東京都議会予算特別委員会速記録第五号

○宮崎委員長 ただいまから予算特別委員会を開会いたします。
 これより付託議案の審査を行います。
 第一号議案から第三十号議案までを一括して議題といたします。
 この際、部局別質疑について申し上げます。
 去る三月十六日に議長を通じ各常任委員長に依頼してありました部局別質疑につきましては、お手元配布のとおり報告がありました。ご了承願いたいと思います。
 これより締めくくり総括質疑を行います。
 順次発言を許します。
 樺山たかし副委員長の発言を許します。

○樺山委員 十二日に開会をされました当予算委員会でございますけれども、いよいよ大詰めでございます。本日のこの締めくくり総括質疑、そして明日の討論、採決へと運ばれるわけであります。
 それにいたしましても、年間の議事日程の中でも大変大きな舞台とされるこの予算特別委員会、裏方でお支えをいただきました議会局の皆様方、そして、各局の事務担当者の皆様方のまさに不眠不休のご努力に、冒頭、心から感謝を申し上げたいというふうに思います。そして、知事、副知事、各局の局長を初めとする幹部の皆様方のご努力にも、改めて敬意を表したいというふうに思います。
 とりわけ、プロのダイバーを自認をされておられて、有能なテニスプレーヤーでもあられ、みずから典型的なアウトドア派を常々自認をしておられる石原知事におかれましては、この密閉空間の極限の状況の中で、十六日の我が党の山田忠昭委員への答弁にもあるとおり、エコノミークラスシンドロームの恐怖とも絶えず闘われながら、終始一貫、真剣に、そして誠実に、そしてさらには、決して好まれない政党の質問にも大変元気にお答えをいただいたわけでございまして、ただただ感謝を申し上げたいというふうに思います。
 前任の青島知事が、時として大変無責任で、投げやりで、無気力な対応があったことを考えますと、精神力の違いといいますか、基礎体力の違いといいますか、つまるところ、リーダーとしての資質の決定的な差に行き着くわけでございまして、どうぞますますご自愛をされまして、一千二百万都民のリーダーとして、今後ともご奮闘、ご精励いただきますように、心からお願いをし、お祈りを申し上げる次第でございます。
 それにいたしましても、まことに個人的なことでございますけれども、かつての我が青春時代の内なるヒーロー石原慎太郎と、今、ここにこうして、同じ都政という土俵で、あしたの日本、あしたの東京をしかと見詰め合いながら相対峙している、まことに感慨深いものがございます。
 知事はご存じないことかと思いますが、私が石原慎太郎に初めて遭遇をいたしましたのは、忘れもいたしません、昭和三十五年四月二十九日の東京体育館での全日本柔道選手権大会においてでありました。羽織はかまでさっそうとあらわれた知事が……(石原知事「いやいや、羽織はかまじゃないよ」と呼ぶ)いやいや、羽織はかまでした。お座りになられたのは、おやじに連れられて会場に来ていた、あろうことか、私の隣の席であったのであります。
 自来、私の小さな胸の中に芽生えた石原慎太郎への思いは、長ずるにつれて強固なものになりまして、昭和四十四年の京都国際会議場にて十月十四日、この日は大政奉還の日でありますけれども、松下幸之助、高田好胤、村松剛、黛敏郎、千宗室氏らと知事が共同で提唱して結成された日本を考える青年会議運動に私は参画をさせていただきました。そしてその後、代表幹事も務めたわけでありますけれども、そしてついには、昭和五十年の葛飾区議会議員選挙に、日本の新しい世代の会の推薦を得て、白いブレザー、紺のスラックス、胸に日の丸のいわゆる慎太郎ルックで出馬をするに至るのであります。
 しかし、今、私が申し上げたいのは、そんなことではございません。ここでどうしても触れておかねばならないのは、その葛飾区議選をさかのぼる二週間前に行われた東京都知事選挙についてであります。
 当時、革新の巣窟、伏魔殿といわれた八年間の美濃部都政に敢然と挑んだのは、参議院から衆議院に転じたばかりの青年代議士石原慎太郎であったのであります。戦後最大の決戦といわれ、全国民注視の中で行われたこの東京都知事選挙は、結果として、二百六十八万対二百三十三万の僅差で美濃部都政の継続となったわけでありますが、実は、二十九年前のこの選挙にこそ、今日ただいまの石原都政のディテールがあり、原点があったと私は考えております。
 私は、選挙戦最終日、国際反戦デーさながらの騒然たる新宿駅東口の模様を、まるできのうのことのように覚えております。赤尾敏、松下正寿、美濃部亮吉、そして我が石原慎太郎、主な陣営がすべて新宿駅東口に結集をいたしました。音量もマキシマムに、それぞれが声をからして最後のお願いをするさまは、政治を志向する白面の一青年だった私をして、体が震える思いがしたものでございます。
 そして、とりわけ胸を打ったのが、石原慎太郎の最後の訴えでありました。時間が余りありませんので、すべてを申し上げるいとまがありませんが、要約は次のとおりであります。
 東京は今、苦しんで、苦しんで、苦しみ抜いている。どうすればこの崩壊寸前、破産寸前のこの東京を再びよみがえらせることができるか、いよいよ真剣に考えなければいけない時期が来た。美濃部さんでは絶対にそれができない、できるのは石原慎太郎だけだ。何としても私に力を与えていただきたい、でないと、東京の前進は二十年も三十年も立ちおくれることになる。どうか、明治、大正生まれの方は、私に知恵と経験を与えていただきたい、昭和生まれの方は、私に友情と連帯の熱い思いを託してほしい、裕次郎もこうして頑張っている、と、こんな内容であったわけであります。
 知事にとっては、今さら思い出したくもないということかと存じますが、この二十九年前の東京都知事選挙の石原慎太郎最後の訴えこそ、今日ただいま、二十九年後の今日にあって、当時と何らぶれることのない石原都政の原点を見ることができると考えるわけであります。
 つまり、この戦いの結果、もう四年延長されて、合計十二年に及んだ美濃部都政、その後のおまけつきグリコとでもいうべき青島都政の四年間、この合計十六年間の都政冬の時代のツケと借金を、今、石原知事が必死の思いで、昭和五十年四月十三日のあの新宿駅東口広場にさかのぼって払い続けておられるのでございます。本当にご苦労さまですと申し上げざるを得ません。
 ちなみに、二週間後に行われた私の区議会議員初挑戦でございますが、石原候補の落選のショックがいえぬままの戦いとなりまして、親ガメこけたら子ガメがこけたの例えのとおりでございまして、見事に実は一敗地にまみれました。四十二歳、石原慎太郎、二十六歳、樺山たかし、それぞれが人生初の挫折でありました。
 しかし、逆にこの敗北で、ふつふつと政治に対する情熱をいよいよ熱くたぎらせることができたという点では、恐らくお互い得がたい経験となり得たわけでありまして、特に知事には、二十五年に及ぶ国会議員生活を経験しながらも闘志を温め、臥薪嘗胆、ひたすら剣を磨き続けておられたという点に改めて感服を申し上げたいというふうに思います。
 そこで、お伺いをするわけでありますが、五年前の東京都知事就任以来、いかなる基本認識と哲学を持って今日の都政を執行し、運営をされておられるか、その基本的なお考えをお聞かせいただきたいと思います。

○石原知事 随分昔の話をされて、こちらもこう、面映ゆい思いもいたしますが、思い起こしますと、美濃部知事との戦いでありましたけれども、私、苦労して衆議院に移った直後で、もう物故されましたが、皆さん、大先輩の名誉都民になられた醍醐安之助さんと、私、一緒に頑張って衆議院に出さしてもらいました。その醍醐さんが板挟みになって、非常に苦渋に満ちた顔つきで、醍醐さんの元先輩の村田さんとか、何人かの都議会の先輩を連れてこられて、選挙の前の年の夏に、ぜひ都知事に出てくれと。私は、しかし苦労して移ったばかりで、そうはいきませんと。私を選んでくれた十数万の有権者の方々へも顔向けできません、お断りをしました。そのうち、その話がぐるぐるぐるぐる回って、三木内閣のときでしたけれども、三木さんの腹心の宇都宮徳馬さんに白羽の矢が立って、私は、ああ、これでまあ、いいだろうと。宇都宮さんもなかなかの政治家でありましたから。
 私は、衆議院の予算を上げたあと、暗殺されたベニグノ・アキノと非常に親友でしたんで、家族ぐるみ招待されて、一週間ほどの休暇でフィリピンに、衆議院はそのとき暇でありましたから、行ってきまして、戻ったら、宇都宮さんが辞退をしたという話を聞いて、私、非常に悪い予感しまして、下手をしたら、これまた俺のところに来るぞと、もう本当に時間がなかったんです。告示まで三週間もなかったと思いますけれども、そうしたら、果たせるかな、また番が回ってきまして、そこで私が断ったら、美濃部さんは多分無競争で当選されたでしょう、これはもう民主主義を殺すことになると思って、私はもう必敗を覚悟で出ました。
 あのときも、これ、今になっていろいろわかってきたんですけれども、向こうの陣営のなかなか老獪な参謀長が画策して、動くものが動いて、民主党、あのころは民社党ですか、松下候補を再び出した、その分だけ負けましたな、私は。ですから、正面衝突したらどうなったかわかりませんけれども、それはまあ決して口惜しくていっているわけじゃありませんが、ただ私、今になって思いますと、あのとき私、間違って知事にならなくてよかったと思います。
 それは、その後衆議院でいろいろ行政の体験もしましたし、閣僚としても--その後人脈もできまして、めぐりめぐって今、こうやって知事を務めさせていただいておりますが、やっぱり衆議院のまだ若造でいたころと、七十前で初当選して都知事になりましたから、そのときに備えているものは、やっぱり人脈一つとっても、格段なものがありまして、そういう人たちのおかげで、物事を相対的に見比べながら、現実というものが何かということを分析し把握する力は、前よりも少しはついたと思います。
 ということで、あのとき、有名な橋の哲学というのを美濃部知事は口にしておりまして、一人の人間が反対すれば私は橋をかけない、これは共産党と同じで、非常に都合のいいレトリックでして、実は、半分後はカットされているんです。これはスペインの標語でしてね、ただし反対する者は冬でも川は泳いで渡れという、要するに指示がついているんですけれども、それだけは切ってしまって、一人の人間が反対すれば私は橋をかけない、それだけがまかり通って、今日いまだに続いているこの東京の道路事情の惨状というのが、倍加して倍加して続いてきたわけです。
 ということで、前置きが長くなりましたけれども、やっぱりやるべきことは、それは、一人、二人の人間は反対するかもしれないけれども、これだけ冷静な現実、国会に比べたらはるかに現実感覚がある、現場を踏まえた討論が都議会で行われている、そこでの採決というものは、私はやっぱり非常に東京の現状というものを冷静に把握したものだと思います。結論だと思います。
 ゆえにも、私は、やっぱり議会というものと相談しながら、議会の議決を背中にしょって、つまりやるべきことをやる、一刻も早くやる。そして、その結果、ディーゼルでもそうでしたけれども、目に見えるよき変化というものをもたらさなければ、幾ら、要するに三百代言で理屈並べても、これは政治や行政が、行政にならない、政治にならないと思います。
 そういう点で、私は、議会の皆さんと微にわたり細にわたり相談しながら、やっぱりお互いにリアリストでいこう、そのつもりでこれからも都政を私なりの領域で担っていきたいと思っております。

○樺山委員 大変心強い、力強いご答弁をいただきました。いよいよこれから、今の石原知事の姿勢に従って、個別にさまざまな問題についてここで議論、討論をさせていただきたいと思います。
 初めに、税財政問題について何点かお伺いをいたします。
 本会議とこの予算特別委員会でのこれまでの質問を通しまして、第二次財政再建推進プランの初年度である十六年度予算における財政再建の取り組みが明らかとなったところであります。
 十六年度予算では、第二次プランに基づく取り組みがなされまして、徹底した歳出の見直しが行われ、臨時的な財源対策が十五年度予算の二千五百億円から一千七百億円に圧縮をされました。都財政の緊急課題に積極的に取り組みつつも、財源不足額を圧縮したということは、まずは一定の成果であると評価をしたいと思います。しかしながら、今年度も、臨時的な財源対策をまた講じざるを得ませんでした。
 そこで、伺うわけでありますが、現在の時点において、今後の財政収支をどのように見通しておられるか、お答えをいただきたいと思います。

○櫻井財務局長 お話のとおり、十六年度予算におきましても、圧縮したとはいえ、一千七百五十一億円もの臨時的な財源対策を講じざるを得ませんでした。しかし、今後、景気の先行きがいまだ不透明であること、また、三位一体改革の都財政への影響が不明であることなどから、不確定な要素や不安定な事情も多くございます。
 こうしたことから、現時点におきまして、今後の具体的な財政収支を見通すことは困難でありまして、このまま財政再建に手をこまねいていると、現下の財政状況からして、なお引き続き、巨額の財源不足が生じることが見込まれます。

○樺山委員 十六年度予算でのプランの目標額に対する財源確保額の割合は二六・一%であります。十七、十八年度は、さらに着実に進めなければならないということを考えるわけでありますが、特に、財源確保額を計上できなかった地方財政制度の改善を含め、今後の財政再建への具体的な取り組みについて伺います。

○櫻井財務局長 今後の財政再建に当たりましては、第二次財政再建推進プランにお示ししました基本的な視点に基づき、財政構造改革をさらに充実強化し、内部努力の一層の徹底や、引き続きすべての施策を対象とした見直し、再構築など、みずから行うことのできる取り組みを積み重ねていかなければならないと考えております。
 その上で、お話の地方税財政制度の改善につきましては、国が講じた財源補てん措置が、地方主権の確立に不可欠な本来あるべき税源移譲の姿と全く異なるものであることなどから、財源確保額としては計上できませんでしたが、今後、地方の自主、自立を実現するためにも、真の改革を国に強く迫っていく必要があると考えております。
 これらを実現していく積極的な取り組みこそが、強固で弾力的な財政体質を確立し、財政再建を達成する道であると認識しております。

○樺山委員 財政再建に向けた当面の目標は、極めて当たり前のことでありますけれども、財源不足を解消して、臨時的な財源対策頼みの財政運営から早く脱却をすることでありますが、過去の財源対策などにより積み上がった、いわゆる隠れ借金の存在の問題も忘れてはならないというふうに思います。都政の将来を考えたとき、いろいろと問題の多い三位一体の改革における税源移譲がどのようなものになるかが大きな問題となるわけであります。
 これまで都民は、全国平均に比べて多くの税金を払っていながら、少ない還元に甘んじてまいりました。受益者負担の原則を課税の根拠にしているガソリン税でさえ、都民の納めた税収の約半分が東京都以外の道路整備のために使われているということこそ、これを象徴するものであります。しかしながら、もはやこんなことを国に続けさせておくわけにはまいりません。
 ところで今回、本格的な税源移譲までのつなぎ措置として、所得譲与税と税源移譲予定特例交付金が設けられましたが、つなぎであることを割り引いても、あるべき税源移譲の姿ではないという都の見解が既に示されております。であるとするならば、都が考える税源移譲のあるべき姿とは、一体どんなものなのでありましょうか。
 所得譲与税ができたことにより、移譲される基幹税イコール所得税という雰囲気になりつつありますが、こうした状況についてはどのようにお考えでしょうか。

○川崎主税局長 三位一体改革の目的は、地方自治体がみずからの責任と判断で行財政運営を行えるようにすることにありますが、今回の国の改革案は、所得譲与税など、配分権が国に残る財源の移転にとどまっており、改革の本旨からかけ離れたものになっております。
 地方税は、一般的に地域的な偏在が少なく、税収が安定している税で構成することが望ましいとされております。今後の少子高齢社会における膨大な財政需要等を踏まえますと、バランスのとれた税体系の構築が不可欠であります。よって、税源移譲は、基幹税である所得税及び消費税の組み合わせによるべきと考えております。

○樺山委員 ところで、三位一体税源移譲の議論を始めると、必ず東京ひとり勝ち論の話になるわけであります。
 先般も、自由民主党の本部で全国政調会長会議というのがございまして、そこで、他府県の政調会長さんから、実は大変なバッシングをちょうだいをいたしました。東京だけがいい目を見るんじゃないのかと、こういう誤解が大変な勢いでひとり歩きをいたしております。
 この東京ひとり勝ち論の誤りについては、この予算特別委員会冒頭にはっきりご答弁をいただいたわけでございますが、これをわかりやすく、広く国民に、そして都民に知らせていくには、具体例を挙げて明確に論証していくことが重要だと思います。実証的な立論を積み重ね、また、先入観にとらわれずに、当然常識と思われていることでも検証し、地に足のついた分析を行って、それを世に問うという形で、感覚論、感情論である東京ひとり勝ち論をこの際、何としても論破していただきたいと思います。
 また、忘れてならないのが、東京都を富裕団体とみなすことから行われる不当な財源調整であります。十六年度でも改善の道は全く開かれず、その影響額は百五十九億円にも及ぶと聞いております。三位一体の改革を待つことなく、このような不当な措置の解消を国に対して強く求めていくよう要望させていただきたいと思います。
 そこで、法人事業税の分割基準について伺います。
 国は、地方への税源移譲と同時に、法人事業税の分割基準を見直そうとしているのではないかという観測が出ているわけでありますが、法人事業税の分割基準はどういうもので、本来どうあるべきものでありましょうか。

○川崎主税局長 法人事業税の分割基準は、複数の都道府県で事業活動を行う法人の事業税を関係都道府県間で配分するための基準であり、本来、企業の都道府県ごとの事業活動規模を適正に反映したものとすべきものでございます。
 しかしながら、国は、分割基準を財源調整の手段として用い、工場のオートメーション化等を理由に、幾度かにわたり、本社従業者数を二分の一と算定するなど、大都市に不利益な法改正を行ってきました。これは、都道府県の行政サービスの受益に応じて課するという事業税の性格をゆがめるものであり、適正化が必要であると考えております。

○樺山委員 今回も、国は地方財政審議会の名をかりて、全国知事会を巧妙に利用しながら、分割基準のさらなる改正に向けて東京バッシングを繰り返しているわけであります。そして、財政力格差の議論を盛んに意図的に展開をいたしております。
 分割基準の改正によって、大都市からは財源をさらに吸い上げようとするこうした国の姿勢は、地方分権を確立し、地方自治体がみずからの責任と判断で行財政運営を行えるようにするという三位一体改革の本来の趣旨に反すると考えます。都税調にこうした動きに対抗する理論武装を求めるなど、今こそ分割基準をあるべき姿に改めていくための行動が必要であると考えるわけでありますが、石原知事の見解を伺います。

○石原知事 私は当時、衆議院におりまして、真っ向から反対を唱えて戦いましたが、今日の東京の置かれている、外から見れば富裕に見えても、窮状というのは、田中角栄の列島改造論が悪い余韻を引いていると思うんです。
 東京も一つの地方でありますけれども、それぞれ地方地方というのは特徴を構えて、国土という全体の体を構成しているわけでありまして、東京は--東京だけとはいいません、大阪もそうでありましょうが、スーパー大都市は、日本の心臓であり、頭脳でもあるわけでして、もちろん日本全体は、総体として手も足もなければ動きませんが、しかしやっぱり、その機能というのは国に対して意味合いが違うと思うんです。それを画一的にとらえる物の考え方というのは、例えば税の配分なんかでもまさにそうでありまして、ガソリン税、あるいはもう一つ、重量税ですか、これも田中時代につくられたものでありますけれども、これは高速道路の建設を主目的にした税でありますが、その配分は、地方に余り用途のない高速道路をつくることに振り向けられて、東京周辺のそういう道路の整備にほとんど振り向けられていない、そういう矛盾があります。
 これほど国家にとって致命的な機能が集中している首都というのは、世界にも東京以外には例がないと思いますが、いずれにしろ、東京に限らず、大都市は膨大な財政需要を抱えておるんですけれども、それに見合う十分な財源が配分されていないことは確かであります。
 一方では、いわゆる東京ひとり勝ち論がばっこしまして、大都市の財政需要を全く無視していると私は思います。例えば、法人事業税の分割基準を改正し、大都市からさらに財源を吸い上げようとする国のこの期の姿勢というのは、改革の趣旨に反して、東京としては絶対にこれは容認できないと思います。
 地方主権を確立するための真の改革の実現に向けて、都税調を活用して、他の大都市自治体とも連携を図りながら、国に挑戦をしていくつもりでございます。
 そういう点では、首都圏の神奈川、千葉、埼玉との連携というのは、だんだん実のあるものになってまいりました。そういったものを大いに活用しながら、今日の東京の置かれている窮状というものを打開していきたいと思っております。

○樺山委員 次に、地方債について伺います。
 我が党は、昨年の第四回定例会の私の代表質問の中で、都債の活用とともに、国主導の現行の都債発行システムを、自治体主導のものに改める必要があると強く訴えたところ、国に依存しない都独自の都債の制度改革を一層進めるとの力強い答弁がありました。
 そこで伺いますが、現時点における都債制度改革の進捗状況はどうなっているのでしょうか。

○櫻井財務局長 各自治体はこれまで、国が主導する枠組みのもと、資金調達を行ってまいりましたが、こうした自治体一律の取り組みは、もはや十分に機能しなくなっており、各団体はみずからの責任と信用力で市場から資金を調達することが求められております。
 都は、こうした観点に立ちまして、平成十四年度以来、東京再生都債や超長期債の発行など、都独自の都債制度改革を進めてまいりましたが、十六年四月をもって、国に依存してきた現行の枠組みから離脱しまして、都みずからが市場原理を踏まえ、都債の発行条件を決定する個別交渉方式へ全面的に移行いたします。
 また、この移行に合わせ、十年債について、これまでの銀行主体から、証券会社を主体とするシンジケート団に改めるなど、都債の引受方式についても市場を重視したものに大幅に見直しいたします。
 この四月からは、この新たな制度のもと、有利かつ安定した都債発行に努めてまいります。

○樺山委員 かねてから、東京都としては、都債の発行条件をみずからの手に取り戻すために尽力されてきたところであります。その間、都債発行に関する制度改革検討委員会での議論や、東京再生都債あるいは超長期債の発行など、さまざまなステップを踏んで努力していただいております。その積み重ねが、今回の個別交渉方式への移行につながったものと考えております。
 これら一連の制度改革の端的な効果としてはどのようなものがあるのか、具体的にお示しをいただきたいと思います。

○櫻井財務局長 これまで、一連の制度改革によりまして、都債の利回りなど発行条件の向上とともに、コストの面でも改善を図ってまいりました。
 具体的には、銀行や証券会社に支払う発行手数料は、十年債につきましては、それまで百円につき七十五銭だったものが、平成十五年度には三十八銭に、また五年債につきましても、四十三銭から二十九銭に、それぞれ大幅な引き下げを実現いたしました。
 この引き下げに伴うコスト縮減効果は、十五年度だけの一年間で三十三億円になっております。
 そして、先ほど申し上げました四月からの個別交渉方式への移行に伴い、他団体と横並びでありました発行条件が、都債単独で決定できるものに変わることから、他団体の影響を受けず、都に有利な発行条件を確保することが可能になります。
 また、市場を重視した起債運営により、さらなる発行手数料の引き下げも予定しておりまして、あわせて一層のコスト縮減に向けて努力してまいります。

○樺山委員 小泉総理は、ことしじゅうに三位一体の改革の全体像を改めて示す、こういうことをおっしゃっておられるわけでありますが、ここが地方にとって次の、いわゆる勝負どころではないかと思います。国に対して、大都市の実情をきちっと伝え、全体像に東京を初めとする大都市の意見を強く反映させるべきであると思います。
 ついては、我が党の本会議での代表質問に対し、知事が策定を表明されましたいわゆる試案は、国の全体像づくりの議論にぶつけることができるように準備すべきと考えております。
 この勝負分け目の改革のときに、地方自治体の雄として、東京都が、今後、国や地方全体にどのように向き合い、東京の再生と日本再生を目指していくのか、知事のご所見と決意をお伺いいたします。

○石原知事 国家というのは人間の体に似ておりまして、いろいろの部分が構成してでき上がっている総体でありますけれども、どの一つを欠いても、健全な体の運営というのはあり得ないと思います。しかし、やはりその中でも、あえて申しますけれども、東京並びに他のいわゆる大都市というものは、機能からいっても、頭脳部分であり、心臓部分であると思います。
 そういった部分部分の意味合いというものをきちっとしんしゃくせずに、これをのっぺりと画一するということは、決して健全な政治にならないと思います。
 鳴り物入りで始まりました、いわゆる三位一体改革は、改革の理念も方向性もはっきり示されないままに、初年度に当たる平成十六年度を迎えようとしておりますが、国と地方の税財源配分の抜本的な見直しを棚上げするなど、これまでの国の取り組み姿勢では、改革が名ばかりのものになることが危惧されております。
 本来、改革の本旨は、日本全体の発展を図る見地から、自治体が自主的、自立的な行財政運営を行える基盤を確立して、地方分権を実現することにあるはずであります。
 遅まきながら、国は年内に全体像の提示を予定しておりまして、ことしが改革の方向を決定づける重要な年となると思います。
 一方、さきにも話しましたけれども、全国知事会は、新しい会長に据えたこの人が、非常に、さらに逆行的なことを知事会の総意としてまとめようとしている嫌いがありますけれども、これに対して、都としては、恐らく反論になると思います。国に対しても反論になると思いますし、全国知事会に対しての反論になると思いますが、地方自治のあるべき姿を明らかにして、かつ、その中の大都市の意味合いというものをきちっと明示しながら、広く全国自治体や国民に示すことが必要と考えております。
 今後、特別委員会などの議論も踏まえまして、分権改革のあり方について具体的に提言し、国を動かしていきたいと思っておりますが、特に都議会の強力なご支援をお願いしたいと思います。

○樺山委員 さて、いよいよ新銀行について何点かお伺いをいたします。
 昨年四月の東京都知事選挙で、石原慎太郎知事は、東京に新しい銀行をつくると、極めて明確な選挙公約を打ち立てて選挙戦を戦われました。そして、私どもは、その選挙公約を掲げて戦った石原慎太郎知事を支援させていただきました。したがって、この問題は、我々としては避けて通ることのできない問題であると同時に、できることならば、石原知事のその思いをしっかりとした形で遂げてさしあげたい、こういった基本的な認識のもとに、このスキームが発表されてから今日に至るまで、さまざまな角度から、実は多角的な検討を加えてまいりました。そして、各方面ともできる限りの折衝、交渉をも重ねてまいりました。
 そうした中で、大阪信金や熊本第一信金、都民銀行の設立の背景、あるいは日本の金融制度の仕組み、そして中小企業の現状と経営者の苦悩など、この一年間、山崎行財政政策委員長を中心に、五十三名の会派一丸となって徹底的に調査を加え、繰り返し繰り返し議論を重ねてきたところであります。
 そこで、責任政党であり、かつ都議会第一党として、都民の皆様方への説明責任をはっきりと果たす、そういった意味で、今までの質疑の中で十分に明らかにされていない部分も含めて、この際、総ざらいをさせていただきたいというふうに考えます。
 まず、新銀行は、三年後に自己資本比率一三・一%、外部格付ダブルA、これは世界的にも通用する一流バンクを目指すということであります。これを目標とすることは、基本的なことでありますけれども、財務内容がかなりよくなければならないわけであります。
 一方、三%から六%の利率で貸し出しをする、相当のリスクを実は負うわけであります。ということは、株式会社としての利潤を追求することと、中小企業を支援するという新銀行の理念追求とは、あるいは相反することを、我々はまず認識せざるを得ないところであります。
 であるとするならば、その調和点は一体どこに求めるか。大株主として、だれが、どの機関がどのように新銀行の経営のチェックをしていくのか。また、そもそも新銀行は、日銀、金融庁などの、当然でありますけれども管轄下に置かれているわけでありまして、その中で新銀行独自の手法が一体どれほどまでに通用するのだろうか。あるいは国や業界の圧力にどう対抗していけるのか。また、当初五百億円、将来的には一千億円の出資を民間から募るわけでありますけれども、実際にそれだけの資金が集まるのかどうか。今日までそれぞれ答弁は伺いながらも、実はいまだに心配の種は尽きないのであります。
 この新銀行については、これまでの質疑を通して、既存金融機関の手の届かない中小企業への資金供給を最優先するとともに、今申し上げたとおり、リスクをとりながらも、健全性の高い財務体質を構築しようとしていることは、それなりに理解をさせていただいているわけであります。
 とりわけ、地域金融機関とは、融資や人材を初め、各分野で緊密に連携するとともに、リスク負担を軽減する仕組みも構築しているようでありますけれども、それらを含め、我が党は、昨年来、新銀行についてさまざまな提言をしてまいりました。ご承知のとおりであります。
 例えば、多くの中小企業が、保証協会の保証を受けられずに、大変な苦しみの中に呻吟している。そんな事実をも踏まえ、新銀行の機能の中に、いわゆる第二保証協会とでもいうべき機能を持たせるべきだと、一方で主張させていただいたところであります。あるいは、いわゆる劣後ローンの導入や長期中小企業ローンの導入なども提言してまいりましたが、それらの具体的な検討状況をこれから一つ一つ確認し、検証していきたいというふうに思います。
 まず、劣後ローンであります。
 その前に、この劣後ローンというのは余り聞きなれない金融用語であります。笑い話でありますけれども、この劣後ローンというのを初めて耳にしたある議員が、漢字だとは思わずに、レッツゴーだと思った。(笑声)レッツゴーローン、つまり、行け行けどんどんのローンだとばかり思ったという実は話がございます。したがいまして、私なりの解説を加えておきたいと思います。
 劣後、読んで字のごとくでありまして、後に劣る、劣った後、これは優先という言葉との対比、対極にある言葉でありまして、最も後、あるいは後送りをするという意味のようであります。
 そこで、劣後ローンとは、中小企業が毎年借りかえを繰り返して、一向に減らない債務、これを一般的に、これまた金融用語でありますが、根雪と呼んでおりますが、この負債たる根雪に、新銀行が資金を投入することによって、本来、根雪である負債が資本に変わって、債務者区分が、例えば要管理先が要注意先になる、破綻懸念先が要管理先にランクアップする。こうすれば、新たに中小企業が融資を受けやすくなる。この一連の構造的な仕組みが、いわゆる劣後ローンと呼んでいるものでございます。
 そこで、先日、金融庁の金融検査マニュアル別冊が改訂されまして、この劣後ローンの扱いが変更されたようでありますけれども、まず具体的にどのように改訂されたのか、お知らせをいただきたいと思います。

○大塚出納長 今回改訂されました金融検査マニュアルでございますけれども、金融機関が、経営の悪化した中小企業向けの既存の債権を、債務者の経営改善計画の一環として、資本性の高い劣後ローンに転換する場合には、一定の条件のもと、債務者区分等の判断において、資本とみなすことができることとされたわけであります。
 その条件とは、まず第一に、資本的劣後ローンへの転換が、合理的かつ実現可能性が高い経営改善計画と一体として行われること、第二に、劣後ローンへの転換に当たりまして、債務者が金融機関に対して財務状況の開示を約していること、第三に、金融機関が債務者のキャッシュフローに一定の関与ができる権利を有していることなどであります。
 なお、新規の劣後ローンの取り扱いについては、今後検討するということにされております。

○樺山委員 この劣後ローンへの転換には、金融機関や中小企業に、一体具体的にどのようなメリットがあるのか、そして今までにどの程度の具体例があるのか、お知らせをいただきたいと思います。

○大塚出納長 金融機関の貸出債権の一部が劣後ローンに転換され、当該中小企業の資本とみなされることによりまして、会社にとっては資本基盤が安定すること、それから、信用リスクの減少に伴い、金利や融資期間等の融資条件の改善が期待できるというメリットがございます。これは樺山副委員長ご指摘のとおりであります。
 一方、金融機関にとりましては、劣後ローン部分以外の融資について、返済の可能性が向上することや、転換した部分が資本とみなされることによりまして、債務超過が解消され、債務者区分が上位に移行し、結果として残債部分の引当金が減少することなどがメリットであります。
 今月十一日、つい最近でありますけれども、金融検査マニュアル改訂後初めて、政府系金融機関である商工中金が、地域金融機関と連携して、都内の従業員三十三名の金属製品製造業の経営再建を支援するため、融資の一部を劣後ローンに転換したことを発表しました。金利は明らかにされておりませんけれども、転換の規模は数千万円であります。

○樺山委員 率直にいいまして、本当に今までもやもやしていた部分がだんだん霧が晴れてきたという感じで、これは中小企業にとっては大変な朗報だというふうに理解をいたします。
 今まで債権とみなされてきた根雪、つまり、毎年、書きかえ書きかえでそのままになっていた借金が、劣後ローンという存在の登場で、新たな資本とみなされる。それによって、新たな融資が受けられるということでございますから、これは本当にありがたいことだというふうに思います。
 基本的なスキームとメリットを伺ったわけでありますが、もう少し具体的にお伺いをしたいと思います。
 例えば、ある金融機関が、三千万円を融資している中小企業の経営が悪化して不良債権となった。その一部を劣後ローンに転換すると実は決意した。ただ、その劣後ローンの上限額が非常に不安でたまらない、幾らなんだろうというふうな、当然の壁にぶち当たるわけでありますけれども、この三千万円を融資している中小企業の不良債権となっているものを劣後ローンに転換する場合に、その上限額は幾らぐらいになるのか、お知らせいただきたいと思います。

○大塚出納長 劣後ローンへの転換額の上限でありますけれども、引当金に着目してご説明を申し上げますと、転換した劣後部分に対する引当金の増加額と、残債について債務者区分が上位に移行することによる引当金の減少額との兼ね合いで設定されることになります。
 増減後の引当金が、ネットで転換前の引当金より減少しなければ、転換に合理性はなく、成立をいたしません。
 副委員長が例に挙げられました、三千万円の融資への引き当て率についてでございますけれども、劣後ローンへの転換前の区分が要管理先で三〇%であったものが、転換後に残債が要注意先となり五%に下がる一方、転換された劣後部分に対しては、一〇〇%必要として試算をいたしますと、引当金の増減が均衡する点は、転換額が七百九十万円の場合ということになります。この金額が、計算上、転換の上限であります。
 なお、具体的な転換額や条件の設定に当たりましては、企業の再建計画の実現可能性あるいは財務制限条項の妥当性なども諸々検討いたしまして、合理的な判断をすることになります。

○樺山委員 わかりました。新銀行のマスタープランでは、劣後ローンについて、個別企業型とストラクチャー型の二つを取り上げているわけでありますけれども、今回の金融検査マニュアルの改訂を受けて、具体的に新銀行ではどのような形での実施を考えているのか、お伺いしたいと思います。

○大塚出納長 新銀行におきましては、技術力、将来性重視型や、シンジケート型の既存の個別の融資案件におきまして、融資先企業の再生を図るために、その主要取引先金融機関の対応とあわせて、その債権を劣後ローンに転換していく場合を想定しております。
 転換の規模や金利につきましては、個別案件ごとに融資先の再生可能性及びリスク等に応じて決定することになります。
 また、ストラクチャー型の劣後ローンにつきましては、金融検査マニュアルでは触れられておりませんけれども、地域金融機関の債権流動化と中小企業への融資を促進するため、多くの債権をプールした後、証券化の仕組みとあわせ、新銀行がこれら債権の劣後部分を引き受けることが考えられます。
 この場合、厳格なリスク管理に加え、人員、システムなどの期中管理体制等において、とりわけ十分なスタンバイが必要になるというふうに考えております。

○樺山委員 ということは、我が党が従来から主張してまいりました個別企業型でスタートをする、このように理解をさせていただいてよろしゅうございましょうか。--ところで、中小零細企業にとっては、住宅ローンのように二十年、三十年の長期借り入れがあれば、どんなに楽だろうなという方が非常に多いわけであります。とにかく借り入れの毎月の返済が長ければ長くなるほど、月々、大変に楽になるわけであります。
 そこで、新銀行では、長期借り入れのニーズに当然対応せざる得ない状況になるかと思いますが、現在のお考えをお聞かせいただきたいと思います。

○大塚出納長 新銀行のポートフォリオ型融資では、ほかの金融機関の融資と比べ高い融資限度額や短い審査期間などの点において、中小企業にとってメリットがあるばかりでなく、融資期間についても十分長い期間を設定しております。
 さらに、新銀行では、融資返済中でも追加の資金需要が発生した場合には、資金使途あるいは財務内容、融資限度額等の審査基準を満たせば、追加融資をすることも可能であります。
 また、シンジケート型融資は、信用金庫等と協調することで、案件内容によっては、最長十年の融資も対応可能であります。

○樺山委員 ここは、ちょっと改めて実は確認をしておきたいところでございます。今のお答えで、最長十年ということでございますのと、それから、これは無担保なのかどうか、ちょっとお答えいただきたい。

○大塚出納長 最長十年、無担保でございます。

○樺山委員 だんだん元気が出てまいりました。我々が地元で中小企業の社長さんたちと会うと必ず出てくるお話が、いわゆる借り入れの返済が大変だ、何とかならないんだろうか、こういう声ばかりであります。
 そこで、現在既に借り入れている融資は担保や保証をつけているわけでありますけれども、新銀行がシンジケート型融資で実施した案件では、こうした期間延長の要望に果たして対応できるのかどうか。その場合、二十年は無理でも、せめて通算で十五年程度の長期中小企業ローンを設定するということは考えられないのかどうか、ちょっとお答えをいただきたいと思います。

○大塚出納長 新銀行におきましては、シンジケート型融資におきまして、債務者から期間延長の要望があった場合には、案件ごとに資金使徒、財務状況等を検討するのと同時に、提携先である金融機関が期間延長を認めるに至った経緯、あるいは策定された経営改善計画等の合理性を十分勘案し、新銀行として判断をしてまいります。
 担保保証の設定を前提に、それらによる保全状況を検証し、要件が満たされれば、十五程度の長期中小企業ローンを設定することも考えられます。

○樺山委員 繰り返し申し上げますが、本当にありがたいご答弁をいただいております。まさにビッグニュースといっても過言ではないわけでございまして、十五年の長期中小企業ローン、これは明らかに新銀行の目玉になる。このことがあることによって、新銀行がさらに生き生きと輝く。長期中小企業ローンを組めば、毎月の返済が劇的に少なくなっていくわけでありまして、中小企業にとっては、まさに救いの神の到来ということを申し上げてもいいだろうと思います。
 信用金庫等とは、このシンジケート融資のほか、いろいろな形で提携をしていくこととなっておりますが、今現在、どのような形で提携を具体化していこうとしておられるのか、お伺いいたします。

○大塚出納長 新銀行と信用金庫とでございますけれども、包括的な提携契約のもと、シンジケート型融資や保証等の窓口機能を含め、業務のさまざまな側面で緊密に連携をしていくこととして、現在、基本合意書の締結につきまして調整を行っているところであります。
 なお、提携業務内容の具体的な運用方法等につきましては、新銀行の執行役候補と東京都信用金庫協会の会員金庫の理事など八名とで構成する検討委員会を設置いたしまして、先ほどお話のありました保証の事務フローなどの実務的な協議を行っております。
 これらによりまして、新銀行にとって不可欠である信用金庫業界との全面的な協力体制が確立することになります。

○樺山委員 知事、マスタープランを読みますと、三百五十九人の体制で、本当に今ご答弁をいただいたようなことができるのかなと実は率直に思うんですけれども、そこで、信用金庫の業務力プラス、フェース・ツー・フェースの調査力、あるいは支店網、これらのいわゆる信用金庫の力、これを応分にかりなければ、新銀行の成功は、率直にいって、あり得ないというふうに思います。そのことをぜひ肝に銘じておくべきことを、我が党は改めて主張をさせていただきたいというふうに思っております。
 現在、中小企業が融資の申し込みに信用金庫に行くと、保証協会の保証をとってきていますか、あるいは、とってくるようにと必ずいわれるわけです。しかし、保証協会が一〇〇%保証できないケースが非常に多い。そのため、先ほども申し上げたとおり、我が党は、新銀行は第二保証協会としての機能を持たせるべきだと主張してきたところでありまして、中小企業の救済、地域金融機関のリスク負担の軽減、この二つの仕組みとして信用金庫の融資に対する保証を実施するとのことでありますが、現在の段階での検討状況についてお伺いしたいと思います。

○大塚出納長 この制度は、新銀行が中小企業に直接融資をするのではなくて、信用金庫等が単独では融資できないケースについて、新銀行がその保証を行うことによりまして、信用金庫等のリスク負担能力を補完し、中小企業への円滑な資金供給を促進するものであります。
 信用金庫との検討状況につきましては、現在、具体的な商品設計に係る調査や保証割合の検討、融資受け付けから実行までの事務手続の調整等、技術的な段階に既に入っております。

○樺山委員 重ね重ね朗報でございます。ありがたいと思います。
 この際、実は今まで質問をしていない点についても、何点か確認をさせていただきたいというふうに思います。
 新銀行は、信用金庫等の地域金融機関とさまざまな形で連携をしていくということはよく理解をいたしましたが、いわゆる信用組合、これは、ついこの間まで東京都の実は管理を受けていたわけでありますけれども、この信用組合との提携は考えておられないのか。
 また、新銀行の融資ターゲットは、現在、商工ローンなどから高い金利で借りている顧客が--顧客がというよりも、顧客も対象になると考えてよいのか、いかがでしょうか。

○大塚出納長 信用組合もまた、全体として地域金融機関の一つとして重要な機能を果たしていると認識をしております。既に新銀行の執行役候補が東京都信用組合協会と接点を持っておりまして、今後、信用金庫との具体的な連携モデルを先行事例としながら、信用組合とも連携について検討を進めていく予定であります。
 また、新銀行の融資ターゲットについてでありますけれども、これまでご説明してきたとおり、既存金融機関の融資が得られず、高金利の商工ローン等のノンバンクを利用せざるを得なかった中小企業に対しても、新銀行の審査基準に照らして、積極的に融資の対象としてまいります。

○樺山委員 またまた具体的なお答えをいただいたわけであります。
 マスタープランでは、中小企業融資とICカード事業が並列して書かれているわけでありますが、どちらの優先度が高いのですか。
 また、ICカード事業をきっかけとして、新銀行がほかの銀行の顧客を奪い取ってしまう、こういう懸念がかなり渦巻いているわけでありますが、これについてのご所見を伺います。

○大塚出納長 新銀行は、何よりも中小企業に対して生きた資金を安定的に供給する新たな仕組みとして創設をするものでありまして、新銀行の業務の中核は中小企業融資であるということはいうまでもありません。
 なお、困窮をする中小企業の期待に少しでも早期にこたえるため、新銀行の事業準備中である平成十六年度中に、中小企業再生ファンドを立ち上げていくことを予定しております。
 ICカードにつきましては、開業三期目の預金口座数を百万口座と想定をしておりますけれども、このうち七割は、JR東日本や都営交通等のIC乗車券と一体となった交通系カードであります。この交通系カードは、貯蓄そのものを目的とするのではない、いわゆる第二口座の機能が主でありまして、その一口座当たりの平均預金量は約十万円程度と想定をしておりまして、これにより膨大な預金シフトが生じる可能性は少ないというふうに考えております。

○樺山委員 膨大な預金シフトを予想されておられないということでございますけれども、しかし、東京都の職員の年間の給与費だけで、実は一兆六千二百九十四億円あるわけですね。これに退職手当を合わせますと一兆七千九百五十八億。この給料と退職手当等を新銀行に預金をしただけで一兆七千億になるわけです。このほかに、いわゆる知事の人気、石原ブランド、東京都の信用力などで、素人考えで恐縮でございますけれども、かなりの預金シフトが生じる可能性があるのではないかと考えます。
 しかも、Suicaあるいは他行のATM、銀行のATM、セブン-イレブン、コカ・コーラ、それから、ATMのことを実は何というか、ご存じかどうかわかりませんが、ATM、あほな父さんもう要らぬというんだそうでありますけれども、学生やサラリーマンが、便利だし、格好いいし、我も我もとその新銀行に口座をつくってしまう。しかも、十七年の四月からペイオフ開始でありますから、ICカードについては、どうぞ一年間、慎重なご対応をぜひしていただくように望んでおきたいというふうに思います。
 新銀行の中小企業融資のスキームは大変結構でありますけれども、各地域の商店街の零細企業は、いまだ厳しい状況にあることはご存じのとおりであります。新銀行は、商店街支援のために、比較的金利の小口の無担保ローンを新たに創設することなどをぜひ検討していただきたいというふうに思います。
 なお、これにあわせて、ICカードを活用した仕組みが並行して考えられれば、利便性は一層向上すると思いますので、あわせてこれは要望をさせていただきたいというふうに思っております。
 ところで、いよいよ来月には準備会社が発足をいたします。開業に向けての本格的なスタートに入るわけでありますが、その段取り、現在の具体的な絵をお示しいただきたいというふうに思います。

○大塚出納長 予算について議決をいただきました後、ビー・エヌ・ピー・パリバ信託銀行を買収する契約を四月一日に締結いたしまして、新銀行の準備会社として出発する予定であります。
 先ほど冒頭で、金融庁の監督下のもとで、この銀行モデルはどうなんだというふうなご指摘もいただきましたけれども、それについて間接的にお答えをすることになると思うんですけれども、今後一年余り、開業に向けて準備を行っていくわけでありますけれども、準備会社として出発をする時点で、制度上は何ら制約のない、新銀行東京という銀行法上の銀行が立ち上がることになります。
 したがって、都民や中小企業に直ちに銀行業務が開始されるような誤解や混乱を与えることのないよう、準備期間中は預金の受け入れ等の新規業務を停止することを対外的に明確にする方向で、現在、金融庁と意思疎通を図っております。

○樺山委員 実は間もなく、四月一日にビー・エヌ・ピー・パリバ信託銀行を買収する契約を結ぶというわけであります。フランス国立銀行の流れをくむ名門銀行だというふうに伺っております。従来の銀行を買い取って新しい銀行をつくるというシステムが現実にここにあるんだということを、私たちは今、目の前で見ているわけでありますが、いろんなうわさが飛び交って、幾らでこれを買い取るんだろう、もうピンからキリまで勝手な金額が実はひとり歩きをいたしておりました。
 もういよいよ契約を締結、ぎりぎりの段階になりましたので、このビー・エヌ・ピー・パリバ信託銀行を幾らで買収をされるのか、この際、はっきりとお答えをいただきたいというふうに思います。

○大塚出納長 過日の財政委員会でもご質疑があったわけでありますけれども、その段階ではお答えできなかったわけでありますけれども、ようやく最終的な整理ができましたので、ご報告を申し上げます。
 ビー・エヌ・ピー・パリバ信託銀行につきましては、平成十五年七月には、資本金五十三億円でありました。東京都は、今回の買収に当たり、ビー・エヌ・ピー・パリバ信託の欠損金等の資産内容を精査し、二十四億九千百万円まで原資を求めることにいたしました。
 さらに、監査法人等による買収調査、いわゆるデューデリジェンスでありますけれども、それによりまして、同行のより厳格な資産査定を実施いたしまして、買収価格を二十二億八千八百万円と算出をしたところであります。議会の承認が得られましたら、四月一日に、この金額をベースに買収することを考えております。

○樺山委員 二十二億円、はい、わかりました。
 さて、東京の中小企業は、この新銀行の一日も早い開業を待ち望んでおります。いよいよ新銀行をめぐっての審議はまさに大詰めを迎えたわけでありますが、この際、知事は、この新銀行の設立に当たって今何をお考えか、率直なご感想とご決意をお伺いしたいと思います。

○石原知事 新しいことをしようとしますと、いろいろ揣摩憶測飛び交ったり、後から見れば筋の通らなかった反対があったりするものでありますけれども、いずれにしろ、都議会の非常に踏み込んだご協力をいただきまして、本会議あるいは予算特別委員会、常任委員会、そして、きょうの締めくくりの総括質疑でも、新銀行の開業までの道のりから将来の展望を含めて、あらゆる角度から十分な議論をいただいたと思っております。期待の声、励ましの声、また、ご懸念の声もありまして、これをすべてしっかりと受けとめてまいりたいと思っております。
 しかも、いうまでもなく、新銀行の創設は、リスクを踏み越えての大きな挑戦でありまして、生易しい道程であるはずはないと思います。本日、この日を迎えられたのは、ひとえに都議会初め各界からの非常に力強いご支援あってのことと、今、改めて思っております。
 都民からも、中小企業救済のためにぜひ尽力してほしいと、この銀行はですね、あるいは、その不良債権のない、信用力のある銀行の新設を歓迎するという声も寄せられておりまして、そういう声を背景に、何としても成功させたいと思いますし、また、成功すると確信もしております。
 決して、他をそしって自分を支えるつもりはございませんけど、立場上いえないこともたくさんございますが、調べてみると、既存の銀行の実態というのは、まだまだ国民の目に見えない部分がたくさんありまして、それをどこまで今回の銀行の新設の理由に構えて説明していいか、いろいろ考えますが、いずれにしろ、大銀行の幹部が国会での証言などしておりますけれども、我々の知っている実態とはかなり違っている部分もありまして、そういうものを見合わせて、我々も新銀行の設立に踏み切ったわけであります。
 巷間からいろんな期待の声が寄せられておりまして、それにこたえるべく、鋭意努力をしてまいりますが、こういうものをきっかけに、日本の金融全体がやっぱり襟を正し、質的にいい意味で変質していくことを私たちは期待をしております。

○樺山委員 ありがとうございました。
 きょうの質疑で、長期中小企業ローン、劣後ローン、第二保証協会ともいえる保証業務など、苦境にあえぐ中小企業にとって、頑張れば、歯を食いしばって耐えれば何とかなるという希望の光が見えてきたというふうに、率直に感じております。
 マスタープランの冒頭で、知事は、こう述べておられるわけであります。中小企業の深刻な状況は依然として続いていて、その体力の消耗を考えると、国の対応や既存銀行の体質転換を座視する時間的余裕はありません。私はかねてから、世界に誇り得る日本の中小企業の潜在的な力を十分発揮できる環境を整えることこそが、経済再生を実現する最も確かな道筋であると考えてまいりました。そして、そのためには、我が国の巨大な個人金融資産を中小企業への生きた資金として循環させる有効な仕組みを構築することが喫緊の課題であり、今、東京都が行動を起こさなければ、後世に悔いを残すと判断をいたしました。
 これに尽きるわけであります。どうぞ気合いを入れて、改めてふんどしを締め直して、幹部皆様方一致協力して、来年の四月に向けて怒濤のごとく突入をいただきたい、心からご期待を申し上げたいというふうに思います。
 次に、島しょ地域の観光振興について伺います。
 この問題については、我が党の川島忠一先生が、まさに寝る間も寝ないで腐心を続けておられる事柄であります。伊豆諸島並びに小笠原諸島は、手つかずの自然や独特の歴史、伝統、文化など、豊かな観光資源に満ちあふれております。
 こうした資源を有効に活用して、それぞれの島が着実に観光振興を推進していけば、島しょ地域は、他の観光地に引けをとらないすばらしい観光エリアになると確信をしております。しかしながら、情報発信や財政などの面で力の弱い個々の島々だけで、島しょ地域の観光振興が図れるものではありません。
 都は、これまでにも、さまざまな形で島しょ地域の観光振興を支えてきたはずであります。島しょ地域がその魅力を一段と高め、他の観光地に伍していくために取り組む観光振興に、都も積極的に関与すべきと考えますが、ご所見を伺います。

○有手産業労働局長 観光立国のもとで、我が国の観光地間の競争も激しくなっていくものと思われます。これら観光地に伍していくためには、伊豆諸島、小笠原諸島の各島が互いに切磋琢磨しながら、主体的に観光振興に取り組むことが基本であると認識しております。
 そして、このような認識に立ちまして、都は、広域的な観光振興を図る観点から、各島が一体となって取り組む先駆的な観光振興策については、島しょ地域と連携し、積極的に推進していく必要があると考えております。
 平成十六年度は、各島が共同して、新たな観光客の掘り起こしのため、全国のコンビニエンスストアでの宿泊予約や交通チケットの販売、インターネットによる特産品の販売などが行えるウェブサイトを構築することとしておりまして、都は、これを支援し、島しょ地域の観光振興を積極的に推進してまいります。

○樺山委員 ところで、島しょ地域にはすばらしい自然や景観のみならず、アシタバあるいはくさや、パッションフルーツを初めとするおいしい水産物や農産物が数多くあります。
 都では、それぞれの島が立ち上げるウェブサイトに先駆け、ITを利用して、都民が島の水産物を手軽に購入できる仕組みづくりを支援すると聞いておりますけれども、具体的な取り組みについて伺います。

○有手産業労働局長 島しょ地域の産業を活性化するためには、観光業や農林水産業などの各分野が連携しながら、一体的に取り組むことが効果的であり、重要であると考えております。
 都は、現在、各島の漁協が進めている代表的な水産物のブランド化や、インターネットを利用した、いわゆるIT販売の取り組みに対し支援をしているところであります。来年度からは、この取り組みを本格実施する予定であり、新たな観光ウェブサイトともリンクし、販売の拡大に結びつけていきたいと考えております。
 今後、各島の観光情報や水産物を初めとする特産品情報の発信や販路拡大を積極的に支援し、島しょ地域の一層の産業振興を図ってまいります。

○樺山委員 次に、東京の観光のまちづくりについて質問をいたします。
 私は、昨年の第四回定例会の代表質問において、私の地元葛飾柴又、車寅次郎、矢切りの渡し、そして、ウィーンとのつながりを生かした音楽への取り組みなどを例示しながら、観光まちづくりについて質問をいたしました。この間、モデル地区である上野や臨海だけではなく、他の地域でも、観光の視点に立ったまちづくりに取り組む動きが実際に出てきております。多摩では、我が古賀俊昭総務会長のまさに悲壮なまでの努力もあって、大河ドラマ「新選組!」の放送を契機とした町おこしが始まっております。
 都は、こうした動きをしっかり受けとめ、観光まちづくりが都内全域で展開されるよう、的確にサポートをするべきであります。
 初めに、観光まちづくりのモデル地区である上野地区の状況について伺います。近々、上野地区観光まちづくり検討会において、基本構想がまとまると聞いております。上野は、寛永寺などの歴史遺産、国内でも第一級の多数の文化施設、アメ横など有数な商店街が集積し、観光資源に大変恵まれた地域であり、大きな発展の可能性を秘めた地域でもあります。また、井沢八郎の「あゝ上野駅」の歌碑が先日建立をされたとも伺っております。
 しかし、上野において、これまで観光の視点に立ったまちづくりができていない、こういう事実がございます。これはなぜなのでありましょうか。また、それを乗り越え、観光まちづくりを進めるに至るまでに、どのような苦労や経過があったのでしょうか。
 さらに、上野での取り組みを他の地域にどう生かしていこうとしておられるのか、お伺いをいたします。

○有手産業労働局長 上野は、東京観光のメッカであったといえますが、交通網の発達や他の地域の集客力が高まることで、相対的に、かつてほどぬきんでた吸引力は見られなくなりました。
 こうした中で、今お話がありました各文化施設や商店街などは、集客を図る個々の取り組みを行ってまいりましたが、地域が一体となって観光客を受け入れる観光まちづくりには至りませんでした。
 このため、都は、上野地区観光まちづくり検討会を設置し、歴史的建造物のライトアップを実現するとともに、地元に働きかけ、その機運を高めることによって、歴史と文化が体感できる回遊性のある観光まちづくりに取り組む、関係者間の共通認識を形成するに至りました。
 さらに、来年度早々には、この構想の実現に向けまして、地域が一体となって推進体制を立ち上げる予定であり、上野地区において観光まちづくりが本格的に動き出します。
 都は、上野地区のこうした一連の取り組みを参考例といたしまして、他の地域のまちづくりに生かし、観光まちづくりの推進を図ってまいります。

○樺山委員 上野に住んでいる議員も実はいるんですけれども、地域が動き出して、上野が変わるという感じがいたします。
 東京には、歴史や文化の資源に恵まれたまちもありますが、下町の人情や自然や景観に恵まれた、我が葛飾柴又のようなまちもあります。また、産業やショッピングも立派な観光資源であります。
 さらに、一方、臨海副都心では、水辺空間や緑豊かな公園があって、四季の移ろいが体感できる場所となっております。
 ことしもいよいよ桜の季節となったわけでありますが、臨海副都心の魅力を代表するお台場では、民間進出事業者の自主的な取り組みとして、桜並木づくりが進められていると伺っております。
 また、このお台場の名称の由来ともなっている第三台場は、ことし築造百五十年を迎えますが、ここには、設計者である江川太郎左衛門ゆかりの伊豆韮山の中学生たちによって植えられた桜が既にありまして、隠れた名所になっているとのことであります。
 そこで、例えばお台場海浜公園に桜を植えていくことによって、今後、千鳥ケ淵に匹敵するような東京の桜の名所にしてはいかがかと考えますが、所見を伺います。

○成田港湾局長 臨海副都心は、総面積四百四十二ヘクタールの中に、約三割の公園や広場とともに、豊かな水辺空間がございます。春の菜の花や秋のコスモスなどのワイルドフラワー、夏には大華火祭、冬にはイルミネーション等、四季折々の季節を体感できる場所となっておりまして、訪れる人々にご好評いただいているところでございます。
 都心で失われがちな季節を感じられるまちづくりを進めることは、臨海副都心の魅力向上のために重要であると考えております。
 お台場海浜公園へ桜を植えてはとのご提案につきましては、例えば、都が用地を、また民間が苗木を用意いたしまして、都民による記念植樹を行うなどいたしまして、お台場が桜の名所になるよう努力してまいりたいと思っております。

○樺山委員 先日、お台場を訪れた際に、ヴィーナスフォートとかフジテレビの展望台から、レインボーブリッジや第三台場を望むと、その眼下に島が二つあるのが目につくわけです。海鳥が翼を休めることを願って、この島を鳥の島と名づけられたと伺っております。
 ただいま、民間とも連携して桜を植樹して、桜の名所となるべく努力していくとの答弁をいただいたわけでありますが、第三台場には、もともと桜があるわけでありますし、お台場ビーチを囲む海浜公園に桜の植樹が進んでいった場合に、この二つの島も桜で彩ることができれば、その周辺水域を取り囲むように、壮大な桜のネックレスが完成するわけであります。
 こうして、咲き誇る桜が水辺に映えるさまを実は想像するだけで、胸が震える思いがいたします。竹芝、晴海から出航する客船やクルーズ船、また屋形船など、船の上からその情景を見たら、それはそれは大変なことだというふうに思いますし、特に外国人観光客に、その光景を何としても見せたい。ハウビューティフル、トレビアン、ワンダフル、ブンダバル、ハラショー、チョワヨー、外国人観光客の驚嘆に満ちた歓声が耳に届くようであります。
 そこで、ぜひ鳥の島への桜の植樹を積極的に進めていただきたいと思いますが、所見を伺います。

○成田港湾局長 鳥の島へ桜を植えてはとのご提案をいただきましたが、お台場を桜の名所とする取り組みに当たりまして、貴重なご示唆と受けとめております。
 これらの島は、昭和初期に石積みでつくられた旧防波堤でございまして、エノキやハコネウツギなどの植物も自生しているものの、土壌や潮風など、桜の生育に当たって解決すべき課題もございます。
 今後、試験植栽などを通じまして生育の可能性を検討し、お話のありましたような、美しい桜のネックレスが実現するよう努めてまいりたいと思います。

○樺山委員 東京には大変多くの個性的なまちがあって、それぞれに魅力があるわけであります。こうした東京の特性を生かした一つ一つのまちが光る、まさに東京でなければできないというようなまちづくりが展開されることを強く期待をいたしております。
 一方で、海外の諸都市も観光に力を注いでおりまして、国際的な観光競争はますます激化の一途をたどっております。
 そこで、こうした状況を踏まえまして、東京の観光振興に対してどのように今後取り組まれていくご決意か、知事のお考えを、意気込みをお伺いしたいと思います。

○石原知事 私もかねがね、世界が時間的、空間的に狭くなればなるほど、観光というのは有力な産業の一つだといってもまいりました。しかし、残念ながら、日本の場合には、国際旅行収支は二兆三千億円の赤字でありまして、これを埋めるべく、東京都としては、国をリードして観光振興を推進していきたいと思っております。
 都もこれまで、ハード、ソフトの両面からの観光のインフラを整備してまいりました。絵文字を利用した四言語による観光案内標識とか、月百万件のアクセスがありますウェブサイトとか、あるいは地下鉄の駅名などの番号制もこの間整備し直しましたが、いずれにしろ、世界の交流人口は、現在の七億人から、二〇二〇年には約二倍の十六億人になると予測されておりまして、国際的に観光競争が激化していくと思います。
 東京の伝統文化や産業などを売り込むシティーセールスも積極的に展開しております。国内主要観光都市とも連携を深めまして、旅行者を東京に呼び込み、日本のゲートウエーとしての全国の観光振興を牽引していきたいと思っております。
 例えば隣の神奈川県でありますけれども、日帰りできるところですから、鎌倉は日本の三大古都の一つで、東京こそが神奈川県にかわって鎌倉の宣伝もしてあげたいと、この間、松沢君にそういう話をいたしました。

○樺山委員 ありがとうございました。
 次に、産業を担う人材育成について伺います。
 若者の職業意識の醸成は、産業の担い手を育成する面から大きな課題となっております。都立高校を見ますと、平成十五年度には、二百七校のうち九十五校において、商業、工業、農業などさまざまな分野のインターンシップ、つまり職業体験に取り組んでおります。
 産業労働局では、商店街の人づくりという面から、商業高校生なども対象に商人インターンシップ事業の実施を検討するとお伺いをしました。
 今回検討しているこの事業は、既に商業高校などが取り組んできている試みをフォローし、広げていくものと考えますが、その内容とねらいについて伺います。

○有手産業労働局長 商人インターンシップ事業は、お話の商業高校などの取り組みを、商店街振興の観点から協力、支援するものでございます。
 事業実施に当たりましては、既に実施しているインターンシップの実績を踏まえ、元気で意欲的な商店街に参加を呼びかけまして、ユニークなイベントや高齢者向け事業などの先進的な商店街の取り組みに参画することで、商業の楽しみや商店経営の喜びなどが体験できるように、カリキュラムに一工夫を凝らしていきたいと考えております。
 今後、教育庁と連携を図り、将来の商店街の新たな担い手の創出につながる効果的な事業として早期に実施するため、具体的な検討を進めてまいります。

○樺山委員 商人インターンシップに限らず、あらゆる職場や職種について、高校生に職場体験などを通して職業意識を深めてもらって、これを将来の新たな担い手の創出につなげていく、大変に意味、そして意義のあることであります。
 とりわけ、これまで東京の産業を支えてきたものづくりの現場では、熟練技能者の高齢化や若者のものづくり離れによって、これまで培ってきた技能の伝承は極めて困難になっており、こうした取り組みが特に必要であると考えております。
 こうしたことから、私は、産業労働行政の持つノウハウを生かして、長年ものづくりの現場でわざと心を磨いてきた熟練技能者を講師とした、工業高校の教員向けの実践的講習を実施することも極めて効果的ではないかと考えますが、ご所見を伺います。

○有手産業労働局長 生徒を指導する教員が製造業を取り巻く現状を理解し、現場に即した実践的な技能を習得することは、工業高校などにおけるものづくり教育を推進する上で効果的であると考えております。
 熟練技能を伝承し、ものづくりを支える人材を育成する観点からも、産業労働局が教育庁の取り組む教員の資質向上を強力にバックアップすることの意義は大きいと思います。
 このようなことから、熟練技能者を活用した工業高校教員向けの実践的講習を来年度実施することとしておりまして、お話の趣旨を踏まえまして、教育庁と連携を図り、実効性のある事業実施に向け準備を進めてまいります。

○樺山委員 次に、都市再生に関連して伺います。
 まず、臨海副都心開発についてであります。
 臨海副都心開発については、我が党の遠藤委員が過般の総括質疑の中で、臨海副都心の今後の収支見通しを質問させていただいたところでございます。その際に、港湾局長から、今後の収入、支出額は約八千四百億円であるとの答弁がございました。
 その後、共産党の吉田委員がパネルを示されまして、個々の数字を挙げて、臨海副都心開発の今後の収支見通しについて説明をされまして、すべての土地が売れたとしても、到底借金の返済に届かないとの発言がございました。そして、そこで示された金額を合計いたしますと、今後の支出は約一兆一千七百二十億円、収入は約六千百九十億円になるわけであります。これに対し、港湾局長からは改めて、都の試算では、収入、支出が約八千四百億円である旨の発言がございました。
 さてさて、実に不思議なことになりました。今後、実のある公平な議論を展開するためには、共通の土俵づくりが何よりも必要であります。どうしてこうした食い違いが生じているのか、伺います。

○成田港湾局長 先日、吉田委員のお示しになったパネルでは、支出につきまして、臨海第三セクターが、ビル事業等、その固有事業のために金融機関から借り入れたところの、臨海会計の収支とは関係がない約三千六百五十億円の借入金を加えられておられます。
 また、収入につきましても、都の試算と比較いたしまして、土地の売却収入で約千七百七十億円、また賃貸収入で約七百十億円、それぞれ過小に見積もられているところでございます。

○樺山委員 なるほど、今伺って理解をするわけでありますが、吉田委員が示した数字は、本来加えることができないはずの第三セクターの借入金を合算するなど、明らかに都民に誤解を与えるものであるということが理解をされたわけであります。
 唐突に、しかも何らの算出根拠も示さないまま、グラフで破綻を印象づける。これは明らかに、はっきり申し上げれば詐欺まがいの行為であって、同じ議会人として、非常にこれはまずい話であります。同時に非常に恥ずべき話でもあります。
 遠藤委員の指摘にもあったように、今後は巨額の起債の償還が重くのしかかってくるので、安心はしていられませんけれども、臨海副都心開発にとって、これからがまさに正念場であります。これをどう乗り切ろうとしているのか、改めて局長の決意を伺います。

○成田港湾局長 臨海副都心再開発事業が収支均衡いたします平成三十一年度までに予定しております収入総額八千四百億円のうち、主なものは土地売却収入でございまして、約六千三百億円を見込んでおります。
 昨今の六本木や汐留などとの激しい地域間競争の中で、土地処分による収入の確保は決して容易ではございませんが、最近の土地処分の実績や東京ベイエリアへの期待の高まり等を踏まえれば、十分に実現可能であると考えております。
 今後とも、晴海通りや「ゆりかもめ」の延伸など交通アクセスの充実を図る一方、臨海副都心の魅力を生かすとともに、その潜在力を引き出す創意工夫を行いまして、民間事業者等の誘致を積極的に推進してまいります。

○樺山委員 決して楽観は許されないわけでありますけれども、どうぞ揚げ足取りや数字のレトリック、ごまかしにぜひ負けないように、局長を先頭に大いに汗をかいて、ぜひご努力をいただき、頑張っていただきたいというふうに思っております。
 次に、物流ネットワークの構築について伺います。
 国際物流の最前線である我が東京港は、我が国におけるまさに表玄関の国際港でありますが、平成十年に外貿コンテナ貨物取扱量日本一となって以来、二位以下を大きく引き離して、五年連続してその座を保っております。
 物流の構造変化の中で、東京港の果たす役割はますます重要になっているわけでありますが、国際間の熾烈な港湾間競争に勝ち抜くために、東京港はどのような取り組みを行っているのか、伺います。

○成田港湾局長 東京港では、ご指摘のような国際物流の大きな変化に対応するために、大井ふ頭の再整備など港湾機能の拡充を図るとともに、効率的なふ頭運営を目指しまして、港湾の二十四時間フルオープン化を推進し、積極的に貨物や船会社の誘致に努めてきたところでございます。
 こうした取り組みによりまして、昨年の東京港の外貿コンテナ取扱個数は、我が国で初めて三百万の大台を突破いたしまして、六年連続日本一となることが確実となったところでございます。
 今後とも、手綱を緩めず、近く取りまとめる東京港の振興指針でございます、新アクションプランを官民一体となって確実に実施し、国際競争力のあるメーンポートとしてさらに発展していくよう、全力を挙げて取り組んでまいります。

○樺山委員 コンテナが三百万個の大台を突破したということでございますが、これは、我が国のコンテナ取扱量の実に約四分の一を東京港一港で扱ったということになるわけであります。
 グローバル化した港湾物流の世界の動きは非常に早いものがございまして、臨海道路の若洲、新木場方面へのバイパス道路となる二期事業の全線開通となる平成二十二年までの七年間、こうした大変な実は渋滞に置かれているわけでありますけれども、渋滞状況に手をこまねいていては、国際競争力の強化もおぼつかないものになってしまうのではないかと懸念をしております。
 そこで、こうした港湾地域における当面の交通対策についてどう対応していくのか、伺います。

○成田港湾局長 近年の貨物量の増加に伴いまして、国際コンテナターミナルである大井ふ頭の背後や、中央防波堤内側の臨海道路の交差点などで交通渋滞が発生し、コンテナ車両の円滑な通行が阻害され、港湾物流に支障が生じているところでございます。
 そこで、中央防波堤内側では、緊急対策といたしまして、交差点の改良や暫定的なバイパスルートの新設などを実施してまいりました。引き続き、ふ頭利用者などと協議いたしまして、コンテナ車両の交通動線に配慮した道路の改良やコンテナ置き場の配置の見直しなどを進め、港湾地域における渋滞対策の充実を図ってまいります。
 こうした物流交通の円滑化によりまして、港湾サービスの一層の向上に努め、東京港の国際競争力を強化してまいります。

○樺山委員 物流の効率化に向けた取り組みとしては、港湾地域から消費地である内陸部への道路ネットワークの確保が必要であります。既存の幹線道路においても、旧基準で整備された橋梁の耐荷力不足によって、大型の物流トラックが通行できない、そして物流のボトルネックになっているという箇所がございます。
 そこで、こうした既設橋梁の耐荷力向上に向けた取り組みについて伺います。

○小峰東京都技監 平成五年、車両制限令等の改正によりまして、車両総重量の上限が二十トンから二十五トンに引き上げられました。これに対応するため、順次、既設橋梁の耐荷力の向上を図ってきており、十五年度末までに四十橋について対策を完了いたしました。
 特に十五年度からは、重点事業として、ボトルネック解消効果の高い橋梁の対策を優先的に行っており、十六年度も引き続き、新荒川大橋や都大橋など六橋について取り組んでまいります。
 今後とも、物流ボトルネック解消の観点から、既設橋梁の耐荷力向上を着実に推進してまいります。

○樺山委員 物流の効率化の障害となっているさまざまな課題を総合的にとらえて、広い視野に立って物流を効率化する具体的な取り組みが必要であると思いますが、現在どのような対応を考えておられるか、伺います。

○勝田都市計画局長 我が国の国際競争力の向上のためには、非効率な物流の構造改革が不可欠でございまして、東京発の物流改革に向けて、今後の都における物流施策の方向性を示しました総合物流ビジョンを策定することといたしました。
 策定に当たりましては、首都圏を見据えた広域的な視点に立つとともに、現場の実情を踏まえ、物流拠点や道路ネットワークの整備、物流効率化を阻害する規制の緩和など、ハード、ソフト両面の対策を検討してまいります。
 そのため、関係をいたします八局及び警視庁から成る検討組織を設置しておりますが、平成十七年度早期の策定に向けて取り組んでまいります。

○樺山委員 次に、羽田空港の再拡張事業について伺います。
 我が党の代表質問において、羽田空港の再拡張事業に対する東京都の協力について基本的な事項を取り上げ、知事からもご答弁をいただきました。
 今回、知事がさまざまな観点を総合的にとらえ、本事業への協力を決断されたものであることを理解させていただいております。
 そこで、その協力内容について何点か伺います。
 今回の事業スキームは、滑走路整備事業約六千九百億円に対し、そのおおむね二割を東京都及び神奈川県、横浜市、川崎市が無利子の貸し付けを行うこととして、そのうち、東京都が一千億円を受け持つというものであります。
 都としては、どのような観点から無利子貸付という協力方式によるスキームを妥当なものと判断をしたのか、お伺いをいたします。

○勝田都市計画局長 今回の事業スキームは、コスト縮減やPFI手法の導入によりまして、地方に協力を求める対象事業費を圧縮した上で、そのおおむね二割を無利子貸付方式で地方自治体が協力するというものでございまして、昨年度、国土交通省が地方自治体に示したものと比べ、その内容が大きく変わっております。
 特にこの無利子貸付は、昨年度の負担金方式とは異なっておりまして、当然のこととして償還されるものでありますことから、協力の形態として妥当なものと判断をいたしました。

○樺山委員 無利子の貸し付け協力ということでありますが、この償還条件はどういうことになるのか、また、羽田空港のような拠点空港の整備において、地方自治体が無利子貸付している事例の償還条件と比べてどうなのか、伺います。

○勝田都市計画局長 今回の無利子貸付の償還条件につきましては、十五年据え置き、十五年均等償還という条件で国土交通省と調整をしております。
 また、いわゆる拠点空港の整備に対します地方自治体からの無利子貸付の事例といたしましては、中部国際空港と関西国際空港がございます。
 中部国際空港の整備では、十五年据え置き、二十五年均等償還で、また関西国際空港二期事業では十年据え置き、三十年均等償還で、地元及び周辺自治体が無利子貸付をしております。いずれも、貸し付け後償還されるまでの期間は四十年とされておりまして、今回の十五年据え置き、十五年均等償還という条件は、これらの事例に比べまして、短期間で償還される条件といえます。

○樺山委員 羽田空港の再拡張、国際化によって、首都圏を中心に大きな経済波及効果が見込まれるとされているわけでありますが、東京都における経済波及効果、つまり生産額の増、税の増収、雇用の増はいかほどなのか伺います。

○勝田都市計画局長 国土交通省の試算でございますが、再拡張に伴い、年間四十万七千回の発着容量となる羽田空港に年間三万回の国際線を導入した場合、東京都におきましては年間生産額として約一兆六百九十億円、都税収入として約二百四十九億円の増加が、また雇用として約七万五千人の増加が見込まれております。

○樺山委員 今いただいた答弁のように、羽田空港の再拡張、国際化により、非常に大きな経済波及効果が見込まれるということでございます。
 今回、東京都が全面的に協力をするということで、この事業の早期着手、完成が極めて現実を帯びてきたわけでありますけれども、このことに対する知事のご見解、ご所見をお伺いしたいと思います。

○石原知事 羽田空港の再拡張、国際化は都からいい出して、国に持ちかけた問題でありまして、この結果、国も再拡張事業の重要性を認めるに至りましたが、現下の財政状況では、国だけでは事業化ができないということから、都にも協力の要請がありました。
 これは、今局長も答弁しましたように、非常に経済波及効果が大きなプロジェクトだと思っております。
 ちなみに、大分前になりますけれども、成田が国際化されて、国際線が全部羽田から移った瞬間に、どういうわけですか、大田区におけるたばこの売り上げが半分近く減って、きょうは委員をしておられませんけれども、地元出身の大山さんと二人で首をかしげたことがございますが、それぐらい飛行場というのは目に見えない非常に大きな経済効果を持つものであります。
 東京だけではなしに、我が国全体の経済活性化、そしてまた国際競争力の向上のために、羽田の空港の再拡張、国際化はまさに待ったなしの状況だと思います。私が運輸大臣をしているとき既にもう、その時期は過ぎましたが、数年足らずで国際線がパンクすると。現にしまして、今三十五カ国が乗り入れを待っております。それから、国内線ももういっぱいになりました。
 このため、都も厳しい財政状況の中ではありますけれども、早期の事業化ということで、大局的な観点から、この事業に無利子貸付という形で協力をすることにいたしました。再拡張の事業化は、まさに都のこれまでの国に対する働きかけ及び今回の協力の成果だと思っております。

○樺山委員 実は予定している質問がかなりまだまだ残っておりまして、大変恐縮でございますが、ご答弁もなるべく簡略に、あるいは実は質問をどうしてもできない部分が出てくる可能性があります。その際は、どうぞお許しをいただきたいというふうに思います。私もはしょって質問をさせていただきます。的確にお答えいただきたい。
 次に、都営交通事業について伺います。
 先日交通局が発表した次期経営計画では、計画期間中の都バスの乗客数についてどのように見込んでおられるのか、お伺いをいたします。

○松尾交通局長 乗合バスの乗客数につきましては、最近五年間の乗客数の推移と鉄道開業による影響等によりまして、平成十四年度実績の一日当たり六十一万人から計画最終年度の平成十八年度には五十六万人になるものと見込んでおります。

○樺山委員 バスの乗客数の減少傾向は都営バスだけではなくて、全国のバス事業者にも同様な傾向にあるようでございますけれども、そのような状況の中で、平成十四年二月に乗合バス事業に関する需給調整規制の撤廃という規制改革があったわけであります。撤廃後の状況について、交通局としてどう認識しているのか伺います。

○松尾交通局長 まず、都営バスの営業している区域におきましては、コミュニティバス、企業の送迎バス、無料循環バスの運行など、さまざまな動きがございます。また、全国的には新たにタクシー事業者等による乗合バスの運行や他事業者の営業区域への進出などが見られます。
 このようにバスサービスが多様化する一方、事業者間の競争も激しくなってきているものと認識しております。

○樺山委員 次に、福祉改革について伺います。
 まず、介護予防であります。
 さきの代表質問で、我が党は、高齢者が要介護状態にならないような介護予防の取り組みが今後ますます重要になること、また民間も含めた各分野の連携のもとに区市町村が主体となって進めていくことの必要性を指摘いたしております。
 つまり、私は加えて、この介護予防を推進していくためには、福祉、保健、医療の分野が密接に連携し、総合的に取り組んでいくことが何より重要であると考えております。
 そこで、二局統合を目前に踏まえた今後の介護予防の取り組みについて、ご所見を伺います。

○幸田福祉局長 両局の統合によりまして、例えば成人保健施策と介護予防施策を一体的に行うことで、早い段階からの身体機能の維持、向上が図られるとともに、要介護状態になっても生活機能回復に取り組むことが容易になるなど、人生のさまざまなステージに切れ目なく対応できると考えております。
 今後、すべての都民が地域の中で安心して健やかに暮らすことができるよう、健康づくり、疾病予防も含めた介護予防に関する総合的な取り組みを進めてまいります。

○樺山委員 次に、先般来大変な問題になっております国の社会福祉施設整備費等の一連の国庫補助金の見直しについて伺います。
 まず、社会福祉施設整備費の国庫補助についてでありますが、今般の国庫補助協議を目前に控えた時期でのいきなり、まさに唐突な見直しでございまして、国と都道府県、また行政と事業者との信頼関係を揺るがすばかりでなく、今後の都の社会福祉施設の基盤整備に多大な影響を及ぼすものであります。
 そこで、今回の国協議に当たっての国の見直し措置は、実際、都における特養の整備にどのような影響を現に与えているのか、お伺いをしたいと思います。

○幸田福祉局長 特別養護老人ホームや老人保健施設の建設には、地元住民との調整や建設資金の確保などが必要なため、国協議に至る前に、事業者は都や区市町村と調整を行いながら、長期にわたって準備しているのが実情でございます。
 今回の唐突な国の協議基準等の見直しにより、これまで事業者と個別の調整を重ねてきた特別養護老人ホームの整備計画のうち、おおむね半数に当たる、定員で約六百人分の協議を見送らざるを得ませんでした。
 都では、第二期介護保険事業支援計画に基づき、特別養護老人ホームの着実な整備を進めてまいりましたが、この影響により、整備計画の達成が難しい状況になっております。

○樺山委員 児童虐待についてであります。
 今、大変社会問題化しております。この児童虐待の問題、民生委員、児童委員の方々からお話をお伺いする機会が非常に多うございます。現場の地道な活動には本当に頭の下がる思いがするわけでありますが、先般、福祉局は、児童虐待をテーマにして、インターネット福祉改革モニターで、アンケート調査を実施したと伺っていますが、特徴的な結果としてどのようなものがあったか、お知らせをいただきたいと思います。

○幸田福祉局長 お話のアンケートは、一般公募に加えまして、福祉に関するセミナーの参加者や民生、児童委員などから成る約二百名の福祉改革モニターに対し、児童虐待をテーマに、今月上旬実施したものでございます。
 調査結果の特徴的なものとして、虐待の通報先に児童相談所を挙げる人が約四割とトップを占める一方、すべての児童相談所への虐待対策班の新設など、都独自の取り組みを知らない人が約四割となっており、その周知を一層図る必要があることが明らかになりました。
 また、今回の児童虐待防止法の見直しに最も必要なものは何かという問いには、裁判所の命令などにより強制的に立入調査ができるように規定すると答えた方が約五割に及んでおりました。

○樺山委員 ところで、東京都は平成十三年に児童虐待の実態、いわゆる児童虐待白書を発行しておられるわけでありますが、その後、既に三年が経過しております。児童虐待の実態をいま一度見直すとともに、都の先駆的取り組みの効果を検証した新たな児童虐待白書を改めて作成すべきと考えますが、ご所見を伺います。

○幸田福祉局長 児童虐待防止法の施行から三年が経過し、都民の児童虐待への認識が深まるとともに、全児童相談所への虐待対策班の設置や児童虐待防止区市町村ネットワーク事業などにより、関係機関の連携体制も整備されてまいりました。
 しかしながら、依然として児童虐待の相談件数は増加傾向にあり、特に養育放棄への対応が新たな課題として求められるとともに、早期発見や予防への取り組みの重要性が関係者からも指摘されております。
 そこで、改めて児童虐待の現状と今後の課題を分析し、取りまとめ、これまでの取り組みの成果を踏まえた、一層効果的な虐待防止策を展開してまいります。

○樺山委員 次に、安心・安全のまちづくりについて伺います。
 東京都安全・安心まちづくり条例は、東京都と区市町村、都民が連携協力して犯罪を防止、都民が安全で安心して暮らすことができる社会の実現を目指しているわけであります。来年度の予算案においても、こうした目的が的確に反映されていると評価をしているところであります。
 ところで、地域の安全対策の充実には、何よりもその地域の住民の方々の力が不可欠であります。東京都の役割は空き交番対策を初めとして、警察力の整備を図ることにあるのはもちろんでありますが、区市町村や都民が主体的に進めようとしている防犯活動を支援することにもあると思っております。
 したがいまして、地域ぐるみでの防犯活動を進めようとしている方々への支援についてどのようにお考えになっておられるか、伺います。

○竹花副知事 町会、自治会や防犯協会などの犯罪抑止活動は大変大切でございますので、警視庁等とも連携しながら、来年度に向けて新たな仕組みづくりを計画しております。
 例えば町会、自治会などが核となりまして、防犯ボランティアまちかど防犯隊を結成していただくことを考えておりますが、これに対してはユニホームの支給や活動ノウハウの提供など、また犯罪情報をいち早く地域の方々に伝えること、防犯カメラや防犯灯など地域の防犯設備の設置費を補助することなども予定しております。
 また、地域における防犯活動の中心となる人材を育成していく仕組み、仮称安全・安心アカデミーについても、大学などの協力を得ながら、具体的な検討を進めたいと考えております。

○樺山委員 東京都は昨年の秋、いち早く防犯カメラ、防犯灯などを整備する地域団体、区市町村への補助を公表したわけであります。十六年度の予算案でも三億円規模の補助事業経費が計上されています。
 この具体的な交付方法等の提示は予算の成立後と聞いているわけでありますが、防犯対策を真剣に進めようとしている地域の団体は、その内容を早く明らかにされないかと首を長くして待っておられるようであります。
 交付要綱の決定に際しては、こうした地元区市町村の弾力的な取り扱いも含めて、柔軟に対応することも当然考慮されるべきだと思いますが、現在の東京都の方針を伺います。

○竹花副知事 お尋ねの補助制度につきましては、住民の方たちの事業費の三分の一を区市町村を通じて都が補助する仕組みとして考えております。
 ご指摘のように対象となる団体はいろいろございますので、地元の住民の方々の負担について、区市町村にもさまざまな考え方が出てこようと思います。
 都といたしましては、今後実際に補助を行うことになる区市町村のそれぞれの事情に応じた対応についても十分に配慮しながら補助対象を選定し、防犯設備の普及促進に支障が生ずることのないよう施策を進めていきたいと思っております。

○樺山委員 次に、今回改正の青少年の健全育成条例は、安心・安全のまちづくりとも極めて深くかかわっております。我々大人の責任で子どもたちを守るということは、地域社会の健全化につながるものだと考えるわけであります。
 そこで、本条例の改正に深くかかわった竹花副知事に、青少年健全育成条例に取り組む決意について伺います。

○竹花副知事 今回の条例改正につきましては、多くの都民の願望、すなわち子どもを健やかに育てたい、そのために大人社会が多少の不自由は我慢して、子どもにとって少しでもよい環境をつくりたいとの思いを受けて、行政といたしまして当然の責任を果たそうというものでございます。
 表現、営業の自由、実効性の問題等についてかねてから議論のあったものではありますが、正面からの議論を避けていたのでは大人の責任を果たせないと思います。何より子どもを大事にしたいとの一心で衆知を集め、大方の総意を得られる内容を整理したつもりでございます。
 条例施行に際しましては、出版、販売業者はもちろん、多くの都民のご理解とご協力を得ることに努めるとともに、さらに改善すべき問題が生ずれば、より工夫をいたしまして、新たな枠組みについても検討したいと考えております。

○樺山委員 首都大学東京であります。
 本定例会における我が党の代表質問に対して、石原知事は、来年四月、首都大学東京を断固として開学する、強い決意表明をなさいました。まさにその意気込みでつくるものだと思っているわけでありますが、来年四月の開学に向けた現在の準備状況を簡潔にお知らせいただきたいと思います。

○山口大学管理本部長 今の日本の大学には国際的な評価が十分といえないという点をもってしても、さまざまな問題が指摘されております。
 こうした現状を打破するために首都大学を開学するわけですが、改革には反対がつきものであり、容易な状況ではございませんが、現在着実に開学準備を進めておりまして、この四月には文部科学大臣あてに首都大学東京の設置認可申請を行いまして、来年の四月には確実に開学をいたします。

○樺山委員 三月四日に、首都大学東京の応援団「The Tokyo U Club」の発起人会が開催されましたが、この応援団はどのような目的で設立されたか、また今後の活動等について伺います。

○山口大学管理本部長 発起人会会長の高橋宏さんですが、「The Tokyo U Club」は、大学の関係者のひとりよがりではなく、実社会で働く人たちの英知と専門的知識を結集し、大学の活動などを絶えず見守り続けていく新大学の応援団であると述べております。
 このクラブは、首都大学東京が掲げる大都市における人間社会の理想像の追求という理念に共感しまして、その実現を支援する企業や個人が集まり、新大学と学生を応援する学外の任意団体でございます。
 今後、設立に向け、会則、会員募集の方法、活動内容等について検討し、本年七月から九月の間にクラブの設立を予定しています。その後、広く企業や都民から会員を募集し、平成十七年四月の新大学開学に合わせて、本格的な活動を開始してまいります。

○樺山委員 開学までに残された時間はあとわずかであります。しかし、応援団も結成され、新大学への期待は今いや高く増しております。必要な準備を万端進められまして、これまでにない大学、首都大学東京をぜひ勇断を持って開学していただきたいと思っております。
 次に、東京都交響楽団についてお伺いをいたします。
 東京都交響楽団は、昭和四十年二月に当時の東竜太郎都知事を初代理事長として発足以来、歴代の都知事を理事長にあて、都の誇るべき都民のオーケストラとして、国内はもとより世界的にも実力のあるオーケストラとして、既に認知をされております。とりわけ平成三年のアメリカ、ニューヨークでのカーネギーホール創立百年祭には、日本のオーケストラの代表として招聘を受け、その卓抜した演奏力は日本のオーケストラの実力の高さを世界に示したという点で、今もって語り継がれている事実であります。
 現在は音楽監督にヨーロッパ音楽界の巨匠であるガリー・ベルティーニを迎え、マーラーシリーズを初めとする定期演奏や都民音楽会、小中高校生のための音楽教室あるいは福祉施設や病院等への出前コンサート、そして、ご存じ本会議冒頭のあの議場で、すさんだ議員の心理をいやしていただくというコンサートもご提供いただいているわけでありまして、都民が良質な芸術に親しめる機会を提供するとともに、その音楽的主張を世界に向けて発信し続けている、私ども東京都民の誇りとするオーケストラであります。
 平成十三年、東京都監理団体総点検のための基本指針に基づき、知事の理事長充て職を廃止して、現在は副理事長が理事長を代行いたしております。
 平成十一年に発令されたこの外郭団体の統廃合を含めた見直しによって、都響にも補助金の三割削減、職能給という新たな給与体系の導入、税金を投入されて成り立っている、いわゆる公的オーケストラとしての意義の明確化という三本の柱から成る楽団存続の条件が課せられたわけでありますが、楽団みずからが策定した五カ年に及ぶ給与カットを含む再建計画や百九人の定員を欠員補充しないという方法で、ぎりぎりの九十人にまで削減をして、都の指導にできるだけこたえるという大変な努力を続けてこられたようであります。
 しかし、ここに来て、新たに二カ年の有期雇用という極めて高いハードルを提示されるに至りまして、ついにSOSが発せられたわけであります。
 都議会には数ある議員連盟の中でも最大規模を誇る芸術文化議員連盟、いわゆる芸文議連という組織がありまして、都内の文化団体、音楽団体との緊密な交流を図りながら、有形無形のさまざまな支援活動を展開しております。この芸文議連の幹事長をこの私が務めているわけであります。まことに遺憾なことに、この問題の重要性について詳しく把握しないまま今日に至りました。
 このことについては議会がその一連の経緯を察知して以来、とりわけ当予算委員会の代表総括質疑及び文教委員会での審議等で、各党各会派がそれぞれの立場から今回の措置の懸念や疑問をかなり突っ込んでただしておりますが、おさらいという意味を含めて、改めて質問をしたいと思います。
 まず、現在の終身雇用から契約制という切りかえが、音が命のオーケストラにあって、長年の蓄積によって形成されてきた微妙なハーモニーにあるいは影響が及ぶことがないのかどうか。つまり不安定な雇用形態は当然落ちついた演奏活動への阻害要因となるわけでありまして、その結果、都響が四十年の年月をかけて培ってきた独自の音に対する信頼が失われ、ひいてはオーケストラそのものの衰退につながる可能性が大きいと思われるわけでありますが、教育委員会の見解を伺います。

○横山教育長 東京都交響楽団は、終身雇用制を廃止しまして、有期雇用制度、能力・業績評価制度の導入を都響ユニオンに対し現在提案しているところでございます。
 この契約楽員制度の導入によりまして、楽員が日常的に切磋琢磨する環境をつくりますとともに、楽員の持つ演奏技術や業績等の評価を反映して、芸術家にふさわしい処遇を行うものでございまして、楽員のモラールアップや優秀な楽員の確保を図り、より一層質の高い楽団の実現を目指すものでございます。
 都教育委員会としましても、契約楽員制度を導入して改革を実現することが、都民の期待にこたえるものであると考えております。
 なお、制度の円滑な導入には当然楽員の理解と協力が必要でございますので、東京都としましても、その趣旨が楽員に理解されるよう、誠意を持って労使の協議を進めるよう指導してまいります。

○樺山委員 次に、業績評価制度であります。
 都響の楽員はすべてが実は六十倍から百倍以上もの激しい競争を勝ち抜いて採用された方々ばかりであると伺っております。既に相当高いレベルに達している人たちを評価するということは、極めて難しいことではないかというふうに実は思います。客観的で公平に評価する方法は果たして存在するのかどうか、なぜ評価を導入する必要性があるのか、またその評価の方法、公平性について、教育委員会の見解を伺います。

○横山教育長 都教委としましては、楽員の給与が年齢により一律に決定され、能力や業績が反映されない現在の給与システムは、プロの演奏家の給与制度としてふさわしくないと考えております。楽員の能力と業績を適切に評価し、給与に反映させることが楽員のモラールアップにつながり、ひいては楽団の演奏水準の向上に結びつくと考えております。
 東京都交響楽団は、評価の方法として、指揮者やコンサートマスターの意見を参考に、日常の演奏活動等を通じ、楽員の能力、業績、態度を判断するものと、外部の専門家を加えて行うオーディション形式の実技審査の二つを考えております。
 また、評価が的確にできるように、複数の外部委員を含めた業績評価委員会を設置しまして、評価の妥当性や公平性の検証を行うとの説明を受けており、都教委としてもこれを支持しているところでございます。

○樺山委員 実はこの問題が提起されて以来、東京都交響楽団の方々としばしばご面談をさせていただいたわけであります。そこで、率直に受ける印象は、大変失礼ないい方でありますけれども、全く政治音痴、あえていえば音楽ばか、本当に音楽だけに命を、情熱を二十四時間ささげておられる、そういった方々ばかりでございまして、その方たちが本当に純粋な思いで今度のことを我々に問いかけ、訴え、そして極めて真摯にこのことをとらえておられる。
 そして、東京都が提示しているさまざまな問題も無視しているわけじゃない。一生懸命それにこたえようとして、努力をしておられる。特に、今まで都響が発足以来四十年間、一切の組合に入らず、自分たちだけの独自性を貫いた。今回も大きな組合のバックがないから、こんなことになるんだというふうな、いろんな議論があったようでありますけれども、あえてそれを拒否し、拒絶して、自分たちの透明性を貫いた。このことは本当に涙が出るような思いでございまして、こういったいわゆる政治音痴、音楽ばかの方々に議会がしっかりとした後支えをしなければ、我々の出番はもうないというぐらいの思いで、実は頑張っているわけでございます。
 現在労使の間で協議中とのことでありますが、どうぞ慎重にお取り組みいただきまして、十分に議論を重ねて、そしてご結論をお導きいただきたい。首都東京に育った誇るべき文化の灯火を決して消すようなことがあっては断じてならないと考えておりますので、最後にご答弁をいただきます。

○横山教育長 東京都交響楽団は、寄附行為にありますとおり、交響楽を通じて都民の情操を豊かにするとともに、音楽芸術の普及向上を図り、首都の文化発展に寄与する、これを運営の目的として、都が出捐し設立されたオーケストラでございます。
 現在、大変厳しい経営環境にはございますが、設立の目的を達成するよう、より一層経営改善を進め、都民に愛される交響楽団の実現を目指していくことを期待しておりますし、ぜひそうなってほしいと願っております。

○樺山委員 ちょっと、歯切れがいま一つでありますが、教育長を、我々議会全体、信頼し、信用し、この問題にぜひ的確にご対応いただきたいというふうに思います。
 最後に、時間がもう既にありませんが、この季節は、甘酸っぱい季節であります。卒業式、入学式、必ずやってくる問題が、入学式や卒業式に国旗を立てるの、立てないの、国歌を歌うの、歌わないのという、まことに不思議な議論であります。
 あえて不思議と申し上げたのは、国旗や国歌に対して敬意を払うのは、国民として最も素朴で簡単で、母国に対する帰属意識の極めて率直なあらわし方でありまして、別のいい方をすれば、自分の親に対して、お父さん、お母さんと呼んで敬意を払う、このことと全く同じことであります。したがって、本来それは、やれ強制だとか、無理強いだとか、そんな議論には全くそぐわない、人間としての最も本質的で根源的な問題であると考えます。
 しかし、この日本においては依然として、日の丸が嫌、君が代も嫌、こういう不思議な人々が現実に存在し、しかも、これらの方々が、何の罪もない純白な心を持つ子どもたちに、みずからの先入観を植えつけ、そしてそれをあおる異常な行為が平然と行われている。全く不可解かつ不思議な話であります。
 この方たちに、日の丸や君が代が嫌いかと聞くと、必ず返ってくる言葉が、戦争や天皇を想起させる、侵略を想起させるというものであります。
 また、もう一つは、もともと国旗と国歌は国の権力の象徴だから嫌というものでありまして、この後者は、たとえ国旗が赤旗であろうと、国歌が「インターナショナル」だろうと、嫌なものは嫌という人々でありますから論外として、最も悲しむべきは、戦争や天皇にイメージを結びつける人々の存在であります。
 しかし、確かに日の丸も君が代も、過去の一時期、特定の考え方のもとに利用されたことがあったことは否定できない事実でありますが、しかし、日の丸や君が代は、ある特定の時期に、ある一定の考え方のもとに、それを鼓舞したり喧伝するために、突如としてわざわざつくられたものではなく、それ以前からこの日本に営々として存在した国の旗であり、国の歌でありました。したがって、国の過去の一時期だけに必要以上にオーバーラップすることは、有史以来の日本の歴史とその認識に対する冒涜というべきであります。
 どうしても嫌というならば、なぜ、日の丸や君が代に新しい意味や意義を見出そうとする努力をされないのか。対案もない、代案もない、ただ嫌、嫌、嫌、嫌。つまり、子どものだだっ子であります。
 私たちが考える日の丸や君が代は、単純明快、我が日本と世界の恒久平和に向けて、全国民が心を一つにするためのシンボルであって、戦争だとか侵略だとかは全く無縁の存在であります。
 そこで、改めて本質論として、国旗・国歌の指導は、教育的に子どもたちにとってどのような意義があるのか、堂々と……

○宮崎委員長 一分を経過いたしておるようですので、まとめてください。

○樺山委員 この卒業式、入学式にご対処いただくという意味も含めて、ご答弁いただきたいというふうに思います。

○横山教育長 国旗や国歌は、いずれの国におきましても、国家の象徴として大切に扱われているものでございまして、国民の自覚や誇りのあかしとして、重要な役割を果たすものでございます。
 学校教育におきましても、児童生徒が自国や郷土に愛着や誇りを持ち、世界の国々から尊敬され信頼される日本人として成長していくためには、自国や他国の国旗及び国歌を尊重する態度を育てることが極めて重要でございます。だからこそ、国旗・国歌の指導は、学習指導要領に基づき、すべての児童生徒に対し行うこととされているところでございます。
 都教委としましては、今後とも、日本の文化や伝統を大切にするとともに、多様な文化に対する理解を深め、世界の中の日本人としての自覚や誇りを育てる教育を推進してまいります。

○樺山委員 ありがとうございました。(拍手)

○宮崎委員長 樺山たかし副委員長の発言は終わりました。
 この際、議事の都合により、おおむね十五分間休憩をいたします。
   午後三時二十五分休憩