東京都議会予算特別委員会速記録第五号

   午後三時四十八分開議

○青木副委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 富田俊正理事の発言を許します。

○富田委員 それでは、都議会民主党を代表して、予算特別委員会締めくくり総括質疑を行わせていただきたいというふうに思います。
 初めに、新銀行についてお伺いいたします。
 先ほど樺山副委員長の方からもるるありましたけれども、私の方からも、我が会派の質問を整理した上で、何点か新しい点についてもお伺いさせていただきたいと思っております。
 新銀行の設立は、昨年四月、石原知事が第二期の選挙公約として提示をされました。知事は、当選後の五月に早くも新銀行構想を発表され、平成十六年度中の設立を内外に示されました。その時点で示されたのは、一千億円の出資などA4二枚のみでございました。
 都議会民主党は、直後の第二回の定例会、そして第三回の定例会で、所管の財政委員会での質疑を展開させていただきました。
 そんな中にありまして、平成十五年六月十三日に準備会として立ち上げました検討組織を、十月十五日には、新銀行対策プロジェクトチームとして発足をさせたところでございます。
 さて、昨年十一月末にはスキームが、そして、ことし二月にはマスタープランが発表され、新銀行の姿が見えてまいりました。そんな中で、新銀行に対する議論も活発化してきたところでございますが、今定例会に入った時点で、新銀行は、都が出資し、大株主としての意向を反映させるだけで、経営は民間に任せると、そうした純民間銀行であるというものの、全国銀行協会は、官としての信用力や影響力を背景として銀行業務に乗り出す都立銀行だと受けとめているなど、混乱を深めていました。
 そこで、三月二日に行われました名取幹事長の代表質問では、東京都と新銀行の関係を明確にする意味で、幾つかの質問を行わせていただきました。その質問の中で、大塚出納長より、「新銀行は、現行の金融システムにおいて、他の金融機関と共存し、かつ公平な競争を行うものでありまして、都の力を背景に、とりたてて優越的な地位を得ようとするものではありません。」との答弁をいただき、こうした混乱を排し、議論を正常化してまいりました。
 さらに、三月十二日の青木政調会長の予算特別委員会総括質疑では、新銀行に対して期待される中小企業融資の内容を踏まえた経営の健全性の確保策、そして専門的な分野まで踏み込んだ議論を展開させていただきました。新銀行の安全性と、一定の時期を見て検証することも、そのときに確認をさせていただいたところでございます。
 そこで、私からは、今まで論議されてこなかった課題についてお伺いさせていただきたいと思っています。
 新銀行の一つの大きな柱でございますICカード事業についてお伺いいたします。
 ICカードは、安全性が高いことに加え、ある程度のデータをカード自体が記憶できるといった、すぐれた機能があります。この先、銀行のキャッシュカードに、このICカードを導入する動きが本格化してくると思われます。
 先般も、あるメガバンクが中心になって、新世代多機能カードに踏み出すとの新聞報道がございました。しかし、中身をよく見てみますと、既存の技術の寄せ集めというようなものでありまして、新しい技術とはいえないように思いました。
 そこで、金融機関におけるICカード化への取り組み状況はどのようになっているのか、まずお伺いさせていただきます。

○大塚出納長 金融界におきましては、全国銀行協会が既にICカードの標準仕様を定めておりまして、各銀行は導入に向けた検討を行っております。
 また、一部の銀行では実験的に、小規模ではありますけれども、社員向けなどのICカードの導入を図っているところであります。
 しかし、ICカードの本格的な導入に当たりましては、大規模なシステム改修等が必要でありまして、多くの銀行においては、財務面あるいは技術上の理由などから、実現には至っておりません。

○富田委員 既存銀行における取り組みが遅々として進まない中で、都民の生活利便性の向上という視点から、新銀行がICカードを導入することは評価できます。
 一方で、先般、全国銀行協会は、新銀行が事実上の標準仕様になるようなデファクトスタンダードを形成するのではないか、民間の自由競争を阻害するとの意見を発表しています。この点についての見解をお伺いいたします。

○大塚出納長 現在、新銀行は、全国銀行協会の定める、先ほどご答弁申し上げましたけれども、標準仕様に基づきましてICカード事業を進めておりまして、技術的には、デファクトスタンダードを目指すものではありません。
 新銀行のICカード事業は、これまで既存銀行が取り組んでこなかった、異業種連携による総合的なサービスを提供するなど、先進的な事業内容であるため、こうした危惧を受けたのではないかと推察をしております。

○富田委員 昔から、出るくいは打たれるといいますが、全国銀行協会の発言も、そうした感があるように思います。
 しかし、新銀行のICカードの取り組みが他の金融機関にも広がることで、都民にとってより利便性の高いサービスの提供が可能になると考えられます。民間主導でICカード仕様の統一化を図ることは、ビデオテープや、あるいはDVD、あるいはデジカメのメディアなどの状況を見ましても、なかなか難しいというふうに思います。
 そこで、新銀行がいち早く取り組み、その仕様を確立することによって、標準化への流れを積極的につくる意味は大きいと考えます。将来、新銀行のノウハウを他の金融機関へも開放する考えがあるのでしょうか。見解をお伺いいたします。

○石原知事 今日の金融界においては、IT技術の急速な進展や都民ニーズの多様化の中で、先進技術に支えられた、新たなサービスの創出が求められていると思います。いわば、新しい金融のライフラインの時代的な必然性があると思います。
 新銀行が提供しますICカード事業は、他に多分、既存の銀行には例のない一種の特殊兵器でありますが、こうしたニーズに積極的にこたえようとするものでありまして、これまでのような個別企業が個々に提供してきたサービスとは異なって、社会共通のインフラとしての高い利便性を総合的に提供するものであります。
 新銀行は、このインフラの確立に向けて先導的な役割を果たしますが、このノウハウの開放については、金融界におけるICの技術の進展や、新銀行のICカード事業の定着状況などを踏まえまして、将来、新銀行の経営として判断することになると思います。

○富田委員 ICカードについては、新銀行が先導的な役割を果たすことで、他の金融機関での取り組みが促進されることを期待しております。
 どんなすばらしいメニューを用意しても、それを着実に実行できなければ、何の意味もありません。そこで、経営監視の進め方についてお伺いさせていただきたいと思います。
 新銀行は、中小企業融資と都民生活利便性の向上という二つの大きな政策目的を達成するために、都が一千億円を出資し、設立されるわけでございます。都民の貴重な税金を投入するわけですから、目的の達成状況をきちっと検証する必要性があると思います。
 そこで、お伺いいたします。中小企業融資について、開業後、その実績をどのように把握されるのでしょうか。

○大塚出納長 新銀行は、中小企業への円滑な資金供給の実施など、政策目的を担う銀行でありまして、その達成状況を確認し、検証することは、経営の大枠を監視する都としては当然であります。
 具体的には、中間決算期及び決算期等におきまして、経営の各主要指標及び事業の中核である中小企業融資の実績などにつきまして、その状況を適切に把握し、これを公表するとともに、目標の達成度合いを総合的に検証してまいります。

○富田委員 具体的な期日もお示しいただき、そして公表するということでございますから、きちっとした検証ができるものと思っているところでございます。
 ところで、東京都は、新銀行との関係について、大株主として経営の大枠の監視を行うこととしていますが、その実効性を担保し、かつ高めていくことが、この銀行の政策目的の実現及び経営健全性の確保には不可欠であると考えております。
 東京都は、新銀行の社外取締役に都の関係者を就任させることとしていますが、それとあわせて、東京都みずからが継続的に経営を監視していくことが必要と考えますが、どのような体制で行うのか、見解をお伺いいたします。

○大塚出納長 都が、新銀行の経営の大枠を継続的かつ適切に監視をしていくためには、都の内部に、その実効性を担保できる体制を構築することが必要だと考えております。
 また、中小企業への支援は、都の既存施策と新銀行による取り組みとを密接に連携させ、総合的に行うことで、一層の効果が期待できるわけであります。
 過日、知事からもお話がありましたように、本格開業後は、中小企業支援等の専管部門において、新銀行を所管し、支援の充実を図ることになります。

○富田委員 それでは、次の視点で質問をさせていただきます。
 次に、次世代育成支援についてお伺いさせていただきます。
 平成十四年の我が国の合計特殊出生率は、一・三二という数字になっておりまして、このままでは、日本人自体がレッドデータブックに載ってしまうのではないか、絶滅危惧種になってしまうのではないかというような状況もあるのかなというふうに思います。
 この日本の合計特殊出生率一・三二という数字でございますが、先進諸国中で見ますと、最底辺でございまして、日本を下回っているのはイタリアだけという状況でございます。ちなみに、アメリカでは二・一二、フランスでは一・八九となっています。
 さらに、都道府県別で見ますと、これが非常に寂しいことなんですが、東京都は全国最低の一・〇二という状況になっています。日本、中でも東京は危機的状況にあるといわざるを得ません。この状況を打破しなければ、東京の将来、日本の将来はあり得ないのではないでしょうか。
 初めに、先進諸国における男性の家事時間割合と合計特殊出生率は、正の相関関係にあることに注目をさせていただきたいと思います。すなわち、経済活動と家事、育児、介護活動の合計時間に占める後者の割合が高いほど、合計特殊出生率も高くなっているということです。
 ちなみに、日本の男性家事時間の割合は五%程度というところでございまして、先進諸国中、群を抜いて低くなっています。二〇〇二年三月に厚生労働省がまとめました子育て家庭に対する支援策に関する調査研究報告書では、子育てしながら働きやすい職場環境の整備、子育てへの経済的支援が、要望の第一位、第二位となっているというところでございます。
 日本の急速な少子化の進行に危機感を持った政府は、昨年七月に、次世代育成支援対策推進法を策定いたしました。来年から十年間、次世代育成支援に関する取り組みを計画的、集中的に行うとしまして、すべての地方自治体と三百一人以上を常時雇用する事業主が行動計画を策定することを義務づけています。
 この法律は、平成十一年に、第二次エンゼルプランを発表して以降、少子化対策プラスワンを示し、働き方の見直しを求めたものの、出生率の低下に歯どめがかけられなかったことの反省を受けて、子育て支援の総合的な支援策として出されたものと理解をしております。
 また、平成十四年一月の将来人口推計で新たに着目された点として、従来、少子化の主な原因とされてきた晩婚化に加えて、夫婦の出生力そのものの低下という新たな現象が起きているという危機感が高まっております。
 さらに、昨年六月発表の国民生活白書では、若年者の理想の子どもの数、二人が五〇%、三人が二八・四%に対し、予定している子どもの数は、二人が四四・五%、三人以上が一四%とギャップがあることが指摘されています。
 確かに、次代を担う子どもが健やかに生まれ、育成される環境の整備を進めるために、国や地方自治体による取り組みとともに、事業主も、仕事と子育ての両立を図るために必要な雇用環境の整備を進めることは重要であり、推進法では、男性を含めた働き方の見直し、地域における子育て支援、社会保障における次世代支援、子どもの社会性の向上や自立の促進を柱としています。
 ところで、少しおもしろいデータを紹介させていただきたいと思いますが、紹介するデータは、一九九七年、国立社会保障・人口問題研究所が実施した第十一回出生動向基本調査をもとに、新谷由里子さんが発表した「出生力に対する公務員的就業環境効果の分析」と題する研究ノートに基づくものでございます。
 この研究によれば、結婚持続期間が十五年から十九年の既婚女性の平均出生児の数でございますが、公務員が二・三一、民間正社員が二・二一、専業主婦は二・一三となっており、三人以上の子どもを持つ割合は、公務員が三七・五%、民間正社員が三一・一%、専業主婦が三〇・五%となっていることから、公務員は、民間正社員や専業主婦を上回る出生力を有していることが見てとれます。このままでは公務員ばっかりになってしまうということにもなります。
 また、同じく人口問題研究所で、永瀬伸子さんという方が発表した「少子化の要因 就業環境か価値観の変化か」というこの研究では、育児休業法の施行前後の状況を分析し、官公庁における育児休業のとりやすさ、残業等への配慮、復帰後の見通しなど、制度そのものよりも運用実態が重要であることが強調されております。
 出生力を決める環境要因には、経済的側面や価値観の問題など、さまざまなものがあるということは承知しておりますが、こうした研究などを見れば、公務部門における育児休業制度や介護休暇制度などの充実が、子どもを産んで育てやすい環境をつくる、一定の効果を上げているということは明らかでございます。このため、これを民間部門に押し広げていくことは、少子化対策として有効な施策の一つであると考えるものです。
 そこで、伺います。次世代育成支援対策推進法では、各地方自治体は、行政主体として行動計画を策定すると同時に、職員を雇用している事業主の立場から、特定事業主行動計画を策定しなければならないことになっております。東京都がこの特定事業主行動計画を策定する場合には、民間事業所が策定する一般事業主行動計画の模範となるようなものとすべきと考えますが、いかがでしょうか。

○赤星総務局長 東京都では、職員の子育て支援といたしまして、これまでも、育児休業を初め、子どもの看護休暇制度を導入するなど、積極的な取り組みを進めてまいりました。
 東京都が事業主として定めます、特定事業主行動計画の策定に当たりましては、こうした状況等を踏まえまして、次世代育成支援対策推進法や行動計画策定指針に基づきまして、適切な内容となるよう、今後、多角的な視点から検討してまいります。

○富田委員 次世代育成支援という観点から見れば、東京都は、今おっしゃられましたように、先進的であるということは挙げられると思いますが、まだまだ不十分といわざるを得ない部分がございます。それは、男性の育児休業取得でございます。制度発足以来、男性の育児休業取得者は非常に少ない状況が続いております。
 昨年三月に関係閣僚会議が決定した次世代育成に関する当面の取扱方針では、育児休業について、女性が八〇%、男性が一〇%を取得目標としていますが、二〇〇二年度の育児休業取得実績に関する総務省調査によれば、全自治体においても、特別区でも、女性はこの目標を達成しているものの、男性は目標達成にはほど遠いという状況でございます。
 そこで伺います。今後策定される特定事業主行動計画には、男女別の育児休業取得率などの目標数値を明示し、男性の育児休業取得の促進に向けた具体策を盛り込むべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。

○赤星総務局長 国の指針では、特定事業主行動計画におけます目標につきまして、可能な限り定量的な目標とする等、その達成状況を客観的に判断できるものとすることが望ましいとしております。
 都におきましては、計画の実効性などを含めまして、総合的に考慮し、今後内容を検討してまいります。

○富田委員 次の質問に移らせていただきます。
 平成十四年十二月の第四回定例会で初めて一般質問に立たせていただいたとき取り上げさせていただきました、まちづくりと屋外広告物の活用で、公共物の壁面などを民間の広告スペースとして開放し、その広告収入でバリアフリー施設の整備に充てたらどうかというような提案をさせていただきました。そして、東京都屋外広告物条例の改正を、知事にお願いしたところでございます。このことを、きのうのことのように覚えておりますが、そのとき石原知事から、やってみるに足る非常にいい案だと思いますので、鋭意前向きに検討させていただきます、というご答弁をいただきました。
 早くも翌年の第二回定例会で、東京都屋外広告物条例の一部改正が提案されました。この改正では、公益上必要な施設、物件への広告物表示として、道路(禁止区域を含む)に設置するバリアフリーのためのエレベーターや避難誘導標識など、公益的施設、物件に広告物を表示できるようにし、その広告収入により施設整備の促進を図るという内容でございました。
 しかしながら、非常に残念なことに、現時点において、それが具体的に運用されるまでには至っておりません。その大きな要因としては、二つあるというふうにいわれております。
 その一つは、道路法が障害となって、道路上に広告物を出せないといわれていることでございます。これは私の質問も受けまして、例えば新宿区議会でも、あるいは渋谷区議会でも同様な形でもって取り上げたわけですが、道路法の問題があって、これは難しいのだよというような答弁があったということでございます。
 そこでお伺いしますが、道路法では、エレベーターや避難誘導標識などの公益的施設、物件に広告は出せないものなのでしょうか。
 二つ目でございますが、広告を出した施設、例えばエレベーターなど、そのものの設置経費や維持管理経費には広告物収入が活用できますが、その広告収入を他の施設整備に有効に利用する仕組みが用意されていないということでございます。
 そこでお伺いしますが、広告価値のある、例えば表参道だとかあるいは新宿中央通りなどの広告収入で、広告価値の比較的低い地域の同種のストリートファニチャーの整備費に充てることが可能な仕組みづくり、これが必要だというふうに思いますが、いかがでしょうか。

○小峰東京都技監 私からは、ご質問の前半のご質問にお答え申し上げます。
 道路法におきましては、道路の構造または交通に支障のない限り、広告物を出すことは制限しておりません。
 都といたしましては、屋外広告物条例で規定されています公益上必要な施設、避難標識や案内図板などでございますが、表示する広告物については、区など条例上の許可権者や交通管理者と連携しながら、道路占用許可を行っております。

○勝田都市計画局長 私からは、二つ目のご質問にお答え申し上げます。
 昨年十月の屋外広告物条例の改正によりまして、公益施設などへの屋外広告の掲出ができることとなりました。
 広告収入によりまして、ご指摘ございましたように、他の地域の公益施設などの整備、または維持管理を図ることについては、バリアフリーエレベーターなどで同一の施設管理者の場合に可能であると考えております。
 今後、広告収入の有効かつ柔軟な活用によりまして、公益施設などが円滑に整備または維持管理されるよう、施設管理者に働きかけてまいります。

○富田委員 道路法がネックにならないということ、そして、その仕組みづくりについても前向きに取り組んでいただけるということでございますので、あとは具体的にどこをどのように推進をするかということだろうと思います。ぜひとも積極的に推進を図っていきたいものだなというふうに思っております。
 さて、この写真を見ていただきたいと思います。二枚ございますが、これは表参道の同潤会アパートの建てかえで、敷地周囲の道路に設置された仮囲いでございます。大変カラフルで、非常にきれいで、普通の工事現場とは思えないようなものになっているかというふうに思います。
 この仮囲いでございますが、全体の五〇%を壁面緑化、二五%を地域情報などの掲示、そして、この緑化工事費捻出のため、残り二五%に商業広告を掲示するという中身でございます。
 本来、道路上に設置をされる仮囲いには、東京都の屋外広告物条例では広告物を掲示することはできないことになっておりますが、二百メートルにもわたるこのような大きな工事現場というようなこと、そしてそれが二年から三年も続くというようなことでございますので、それでは殺風景で、まちの活力も損なわれてしまうということから、再開発事業者や地元、そして東京都が協力し、屋外広告物条例上の特例許可制度を活用して、特別に認めたものでございます。
 先ほど石原知事に改めてお願いをしました私の提案と完全に一致するというものではございませんけれども、同じコンセプトにあるものだというふうに認識をさせていただいております。そして、画期的な取り組みだというふうに思います。
 知事は現地を見られたでしょうか。また、改めてこの写真を見られてどのような感想をお持ちでしょうか、お伺いをさせていただきたいと思います。

○石原知事 私も現地、一度通って見ましたけれども、非常に結構だと思います。あそこはパリでいえばシャンゼリゼによく似た、コンコルド、エトワールを挟んだ、あそこはもうちょっと大きなアベニューですけれども、しかしやはり東京の中で非常に雰囲気がある通りでしてね、そこの工事が二年も三年も、あの青いオイルシートというのですか、張ったままじゃかないませんが、安藤さんがやっていらっしゃるようだけど、イニシアをとって。大変結構だと思います。
 こういった新しいパターンをつくっていくことが、いろいろな規制というものを変えていくよすがになると思いますし、こうした取り組みは、費用などの面でも負担も多いでしょうが、まちの雰囲気を損なわない、いい試みだと思います。ちなみに、値段を聞きましたら、八千万円くらいかけているそうですけれども、十分それに見合う、私は有形無形の効果を上げていると思います。

○富田委員 知事も大変評価をしていただいているということでございますので、こうした取り組みが、今後もさまざまなところで積極的に推進されるように進めていただきたいというふうに思っております。
 しかしながら、実際の運用面では、幾つかの問題があるというように聞いております。そこで、その主な課題を指摘し、改善を求めておきたいというふうに思います。
 今回の措置は、先ほど申し上げましたように、再開発事業者と地元、そして東京都が協力して実施にこぎつけたものですが、実際に最終的な許可事務を行っているのは地元の渋谷区の土木部でありまして、対応に非常に苦慮されているというようなことでございます。私も、渋谷区の職員でございましたので、いろいろそうした実態について聞かせていただいているところでございます。
 実際に、ここで流れを少し説明をさせていただきたいと思います。
 広告の内容などについては、広告主と広告代理店、そして再開発事業者間で具体的なデザイン案ができ上がります。それを地元の町会長さんや商店街の振興組合の代表の方などが入った、仮囲い広告自主審査委員会で、まちの景観にふさわしいかというような観点でチェックをされ、ゴーサインが出されるということになります。その案を持って、広告代理店が先ほど申し上げた渋谷区の土木部に行くわけでございますが、ここで取り扱い基準が明確でないというようなことから、トラブルが生じることになります。
 例えば、区の担当者は、特例的に許可されたとはいっても、露骨に商品名を出すような広告は問題だと指摘をします。デザインの修正を求めるわけでございますが、これでは地元の方々が検討したことがないがしろにされてしまうというように、地元の方々は、そうした思いも持っているということでございます。
 そこで、都市計画局長にお伺いをいたします。
 今後、こうした取り組みをさらに推進するためには、今回の表参道の取り組みが円滑に進められることが重要だと思います。今回指摘させていただいた点などについてどのように認識をされているのか、また、こうした問題点をどのように解決していこうとされているのか、お伺いをさせていただきます。

○勝田都市計画局長 今回の仮囲い広告でございますが、表参道というまちのにぎわいを演出するとともに、地域経済の活性化に寄与することを目的に実施をしたものでございます。
 このような取り組みを円滑に推進していくためには、地元、事業者、行政が互いに協力することが重要でございますが、これまでにない新たな取り組みのため、共通の理解が不十分な面もあったかと認識しております。
 今後とも、地元、事業者、区などと緊密な連携を図ることで、地域振興に貢献する良好な広告物が掲出されるよう適切な運用に努めてまいります。

○富田委員 今ご答弁にありましたような形で、その不十分な面をきちっと適切に運用させていただきたいというふうに思います。
 地元からの強い要望でもございますので、間違った判断をされないように、ぜひともよろしくお願いをしたいと思います。
 それでは次に、東京の労働行政についてということで、お伺いをさせていただきます。
 今定例会では、都が厳しい雇用情勢に対応するとして、しごとセンターの開設を打ち出し、雇用・就業対策について積極的に対応されるということに対し、評価する立場から活発な議論が展開されたというふうに認識をしております。
 都の労働行政には、こうした論議を踏まえ、雇用の安定、そして産業再生による雇用創出のほか、雇用のセーフティーネットやワークルールの確立へ向けた取り組みが求められていると考えています。
 こうした中で、雇用のセーフティーネットである労政事務所を労働相談情報センターとして再編する方針が出されておりますが、労働相談情報センターの役割についてどのように認識し、今後どのように運営をしていくのか、まず、お伺いをさせていただきます。

○有手産業労働局長 最近の雇用労働情勢を見てみますと、これまでのパート労働に加えまして、派遣労働や契約社員などの非正規労働が増加するとともに、男女の雇用平等につきましても、各企業により積極的な対応が求められるなど、都民の雇用を取り巻く環境は激変しております。
 こうした複雑多様化する状況に的確に対応することが重要であり、このために、今回、労政事務所を労働相談情報センターとして再編し、専管係を設置して、労働相談の専門性をさらに高めていきたいと考えております。
 また、各所における相談情報を集約いたしまして、情報の共有化を図るなど、体制の充実に努めるとともに、しごとセンターとも緊密に連携し、きめの細かい労働相談を実施してまいります。

○富田委員 これまで、労政事務所のあっせんは六割を超える高い解決率となっています。こうしたあっせんを初めとして、労働相談については、労使双方との十分な意思疎通が必要でありまして、電話だけでは済まない場合も多々ございます。地域との連携も必要だということだろうと思います。
 そのために、十分な相談体制がとれるよう、相談者にとって利便性のある事務所の立地、これについて検討していくことが必要だろうと思いますが、見解をお伺いいたします。

○有手産業労働局長 事務所の配置についてお答えいたします。
 事務所の配置につきましては、利便性を考慮しつつ、都民にとって相談しやすいものとなるよう見直しを進めてきたところでありまして、こうした視点で、慎重かつ大胆に検討してまいります。

○富田委員 それでは、先ほども論議になっておりました都響について、少し私なりの視点で質問をさせていただきたいと思います。
 私は、都響の経営改善という視点でご質問をさせていただきたいと思っております。
 ここで申し上げるまでもなく、財団法人東京都交響楽団、愛称都響は、昭和四十年、東京都が芸術文化のより一層の振興を図る目的で設立されて以来、定期演奏会などのほかに小中高との合同演奏会、伊豆諸島、小笠原諸島への移動コンサート、そして、演奏会場に来られない方々のための出前コンサート、さらに三宅島の復興支援チャリティーコンサート、身障者のためのコンサートなど、さまざまな形で、東京都のオーケストラにふさわしい活動を行ってきたと認識をしております。
 その中には、小中学生のための音楽鑑賞教室があり、創立以来、実に三千回くらいということでございまして、三百六十八万人というような数字も確認をさせていただいているところでございます。
 都響は都の外郭団体であり、楽団員は公務員ではありませんが、都からの補助を受けて、経営的に安定することによって、都民に比較的安価な料金で、よい演奏を提供してきました。そのことは、優秀な楽団員の確保の道も開かれることとなり、結果として一流の指揮者を招いて良質な演奏を続けることを可能としているわけでございます。今日では、世界的レベルのオーケストラとして成長したことは、周知の事実だというふうに思います。
 その都響に対して、昨年十一月、本年度から三年をかけて全楽団員を順次解雇した上で二年ごとの雇用契約を結び、給与額は演奏技術や実績、態度などを査定して決めるとした有期雇用制度への転換を、楽団員でつくる労働組合に財団が提案をいたしました。
 これに対して組合側は、オーケストラは、同じメンバーが長い年月をかけて築き上げた信頼関係によって初めて一体感のある音を奏でることができる、雇用不安の中ではいい音楽をつくることはできないなどとして、反対の姿勢を示しているということは、先ほどの質問の中でもございました。
 都響は、年間約二百回の公演で、約六億円の事業収入がありますが、ほとんどが事業運営に使用され、都からの補助金を主に人件費に充てています。ここに日本音楽家ユニオンというところがつくった資料がございますが、この中を見てみますと、都響は六五・一%の公的助成率というふうになっていて、その助成金は国が二千百万円程度、そのあと残りは全額東京都で、十二億三千六百万円となっております。これにひきかえ、他の東京都内に本拠地を置くオーケストラは、N響が一・七%、新日フィルが一二・八%、東響が七・五%、東フィルが七・四%、日フィルが九・九%、読響が四・四%と、都響と比較して公的助成は格段と低いものとなっています。
 もちろん、この中には、バックにある企業や法人が運営費を支出しており、公的助成の必要性が薄いというオーケストラもあることも考慮しなければなりませんが、こうした実態があるというのも事実だろうと思います。
 私は、今のご時世で、この都響にぬるま湯体質との批判の目を向けることに対して、否定することはできないと考えています。こうした非難をする方々の言葉をかりますと、今の苦境は営業活動努力を怠ってきた結果であり、欧米の楽団に比べてもプロ意識が足りず、音楽マネジメント面で二十年以上おくれている、人に頭を下げなくてはならない宣伝活動をやらず、高尚な音楽技術の習得だけ頑張ればいいというお高い姿勢を変えなければ生き残れないという指摘があることも承知をしております。
 私は、今回のいわゆる有期雇用制度の導入の背景には、こうした極端な補助金体質が一番の問題ではないかということで考えています。
 そこでお伺いをいたします。都響は、補助金依存体質を脱却するために、どのような努力をしてきたのでしょうか。

○横山教育長 今まさに監理団体に求められますことは、コスト意識、あるいは鋭敏な経営感覚でございます。
 こうしたことから、東京都交響楽団におきましても、自立的な経営の確立に向けて、楽員数の削減や楽員等の給与費の削減などの内部努力を行い、財政運営のスリム化を図ってまいりました。
 また、事業内容につきましても、自主公演の企画内容の充実、依頼公演や小規模演奏会の積極的な獲得、さらには民間企業からの協賛金の獲得など、収入増に努めてきたところでございます。

○富田委員 私は、今回、この課題を取り上げるに当たりまして、都響の楽員の方々との話し合いの場を持ちました。楽員の方々は、都響の最重要課題--今の最重要課題ということでございますが、経営体質の改善であると考えているということを真摯に私も受けとめさせていただきました。
 先ほどの答弁で、大分努力されているということがうかがえましたが、楽員の方々は、これまでの天下りの役人、自分がいうのもなかなか難しいのですが、派遣職員に経営者としての感覚が欠けているのではないかとの指摘がありました。このことが、ぬるま湯体質といわれているゆえんであったともいいます。
 楽員の方々が指摘されている事項ですが、まず、会計資料も一年の区切りでしか見ず、四半期決算などを出したことがない状況で、正しい経営状況の把握ができるはずがないとして主張をしております。経費の見直しも通り一遍なもので、せっぱ詰まった運営とは見受けられなかったといいます。
 また、楽員が広報の努力や都民サービスを提案しても、実際、動けないということがあったということも聞いております。賛助金を募ることも、動き出しの遅さを指摘される状況で、経営、営業、広報の専門家がいなかったことも、大きな問題ではないかというふうにもいわれています。
 こうした事項について、現在は大分改善をされているというふうに思いますが、今はどのようになっているのでしょうか、改めてお伺いをさせていただきます。

○横山教育長 東京都交響楽団に対しまして、補助金に依存したぬるま湯体質的な経営を行っていると批判がございます。
 現在、新たに営業部を設けまして、営業活動に力を入れますとともに、ただいま答弁したとおり、自主公演の企画内容の充実、依頼公演や小規模演奏会の積極的な獲得、さらには民間企業からの協賛金の獲得などによる収入増に積極的に努めております。
 また、お話の会計処理に関しましても、中長期にわたった収支状況の把握、四半期決算の実施など、引き続き改善を図っていると承知をいたしております。
 なお、東京都交響楽団は、都の第二次都庁改革アクションプランに明記されておりますように、民間人理事長を起用しまして、さらなる経営改善を進めていく予定でございます。

○富田委員 それでは、契約楽員制度の導入はオーケストラの解体につながるとして反対する楽員の方々が、それにかわる改革案を検討されておりますので、ここで幾つか紹介をさせていただきたいと思います。
 本日も、本来ならば傍聴をしたいということで、いろいろ申し入れがあったのですけれども、きょうは定期演奏会の当日ということでございまして、皆さん来られないのは残念だということでございますが、楽員の方々は、オーケストラに必要な新陳代謝を促す施策を導入することは十分に検討できる、そうした課題だというふうにおっしゃっております。
 能力・業績評価制度を導入して機能させることや、年功序列の廃止、年俸制の導入、退職金制度の見直しについては、間接的に新陳代謝を促すことにつながると考えておられます。さらに、給与体系の見直しについても、十分に検討の対象になるものと考えておられます。こうした総合的な見直しによって、オーケストラの楽員にふさわしい給与のあり方が確立されることが必要ではないかというふうに考えています。
 ところで、ここで少し見方を変えて考えてみたいというふうに思います。他の在京のオーケストラの運営にかかわって、公的助成が少ないということは先ほど申し上げたとおりでございますが、しかし、バックにある企業や法人がその運営費を支出されていることは確かでございます。こうした当然に必要となる運営費を差し引いて、純粋に助成金はどれほどなのかと考えることも必要ではないでしょうか。
 また、都民のための交響楽団として再構築するとして示された改革の柱の一つに、経営の自立という項がございまして、都響のブランドイメージの向上がうたわれています。そもそも東京都がオーケストラを持つ意味というものの一つには、東京のイメージとしての芸術文化の香り高い東京というような、そんな象徴的な事柄があるのではないかなと思っております。
 したがって、東京都交響楽団という名称は、東京都という名を付したネーミングライツであるということも考えられるのではないでしょうか。都響に助成されている約十二億円の中には、こうしたバックにつく、東京都として当然必要となる運営費とネーミングライツの費用が含まれているという見方もできるのではないかなというふうに思うところでございます。こうした見方をとることが合理的かどうかという指摘もあるかというふうに思いますが、一つの見方として、ぜひとも考えていただきたい事柄だということで、お話をさせていただきました。
 さて、ユニオン都響は、先ほどもございましたように政治的には中立の立場をとる組合でございますが、都響存続の危機ととらえる契約楽員制度の対応に当たりまして、楽員の方々の中から、労働組合のナショナルセンターでございます連合との連携を図られました。それで、問題点は問題点としてとらえて、しっかりと時代に合わせて、都民に十分理解ができる解決策を真摯に模索した結果が、先ほど申し上げた、楽員の方々が示されたということで私が申し上げた内容でございます。
 楽員の方々が真剣に考えた改革案について、ぜひとも前向きに受けとめていただきたいと思いますが、いかがでしょうか。

○横山教育長 東京都交響楽団は、現在、都響ユニオンに対しまして、経営改善に向けた改革案を示し、現在、労使協議中でございます。
 今後、労使双方が誠意を持って協議を進めることになると思いますが、都教育委員会としましては、それを見守ってまいりたいと考えております。

○富田委員 それでは、この課題の最後に、総務局長にお伺いをさせていただきます。
 今回の東京都交響楽団の経営改善に関する見直しは、東京都が進めております第二次都庁改革アクションプランの流れにあるものだと認識しております。
 そこで、東京都の行政改革を推進する立場にある総務局として、楽員の皆さんが提起されている改善案などについてどのように受けとめられているのか、お伺いをさせていただきます。

○赤星総務局長 第二次都庁改革アクションプランでは、監理団体改革の基本的方向といたしまして、各団体がみずから経営改革を積極的に進め、自立した経営を確立していくことを目指しております。
 東京都交響楽団につきましては、経営改善に向けまして、現在、先ほど教育長が申し上げたとおり、労使協議中でございます。改革を進めるためには、楽員の理解と協力が必要でございます。
 今後とも、誠意を持って協議を進めていくよう、所管局とともに団体を指導してまいります。

○富田委員 ぜひとも、よろしくお願いをいたします。
 最後に、東京のホームレス対策についてお伺いします。
 東京都は、二月の十六日に、テント生活からアパートへとして、ホームレス地域生活移行支援事業を発表されました。この事業は、借り上げ住宅を二年間、低家賃で貸し付けを行うとともに、自立した生活に向け、就労機会の確保や生活相談などを行うもので、対象となる特別区内の公園からブルーテントが一掃されるとの期待が高まっております。
 しかしその一方では、特別区内の公園だけを対象にしたことから、目につくブルーテントを排除するだけの目的ではないのかと冷ややかな目を向ける向きもございます。
 そこで私は、この事業を評価する立場から、より実効性の高いホームレス対策へとつなげていくためにはどうしたらいいのかという視点で、質疑を展開をさせていただきたいと思っております。
 初めに、東京都内のホームレスの実態についてどのように認識されているのか、また、国に先駆けてホームレス自立支援対策を実施してきたわけですが、その成果と課題について、どのように今現在評価をされているのか、お伺いをさせていただきます。

○幸田福祉局長 昨年、都が行いました調査では、八月時点における特別区内のホームレスは約五千五百人であり、その約半数が就労自立を希望しております。
 こうした人の自立を支援するため、都と特別区が共同で構築した自立支援システムによって、既に千六百人余が就労自立を果たしており、全国的にホームレスが増加する中にあって、特別区内ではその数が四年連続して減少しております。
 しかしながら、現行の自立支援システムでは対応が難しいホームレスがおり、新たな取り組みが必要であると認識しております。

○富田委員 自立支援システムや従来からの生活保護制度を運用し、その実績や効果などを検証、評価していく中で、どうしても対応が難しいことがわかった東京のホームレス対策については、新たな視点での取り組みが必要であることが明らかになったという今の福祉局長の答弁には、認識を一致するところでございます。
 ところで、平成十四年八月に成立したホームレスの自立支援等に関する特別措置法、いわゆるホームレス支援法の第九条には、「都道府県は、ホームレスに関する問題の実情に応じた施策を実施するため必要があると認められるときは、基本方針に即し、当該施策を実施するための計画を策定しなければならない。」との規定がございます。
 この中で国が示す基本方針についてですが、就労とか、あるいは住宅対策を中心としておりまして、実効的かつ具体的な視点に欠けているというふうに私も認識をしております。東京都において実効ある計画をつくるためには、今回新たに立ち上げるホームレス地域生活移行支援事業を計画の柱として位置づけることが考えられます。
 通常、都として基本計画を策定して、そして具体的な事業展開を行うというのが行政の進め方であると考えますが、今回、実績や効果などを検証、評価し、直ちに新たな事業としてホームレス地域生活移行支援事業に着手したということは、行政はスピードが大切だという石原知事の姿勢を示すものだとして、高く評価をさせていただきたいと思います。
 そこで、この事業についてお伺いをさせていただきます。
 この事業では、これまでの施策では対応できなかった方を対象とするとのことですが、具体的には、どのような方を対象とし、どのように地域生活へ移行していこうとするものなのか、お伺いをします。
 また、国の基本方針を踏まえて、今後都が策定をする実施計画の中にこの事業を盛り込むべきではないかと考えますが、いかがでしょうか。

○幸田福祉局長 地域生活移行支援事業の対象者は、これまでの自立支援システムでは対応が難しいホームレスであり、その多くは、廃品回収等の都市雑業により一定の収入は得ているものの、アパートなどの家賃の支払いが困難であるため、公園で生活をしている人であります。
 今回、都区共同で実施する本事業は、借り上げた住居などを提供し、あわせて、就労や生活に関する支援を行うことにより、公園で生活しているホームレスの地域における自立生活への移行を目指すものであります。
 なお、本事業につきましては、これから関係局が一体となって策定する予定でございます実施計画の中に位置づけていくべきものと考えております。

○富田委員 実際のところ、従来からの自立支援システムや、新たに始めるホームレス地域生活移行支援事業が枠組みとして幾ら練り上がったものであったとしても、その枠組みを卒業し、一たん地域へと出て自立した生活を送り始めれば、社会の荒波とでもいいましょうか、そうしたものにもまれまして、残念ながら再びホームレス生活へと戻ってしまうという方々がいるということに心を痛めるところでございます。
 そこで、借り上げ住宅で生活している人々へ定着支援が大切であるというふうに思います。どのような地域生活像を描いておられるのでしょうか。また、別の視点として、継続したフォローアップ体制が重要であるというふうに思いますが、こうした視点についてどのように取り組むのか、お伺いをさせていただきます。

○幸田福祉局長 地域生活移行支援事業におきます地域生活とは、公園で生活しているホームレスが借り上げ住居などに入居し、一住民として地域社会の中で自立した日常生活を送っていけるような状態であると考えております。
 また、借り上げ住居などへ入居したホームレスに対する継続的なフォローアップについてでありますが、NPOなどが定期的に巡回訪問を行い、就労や生活に関する相談、金銭管理や日常生活を営む上でのマナーの習得など、自立に必要な支援を実施していくこととしております。

○富田委員 今、NPO等が定期的に巡回訪問を行う、そして、マナーの習得などについてもフォローアップをしていただけるということでございました。大変ありがたいことだなというふうに思いますが、NPOの運営に対しては、大分苦労があろうかというふうに思いますので、ぜひとも温かい目を向けていただきたいというふうに思います。
 東京都の新しい事業の中身としてフォローアップ体制は重要だということですので、応援をさせていただきたいものだと思っております。
 これらの事後的な対応とは別に、東京のホームレス対策として、ブルーテントに居住する以前に、入り口で食いとめる施策が必要なのではないかと考えております。リストラや企業倒産によって職を失ったり、あるいは家庭内の問題で家を飛び出したり、ホームレスになるきっかけはさまざまだと思います。しかし、幸田福祉局長の答弁にもあったように、ホームレスの方々の約半数が就労を希望しているわけですから、こうした方々も、ホームレスになりたくてなったわけではないということは明確だろうというふうに思います。
 ブルーテントに行き着く前に、区市町村の福祉事務所に相談に行くとか、例えば地域の民生委員さんに相談するとか、何らかのアクションがあればよかったのかもしれません。また、近く開設されるしごとセンターに行っていただくということも一つの選択肢かもしれません。しかし、こうした行政が差し伸べている手とでもいいますか、こうしたものがどこにあるのか、どんなものなのか、知らない方々が多いのも事実だろうというふうに思います。
 これは私の意見でございますけれども、都はもっと積極的にこうした行政のセーフティーネットをPRする必要性があるのではないかなというふうに思います。ぜひともご検討いただきたいと思います。
 最後に、石原知事にお伺いをいたしたいと思います。
 ホームレス問題をどのようにとらえられておられるのか、そして今、先ほど申し上げました入り口で予防できる手だてというような事柄についてもぜひ考えたいというふうに思っておりますけれども、知事としてどのような所見をお持ちなのか、お伺いをさせていただいて、私の質問を終わりたいと思います。

○石原知事 ああいう方々がブルーテントに入る前の施策ですけれども、これはもう何といっても、景気の動向というものが向上するということに尽きるわけでありまして、これはもう東京都ひとりがばたばたしてもかなうものではありません。やはり国が、国の失政といいましょうか、見込み違いでこういう時局を招いたわけでありますから、そういう犠牲者を国の責任でいろいろ対処すべきだと思いますが、しかし、東京都に限っていいましても、東京都で見られるホームレスの方々は必ずしも東京都の都民ではないと思いますね。
 そういう方々がかつての生活区域でどういう情報を得たか知りませんが、いずれにしろ、我が国では、生活保護を初めとした社会保障制度の体系が構築されておりまして、雇用、住宅対策などとあわせてセーフティーネットが一応整備されております。そういう情報を今さら彼らに伝えてもせんないことでしょうが、いずれにしろ、景気のいかんによってはこれからもそういう数がふえないとも限らない。
 そういう情報の徹底と、それから、自己破産し、あるいは債鬼に追われて、かつての生活圏内に住めずに東京に逃げてこられる方も随分おりますが、いずれにしろ、ホームレスの問題は、そういう個人的な要因に加えて、繰り返して申しますけれども、不況という社会的、経済的要因が複合的に絡まって生じているわけでありまして、やはり新たな視点から取り組みが必要だと思います。
 本来、繰り返して申しますけれども、国の責任のもとに総合的な対策が--国からいろいろ相談があって、地方自治体と地域に応じての対処というものが必要だと思いますけれども、国からも一向に、具体的な申し出といいましょうか、相談もございません。
 結果として、都心の公園の中には、一部が事実上ホームレスに占拠されているものもありまして、あるいは、公園だけじゃなくて、隅田川の護岸のプロムナードなどは絶好の、何というんでしょうか、スペースだと思いますけれども、みんな敬遠してあそこに行かない。あそこに若い人が集まるようになれば、ニューヨークのように新しいリゾートもできてくると思うんですけれども、いずれにしろ、公園がホームレスのおかげで使うに使えない。代々木公園などは、前にも答弁いたしましたが、若い女性たちが、企業の人たちがあそこで昼間でもトレーニングしていたのが、このごろ敬遠して行かなくなった。
 やはり公園というのは大事な都市の機能の一つでありまして、それが麻痺してしまうということは、ホームレスの数は限られておりますが、多くの都民にとっては大迷惑でありまして、それをどう都民のために公園が公園として活用できるような状態に持っていくかということは、私、ここまで来ると大事な問題だと思っております。新たにホームレス自身の自立への努力を支援して、あわせて、公園の適正な利用を実現するような対策を少し知恵を出して講じていきたいと思っております。

○富田委員 東京のホームレス対策は一筋縄ではいかないという複雑な状況があろうかというふうに思いますが、今回策定をされる計画の中にきちっとその部分も受けとめながら進めていただきたいということと、先ほど申し上げましたフォローアップの体制や、あるいは、知事からもお話がありました、入り口をうまく締めていくような、そんな体制をつくりながら、何とかこうした事態を解決していく方向性が見出せればというふうに思っております。
 貴重な時間、十分ほど残しましたけれども、私たちの質問の中でいろいろございましたものですから、きちっと配慮をしながらということで、時間を残させていただきました。
 ありがとうございました。(拍手)

○青木副委員長 富田俊正理事の発言は終わりました。

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