東京都議会予算特別委員会速記録第四号

   午後六時五十一分開議

○樺山副委員長 休憩前に引き続き委員会を開きます。
 質疑を続行いたします。
 秋田一郎君の発言を許します。

○秋田委員 残すところ、私も含めてあと二人でございますので、しっかりとした答弁をお願いできれば幸いでございます。
 まず初めに、財産活用についてお伺いします。
 都財政が依然として厳しい状況にある中、財政再建をなし遂げるには、歳入をふやすか、あるいは歳出を減らすか、いずれかの方策をとるしかありません。今回は、歳出を減らすという後ろ向きの議論ではなく、歳入をふやすという前向きの観点から質問をさせていただきたいと思います。
 都はこれまでも、使っていない土地や建物を売却したり、貸し付けを行ったりして財産収入を上げてきました。しかし、私は、既存の財産をもっと有効に活用して、さらなる増収策を考える必要があると考えます。
 都の財産には、地方自治法上の区分でいうところの、都庁舎などの行政財産と普通財産があります。普通財産については、地方自治法上、売却や貸し付けができることから、先ほど述べましたように、積極的に売却してまいりましたが、行政財産についてはいかがなものでしょう。行政財産については、法律上、売却や貸し付けができないという理由だけではなくて、行政目的に支障が生ずるといった理由で、その活用策について十分な検討が行われてこなかったような気がいたします。
 そこでまず、美術館、博物館などの文化施設についてお伺いをします。
 これらの施設は、地方自治法上の公の施設であり、よい展覧会を企画して、入館者数を伸ばして収入増を図ることは当然でございます。
 しかし、現代美術館の延べ床面積が三万三千平方メートル余り、江戸東京博物館の延べ床面積が四万八千平方メートル余りといった数字に示されるように、こうした文化施設は、広大な敷地と建物を有しております。
 これらは外観だけで威厳があり、文化の薫りを醸し出しているのでしょうが、都財政が厳しい状況にある中では、本来の美術館としての目的をきちんと達成しつつ、その目的と効果をさらに引き出すために、有効な財産活用をすべきだと思います。
 そこで注目をしたいのが、施設内の食堂、レストランでございます。これまでの行政の建物内の食堂は、安いがまずい。私は、かつてパリを訪ねましたときに、エッフェル塔のレストランが、ミシュランガイドの星つきの大層立派なものであることに驚いて、引き返してきた記憶がございます。
 もっとマーケティングの発想を駆使して、その施設にマッチしたお店を考えるべきではないのでしょうか。例えば、美術館ではフランス風のカフェやレストランを入れるとか、施設の目玉となるお店を誘致しても私はいいのではないかなと思います。
 最近、九段の東京国立近代美術館において、クイーンアリス・アクアというレストランが入りまして、かなりの盛況だと聞いております。女性雑誌等でも拝見したことがございます。
 都の美術館においても、こうしたレストランの導入を図るべきだと考えますが、所見をお伺いいたします。

○三宅生活文化局長 美術館や劇場のレストランは、ミュージアムショップ等と並んで、文化施設の重要な要素でございます。
 平成十四年度までは、都がレストランなどに直接使用許可をする方式でございましたが、十五年度からは、施設の管理運営を受託しております歴史文化財団が、施設の雰囲気に合ったレストランを主体的に誘致できるよう、財団が直接レストランを決定できる方式に変更いたしました。
 これを受けまして、現代美術館では、有名レストランを誘致いたしまして開店しましたところ、お客様からの評判もよく、売り上げは、まだ年度は終わっていませんが、前年度の一・五倍となっております。
 平成十六年度以降、他の文化施設についても、順次、施設にふさわしいレストランを誘致して、さらなる魅力アップにつなげてまいります。

○秋田委員 今、局長からお話がございました現代美術館では、私とやはり同世代ぐらいの方がおやりになっているカーディナスグループというレストランが入っておりまして、私も大変すばらしいことだなと思っております。
 また、都の美術館には、展示室以外にも、図書室や講堂のほかに、オープンスペースが数多くございます。こうしたところは、条例等の制約もあって、ふだん余り使われていないと聞きます。それでは大変もったいない話だと思います。
 美術館として、こうしたスペースの有効活用策を見出すべきだと考えますが、局長の見解をお伺いしたいと思います。

○三宅生活文化局長 施設の有効活用策といたしまして、展示室やホール以外のスペースを積極的に貸し出し、利用者のサービス向上に努めるとともに、財産収入を確保していく考えでございます。
 この来る四月から、写真美術館のエントランスに、新たにカフェを設置することとしておりますし、また、現代美術館の新しい利用形態として、大きなエントランスホールがございますが、エントランスホール及び屋外のサンクンガーデンをファッションショーやパーティーの会場などにも利用できるよう、現在、所要の条例改正を提案しております。

○秋田委員 そういった、私は攻めの施策は大好きでございますので、頑張っていただきたいと思うのですが、東京都には、ほかにも数多くの施設がございまして、中にはいろいろな工夫をされているところもございます。
 例えば上野動物園では(パネルを示す)、見ていただくとわかるのですが、「ゴリラの食事」や「パンダだんご」という体験メニューがございます。ぜひとも知事にはごらんいただきたいと思うのですが、これらは、ゴリラやパンダが実際に食べるものを、人間でも食べやすくしたものでございます。
 私も、先日、動物園にお伺いして試してみましたが、決して、すごくおいしいというものではないのですが、ネーミングといい、私は、子どもさんだけじゃなくても、大人でも興味引かれるものだと思うのです。
 たしか濱渦副知事はお子さんがまだ小さいと思いますので、ぜひともお伺いしていただきたいと思うのですが、こういったメニュー開発という点では、ディズニーランドが大変すぐれておりますが、同様な挑戦は、例えば江戸東京博物館であれば、水戸黄門が食べたラーメンとか--水戸黄門は、ラーメンを一番最初に食べた方であるそうでございます。あるいは、家康はたしか、てんぷらを食べて死んだはずでございますが(笑声)、家康が食べて死んだてんぷらというのも、それなりに私はおもしろいのじゃないかと思います。メニューというミクロを一つ取り上げても、いろいろと考えられるわけでございます。
 飲食関係以外でも、東京都は頑張っているところがあります。例えば、庭園美術館では結婚式ができますし、最近では、国際フォーラムのガラス棟について、あのシャネルが、命名権契約を一年で二億六千万円で結んだということでございます。
 しかし、まだまだ工夫の余地があるのではないかと私は思っております。普通財産にはなりますが、例えば夢の島マリーナ等、ネーミングライツが可能なところは、まだ探せばあるような気がいたしますし、各施設共通の提案を申し上げれば、例えばこれは入場券でございますが、入場券の余白部分に広告を取るというようなことも考えていいのではないかなと思っております。私が考えるだけでも、増収策には工夫の余地がいっぱいあります。
 東京都の有する経営資源は、民間がうらやむくらい、いいところにあったり、本当に膨大でございます。アクションプランにも載っていない資産の活用方法が、まだまだいっぱいあると思います。
 この埋もれたままの膨大な経営資源を生かして、オール都庁で一層の経営努力を図っていくべきだと考えますが、知事のご所見をお伺いしたいと思います。

○石原知事 都はこれまで、保有するさまざまな経営資源の有効活用に取り組んできたつもりでございます。
 例えば都庁の展望台へのレストランの誘致や、あるいは都営バスの広告、あるいは国際フォーラム、東京スタジアムへのネーミングライツの導入、さらに公園での思い出ベンチの事業など、多様な手法を展開してまいりましたし、また、順天堂の裏にあります、先生の給料を計算するだけの三階建てのビルがあります。あそこもワンダーサイトに変えまして、NHKも取り上げるようないろいろなイベントを自主的にやっておりますが、今後とも、都民サービスの充実と効果的な事業の運営を目指して、都の保有する豊富な経営資源について、都民のアイデア、民間の知恵も取り入れ、これまでにない新たな発想で経営努力を図りたいと思います。
 それから、都立公園も、もうちょっと使い方が私はあると思うのですね。日比谷公園はああいう形になっていますけれども、ほかの都立公園も、もっともっとそういう、おっしゃったような経済的な収入、吸引力になると思います。

○秋田委員 大変力強いお言葉、ありがとうございます。日比谷公園、早速取り組んでいただきたいと思います。知事の感性をもってすれば、いろいろなアイデアが浮かぶと思いますので、ぜひともプライベートでも、お忙しいとは思いますが、東京都の施設を訪ねていただければ幸いでございます。
 次に、視点を変えて、効率化という観点から伺いたいと思います。
 多くの都民が利用する公園などの施設を見ますと、その大部分が行政財産であるため、地方自治法の規定によって、これまでは地方公共団体の出資法人以外には外部委託ができない仕組みでございました。
 しかし、平成十五年六月の自治法改正によって指定管理者制度が創設され、条例で規定すれば、株式会社などの民間事業者でも、行政財産である施設の管理ができるようになりました。
 そこで伺いますが、指定管理者制度を導入するための条例は、いつ、どんな形で制定していくのでしょうか。

○赤星総務局長 指定管理者制度の導入を盛り込みました改正地方自治法は、平成十五年九月に施行されておりまして、それ以降、直営以外の公の施設を新たに設置する際には、設置条例を整備し、指定管理者制度を導入することになっております。
 法改正以前から管理を委託しております公の施設につきましては、平成十八年九月までに指定管理者制度へ移行させなければならないとされておりまして、それまでに各施設の設置条例を順次改正することになります。

○秋田委員 改正すべき条例は、一体、幾つあるのでしょう。民間に任せて効率化しようというのに、一方で、各施設の設置条例すべてを各局ごとに改正していくというのは、私は、効率化とは反対のことを東京都はやろうとしているのじゃないかな、そんなふうに思います。
 総務局一本でやることはできないのでしょうか。

○赤星総務局長 指定管理者制度の導入によりまして改正しなければならない条例、現時点で四十本程度でございます。
 また、公の施設に指定管理者制度を導入するに当たりましては、条例によりまして、それぞれの施設の性格や目的に応じまして、指定管理者の資格や管理の基準、選定方法などを個別に、適切に定める必要がございます。
 都が有します公の施設には、社会福祉施設や都立公園など、さまざまなものがございまして、その性格や目的は多様でございますため、求められる指定管理者の資格や管理の基準も異なってまいります。
 このため、現在ある公の施設の設置条例を基本にしまして、各局が指定管理者制度の移行について今後整備して、条例を改正することになります。

○秋田委員 四十本が多いか少ないかは、見解の分かれるところだとは思いますが、私自身は、総務局一本でやるのが効率的なような気がいたします。
 指定管理者制度の導入によって、行政財産の管理に民間参入の道が開かれたとしても、委託された施設の中での自動販売機の設置などについては、引き続き行政の許可が必要だと聞いております。
 つまり、知事、管理を民間に任せたところで、例えば自動販売機を設置するのにも、あるいは十メートル、五メートル、一メートル動かすにも行政の許可が必要だというのでは、民間委託を導入した意味が全くないような気が私はいたします。
 民間の自由な発想で効率的な施設管理を導入するというのだったら、施設内部の細かな許可など、指定管理者に任せるべきではないのでしょうか。

○櫻井財務局長 指定管理者制度は、行政財産の管理運営の効率化を図る上で、極めて有効な制度であると認識しております。
 しかし、国の通知によれば、施設内での財産の目的外使用許可につきましては、指定管理者への権限移譲が認められていないため、行政の許可を要する形となっております。
 しかし、都としましては、目的外使用許可に当たるものでも、お話のような自販機の移転など、財産管理上、軽微なものにつきましては、この例外として可能と考え、指定管理者がみずからの判断で行い、民間のノウハウを生かした柔軟な施設管理ができるような契約等の仕組みづくりを具体的に検討してまいります。

○秋田委員 大変小さなことかもしれませんが、今の局長答弁がありましたように、これもまた一つ、東京から私は日本を変えることだと思います。
 次に、学校教育について、みずからの経験も踏まえてお伺いしたいと思います。
 最近、改めて高校や大学の入試問題を見ましたが、相変わらずの暗記中心、知識偏重の問題が目立つような感じがいたします。社会の変化の激しい中にあって、これからの教育は、単に知識を教え込むだけでは、私は社会の要請にはこたえられないのだと思います。
 確かに、基礎基本としての知識を覚えることは必要だと思います。けれども、大切なことは、変化の激しいこれからの社会を主体的に生きていく力を育てることだと思います。
 例えば、よく英語の頭文字をとって、五W一Hといいます。いつ、どこで、だれが、何を、それぞれホエン、ホエアー、フー、ホワット、この四つのWというのは知識であって、この部分を従来の日本の受験教育は重視してまいりましたが、今やこれらの情報は、インターネットや携帯を使えば、その場ですぐわかる話でございます。
 私は、これからの教育に必要なのは、五W一Hのうちの、なぜだとか、どのようにというところなんだと思います。
 例えば、私の世代ですと、「いい国つくろう鎌倉幕府」なんていって、年号を暗記させられたものです。いい国で一一九二年という意味なんですが、鎌倉幕府は、こんなことよりも、どのようにして、なぜ一一九二年に成立したのかを考えさせる方が、私は教育の上では重要なんだと思います。
 特にIT時代においては、情報が錯綜しているわけです。はんらんする情報というのは、玉石混交なわけです。現代社会では、むしろ多くの情報を取捨選択する能力こそが、私は求められていると思います。その点からも、なぜとか、どのようにという教育こそが、これからの時代には必要だと思います。
 そこでお伺いいたしますが、学校教育においては、このような思考力や判断力、情報を取捨選択する力など、確かな学力を身につけさせる教育を行うことが大切だと思いますが、高等学校における取り組みをお伺いいたします。

○横山教育長 お話のとおり、生徒みずから考え、判断する能力の育成というのは非常に大事でございますが、その育成を図るためには、まず何よりも教員の指導力を向上させ、授業の質を高めることが重要でございます。
 現在、都立高校におきましては、都立高校合同講習や授業研究ネットワークなどの授業改善に向けた教員研修を行っておりますが、今後は、これらの事業を一層充実しますとともに、来年度からすべての都立高校で実施をします生徒による授業評価などを通しまして、ご指摘の、確かな学力や知力を身につけさせる教育を一層推進してまいります。

○秋田委員 限られた時間の中で採点する側からすれば大変だとは思いますが、受検問題の中で、ぜひとも、なぜとかどのようにを問うことを私は期待をしたいと思います。
 同様なことは、大学の教養課程でもいえるのではないかなと思います。知事や中曽根元総理は、若い政治家あるいは若い世代には、歴史観や哲学が足りない、そうおっしゃっていた記憶がございますが、全くそのとおりだと思います。けれども、それは、歴史や哲学が、私は軽視されてきたことにほかならないのだと思います。
 これらは、すぐに役立つ学問ではございません。私も学生のころは、つまらないなあと、正直いって思いましたけれども、今になってみると、長い目で見たら、なぜとかどのようにと考える思考力、判断力を育てるのに役立ったのではないのかな、そんなふうに思っております。ですから、これから大学生となられる方には、ぜひ身につけてほしいと思っております。
 そこで、来年四月に開学される首都大学東京では、どのような教養教育に取り組んでいくのかをお伺いしたいと思います。

○山口大学管理本部長 今の大学では、知識偏重の入学試験を行い、学生は縦割りの学問の体系の中で学んでおりまして、卒業する学生は、コミュニケーション能力、問題発見能力、論理的思考力など、社会で求められる能力が十分に備わっていないと多くの方に指摘されております。
 首都大学東京の学長予定者である西澤先生は、戦後の知識偏重教育を打破し、人間教育を重視する姿勢で一貫しております。
 そこで、この大学では、一つの例でございますが、ゼミナール入試、これは、高校生、例えば夏休みなどに大学の講義や演習を受講していただきまして、その成績によって入学する方法でございますが、こうした多様な入学選抜を行って、単に暗記力だけではなく、考えるさまざまな能力のある学生を入学させることとしていきます。
 また、大学の使命を大都市の人間社会の理想像の追求としておりまして、都市における今日的課題を解決することを目指しております。そのためには、単に哲学や歴史を細分化された知識として学ぶのではなく、環境や人間などをキーワードに、都市の文明に対し多面的にアプローチしていく都市教養教育に取り組み、歴史観や哲学的思考が身についた、社会が求める人材育成をしていきます。
 また、学生の将来設計に合わせ、自由にカリキュラムを設計できる単位バンク制度を導入することによりまして、学生の自立心を養い、思考力や判断力を育成してまいります。

○秋田委員 次に、首都大学東京が、国際的に見ても魅力ある大学になってほしいという観点から質問させていただきたいと思います。
 実は、ここに興味深いデータがございます。文部科学省の統計によりますと、日本の大学などで学ぶ外国人留学生の数は、平成十五年度十万人を超え、およそ十一万人になっております。いわゆる不良外国人を除いての数字でございます。一方、海外に留学する日本人も増加して、約七万六千人となっております。
 つまり、観光では、海外に行く日本人の方が、ご存じのとおり圧倒的に多いのに比べ、留学では、実は、日本で学ぶ外国人の方が、海外で学ぶ日本人よりも多いということです。私は、ここに可能性を感じております。
 特に着目すべきは、日本で学ぶ留学生のほとんどが、中国人を筆頭にアジアの国々であるという点でございます。英語と異なり、日本語という、いわゆる語学上のハンディキャップがあるにもかかわらず、こういった数字が出ているということは、これはアジアの方々が日本の教育に対して期待をしているあかしだと、私は好意的に受け取りたいと思います。
 首都大学東京の学長となられる西澤潤一さんは、新聞報道などでは、日本の都市問題解決のノウハウをアジアに提供できる大学にしたいと、強く語っておられます。そこで、どのような取り組みにより、アジアなどから留学生を広く引きつけようとしておられるのかを伺います。
 またあわせて、首都大学東京では、実践的な英語教育を売り文句にしております。海外の大学との間で遠隔授業を行うことにより、英語教育を初めとして、専門教育においても授業に幅が出ると考えます。
 現在でも、科学技術大学では、アメリカのスタンフォード大学と、インターネット授業を行っていると聞いておりますので、首都大学東京ではどう取り組んでいくのかをお伺いしたいと思います。

○山口大学管理本部長 アジアの各都市、特に東アジアの各都市ですが、文化的な多様性とともに共通性も有しておりまして、歴史的にも経済的にも、相互に深いかかわりを持って発展してまいりました。
 現在、西澤先生を含めまして、大学を設計しておりますけれども、その中で、西澤先生の言葉をかりますと、東京は、アジア古来の伝統と近未来のビジョンを象徴する都市である。アジア共通の大都市の課題に対して、江戸時代から東京がつくり上げてきた体験、技術をもって果敢に取り組み、アジアを初めとする世界に発信、貢献をすると述べております。
 首都大学東京では、このコンセプトは、人口の稠密性という特徴を持つアジアの大都市に共通して役立つものでありまして、この理念に基づき、都市文化、都市工学など、都市を軸にした教育研究を展開し、アジアの多くの留学生を大いに引きつけていきたいと考えております。
 また、インターネットなど情報通信技術の発展は、地理的制約、時間的制約のない遠隔教育を可能にしておりまして、現在、科学技術大学での実験授業や、アジア大都市ネットワーク21のアジア遠隔教育プロジェクトの成果を踏まえつつ、首都大学東京におきましても、アジアを初めとする海外の大学との遠隔教育に取り組んでまいります。

○秋田委員 首都大学東京が世界に誇るべき大学となるよう、よろしくお願いを申し上げたいと思います。
 次に、水道事業についてお伺いします。
 民間企業では、顧客第一主義という発想があって、顧客の声に耳を傾け、それを立派な経営資源としております。都政においても、こうした視点での行政運営が極めて重要だと思います。
 特に最近、水道水に対する都民の意識について、マスコミあるいは都議会において話題になっております。
 私個人で申し上げれば、日本の水、東京の水というのは大変おいしいと思いますが、ガソリンの値段よりも高いミネラルウオーターが売れているということを考えれば、業務サービス面においても、都民ニーズを反映したサービスメニューの多様化が求められております。このように、都民の声をいかに反映していくかが事業運営の大きなかぎを握っていると思います。
 そこで、水道局では、都民の声をどのような方法で把握しているのか、また、どのような声が上がっているのか、あわせてお伺いをいたします。

○飯嶋水道局長 水道局では、お客様の意見や要望を把握するため、水道局ホームページや各営業所等に日々寄せられる声を集約しておりますほか、五百名のインターネットモニターに定期的にアンケート調査を行っております。さらに、今年度は三千名を対象とするお客様満足度調査を実施いたしました。
 こうしたアンケート調査等によりますと、安定的な給水の確保、より安全でおいしい水の供給、震災対策の充実などの施策に関する提言のほか、水質やお客様サービスに対する意見や要望が多数寄せられております。

○秋田委員 モニターアンケート、あるいは満足度調査などにより、水に対する都民の思いが伝わってくるような気がいたします。
 ところで、水道局には幾つもの営業所がございます。この営業所にはさまざまな問い合わせや苦情といったものが寄せられると思うんですが、しかし、それぞれの所管の営業所が、ばらばらに個別に対応するのでは、都民の声を生かし切るには限界があると思います。今後、どのように対応していくんでしょう。

○飯嶋水道局長 お客様からいただきました要望や意見等につきましては、これまでもこれらを集約し、事業運営に反映させるように努めてまいりました。しかし、ご指摘のとおり、各営業所等に寄せられるお客様の声について、必ずしもすべてを集約するには至っていない状況にございます。
 このため、受付業務や問い合わせなどに集中的に対応するお客様センターを、区部におきましては平成十七年一月に、多摩地区におきましては平成十八年度に開設することといたしました。このセンターの開設によりまして、お客様の利便性向上と事務の効率化を図りますとともに、お客様からの要望や意見等を幅広く把握することが可能となると考えております。

○秋田委員 確かにこの集中センターができれば、都民の声は集まるんだと思います。
 私も東京ガスやJRにおける、お客様満足の推進体制を調べてみました。大変よくできた組織で、コールセンターを設置する多くの民間企業では、IT技術を駆使するとともに、専門組織を設置するなど、顧客情報を活用するための受け皿を強化しております。
 そこで、最後に、水道局では、集中センターに集約された都民の声を生かすため、どのような体制を整備していくのか、お伺いします。

○飯嶋水道局長 お客様の声を生かすための体制整備につきましては、お客様サービスの向上を図る観点から、平成十六年四月に営業所などのお客様サービスを所管する部門と、広報広聴機能を再編いたしまして、サービス推進部を設置することといたしました。
 ご指摘の点につきましては、民間企業におけるITの活用事例などを参考にしながら、サービス推進部とお客様センターを最大限に活用いたしまして、お客様の声を一層生かす新たな体制を整備してまいります。
 さらに、お客様センターの開設に引き続きまして、地域に密着したサービスに向けた体制の整備についても検討してまいります。

○秋田委員 ぜひとも集中センターを設立することによって、都民の声を生かしていただきたいと思います。
 最後の項目でございます新銀行について伺います。
 最近の話題に、功罪相半ばすると思いますが、新生銀行の上場がございます。投資銀行業務と個人向け取引に特化して、金融機関の新しいモデルを提示し、株式市場も高く評価したことは事実でございます。従来の銀行の常識を破った新しいコンセプトの新銀行も、政策目的を達成しながら、利潤を上げて、経営面でも成功すれば、市場からも高い評価を得られる日が来ると思います。
 将来、新銀行が株式上場を果たし、さらに都の保有する新銀行株式を売却して、結果として都財政の再建に寄与したとしたら、私は、大変すばらしいことだと思います。
 そこで、最初に、夢のある質問をさせていただきたいと思います。
 新銀行の株式上場についてどのように考えているのか、知事のご所見をお伺いいたします。

○石原知事 これは新銀行に関して非常に大事な問題でありまして、当然、この銀行が成功すれば、上場されるでしょう。また、すべきでしょう。
 あの一回つぶれた長銀が、わけのわからぬ税金をつぎ込んで、それで、ヘッジファンドに買われて、どこまで再生したか知りませんけど、新生銀行ということで、上場して高値がついているわけでありますけども、いずれにしろ、株の上場というのは、その企業の経営実績と将来性とが市場の中で幅広く認知されたあかしであります。
 新銀行は、開業後二年間は中小企業に対する資金供給に軸足を置きながら収益基盤を確立し、その後、段階を経て金融サービスの拡充を図り、より広範な地域を対象として事業を展開していくつもりでございます。
 新銀行の株式上場は、こうした発展段階のいずれかの時期において当然視野に入れておりますが、そのときだれが知事をやっているかわかりませんけれども、しかし、これが成功して、高値で株が買われれば、私はやっぱり、いつめどがつくかわからない東京の財政再建の大きな一つのてこになると思いますし、また、そのつもりでやらなくちゃならぬと思っています。
 いずれにしろ、いずれの時期においてか、当然上場は視野に入れておりますけど、まずはその業務の領域において、その選択と経営資源の集中とにより、新銀行を安定成長軌道に乗せることに、当面は全力を傾注してまいります。

○秋田委員 上場も視野という、大変夢のある回答をいただきました。夢を実現するためにも、しっかりとしたモデルをつくるべく、現実の話に戻させていただきたいと思います。
 ようやく明るさの見えた経済の中で、まだまだ中小企業は苦心しております。知事がよく引き合いに出される技術が一流の中小企業というのは、大体奥さんが経理を担当されて、熟練工の社員が数人いらっしゃって、会社全体の経営に関しては社長一人が責任を負っている会社がほとんどだと私は思います。
 社長は経営についていろいろと悩んでいることが多いと思うんですが、かといって、大企業のようにマッキンゼーやボストンにコンサルティングを頼むわけにもまいりません。経営のすべてを一人で抱え込んでいらっしゃるのが、現在の中小企業の社長の姿だと思います。社員に本当のことを話すときはお手上げというようなケースもよく聞くわけでございますが、仮にお金を融資されても、再建の手だてが見出せなければ、私はしようがないと思います。
 私の知人の会社も、数年前のいわゆるITバブルのころに、少なくはないお金を融資されました。その会社は、技術的にも、アイデアもあったように思うんですが、残念ながら、財務や経営の知識に乏しくて、散ってしまったというようなことがございました。
 新銀行の役割は、中小企業に対して融資して終わるわけではないと思います。彼らがその後どのような経営をしていくかが重要だと思います。社長たちの相談相手となって、きめ細かく経営に対して支援し、積極的に再生の手伝いをすることが、ある意味、融資それ自体よりも重要だと考えます。
 新銀行では、融資先の企業の経営指導や支援をどのようにやっていくのか、出納長にお伺いいたします。

○大塚出納長 新銀行では、単に融資をするだけではなくて、各種団体や企業等と幅広くリンケージを組みながら、融資先に対して、多角的で実効性のある経営指導等の支援を行ってまいります。
 具体的には、商工会議所や商工会等を通じて融資先企業の紹介を受けるとともに、融資先企業に対し、きめ細かな個別経営指導やセミナーの共同開催などの経営支援を実施することを検討しております。
 さらに、専門家による経営、財務改善のコンサルティングの実施や商談会への参加などを通じ、即効性のあるビジネスマッチング支援を展開してまいります。

○秋田委員 新銀行は、協調融資などさまざまな分野で、信用金庫などの地域金融機関と提携することを重要な理念の一つとしております。
 私が話を聞いた専門家の一人によれば、一般的に、二兆円を貸すには二千人の行員を必要とするそうです。新銀行が一兆七千億円を融資するとなると、千七百人必要ということになります。行員の数一つ取り上げても、新銀行の体制は十分でないという見方もある以上、新銀行の成否は、まさに地域金融機関の協力なしではあり得ないと思います。
 そのためにも、彼らが弱い部分、不得意な分野を新銀行が積極的に取り組んで、そして地域金融機関が補完していくということが、彼らの積極的な協力を得られるすべだと思います。
 その一つが、私は企業再生の分野だと思います。DIPファイナンスもその一つであり、マスタープランでは再生ファンドの項に書いておりますが、正確にはファンドではございません。全くの別物でございます。
 なじみのない言葉でございますが、DIPファイナンスとはどのようなものなのか、他の金融機関での取り組みも含めて、お伺いをいたします。

○大塚出納長 DIPファイナンスとは、米国において再建型倒産手続に入った企業に対する融資を指すわけでありますけれども、我が国では、民事再生法や会社更生法の手続申し立て後、計画認可決定前までの融資のことを称しているわけでございまして、主に運転資金や業務継続のための資金として利用されております。
 従来、金融機関はこうした企業への融資をちゅうちょしてまいりましたけれども、再生を目指す企業のニーズは高く、現在は政府系金融機関のほか、市中銀行においても少しずつ広がりを見せてきているわけであります。
 最近の取り組みでは、民事再生手続に入って再建中の建設会社の工事続行資金に関する融資申し出に対して、事業性と再生可能性が認められてDIPファイナンスが行われたケースや、同じく民事再生手続中の菓子製造業の運転資金需要に対してシンジケート方式により融資枠が設定されたケースなどがございます。
 新銀行との関連でも、再生ファンドなど、ケースによってDIPファイナンスが設定されることを想定しております。

○秋田委員 DIPファイナンスを海外で成功させた方によれば、巷間伝わっているイメージと違って、DIPファイナンスはローリスク、ローリターンということでございますから、企業再生の手法の一つとして新銀行でも検討していただきたいと思っております。
 さて、新銀行もファンドを設立するということでございますが、最近、銀行系や外資系など、多くの企業再生ファンドが立ち上がっております。ファンドというと、どうしても息の絶えそうな、破綻寸前の企業の経営に乗り込んで、強引なリストラを行って、短期間に売り払い、利益をねらうイメージがあって、これまでファンドによる買収の対象とならなかった中小企業は警戒感を持つのではないかと心配しております。
 新銀行の企業再生ファンドの特徴はどのような点にあり、また、中小企業にどのようなメリットがあるのかをお伺いしたいと思います。

○大塚出納長 新銀行が出資する再生ファンドは、企業の再生に重点を置き、比較的長い時間をかけて回収を図っていくことを目指しております。企業を安く買いたたき、短期間で高い価格で売り抜けることにより大きな利益をねらうファンドとは、基本的にスタンスが異なるわけであります。
 中小企業にとってのメリットは、経営相談やビジネス情報の提供等の仲立ちにより、当該企業の再生が図りやすくなるほか、ノウハウを有する専門機関のもと、速やかに再起の支援を受けることにより、有益な解決方法が提供されることになると考えております。

○秋田委員 いわゆるハゲタカファンドとは全く違うんだということを今後もPRしていただきたいと思います。
 新銀行が出資する再生ファンドにおいても、地域金融機関との連携を図っていくことは考えていないんでしょうか。

○大塚出納長 この分野におきましても、地域金融機関との連携は極めて大事だというふうに考えております。不良債権処理を促進する必要に迫られている地域金融機関では、現在、自己資本比率規制の関係などによりまして、大幅な収益悪化や債務超過などに陥った中小企業の債権を持ち続けることが難しくなってきているわけであります。
 新銀行が出資する企業再生ファンドでは、信用金庫など提携金融機関などと協調して、そのような中小企業向け債権を購入し、中小企業の再生を支援するとともに、あわせて地域金融機関の不良債権処理にも貢献することを考えております。

○秋田委員 ただいまローンパーチェスのお話がございましたが、中小企業の再生を支援するとともに、ぜひとも地域金融機関の不良債権処理にも貢献していただくようにお願い申し上げたいと思います。
 それでは、最後の質問になります。
 今まで再生ファンドについて伺ってきましたが、さまざまな努力をもってしても、予定どおりには再生できない企業も出ることだと思います。このような場合、再生ファンドの運営に支障を来すことはないんでしょうか。

○大塚出納長 債権の買い取り額は、企業が予定どおり再生できないというリスク、場合によってはそういうことも想定して決定することになるわけであります。
 このため、購入した債権の対象となる中小企業のすべてが再生しないとファンド全体が成り立たないというものではありません。想定する許容の範囲の中で、いかにリスクをコントロールするかがファンドのポイントになります。
 債権購入後の管理、あるいは回収などにつきましては、高い専門性と効率性を備えたサービサーを有効活用することによりまして、ファンド運営に支障を来さないようにしてまいりたいと考えております。

○秋田委員 今出納長がおっしゃった中でも、リスクのコントロールというのが本当に一番難しいんだと思います。
 最後に、私なりのこの銀行に対する意見、思いを申し上げて、質問を終わらせていただきたいと思います。
 私は、今回の銀行の唯一最大の目的は中小企業の救済だということは本当にすばらしい概念だと思っております。もちろん財務の健全性はある程度必要だと思いますが、しかし、私個人の意見を申し上げさせていただければ、マスタープランにあるような格付ダブルAやAを目指す必要は、必ずしもないのではないかなと思います。
 たとえ財務上、健全な銀行ができたとしても、中小企業の皆さんが電話したり、問い合わせをした際に、何だ、今までの銀行と変わらないじゃないかと思ったら、私は、この銀行の設立意義というのは失われてしまうんだと思います。(「全く同感」と呼ぶ者あり)ありがとうございます。
 どんなきれいごとをいおうとも、民間企業というのはお金にならないことは決してやりません。ボランティアではない以上、もうからない仕事を切り捨てるのが民間の企業だと思います。新銀行とは逆のベクトルのお話になりますが、旧国鉄が民営化した途端、不採算路線を切り捨てたのはいい例でございますし、民間企業としては至極当然なんだと思います。
 しかし、公がやるとなると、私は話は違うんだと思います。公の役割は、民間ができないこと、やらないことを、公共性があるならば、ある程度採算性に目をつぶってもやることだと思います。だからこそ、都がやる新銀行は、既存の銀行が切り捨てた中小企業を救うことにこそ存在意義があるのだということを繰り返し強調して、私の質問を終わります。
 ありがとうございました。(拍手)

○樺山副委員長 秋田一郎委員の発言は終わりました。

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