東京都議会予算特別委員会速記録第三号

○富田副委員長 近藤やよい委員の発言を許します。
   〔富田副委員長退席、委員長着席〕

○近藤委員 都バス事業について、まず何点か伺います。
 バス事業の乗客数は、全国的にも長期的な低減傾向にあり、都も決して例外ではありません。しかしながら、今後は、高齢者の足回りの確保、地球温暖化への対応策の一つとして、バスは、今までとはまた違った意味合いで重要性が増してくると私は考えています。
 都営バス事業の収支は、十五年度決算では七億円余の赤字となっていますが、路線別に見ると、黒字と赤字の路線の割合はどうなっているのか、まず伺います。

○松尾交通局長 平成十五年度決算における黒字路線の割合につきましては、全百三十一路線のうち四十一路線で三一%、一方、赤字路線につきましては、九十路線で六九%となっております。

○近藤委員 黒字が三割、赤字が七割というご報告です。
 バス事業は、何といっても労働集約的事業であり、乗務員の人件費が占める割合が大きく、その中でも特に都バスは、民間バスの乗務員の人件費と比較して、二割も人件費率が高いといわれています。都民の立場から見れば、同じバス事業ですので、わざわざ高い人件費を払ってまで都バス事業に固執する必要はない、横浜市のように、全面民営化も選択肢の一つとして検討すべきだと考えることもできます。
 都は、事業の効率化対策の一つとして、平成十五年度から管理の委託を開始しました。管理の委託とは、ダイヤや運賃などの決定権を交通局が持ったまま、アウトソーシングでコストを下げる手法です。
 平成十七年度には、その拡大も予定していると聞いていますけれども、直営で行った場合と比較して、管理の委託によって得られる経費削減効果額とその割合はどの程度なのか、伺います。

○松尾交通局長 平成十五年度には、早稲田自動車営業所杉並支所で二路線、十六年度には、江戸川自動車営業所臨海支所で十二路線の計十四路線をこれまで委託しております。
 平成十七年度には、両支所でさらに五路線を追加委託する予定でございます。
 効果額につきましては、総額で六億八千万円程度、二五%を上回るコスト削減効果を見込んでおります。

○近藤委員 管理の委託によれば、直営に比べて、経費が二五%を超えて削減できるということを今お答えいただきました。そういうことがわかっていながら、今回交通局は、平成十七年度の予算案で、新たな委託路線の拡大をわずか五路線にとどめて、赤字予算を組んでいます。
 二五%経費が削減できる管理の委託という方法があるにもかかわらず、赤字予算を組んだ理由と、平成十七年度予想される赤字額が経費の全体の何パーセントに当たるのか、お尋ねをいたします。

○松尾交通局長 バス事業の平成十七年度予算では、十六年度予算に比較しまして、人件費を約十七億円削減するなど、経営効率化によりまして、支出全体で約十九億円を削減しております。一方、乗客数の減少に歯どめがかからず、乗車料収入が約十八億円減少し、収入全体で約十七億円の減収を見込んでおります。
 この結果、経常収支では、十六年度予算に比較いたしまして約二億円改善したものの、約十八億五千万円余の赤字を計上しております。この赤字額は、経費全体四百四十七億円の約四%に当たります。

○近藤委員 わずか四%かというような気持ちもいたしますが、今までさまざまな効率化策をとられ、営業努力を払われた上での数字でございますので、今後、経費を四%カットして事業の収支の均衡を図っていくということは、並大抵のことではないと私は考えております。
 とするならば、少なくとも当面は、バス事業の収支均衡を図るために、五路線とおっしゃらずに、委託路線のさらなる拡大を図っていくべきと考えますが、ご見解を伺います。

○松尾交通局長 管理の委託に当たりましては、赤字路線を委託営業所へ集約する必要があり、バス路線の起終点が営業所から遠くなるため、運行の効率性が低下する側面があるほか、退職者数も考慮して進めていく必要がございます。
 このような課題もございますが、経営効率化策の一環として、管理の委託の拡大についても検討してまいります。

○近藤委員 検討ということですので、具体的に進めていただきたいと思います。
 しかし、管理の委託というのも、青天井にできるというわけではありません。全路線の二分の一までしか導入できないという基準がありますので、たとえ限りなく五割に近い路線を管理委託したとしても、都バスの赤字は七割ということですので、まだ赤字路線が二割残りますし、委託先の乗務員の年齢が上がれば、二五%という、今計算されているほどの人件費の削減効果も望めなくなるわけです。
 そして、もう一つ不安材料があります。都では、団塊の世代の大量退職が将来の懸念材料の一つに挙げられていますけれども、都バスの乗務員の世代構成は比較的若くて、三十五歳から四十五歳の層が全体の六割を占めています。つまり、今後、都バス事業に占める人件費の負担率が現在よりも大きくなることが予想され、今以上に経営を圧迫することが懸念されるわけです。
 これを考え合わせると、管理の委託は決して問題解決の根本手段ではありませんし、平成十七年度ベースで予想されるような、経費を四%程度カットすれば、将来的にも収支が均衡するなどと安易に結論づけることも断じてできません。つまり、抜本的なコスト縮減に今取り組まなければ、将来の乗客数の大幅な増加が見込めない以上、赤字の拡大は必至でありますし、都バス事業の将来は非常に厳しいものと考えざるを得ません。
 また、現在の新規採用停止に伴う再任用や非常勤職員でのやりくりは、その場しのぎでありまして、今後も必要な路線や便数が本当に確保できるのかという不安もあります。
 局も問題意識を掲げて、経営計画の中で、人事任用制度及び給料表の抜本的な見直しの検討を挙げて、人件費のカットに踏み込む姿勢を見せてはいます。
 そこで、計画策定から一年たち、プランの折り返し時期を迎えるのが平成十七年度です。現在の具体的な検討状況について伺います。

○松尾交通局長 交通局では、経営計画に基づき、業務執行体制の見直し等による定数の削減を行うとともに、管理の委託や非常勤職員の活用、手当の削減等を行い、経費の削減に取り組んでおります。
 また、厳しい事業環境を踏まえ、計画を上回るさらなる定数削減を実施してまいります。
 ご指摘の給料表や人事任用制度の抜本的な見直しにつきましては、現在、国、都、民間等の動向を踏まえながら、鋭意、調査、検討を進めております。
 今後とも、創意工夫による増収を図りつつ経営効率化を進め、バス事業の収支改善に努めてまいります。

○近藤委員 まず経営計画とおっしゃいましたので、チャレンジ二〇〇四のことだと思いますけれども、そこで明らかにされております約三百人の定数の削減にあわせてといいますか、それに乗せて、さらに削減してくださるという今ご答弁がありました。
 ただ、その後に、給料表の見直しについては、国や都の動向を踏まえてというふうにおっしゃいましたけれども、じゃ、ほかのところがやらなければ都はやらないのかということになるわけです。独自にきちっと、ご自分たちの見直しをするのかしないのかということが大事になってくると思います。
 バス事業に関して一番の課題は、将来の確実な方向性をいまだに都が示し得ないことにあると私は考えています。例えば、委託をどの程度導入するのか、また、直営で残す路線はどことどこと考えるのか、その際、人件費はこれくらいの切り込みをしないと事業が均衡しないというようなシミュレーションを徹底的に行って、その結果として選択された都の方向性というものに対して、局内の意識を早急に統一する必要があると私は考えます。
 高齢社会、環境社会における都民の足を直営で確保するとおっしゃるのであれば、事業存続に向けて、都民のためにやるべきことを先延ばしにしないで、身を削ってご努力いただきたいと心から強くご要望申し上げて、次の質問に移ります。
 定例会初日、監査委員から平成十六年行政監査報告がありました。報告書を読んでみると、指摘された事項は、共通項でくくることのできる何点かの特徴が見られますが、改めて明らかになった問題点は何と何なのか、整理してお答え願います。

○高橋監査事務局長 監査の結果、問題となりました主な事例といたしましては、まず、競争が可能であるにもかかわらず、専門性や過去の実績を理由に特命随意契約をしているものや、長年にわたり見直しすることなく特命契約を継続しているもの、また、契約の相手方の見積書を十分に精査することなく、そのまま契約の予定額としているもの、さらに、分離して発注すれば一部が競争可能となるにもかかわらず、一括して特命により契約しているものなどがございました。
 これらの背景といたしましては、入札結果でチェックされる競争入札と違い、特命随意契約の事務は、その妥当性が検証されにくく、安易になりやすい点が考えられます。

○近藤委員 では、この結果を受けて、監査委員は、改善に向けてどのような具体的な対応をとっていらっしゃるのでしょうか。
 また、今後の監査にこの結果をどのように生かしていらっしゃるおつもりなのか、伺います。

○高橋監査事務局長 今回の監査で指摘した事項につきましては、四名の監査委員は、各局に対し、是正、改善とその結果の報告を求めております。
 同時に、職員の意識の向上や組織的なチェックに一層努めるよう求めた総括意見を付しておりまして、今回監査対象とならなかったものについても、同様の問題がないか点検するなど、各局の主体的な取り組みに期待しております。
 また、監査委員は、平成十七年についても、内部のチェックシステムが有効に機能しているかを重点的に監査する方針を既に決定しておりまして、特命随意契約が適正に行われているかについても、各局の取り組み状況を含め、定例監査などで引き続き検証することとしております。

○近藤委員 特命随意契約というのは、知事が各局長に権限を委任して行われる契約であり、それぞれの契約の最終的責任は各局長にあります。
 報告書の中には、単価を誤って計算したため、予定価格の積算が間違っていたなどの考えられないような単純ミスのほかに、既に他局では同様の取引について競争入札を行っているにもかかわらず、相変わらず特命随意契約で処理されている事案も見受けられました。外から監査が入らなければ、指摘されたような事例が改善できないのは、作業がマンネリ化、形骸化し、チェック機能が働かない体質が各局にあったと考えざるを得ません。
 今回指摘のあったそれぞれの局に、その原因と今後の対応についてご質問したいところですが、それをしておりますと、それだけで持ち時間がなくなってしまいますので、包括外部監査でも一部同様の指摘を受けた水道局は、この行政監査の結果をどのように受けとめて今後対処されるのか、伺います。

○高橋水道局長 水道局におきましても、今回の行政監査で、特命随意契約の事務処理などにつきまして指摘を受けております。
 公営企業は、都民の期待にこたえるため、公共性を踏まえた上で、効率性、経済性を最大限に発揮していく必要があると考えております。
 当局では、こうした認識のもと、今回の指摘事項につきまして、既に平成十七年度契約に向けまして、競争入札への移行など、必要な改善を行っております。
 今後、さらに契約事務全般にわたりまして、監査の指摘を真摯に受けとめ、局を挙げて見直しを行ってまいります。

○近藤委員 今のご答弁で、既に十七年度から見直しをしていただけるというお話でございましたので、指摘を受けました、きょう一々ご答弁を求めない各局につきましても、同じように積極的な対応をご要望しておきたいと思います。
 今回の監査の対象となった契約は、本庁契約の約四分の一でしかありません。監査対象外の四分の三の契約や事務所契約分については、たとえ今回の指摘事項と同様のミスがあったとしても、監査委員が各局に改善を指導する権限はありません。ですから、先ほど、各局の自発的なチェックを求めるというふうにご答弁があったわけです。問題はここにあると私は考えます。監査対象外の契約の中にも、指摘事項と同様なミスが多数あるのではないかと予想されるからです。
 そこで、今回の監査を契機として、監査対象外の特命随意契約についても、各局が自発的に見直しを行って、その結果を明らかにすべきであると考えますが、全庁の契約を統括する立場の財務局長のご見解を伺います。

○松澤財務局長 特命随意契約につきましては、各局がみずからの権限と責任において対処するのが基本ではございますが、今回の行政監査の結果を踏まえまして、財務局としましても、事務処理の適正化をより一層図っていかなければならないと認識しております。
 具体的には、特命随意契約については、競争になじまないという理由で安易に使われている面がございますので、その必要性については十分な検討を行うよう、改めて各局に通知しまして、その趣旨の徹底を図ってまいります。
 また、財務局が所管する契約事務協議会などを通じまして、各局に対しまして、これまでの特命案件について自主点検を要請するとともに、是正措置が必要となった案件については早急に報告を求め、改善が適切に行われるよう指導していく考えでございます。

○近藤委員 契約の統括という立場にあることから、今、財務局長にお尋ねをしたわけですけれども、非常に前向きなご答弁をいただいたと思っております。
 しかしながら、先ほど申し上げましたように、特命随意契約は、知事が各局長に権限を委任している契約であり、行政監査は、議会の同意を得て知事が選任された監査委員によって行われるものであります。
 ここは知事として、全庁を挙げて特命随意契約の適正化に取り組むという姿勢を示して、昨今は、うさん臭いのは議員と役人だというような世の中の見方も一部にあるように感じますけれども、監査報告を受けて、都民が多少なりとも抱いたであろう各局に対する不信感を払拭すべきであると考えますが、ご所見を伺います。

○石原知事 相変わらず、いつもながら手厳しいご指摘でありますが、まさに同感でありまして、民間では、厳しい競争のもとに、血がにじむようなコスト削減など努力をしているわけでありますが、一方、官庁は、依然としてコスト意識が低いまま、安易に公共事業などを発注している面が見られます。
 例えば、前に申したと思いますが、JR東の、今会長になりました松田君がいっておりましたけれども、何か法律では、線路をまたぐ道路の工事の部分だけは、要するにJRが監督しなくちゃいけないんだそうです。自分の主体性で工事をする。道路の建設--公団その他が回してくる予算を見ますと、常識よりも三〇%、四〇%高い。自分たちでやると、もっと安くできるという指摘もありました。
 いずれにしろ、これは国の問題でありますけれども、都民のために最少の経費で最大の効果を上げるため、契約については、品質確保とともに、できるだけ安価に調達することが基本であると思っております。
 また、厳しい財政状況が続く中、契約面からさらにコスト削減を図ることが重要であると思っております。
 今回の行政監査の指摘を繰り返さないよう、全庁を挙げて、特命随意契約を含め契約の適正化に取り組むとともに、職員のコスト意識の徹底を図っていきたいと思っております。

○近藤委員 次の質問に移ります。
 団塊の世代の大量退職が目前に迫っています。都職員の年齢構成を見ると、平成十九年度の約七千六百人をピークとして、平成十九年度から二十二年のわずか四年間の間に、全庁の一六%強に当たる約三万人の定年退職が予想されています。大量退職は、近い将来の懸念材料の一つではありますが、私は一方で、都庁のスリム化を徹底する好機ととらえるべきだと考えています。そして、今後、従来よりもずっと少ない職員で都民に対するサービスの維持、向上を図っていかなければならないわけですから、その一つとして、ITを仕事の効率化の観点から徹底的に活用していく必要があると考えます。
 そこで、現状と今後の課題について伺います。
 まず、十七年度のIT関係予算が五年前と比べてどのようになっているのか、また、その結果をどのように評価していらっしゃるのでしょうか。その上でさらに、今後のIT関連予算の推移の予想について、まずお尋ねをいたします。

○赤星総務局長 警視庁、消防庁、公営企業を含みます都庁全体の情報システム関連予算額でございますけれども、平成十二年度が四百二十三億円、平成十七年度が四百八十九億円を見込んでおりまして、五年間で約六十六億円、率にして一五・六%増加いたしました。これは、平成十三年度からの電子都庁推進計画に基づきます情報端末やネットワークなどのIT基盤の整備、都庁ホームページや電子調達などの都民サービスのためのシステム開発、さらにはシステム再構築に伴う既存システムの並行運用などによるものでございます。
 しかし、私ども、いろいろ努力しなきゃいけませんので、平成十六年度には、局内に外部の専門家を交えました専管組織を立ち上げまして、既存システムの運用経費を精査いたしますとともに、ダウンサイジングなどによります経費削減の全庁的取り組みを開始いたしました。これまでの取り組みと相まって、平成十七年度予算額は、十六年度予算に比べ、約四十四億円削減いたしました。
 今後は、公営企業局や警視庁等を除きました知事部局、行政委員会におきましては、平成十七年度予算案の二百三十七億円を、十九年度には二百億円以下にすることを目指します。

○近藤委員 済みません、聞いていらっしゃる方にもわかるように、削減額が幾らなのかということをもう一度お答えいただけますか。

○赤星総務局長 平成十七年度予算案は、平成十六年度予算案に比べ、約四十四億円削減いたしました。
 今後でございますけれども、知事部局になりますが、それから行政委員会の部分でございますけれども、二百三十七億円を二百億円以下にするということで、約三十七億円から四十億円を削減したいと思っております。

○近藤委員 平成十二年の予算特別委員会で、当時の横山総務局長が、全庁的なITの推進体制につきまして、行政運営の高度化と都民サービスの向上を図るために行政改革の一環として検討していくと答弁されました。これを伺いまして私は、ITを導入することによって仕事の効率化を図り、その分だけ職員を削減したり、真に必要な部署に職員を配置したりという都の方向性を予想したわけです。
 しかし現実には、とにかくITありきとばかりに、従来の仕事のやり方をそのままにして、単に一部分をITに置きかえることが行われているために、IT導入の効果が十分生かされていないと感じられることがあります。
 その一例が、文書管理システムです。文書管理システムは、総務局がおっしゃるところのいわゆる判こ行政を改める目的で平成十五年度導入されたわけですが、その開発費、維持経費、直近の電子決裁率をお尋ねいたします。

○赤星総務局長 文書総合管理システムの開発委託費は、総額で千七百八十五万円でございまして、サーバー賃借料や運用支援委託費など維持管理費の決算及び決算見込み額でございますけれども、導入初年度でございます平成十五年度は一億六千七百三十二万円、十六年度が一億八千四百四十九万円でございました。
 電子決裁の利用率でございますけれども、平成十七年二月、一番最近でございますけれども、全文書に対して一二%となっておりますが、このうち、文書の性質上電子決裁になじまないもの、例えば契約関係の書類、添付書類の非常に多いものなどを除きました電子決裁率は七九%となっております。
 文書総合管理システムにおきましては、個人情報を含みます文書や、先ほど申し上げました添付文書の電子化が困難なものなど、電子決裁を行うことが必ずしも適切でなく、また効率的でないものもございます。こうした電子決裁になじまない文書の割合が非常にまだ多くございます。平成十七年二月で八五%となっております。
 今後、添付文書の削減などによりまして電子決裁率の向上に努めてまいります。

○近藤委員 そもそも電子決裁になじまない文書が八五%あるという中で、逆にいえば、対象となる文書は全体のわずか一五%という現実をそのままにして、開発費と維持経費をかけてシステムを導入する、文書管理システムを導入する妥当性があるのかという基本的な議論が十分された上でこのシステムが導入されたのか、その点が非常に疑問を感じるわけですけれども、この点について伺います。

○赤星総務局長 今、先生おっしゃいましたけれども、一五%でございますけれども、私ども、文書の電子決裁につきましては、まだまだこれから伸ばしていかなきゃいけないのは事実でございますけれども、それとあわせまして、電子決裁によって余った時間、余った労力をほかのサービスへ向けていくということも一つの目的としております。
 これから、今おしかりを受けましたけれども、電子決裁率を上げるために、文書、仕事のやり方そのものも、この一つのシステムによって変えていきたいと考えております。

○近藤委員 これから電子決裁率を上げるためのさまざまな施策をとっていただくということは非常にありがたいんですが、私が質問いたしましたのは、このシステムを導入する前に、何度も申し上げますが、電子決裁になじまない文書がそれだけある中で、今のシステムを導入することの意義ですとか整合性についてきちんと検証された上で、十分な検証がなされた上で導入されたのかという点について伺っているわけですので、もう一度ご答弁をお願いいたします。

○赤星総務局長 再三申し上げますけれども、私どもの一つの電子決裁を導入した際に、本来であれば、仕事の中身まで、先に仕組みと一緒にあわせて解決すべきであろうと思いますけれども、まず電子決裁を導入して仕事のやり方を変えていこうということで、電子決裁先にありきということは一つありました。
 しかし、私ども、電子決裁のための文書の整合性、あるいは文書の量を減らしていくということもこれからやっていかなきゃならないことでございますので、今までの反省も踏まえまして努力してまいりたいと考えております。

○近藤委員 追い打ちをかけるようで大変恐縮ですが、従来の仕事の流れをそのままにして、そこに単にシステムを導入しようとするから、お金をかけた割に仕事の効率が上がらない。システム化されるのが仕事のほんの一部分であって、あとは相変わらず手作業である。なまじ一部分がシステム化されたことで、かえって仕事が面倒になったという指摘を庁内でもたびたび耳にします。
 システム導入に当たっては、事前にシステム化の目的、合理性の検証を徹底的に行うべきであり、従来の仕事の流れそのものが非効率的であれば、まずそれを改善した上でシステムを導入し、仕事能率の向上を図るのがIT導入の真の意義だと私は考えます。
 ITの立ちおくれを取り戻そうと急ぐ余り、システム導入に当たって事前の検証に不足がなかったのか、また、今後導入されるシステムについては、導入の合理性等について十分な検証が必要と考えますが、この検証をだれがすることが適当かという問題はありますけれども、ご見解を伺います。

○赤星総務局長 電子都庁推進計画で実施いたしました施策について、都民サービスの向上や効率化の効果などの視点から評価、検証することは、先生おっしゃったように当然でございます。
 都では、既に、毎年、ホームページで、計画目標の達成状況について、都民の利用できるサービス数や利用件数などを具体的に報告しております。
 今後も、可能な限り定量化し、費用対効果、業務改善効果、サービス向上効果について適切に検証してまいります。

○近藤委員 今、事前の検証のことを申し上げたんですけれども、導入後の検証もまた十分とはいえないと私は考えております。今の答弁の中で、計画目標の達成状況を公表しているというふうにおっしゃいましたけれども、それは単に、これだけIT化を進めるよという目標を立てたときに、今どの程度それが進んでいますという目標の状況の報告でしかありません。
 最近、国や幾つかの地方公共団体では、システム化による成果目標とその評価を一覧形式にして公表しているところがあります。これは、全体像を把握して成果を検証し、効果の不十分なシステムの改善を目的としたものと聞いていますが、都に欠けている視点がまさにこの部分であると思います。
 確かに、総務局内に外部の専門家--公認会計士さんだと聞いておりますけれども、一名を迎えて、IT運用経費を精査するなどの対応をしていると先ほどもおっしゃっておられました。
 ただ、運用経費のチェックをするだけで果たして十分なのかという問題があります。問題は、システム導入でどの程度仕事が効率化したのかという成果の検証と、効果が不十分であれば、必要に応じて導入後でもシステムの改善を図るということが大事なのではないかと思います。
 たとえ運用経費そのものは適切であったとしても、システム化で逆に仕事自体が面倒になったり、そのためシステムの利用率が低いままであれば、意味がないという視点に立って既存のシステムを徹底検証し、適切な見直しを図るべきときと考えますが、ご所見を伺います。

○赤星総務局長 先ほど申し上げましたけれども、私ども、先生の指摘では遅いかもしれませんけれども、私どものITシステム、IT推進室の中に外部の専門家を交えました評価委員会というのを設けて、私どもの専門スタッフも六名つけた新しい組織を平成十六年度に発足いたしました。これからも、私ども、全力を挙げてシステムを全般的に見直していきたいと思います。
 ただ、私ども、各局、知事部局、警視庁、消防庁、それから公営企業等広大なシステムを抱えておりますので、私どもですべて、仕事の流れから、それらについてシステムまでチェックするということは非常に難しいところがございますけれども、可能な限り私どもの組織を、IT推進室だけじゃなくてほかのシステム、組織を活用しながら、今おっしゃったような組織目標を上げられるようなシステム開発に向けていきたいと考えております。

○近藤委員 自分たちで全部できないというふうにおっしゃるんでしたら、組織によっては、その部分を全く外部に委託しているところもあります。できないのでしたらば、そういった方法も検討の一つにしていただいて、おっしゃったように、きちっとした検証をしていただきたいと思っております。
 次に、IT推進室のあり方について何点か伺います。
 システムを導入するという際には、システムにより仕事をどのように効率化するかを考えて、それをシステム的にどのように実現するのかという二段階があると思います。現在は、各局にIT担当者が置かれ--IT担当者といいましても、必ずしも専門家ばかりではなく、局によっては企画課長がその任に当たっているような、単なる充て職というケースもあると聞いておりますけれども、この二段階全部を、今のところ各局がみずからの責任で行うことになっています。
 しかしながら、昨年は一億かかった開発経費が、ことしになれば七千万で済むという事例があるように、まさに日進月歩で進歩するシステムの現状を常に各局が詳細に把握し続けることは不可能であり、これはかえって非効率的であると考えます。なぜなら、各局は、業務の専門家ではあっても、システムの専門家ではないからです。各局の果たすべき役割は、システムによって業務をどのように効率化したいのかを考えるのと同時に、システムによって何を実現したいのかを明らかにすることだと思います。
 それを受けて推進室は、システム的にそれをどのように実現していくのか、つまり、システムの基本的構想をどうするのか、業務要件に合ったハードウエアの選択や運用管理の方式などについて主導的な役割を果たすべきなのは、局ではなくてIT推進室であると私は考えます。
 この点が不十分なために、局によっては、本来それこそ自分たちで考えなければならない、仕事をどのように効率化していくのかという基本的な段階から外部業者に丸投げしてシステム導入を図っている局も多いという現実が起こるのだと思います。外部の事業者主体でシステムが構築され、そこに都の主体性は発揮されません。これでは、都庁内のシステムが全体的な統一性を欠くことはもちろんですが、政策的な見地に立った戦略的なシステムの導入やIT活用が図れないと、私は危惧しております。
 そこで、現在は細かい技術的なアドバイスに偏りがちに見える推進室のあり方を抜本的に見直して、政策的な観点から都庁全体のIT化を的確にサポートするコーディネーターとしての役割に重きを移していくべきと考えますが、ご見解を伺います。

○赤星総務局長 各局でまず仕事を--IT推進室に入ります前に、各局でシステムを開発する前に、それは当然、各局でそのシステムの必要性、それから効率性等はまず考えなきゃいけないかとは思いますけれども、IT推進室では、これまでに蓄積いたしました経験やノウハウに加えまして、効果的なシステム開発の事例も参考にしながら内容を精査し、各局の開発を今現在支援しております。
 今後とも、局間の取り組みに差が生じないよう、きめ細かく開発費用、運用経費を精査し、適正化を図ってまいります。

○近藤委員 いろいろ技術的なアドバイスはしていただいているようですけれども、基本的な統一性を欠いているために、例えば同じ給与のシステムでも各局がばらばらに構築しているというようなことがあり、これも、手当がそれぞれ、公営局などは知事部局とは違うというようなことをおっしゃるようですけれども、今のシステムの開発状況から見ると、統一的なものを持つのも不可能ではないというふうに私は思うわけです。
 ですから、何度も申しますけれども、全体的な都庁のコーディネーターとしての、もっと力強いリーダーシップを推進室には発揮していただきたいというふうに申し上げておきます。
 最後に、ITを活用して各局がいかに業務の効率を上げて、それを全庁的に政策としてまとめ上げ、最終目的として成果を都民へ還元するという視点が欠けていては、ITは単なる金食い虫となって、逆に今後の都政運営の障害ともなりかねないと考えます。
 また一方で、冒頭申し上げましたように、職員の大量退職を目前に控えて、都はそれぞれの職員が仕事の流れそのものを見直さざるを得ない状況に直面しています。だからこそ今、その一つの強力なツールとして、ITをもっと賢く使いこなしてもらいたいと切に願うものですが、現在の都は、この視点からのアプローチが弱いとの認識から、本日何点か質疑させていただきました。この点も踏まえ、今後の都におけるIT活用について知事のご所見を伺います。

○石原知事 大変大事なご質問をいただいたと思います。これは一種の文明批判といいましょうか、文明論につながるものだと思いますね。
 私、ちょっと時間がないのでアトランダムに申しますけれども、この間、あるテレビを見ておりまして、九州のどこか県でしたか、あるいは市でしたか、業者にプログラムを頼むことで非常に要するに支出がかさんで、ある人からアドバイスを受けて、研修を受けて、そこの職員が自分でそのプログラムをつくって、その方がはるかに効率がよく、また安価なITの使用で済んだというのを見まして、都庁で私、その質問をしましたら、いや、それは部門なりにやっているところもございますということで、大変心強い思いをしたんですが、いずれにしろ、IT化の目的というのは、都民サービスの向上と行政の簡素化、効率化であります。
 しかし実態は、いろいろまだ不十分な問題があって--いろんなところに問題があると思いますが、専門家も入れ、かつ、やはりこれからの文明を支配する一つのシステムですから、だれもこれを忌避するわけにいかないので、都の職員のこれから幹部になるような人たちが、やっぱり自分の職場の中で知恵を凝らしてプログラムも自分でつくっていく、そういう努力も研修も必要だと思っております。
 それから、申し上げたいのは、私は決してITというものは完全なものだとは思いません。都の要するに職員の業務として、例えば非常に親身な相談を都民から受けたときに、インターネットの往復というのは、私は、全然親身を欠いて、都民を満足させないと思いますよ。現に今、集団自殺をとめようという「いのちの電話」のボランティアもおられますけれども、これは年輩の人が多いので、プログラムがつくれない、それからインターネットがつくれない。そうするとつまり、それで交流ができないというけれども、本当なら、やっぱり肉声に近い、要するに電話での応答の方が、こちらの気持ちも伝わり、向こうも自分の心情を訴えられると思いますけれどもね。ですから、何から何までITで済む問題じゃない、それは私たち大いに自戒しながら、これを都民のために有効に使う手だてを講じていきたいと思います。

○樺山委員長 近藤やよい委員の発言は終わりました。(拍手)
 以上で、本日予定いたしました質疑はすべて終了いたしました。
 なお、明日は、午前十一時から理事会を控室一で、また午後一時から委員会を本委員会室で開催いたしますので、よろしくお願いをいたします。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後九時四十分散会

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