東京都議会予算特別委員会速記録第四号

○宮崎委員長 ただいまから予算特別委員会を開会いたします。
 これより付託議案の審査を行います。
 第一号議案から第三十号議案までを一括して議題といたします。
 昨日に引き続き、総括質疑を行います。
 川井しげお委員の発言を許します。

○川井委員 現在の景気動向や企業の状況を見てみると、まちに明るい展望が開けつつあることがうかがえます。しかしながら、日本の経済を支える中小企業は依然として厳しい状況に置かれていることには変わりはありません。これまで長年にわたって東京都の事業に貢献してきた多くの優良企業が倒産またはその危機下にあるのが現実の姿であります。
 私は、昨年の第四回定例会、財政委員会においてこのことを取り上げ、いわゆるくじ引き入札、低価格入札が急増しており、このままでは不良不適格業者の参入を招きかねない、このような状況について質問をさせていただきました。
 知事もよく、最少の経費で最大の効果というお言葉をいわれ、コスト削減に努力をされておられる。このことはこのことで一定の評価をするわけでありますが、最少の経費の経費とはどういう意味であるのか、公共工事の発注の役割は社会資本の整備だけなのか、あわせてその意義をお伺いいたします。

○櫻井財務局長 お尋ねの最少の経費とは、地方自治法に掲げております最少の経費で最大の効果の基本原則を指しますが、これは、経費の財源が都民の貴重な税によっていることによるものであります。そのため、同法におきましては、契約につきましても、最低の価格をもって申し込みをした者を契約の相手方とすると定めているところであります。
 公共工事発注の目的は、第一に、工事の仕様に基づきまして良質な施工を確保し、なおかつ、より低廉な価格により将来にわたり都民が利用する社会資本を整備するものであります。あわせて、公共工事は、東京における地域経済の活性化など、経済波及効果にも寄与する側面もございます。

○川井委員 当然、最少の経費、これを求めるわけですけれども、それと同時に、適正価格というものも求めていかなければいけないんだろう、こう思っております。社会資本の整備のほかに、経済効果、技術の向上、企業の育成、あるいは、仕事から出る企業の納税等々、多くの意味合いがあるわけであります。
 しかしながら、今財務局から発注されている工事のうち、何と約二五%の工事がくじ引き抽せんであります。十社中八社、最低価格どんぴしゃり、一円もたがわず応札する。何と東京の仕事の四分の一、二百本以上を占めているわけであります。
 どういうことを意味するんだろうか。ただ単に価格なのか。技術、技術者の数、そして実績、その会社がやってきた仕事の評価、実働施工部隊がいるかどうか、そして、現在においては、社会貢献度、こういうことも大事な要因の一つだろうと思っております。
 先般質問した以降、財務局でも簡易総合評価東京方式というようなシステムづくりに努力をしていただいているようでありますが、その内容と進捗状況をお聞かせ願いたいと思います。

○櫻井財務局長 お話しの簡易型総合評価方式についてでありますが、昨年の第四回定例会の財政委員会で、川井委員の方からご質問いただきまして、初めて都においてこの方式の導入についてご答弁を申し上げたところでございます。
 この方式は、価格だけで受注者を決定する自動落札方式と違いまして、価格だけでなく、企業の技術力、施工体制や過去の施工実績などの施工能力を総合的に評価して決定するものであります。現在、十六年度中の実施に向けまして、公正な評価を行うための手法や体制など、具体的な検討を進めているところでございます。

○川井委員 実に、価格だけではないですよ、実績、技術、そして、今までやってきた仕事の評価、そういうものも組み入れるということで、新しく東京方式、簡易総合評価、こういうものを今生み出しているところである、大変ありがたい、こう思っております。ぜひぜひ早目に生み出していただきたい、こう思って要望しておきます。
 次に、労働者の汗が評価されているんだろうか、こういう疑問を感ずることがあります。
 低入札価格制度、新しい制度であります。東京都の最低価格を下回っても、その企業を呼んで確認し、問題がなければその低入札価格で仕事をさせる。
 先ごろ、日本鋼管が東京都の仕事をまさに五割近く、五〇%台でダンピングしてとった。関係する納入業者、下請企業、労働者の汗が本当に評価されているんだろうか、労働に対する対価が支払われているんだろうか、心配するわけであります。
 もう一つ、永代橋維持にかかわる塗装工事であります。大阪の業者が突然あらわれて、予定価格の五割以上、四割台でダンピングして応札し、仕事をとった。私は都の担当者を呼んで、お話を聞かせていただいたのであります。
 架設工そして安全費経費、これらの数字だけで今回の落札価格をオーバーしてしまう。労働が本当に評価されない、仕事に対する対価さえ与えられない、本当にいいんだろうか。安ければ安いほどいい。一定の技術や品質確保が守られた仕事でなければならないのではないだろうか。最少の経費とは、最大の効果とはどういう意味であるのか、もう一度関係局が知事のいっている本当の意味をとらえなければならないんだろうと思います。
 発注、受注にかかわる多くの業者の方々が口をそろえておっしゃっているのが、不正不適格業者の締め出しを強く訴えております。
 長年にわたって東京都の仕事をやってきたある経営者の方は、涙ながらに訴えておりました。私はうちの社員にもう三年ボーナスを支払っていない。無論私も、給与さえ取っておりません。私やうちの社員が頑張っているのは、いい仕事がやりたいんです、社会を担っていきたいのでありますとおっしゃっておりました。また、多摩の業者は、まじめにしっかり人をそろえ、倉庫を持ち、材料置き場を持ち、職員宿舎を持つようなところから順番に倒産してきているそうであります。
 今東京都で、コストの縮減、コストの見直し、最少経費で最大の効果を目指して検討委員会もつくられているんだと思います。ぜひこのことはやっていくべきであります。しかしながら、適正価格というものも意識をしていただきたい、こう思っております。労働者の汗が評価されなければならない、首都東京の仕事をやって、きちっとその対価を得られなければならないんだろうと私は思います。
 公共工事の減少に伴い、企業の運転資金確保ができればと、採算割れ承知の上で応札、そのしわ寄せを従業員の賃金や下請企業に寄せてしまう。正当な労働の対価まで確保されなかったり、工事の品質が確保されなかったり、支障を来すようなことではいけないんだろう、こう思っております。
 知事のご所見をお伺いし、あわせて、各局の契約にかかわる方々の代表者として財務局長のご所見をお伺いいたします。

○石原知事 どうも入札という業務は非常に見えない部分が多うございまして、まして今日のような不況になりますと、ご指摘のような、しわ寄せというのを承知してでもとにかく仕事をとる、最低限とにかく仕事を確保するという形で、無理な応札というものがあり得ると思います。それで、でき上がった仕事が果たしていいか悪かということも問題だと思いますし、安かろう、よかろうというものでは決してない。
 そういった公共事業の発注に当たっては、公正な競争によって良質な社会資本を整備していくことが基本でありますが、同時に、従来、公共工事のコストが割高だということがいわれておりました。私の親しい東日本JRの松田さんが社長のころも、鉄建公団でしょうか、発注したけれども、べらぼうに高い。自前でやってみたら何割か安くできた。それは小規模の工事だったからやったんでしょうけれども、そういうことをいっておりましたが、いずれにしろ、すぐれた技術力やコストの削減のノウハウを積極的に取り入れるということが当然だと思いますが、しかし同時に、でき上がった仕事が、その純度において、後で尾を引いて、国民に迷惑をかけるようなことがあってはならないと思っております。そういうことを配慮しながら、適正な公共事業の発注に努めていくべきだと思います。

○櫻井財務局長 発注に当たりましての都の基本的な考え方は、今知事がご答弁申し上げたところでございますけれども、都の公共工事の発注には各企業が経営者の努力と経営判断により対応しているものでありまして、都としては、工事の品質確保について十分留意していくべきものと考えております。そこで、これまでも、工事成績評定制度の運用など、監督、検査体制の充実強化に努めてきたところでございます。
 今後都は、先ほどご説明したとおり、価格面だけでなく、良質な品質の確保をより徹底させるため、簡易型総合評価方式を導入し、その普及拡大が図れるよう鋭意検討してまいります。

○川井委員 ぜひご努力をいただきたいと思っております。また同時に、経費を削減していく中で、適正価格というものの追求、これもぜひやっていただきたいと思います。
 先般、ある方々に、今東京都は簡易の総合評価、東京方式をつくるので汗かいているんだ、価格だけじゃないよ、技術も、そして実績も、そして仕事のできもすべて考えてくれるよ、こんな話をしたら、大変喜んでおりました。
 とにかく今、積算もできないような業者が、その提出する書類の数カ月前に技術者と契約をして、それで書類だけ提出して、くじ引きでとっていってしまう。こんなことが許されていいんだろうか、こういう思いを持っているまじめな業者さん、ぜひバックアップをしていただきたい、こう思います。
 次に、都の施設建設とまちの景観についてお伺いをします。
 実は、私は過去に、山手通りと甲州街道の交差点のところ、国立第二劇場あるいはオペラシティ、そして向かい側にNTTの本社があります。いい街並みが今つくられつつある。そこの新しい街並みの足を引っ張っているのは東京都ですよ、こんな話をしたことがあります。交通局の新宿車庫。金網はさびて、破れて、そこにぼろきれがかかっている。そして、車庫にはいたずら書きがしてある。そのフェンスに今度は棒切れが立てかけてある。
 私はこのことを指摘させていただいて、今現在この車庫は、車庫を建て直し、事務所棟を建て直された。果たして近隣の景観をよりグレードアップしてくれたんだろうか。私は昨年の十一月に担当者をお呼びして、まさかそこまでいえなかったですから、緑化スペースはとりましたか、オープンスペースはとりましたか。実は、それから二カ月間、電話一本ありませんでした。一月後半になって、新宿区の条例の一・六七倍緑化スペースとりました。どうも納得がいきません。
 そんな立場で、実は、つい最近私が感じたことをお話しさせていただき、感想を聞きたい、こう思っております。
 実は、小石川後楽園、ここを歩かせていただきますと、大変いい雰囲気であります。都心の真ん中に、すばらしい江戸を思わせるような水戸家の庭園、ぽっと置かれた、そんなところを探索すると、まさに心が洗われるわけであります。ここで実は食事もできるし、お茶も飲めるわけですけれども、ちょっと足を伸ばしますと、実は旧小笠原伯爵邸がございます。
 この写真は、その小笠原伯爵邸でございます。(パネルを示す)この小笠原邸は、実は、建物の修復費用だけで五億円以上かかるといわれたのであります。しかしながら、日本の文化を守ることでありますし、都民の財産を守りたい、こういう思いの中で、恐らく知事の判断だっただろう、こう思いますけれども、インターナショナル青和株式会社にお願いをし、その修復工事すべてにおいてそこに出していただき、その後十二年間、月々五万二千円で借りていただく。
 特にこのタイルなどは、スペインまで発注をして、当時のものとそっくりなものを焼き直した、こういうものでございます。ドアノブの一つ、あるいは外壁のタイル一つとっても、当時のものを生かし、また復元し、味わいのある建物を都民に財産として残してくれたことに感謝するのであります。この旧小笠原伯爵邸のオープンカフェで味わう紅茶とサラミソーセージの味は格別であります。その味わいのある建物で味わう食事、また、若者が土日に行う結婚式、本当にいいものを残してくれた、また、いいものを都民に与えてくれた石原知事の判断、私は大変評価し、感謝をいたしているわけでございます。
 しかし、何とも残念なことに、この小笠原邸の真ん前を位置しているものがあるわけであります。これは交番でございます。後ろから見たところでございます。そのわきにもう一つ、この趣ある建物の景観をぶち壊しているものがあります。この箱のようなものでございます。地下鉄の駅舎の出口でございます。横から見るとこんなものでございます。
 そこで、お聞きをします。今後、都の施設を建設するときに、近隣の景観への配慮をぜひしていただきたいのでありますが、交通局長のご見解をお伺いいたします。

○松尾交通局長 大江戸線若松河田駅出入り口は二カ所ございまして、一つは、民間との共同ビルで物理的制約があったため、旧小笠原邸前の出入り口に駅施設を集中して設置する必要がございました。設計に当たりましては、できる限り建物を小さくするとともに、シンプルなデザインにするなどの配慮を行ったところでございます。
 今後、駅施設改修の際には、より景観に配慮した施設整備に努めてまいります。

○川井委員 シンプルな建物でしょうか。ちょっとわかりません。
 小笠原邸という歴史的な建物を事例に挙げて質問をしましたが、東京の景観を考えると、建物とともに道路、河川、公園などの公共施設が大きな役割を担っております。国は今国会でいわゆる景観三法を成立させるとのことであります。この機会をとらえ、都としても、美しい東京をつくっていくために行動を起こすべきときではないでしょうか。公共施設の整備を都市景観向上の牽引役として考えますが、知事のご所見をお聞かせ願います。

○石原知事 公共の建物が周囲の景観に及ぼす影響の問題ですけれども、これはもうしょせん感性の問題でして、こういう問題が日本には頻発するわけですけれども、やはり勘どころ勘どころは、優秀な建築家なりそういう方々に依頼して、判断を仰ぐ必要が私はあると思います。
 ヨーロッパなどは、ワンシティー・ワンアーキテクチャーだということですし、非常に、建物の形は違っても、モノクローム、モノトーンのしっとりした感じがありますが、しかし、国会議事堂や東京駅、隅田川にかかるかつてつくられた橋梁など、都民に親しまれている公共的な施設がたくさんございまして、これは非常に周囲と調和していると思いますが、一方では、個々の施設はそれなりにデザインされていても、地域の街並みとどうも調和していないものが多々あります。例えば、今度できた首相の官邸などは、あそこの周囲に全然ミスマッチで、聞いてみたら、建設省の営繕部が設計したそうですけれども、全くお役人の仕事というんでしょうか、そういうとお役人に申しわけないけれども、無感覚でひとりよがりな感じが否めませんな、あれは。
 景観に配慮した公共施設の整備は、観光まちづくりなど、東京の魅力を高める上でも非常に大切であります。
 今後も、公共の施設が景観向上の牽引役となるように、総合的な公共施設の整備に関しては、庁内だけではなくて、やはりしかるべき専門家にも相談をするというような、そういう習慣をつけていきたいと思います。

○川井委員 ありがとうございます。知事の感性をもってしてやったならば、必ずいい東京ができる、こう信じております。
 次に、地中化についてお聞きをします。
 ちょっとその前に見ていてください。(パネルを示す)阪神・淡路の震災で、電柱が道を遮っております、同じくでございます。これを頭に置いてこれからご質問をしたい、こう思っております。
 まず最初に、首都東京の都市計画、そして、基盤整備においての地中化事業の位置づけをお伺いします。

○勝田都市計画局長 電線等の地中化についてでございますが、良好な都市景観の創出、安全で快適な歩行者空間の確保、災害に対する防災機能の向上などの観点から、都市づくりの上でも重要な課題と認識しております。
 このため、地域の骨格となる幹線道路やセンター・コア・エリア、主要駅周辺などで優先的に整備していくこととしております。

○川井委員 都市計画局長が答えてくれてよかったな。実は、東京都は、基盤整備とか都市計画に電線の地中化、きちっと位置づけていないんだろうと私は思っておりました。そうすると、この質問は、都市計画局長がご答弁いただけないとなると、建設局長、建設局の安全施設課、こういうところなのかな、どうしたものかな、こう思っておりましたけれども、私は重要なことだと思うんです。ぜひ今後、都市計画局の位置づけとして、大きなものとしてとらえていただきたい、こう思っております。
 ふと空を見ると、取り戻した青空が広がっている。しかしながら、そこには張りめぐらされた電線があり、電柱が何十本も立っている。まちの景観を乱しているのであります。
 実は、ニューヨークの地中化はたった一つの市民運動から始まり、現在、全市においての電線等地中化がなされているやにお聞きしております。どんな大事業であろうとも、たとえ至難のわざであろうとも、だれかが最初の石ころ一つを積むものであります。積み続ける、そして、やがてすべてをなし遂げる気持ちを持ち続けるならば、必ずや物事はなされていくものだろうと思います。いわゆる東京の都道の歩道のみではなくて、東京のまち、市区町村道であろうと、道路管理者がだれであろうと、このまちをどうするんだという大きな観点で都市計画局が頑張っていただかなければならないんだろうと思います。
 そこで、お伺いします。とりあえず都道でございますが、都道における地中化事業のこれまでの進捗状況をお聞かせ願いたいと思います。

○小峰東京都技監 都は、昭和六十一年度からは四期にわたる電線類地中化計画に基づき、センター・コア・エリア内の幹線道路や災害時の緊急輸送路などで地中化事業を実施してまいりました。都市機能の集積している都心部においては、水道管やガス管などの埋設物がふくそうし、交通量も多いなど、困難な施工条件のもとで事業を進めてまいりました。
 平成十五年度末の都道における地中化の状況は、対象延長二千三百キロのうち五百二十キロが整備され、地中化率は二三%でございます。

○川井委員 次に、都民の生活道路である区市町村道などで地中化事業が遅々として進捗していない、その理由をお伺いします。

○小峰東京都技監 区市町村道におきます電線類地中化は、道路管理者でございます区市町が事業主体となって、電線管理者と協働して実施する事業でございます。
 区道などで地中化事業がおくれている主な理由でございますが、一つには、これまでの電線類地中化計画では、国道や都道の幹線道路を優先的に事業対象としてまいりましたこと、二つには、歩道がないか、または狭い道路では技術的に地中化が困難でありましたこと、第三には、多くの区市等では地中化事業に対する経験やノウハウの蓄積が少ないこと、四つ目には、事業化のための事業費負担が大きいことなどでございます。

○川井委員 私は、この問題、担当者の方々と今日まで議論をしてきました。時間がなくなったので、私の私見、その部分は既にお伝えしてありますので、そこのところを除きます。
 いわゆる東京都がどういう形の中で国に働きかけていくのか、市区町村に働きかけていくのか、そのことが重要だろうと思っております。
 今、国と事業者と国交省、決めているのが三千キロ、しかし、これの五〇%にも満たない進捗率であるわけであります。それはなぜ進まないんだろうか。その進まないことを一つ一つとって働きかける。例えば、裏負担の部分、この部分もあるだろう。それに対して十六年から初めて二十三区の場合、財調で見ていただけるようになった。これも成果だと思って喜んでおります。しかしながら、それだけで本当にできるんだろうか。どうしてもそこの部分はつかえてしまう。
 NTTや東京電力が東京都全体、市区町村を含めて約二百億円の道路占用料を納めております。ばらばらにもらったら、これはわずか数億円。しかし、まとめてプールして毎年二百億円の裏負担分を考えたならば、そして最も必要なところからやっていく。最も必要なところからやっていく。あなたのまちは五年後かもしれない、あなたのまちは十年後かもしれない。しかし、今のままやったら、東京のまちを地中化していくのに二百年かかっても三百年かかっても終わらぬのであります。重点的な思い切った施策、そして国に対しても、例えばトランス、電信柱一本抱いたら、税法上のメリット、あるいは建築基準法上のメリット、そういうものも与えるように働きかけるのは、私は東京都だと思うんです。
 東京都の働きを今後どのようにしていくのか、お答えをいただきたいと思います。

○小峰東京都技監 区市町道の地中化推進に対する都の取り組みについてでございますが、平成十六年度から始まる次期地中化計画におきましては、区市町道でも積極的に計画化するよう指導しているところでございます。
 二つ目でございますが、地中化技術の開発や地上機器の設置場所の確保に区市等や電線管理者とともに取り組んでまいります。
 三つ目でございますが、都と区市等で構成する地中化促進会議などを活用いたしまして、地中化に関するノウハウや情報提供など技術支援を行ってまいります。
 四つ目でございますが、ただいまお話のありました財源の問題でございますが、財源確保のため、国庫補助率の引き上げや電線管理者の負担軽減策等を国に提案要求してまいります。
 以上のような取り組みにより、区道などの地中化事業を積極的に支援してまいります。

○川井委員 これは人の生命にもかかわる大事なことだと思っておりますので、努力をしていただきたいと思います。
 この質問の最後に、世界各国の主要な都市、先進国諸国を歴訪されている知事が、ニューヨークやパリ、それぞれの都市と比較して、東京都の電線、電柱、ご感想をお願いします。

○石原知事 確かに欧米では、近代都市の当然備えるべき要件として、電柱、電線のない空間が保持されております。しかし、残念ながら東京を俯瞰しますと、先進国の首都であるにもかかわらず、いまだに電線類が張りめぐらされて、雑然といいますか、いかにも醜悪な態様で残念な話であります。
 大分前でありますけれども、高倉健、岸恵子、それからロバート・ミッチャムが主演した何という映画でしたかな、「ザ・ヤクザ」でしたかな、ロバート・ミッチャムが日本にやってきまして、タクシーで都心に向かいながら、独白で、何度来てもこのまちは醜いまちだなあと、私はそれを耳にして、アメリカのギャングでさえそういう評価をするのかなと思って残念な気がしましたが、今後は道路単位ではなくて、面的な広がりを配慮して、やはり電線類の地中化を進めなければ、良好な都市景観の創出はもとより、安全で快適な歩行空間の確保など、魅力のある東京にはほど遠いと思います。
 全体の街並みを再生し、外国の美しいといわれる首都と比べても遜色のない都市としていくために、地中化に努めていくのは当然だと思います。
 かつてブラントが日本にやってきましたときに、高度成長のさなかでして、向こうもこっちも飛ぶ鳥落とす勢いでしたけれども、ブラントが非常に皮肉まじりに、日本はいい、まだこれから大仕事があるじゃないか、それはあの醜い電線を埋めることじゃないかといわれたのが、非常に印象的でありました。

○川井委員 知事、どうもありがとうございます。
 実は私、担当の方々とかなり、もう一年以上議論をしてきておりまして、線や点じゃしようがないんだ、面的なと、こういう表現をしてきたんですけれども、今ご答弁に面的なという部分が出て、大変うれしく思っております。ぜひ東京のよりよき景観を取り戻そうという先頭に立ってご努力いただければありがたいと思っております。
 次に、実は阪神・淡路の大震災を思い起こしてみますと、木造住宅がとことんやられた。特に老朽化している昭和四十七年以前に建てた建物、木造住宅は、その三割が全部倒壊してしまった。これも今まで日本の常識としては、木造住宅は地震に強いんだ。あの新潟沖地震のときには、木造住宅はびくともしなかった。それは、液状化でビルが斜めになる、あるいは潜る、あるいは橋げたが外れる。また、三陸沖地震の仙台のときには、皆さんも記憶にまだあるだろうと思いますが、ブロック塀が倒れてその下敷きになった。それぞれの地震、それぞれ特徴があるんですけれども、今回の場合は木造住宅がみんなやられました。
 多くの方々が亡くなりました。その多くが、死因は胸部圧迫、あるいは胸腹部圧迫、これによる窒息死が何と五三・九%ございました。そして、建物倒壊等の圧死、物の圧力で、窒息する前に圧力で死んでしまう、これが一二・四%ありました。合わせると、何と六六・三%の方々が建物倒壊、そして家具の下敷きや家具に挟まれて亡くなっております。
 そこで、まず最初にお聞きをしたいんでございますが、家具、家財の固定についてお聞きをしたいのであります。担当者からはいい答弁が返ってきておりません。ですから、非常に残念に思っております。
 (資料を示す)この家具の装備装着が今できないような家です。壁は、実はきちっとボルトがとまらぬような状態にあります。そして、ここに、これは実は鉄筋コンクリートの建物であります。木造じゃありません。建物全体には全く被害を受けておりません。しかし、この赤い場所三カ所で、たんすの倒壊による死亡、五人家族の中で三人がたんすの下敷きになって亡くなっております。これほど重要なことに対して、なかなかいい答弁が返ってこない。私は、不思議でしようがありません。
 いわゆる担当の方々に聞くと、PRはしてきました。これからもPRはしていきます。じゃ、その品物が本当に耐えられるんですか、東京都で検証したんですか、してございません。
 この直下型マグニチュード七・二、そういうものが来たときに、横軸に縦軸にどれだけの力が働くのか。そして、そのたんすやグランドピアノ、テレビが横に走る、グランドピアノが横にすっ飛ぶ、そういう状況下どれだけの力が働くか、実際に金具屋さんが実験したんですか。いや、起震車の上でやりました。何をいっているんですか。その計算式を出してください、出てこない。私は、そういう思いからするならば、東京都が大学等の研究機関とともに、きちっとそういう実態のある研究をしてほしいんであります。
 そして、東京都もさまざまな形でのPRや、その努力はしてきたんだろう、こう思っております。しかしながら、私は、大学の研究機関等でこれらの研究をきちっと進めてほしい。地震の強さ、揺れの大きさによって家具などにどのような大きな力が加わるのか、その力に耐えられるだけの転倒防止の器具なのか、それぞれのマニュアルを作成するなど、現実に役立つ転倒防止の器具の開発や有効な使い方、この研究をぜひしてほしいと思っておりますが、ご所見をお伺いします。

○赤星総務局長 家具、家財の固定でございますけれども、今、先生がおっしゃったように、さまざまな形態があると思います。建物の直下型、あるいは海溝型によって違いますし、建物にはそれぞれ固有の周波数にどれだけ耐えられるかが変わってまいります。また、震度、マグニチュード、それから深さによっても変わってまいりますし、家具の固定の方法等だけですべてが耐えられるというものではないんだろうと思いますが、私どもといたしましては、家具の下敷きになって死亡だとか、負傷するということは防がなければいけないだろうと思っておりまして、転倒した家具等により避難経路がふさがれる事態を防ぐためにも、家具を固定するなどの備えが必要だと考えております。
 先ほど先生おっしゃったように、「防災のしおり」とかパンフレットでいろいろ申し上げて広報しておりますけれども、これからも私どもとしては、家具等の関係団体とも十分協議して、それらの対応に努めてまいりたいと思います。

○川井委員 大変残念な答弁なので、余り聞きたくないんだけれども、長々答えてくれました。
 ぜひこれは努力をしなければいけないことだ、あなた方、人の命を救う、約三割の方々がこれで亡くなっているんだ。阪神・淡路の六千四百三十二名の方が亡くなった。掛けてください、一千八百人を超えるんです。このことをやることによって一千名以上の命が救えるんです。そう考えるべきです。どうも総務局長初め考え方が本当に真剣に考えているんだろうかという思いさえしてしまう、こう思っております。
 そこで、この問題の最後に知事と思っていたんですけれども、どういうご答弁が返ってくるかわかりませんけれども、私は大変重要なことだろうと思っておりますが、知事、どうでしょうか。

○石原知事 私も今お聞きしまして、家具の倒壊での圧死というのはそんなにパーセンテージが多いと初めて知りました。こういう情報を徹底する必要があると思いますけれども、しかし、大概の方々は、例えば木密地域の再開発の問題なんかも、うちは大丈夫だろう、まあここは来ないだろうというたかのくくり方をしている人が多くて、この問題なんかもそうだと思うんですが、やっぱり少なくともその家具を売っているような業者には、家具と附帯して、どういう家にお住まいか知らぬけど、これだけの高さの物を買われるんだったら、転倒する予防の装置を添えてつけてくださいというような、そういう情報を徹底させる必要があると私は思います。
 既に約四割の区市で高齢者、障害者の世帯に対しては転倒防止器具の取りつけを支援しているそうでありますけれども、それではとても足りないと思いますし、まず情報の徹底から、そして業者の協力という形で進めていきたいと思います。

○川井委員 実はこれ、全国的にですけれども、国の方で調べてみますと、家具を装着してある、わずか全世帯の一五%でございます。家具の装着なんて本当にやりやすいことがなぜこれだけ普及しないのか、考えていただきたいと思います。
 それと同時に、補助金が出たならばやりますか、やります、ぜひやります、それと、行く行くやっていきたいという思いがあります、合わせると六〇%超します。それと一五%の差というものをぜひ認識していただきたい、こう思っております。
 でき得れば、老人のひとり住まいとか、障害者のいらっしゃるご家庭、これはPRのつもりで、東京都が補助金を出すなり無料でやってやるような制度をぜひ今後検討していただきたい。いいっ放しで結構です。
 次に、木造密集住宅についてお伺いをいたします。
 今回の地震が木造に集中した、こういうことでございます。これも時間がございますから、この木造住宅を解消するためには思い切った措置が必要なんだろうと思っております。この解消、東京都の共同化に対する、一歩も進んでいないということへの認識と解消の手だてをお聞かせください。

○勝田都市計画局長 密集市街地における防災性の向上を図るため、共同化を進めることは重要でございます。都は、これまでも都市防災不燃化促進事業や老朽住宅の建てかえ、不燃化などを目的といたしました密集住宅市街地整備促進事業など、さまざまな施策を実施してまいりました。
 しかし、共同化につきましては、居住者の高齢化や権利関係が複雑なことなどから合意形成が難しく、なかなか進展してきていない状況にございます。このため、これまでの制度に加えまして、容積率などのインセンティブを与える街区再編まちづくり制度、昨年創設されました都市計画事業でございます防災街区整備事業などを効果的に活用いたしまして、今後とも地元区と連携しながら共同化の促進に努力してまいります。

○川井委員 この木密住宅解消については思い切った手段、例えば木密住宅再生特区、こんなことも考えながら、建ぺい率あるいは斜線、こんなことも含めて大いに考えていかなければいかぬ。その思い切った手段、方法、こういうものをとらなければならないと思いますので、後ほど知事からご所見を述べていただければありがたい。
 もう一つは、この同じ地震の教訓として、神戸港の問題があったかと思っております。港湾施設に対する備えはできているのかどうか。また、近港、要するに横浜港等との連携はとられているのか。そして、ここを基点とした内陸部との輸送アクセス、こういうものがきちっとされているんだろうか、こういうことについてそれぞれご答弁を願いたい。
 最後に、実は平成十二年に国が運輸政策審議会、ここで新しい計画を出されました。この計画について東京都の責任と今後どう対応していくのか、聞かせていただきたいと思います。

○成田港湾局長 神戸港の例を見ても明らかでございますが、震災によりまして東京港が甚大な被害を受ければ、海外との輸出入が停止状態になるなど、首都圏四千万人の生活と産業に極めて重大な影響を及ぼすことになります。このため、震災時における国際物流や緊急物資輸送などを確保できる拠点といたしまして、耐震性の高い港湾施設を整備することが極めて重要であると認識しております。
 現在、東京港では、関東大震災級の地震への対応に加え、直下型地震を考慮した新たな基準に基づき、施設整備を行っております。また、既存の港湾施設についても、耐震性の評価を行い、順次、液状化対策などを行っているところでございます。
 また、近隣の震災時におきます他港との連携につきましては、現在、横浜港、川崎港と共同いたしまして、耐震バースの活用方法や相互利用の内容について検討しており、協定の締結の早期実現を図りたいと考えております。
 また、内陸との関係では、橋梁の耐震補強のお話であろうかと思いますが、これにつきましては現在、総点検の結果に基づき、緊急輸送路等、防災上重要な位置づけにある橋から順次、実施しているところでございます。現在までに緊急輸送路上の九橋のうち、六橋で耐震補強を実施しており、十六年度には新たに江東区の若洲橋でも着手したいと考えております。
 以上でございます。

○石原知事 木密住宅密集地域の問題でありますけれども、私は阪神大震災の直後に運輸省から頼まれて港湾の視察に行きました。ついでに非常に被害の多かった長田区と東灘区に参りましたが、これは本当に木造住宅は全滅、その横に鉄骨とか鉄筋の家はきちんと残っているというていたらくでありました。
 これは、都市の安全性を確保するためにも非常に大事な要件でありますが、しかし、今まで努力をしましても、災害危険度の高い密集地域は依然として数多く存在しているのは事実であります。思い切った施策をとるべきというご意見には全く同じでありますが、こういう地域に限って権利関係がふくそうしていたり、老人が多かったり、種地がなかったら、費用の問題もありまして、なかなか事が進まないのも現況でありまして、困難が多いですけれども、鋭意、防災都市づくりに取り組んでいきたいと思います。
 それから、川井さんがご努力なさって、運政審に登録された新規、要するに鉄道計画でありますが、これは、しかし、お金も時間もかかって、この時代になかなか至難のことだと思います。いずれにしろ、事業の採算性の向上などさまざまな問題がございますが、都としては直ちに計画するのではなくて、答申も踏まえて実現の可能性を十分に見きわめる必要があると思っておりますが、今後、国や地方自治体及び事業者などとともに将来の交通需要動向を見定めながら、対応していきたいと思います。

○宮崎委員長 川井しげお委員の発言は終わりました。

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