。
 また、実施主体を変更いたしましても、所要の財源については引き続き都が確保していくこととしており、今後とも、都民サービスの水準は継続して維持できると考えております。

○野上委員 また、奨学金制度の規模の考え方はどうなっていますか。国から移管分があるので、今までの都の分を少し削るというようなことはないと思いますが、近年はむしろ、奨学金の需要は高まっています。ぜひニーズの増大に見合った事業規模を確保すべきです。所見を伺います。

○山内生活文化局長 国からの移管分につきましては、最も貸与者数の多い日本育英会の直近の実績をもとに、都内在住者の貸付実績を推計いたしました。また、従来の都の分につきましては、過去の伸び率を勘案の上、各種要件緩和による需要増を見込んでおります。
 これらのことから、ニーズの増大にも対応できるよう、規模は確保できるものと考えております。

○野上委員 次に、保証人についての要件緩和を求めたいと思います。
 国の制度でも、二人目の保証人が必要と聞いていますので、人数につきましてはやむを得ない部分もありますけれども、年齢要件はもう少し考えてあげてもよいのではないでしょうか。
 一人目の保証人は、父または母、つまり保護者がなればいいので問題はありませんけれども、二人目の場合、貸し付けが終わる時点で五十歳程度までの人でなければ、保証人の資格がないことになります。貸付金の返済がスムーズに行われることは大切ですが、余りにも要件としては厳しいのではないでしょうか。
 現在では、高齢の方でも十分に保証能力をお持ちの方も多く、奨学金を借りやすい制度としていく視点から、この機会に保証人の年齢要件を緩和すべきと考えますが、所見を伺います。

○山内生活文化局長 奨学金制度を存続させていくためには、貸し付けから返還まで、円滑に循環していくことが不可欠でございます。連帯保証人もその一環として重要と考えております。しかし、年齢の高い人で、保証能力があっても、年齢要件によって連帯保証人になれず、設定が困難なケースも少なくないということは認識しております。
 このため、ご指摘の趣旨も踏まえて、今回の移管にあわせて、実施主体である財団との協議の上、貸し付け終了時の年齢を、現在の満五十歳程度から満六十五歳程度にまで緩和する方向で調整してまいります。

○野上委員 ありがとうございました。
 次に、青少年健全育成について伺います。
 昨年の六月十一日の文教委員会で、有害情報から子どもを守るための情報リテラシー教育の充実を図れと訴えてまいりました。その結果、都教育委員会は、平成十六年度末を目途にインターネットを適切に活用するために指導資料を作成し、配布すると答弁されました。そして今、実践的な指導資料ができ上がったと伺っております。
 青少年の健全育成については、近年、インターネットによる有害な情報のはんらんは目に余るものがあり、ネット社会にはさまざまな危険や誘惑があります。こうしたネット社会の危険や誘惑から子どもたちを守るためには、やはり子どもたち自身が危険を回避して、正しく行動できるようにしていくことが重要と思います。
 そのためには、学校における情報モラル教育を充実すべきであると考えますが、今後の取り組みについてお伺いいたします。

○横山教育長 ネット社会の危険や誘惑から子どもたちを守るため、現在、警視庁との共催によりますハイテク犯罪防止に関するシンポジウム、あるいは授業公開の実施、インターネットを適切に活用するための指導資料の作成等を行っております。
 平成十七年度には、情報モラル教育の実践研究を行うモデル校を、小中学校におきまして五十校程度を指定しますとともに、都立高校二十校を指定しましたIT教育普及支援校におきまして、全都の教員を対象とした情報モラル研修や、インターネット親子セーフティー教室を実施するなどしまして、有害な情報から子どもを守るための情報モラル教育の充実を図ってまいります。

○野上委員 今、答弁があったように、小中高校で七十校にも及ぶ取り組みは、全国的にも余り例がないと思います。今後とも、ぜひ充実したものにしていただきたいと要望いたしたいと思います。
 次に、学校の安全について伺います。
 我が党は昨年、小学校の安全に関するアンケート調査を実施し、都内千三百二十三校のうち、四〇・二%に当たる五百三十二校から回答を得ました。私も数校、校長先生にお会いして、お話を伺ったのですが、監視カメラは設置してありますが、監視カメラを監視する人がいないのが悩みだとおっしゃっておりました。
 そうした調査結果から、公明党は、常駐のスクールガードが必要であると主張してまいりました。
 国においては、平成十七年度より、小学校において、学校安全のためのボランティアを活用した地域ぐるみの学校安全体制整備事業を実施することとしています。予算も、単年度予算ですが、七億五千万つけております。この事業について、都教育委員会としてどのように考えていくのでしょうか。

○横山教育長 小学校等におけます安全対策のために、地域住民の理解や協力を得ながら対応を進めますことは重要な課題でございまして、今回の事件を受けて開催しました区市教育委員会の担当者連絡会におきましても、PTA、自治会、警察署との連携を深めて、地域ぐるみで児童生徒の安全を確保しますネットワークづくりを進めるよう、改めてお願いをいたしました。また既に、一部の区市町村においては、地域との連携の一環として、学校安全のためのボランティアを活用した取り組みを進めております。
 学校安全のために地域のボランティアを活用する取り組みは、今後ますます重要になるものと考えておりまして、ご指摘の地域ぐるみの学校安全体制整備事業を活用しまして、学校安全に関する地域との連携をさらに推進してまいります。

○野上委員 この事業では、地域において、学校安全ボランティア、いわゆるスクールガードを養成して学校に配備し、さらに、地域学校安全指導員、いわゆるスクールガードリーダーを配置するとされています。
 このスクールガードやスクールガードリーダーの役割、そして人選などについて、所見を明らかにしていただきたいと思います。

○横山教育長 ご指摘の事業につきましては、現在のところ、文部科学省の説明会で聞いた限りでございまして、その詳細はいまだ明らかになっておりませんが、学校安全ボランティア、いわゆるスクールガードにつきましては、地域住民や保護者などが、始業時、授業時及び放課後等におきまして、パトロールなどの活動を行うこととされております。
 一方、地域学校安全指導員、いわゆるスクールガードリーダーですが、これにつきましては、防犯の専門家や警察官OB等にご協力いただきまして、担当エリア内の各小学校の警備のポイントの指摘であるとか、定期的に担当エリア内の学校を巡回し、それぞれの学校の安全体制を評価をして、指導助言をする、また、学校安全ボランティアに対して、警備上のポイントや不審者への対応等について具体的に指導などを担当していただく、こういう役割を負うものでございます。

○野上委員 警視庁においても、平成十六年度より、警察官OBの方を活用したスクールサポーターを警察署に配置し、非行防止や児童等の安全確保に効果を上げています。
 スクールガードやスクールガードリーダーなど、今後、国の事業を実施していくに当たっては、スクールサポーターとの連携が必要になります。教育庁の見解をお伺いいたします。

○横山教育長 学校安全ボランティアに係ります国の新たな事業につきましては、今後、事業の詳細に関する国からの通知が届き次第、早急に、区市町村教育委員会とも連携しながら、実施に向けた検討を進めていく予定でございます。
 その際、ご指摘のスクールサポーターとの連携につきましても、重要な課題であると認識しておりますので、警視庁などの関係部局と連携しつつ、具体的な検討を進めてまいります。

○野上委員 次に、女性専用車両の導入について質問いたします。
 私は、都議会公明党のただ一人の女性議員として、女性の人権を守る立場から、数多くの提案をさせていただきました。その中で、女性専用外来は、都内、都立病院に三カ所、公社病院に一カ所設置していただくことができました。随分多くの女性から感謝の声を伺っております。都の取り組みを高く評価いたします。
 さて、現在、若い女性の一番の悩みは何かというアンケートを行うと、必ず上位に出てくるのが、電車内の痴漢行為であります。ぎゅうぎゅう詰めの通勤ラッシュの中で、体力的にも精神的にもつらい中で痴漢行為の被害を受けたら、もう耐えられません。また、深夜でも、仕事をし、疲れ果てて帰る電車の中で、酔っぱらいに絡まれたり、嫌がらせを受けたり、大変に困ったものです。
 日本一の混雑率を誇る東京エリアの電車では、昨年一年間で二千二百一件のわいせつ犯罪が発生しています。こうした犯罪は、年々増加傾向にあります。知事は、去る二月の定例記者会見の場で、警視庁が発表したこの数字を取り上げ、電車内の痴漢の多さに驚いたと述べられておられました。
 痴漢や酔っぱらいから身を守る対策として、女性専用車両の導入が必要不可欠です。
 女性専用車両はこれまで、関西を中心に全国約三十路線で導入され、利用者に大変好評です。しかし、東京エリアには、京王線とJR埼京線の深夜時にしかありません。私たち公明党は、この東京エリアでも、朝の通勤ラッシュや深夜の時間帯に一刻も早い女性専用車両の導入を求める署名活動を展開をしました。私も、寒風吹きすさぶ中、その先頭に立って署名活動をしてまいりましたが、本日までに東京都全域から七万四千二百七十人の署名を集めました。きょう四時半に国土交通省に届けることになっております。
 昨年七月、都は、警視庁や鉄道各社とともに協議会を設置し、電車内での痴漢対策を検討していると聞いていますが、国土交通省も三月七日に、JR、都営交通、私鉄各社に呼びかけ、女性専用車両の導入に向けての検討会を立ち上げました。
 JR東日本では早速、こうした動きにこたえて、来月四日から、痴漢被害で悪評の高い埼京線で、朝の通勤ラッシュ時に女性専用車両を導入することを発表しました。女性専用車両の導入は、まさに時宜を得た対策であり、マスコミにも取り上げられ、注目の的です。ようやく重い腰を上げたというべきでしょうが、こうしたJRなどの前向きの取り組みについて、知事はどのようなご感想をお持ちでしょうか、お伺いいたします。

○石原知事 警視庁が発表しました統計を見ますと、痴漢の多さ、しかもその被害者の多くは半数が未成年者であるということを、非常に忌まわしい、ショッキングな情報として受け取りましたが、かねてから、都や警視庁も、鉄道事業者などの関係者に対して痴漢対策の必要性を問題提起してきましたけれども、いろいろエクスキューズを聞いてきましたが、私は、個人的に、東JRの松田会長と非常に親しくしておりまして、この間も彼と別の用件で懇談しましたときにこの問題についていいまして、とにかくあなた、実際に乗ってごらんよと。彼は非常にいかつい男ですから、みんな怖がって遠ざかるかもしれませんが、とにかく惨たんたる実情なんで、やっぱりかつての国鉄、JRが、こういうものに初めて措置を講じることが私は突破口になると思うとくれぐれも申しました。
 今回、国やJRなども対策に取り組み始めたということは、少なくとも一歩前進ではないかと思います。同時に、やはり被害者の方々が、勇気を持って声を上げる、叫ぶ、その声を聞いて、自助共助じゃありませんけれども、近くにいる人たちがその被害者を助ける、そういう習慣というものをこれからも積極的につけていきたいなと思っております。

○野上委員 ところで、私は、平成十五年の第三回定例会で、都営交通でも都民サービスのために女性専用車両を早期に導入すべきではないかと質問し、十六年第三回定例会で強く要望いたしました。
 これに対して、交通局長は、十五年第三回定例会では、現在、女性専用車両は、車掌が乗務している各社の単独路線において導入しているのが実情であり、導入に当たっては、専用車両以外の車両がラッシュ時にはより混雑するようになるので、その対策が必要、あるいは案内整理要員の確保が必要、専用車両の運行方法などについて相互乗り入れ他社との合意が必要という三点の課題を挙げた上で、今後とも、犯罪防止の啓発放送等を実施するとともに、他社の動向を踏まえつつ、女性専用車両の試行的導入の可能性について検討すると答弁されております。
 この三点の課題は、女性専用車両の導入を見送る理由にはなりません。
 例えば、さきに触れたJR埼京線は、過去十五年のピーク時に二〇〇%を超す混雑率だったといわれています。それでも導入できたのは、JRは、案内整理員を配備して混雑対策を行ったからであります。JRにできて都営交通にできない理由はありません。
 さらに、都営交通と相互乗り入れをしている他社が今後、女性専用車両の導入に前向きになれば、都営地下鉄でも導入する環境が整います。
 したがって、試行的導入の可能性について検討するなどとのんきなことをいっている場合ではありません。女性にも優しい石原知事のもとで、都営交通が女性専用車両について、他の交通機関の後塵を拝するなどということが万が一あってはならないと思うのですが、改めて交通局長の決意のほどを伺います。

○松尾交通局長 痴漢行為等の防止は、鉄道事業者にとって重要な課題であると認識しております。警備員の配置、巡回や、啓発ポスター、放送等の充実強化を一層図っていく一方、近く計画されております統一キャンペーンに民間鉄道事業者と参加し、その防止に取り組んでまいります。
 また、安全で安心してご利用いただけますよう、輸送力の増強を図り、混雑緩和に努めるとともに、女性専用車両につきましては、安全性、定時性の面からさまざまな課題があることから、引き続きその試行的導入について検討してまいります。

○野上委員 ただいまの答弁の中で、安全性、定時性の面からさまざま課題があるといわれましたが、具体的にはどういうことなんでしょうか。同じことはJRなどにも共通していえるのではないですか。
 JRや私鉄とは違う事情が都営地下鉄にあるのならば、この際お聞かせください。

○松尾交通局長 ご案内のとおり、私ども都営地下鉄でございますけれども、浅草線、三田線、新宿線につきましては、相互直通運転を実施しております。そういった状況の中で女性専用車両を導入するにつきましては、車両編成が違うとか、いろいろ課題がございまして、特にまた、ラッシュ時の込みぐあいも路線状況によっては大きく異なっております。これらの調整をすることがまず大きな課題ではないかというふうに思っております。
 また、単独線でございます大江戸線でございますけれども、乗客数も非常に増加している状況にもございます。それと同時に、お客様の流動というものも、沿線開発等も相まって、まだ定かではない状況にもございます。
 そうした中で、その辺も見きわめながら判断していくことが、安全性あるいは定時性の確保の面から必要な課題であるというふうに考えております。
 いずれにいたしましても、路線状況によってそれぞれ状況が違うと。それを踏まえながら各事業者において判断していくことが必要であろうかというふうに考えております。

○野上委員 最初から多くの課題があるのはわかっているんですよ。しかし、やる気になればできないことはないと思っています。
 最初から、もう困難があるからという後ろ向きの考え方ではなかなか難しいと思いますので、ぜひ早期導入に向けて前向きに検討してくださることを強く要望しておきます。
 次に、DV被害者の自立支援について伺います。
 今回、配偶者暴力防止法の改定により、被害者の自立支援がはっきりとうたわれました。これは大きな前進であると考えます。
 DV被害者の皆さんの自立のためには、相談体制の充実や緊急一時保護、生活の再建、住宅の確保など、さまざまな支援が必要です。配偶者暴力防止法の改正を踏まえ、都として、被害者の自立支援に向けて具体策を拡充すべきです。所見を伺います。

○山内生活文化局長 今回の配偶者暴力防止法の改正によりまして、都道府県においては、被害者の自立支援を中心とする総合的な基本計画の策定が義務づけられたところでございます。
 都はこれまでも、被害者の自立支援について関係機関と連携し、生活の援護や就労の支援、心のケアのための施策等を展開してまいりました。今後、都が策定する基本計画において、さまざまな困難を抱える被害者の自立支援に関する施策の体系化を図り、関係局や区市町村などと連携して取り組みを進めてまいります。

○野上委員 ぜひ、被害者の方々の自立のために、しっかりとした計画にしていただきたいと思います。
 ところで、DV被害者の方々が、一時避難を経て自立する場合、住宅を借りることが非常に困難です。
 現在、民間の賃貸家賃契約には保証人制度があり、連帯保証人を立てなければ、容易に住宅を借りることができません。路上生活者あるいは高齢者のひとり暮らしの方々に対しては、地域生活移行支援事業やあんしん入居制度がありますが、DV被害者の方々には、制度のはざまに置かれ、連帯保証人を探すこともできず、どうしていいかわからないという相談がよくあります。NPOを立ち上げ、民間保証人制度を利用できるように支援している民間団体もありますが、現実には、処理件数が多くて、十分には支援できていないのが現状のようです。
 したがって、都や各区市町村が、公的保証人制度をさらに使いやすくし、普及させる必要があります。あわせて、住宅を借りることが難しいDV被害者が、安心して居住できる空間を確保するために、都営住宅を活用できる仕組みを考えるべきです。
 昨年三月に、国土交通省からの文書で、DV被害者についても都営住宅を目的外使用させることができるという通知があったと聞いております。ぜひ、DV被害者の方々が置かれている困難な状況を認識され、都営住宅の活用について早急に検討されることを都市整備局に強く要望しておきます。
 最後に、まちづくりについてですが、私は、葛飾区生まれではありませんが、葛飾区は大好きなまちです。日常の中で触れ合う人々の人情の機微が細やかで、心がほかほかするところです。
 また、寅さんでおなじみの葛飾柴又の帝釈天や、ショウブの季節には多くの人々でにぎわう堀切菖蒲園、また都内最大級の公園の水元公園など、多くの憩いのスペースに恵まれており、地元の皆さんだけでなく、千葉、埼玉などからも、多くの方々が訪れています。
 最近では、区内の新たな魅力づくりに向け、柴又の新たな観光スポットの開拓や、水元公園・水元青年の家の跡地活用などについて検討がなされており、今後のまちづくりの進展といった観点から、大いに期待しているところです。
 一方、課題も残されています。例えば区内の交通状況に目を向けると、新小岩駅付近の巽橋交差点や、平和橋通りと水戸街道が交差する本田広小路交差点、京成高砂駅付近の踏切などでは交通渋滞が慢性化し、そのほか、未整備となっている道路が数多く存在します。
 今後、葛飾区のまちづくりを進めていくためには、道路整備による交通の円滑化を図っていく必要があると思います。
 そこで、葛飾区内のまちづくりを支える上で最も基本的な都市の施設である道路について、何点か質問いたします。
 外かく道路についてですけれども、葛飾区を通る外かく環状の、三郷市の常磐道から市川市の湾岸道路までの区間についての事業の進捗と、完成の見通しについて伺います。

○梶山都市整備局長 外かく環状道路の葛飾区間を含む常磐道から湾岸道路までの約二十キロメートルの区間につきましては、日本道路公団が整備を進めており、全体で八割を超える用地を取得し、このうち、常磐道から水戸街道までの約九キロメートルの区間では、既に用地取得を完了してございます。
 外かく環状道路に併設される国道二九八号は、この三月末に常磐道から水戸街道までの区間が開通する予定でございます。
 また、高速道路部につきましては、平成十九年度の供用開始を目指し、高架や掘り割りの工事などが行われております。

○野上委員 ありがとうございました。(拍手)

○前島副委員長 野上じゅん子委員の発言は終わりました。

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