東京都議会予算特別委員会速記録第三号

○前島副委員長 初鹿明博委員の発言を許します。
   〔前島副委員長退席、富田副委員長着席〕

○初鹿委員 まず最初に、昨年の第三回定例会の一般質問で取り上げました幼児用ヘルメットについて質問をいたします。
 その際私は、補助いすに幼児を乗せた自転車の転倒事故が多く発生をしており、頭部を強打して重大な結果に陥っているケースがあることを指摘し、補助いすに幼児を乗せる際にはヘルメットを着用するよう勧めるべきだと主張いたしました。そして、東京都においても、補助いすつき自転車の危険性や安全対策について普及啓発をする必要があると質問をいたしました。知事も大変興味を持っていただいて、会合などでもこの件について発言をされたと伺っております。
 この私の質問を契機としまして、東京都がこの四月から一カ月間、自転車の転倒事故から子どもを守るためにヘルメットの着用を推進するハートフルメットTOKYOキャンペーンを行うということは、大変評価をするところです。
 キャンペーンの実施を発表して以来、都の呼びかけによって業界団体や各種団体からヘルメットの提供を受けたというニュースが流れるなど、非常に多くの新聞やテレビで、この問題が取り上げられるようになりました。
 さらに、先週ですけれども、杉並区が、区内の二歳児全員、三千五百人いるそうですが、このヘルメットを無償で配布するということを発表しました。これは昨年の質疑の際に、知事が、「ヘルメットを提供するぐらいのことは、それは金銭にすれば易しいことですけれども」、「それに対する補助ぐらいのことは簡単でしょうけれども」といったことが刺激をしたんじゃないかなと思います。
 それはさておきまして、これまでヘルメットを購入しようとしましても、取り扱っている自転車店が少なかったり、仮に取り扱っていても種類が少なく、選択の余地が余りなかったんです。ところが、今こうやって報道がされることによって、自転車店の店頭にも、当たり前のようにたくさんの種類のヘルメットが並べられるようになりました。これも、実際に、本当に普及するのかどうかわからない中で、不安を覚えながら協力してくださった関係団体の皆様の努力と、また、その関係団体に対して粘り強く働きかけを行ってくれました東京都の担当者の皆様の努力の結果だと、ここで敬意を表したいと思います。
 さて、皆さん、ヘルメット、ヘルメットといいますけれども、恐らくヘルメットというと、工事用のヘルメット、白いヘルメットなんかをイメージするんじゃないかなと思いますので、きょうは現物を持ってまいりました。(実物を示す)これが、私の四月で二歳になる娘ので、これが今四歳の息子が使っているやつです。ぜひこれを手にとってもらいたいんですが、知事、ちょっと持ってください。
   〔知事に実物を渡す〕
 非常に軽量です。これは格好いいんですよね。これを取って、飾りも取れるようになっているんですけれども、ぜひ手にとってください。非常に軽いんですね。(「幾らぐらいするの」と呼ぶ者あり)大体これは二千八百円で買いました。あれは大体二千五百円ぐらいです。この重さなら、幼児がかぶっても頭が重くて危ないということはありませんね。
 ところが、このキャペーンを発表して以来、新聞などをにぎわしているんですけれども、このヘルメットを着用させて自転車に乗っているお母さんというのは、まだまだ少数派なんですね。私も最近気をつけて見るんですが、やはり十対一にいくかどうかなというぐらいだと思います。したがいまして、こういうお子さんを持っているお母さんたちに直接働きかけることが必要だと思いますので、そういう意味では、今回このハートフルメットTOKYOキャンペーンというのは非常にいい試みだなと思います。
 それで、具体的にどのようなことを行っていくのかをまずお伺いいたします。

○山内生活文化局長 今回のキャンペーンは、具体的には、まず都の呼びかけにこたえて、関係業界、団体等から提供された幼児用ヘルメット約二千個を、協力の得られた区市を通じて保護者に配布いたします。利用状況等についてアンケート調査を行うこととしております。また、都内約三千の全幼稚園、保育園等に通うすべての保護者に対しまして、事故防止とヘルメット着用の必要性をわかりやすく呼びかけるリーフレットを配布いたします。
 さらに、区市町村では、警視庁の協力を得ながら、幼稚園、保育園等と連携し、啓発ビデオなどを活用した親子参加型の安全教育を行うこととなっております。

○初鹿委員 交通安全運動などで行う出前をしての安全教室というのは、実際に目で見て危険がわかるので非常に重要だなと思います。ヘルメットの着用の必要性というのを、やっぱり目で見て、危険がどうなるのかということをわからないと、なかなか理解されないんじゃないかなと思いますので、ぜひこの取り組みは進めていただきたいと思います。
 ところで、このキャンペーンは一カ月間なんですけれども、毎年赤ちゃんは生まれるわけですね。つまりは、毎年子どもを産んで新しくお母さんになる方はいるわけですよ。そういう人たちに、やはり継続的にこういう問題を認識してくださいということを普及していくということが必要なんじゃないかなと思います。ですから、この普及活動を一過性のものに終わらせるのではなくて、継続的にぜひ行っていただきたいと思うわけです。
 そこで、このキャンペーンの終了後における、先ほどアンケートといいましたが、そのアンケートの活用を含めた今後の普及啓発についてお伺いいたします。

○山内生活文化局長 ヘルメット着用の普及啓発活動は、ご指摘のとおり、一過性で終わらせるのではなく、継続的に行うことが重要でございます。
 今回のアンケートは、安全意識の変化、ヘルメットの利用状況や品質等について調査するものでございます。その結果は東京都のホームページで公表し、広くヘルメット着用を呼びかけるとともに、業界に対しても品質の向上などを働きかけてまいります。
 さらに、今後、交通安全運動などのさまざまな機会をとらえて、区市町村や関係機関、団体等と連携し、各種広報媒体の活用や安全教育の充実など、ヘルメット着用に向けて普及啓発活動を推進してまいります。

○初鹿委員 ぜひ継続的にこの普及啓発に取り組んでいただきたいと思います。
 また、幼児への普及というのも重要なんですけれども、アメリカの一部の州では、単独で小学生が自転車に乗る場合も義務づけているところがあるんですよ。これは、小学生だって転んで頭を打てば大きな事故になるので、単独で乗る場合についても、この普及というのを検討していただきたいなとお願いをさせていただきます。
 次の質問に移ります。
 ちょうど一年前、昨年のこの予算特別委員会で、社会的ひきこもりについて取り上げさせていただきました。昨年の質問を受けて、取り組み状況を確認することと、また新たな提案を含めて、何点か質問をさせていただきます。
 昨年も指摘をさせていただきましたが、ひきこもりという言葉は知っていても、まだまだ本当の実態は十分に理解をされているとはいえません。特に、また昨年もいろいろな事件が起こった中で、殺人事件などが起こって、その当事者がひきこもりであったとか、かつてひきこもっていたとか、そういうことだけが取り上げられるという非常に残念な報道がされております。このようなひきこもりに対する偏見というものをなくすためには、まず、ひきこもっていた方々が社会に戻ってきて、多くの人々と交流を持っていくということが重要なのではないかなというふうに感じます。
 現在、ひきこもっている方がひきこもりの状態から抜け出していくという上でも、やはりひきこもっていて抜け出した方が、明るく元気に、そしてしっかりと社会の中で位置を持って生活を送っていくということが重要だと思います。
 さて、生活文化局では、昨年の十一月にひきこもりについてのインターネットのホームページを立ち上げまして、ネット相談事業を始めました。十一月の開設以来の実施の状況について、まずお伺いいたします。

○山内生活文化局長 ひきこもりの相談は、開始から本年二月までの四カ月間で、百九十五名の相談者から、延べ四百六十二件の相談が寄せられております。相談者の内訳は、ひきこもりの本人からが五七%、親及び兄弟姉妹が三五%、その他が八%となっております。
 ひきこもり本人の年齢は、二十代が六〇%と最も多く、次に三十代が二三%、十代が一三%、四十代も四%おります。また、男女別では男性の方が多く、約三分の二を占めております。

○初鹿委員 いろいろなところでの調査結果も出ておりますが、大体同じような調査結果になっていると思います。こういった調査結果を参考にしながら、今後はより具体的な対策に乗り出す必要があると考えます。
 昨年も指摘をいたしましたけれども、このひきこもりの対策は、例えば学齢期の不登校のときには教育庁、そして卒業して相談をするところや、また、医療的なケアなどについては福祉保健局、また、就労の支援となると産業労働局と、段階やその状況に応じて担当部局がかわっていってしまって、たらい回しになっているような印象を当事者が受けているわけです。
 こういったことがないように十分に連携をとるように昨年求めさせていただいて、「行政、NPO等の連絡会議を設け、都の関係各局、区市町村及び民間団体の間で情報交換を行うこととしておりますし、ネットワークづくりなど、連携のあり方についても検討してまいります」と生活文化局長から答弁をいただいております。
 今後は、さらに進めて、より具体的な連携のあり方をしっかりと構築する必要があると考えます。ひきこもり対策をより実効性のあるものにしていくためにも、今回のネット相談による成果を関係各局に伝え、今後の体制づくりに役立てていくべきだと考えますが、いかがでしょうか。

○山内生活文化局長 今後、インターネットによるひきこもりの相談事例を積み重ねてまいりまして、専門家によるひきこもり状況の分析を行ってまいります。
 また、ひきこもりに関する施策にこの分析結果を活用するため、庁内の連絡調整会議において、関係局に対し情報提供を行います。
 さらに、ひきこもりに関する支援事業を行っているNPO法人等との連携の方法などを具体的に検討してまいります。

○初鹿委員 ただいまのお答えを受けまして、では、次は、直接ひきこもりの方々や家族と接する機会の多い関係局にまず伺います。
 福祉保健局は、ひきこもりの本人や家族の相談に的確にこたえることのできる専門性を持った相談機関を幾つか持っています。しかし、ひきこもっている方をその状態から抜け出させるためには、行政の力だけでは限界があると思います。ひきこもり対策を効果的に進めるためには、行政だけではなく、NPO法人などの民間団体を活用していくことが重要です。
 NPO法人の中には、ひきこもりの方の家族によって立ち上げられたものもあり、行政では対応のできないような相談についても対応しております。例えば、埼玉県では、ひきこもりから抜け出た方による訪問相談を行い、実績を上げているNPOもあらわれております。
 福祉保健局は、このようなNPO法人の支援も含めて、ひきこもり対策についてどのように対応していくのか、お伺いいたします。

○幸田福祉保健局長 ひきこもりについての相談は、児童相談所や保健所などにおける通常の相談業務の中で、電話や面接により対応しているところでございます。また、医療的ケアを必要とする場合には、精神保健福祉センターにおきまして、デイケアや家族教室などの支援も行っております。
 引き続きこうした支援に努めるとともに、今後は、支援活動を行っているNPO法人に対して、都がこれまで培ってきた専門的なノウハウを提供するなど、ひきこもり対策の充実に努めてまいります。

○初鹿委員 昨年の質問でも申し上げましたけれども、ひきこもり問題の最終的な出口というのは、やはり仕事について自立をしていくことではないかなと思います。ひきこもりの状態から抜け出し、仕事につくことによって、社会的にも経済的にも自立をし、社会を支えていく側に立つことができます。
 都は、ひきこもり状態を脱し、働く意欲はあるものの、長年ひきこもっていたためになかなか就職ができない人たちに対して、就労支援を行っていく必要があります。都では、昨年から社会問題として認識され出しました、仕事にもつかず、教育も受けていない若者たち、いわゆるニートの対策に乗り出しています。ニートは四つの分類に分けられるということですが、この中にひきこもり型に分類される方も相当いると思います。
 さて、しごとセンターでは、キャリアカウンセリングを含むきめ細やかな相談体制をとって、若者の就労問題に取り組んでいることは評価をいたします。しかし、ニート対策ということを打ち出すことによって、まだひきこもり状態から抜け出ていない方本人や、また、その家族が相談に訪れるという可能性も相当あるのではないかなと思います。というのも、やはりひきこもりの状態にある家族が、最も深刻にこういった問題を考えているからではないかと想像できるからです。
 このように、ひきこもりの状態から抜け出ていないと判断をされる場合でも、就労ができる状態ではないからといって門前払いをするのではなくて、やはり何らかの対応をする必要があると考えます。
 そこで、まず一つは、ひきこもりの状態を脱し、働く意欲を持つ方々に対してどのような就労支援を行っていくのか。また、就労支援を行っていく中で、ひきこもり状態から完全に抜け出ていない方への対応について、あわせてお伺いいたします。

○関谷産業労働局長 お話のように、働く意欲を持ちながらも仕事につけずに悩んでいる人たちを支援するために、都はしごとセンターを設置し、一人一人の適性や状況に応じたきめ細かな対応を行っております。
 ひきこもり状態を脱し、社会的な適応力が身につき、就労を希望する人たちについても、このしごとセンターにおいて支援をしてまいります。また、必要に応じ、関係する専門相談機関と連携するなど、適切に対処してまいります。

○初鹿委員 今お答えにあった専門相談機関との連携ということが非常に重要なんだと思います。先ほど例に挙げましたけれども、産業労働局のしごとセンターに、ひきこもりからまだ抜け出ていない人が相談に来るのと、その反対に、福祉保健局の相談機関の方に、ひきこもりは完全に抜け出て外出もできるようになっているんだけれども、長年ブランクがあるために、なかなか就職できないという若者が相談に行くというケースも考えられると思います。
 ひきこもりに対するそれぞれが連携をして、こっちに相談に行った場合に、自分のところじゃない場合にこっちにも相談を持って、こっちに行ったときもこっちにという連携がとれるようになるということが非常に重要なんだろうと思います。
 そこで、ひきこもりの方々をひきこもり状態から脱出させて、自立就労まで見守るひきこもり自立支援プログラムというものをつくることを提案させていただきます。
 イメージとしては、ホームレスの対策で自立支援プログラムをつくって、それぞれの状態に応じて、まず緊急一時保護センター、そして自立支援センターというように段階を踏んで、最終的に就労させていこうというようなプログラムで成功していると思いますが、それと同じように、今現在ひきこもっている状態にある人の相談はここに、また、そこから少し抜け出まして、外出や人とのコミュニケーションができるようになったら次の段階、さらに、就労に向けての訓練をするときは三段階目、そして、最終的に実際に就労するためには四段階目というように階段状に、そこは横で連携していくような、そういうプログラムをつくればうまく進んでいくのではないかなというふうに考えます。
 ホームレスの問題と異なって、関係局が幾つか複数にまたがるために難しい面もあろうかと思いますが、生活文化局が中心となって連絡調整会議を設けているんですから、各局に働きかけて連携をさらに強めて、このひきこもり自立支援プログラムを構築することを検討していただくよう要望させていただきまして、次の質問に移ります。
 次は、障害者施策について質問いたします。
 施設から地域での生活へ、また、措置から支援費制度の導入と、障害者に対する施策が大きな転換点を迎えております。また、障害を持つ児童の教育についても、特殊教育から特別支援教育への転換が行われております。そのような状況の中で、障害を持つ本人や家族の期待と不安とが入りまじり、関係者は本当に当惑している状態にあるというのが現状ではないでしょうか。
 このような認識のもとで、以下質問をしてまいります。
 特別支援教育への転換や、また、知的障害養護学校の生徒数の増加などに伴って、都では、養護学校の再配置計画を打ち出し、実際に動き出しております。これに対して、現在通学をしている児童生徒の家族から不安の声が上がっているのも事実です。この原因として、一部に不安をあおるような反対運動をしている団体があることも事実ですけれども、それ以上に、やはり説明不足ということも否めません。
 昨年の第四回定例会に請願の出されました寄宿舎についても、やはり関係者に対する説明が不足をしていることが、不安をかき立てる原因になっているのだと思います。
 さて、寄宿舎ですけれども、通学困難な児童生徒を対象として発足をいたしましたが、家庭の事情や教育上の理由での入舎も認めてまいりました。その後、スクールバスの整備や交通網の発達により、通学困難を理由とする入舎は八・六%、ほとんどが島しょ地域の方だと思いますが、となっているということです。つまりは、ほとんどの児童生徒が、家庭の事情や教育上の理由によって入舎しているということになります。
 今後は、この寄宿舎の本来の設置目的である、入舎理由を通学困難に限定した上で、適正に配置を見直しをしていくということですが、やはりこれまで寄宿舎が負ってきた役割というものを全く無視することはできないと考えます。
 一つは、卒業後の自立生活を営む上で、教育上の理由による入舎が大きな成果を上げてきたという現状があります。この機能を全くなくしてしまっては、卒業後、地域での生活を進めるという施策とは全く逆行することになるのではないかなというふうに思います。
 特に、知的障害のある生徒に対する生活訓練、それも一定期間親元を離れての生活訓練は、卒業後の自立生活を考えると非常に重要であると考えます。本来なら、寄宿舎が設置されていない学校でも、生活訓練を一定期間かけて行う機能を持つ必要があると思うんですが、スペースの問題や財政的な理由を考えると、これは現実的ではありません。また、現状ですと、寄宿舎が設置されている学校と設置されていない学校との間で差が生じているというのも事実としてあります。
 知的障害のある生徒が、卒業後、通勤寮やグループホームなどで生活していくためには、在学中に生活訓練を重視した宿泊行事を実施するなど、自立に向けた指導を、養護学校に通うすべての生徒に対して充実していくことが必要だと考えますが、いかがでしょうか。

○横山教育長 知的障害養護学校におきましては、社会的自立に向けた生活訓練を教育課程に位置づけて毎日行っております。その発展として、校内での宿泊体験や校外での移動教室、修学旅行などを実施しまして、基本的生活習慣の確立や集団適応能力の伸長を図っているところでございます。
 今後、こうした宿泊行事を、生活体験を重視した内容に改善しますとともに、長期休業中には寄宿舎が使用されていませんことから、当該校のみならず、他の知的障害養護学校も寄宿舎を利用できますようにしてまいります。

○初鹿委員 今まで、長期休業中、夏休みとか冬休み、春休みは寄宿舎が全く空っぽの状態だったのを、これからはほかの学校の生徒も利用するということですから、活用するということですから、これは非常に前進だなと思います。
 さて、次は、家庭の事情による入舎について考えていきます。
 母子家庭であったり、共働きであったりと、就業形態により養育が困難なケースや、親自身も障害を持っていたり、病気を抱えているなどのケースで入舎をしている生徒も実際にいます。また、緊急一時保護的な入舎や、家族のレスパイトのための機能もこれまで果たしてきていたようでございます。
 寄宿舎として見た場合、このような利用の仕方は本来的な機能ではないのは事実ですけれども、ほかにかわりとなるような機能が十分に整っていない、不十分な現状では、やむを得ないという面もあります。ほかに代替する機能を充実することなく、家族が今までよりどころにしてきたこの寄宿舎の機能を全くなくしてしまうというのは、やはりちょっとやり過ぎなのかなというふうに思います。
 これは寄宿舎のある学校に限った問題ではなくて、また、学齢期のお子さんを持った家庭だけに限った問題ではなく、障害を持つすべての家族が抱える問題だともいえます。
 このような現状を踏まえて、障害児とその家族に対して、都はどのように支援をしていくのか、お伺いいたします。

○幸田福祉保健局長 障害児とその家族に対しましては、在宅生活を支援するため、区市町村が、ホームヘルプサービスを初めさまざまな福祉サービスの提供を行っております。しかし、家族が病気などにより介護が困難になった場合に利用するショートステイ事業や、障害児の日中活動へのニーズは高いものがございます。そのため、都は、ショートステイの利用定員の拡充を積極的に進めるとともに、養護学校の児童を対象とした、放課後の活動や訓練を行う事業に対し、独自の助成を行っております。
 今後とも、障害児と家族が安心して地域で生活できるよう、区市町村と連携し、事業の充実に努めてまいります。

○初鹿委員 ぜひ、今答弁にありましたように充実をしていただくことが、やはり寄宿舎再編をする上での前提だということを申し述べさせていただきます。
 今、ショートステイの利用の定数を拡充するというお話がありましたけれども、現状ですと、緊急的にショートステイしたいといった場合に、一カ月前から予約しないと入れないような状況もあると聞いております。特に重症心身障害児については本当に施設が足らないということで、大変困っているご家族がいるということです。そういう意味では、ことしの十二月に、私の住む東部地域の障害を持つ皆さんが本当に待ちに待った東部療育センターがオープンするということは大変喜ばしいことでありますし、期待もしております。
 この入所と通所の両方の機能を持つ施設ですけれども、特に入所の定員は百二十名と限られているわけですから、多くの方は、在宅でこの施設とかかわりを持つということになっていきます。これは通所施設という機能を超えて、在宅で生活をする重症心身障害者を支援することが求められているということだと思います。
 そこで、この東部療育センターを在宅支援の中核施設とするべきだと考えますが、いかがでしょうか。

○幸田福祉保健局長 これまで整備されておりませんでした区東部に開設する東部療育センターは、重症心身障害児者の医療と療育を総合的に行う施設として、入所事業を初め、通所や外来診療などを実施する予定でございます。
 また、お話のとおり、東部療育センターでは、地域支援の中核的な施設として、療育の専門相談や、病院を退院した重症心身障害児を家庭療育へとつなげるための療育指導、かかりつけ医の確保による医療連携の推進など、さまざまな地域支援の取り組みを積極的に展開してまいります。

○初鹿委員 ぜひ在宅支援の新しいモデルとなることを大変期待をしております。
 さて、この重症心身障害児者の入所施設として都内で最も古い府中療育センターについて伺います。
 石原知事も、初当選後すぐにこの施設を視察に行っているということですが、私も昨年、視察に行ってまいりました。開設が昭和四十三年と、私の生まれた年の一年前で、ことしで三十七年になるんですかね。必要に応じて改修を行っているとはいいますが、かなり老朽化が進んでいることに驚きを感じるとともに、安全面での不安を感じました。というのも、今回、この議会では、防災対策ということが幾度となく取り上げられておりますが、防災上非常に不安を感じるということなんですよ。
 この施設、五階建ての建物なんですけれども、避難用の滑り台が設置されております。皆さん、見てください。(写真を示す)こういう滑り台なんです。ちょっと知事に写真を……。
   〔知事に写真を渡す〕
 らせん状の滑り台、スロープになっております。豊島園のウオータースライダーでも、こんなくるくる回らないんじゃないかなというような滑り台なんですが、これを重症心身障害児ですよ、ふだん、車いすやストレッチャーに乗っている方々を、どうやってこれで避難させられるんでしょうか。これは本当に私も見てびっくりしました。とてもじゃないけれども、この入所者の皆さんがここで避難できるとは思えません。
 また、エレベーターを増設しているといいますけれども、やはり大きな車いすとかストレッチャーですから、一台に入る人数というのは限られるわけで、しかも五階からずうっと入所者がいるわけで、各階で全員が避難するためにボタンを押したら、乗れないにもかかわらず各階停止になってしまったりと、本当に避難できるかどうか不安を感じるわけです。
 これはスペースや建物の構造上の問題ですので、すぐに改善することは困難でしょうから、当面は防災対策を徹底すべきと考えますが、ご所見を伺います。

○幸田福祉保健局長 府中療育センターでは、病棟の構造や入所者の障害の状態に合わせた消防計画と地震防災の手引を策定し、地元消防署も参加する総合防災訓練を年二回実施しております。
 また、毎月実施しているセンター独自の防災訓練でも、施設の現状や入所者の特性を十分に踏まえ、職員の少ない深夜帯を想定した消火訓練や、歩行困難な入所者の毛布による搬送訓練などを実施しております。
 今後とも、実践的な訓練を実施し、災害に対する備えを万全なものとしてまいります。

○初鹿委員 できるだけ火事を出さないようにしっかりやっていただくのと同時に、やはり早急な建てかえというのが必要ではないかなというふうに考えます。
 この府中療育センターは多摩メディカル・キャンパスの中にあって、現在そこでは、多摩広域基幹病院、小児総合医療センターの整備が進められております。埋蔵文化財が出てきたり、高圧電線を移設する必要が生じたりなどの理由で、開設が当初より二年おくれて、二〇〇九年末となってしまっております。これを待って建てかえの検討に取りかかるということになると、完成は一体いつになるのかなと。十年先もできるかどうかわからないというふうに思えるわけで、キャンパス全体の整備計画の中で検討しなければいけないというのはわかるんですけれども、現在建設しているこの二つの病院ができ上がったら、すぐに建設に取りかかれるようなスケジュールで、ぜひ病院経営本部と福祉保健局とで連携をとりながら、計画を進めていただきたいなと思います。
 今、老朽化による安全面の不安を指摘もいたしましたが、それだけではなくて、車いすが大型化したために置くスペースがないということや、医療機器の発達により部屋に入り切っていない、また、廊下まで入所者があふれてしまっているとか、ふろ場に脱衣所がないんですよ。開設当時は、そういったものが必要ないという意識だったんでしょうか。現在は、廊下をカーテンで仕切って、そこを脱衣所にしている等、設備の面でもいろいろ問題があるわけで、一日でも早く建てかえをしなくてはならないということを強調させていただきます。
 次の質問に移ります。次に、発達障害者についてお伺いいたします。
 発達障害者支援法は成立をいたしましたが、十一日ですか、公明党の中嶋議員の質疑にもありましたとおり、発達障害の診断を行うことのできる専門性を持った医師も十分にいるとはいえない状況です。つまりは、この支援を進めていく上で最も重要な点は、発達障害についての理解を深めていくことです。特に保健所の職員や教員、保育士など、直接かかわりを持つ方々に対する研修は非常に重要であります。
 これまでも研修や講習には取り組んできていると思いますが、具体的な支援につなげていくためには、これは昨年、私が厚生委員会でも指摘をさせていただきましたが、単に大人数を集めて講習会をするというだけではなくて、体系的、実践的な研修を計画的に行う必要があります。
 平成十七年度においては、発達障害の相談に当たる職員などに対しての研修をどのような方針で行うのか、お伺いいたします。

○幸田福祉保健局長 都は現在、母子保健研修の中で、保育士などを対象に、発達障害を正確に理解するための基礎的な研修を実施するとともに、自閉症・発達障害支援センターにおいても、区市町村等からの個別の研修の要望に対応しております。
 これに加え、来年度から、支援センターでは、福祉専門職や保健師など多くの関係者が発達障害に的確に対応できる、専門的かつ実践的な研修を計画的に実施してまいります。

○初鹿委員 今、今まで個別の相談、個別の要請に応じて行ってきたといいましたが、来年度からは計画的に実施するということですから、ぜひしっかりと計画を立ててやっていただきたいと思います。
 この発達障害は、早期に適切な指導や支援を行うことが重要でありますから、学校での対応というのが非常に重要です。この学校での対応いかんによっては、才能を花開かせて社会に出て活躍するように成長していくのか、また、社会から孤立してしまって行き場を失うことになってしまうかが分かれるといってもいい過ぎではないでしょう。つまりは、学校の教員の役割というのが非常に重要だということです。
 特に小中学校の教員に対して、発達障害に関する理解啓発や研修を幅広く行っていく必要があると考えますが、教育長、いかがでしょうか。

○横山教育長 ご指摘のように、特別支援教育を推進していくためには、心身障害教育に携わっている教員にとどまらず、小中学校のすべての教員がLDやADHD等の発達障害を理解して、適切に指導できるようにすることが重要だと思っています。
 このため、平成十七年度から新たに特別支援教育コーディネーターの養成研修を計画的に実施しますとともに、区市町村教育委員会と連携しまして、平成十九年度を目途に、すべての小中学校において特別支援教育コーディネーターを教員の中から指名できるよう努めてまいります。

○初鹿委員 今まで、パンフレットがあるんですが、こういうパンフレットを配るだけではなくて、ちゃんとわかるように。このパンフレットだけだと、なかなか読んでわからないと思うので、しっかりと実践的な教員の養成を行っていただきたいと思います。
 できれば、すべての教員一人一人に、この専門的な知識を習得させていくことが必要なんだと思いますが、時間もかかり過ぎますので、今答弁にありましたように、特別支援教育コーディネーターという、この発達障害児の支援の核となる人材を養成するというのは大きな意義があると思いますので、十九年度までということにとらわれずに、できるだけ早く、都内の全小中学校にこの特別支援教育コーディネーターを指名するように求めさせていただきます。
 次に、予算の復活要望の中で復活させていただきました、一千五百万円の予算がついて復活をした、発達障害者支援体制整備事業というものについてお伺いいたします。
 来年度からこの事業を実施するということで、障害児施設などにおける第一次的相談のモデル事業とありますけれども、この事業についてどのように取り組んでいくのかをお伺いいたします。

○幸田福祉保健局長 発達障害につきましても、早期発見、早期療育が何よりも重要でありますが、発達障害児本人とその家族を支える相談、療育の場の確保が課題となっております。
 お話のモデル事業は、都内の通園施設における障害児への支援の技術や経験を豊富に有する職員のノウハウを応用しながら、発達障害児のコミュニケーション力、社会性や協調性の向上などを図るための各種の指導を計画的に行うものであります。
 都としては、このモデル事業の実施により、相談、療育の場の確保が推進されるよう、積極的に取り組んでまいります。

○初鹿委員 現在、自閉症・発達障害者支援センター一つが中心になって相談を行っているわけですが、この事業ができることによって、もう一つふえるといってもいい過ぎではないわけですよね。できれば、理想をいいますと、各区市町村ごとに相談や支援を行うことのできる機関が整っていることが理想なんでしょうけれども、そのためにも、やはり自治体の職員や、それに関係する方々の理解というものが進んで、レベルアップが進んでいくことが重要だと思いますので、多くの方が実践的な研修が受けられるように取り組んでいただくよう求めて、次の質問に移ります。
 ひきこもりの問題や障害児童への援助について、今までいろいろ質問させていただきましたけれども、それぞれの援助の段階や、かかわる場所に応じて、教育施策であったり、福祉施策であったり、就労施策が提供されていたり、それぞれ連携はされているとは思いますが、やはり縦割りという印象は否めないなと思います。
 また、障害児童に関していいましても、対象となる児童や保護者は同じなのに、学校に通っているときは教育ということになります。ところが、下校して家庭に戻っての援助となると福祉の分野の話になる。こういったように、当事者とは関係なく、行政の都合でいろいろと施策が分断されているという状況は余り好ましくない。本来はもっと総合化、共通化の方向を目指すべきではないかなというふうに思います。
 また、障害者施策の中で見ても、現在は、身体、知的、精神といった障害別にサービスが提供されていて、できるだけ制度を共通化して、障害者のニーズに応じた施策を一体として提供する方が有効ではないかなというふうに考えます。
 また、いろいろな施設の基盤整備に関しても、国の方は、障害者をこれから地域生活へ移行しようといいながらも、国庫補助金の問題でいえば、なかなか補助金を出さないということが続いております。平成十六年度においては、東京都が国庫補助事業で申請したうち、十八件申請をしておきながら、採択されたのは七件です。十八件のうち七件しか採択されておりません。
 それで、今年度、厚生労働省から、一月十八日に次のような通達が来ております。障害者の保健福祉部門の福祉施設等施設整備費の国庫負担にかかわる協議についてというので、ここに何が書いてあるかというと、各自治体、二件程度を協議対象とすると。つまり、新規については二件しか受け付けないよといっている。
 これに対しては、東京都を初めとして自治体が抗議をしたということですけれども、実際に国の方針というのは、今いったように、地域での生活をといいながら、基盤整備については一切金を出さないという、全くいっていることとやっていることが違う、本当に憤りを感じるような態度しかとっておりません。
 また、今、国会でも審議にこれから入ると思いますけれども、障害者自立支援法という、支援費を活用する障害者に一律で一割負担を求めるというような内容で、これは、支援費の財源が足らないということがないように義務的経費にするということで、行政の方は責任を持つ、そのかわりに障害者も一定の負担を持ってくださいということなんですが、市町村からすると、今までの制度だと、市町村の側でサービスの供給をちゅうちょするような状況だった。今度は、市町村の側はそれを受けられるようになっても、一割負担ということで、障害者の方がサービスを受けることをちゅうちょするようになってしまうということではないかなと。
 実際にどのような内容になるのかは、これからの国会の審議ですので、まだそれを見ていかないとわかりませんけれども、非常に私が感じるのは、障害者のことを考えないで、ちぐはぐな対応がされているのではないかなというように思います。
 また、この議会の代表質問で名取憲彦幹事長からも指摘をさせていただきましたが、地域の中で施設をつくろうとすると反対運動が起こってしまうという、障害者に対する差別や偏見というものもまだまだ根強く残っていて、なかなかこの施設の整備も進んでいかないという、これに対して、やはり何らかの対策をとる必要があるのではないかなというふうに思います。
 都では、このサービス基盤の整備を進めるために、障害者地域生活支援緊急三カ年プランに基づいて、サービス基盤の整備に取り組んできているわけですけれども、ことしが最終年度ということです。
 こういった状況を踏まえて、最後に知事に、今後の障害者施策についてどのように取り組んでいくのかをお伺いいたしまして、質問を終わらせていただきます。

○石原知事 障害者の地域での自立した生活を実現するためには、おっしゃるとおり、教育、福祉、就労面から、世代やその病状の特性に応じた総合的な施策を展開することが重要、必要だと思います。
 といって、なかなか障害者のためだけに一局を設けるわけにいきませんので、要するに、あとはその行政の主体者の心遣いといいましょうか、意識の問題だと私は思います。
 このため、都は、グループホームや通所施設などの基盤整備を初め、さまざまな取り組みを進めてまいりました。
 現在、国が進めている、身体、知的、精神障害者施策の一元化も、ひとしくニーズに応じてサービスを提供できるという点では評価もいたしますが、国は、サービス基盤拡大のための方策などで、いまだに詳細を明らかにしておりません。
 都は、今後とも、独自にサービス基盤の充実を図るなど、障害者施策に、組織を超えて、ラインをまたいで、横断的、総合的に取り組んでいくつもりでございます。

○富田副委員長 初鹿明博委員の発言は終わりました。(拍手)

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