東京都議会予算特別委員会速記録第二号

○樺山委員長 大河原雅子委員の発言を許します。

○大河原委員 都議会生活者ネットワークの大河原でございます。生活者ネットワークを代表いたしまして質問をさせていただきます。
 さて、代表質問でも申し上げましたが、来年の平成十八年をピークとして、日本の総人口が減り始めるという時代になりました。人口減少時代に向けて、国も東京都もどういうビジョンを立てるかが問われているわけです。
 私どもは、キーワードは、持続可能な社会の構築というふうに思っております。今を生きる人にも、それから未来に生きていく人たちにも負担をかけない、ツケを回さない、そして、自然と、それから経済を統合、共生、協調させていく、こういう時代をつくるために、今、大きなモデルチェンジを必要としている、そのように考えているわけなんです。
 知事、ご存じでしょうか、今、本屋さんに行くと、この本が売れております。これは東大の山本良一先生が責任編集と書いてありますが、「世界を変えるお金の使い方」という本なんです。これは、本屋さんに行きますとビジネスコーナー、いかにお金をつくり出すか、効率よくつくり出すか、また場合によっては、自分、個人の資産についても、本当にだまされないようにどうやってつくるかというような発想の本ばかりです。お金を生かすという意味で、地球をより持続させていくための使い方というのは、なかなか教授してくれる本がこれまでなかったというふうに思います。
 私たちは、東京都の財政についても、しっかりとした、生活をする目で、持続可能性を求める、そういう視点からチェックをしていきたいと活動しております。
 さて、来年度、平成十八年度からは、地方財政法に基づいて、自治体の首長の裁量で起債が自由化されることになります。何度もこの委員会でも例に出てきましたが、国の借金の残高が五百三十八兆円。十年前には二百二十五兆円だったわけですから、起債というのは、一たん歯どめが外れると、雪だるま式にといってもいいかと思うんですが、短時間でも大変増大する、そういう危険性をはらんでおります。人口減少時代を前提として受けとめるに当たり、次世代へのツケを極力抑制していく、当然のことかと思うんです。起債について、都は今後とも、現在の、今年度予算編成をしたその方針を堅持して、将来世代の負担に十分配慮した適切な活用に努めるべきだと思うんですが、知事にまずその点を伺いたいと思います。

○石原知事 起債に関しての都の基本的な姿勢は、今ご指摘のとおりのつもりでございます。やはり世代間の負担の公平性というものを考えながら、時々の財政状況などを見きわめて発行をするものでしょうが、これはもう本当に少ないにこしたことはないと思います。
 今の内閣ではありませんけど、前のある内閣の、ある経済閣僚に、塩漬け、塩漬けという言葉を君らはよくいうけど、どういうことなんだといったら、要するに、借りかえ、借りかえしていて、そのうちみんな忘れちゃうというんですが、忘れる人は忘れるかもしれませんけど、代がかわって、それを押しつけられる後の世代は大変なんで、本当に現状逃避でしかないと思いましたし、これも逆にその反面教師で、いい言葉を聞きましたと思いましたが、都はそういう轍を踏まないつもりで、これからも自重していきたいと思っております。

○大河原委員 今年度は、第二次財政再建プランの折り返しの年でございます。予算案を見せていただきますと、数字上には改善が見られる。低成長の時代に向けて一歩踏み出すためには、こういうところからこそ始めなきゃいけないというふうに感じるものがあります。そういった意味では、よりこうした厳しい状況にこたえていくということを想定して、基本的な戦略を速やかに構築していくことが必要だと再度申し上げておきたいと思います。
 予算説明書には、目的別に財源が示されているわけなんですが、決算書では、歳出と歳入の関連が明確に示されているとはいえません。また、行政評価によって事務事業評価もしているわけですけれども、その際にも必要な情報がすべて提示されているとはいいがたい現状がございます。全体像をつかむことがとても困難ということなんです。
 決算審査の場において、決算書の改善を要望してまいりましたけれども、公会計制度の改革によって、PDCA、つまりプラン・ドゥー・チェック・アクション、このサイクルを確立すること、これを、不断の事務事業の改善を進めるというふうに考えるならば、予算から執行、決算、これに至るまで、必要な情報が過不足なく、都民にわかりやすい形で情報提供される、そういった仕組みづくりが必要だと考えております。改めて出納長の見解を伺いたいと思います。

○櫻井出納長 公会計制度改革は、官庁会計に複式簿記・発生主義を導入することによって、都における会計処理を根本から改めることになりますけども、その取り組みの中で、都民の方々あるいは都議会にもよりわかりやすい決算書を作成することが重要であるというふうに考えてございます。
 今後、新たに作成する財務諸表に基づきまして、都の財務状況や財政運営に関する情報をわかりやすい形で提供できるよう、さまざまな工夫をしますとともに、こうした情報を、事務事業の見直しや行政評価、予算編成などにも活用していくことで、マネジメントの強化を図るとともに、職員の経営感覚やコスト意識の醸成などに取り組んでまいります。

○大河原委員 ただいま、都民にわかりやすい形で作成された資料、それから、その評価、情報を提供していくように工夫するということでしたが、ぜひこれはお願いしたいと思います。都民にも、リテラシーといいますが、これを読み解く能力の形成が必要ですけれども、やはり行政として説明責任を果たす、このコミュニケーションは非常に重要です。
 そして、第二点目、もう一つ申し上げておきます。
 私は、都議会で活動させていただくようになりまして、ことしで足かけ三期ですけれども、今の予算書もそうですが、百万円を単位にしておりますよね。都庁の皆さん、まあ、ゼロが多い予算書や決算書を見るわけですから、間違いがあっちゃ困るということで、便宜上は百万円を一円って恐らく数えていらっしゃった、こういうことを聞いております。しかし、使い方において、百万円を一円って考えるような、そういう端数のところを全部切られてしまいますけれども、ちりも積もれば山となるで、そんな大まかな考え方で予算の執行をしていただかないように、ぜひお願いいたします。
 次に、都の国際政策と留学生支援策についてお伺いをしていきたいと思います。
 東京都の外国人登録人口、これは三十五万五千人ということで、人口の約三%、新宿区の人口を上回るわけなんですね。東京に在住する外国人というのは、知事の東京ビジョン、これは千客万来の世界都市東京をつくるということですから、東京の経済や文化に活力を与え、そして国際都市を目指す東京のコンパス、羅針盤になるような重要な役割を持っていると私は考えております。
 しかし、この国際都市としての水準を高める、東京の魅力を高める、東京の再生、活性化に役立つ、こういうためには、これらの外国人の方々の声を真摯に受けとめるということが必要になってきております。これまで東京都はどのような認識で取り組まれてきたのか、この点についてお答えください。

○山内生活文化局長 外国人住民への対応は、基本的に区市町村の役割であり、都の役割は、広域的な立場から区市町村を支援することと認識しております。
 東京都は、平成十三年度に設置しました地域国際化推進検討委員会の提言を踏まえまして、外国人向けの防災マニュアルや、まちの表記ガイド等を作成し、区市町村、大使館、民間外国人支援団体等に提供してまいりました。
 本年二月には、地域国際化推進検討委員会から、在住外国人向けメディアとの連携による生活情報、行政情報の提供などが盛り込まれた中間答申をいただいたところでございます。

○大河原委員 世界じゅうにTOKYOあるいはTOKIOっていいますけれども、名前は知れ渡っているわけですね。だけど、その国際都市東京の内実はどうかというところが問われるわけなので、今、局長のお答えですと、こうした外国人の方々の問題も区市町村が第一義的には、というご答弁だったんですね。でも、やはり世界都市東京、東京の広域の部分も今お答えいただきました。役割分担、連携も含めて、ぜひきちんと進めていただきたいというふうに考えております。
 しかし、一方で、外国人の人権にかかわることについては、差別的な壁も現実に存在しているといわなければなりません。その解消、そのための対応が求められているわけですけれども、それでは、この点についての東京都の認識とこれまでの取り組みはいかがだったでしょうか。

○赤星総務局長 東京には多様な国籍の外国人が暮らしておりまして、言語や宗教、生活習慣等の違いから、さまざまな問題が生じていることは承知しております。
 都では、広域的な立場からの各種相談や情報提供等を行いますとともに、都民に対しましては、国際化時代にふさわしい多様な文化を受け入れ、理解するよう普及啓発に努めるなど、各局連携して取り組んでおります。

○大河原委員 三十五万人の外国人住民の方が快適に東京での暮らしを進めるためには、さまざまな情報を簡単に、そしてまた、使いなれた母国語で収集できるようにするということが重要です。
 多文化共生のまちとして東京を育てていくためにも必要な機能として、外国人住民のニーズにこたえられるような情報提供と、また相談機能を備えること、地域住民との交流の拠点ともなる機能が必要だと考えております。この点についての見解を伺いたいと思います。

○山内生活文化局長 外国人住民への情報提供は、先ほども申し上げましたけども、相談などについては、区市町村で行うことが基本であるというふうに考えております。
 都は、区市町村による情報提供を支援するため、例えば、四カ国語による災害時のQアンドAマニュアルを作成、提供することとしております。
 今後、在住外国人向けのメディアと連携いたしまして、さまざまな言語の新聞や雑誌等を通じて、行政情報や生活情報を提供してまいります。

○大河原委員 既に外国語で発行されている新聞などにも、この東京都がエスニックメディアと連携をして情報提供をしていくということが大々的に報道されております。期待されるところだと思いますので、ぜひしっかりと進めてください。
 残念なことをもう一つ続けなきゃならないんですけれども、外国人犯罪の増加や不法就労の問題から、実際には日本に勉強に来ている留学生、就学生に対する風当たりまでもが強くなっております。我が国では、一九八三年に中曽根首相の提唱で、留学生受け入れ十万人計画が始まりました。目標から三年おくれたものの、二〇〇三年にこれを達成して、現在では年間十一万人を超えて留学生、ふえ続けております。昨年の受け入れ数は十一万七千三百二人、八三%がアジア地域からの留学生。そして、この大学がたくさんある東京には、約三万八千人の学生たちが学び、暮らしているというわけです。そして、留学生の九割は私費留学生となっています。
 留学生の留学生活を支える財政的な裏づけというのは、入国の条件であります。ですから、この点については一応のチェックはしているということですね。しかし、母国との経済格差は大変大きくて、また、東京は物価高で有名でございます。東京の物価高から、経済的な負担は留学生一般に大きくなっているといわなくてはならないんです。自由に働くことのできる日本人学生と違って、アルバイト、在留資格外活動というんですけれども、これにも制限がある留学生、就学生に対しては、学習環境、生活環境両面への支援が必要になっていると思います。
 留学生、就学生の現状と課題を東京都はどのように認識しておられるんでしょうか。お答えください。

○山内生活文化局長 都内には、日本語学校に通う学生も含めまして、五万人を超える留学生、就学生が学んでおります。
 都が平成十五年度に行った調査によりますと、留学生、就学生の経済状況や住まいの状況など、生活実態は非常に多様化しております。今後とも、留学生、就学生が良好な環境で学び、安心して生活できるよう、国に対して支援策の拡充を要望してまいります。

○大河原委員 この留学生十万人計画というのは、中曽根首相が東南アジアを歴訪されて、各地で旧来のご友人方とお会いになったときに、うちの娘や息子は東京、日本には留学させない、大変嫌な思いをして帰ってくる留学生を見ていると、そんなことはさせられない、ということがあって始められた、日本に帰ってきて、この計画を立ち上げられたというふうに聞きました。
 今、局長のご答弁にもありましたように、学生、学ぶということを本分とする方たちですから、良質な、そして安い宿舎を確保すること、これが充実した留学生活を送るために極めて重要であることは、どなたでもおわかりいただけると思います。留学生、就学生を受け入れる学校側の責任が第一義にあるわけですけれども、どのような現状ととらえられているでしょうか。公的な宿舎に入居しているのは、実は留学生の約四分の一にすぎません。十万人計画では、当初、目標は、四割を公的住宅で確保する、学生寮などをつくるということだったわけですが、これは未達成というふうに聞きました。引き続き公的な宿舎の増設が望まれますけれども、まず、旧都立大学での実績、そしてまた、新設となる首都大学の方針、この点はどうなっているのか、お聞かせください。

○村山大学管理本部長 都立大学におきましては、全体で約六千五百人いる学生に対しまして、二百人程度の留学生を受け入れてきております。このうち、寄宿舎、国際交流会館等公的宿舎に入居している留学生の数は、本年度の数字で申し上げますと七十七人でございまして、国の目標値でございます、さっき先生いわれた四割をほぼ達成しているというのが現状でございます。
 来月開学いたします首都大学東京におきましては、これまでの取り組みを継続するとともに、それに加え、新たな入居先の確保に努めてまいります。

○大河原委員 都立大の場合はほぼ目標の四割確保しているということなんですが、四割確保したということは、残りの六割の方たちとの差ですね。同じ留学生なんだけど、民間アパートに住むか、こういう公的な安いところに住めるかで、ここの格差もやはりますます是正を図っていただきたいというふうに思います。
 多摩地域は大学も多いわけですので、こうしたことも、他の大学との連携で、地域で留学生への宿舎支援、こういったことも考えられるのではないでしょうか。
 国からの建設助成も十分ではございませんし、一〇〇%公的な手当てが行われるわけではないので、当然、民間アパートへの円滑な入居を誘導する仕組みが必要かと思います。
 ところが、留学生の皆さんに伺ってみますと、多くの方々がさまざまなトラブルに遭遇しています。特に、民間宿舎やアパートへの入居には、家賃の高さとともに、実は連帯保証人という日本の慣習ですね、連帯保証人を求められるということで、こういった社会慣習が大きな障害になっております。大学の学生部長さんや学長さんが保証人になる、あるいは指導教授というところにも当たってみたけれども、なかなか了承されなかった、大家さんの方もそれでは納得しなかったなどということも聞きました。
 東京都の住宅基本条例には、十八条、民間賃貸住宅への入居に関する啓発という項がございますが、どのような取り組みを行ってきたんでしょうか。特に、外国人についてどのように対応してこられたのか、伺いたいと思います。

○梶山都市整備局長 高齢者や障害者などの暮らしを支え、外国人を含め都民のだれもが豊かに暮らすことができる社会を実現する上で、民間の賃貸住宅は大きな役割を担っております。
 都としては、高齢者、障害者、外国人の民間賃貸住宅への入居の機会が制約されることのないよう、これまでも、パンフレットや相談窓口、説明会等において啓発を行ってまいりました。
 また、外国人についても周知するため、都が主催する講習会を初め、さまざまな場において、宅地建物取引業者に対しまして啓発を行ってきております。

○大河原委員 実は現在、年間七千五百円の負担で、加盟大学が提携をして保証人となって、火災や事故などによる損害賠償に加えて、家賃の未払いも補償対象とする留学生住宅総合補償制度というのができております。加盟する大学の学生さんには紹介されているんですが、これを持って不動産屋さんに行っても、実は業界や大家さんへの浸透がいま一つで、この制度を利用しながら、不動産屋さんに勧められて火災保険を二重払いさせられてしまったというようなケースもあったと聞きます。
 業界の正しい認識と普及が必要だと考えるわけなんですが、ご見解はいかがでしょうか。

○梶山都市整備局長 外国人留学生が保証人を探す困難さと保証人の負担を軽減するための留学生住宅総合補償制度は、留学生の住居の確保を支援する制度として、大学等において活用されていると聞いております。
 この制度の利用に当たりましては、宅地建物取引業者等の一層の理解と協力を得られるよう、周知に努めてまいります。

○大河原委員 留学生の不安を取り除くために、業界への指導強化を強く要望しておきます。
 さて、最近の賃貸住宅の事情として、空き室の埋まらないアパートを抱える大家さんも多いというふうに聞きました。その大家さんと借り手の留学生を結びつける施策、まちづくりの視点からも大変メリットがあるんじゃないかと思うんです。私、世田谷に住んでおりますが、入居していないアパート、たくさんありますね。そして、そういった留学生の方々は住宅に困っている。
 大家さんにとっては、安心できるたな子さんが安定的に入ってくるということがメリットだと思いますけれども、積極的に留学生を受け入れる大家さんに対して、何かメリットを設けて誘導する、こういうことも私は可能なんじゃないかと思っております。意見として申し述べさせていただきますけれども、ぜひご検討いただければと思います。
 ところで、民間アパートなどへの入居が困難な人というのは大勢おります。高齢者、外国人を初め、住まいを必要とする人、ここには、先ほど申し上げましたような保証人や家賃補償などの課題が解決されなければなりません。円滑に入居するための仕組みがここでも求められているわけです。
 大家さんにとっても安心して部屋を貸せる入居者を確保できる仕組み、こういったものを東京都がお考えなのか、お考えになれる可能性もあるのか、この辺の見解はいかがでしょうか。

○梶山都市整備局長 都は、高齢者や外国人が民間賃貸住宅への入居の機会が制約されることがないよう、そのための環境整備が必要と認識しております。
 こうした観点から、高齢者に対する見守りサービスや、残存家財の片づけサービス等を行うあんしん入居制度を平成十三年度に創設するとともに、国の家賃債務保証制度と連携し、高齢者の円滑な入居を支援してまいりました。
 今後、外国人についても円滑な入居を可能とする仕組みの必要性について調査研究してまいります。

○大河原委員 都市整備局では、日本の社会慣習、特にこの関東地域の社会慣習になっているかと思いますけれども、部屋を借りるときの礼金、敷金、更新料、こういったようなものが大変わかりにくい。管理費としてきちんと明朗な請求をしてもらえばいいのにというような声も聞きますし、そうした社会慣習を解消していくのはなかなか難しいと思うんですが、円滑な入居というのはだれにも確保されるべきだと考えております。
 DVの被害者、こういった方たちに向けても、公的な住宅を開放、単身者にも開放するように緩和した考え方をしなさいと、国から、実は去年、通達といいますか通知が来まして、自治体ではこれを可能にしているところも出てきているんです。私ども、秋からこのことを提案させていただいてまいりましたが、いまだ実現しておりません。高齢者、障害者、外国人、その他円滑な入居を求める方たちへの支援をぜひご検討ください。
 続きまして、男女平等施策について伺いたいと思います。
 女性の地位向上を目指して各国が討議する国連婦人の地位委員会閣僚級会議ですが、通称「北京プラス10」と申します。二月二十八日からニューヨークの国連本部で始まっております。恐らくきょう終幕というふうに聞いておりますけれども、九五年の北京会議で採択された北京行動綱領以降の取り組みを検証して、そして、今後の女性の地位向上に向けて各国が努力することを申し合わせる目的です。当然、日本からも政府代表団が行っております。北京行動綱領のさらなる実施に向けて、行動とイニシアチブを明確にすると、内閣府大臣政務官の西銘さんも表明されました。
 東京ではさきに、九五年、北京会議に先立って、都政におけるエンパワーメントアプローチというのが発表されているんですね。この十年の総括を伺いたいと思います。

○山内生活文化局長 北京会議が開催された平成七年には、東京都における男女平等参画推進の拠点となる施設として東京ウィメンズプラザを開設いたしました。
 また、平成十二年には、男女平等参画社会の実現に向けて、東京都と都民、事業者の役割を定めた男女平等参画基本条例を制定しまして、さらに平成十四年には、この条例に基づき東京都行動計画を策定し、男女平等参画に関する取り組みを進めてきたところであります。
 この間、雇用の分野における参画促進、子育てに対する支援、配偶者暴力、いわゆるDVの防止等を中心に、一歩一歩、着実に施策を進めてきたものと考えております。

○大河原委員 知事の先日の所信表明でも、戦後の日本社会の経済成長、右肩上がりの経済成長の終えんと、それに伴う東京の新たな発展を目指すというふうに宣言がされました。少子化と超高齢化が進む現状からは、これまでの成長モデルは役に立ちません。何がこの間に変化したのか、その明確な分析が必要と考えております。
 とりわけ、知事も家族の変容について触れられましたけれども、東京の子どもと家庭、家族の特徴をどのようにとらえているのか、伺っていきたいと思います。

○幸田福祉保健局長 戦後復興から高度経済成長を経て、我が国の産業構造は大きく変容し、都市部への人口集中が進みました。
 こうした急速な都市化は、家族を取り巻く状況や家族形態にも大きな変化をもたらしました。三世代家族が減少する一方、夫婦と子どもから成る核家族が一般的な家庭の形となり、単身世帯も増加しました。また、離婚に伴うひとり親家庭の増加や、共働き家庭の増加など、家族のありようは多様化してきております。
 特に東京では、その現象が最も先鋭的にあらわれており、全世帯に占める三世代世帯の割合は三・六%であるのに対し、単身世帯は四〇%を超え、六歳未満の子どもを持つ家庭の九〇%以上が核家族となっております。
 一方、家族の小規模化、多様化は、それまで持っていた親から子への子育ての知識や経験の伝承といった家族の機能を低下させ、親の養育力の低下をもたらしました。また、都市化がもたらした近隣関係の希薄化は、地域の養育力も低下させております。
 現在増加している子どもへの虐待や子どもたちの非行の増加は、こうした家族や地域社会の変容がもたらした社会の病理ということができるのではないかと考えます。

○大河原委員 東京には、家族の変容、最も先鋭的にあらわれているということで、知事が常々おっしゃる三世代同居、これは全世帯の三・六%ですから、東京の住宅事情などを考えますと、かなり難しい、望んでもなかなか望めないということも想像されるんじゃないでしょうか。一部の、いわばぜいたくなものなんじゃないかなと。ないものねだりということもあるかもしれません。
 そして、東京がこんなに繁栄をしてきた、そのことをきちんと考えてみますと、地方からいろんな方たちが東京をつくるために東京に引っ越していらっしゃいました。地方では長男の方が家を継ぎ、それ以外の方たちが東京に来られたわけですから、おじいさんやおばあさんと一緒に住むという家庭が少ないのは当たり前です。
 そういった意味では、一人っ子でなければ両親を独占できないんですから、そういった家庭で引き継がれている教育や考え方、こういったものも、なかなか今、求めようと思っても求められない、ないものねだりというふうにいわなければなりません。それだからこそといいますか、だからこそ、社会全体で子どもを育てるということが必要になってくるんだと思うんですね。
 私はちょっと自分の親族の関係なども考えてみますと、少子化白書を読んでもそうなんですが、日本の女性が多産の時代にも、お子さんのない家庭、世帯というのは、約一割はどんな時代にもあったということで、今はもちろん、子どもが欲しいということで、先ほど不妊治療の話が出ました。その希望にこたえるためにも医学が進歩してきているわけなんですけれども、そういった日本の古い--古いというか、ちょっと前には、そういう子どものないおじさんやおばさんというのは、私の親族なんかではちょっとあこがれの的といいますか、親にいわないことなども、おじさんやおばさんには少し気楽な気持ちでいえるような、そういう雰囲気もあったんじゃないかと思うんです。
 そういうところで、社会の父、母といいますか、もう少し社会的に子どもを育てていくという、家族ばかりに、父や母だけに子育てを押しつけない、むしろもっと外側に、いろんな大人と出会うことによって子どもが育っていく、そういうのが当たり前の環境があった。いわゆるコミュニティもありました。そういう地域社会があったということだと思うんです。
 東京で変わったのは、まさしくそういう場面なんじゃないか、私はそのように思っています。この核家族の多い東京のまちで、じゃあ子育てをする世帯が何を必要としているのか、そのことをきっちり見ていくのが必要です。
 母子世帯の話を少し触れたいと思いますが、母子世帯の母の就業率というのは八七・三%、労働時間は週に四十・二時間、ダブルパートなどの副業をしている人の労働時間は四十九・六時間にも及びます。それでも平均収入は、児童扶養手当とか養育費を含んでも平均で二百四十五万六千円、一般世帯の約三分の一。そして、父子家庭の父という方たちもありますけれども、フルタイムではあっても、長時間労働の傾向が見える。しかも、平均的な一般世帯の収入を、やはりかなりの程度下回る方々も出てきているということが白書にも示されておりました。
 母子家庭の約七二%、これは九三年の数字ですけれども、七二%が受給している児童扶養手当については、母子家庭の累積的な増加を理由として、勤労収入の増加は見込めなくても、二〇〇八年からは減額されることが決まっております。国や地方自治体がいかに実効性のある就業支援を行い、よりよい賃金が得られる仕事に母子世帯の母を結びつけるのか、この二〇〇八年というタイムリミットに対して、政策目標を実現化させる必要があると考えております。具体策を伺いたいと思います。

○幸田福祉保健局長 母子家庭などひとり親家庭が地域で自立して生活していくためには、就業支援が何よりも重要と認識しております。
 都はこれまでも、一定期間手当を支給し、その間に就業自立を図るという改正児童扶養手当法の趣旨などを踏まえ、東京都母子寡婦福祉協議会を通じた求人情報の提供や自立促進講習会の充実などに取り組んでまいりました。
 現在、ひとり親家庭自立支援計画を作成中であり、その中で、自立支援給付金制度を活用した資格取得や、民間機関などを活用した職業訓練受講機会の確保など、実効性のある就労自立支援策などを中心に据え、ひとり親家庭の自立をより一層推進してまいります。

○大河原委員 これまでの少子化対策といいますのは、両親のいる家庭における出産、子育ての支援として考えられてきた感がございます。確かに全国的に見ても、両親世帯の三二・八%という数に比べて、母子世帯の割合は六・七%、父子世帯は一・二%、これは二〇〇〇年の数字でございますけど、数は少ないわけです。
 東京都における次世代育成支援計画の構想に当たっても、ひとり親世帯の親と子どもは、支援は目標には上がっておりますけれども、本編の中ではなかなか展開されないようで、あくまでも少子化対策の対象外、例外というふうにされるのではないかと、ちょっと心配をしております。別立てに計画を立てるということでございますから、そこに入っていくときちんとされるんだと思うんですが、本編にもやはりきちんと書き込むことが必要かと思います。
 社会福祉や社会保障制度は、伝統的な家族やモラルを基準に構築されてきましたので、父子世帯と母子世帯とは共通する困難さを抱えていても、それぞれが性別役割分業に基づく独自の困難さも抱えた世帯というふうになっています。例えば、母子世帯と父子世帯が同様な経済困窮状態にあったときにも、実際の援助のあり方が異なっております。
 母子家庭を対象とする児童扶養手当、これは父子家庭にはないわけですよね。日本の労働市場における女性雇用の多様化による非正規化、非正規の正職員ではない職員の働き方、また、賃金格差などが間接差別としてあるわけですけれども、是正勧告をされていながら、なかなか解消されていない現実があります。母子家庭に対する経済的な支援の必要性は高いことは明白なわけでございます。
 しかし、一般家庭の収入に比べて相当程度下回る父子家庭の存在も顕在化してきたということを考えれば、やはり性別役割分業を基本とした、男性主導、男性優位の構造的な性差別社会というふうに日本をやはり考えなければなりません。男らしく生きることを期待されながら、同時に女性の役割とされてきた家事や育児をしながら生きる父親たち、ここにも私は、日本のジェンダーの問題があり、それは表裏一体になっている、男性も女性もその当事者でございます。そのことをやはりはっきりと申し上げておかなければなりません。
 父子家庭が抱えるさまざまな問題を把握して真のニーズをつかむことが、次世代育成に欠けがちな観点の一つでもありますが、所見を伺いたいと思います。

○幸田福祉保健局長 都はこれまでも、母子家庭及び父子家庭を包括してひとり親家庭としてとらえるとともに、社会福祉基礎調査などによりまして父子家庭のニーズも把握し、児童育成手当の支給や、ひとり親家庭医療費助成などの施策を独自に実施してまいりました。
 今後とも、子どもの健やかな育成を図るという観点も踏まえ、ひとり親家庭の親と子が抱えるさまざまなニーズを的確に把握し、適切に対処してまいります。

○大河原委員 残りました若者施策については、後日に譲りたいと思います。ありがとうございました。

○樺山委員長 大河原雅子委員の発言は終わりました。
 以上で、本日予定いたしました質疑はすべて終了いたしました。
 十四日は午後一時から委員会を開きます。
 これをもちまして本日の委員会を閉会いたします。
   午後八時五十八分散会

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