東京都議会予算特別委員会速記録第三号

○大木田副委員長 矢島千秋委員の発言を許します。
   〔大木田副委員長退席、委員長着席〕

○矢島委員 まず最初に、知事にご所見をお伺いいたします。
 現在の日本の諸問題の背景には、日本の国の力の衰退化、弱体化があると私は思います。これまでも先進国では、もちろん先進ヨーロッパもアメリカもそうでありますけれども、経済の後退では語れない、国の力の衰退があったように思います。
 衰退している日本の国の力が再生に至るためには、価値観の転換が必要だと考えます。それは、いわれるところの、考えなくなった日本人からの脱却でありますし、この点については、教育もしかりであります。
 江戸時代の庶民文化を見ますと、私は、高い文化、文化性を維持してきたと、このように思っておりますが、日本人の感性、そして物の考え方を原点に一度戻す、こういうところがないと、新しい時代を目指しての日本の国の再生がならないんじゃないか。この場合には必要なのは、やはり政治の強い指導力が必要だろうと私は思います。
 そこで、都政の前提たる日本の国の基本的力について、ご所見をお伺いいたします。

○石原知事 世の中で、失われた十年間などといわれまして、バブルが崩壊した後、日本の経済は低迷を続けておりますが、しかし、私は、ヨーロッパなどに比べれば、日本の底力というのはまだまだ相対的に非常に高いものがあると思います。これはやっぱり、ご指摘のように政治のかじ取りが悪かったせいでありまして、結局すべての面でアメリカのいいなりになった、アメリカに依存してきた。特に日本の金融などは、金利までもアメリカが決めるようなていたらくであります。アメリカの財務省は、日本のかつての大蔵省を財務省の東京支店と呼び、アメリカの国務省は、日本の外務省を我々の東京支店と呼ぶような、そういう関係にあり過ぎた。
 例えばヨーロッパが、全ヨーロッパが開発している先端技術のアイテムに比べて、日本の方がはるかに数が多いわけでありまして、文明というものを変えていく底力は私は技術だと思いますけれども、そういったものからすれば、しかも日本の全体の個人、個人全体が持っている金融資本というのはかなりの量で、これはもうヨーロッパも比べようがない。こういうものがありながら、経済が低迷し、何か国際的にも日本の名声というものが失われつつあるというのは非常に残念でありますが、これはやはり、自分の持っている力というものを正確に認識し、過剰な自負は危険でありますけれども、それをいかに国際関係の中で有力なカードとして使っていくかということが私は肝要だと思います。決して私は、日本の国力は相対的に衰退しているとは思いません。

○矢島委員 財政を中心にして語られることの多い現在の行政の課題でありますけれども、一番の問題点は、次世代に負担を先送りしない、これが問題であろうと思いますが、残念ながら、しのぎながら税収の回復を待つ姿勢が多く見受けられます。しかし、都政の運営には、それを超える意志を私は感じますし、地方自治の一つの象徴的な方法を示しているようにも思います。
 また、政治の課題は、社会のずれを根源的に構築して、あるいは部分的に修正するところにあると思いますが、知事の取り組みをこう考えると、私なりに筋が通ってまいります。いろいろな場面で知事は発言していることでありますけれども、基本的問題として、石原知事の都政運営のスタンスについてお伺いをいたします。
 また、現在多くの摩擦、ゆがみは、改革を求めるサインということになろうかと思います。しかし、社会が、そこに生活する人にとっては住みやすいところであるためには、効率一点張りの市場完全主義ではこれは無理だろうと私は思いますが、この点もあわせてお伺いをいたします。

○石原知事 お答えが前後しますけれども、効率一点張りの市場主義というものだけでは足りないというのは、ご説のとおりだと思いますが、しかし、その前に、日本の行政は、中央も地方もいささか合理性に欠け、非常にむだが多かったような気がしますし、いずれにしろ、繰り返し申してきたことでありますけれども、東京は日本の心臓部であり、頭脳部であります。しかもカナダに匹敵するような膨大な予算を抱え、しかも首都圏でいえば日本の三分の一以上の人が住んでいる、こういう首都なり首都圏に一番日本の病状というのは先鋭にあらわれているわけでありまして、しかもこれは決して不可逆的なものではないと思います。そういう意味で、それを冷静にとらえて、果断な方法で治療していく、し直していくということは、私は、今の都政に求められる一番基本的な姿勢だと思いますし、当面、私にとっては、知事としての責任でそれをやる以外の理念といいましょうか、それほど高尚なものはございませんが、やっぱり今の限りでは、リアリストに徹底して東京のかじ取りをしていきたいと思っております。

○矢島委員 東京都は、平成十六年度の予算を大変なやりくりでしのいで編成をされました。均衡を図らなければならない予算編成ですから、できることは限られております。歳入を図るか、歳出を減らすか、これしかないわけであります。
 東京都は、財政再建プランで数字上の見通しを立てて、果敢に取り組んでいるところは評価をいたします。しかし、他会計からの借り入れは、緊急避難というふうな見方もできますし、運用で借用した諸基金は、影絵の電灯を消すように整理に努めておりますし、この状況を背景に、一気の事業の絞り込みにより、引きずっている積年の東京都財政の課題を逆に実現しているのではないかというようにも思えます。
 かつての要因によって、取り組んでも取り組んでも先が見えない財政赤字対応のさなかでありますけれども、財政当局の緊迫した様子の中にも妙な明るさが少し、私はそういう印象を受けます。今まさにそういった意味で印象、見えないこともありません。
 現実に多額の財源対策をしなければならない状況でありますが、事務事業の絞り込み、圧縮、見直しにある程度の見通しが見えてきたか、そういうような気がいたしますので、この点についてお伺いいたします。

○櫻井財務局長 十六年度予算は、第二次財政再建推進プラン初年度でございますが、現下の緊急課題に対応しながら、内部努力や事業のスクラップ・アンド・ビルドの徹底など、さらに財政構造改革を進め、臨時的な財源額を圧縮したものの、いまだ解消に至っておらず、財政再建は道半ばの状況にございます。
 都が取り組んでいる財政再建は、都民のニーズの変化に的確にこたえる、持続可能な財政基盤を確立することを真の目的とした、積極的、前向きな取り組みでございます。都財政を取り巻く環境が引き続き厳しい中、都民サービスの一層の向上を目指して、内部努力をさらに徹底するとともに、施策の範囲や水準、実施方法を時代に適合させるなど、都民や議会のご協力をいただきながら、全庁挙げて、強力で弾力的な財政基盤の確立に向けた取り組みを引き続き続けてまいります。

○矢島委員 財政当局の立場は、当然ながら再建プランの方に戻って、そこに立脚するより仕方ない。それが一番の大もとでありますから、当然そういう答弁になると思っておりました。
 東京都は、事業を対象に行政評価を行っております。絶対数は少ないのでありますけれども、現在の所管担当のスタッフの数では、善戦しているといえるのではないか。この行政評価について、財政当局も、予算編成のため、要求予算の査定を通して結果的に実施していることになります。前年度に引き続く事業であれば、決算評価も参考にしたものとなるのでありましょうし、新規事業であれば、目的、必要度、効果、方法の効率性など、事前行政評価を行っているということになります。また、知事の公約も入り、結果として出てくる数字は一目瞭然ということになりますけれども、これらの行政評価ともいえる予算編成過程を、事業を見るという意味で何らかの形で公開は可能ではないか、このように思いますが、お伺いをいたします。

○櫻井財務局長 予算編成に当たっては、これまでも、あらかじめその時々の財政状況等を公開した上で見積もり方針や各局からの要求状況を発表し、各会派からの予算要望も踏まえまして原案を策定、さらに復活予算と、機会をとらえましてできる限りの情報公開に努めております。
 具体的な予算編成に当たりましては、ご指摘のように、個々の事業の目的や必要性、緊急性、優先度、費用対効果などを踏まえ、決算状況や、さらには都民ニーズや国の動向など社会経済状況の変化にも対応して、非常に幅広い視点から総合的な判断を行っております。作業量も膨大であり、複雑多岐にわたるその過程について開示していくことは、必ずしも適切ではないと考えており、現在は予定しておりません。

○矢島委員 予算編成は知事の専管事項でありますが、しかし、いずれ何らかの公開が必要になる時期が私は来ると思っておりますので、説明責任を果たす意味でも、その準備をわずかながらでも進めていただきたい、この意味で申し上げておりました。
 先ほど、私どもの北条議員が都債の全般事項についてお伺いをいたしておりましたので、私は、減債基金についてお伺いをいたします。
 東京都は、平成十六年度予算編成を切り抜けるために、幾つもの財源対策という名のやりくりに苦しんでまいりました。そのボリュームの大きさから、都債返済に見合うだけの減債基金の積み立てがなければなりません。しかし、現実の積立不足は、直接的に響いてくる状況であります。これまでの減債基金の積立不足の累計のボリュームは、現在どのくらいになるか、お伺いいたします。

○櫻井財務局長 減債基金は、将来の償還に備えるため、都債発行後四年目から、発行額の六%を所要額として積み立てるものとしておりますが、この間の財源対策で、やむを得ず、積み立てを一部見送ってきております。これによる十六年度末の積立不足額は、累計で五千九百十六億円となる見込みでございます。

○矢島委員 積立不足は、いずれ十六年度減債基金積み立ての一部見送りの方法も許さないものとなってくるように思います。深刻になると、減債基金の積み立てを全額した上に、さらに一般財源で補わなければならない、こういう事態、まさにこれは自転車操業と通常はいうんですけれども、そういうものになりかねないような危機感を感じます。
 この減債基金積立不足の影響は、十七年度より十八年度に出ると考えますが、どの程度の見通しとなるか、お伺いいたします。そして、その扱いはどうするのか、また、その後はさらにどうか、答弁をお願いいたします。

○櫻井財務局長 都債の償還は、今後もしばらくは高い水準で推移することが見込まれておりまして、今後、所要額の満額を積み立てた場合にも、十七年度の取り崩し予定額三千五百七十一億円に対しまして、基金残高見込みは三千四百六十六億円で、差し引き百五億円の取り崩し不足額が見込まれます。また、十八年度においても同様に不足額が生じることが見込まれます。
 将来の償還財源を安定的かつ計画的に確保するためには、この取り崩し額の不足につきまして、できる限り早い時期に解消することが必要と考えております。減債基金は、都債の償還時の財政負担を平準化する重要な機能を有しておりまして、財政再建を進める中で、減債基金の積立不足の解消に向け、努力してまいります。

○矢島委員 ぜひとも、後世にツケを残さない、筋肉質の都財政構築のためにも、技術に終わることなく、意志と志とハートを持ってぜひ努めていただきたい、このように思います。
 緊急の課題であります財政再建にとって、人件費の問題は重要課題の一つであります。適切な職員数を念頭に効率化を図り、職員数の削減を実施していかなければなりません。これはまさに大変な仕事であります。現実にその対応は退職不補充で来ておりますし、この後は黙っていても団塊の世代の退職で自然減となりますので、むしろその意味では、今後は組織のバランスのための中途採用、また、縮小した新規採用がもたらす影響を考えながら、組織をどうしていくかが大きな課題になろうかと思います。
 そこで、東京都として、職員定数に対する妥当な水準をどのように考えておるのか、お伺いをいたします。

○赤星総務局長 職員定数でございますけれども、社会経済情勢の変化を踏まえまして、毎年必要な見直しを行い、算定しております。算定は、事務事業の分析、業務量の積算、法令によります配置基準等を踏まえて行っておりまして、適正なものと考えております。
 また、第二次財政再建推進プランでは、内部努力の柱といたしまして、今後三年間で四千人の削減を行うこととしております。このため、今後とも、国、区市町村、民間との役割分担及び直営で実施するか、委託するかといった執行方法を明確にすることが重要でございます。直営で実施する場合におきましては、効率化や事業の動向、業務量の増減などに対応した執行体制を確保する視点、委託する場合におきましては、事務事業に最も適した委託手法を選択する視点など、さまざまな角度から継続して職員定数の見直しを行ってまいります。

○矢島委員 まさに今のご答弁の中に東京都の姿があらわれております。
 東京都は、当然ながら、むだのない、効率的かつ施策目的が実現できる組織の見直しを進めているはずであります。しかし、その見直しは、現在の東京都の考え方、今のご説明では、どうしても現況からのスタートになる。今の数が前提で進めておられる。今の仕事が、形が当然のこととして出発される、そういうような印象を受けます。これは、比ぶべき基準を持たないからということになろうと私は思います。
 もちろん、行政の業務は、能率だけで律することのできない業務が中にあることは十分承知の上で申し上げておりますが、民間の基準で、果たしてどの程度の職員数で可能なのか、こういう観点が必要だろうと私は思います。
 効率的組織の設計も、その上に成り立つものであります。それだけに、都庁業務の全体調査と、これを民間の場合では業務運営方法はどうなるのか、必要職員数は何人なのか、組織はどうするかなどを、コンサルタント会社あるいは研究所などに委託して、その結果を組織の抜本的見直し、組織設計の参考資料として活用すべきです。
 その上で、行政の特殊性を加味すればよいのでありますから、現況を余り考えずに取り組んでみることが重要かと思います。
 大きな費用が仮にかかるとしても、結果として安くつくものでありましょうし、万一余剰人員が出た場合は、これは別の問題として解決すればよいのでありますから、これで対応できるんじゃないかと私は思います。
 また、一般の常識からはちょっと考えにくいんですけれども、もし不足するようなことが万が一あったら人を雇えばいい。当然のことだろうと思います。考えられませんけれどもね。実施すべきと私は考えますが、お考えを伺います。

○赤星総務局長 地方公共団体の組織につきましては、当然のことではございますが、常にその組織及び運営の合理化に努めなければならないものでございます。
 その意味で、ご提案の民間のコンサルタント会社などの活用によります都の定数や組織の検証につきましては、効率的な執行体制の確保という観点から、貴重なご提言であると考えます。
 都では、既に包括外部監査や機能するバランスシートのほか、福祉におけます第三者評価システム、都立病院への病院機能評価、さらには公営企業局におけます経営分析などを実施しております。
 しかし、都の事務は、政策の企画調整から都市外交、治安対策、福祉サービスの提供まで、極めて広範にわたりますとともに、その内容も、民間になじみのない税の徴収、食品、医薬品の監視指導から児童虐待対策まで多岐にわたっております。
 したがいまして、執行体制につきまして、コンサルタント会社などに包括的に分析を依頼することは現在考えておりませんが、今後も引き続き、ご提案の趣旨を生かすべく、それぞれの事業ごとに、できる限り民間の知恵など外部の客観的な評価を導入し、効率的かつ効果的な事務事業の展開と、それを支える最適な執行体制の構築に全力を傾けてまいります。

○矢島委員 優秀な営業マンは、イエス、バットだそうでありまして、まさにそれの見本になるような答弁でありましたが、いずれそういうような時期も私は来ると思っております。
 自己完結性と組織の継続性を求めるのが、私は行政と思います。よいときに出ればよい形でしょうし、そうじゃなきゃ、守りに完全に入ってしまう。しかしながら、優秀な人材が機能的な運営方法と組織を持ったときに時代は大きく変わってくる、私はそのように思いますので、多分心の中では感じていると思いますので、その芽を大事にしていただいて、ぜひ期待しておりますので、お願いいたします。
 自治体が、時代をみずから見据えながら、地域の必要を調査、企画、立案して予算配分を行って、有用な事業を実施しようとしても、税収なくしては砂上の楼閣ということに私はなると思います。進めなければならない三位一体の改革も、税源の移譲を受けた自治体の徴税能力があって初めて実質が伴います。
 徴税業務は、なかなか目立たない地味な取り組みでありますが、実質的に自治体の中枢機能ともいえますし、東京都は主税局の努力により、足腰の強さが際立っているようにも思います。そして、実際、成果を上げておられる。いわば、進歩している主税局の取り組みに、私は敬意を表したいと思います。
 そういう東京都が、一国平和主義にとどまらないで、都が重ねてきました徴税のノウハウを、都民税、区市町村民税、一括徴収している都内の区市町村のみならず、日本全国に発信しようという取り組みは、東京都にふさわしい姿勢であります。
 そこで、その取り組みの一つ、昨年十月三十一日に開催した徴収サミット開催のきっかけと成果、また今後の展望についてお伺いいたします。

○川崎主税局長 主税局の地味な取り組みを評価していただきまして、ありがとうございます。現場で働く職員の励みにもなります。ありがとうございます。
 さて、近年、複数の自治体に及ぶ脱税事件や、悪質、巧妙な滞納整理困難事案が増加しており、東京都には全国から多くの相談が寄せられてきております。
 そこで、都が呼びかけ、互いの徴収率の向上を目指し、全国から百二十の団体が参加し、各自治体間の連携を深める場としての、徴収部門初の全国会議、徴収サミットが開催されました。
 会議の成果といたしましては、まず、互いに徴税の先進的な取り組みや徴税ノウハウの習得ができたこと。そして、メーリングリストの開設により、百を超える自治体との日常的な情報交換が可能になったこと。そして、参加自治体からの派遣研修生の都への受け入れが始まったこと。また、都にとっても、地方に所在する物件の差し押さえ、不正軽油絡みの捜索実施などで連携強化が図れることなどが挙げられます。
 今後とも、徴収サミットの十六年度開催やメーリングリストの参加団体を拡大するなど、引き続き全国自治体の連携に積極的な役割を果たしてまいります。

○矢島委員 主税局では、もう一つ、全国に発信する取り組みがあります。不正軽油撲滅作戦に係る不正軽油撲滅連絡会議です。
 この会議開催に至る経緯、また今後、いわば先進自治体ともいえる都がリーダーシップをとって支援すべきと思いますが、お考えをお伺いいたします。

○川崎主税局長 不正軽油の流通は、年々複雑かつ広域化しており、個々の自治体だけでは対応し切れなくなっております。
 そこで、自治体間の連携、協力体制を強化するため、都の呼びかけで平成十四年に不正軽油撲滅連絡会議を設置し、現在、東日本の十八都道県が参加しております。
 この連絡会議は、不正軽油製造基地等に関する情報を共有するだけではなく、タンクローリーの追跡調査や広域事案に共同で対応するなど、具体的、実践的な取り組みを行っております。
 また、連絡会議以外の全国の自治体に対しましても、情報提供や個別事案に対する職員の派遣等、さまざまな支援を行っており、今後も引き続き積極的に取り組んでまいります。

○矢島委員 この開催に至るまで、東京都は既に三年にわたり、全庁挙げての不正軽油撲滅作戦に取り組んでまいりました。
 主税局も、大気汚染問題の総合的取り組みの一環として、脱税の取り締まりにより、改善を進めるようにしてまいりましたが、この最近の状況と、取り締まりの有効な手段として新たに導入した硫黄分析はどのようなものか、お伺いいたします。
 また、この有効と聞いている硫黄分析を広く全国に普及させるべきだと考えますが、他の自治体、国の状況はどうか、あわせてお伺いいたします。

○川崎主税局長 最近、不正軽油の製造はますます巧妙化し、発見が困難になっております。そこで、不正軽油発見の新たな手法として、硫黄分析を導入いたしました。
 これは、都の強い要請により、硫黄分がこれまでの十分の一程度の軽油が昨年四月から全国的に供給されたことにより、硫黄分の高い不正軽油の判別が可能となったもので、極めて有効な手法であります。
 そこで、都は、硫黄分析の有効性を他の自治体にもPRし、現在では十二の県が導入し、ほかに十一の県で導入を検討していると聞いています。
 また、国も都に対して硫黄分析を依頼してきており、今後の導入を検討しております。

○矢島委員 不正軽油対策で法改正の動きがあると聞いております。都が国に対して行った脱税罰則強化の要求は実現されたのか。
 法が改正された場合、今後都の取り組みはどのようにしていくのか、お伺いいたします。

○川崎主税局長 都は、国に対し、不正軽油対策の法的支援を繰り返し要請してきました。今国会に提案されている法改正は、こうした積極的な取り組みが国を動かしたものと考えております。
 法改正の内容は、法人に対して三億円の罰金刑を新たに設けるほか、不正軽油の譲り受け等に関する罪の創設などで、これらにより、軽油引取税に係る罰則が大幅に強化されることになります。
 今後は、今回の税制改正を最大限活用し、自治体間の連携協力体制のもとで強力な取り締まりを実施するとともに、他の自治体に対する支援を積極的に行うなど、手を緩めることなく不正軽油の撲滅に取り組んでまいります。--今、知事からサゼスチョンがございまして、先ほど答弁いたしました硫黄分析、新たな手法なんですが、これは東京都の主税局の職員が協力して、今後の撲滅作戦に向けた取り組みの中で開発した手法でございます。知事から表彰を受けました。(拍手)

○矢島委員 先ほど知事が、都政運営の答弁にありました、その現実主義者に徹するという形のものが一つの形になってあらわれて、さらに国を動かした。ぜひ、石原都政の一つの象徴として、今後も努力していただきたい、このように思います。
 新銀行の設立もそうでありますけれども、東京都は、日本の強さを認識した強力な産業振興施策を矢継ぎ早に放っております。
 生産効率を目指して、中国など東南アジアに進出した企業が、結果として競争相手を育てることになって、日本の生産技術という強みを失っていっている現実であります。
 その一方で、日本生産への回帰現象も進んでおりますし、十分コスト競争力もあると聞いております。
 しかし、問題は、さらに技術が命となるだけに、大企業の内製化が進むということになります。どちらにしても中小企業の分が悪い。
 東京都は、開発しようという技術、あるいは現在持てる技術、また生産技術、資金、市場など、多岐にわたる施策を展開しております。
 そこで、広い東京だけに、先ほども幾つか議論があったようですが、地域産業の集積、クラスターがあると思いますけれども、地域ブロックと特色、今後どのような支援を図ろうとしているのか、お伺いいたします。

○有手産業労働局長 東京の産業を支えるものづくり産業の主な集積といたしまして、都心と副都心地域の印刷業、城北地域の精密機械関連産業、城東地域の生活用品関連産業、城西地域のアニメ等コンテンツ産業、城南地域の機械金属関連産業、そして多摩地域の研究開発型企業の集積などがございます。
 近年、これらの集積をめぐる企業経営環境が、国際的な競争の激化や産業構造の転換など、予想を超えるスピードで大きく変化しております。
 そこで、これらの変化を受けとめ、国際的な視点も踏まえまして、従来の集積にとどまらない、大都市東京にふさわしいものづくり産業の集積のための新たな施策につきまして、現在、中小企業振興対策審議会において幅広く検討中でございます。この答申も踏まえまして、有効な支援策を検討していく考えでございます。

○矢島委員 先ほどもナノテクノロジーのお話がありましたが、東京のいろいろな地域のクラスター、産業集積を考えますと、なかなか設置場所も難しいところがあろうかと思います。ぜひ間違いない形でしっかりと取り組んでいただきたいと思います。
 日本の場合、風土的に新事業を創設する力は強くないといわれております。
 これは、産学連携、ファンドの設立、人的、また海外ネットワークなど、行政の支援もありますので、起業家精神も高まってくることは期待されます。
 また、今後、これから創業する企業、現実に稼働している中小企業にとって課題の一つは、海外取引であると私は思います。
 中小企業がほとんどのイタリアの例を見ると、ニッチ産業自身の取り組みとして、市などの有力な商工会議所が、国の機関とは別に海外事務所を置き、支援活動を行い、イタリアの強さを支えているそうであります。
 東京都もかつて海外事務所を持っておりましたし、駐在員を派遣し、産業振興の事業に当たっていたようでありますが、なぜそれをやめるに至ったか、お伺いいたします。
 また、その後実施している海外展開の支援の方法と成果についてもお伺いいたします。

○有手産業労働局長 都におきましては、交流事業の連絡調整や中小企業支援のために、海外事務所や駐在員を置いておりましたが、その内容、効果面を考慮いたしまして、平成十二年三月をもって廃止いたしました。
 現在は、海外展示会への参加の支援や、産業界の抱える課題についての海外市場調査を実施するなど、中小企業の販路開拓を支援しているところでございます。
 平成十四年度の実績と、駐在員を派遣していた平成十一年度とを比較してみますと、中国での経済発展を背景に、展示会での引き合い実績は一・五倍、約四千件となっております。

○矢島委員 いずれ、東京都の産業育成は、スポットの海外への取り組みの段階から、大きく育てようという方向に私は向かうのではないかと思います。
 そうした意味では、中小企業振興に目的を特化した海外出先機関なども有効な一つと私は考えます。
 調査によりますと、海外展開を大きく図りたいと考える中小企業は一七・二%に及んでいるそうで、技術力のある中小企業が世界に通用する製品を開発し、これを海外展開したくても、情報の不足、人的、資金的困難がクリティカルパスになるということは容易に想像ができます。
 展示会、見本市での販路開拓も重要な方法の一つでありますけれども、それだけでは不十分ではないかと私は思います。これまで以上に、海外を念頭に置いた施策について研究していく必要があるのではないかと考えますが、この点についてお伺いいたします。

○有手産業労働局長 お話のように、経済のグローバル化が進展する中で、中小企業の海外への販路開拓支援は今後ますます重要になっていくものと認識しております。
 このため、先ほどご答弁しましたけれども、海外展示会への参加の支援や海外市場調査のほか、海外取引のあっせんなどを行うとともに、今年度からは、東京のものづくり産業が海外での競争力をより高めていくために、海外特許取得の支援も行っております。
 さらに、来年度からは模倣品の被害対策も開始したいと考えております。
 今後とも、日本貿易振興機構など関係機関との連携を今まで以上に深めるほか、シティーセールスを積極的に活用するなど、中小企業の海外展開につきまして効果的な支援のあり方について研究してまいります。

○矢島委員 行政のコストの削減は、大きな課題であります。
 現在導入されているPFIも、民間とのリスクの分担とファイナンスが主目的といわれていますが、この事業は、公共工事のコストのあり方と、その後の管理方式に具体的な実際例を示すわけですから、行政の現在の係る費用、それから管理費用につきましても、行政の取り組みに大きな影響を与えることは当然であろうかと思います。
 東京都と民間は違うんだというわけにいきませんから、ここが大きなポイントになろうかと思います。
 この上でお聞きいたしますが、東京都の施設管理は長期にわたるだけに、一般的には建築費の六、七倍に上る管理に要するコストがあるというふうに聞いておりますので、なおざりにできない大きな問題であります。この施設管理コスト削減に、都はどのように取り組んでいくのか。
 また、晴海高校の例で見ますと、設備機器の運転、保守管理などを遠隔監視装置とすることで大幅にコスト削減を果たしたと聞いております。
 機械警備もそうでありますけれども、初期投資はかかっても、結果として大幅コスト削減、回収ができるなら、先ほど申し上げた晴海高校の遠隔監視装置のような機械の導入、機械化、省力化を積極的に進めるべきではないか、このように考えます。ご所見をお伺いいたします。

○櫻井財務局長 施設管理費の削減は、その効果が長期間にわたることから、このたび新たに、維持管理コストの縮減にも取り組むことといたしました。この中で、施設管理全般にわたる見直しや、省エネルギー対策なども進めてまいります。
 お話の遠隔監視装置の導入など施設管理の機械化は、経費削減効果が高いと認識しており、初期投資額の回収年数なども考慮しながら積極的な導入を図ってまいります。
 また、建設年次の古い施設につきましては、民間資金の活用などによる設備更新とあわせて遠隔監視装置を導入するなど、コスト縮減に向けて種々の方策を検討してまいります。

○矢島委員 もう一点、維持管理コストの削減についてお伺いいたします。
 昨年の第一回定例会で、我が党の近藤やよい議員の民間資金を活用したESCO事業に係る質問で、知事からも進めるようにとの答弁がありましたが、その後の経過はどうなったか。
 こうした民間を活用したコスト削減、省エネルギーの方式を、今後積極的に推進すべきと考えますが、東京都はどの程度の導入を考えているか、お伺いいたします。

○櫻井財務局長 コスト縮減は、何よりも実行が大事だと思っております。したがって、今年度、大規模施設のエネルギー診断を実施しました結果、特にエネルギー削減効果の高い十五施設に、ESCO事業により約三十四億円の設備投資を行った場合、光熱水費を十年間で約七十億円削減できるとともに、CO2を一〇・六%削減できることがわかりました。
 そこで、十六年度より、光熱水費の縮減効果が大きい都立病院などの施設につきまして、ESCO事業導入のための準備作業に着手いたします。
 ESCO事業は、省エネルギーや光熱水費の削減のほか、CO2の削減など、環境面からも有効であることから、今後の導入可能施設とその効果などにつきまして、ESCO事業の実施について全体像を示したマスタープランを十六年度中にも作成し、計画的に取り組んでまいります。

○矢島委員 次に、消防団についてお伺いいたします。
 消防団は、実際上の役割にとどまらず、存在自体が町の大きな安心ともなっております。現実に一万八千人の消防職員が、大ざっぱに三交代として、この瞬間には六千人の要員規模であります。
 四万五千人の警察も仮に三交代とすると、一万五千人に比べ、消防庁ははるかに少ない数ということになりますが、消防団員一万六千人を加えることで、一気にその規模を増して備えを豊かにしていく、このように思います。それだけに消防団の役割は重いということになります。
 戦後、直ちに廃止された警防団にかわって組織されたものでありますが、その基本的な役割についてお伺いいたします。
 また、それだけ重要な役割の消防団でありますが、団員の充足率は三年連続九〇%前後にあると聞いております。その事由をどのようにとらえ、単なる募集だけにとどまらず、いかなる対応をしているか、お伺いいたします。

○白谷消防総監 消防団の基本的役割といたしましては、平時におきましては、水火災の災害対応を初め、火災の予防や警戒、地域住民に対する防火防災指導などを、震災時におきましては、発災直後の被害情報の収集、出火防止の呼びかけや消火、救助、救護活動などであります。
 充足率が九〇%前後となっている要因といたしましては、地元で自営業を営む方々の減少や住民意識の変化等により、消防団員の確保が困難となっていることが考えられます。
 このことから、事業所などの従業員を対象にいたしまして入団促進を図るとともに、平成十六年度は大学生などを対象とした募集を推進してまいります。
 また、緊急車両の整備促進や各種の資格取得など、魅力ある消防団づくりを推進して、消防団員の確保に努めてまいります。

○矢島委員 消防団を構成する消防団員は、特別職の地方公務員でありますが、団員は年報酬四万五百円、出動一回二千五百円の手当をいただいております。しかし、その内容を知る者にとって、この手当というのは本当に頭が下がる思いであります。
 まさに仕事と両立させながら、あるいは場合によっては仕事を犠牲にして出動されるわけでありますし、また安全にかかわる任務であるだけに、日ごろ細心の注意と規律、消防に関する技量と知識の向上にも努めていかなければならない。
 消防庁も、団員のしっかりした研修、訓練のプログラムに沿って技能の向上を図って、消防署と協力した活動を滞りなく取り組めるよう研修に努めていることは承知しております。
 一方、都民の皆さんにとって、消防団員は地域防災の専門家でもあります。東京都は、消防団員を消防署を中心とした災害発生時のスタッフにとどまらず、平時でも防災のことなら何でも聞くことのできる地域防災の専門家として位置づけ、その育成に努めるべきであると考えます。
 そのことが、団員にとって、地域への目に見える貢献となりますし、また本来の役割に広がりを持たせて、消防団活動の活性化にもつながると思いますが、お考えをお伺いいたします。

○白谷消防総監 ご指摘のとおり、消防団員一人一人が防災に関する住民の質問に的確に答えることによりまして、住民からの信頼が得られ、ひいては団員自身の活性化につながると思います。
 このため、当庁といたしましては、現在、消防学校研修及び消防署における教育訓練を実施しておりますが、今後さらに、消防団員に対しまして、地域防災の専門家として一層ふさわしい知識などが習得できるよう、消防学校における集合教育の拡充、教育教本の充実整備、eラーニングの活用などについて検討し、教育の一層の充実に努めてまいります。

○矢島委員 大変予定時間も、私はまだ少し残っておりますが、過ぎておりますので、私はこれをもって総括質疑を終わりますけれども、都の職員の皆さん方の周りには十七万三千人の一人一人の方がいらっしゃるわけでありますから、その方々の活性化を図りながら、新しい都政を目指して努力していただきたい。
 議会の方は、チェックする機能ですから、叱咤激励して、先ほどたくさんありました悪い答弁も気にせずに次回からも頑張ってまいりますので、皆さんのご健闘をお祈りいたします。
 ありがとうございました。(拍手)

○宮崎委員長 以上で矢島千秋委員の発言は終わりました。
 以上で、本日予定いたしました質疑はすべて終了いたしました。
 なお、明日は、午前十一時から理事会を控室一で、また午後一時から委員会を本委員会室で開催いたしますので、よろしくお願いいたします。
 これをもって本日は散会いたします。
   午後九時十一分散会

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